特許第6238006号(P6238006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6238006ステアリン酸アミドを主成分とする感熱記録体用増感剤微粒子分散体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238006
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】ステアリン酸アミドを主成分とする感熱記録体用増感剤微粒子分散体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/337 20060101AFI20171120BHJP
   C07C 233/05 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B41M5/337 212
   C07C233/05
【請求項の数】2
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-271547(P2013-271547)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-123724(P2015-123724A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】391052574
【氏名又は名称】三光株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】タン チャンキー
(72)【発明者】
【氏名】中川 賀斗
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−120460(JP,A)
【文献】 特開2004−090559(JP,A)
【文献】 特開2002−178644(JP,A)
【文献】 特開2005−014337(JP,A)
【文献】 特開2006−068979(JP,A)
【文献】 特開平09−011620(JP,A)
【文献】 特開平08−282127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/28 − 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリン酸アミドと、1,2−ビス(フェノキシ)エタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシ)エタン、p−ベンジルビフェニル、シュウ酸ジ−p−メチルベンジル、β−ナフチルベンジルエーテル及びジフェニルスルホンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、ステアリン酸アミド以外のその他の増感剤とを、95:5〜51:49の質量部割合で混合し、得られた混合物を熱混融して、前記ステアリン酸アミド及びその他の増感剤を一体化させて、混融体とし、前記混融体を乳化剤分散水中で乳化微粒子化させ、得られた乳化分散体を急冷して前記乳化微粒子から増感剤微粒子を結晶化させることを特徴とする、ステアリン酸アミドを主成分とする感熱記録体用増感剤微粒子分散体の製造方法。
【請求項2】
急冷後の前記乳化分散体の温度が50℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の増感剤微粒子分散体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリン酸アミドを主成分とする感熱記録体用増感剤微粒子分散体の製造方法、前記製造方法で得られた前記増感剤微粒子分散体、前記増感剤微粒子分散体を用いた感熱記録層用混合分散体組成物、及び前記混合分散体組成物を用いた感熱記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
染料、顕色剤及び増感剤の熱発色反応を利用した感熱記録体は、安価なシステムで利用可能なことから、ファクシミリ、プリンター等で使用され、ラベル、チケット等の用途で広く利用されている。
【0003】
通常の感熱記録体は、電子供与性染料及び電子受容性顕色剤等を含有する組成物を紙、フィルム等の支持体上に塗布して乾燥させることで製造されており、その塗布層(感熱記録層)表面にサーマルヘッドからのジュール熱が付与されると、その塗布層部分に分布する前記染料及び顕色剤が溶融反応して、発色像が得られる様に構成されている。
【0004】
しかし、実用化されている感熱記録体は、前記染料及び顕色剤以外に、熱応答性を高め、さらに記録を高速化、低(省)エネルギー化することを目的として、増感剤(記録感度向上剤)を併用している。
前記増感剤としては、例えば、ステアリン酸アミド、1,2−ビス(フェノキシ)エタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシ)エタン、p−ベンジルビフェニル、シュウ酸ジ−p−メチルベンジル、β−ナフチルベンジルエーテル、ジフェニルスルホン、ワックス類等が知られている。
【0005】
前記増感剤は、感熱記録層中に含有させる場合、微粒子状として分布させるが、その粒子径が小さいほど増感剤は熱溶融性がよく、効果的に機能するとされている。
粒子径が小さい増感剤を感熱記録層中に含有させる方法としては、あらかじめ単独で微粒子化させた状態の増感剤を感熱記録層中に分散させる方法、増感剤を染料又は顕色剤と共にサンドグラインダー(湿式粉砕機)等を使用して、平均粒子径が0.40μm、0.25μm、0.10μmとなるように微細粉砕して感熱記録層中に含有させる方法等が開示されている(特許文献1参照)。
【0006】
しかし、感熱記録層中に含有させる増感剤の平均粒子径は、実用に供されているものでは、1〜3μm程度であるのが現状である。その理由は、粒子径を1μm以下とするためには、特別な微粒子化装置が必要であり、微粒子化処理により多くのエネルギーと処理時間も必要であることから、高コストになってしまうからである。
【0007】
一方、増感剤の中でも特にステアリン酸アミドは、安価であることから、汎用グレードの感熱記録体に使用されており、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを顕色剤とする感熱記録体の増感剤として、特に優れた効果を奏することが知られている。
これに対して、感熱記録体において、低エネルギー領域でも高感度の発色が得られるようにするためには、感熱記録層中に分布する微粒子状の染料及び顕色剤が瞬時に溶解反応可能とする必要がある。しかし、ステアリン酸アミドは融点が102℃であり、上記条件を満たすためには、染料及び顕色剤に対する溶媒として機能するステアリン酸アミドの粒子径を小さく(例えば1μm以下に)して、熱溶解性を高める必要がある。
【0008】
ステアリン酸アミドの粒子径を小さくする方法としては、サンドグラインダー(湿式粉砕機)を使用して、ステアリン酸アミドを微粒子化する方法が開示されているが、この方法では、微粒子化に長時間を要し、また分散体の濃度も10%程度にしかできないので、非効率で経済的ではないという問題点がある(特許文献2参照)。
【0009】
ステアリン酸アミドの粒子径を小さくする他の方法としては、ステアリン酸アミドを乳化エマルジョンとする方法が開示されている。(特許文献3参照)。
この方法によれば、圧力容器に、水、ステアリン酸アミド、乳化剤等を投入し、100℃以上(例えば、120℃)に加熱後、高圧ホモジナイザーを使用して20MPaの圧力で処理することにより、ステアリン酸アミドの平均粒子径が0.7μm以下と微細で、均一であり、安定性が良好な乳化エマルジョンが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−168965号公報
【特許文献2】特開昭56−5791号公報
【特許文献3】特開2002−79074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献3に記載の方法では、ステアリン酸アミドの融点が102℃であることにより、上記のように圧力容器を使用した高圧処理を必要とする。水は常圧下、約100℃で沸騰し、それ以上は温度が上がらないため、ステアリン酸アミドを水中で溶融させるためには、水の沸点を100℃以上とするために、圧力を20MPa等の高圧とするのである。
【0012】
