(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238007
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】クリアランスレジスト用鉛フリーはんだ向けフラックスおよびクリアランスレジスト用鉛フリーはんだペースト
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20171120BHJP
B23K 35/26 20060101ALN20171120BHJP
C22C 13/00 20060101ALN20171120BHJP
C22C 13/02 20060101ALN20171120BHJP
【FI】
B23K35/363 C
B23K35/363 E
!B23K35/26 310A
!C22C13/00
!C22C13/02
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-6250(P2014-6250)
(22)【出願日】2014年1月16日
(65)【公開番号】特開2014-195830(P2014-195830A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年8月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-41341(P2013-41341)
(32)【優先日】2013年3月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久保 夏希
(72)【発明者】
【氏名】石賀 史男
(72)【発明者】
【氏名】坂下 智史
【審査官】
川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−202518(JP,A)
【文献】
特開2005−059028(JP,A)
【文献】
特開平07−144293(JP,A)
【文献】
特開平10−193176(JP,A)
【文献】
特開2009−178752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
B23K 35/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,β不飽和カルボン酸変性ロジン(a1)、ならびに水添ロジンおよび/または不均化ロジン類を含むロジン系ベース樹脂(A)
沸点275℃以下のプロピレングリコール系エーテル(b1)である溶剤(B)ならびに
一般式(1):HOOC−R−COOH(式中、Rは炭素数2〜4の炭化水素基を示す。)で表される二塩基酸(c1)である活性剤(C)を含む、クリアランスレジスト用鉛フリーはんだペースト向けフラックスであって、
フラックス中に(a1)成分を14.9〜50重量%、(b1)成分を20〜70重量%、(c1)成分を3〜15重量%含む、クリアランスレジスト用鉛フリーはんだペースト向けフラックス。
【請求項2】
(a1)成分が水添アクリル酸変性ロジンである、請求項1のフラックス。
【請求項3】
(b1)成分が、メチルプロピレントリグリコール、ブチルプロピレンジグリコール、フェニルプロピレングリコールおよびブチルプロピレントリグリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜2のいずれかのフラックス。
【請求項4】
(c1)成分が、コハク酸、グルタル酸およびアジピン酸ならびにフマル酸およびマレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかのフラックス。
【請求項5】
さらにチキソトロピック剤(D)を含む、請求項1〜4のいずれかのフラックス。
【請求項6】
(D)成分が、ポリアミド系チキソトロピック剤及び/又は動植物系チキソトロピック剤である、請求項5のフラックス。
【請求項7】
さらに酸化防止剤(E)を含む、請求項1〜6のいずれかのフラックス。
【請求項8】
(E)成分がヒンダードフェノール系酸化防止剤である、請求項7のいずれかのフラックス。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかのフラックスと鉛フリーはんだ粉末を含有するクリアランスレジスト用鉛フリーはんだペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリアランスレジスト用鉛フリーはんだ向けフラックスおよびクリアランスレジスト用鉛フリーはんだペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
はんだ用フラックスは、例えばIC、コンデンサ、抵抗などの電子部品をプリント基板等に表面実装する際に用いる材料である。表面実装では、例えばスクリーン印刷やディスペンサーによりプリント基板上にはんだペーストを供給し、その上に電子部品を載置し、ついで当該基板をはんだ金属の融点以上にリフロー等することによって、電子部品が実装基板の電極上に接合される。
【0003】
ところで、現在主流の鉛フリーはんだ(Sn−Ag−Cu系、Sn−Cu系等)は、従前主流であった鉛共晶はんだ(Sn−Pb系等)と比較して融点が高く、酸化し易いため、これを用いたはんだペーストを銅や金、スズなどの基板電極上で溶融させると、電極周囲にソルダボールが多数発生することがある。そこで、斯界ではプリヒート温度を調節したり、窒素雰囲気中ではんだ付けを行なったりしており、特に後者方法は有用な手段とされている。しかし、近年は製造コストを考慮して大気雰囲気中でリフローを行なう傾向にあり、ソルダボールが以前に増して発生し易い状況となっていた。
【0004】
また近年、電化製品がいっそう小型化するにつれ、はんだペーストには実装基板上の微小な電極パターンに対応した実装性能が強く要求されている。さらに、電極パターンが微小化するにつれ近年では部品のチップ立ち抑制や接合強度向上の観点から、導体ランドの外周部にソルダレジストが形成される従来のオーバーレジスト構造(
図2)から、ランドの外周部にソルダレジストが形成されていないクリアランスレジスト構造(
図3)を使用する傾向にある。なお、クリアランスレジスト方式については、例えば特許文献1