このように、特許文献3に記載の方法は、圧力容器等の特殊な耐圧性装置を必要とし、難易度も高く、しかも作業の安全性確保や装置の整備等のメンテナンスが必要となるが、できれば、このような設備費がかさみ、作業が危険を伴う方法は採用しないことが望まれる。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、増感剤としてステアリン酸アミドを用いた場合でも大気圧下で安全に行うことができ、且つ法的メンテナンス義務が伴わない増感剤微粒子分散体の製造方法、前記製造方法で得られた増感剤微粒子分散体、前記増感剤微粒子分散体を用いた感熱記録層用混合分散体組成物、及び前記混合分散体組成物を用いた感熱記録体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ステアリン酸アミド及びそれ以外の増感剤を併用して、これらを混融することで、大気圧(0.1MPa)下で、水の沸点以下という穏やかな条件で微粒子化しても、十分な発色感度を実現する、ステアリン酸アミドを主成分とする増感剤微粒子の分散体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は、ステアリン酸アミドと、1,2−ビス(フェノキシ)エタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシ)エタン、p−ベンジルビフェニル、シュウ酸ジ−p−メチルベンジル、β−ナフチルベンジルエーテル及びジフェニルスルホンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、ステアリン酸アミド以外のその他の増感剤とを、95:5〜51:49の質量部割合で混合し、得られた混合物を熱混融して、前記ステアリン酸アミド及びその他の増感剤を一体化させて、混融体とし、前記混融体を乳化剤分散水中で乳化微粒子化させ、得られた乳化分散体を急冷して前記乳化微粒子から増感剤微粒子を結晶化させることを特徴とする、ステアリン酸アミドを主成分とする感熱記録体用増感剤微粒子分散体の製造方法を提供する
【0016】
本発明の製造方法においては、急冷後の前記乳化分散体の温度が50℃以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、増感剤としてステアリン酸アミドを用いた場合でも圧力容器、高圧力(例えば20MPa)等の手段を採用することなく、ステアリン酸アミドの融点を下げ、大気圧(0.1MPa)下で、水の沸点以下という穏やかな条件で、安全且つ短時間でステアリン酸アミドを主成分とする増感剤微粒子分散体を製造する方法、前記製造方法で得られた増感剤微粒子分散体、前記増感剤微粒子分散体を用いた感熱記録層用混合分散体組成物、及び前記混合分散体組成物を用いた感熱記録体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<ステアリン酸アミドを主成分とする感熱記録体用増感剤微粒子分散体の製造方法>
本発明に係るステアリン酸アミドを主成分とする感熱記録体用増感剤微粒子分散体(以下、「増感剤微粒子分散体」と略記することがある)の製造方法は、ステアリン酸アミドと、1,2−ビス(フェノキシ)エタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシ)エタン、p−ベンジルビフェニル、シュウ酸ジ−p−メチルベンジル、β−ナフチルベンジルエーテル及びジフェニルスルホンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、ステアリン酸アミド以外のその他の増感剤(以下、「その他の増感剤」と略記することがある)とを、95:5〜51:49の質量部割合で混合し、得られた混合物を乳化剤分散水中で加熱混融することで、前記ステアリン酸アミド及びその他の増感剤を一体化並びに乳化微粒子化させるか、又は前記混合物を加熱混融して、前記ステアリン酸アミド及びその他の増感剤を一体化させた混融体を乳化剤分散水中で乳化微粒子化させ、得られた乳化分散体を急冷して前記乳化微粒子から増感剤微粒子を結晶化させることを特徴とする。
本実施形態においては、上記のような、増感剤の一体化及び乳化微粒子化、並びに前記乳化分散体の急冷による増感剤微粒子の結晶化が、特に重要な構成となる。
【0021】
ステアリン酸アミドは増感剤であり、その融点は102℃であるが、本実施形態においては、増感剤としてステアリン酸アミドと、前記その他の増感剤とを併用することで、これらが混融し一体化された増感剤は、融点降下によって融点が低下し、大気圧(0.1MPa)下で、水の沸点以下という穏やかな条件でも、乳化微粒子化が可能となる。そして、このような乳化微粒子を含む乳化分散体を急冷することで、平均粒子径が十分に小さい、ステアリン酸アミドを主成分とする増感剤微粒子の結晶が得られる。本実施形態によれば、高圧(例えば、20MPa)処理を必要とせず、法的メンテナンス義務を伴わずに、安全且つ短時間で増感剤微粒子分散体が得られる。
【0022】
前記その他の増感剤は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0023】
ステアリン酸アミド及び前記その他の増感剤の融点(mp)を以下に示す。
ステアリン酸アミド(mp102℃)、1,2−ビス(フェノキシ)エタン(mp96℃)、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン(mp98℃)、1,2−ビス(4−メチルフェノキシ)エタン(mp125℃)、p−ベンジルビフェニル(mp86℃)、シュウ酸ジ−p−メチルベンジル(mp103℃)、β−ナフチルベンジルエーテル(mp101℃)、ジフェニルスルホン(mp123℃)
【0024】
ステアリン酸アミドと、前記その他の増感剤とを併用することで、これらが混融し一体化された増感剤の融点の例を以下に示す。
ステアリン酸アミド70質量部に1,2−ビス(フェノキシ)エタン30質量部が混融し、結晶化した場合のこの結晶の融点は、94.2℃である。
ステアリン酸アミド70質量部に1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン30質量部が混融し、結晶化した場合のこの結晶の融点は、95.5℃である。
ステアリン酸アミド80質量部に1,2−ビス(4−メチルフェノキシ)エタン20質量部が混融し、結晶化した場合のこの結晶の融点は、99.9℃である。
ステアリン酸アミド90質量部にp−ベンジルビフェニル10質量部が混融し、結晶化した場合のこの結晶の融点は、99.4℃である。
ステアリン酸アミド70質量部にシュウ酸ジーp−メチルベンジル30質量部が混融し、結晶化した場合のこの結晶の融点は、97.8℃である。
ステアリン酸アミド70質量部にβ−ナフチルベンジルエーテル30質量部が混融し、結晶化した場合のこの結晶の融点は、95.8℃である。
ステアリン酸アミド70質量部にジフェニルスルホン30質量部が混融し、結晶化した場合のこの結晶の融点は、98.9℃である。
このように、ステアリン酸アミドの融点(102℃)は、前記その他の増感剤類との混融で100℃以下に低下させることができる。
【0025】
本実施形態においては、増感剤の主成分であるステアリン酸アミドと、増感剤の従成分である前記その他の増感剤とを、[ステアリン酸アミド]:[その他の増感剤]=95:5〜51:49の質量部割合で混合する。その他の増感剤の前記混合割合が5質量部未満の場合には、一体化された増感剤の融点を100℃以下にすることができない。また、その他の増感剤の前記混合割合が49質量部より大きい場合には、一体化された増感剤において、ステアリン酸アミドを用いたことによる十分な特性が得られない。
【0026】
本実施形態においては、前記質量部割合で混合し、得られた混合物を乳化剤分散水中で加熱混融して、ステアリン酸アミド及び前記その他の増感剤を一体化並びに乳化微粒子化させることで、乳化分散体が得られる。また、本実施形態においては、前記質量部割合で混合し、得られた混合物をさらに加熱混融して、ステアリン酸アミド及び前記その他の増感剤を一体化させた混融体を、乳化剤分散水中で乳化微粒子化させることでも、乳化分散体が得られる。前記混融体を乳化剤分散水中で乳化微粒子化させる場合には、乳化剤分散水の温度が十分に高ければ、前記混融体は直ちに乳化微粒子化する。一方、乳化剤分散水の温度が所定の温度よりも低い場合には、前記混融体は乳化剤分散水中で結晶化するものの、このような状態の乳化剤分散水を加熱して、前記結晶を再度加熱混融すれば、乳化分散体が得られる。
なお、本明細書において、「混融」とは、特に断りのない限り、混合した状態で融解することを意味する。また、「一体化」とは、前記混融体が分子レベルで均一に混じり合っている状態を意味する。
【0027】
本実施系においては、ステアリン酸アミド及び前記その他の増感剤を乳化剤分散水中で一体化並びに乳化微粒子化させる場合、大気圧(0.1MPa)下、水の沸点以下という条件で加熱混融するが、加熱混融は他の圧力条件、例えば、大気圧(常圧)よりも高い圧力(例えば、0.1MPaよりも高く1MPa未満の圧力)下で行ってもよい。ただし、高圧処理を避けることで、難易度が高くなく、且つ安全な条件で行える点から、大気圧(0.1MPa)下、水の沸点(100℃)以下で加熱混融することが好ましい。
【0028】
本実施形態で得られる増感剤微粒子分散体中の増感剤微粒子は、実施例でも具体的に記載するように、例えば、平均粒子径が1.0〜1.5μmのものを用いても、後述する感熱記録体においては、ステアリン酸アミドからなる平均粒子径が0.5μm程度の、平均粒子径がより小さい従来の増感剤微粒子を用いた場合と同等以上の発色感度が得られる。
その理由は定かではないが、加熱混融することにより、ステアリン酸アミド及び前記その他の増感剤が分子レベルで一体化し、その乳化微粒子は個々に融点降下の作用により、より低温での溶解性に優れたものとなり、増感剤としての機能、すなわち、染料及び顕色剤が瞬時に相互溶解し易くなるようにするという、溶媒としての機能が向上するからではないかと推察される。
【0029】
本実施形態においては、感熱記録体での発色感度がより向上することから、増感剤微粒子分散体中の増感剤微粒子の平均粒子径は1.0μm以下であることは好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、「累積粒度分布曲線において、50%累積時の微小粒子側から見た粒子径」、すなわち「D50」を意味するものものとする。
【0030】
前記乳化剤分散水は、前記乳化微粒子化に用いるものであり、乳化分散剤及び水を混合して得られる。
【0031】
前記乳化分散剤は公知のものでよく、好ましいものとしては、ポリスルホン酸塩、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルアルコール(各種のケン化度、pH、重合度のもので、各種の変性方法で得られたもの)、アルキル硫酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル等が例示できる。
前記乳化分散剤は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0032】
前記乳化分散剤の使用量は、増感剤の総量(ステアリン酸アミド及び前記その他の増感剤の合計量)に対して、0.01〜16質量%であることが好ましく、0.05〜8質量%であることがより好ましい。乳化分散剤の前記使用量が前記下限値以上であることで、十分に乳化分散され、乳化分散剤の前記使用量が前記上限値以下であることで、前記混合分散体の泡立ちが抑制され、感熱記録体の耐水性が向上する。
【0033】
ステアリン酸アミド及び前記その他の増感剤を混合して得られた混合物、又は前記混合物を加熱混融して得られた前記混融体と、乳化剤分散水と、の混合分散体の固形分濃度は、10〜50質量%であることが好ましい。前記固形分濃度が10質量%以上であることで、処理効率が向上して経済的に有利であり、前記固形分濃度が50質量%以下であることで、乳化系での転相が抑制される。
【0034】
前記増感剤の一体化並びに乳化微粒子化に用いる装置としては、(1)ホモミキサー型、櫛歯型又は断続ジェット流発生型の高速回転型乳化装置、(2)コロイドミル型乳化装置、(3)高速乳化装置、(4)ロールミル型乳化装置、(5)超音波式乳化装置、(6)膜式乳化装置、これら装置の二以上の組み合わせ等が例示できる。
【0035】
前記増感剤の乳化微粒子化で得られた前記乳化微粒子は、平均粒子径が3.0μm以下であることが好ましく、1.5μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましい。乳化微粒子の平均粒子径が前記上限値以下であることで、十分な作用を有する増感剤微粒子が得られ、前記平均粒子径が小さいほど、感熱記録体での発色感度の向上効果が高い増感剤微粒子が得られる。
【0036】
前記増感剤を乳化微粒子化させる場合には、各成分の混合順序を限定せずに、例えば、ステアリン酸アミド、前記その他の増感剤、乳化分散剤及び水を、同時に又は任意の順序で添加して混合し、ステアリン酸アミド及び前記その他の増感剤を加熱混融してもよく、このような混合方法でも、本発明の効果が得られる。ただし、本発明の効果がより顕著に得られる点から、ステアリン酸アミド及び前記その他の増感剤の混合物を乳化剤分散水中で加熱混融して乳化微粒子化させるか、又は前記混合物を加熱混融して一体化させた混融体を乳化剤分散水中で乳化微粒子化させることが好ましい。
【0037】
本実施形態においては、前記乳化分散体を急冷することにより、前記乳化微粒子から増感剤微粒子が結晶化するが、このとき乳化状態が破壊されずに流動性が良好な増感剤微粒子分散体が得られる。そして、このようにして得られた増感剤微粒子分散体は、長期間の保管・貯蔵安定性に優れる。
これに対して、前記乳化分散体を急冷以外の形態で冷却した場合には、増感剤粒子が、例えば最大径が数十μmにも及ぶような巨大な結晶化物に成長し、増感剤としての機能を十分に発揮し得ないものとなり、さらに、保管・貯蔵安定性にも欠けるものとなってしまう。
【0038】
前記乳化分散体の急冷時における冷却速度は、3℃/分以上であることが好ましく、6℃/分以上であることがより好ましく、10℃/分以上であることが特に好ましい。なお、本明細書において、例えば、「冷却速度が3℃/分以上である」とは、温度が毎分3℃以上の割合(例えば、毎分4℃等の割合)で下がることを意味する。
【0039】
前記乳化分散体は、他の成分と混合せずに急冷してもよいし、他の成分と混合して急冷してもよく、他の成分と混合する場合、冷却した他の成分と混合することで乳化分散体を急冷してもよい。乳化分散体は、十分に冷却した他の成分との接触で瞬時に冷却され、他の成分と混合せずに急冷した場合と同様に急冷される。
前記他の成分は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、好ましいものとしては、水(氷を含む)、乳化分散剤、前記乳化分散体等が例示できる。
前記他の成分は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよく、冷水、氷水、又はこれらと前記乳化分散体とを混合してなる乳化剤分散水であることが好ましい。
冷媒等を用いて乳化分散体を急冷する場合には、公知の方法を適用すればよく、例えば、乳化分散体が通過する経路に熱交換器を備えた装置で急冷すればよい。
【0040】
<ステアリン酸アミドを主成分とする感熱記録体用増感剤微粒子分散体>
本発明に係るステアリン酸アミドを主成分とする感熱記録体用増感剤微粒子分散体(増感剤微粒子分散体)は、上記の本発明に係る製造方法で得られたことを特徴とする。
前記増感剤微粒子分散体中の増感剤微粒子は、平均粒子径が1.8μm以下であることが好ましく、1.6μm以下であることがより好ましく、このような範囲であることにより、感熱記録体での発色感度がより向上する。前記増感剤微粒子の平均粒子径の下限値は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0041】
前記増感剤微粒子分散体中の増感剤微粒子は、ステアリン酸アミド及び前記その他の増感剤が加熱混融によって一体化されていることにより、例えば、ステアリン酸アミド及び前記その他の増感剤の加熱混融を経ていない単なる混合物等、従来の増感剤微粒子とは異なるものである。例えば、示差走査熱量測定(DSC)を行った場合に、本発明における増感剤微粒子では、融点を示す主たるピークが1本しか観測されないのに対し、上記の単なる混合物である増感剤微粒子では、一般的に融点を示す主たるピークが2本以上、典型的には構成成分の数に応じた本数だけ観測されるか、又はこれら複数のピークが重なったと考えられる幅広いピークが観測される。
【0042】
<感熱記録層用混合分散体組成物>
本発明に係る感熱記録層用混合分散体組成物(以下、「混合分散体組成物」と略記することがある)は、上記の本発明に係る増感剤微粒子分散体と、感熱記録体用染料(以下、「染料」と略記することがある)と、感熱記録体用顕色剤(以下、「顕色剤」と略記することがある)と、が混合されてなることを特徴とする。
【0043】
前記染料は後述するロイコ染料であり、公知のものでよく、微粒子であることが好ましく、このようなものとしては、湿式粉砕されたものが例示できる。
前記顕色剤は公知のものでよく、微粒子であることが好ましく、このようなものとしては、湿式粉砕されたものが例示できる。
【0044】
前記染料及び顕色剤を微粒子化するための微粒子化粉砕機としては、サンドグラインダー(サンドミル)が例示できる。
【0045】
湿式粉砕機で前記染料及び顕色剤を分散微粒子化する方法としては、染料及び顕色剤をそれぞれ別々に湿式粉砕する方法、前記増感剤微粒子分散体及び染料を混合して湿式粉砕する方法、前記増感剤微粒子分散体及び顕色剤を混合して湿式粉砕する方法が例示できる。
【0046】
すなわち、本発明に係る混合分散体組成物で好ましいものとしては、前記増感剤微粒子分散体と、前記染料と、を混合及び湿式粉砕して得られた第一の混合分散体、並びに前記顕色剤の湿式粉砕分散体が混合されてなるものが挙げられる。
【0047】
また、本発明に係る混合分散体組成物で好ましいものとしては、前記増感剤微粒子分散体と、前記顕色剤と、を混合及び湿式粉砕して得られた第二の混合分散体、並びに前記染料の湿式粉砕分散体が混合されてなるものが挙げられる。
【0048】
また、本発明に係る混合分散体組成物で好ましいものとしては、前記第一の混合分散体及び第二の混合分散体が混合されてなるものが挙げられる。
【0049】
前記染料で好ましいものとしては、フルオラン化合物、インドリルフタリド化合物、ジビニルフタリド化合物、ピリジン化合物、スピロ化合物、フルオレン化合物、トリアリールメタン化合物、ジアリールメタン化合物等が例示でき、より具体的には、3−N,N−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N,N−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N,N−ジアミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N,N−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−(N−イソアミル−N−エチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−p−トリル−N−エチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−イソペンチル−N−エチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N,N−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリドが例示でき、これらは、前記増感剤及び顕色剤と組み合わせて用いた場合の発色性が特に優れている。
前記染料は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0050】
前記混合分散体組成物において、前記染料の使用量は、前記増感剤(ステアリン酸アミド及び前記その他の増感剤)の使用量100質量部に対して、10〜500質量部であることが好ましく、20〜400質量部であることがより好ましく、30〜200質量部であることが特に好ましい。
染料の使用量が前記下限値以上であることで、感熱記録体において発色感度がより向上し、染料の使用量が前記上限値以下であることで、過剰使用が抑制される。
【0051】
前記顕色剤で好ましいものとしては、フェノール性化合物、スルホン系化合物、イオウ系化合物、窒素系化合物、サリチル酸系化合物等が例示でき、より具体的には、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニルチオエトキシ)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニルチオエチル)エーテル、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、4−ベンジルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−アリルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸及びその亜鉛塩、2,4−ビス(フェニルスルホニル)フェノール、2,4−ビス(フェニルスルホニル)−5−メチルフェノール、4−ヒドロキシベンゼンスルホアニリド、トルエンジイソシアネートとジアミノジフェニルスルホン及びフェノールとの反応混合物、4,4’−ビス(p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)−ジフェニルメタン、p−トルエンスルホニルアミノカルボアニリド、α−α’−ビス{4−(p−ヒドロキシフェニルスルホン)フェノキシ}−p−キシレン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオールの重縮合物と4−ヒドロキシ安息香酸との脱水縮合物、4,4’−{オキシビス(エチレンオキシド−p−フェニレンスルホニル)}ジフェノールが例示でき、これらは、前記増感剤及び染料と組み合わせて用いた場合の発色性が特に優れている。
前記顕色剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0052】
前記混合分散体組成物において、前記顕色剤の使用量は、前記増感剤(ステアリン酸アミド及び前記その他の増感剤)の使用量100質量部に対して、10〜500質量部であることが好ましく、30〜400質量部であることがより好ましく、50〜300質量部であることが特に好ましい。
顕色剤の使用量が前記下限値以上であることで、感熱記録体において発色感度がより向上し、顕色剤の使用量が前記上限値以下であることで、過剰使用が抑制される。
【0053】
本実施形態においては、前記染料及び顕色剤と混合する前記増感剤微粒子分散体は、水等の溶媒で希釈されたものでもよい。この場合、例えば、上述の製造方法で得られた増感剤微粒子分散体を、固形分濃度が好ましくは17〜23質量%、より好ましくは18.5〜21.5質量%となるように希釈するとよい。
また、前記染料若しくは顕色剤と混合する第一の混合分散体又は第二の混合分散体も、水等の溶媒で希釈されたものでもよい。この場合、例えば、上述の方法で得られた第一の混合分散体又は第二の混合分散体を、固形分濃度が好ましくは10〜45質量%、より好ましくは15〜42質量%となるように希釈するとよい。
【0054】
本発明に係る混合分散体組成物はいずれも、前記増感剤微粒子分散体、染料及び顕色剤以外に、他の成分が混合されてなるものでもよい。
混合分散体組成物における前記他の成分としては、顔料、接着剤、耐光性改良剤、耐水性改良剤、金属セッケン、ワックス、界面活性剤、消泡剤、分散剤等が例示できる。
【0055】
前記顔料は、記録ヘッドヘのカスの付着を抑制し、混合分散体組成物を用いて形成される、感熱記録体上の感熱記録層の白色度をより向上させる等の目的で使用され、公知のものでよく、カオリン、シリカ、非晶質シリカ、焼成カオリン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、硫酸バリウム及び合成ケイ酸アルミニウム等の無機系微粉末;スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂及び尿素−ホルマリン樹脂等の有機系樹脂微粉末等が例示できる。
前記顔料は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0056】
前記混合分散体組成物において、前記顔料の使用量は、前記染料の使用量100質量部に対して、10〜2000質量部であることが好ましく、20〜1000質量部であることがより好ましい。
顔料の使用量が前記下限値以上であることで、顔料を用いたことによる効果がより顕著に得られ、顔料の使用量が前記上限値以下であることで、感熱記録体において発色感度がより向上する。
【0057】
前記接着剤としては、水溶性樹脂及び水分散性樹脂のいずれも使用でき、より具体的には、完全(又は部分)ケン化ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、ケイ素変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、スルホン酸基変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、澱粉及びその誘導体、アラビアゴム、ゼラチン、カゼイン、キトサン、メチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、スチレン−アクリル酸共重合体の塩、スチレン−無水マレイン酸共重合体の塩、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体の塩、イソプロピレン−無水マレイン酸共重合体の塩等の水溶性樹脂;
酢酸ビニル系ラテックス、アクリル酸エステル共重合系ラテックス、メタクリル酸エステル共重合系ラテックス、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合系ラテックス、ポリウレタン系ラテックス、ポリ塩化ビニル系ラテックス、ポリ塩化ビニリデン系ラテックス、スチレン−ブタジエン系ラテックス等の水分散性樹脂が例示できる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を含む概念とする。
前記接着剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0058】
前記混合分散体組成物において、前記接着剤の使用量は、感熱記録層における固形分の総量に対して、2〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
接着剤の使用量が前記下限値以上であることで、接着剤を用いたことによる効果がより顕著に得られ、接着剤の使用量が前記上限値以下であることで、感熱記録体において発色感度がより向上する。
【0059】
前記金属セッケン及びワックスは、感熱記録体が記録機器や記録ヘッドとの接触によってスティッキングを生じないようにする目的で使用され、公知のものでよく、ステアリン酸亜塩、ステアリン酸カウシウム及びステアリン酸アルミニウム等の高級脂肪酸金属塩;キャンデリリラワックス、ライスワックス、木ろう、みつろう、ラノリン、モンタンワックス、カルナバワックス、セレシンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、牛脂及び椰子油等の天然ワックス;ポリエチレンワックス、ステアリン酸等の誘導体;フィシャー・トロプシュワックス等が例示できる。
前記金属セッケン及びワックスは、いずれも、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0060】
前記界面活性剤は、公知のものでよく、スルホコハク酸のアルカリ金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、ラウリルアルコール硫酸エステルのナトリウム塩等が例示できる。
前記界面活性剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0061】
前記消泡剤は、公知のものでよく、高級アルコール系、脂肪酸エステル系、オイル系、シリコーン系、ポリエーテル系、変性炭化水素油系、パラフィン系等の各種消泡剤が例示できる。
前記消泡剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0062】
前記混合分散体組成物における前記分散剤は、公知のものでよく、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(各種のケン化度、pH、重合度のもの)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリルアミド、デンプン、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアンモニウム塩等が例示できる。
前記混合分散体組成物における前記分散剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0063】
前記耐水性改良剤は、公知のものでよく、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4−ベンジルオキシ−4’−2,3−プロポキシ−ジフェニルスルホン等が例示できる。
前記耐水性改良剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0064】
前記耐光性改良剤は、公知のものでよく、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が例示でき、より具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、マイクロカプセル化された2−(2−ヒドロキシ−3−ドデシル−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が例示できる。
前記耐光性改良剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0065】
<感熱記録体>
本発明に係る感熱記録体は、上記の本発明に係る混合分散体組成物を支持体上に塗布して形成された感熱記録層を備えたことを特徴とする。塗布した混合分散体組成物は、通常は、引き続き乾燥される。
【0066】
前記支持体は、公知のものでよく、合成紙;中性紙、酸性紙等の合成紙以外の紙;プラスチックシート;不織布等が例示できる。
【0067】
混合分散体組成物を支持体上に塗布する方法としては、エアナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター、カーテンコーター又はワイヤーバー等の各種塗布装置を用いる方法が例示できる。
【0068】
前記混合分散体組成物の支持体上への塗布量は、感熱記録体の種類にもよるが、乾燥後の塗布量(固形分量)が2.0〜10.0g/mとなるようにすることが好ましい。
【0069】
前記感熱記録体は、発色感度を高めるために、感熱記録層と支持体との間に、さらに下塗り層(中間層)を備えていてもよい。
前記下塗り層としては、主として顔料又は有機中空粒子及び接着剤からなるものが例示できる。
【0070】
前記下塗り層における顔料としては、吸油量の大きいものが好ましく、焼成カオリン、炭酸マグネシウム、無定型シリカ、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、その他の多孔質顔料等が例示できる。
前記有機中空粒子としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル及びスチレン等のいずれかの単量体の単独重合体又は共重合体が例示できる。
【0071】
前記下塗り層における接着剤としては、ゼラチン、カゼイン、デンプン及びその誘導体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メトキシセルロース、完全(又は部分)ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ケイ素変性ポリビニルアルコール、アクリルアミド−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等の水溶性高分子;スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル系樹脂等の疎水性高分子が例示できる。
【0072】
前記下塗り層の形成方法は、特に限定されず、例えば、上述の感熱記録層の形成方法と同様でもよい。
【0073】
前記感熱記録体は、擦れ、引っかき等による目的外の発色、及び可塑剤による発色記録の消失を抑制するために、感熱記録層上に保護層を備えていてもよい。
前記保護層としては、成膜性を有する接着剤、顔料等を主成分とし、任意成分として紫外線吸収剤を内包したマイクロカプセル、微細化された紫外線吸収剤等を含有するものが例示でき、このような保護層を備えることで、光による地肌部の黄変や発色記録の褪色が著しく抑制される。前記保護層には、任意成分として上記のもの以外にも、蛍光染料、滑剤、着色剤等を含有させてもよい。
前記保護層としては、印刷適性、朱肉適性、筆記適性等を向上させるものも例示できる。
【0074】
成膜性を有する前記接着剤としては、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ケイ素変性ポリビニルアルコール及びジアセトン変性ポリビニルアルコール等が例示できる。
このような接着剤を用いて保護層を形成す場合には、保護層の耐水性をより高めるために、さらに架橋剤を用いることが好ましい。前記架橋剤としては、グリオキサール、ジアルデヒド澱粉等のジアルデヒド系化合物;ポリエチレンイミン等のポリアミン系化合物;エポキシ系化合物;ポリアミド樹脂;メラミン樹脂;ホウ酸;ホウ砂;塩化マグネシウム等が例示できる。
【0075】
前記保護層における顔料及び紫外線吸収剤としては、前記混合分散体組成物における顔料及び紫外線吸収剤と同様のものが例示できる。
【0076】
前記保護層における前記接着剤、顔料、紫外線吸収剤、蛍光染料、滑剤、着色剤等の各成分は、いずれも、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0077】
前記保護層の形成方法は、特に限定されず、例えば、上述の感熱記録層の形成方法と同様でもよい。
前記保護層を形成するための組成物の塗布量は、乾燥後の塗布量(固形分量)が0.5〜15g/mとなるようにすることが好ましく、1〜8g/mとなるようにすることがより好ましい。前記塗布量が0.5g/m以下では、保護層としての機能が発揮されず、一方、前記塗布量が15g/m以上では、感熱記録体において発色感度が低下するからである。
【0078】
前記感熱記録体は、前記保護層上に、光沢性を向上させる等の目的で、水溶性、水分散性、電子線硬化性又は紫外線硬化性の樹脂を含む層を備えていてもよい。
【0079】
前記感熱記録体は、支持体の裏面側(感熱記録層を備えていない側)に、上記と同様の保護層を備えていてもよいし、天然ゴム系粘着剤、アクリル樹脂系粘着剤、スチレンイソプレンブロックコポリマー又は二液架橋型アクリル樹脂系粘着剤を主成分とする粘着層を備え、粘着紙の構成とされたものでもよい。
【0080】
前記感熱記録体は、前記粘着層を備える場合、保存性を高める目的で、支持体と粘着層との間に、さらに障壁層を備えていてもよい。
【0081】
前記感熱記録体は、感熱・磁気記録体とするために、支持体の裏面側に磁気記録層を備えていてもよい。
【0082】
前記感熱記録体は、各層の形成後にスーパーカレンダー掛け等の平滑化処理が施されていてもよい。
【実施例】
【0083】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0084】
<増感剤微粒子分散体の製造>
[実施例1]
攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えた1000mlのSUS製セパラブルフラスコに、1,2−ビス(フェノキシ)エタン(19.5質量部)及びステアリン酸アミド(花王社製「脂肪酸アマイドS」)(45.5質量部)を仕込み、98℃で加熱混融して一体化させた。得られた混融体の全量に、さらに、ポリビニルアルコール(クラレ社製「PVA217EE」)の10質量%水溶液(59.8質量部)、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(花王社製「ペレックスTR」、濃度70質量%)(0.46質量部)及び水(134.7質量部)を添加し、98℃までセパラブルフラスコの温度を昇温させ、98℃で5分間攪拌(700rpm)を続けた後、前記セパラブルフラスコを取り外し、これに特殊機化工業社製「T.K.HOMOMIXER」を取り付け、高温での乳化中にセパラブルフラスコ内容物からの蒸気の逃げを出来るだけ抑えるために、ポリテトラフルオロエチレン製の板で蓋をし、99〜100℃、回転数10000rpmで1.5分間乳化して、乳化分散体を得た。
次いで、攪拌機を備えた1000mlの釜に、氷(30質量部)、水(10質量部)、ポリビニルアルコール(クラレ社製「PVA217EE」)の10質量%水溶液(0.2質量部)を入れ、釜を氷水で冷却した状態とし、この釜の内容物を攪拌しながらその温度が30℃以下になるように注意して、温度が98℃の前記乳化分散体を全量、釜内に注入した。この間、注入された前記乳化分散体の冷却速度は、10℃/分以上の条件を満たしていた。注入後、釜の内容物の温度が30℃以下となるように、さらに2時間攪拌を続け、増感剤微粒子の結晶化を完結させた。
次いで、試験篩い器(目開き20μm)で篩別したが、網の目上には、殆ど固形物は残らなかった。
以上により、流動性が良好な、ステアリン酸アミドを主成分とする増感剤微粒子分散体が得られた(取り出し量280質量部、固形分濃度23.5質量%)。この増感剤微粒子分散体において、増感剤微粒子の平均粒子径は1.5μmであった。
【0085】
[実施例2]
攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えた1000mlのSUS製セパラブルフラスコに、1,2−ビス(フェノキシ)エタン(24質量部)及びステアリン酸アミド(花王社製「脂肪酸アマイドS」)(56質量部)を仕込み、98℃で加熱混融して一体化させた。得られた混融体の全量に、さらに、ポリビニルアルコール(クラレ社製「PVA205」)の10質量%水溶液(73.6質量部)、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(花王社製「ペレックスTR」、濃度70質量%)(1.14質量部)及び(水91.36質量部)を添加し、98℃までセパラブルフラスコの温度を昇温させ、98℃で5分間攪拌(700rpm)を続けた後、前記セパラブルフラスコを取り外し、これに特殊機化工業社製「T.K.HOMOMIXER」を取り付け、高温での乳化中にセパラブルフラスコ内容物からの蒸気の逃げを出来るだけ抑えるために、ポリテトラフルオロエチレン製の板で蓋をし、99〜100℃、回転数14,000rpmで1.5分間乳化して、乳化分散体を得た。
次いで、攪拌機を備えた1000mlの釜に氷(30質量部)、水(10質量部)、ポリビニルアルコール(クラレ社製「PVA205」)の10質量%水溶液(0.2質量部)を入れ、釜を氷水で冷却した状態とし、この釜の内容物を攪拌しながらその温度が30℃以下になるように注意して、温度が99〜100℃の前記乳化分散体を全量、釜内に注入した。この間、注入された前記乳化分散体の冷却速度は、10℃/分以上の条件を満たしていた。注入後、釜の内容物の温度が30℃以下となるように、さらに2時間攪拌を続け、増感剤微粒子の結晶化を完結させた。
次いで、試験篩い器(目開き20μm)で篩別したが、網の目上には、殆ど固形物は残らなかった。
以上により、流動性が良好な、ステアリン酸アミドを主成分とする増感剤微粒子分散体が得られた(取り出し量270質量部、固形分濃度30.4質量%)。この増感剤微粒子分散体において、増感剤微粒子の平均粒子径は0.8μmであった。
【0086】
[実施例3〜8]
ステアリン酸アミドと混合するその他の増感剤の種類とその使用量を、表1に示すとおりとした点以外は、実施例2と同様の方法で、増感剤微粒子分散体を製造した。混融一体化した増感剤の融点を表1に示す。また、得られた増感剤微粒子分散体の流動性、取り出し量及び固形分濃度、並びに増感剤微粒子の平均粒子径を表2に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
<増感剤混融体の製造>
[比較例1]
ステアリン酸アミド(花王社製「脂肪酸アマイドS」)(70質量部)に1,2−ビス(フェノキシ)エタン(30質量部)を添加し、100℃まで加熱混融した後、冷却して、加熱混融物を固化させ、乳鉢を用いてこれを粉砕することで、増感剤混融体を得た。
次いで、サンドグラインダー(イガラシ機械製造社製「TSG4H型」)の400mlポットに、得られた増感剤混融体(10質量部)、ポリビニルアルコール(クラレ社製「PVA205」)の10質量%水溶液(2質量部)、セルロースエーテル(ダウ社製「メトセルE3」)の10質量%水溶液(2質量部)、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(花王社製「ペレックスTR」、濃度70質量%)(0.07質量部)、消泡剤(サンノプコ社製「ノプコ1407−K」)の5質量%水溶液(0.2質量部)、及び水(19質量部)を仕込み、スパチュラで粉をよく分散水に浸透させた後、2時間放置した。
次いで、ポットにガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ社製「EGB501MM(ガラスビーズ径0.85〜1.18mm)」)(70質量部)を仕込み、三段羽根を設置し、回転数を1050rpmとして、ポットジャケットに20℃の水を循環させながら内容物の粉砕を開始した。粉砕開始から1時間後、粒径測定装置(島津製作所社製「SALD−2000J」)を使用して、分散体中の増感剤微粒子の粒子径を測定し、その平均粒子径が7μmであることを確認した。しかし、このまま粉砕を継続したところ、粉砕開始から2時間後に分散体は流動性がなくなり、ムース状となってしまった。
このように、本発明とは異なる方法では、ステアリン酸アミドを主成分とする増感剤微粒子分散体を製造できなかった。
【0090】
[比較例2]
攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えた1000mlのSUS製セパラブルフラスコに、1,2−ビス(フェノキシ)エタン(24質量部)及びステアリン酸アミド(花王社製「脂肪酸アマイドS」)(56質量部)を仕込み、98℃で加熱混融して一体化させた。得られた混融体の全量に、さらに、ポリビニルアルコール(クラレ社製「PVA205」)の10質量%水溶液(73.6質量部)、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(花王社製「ペレックスTR」、濃度70質量%)(1.14質量部)及び水(91.36質量部)を添加し、98℃までセパラブルフラスコの温度を昇温させ、98℃で5分間攪拌(700rpm)を続けた後、前記セパラブルフラスコを取り外し、これに特殊機化工業社製「T.K.HOMOMIXER」を取り付け、高温での乳化中にセパラブルフラスコ内容物からの蒸気の逃げを出来るだけ抑えるために、ポリテトラフルオロエチレン製の板で蓋をし、99〜100℃、回転数14000rpmで1.5分間乳化して、乳化分散体を得た。
次いで、攪拌機を備えた1000mlの釜に、水(40質量部)、ポリビニルアルコール(クラレ社製「PVA205」)の10質量%水溶液(0.2質量部)を入れ、釜を冷却せずに、この釜の内容物を攪拌しながら温度が98℃の前記乳化分散体を釜内に注入した。すると、釜を冷却していなかったため、釜の内容物は温度が65℃に上昇し、やがてムース状となり、撹拌不能となった。このときの前記内容物を顕微鏡(オリンパス社製「BH−2」、倍率1000倍)で観察したところ、針状の巨大結晶が見られ、粒子径が1μm程度の球状物は殆ど観察されず、乳化状態が破壊されていた。この内容物の固形分濃度は30.5質量%であった。
このように、乳化分散体を急冷しなかったことにより、ステアリン酸アミドを主成分とする増感剤微粒子分散体を製造できなかった。
【0091】
<第二の混合分散体の製造>
[製造例1]
実施例2で得られた増感剤微粒子分散体(110質量部)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(67質量部)、水(73質量部)、及び消泡剤(サンノプコ社製「ノプコ1407−K」)の5質量%水溶液(0.5質量部)を、サンドグラインダー(イガラシ機械製造社製「TSG4H型」)の1000mlポットに仕込み、スパチュラで粉をよく分散水に浸透させた後、2時間放置した。
次いで、ポットにガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ社製「EGB501MM(ガラスビーズ径0.85〜1.18mm)」)(500質量部)を仕込み、三段羽根を設置し、回転数を1000rpmとして、ポットジャケットに20℃の水を循環させながら内容物の粉砕を開始した。粒径測定装置(島津製作所社製「SALD−2000J」)を使用して、分散体中の第二の微粒子の粒子径を経時的に測定し、粉砕開始から45分後において、その平均粒子径が1.0μmであることを確認した。
ここで、試験篩い器(目開き20μm)でこの分散体を篩別し、第二の混合分散体を得た(取り出し量140質量部、固形分濃度40.5質量%)。この第二の混合分散体において、第二の微粒子の平均粒子径は1.0μmであった。
【0092】
[製造例2]
実施例2で得られた増感剤微粒子分散体(55質量部)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(67質量部)、水(128質量部)、及び消泡剤(サンノプコ社製「ノプコ1407−K」)の5質量%水溶液(0.5質量部)を、サンドグラインダー(イガラシ機械製造社製「TSG4H型」)の1000mlポットに仕込み、スパチュラで粉をよく分散水に浸透させた後、2時間放置した。
次いで、ポットにガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ社製「EGB501MM(ガラスビーズ径0.85〜1.18mm)」)(500質量部)を仕込み、三段羽根を設置し、回転数を1000rpmとして、ポットジャケットに20℃の水を循環させながら内容物の粉砕を開始した。粒径測定装置(島津製作所社製「SALD−2000J」)を使用して、分散体中の第二の微粒子の粒子径を経時的に測定し、粉砕開始から45分後において、その平均粒子径が1.0μmであることを確認した。
ここで、試験篩い器(目開き20μm)でこの分散体を篩別し、第二の混合分散体を得た(取り出し量145質量部、固形分濃度33.5質量%)。この第二の混合分散体において、第二の微粒子の平均粒子径は1.0μmであった。
【0093】
<第一の混合分散体の製造>
[製造例3]
実施例2で得られた増感剤微粒子分散体(164.5質量部)、3−N,N−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン(50質量部)、水(35.5質量部)、及び消泡剤(サンノプコ社製「ノプコ1407−K」)の5質量%水溶液(0.5質量部)を、サンドグラインダー(イガラシ機械製造社製「TSG4H型」)の1000mlポットに仕込み、スパチュラで粉をよく分散水に浸透させた後、2時間放置した。
次いで、ポットにガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ社製「EGB501MM(ガラスビーズ径0.85〜1.18mm)」)(500質量部)を仕込み、三段羽根を設置し、回転数を1000rpmとして、ポットジャケットに20℃の水を循環させながら内容物の粉砕を開始した。粒径測定装置(島津製作所社製「SALD−2000J」)を使用して、分散体中の第一の微粒子の粒子径を経時的に測定し、粉砕開始から45分後において、その平均粒子径が1.0μmであることを確認した。
ここで、試験篩い器(目開き20μm)でこの分散体を篩別し、第一の混合分散体を得た(取り出し量145質量部、固形分濃度40.4質量%)。この第一の混合分散体において、第一の微粒子の平均粒子径は1.0μmであった。
【0094】
[製造例4]
実施例2で得られた増感剤微粒子分散体(82.3質量部)、3−N,N−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン(50質量部)、水(117.7質量部)、及び消泡剤(サンノプコ社製「ノプコ1407−K」)の5質量%水溶液(0.5質量部)を、サンドグラインダー(イガラシ機械製造社製「TSG4H型」)の1000mlポットに仕込み、スパチュラで粉をよく分散水に浸透させた後、2時間放置した。
次いで、ポットにガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ社製「EGB501MM(ガラスビーズ径0.85〜1.18mm)」)(500質量部)を仕込み、三段羽根を設置し、回転数を1000rpmとして、ポットジャケットに20℃の水を循環させながら内容物の粉砕を開始した。粒径測定装置(島津製作所社製「SALD−2000J」)を使用して、分散体中の第一の微粒子の粒子径を経時的に測定し、粉砕開始から45分後において、その平均粒子径が1.0μmであることを確認した。
ここで、試験篩い器(目開き20μm)でこの分散体を篩別し、第一の混合分散体を得た(取り出し量150質量部、固形分濃度30.0質量%)。この第一の混合分散体において、第一の微粒子の平均粒子径は1.0μmであった。
【0095】
<染料の湿式粉砕分散体の製造>
[製造例5]
サンドグラインダー(イガラシ機械製造社製「TSG4H型」)を使用して、スルホン変性ポリビニルアルコール(日本合成化学工業社製「ゴーセランL−3266(5質量%水溶液)」)
(45質量部)中で、3−N,N−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン(30質量部)を粉砕し、染料微粒子の平均粒子径が1.0μmである分散体を得た。さらに、これを試験篩い器(目開き20μm)で篩別して、染料の湿式粉砕分散体を得た。
【0096】
<顕色剤の湿式粉砕分散体の製造>
[製造例6]
サンドグラインダー(イガラシ機械製造社製「TSG4H型」)を使用して、セルロースエーテル(ダウ社製「メトセルE3」)の5質量%水溶液(45質量部)中で、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(30質量部)を粉砕し、顕色剤微粒子の平均粒子径が1.0μmである分散体を得た。さらに、これを試験篩い器(目開き20μm)で篩別して、顕色剤の湿式粉砕分散体を得た。
【0097】
<顔料分散液の製造>
[製造例7]
ホモディスパー(特殊機化工業社製「TKホモディスパーL型」)を使用して、 顔料(軽質炭酸カルシウム、白石カルシウム社製「ユニバー70」)
(30質量部)、水(69質量部)、及びヘキサメタリン酸ソーダの40質量%水溶液(1.0質量部)を、回転数5000rpmで5分間攪拌し、顔料分散液を得た。
【0098】
<混合分散体組成物の製造>
[実施例9]
実施例1で得られた増感剤微粒子分散体(16.2質量部)を水(2.8質量部)で希釈し、濃度が20質量%である増感剤分散液(1)を得た。
次いで、前記増感剤分散液(1)(19質量部)、製造例5の染料の湿式粉砕分散体(9.5質量部)、製造例6の顕色剤の湿式粉砕分散体(19質量部)、製造例7の顔料分散液(30質量部)、滑剤分散液であるステアリン酸亜鉛エマルジョン(中京油脂社製「ハイドリンZ−7」(濃度30質量%))(10.6質量部)、及びポリビニルアルコ−ル(クラレ社製「PVA105」)の5質量%水溶液(21.6質量部)を混合して、混合分散体組成物を得た。
【0099】
[実施例10]
実施例2で得られた増感剤微粒子分散体(12.6質量部)を水(6.4質量部)で希釈し、濃度が20質量%である増感剤分散液(2)を得た。
次いで、増感剤分散液(1)(19質量部)に代えて、この増感剤分散液(2)(19質量部)を用いた点以外は、実施例9と同様に混合分散体組成物を得た。
【0100】
[実施例11]
実施例3で得られた増感剤微粒子分散体(12.6質量部)を水(6.4質量部)で希釈し、濃度が20質量%である増感剤分散液(3)を得た。
次いで、増感剤分散液(1)(19質量部)に代えて、この増感剤分散液(3)(19質量部)を用いた点以外は、実施例9と同様に混合分散体組成物を得た。
【0101】
[実施例12]
実施例4で得られた増感剤微粒子分散体(12.6質量部)を水(6.4質量部)で希釈し、濃度が20質量%である増感剤分散液(4)を得た。
次いで、増感剤分散液(1)(19質量部)に代えて、この増感剤分散液(4)(19質量部)を用いた点以外は、実施例9と同様に混合分散体組成物を得た。
【0102】
[実施例13]
実施例5で得られた増感剤微粒子分散体(12.6質量部)を水(6.4質量部)で希釈し、濃度が20質量%である増感剤分散液(5)を得た。
次いで、増感剤分散液(1)(19質量部)に代えて、この増感剤分散液(5)(19質量部)を用いた点以外は、実施例9と同様に混合分散体組成物を得た。
【0103】
[実施例14]
実施例6で得られた増感剤微粒子分散体(12.6質量部)を水(6.4質量部)で希釈し、濃度が20質量%である増感剤分散液(6)を得た。
次いで、増感剤分散液(1)(19質量部)に代えて、この増感剤分散液(6)(19質量部)を用いた点以外は、実施例9と同様に混合分散体組成物を得た。
【0104】
[実施例15]
実施例7で得られた増感剤微粒子分散体(12.6質量部)を水(6.4質量部)で希釈し、濃度が20質量%である増感剤分散液(7)を得た。
次いで、増感剤分散液(1)(19質量部)に代えて、この増感剤分散液(7)(19質量部)を用いた点以外は、実施例9と同様に混合分散体組成物を得た。
【0105】
[実施例16]
実施例8で得られた増感剤微粒子分散体(12.6質量部)を水(6.4質量部)で希釈し、濃度が20質量%である増感剤分散液(8)を得た。
次いで、増感剤分散液(1)(19質量部)に代えて、この増感剤分散液(8)(19質量部)を用いた点以外は、実施例9と同様に混合分散体組成物を得た。
【0106】
[実施例17]
製造例1で得られた第二の混合分散体(28.4質量部)を水(0.1質量部)で希釈し、第二の混合分散液を得た。
次いで、前記第二の混合分散液(28.5質量部)、製造例5の染料の湿式粉砕分散体(9.5質量部)、製造例7の顔料分散液(30質量部)、滑剤分散液であるステアリン酸亜鉛エマルジョン(中京油脂社製「ハイドリンZ−7」(濃度30質量%))(10.6質量部)、及びポリビニルアルコ−ル(クラレ社製「PVA105」)の5質量%水溶液(21.6質量部)を混合して、混合分散体組成物を得た。
【0107】
[実施例18]
製造例3で得られた第一の混合分散体(19質量部)を水(9.5質量部)で希釈し、第一の混合分散液を得た。
次いで、前記第一の混合分散液(28.5質量部)、製造例6の顕色剤の湿式粉砕分散体(19質量部)、製造例7の顔料分散液(30質量部)、滑剤分散液であるステアリン酸亜鉛エマルジョン(中京油脂社製「ハイドリンZ−7」(濃度30質量%))(10.6質量部)、及びポリビニルアルコ−ル(クラレ社製「PVA105」)の5質量%水溶液(21.6質量部)を混合して、混合分散体組成物を得た。
【0108】
[実施例19]
製造例4で得られた第一の混合分散体(19質量部)を水(9.6質量部)で希釈し、第一の混合分散液を得た。
次いで、前記第一の混合分散液(28.6質量部)、製造例2の第二の混合分散体(28.4質量部)、製造例7の顔料分散液(30質量部)、滑剤分散液であるステアリン酸亜鉛エマルジョン(中京油脂社製「ハイドリンZ−7」(濃度30質量%))(10.6質量部)、及びポリビニルアルコ−ル(クラレ社製「PVA105」)の5質量%水溶液(21.6質量部)を混合して、混合分散体組成物を得た。
【0109】
<感熱記録体の製造>
[実施例20]
64g/mの上質の中性紙の片面に、実施例9の混合分散体組成物を、乾燥後の塗布量が5g/mとなるように、ワイヤーバーを用いて塗布し、乾燥させることで感熱記録層を形成し、感熱記録体を得た。この感熱記録体は、最後にスーパーカレンダー処理を行った。
【0110】
[実施例21〜30]
実施例9の混合分散体組成物に代えて、実施例10〜19の混合分散体組成物をそれぞれ用いた点以外は、実施例20と同様に、スーパーカレンダー処理を行った感熱記録体を得た。
【0111】
[比較例3]
1,2−ビス(フェノキシ)エタン分散体(三光社製「KS−235−S」、平均粒子径1.2μm、濃度50質量%)(1.8質量部)、及びステアリン酸アミド分散体(中京油脂社製「ハイミクロンL−271」、平均粒子径0.5μm、濃度25質量%)(8.2質量部)を混合した。さらに、この混合物に水(5.2質量部)を加えて希釈し、濃度が20質量%である混合増感剤分散液を得た。
次いで、増感剤分散液(1)(19質量部)に代えて、上記で得られた混合増感剤分散液(19質量部)を用いた点以外は、実施例9と同様に、比較用の混合分散体組成物を得た。
次いで、実施例9の混合分散体組成物に代えて、上記で得られた比較用の混合分散体組成物を用いた点以外は、実施例20と同様に、スーパーカレンダー処理を行った比較用の感熱記録体を得た。
【0112】
以上、ここまでの工程履歴を表3にまとめて示す。
【0113】
【表3】
【0114】
<感熱記録体の性能評価>
上記の各実施例及び比較例で得られた感熱記録体について、感熱記録体発色試験装置(大倉電気社製「TH−PMD」)を使用し、感熱ヘッド(KYOCERA,TYPE KJT−256−8MGFI−ASH)1653Ωにより、印字電圧24V、印字周期0.9及び1.4msecの条件で印字試験を行い、下記項目について評価した。結果を表4に示す。なお、本明細書において、単位「msec」は「ミリ秒」を意味する。
【0115】
(評価項目)
(1)地肌及び印字濃度
マクベス濃度計(マクベス社製「RD−918型」)を用いて測定した。
(2)耐湿性
感熱記録体を温度40℃、湿度90%の環境下で24時間放置した後の地肌及び印字濃度を、(1)と同じ方法で測定した。
(3)耐熱性
感熱記録体を温度60℃の環境下で、湿度を調節することなく、24時間放置した後の地肌及び印字濃度を、(1)と同じ方法で測定した。
【0116】
【表4】
【0117】
上記結果から明らかなように、実施例20〜30の感熱記録体は、初期の印字濃度が十分に高く、さらに耐湿性及び耐熱性にも優れることが確認された。これら実施例で用いた増感剤微粒子分散体では、ステアリン酸アミドを主成分とする増感剤微粒子が、それぞれの増感剤を単独で微粒子化して用いた場合よりも融点が低下することで、粒子径が大きくても溶解性が高く、優れた発色濃度を示した。また、実施例20及び21の結果から、増感剤微粒子の平均粒子径が小さい方が、耐湿性及び耐熱性により優れることも確認された。
これに対して、比較例3の感熱記録体は、印字濃度が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、感熱記録体に利用可能である。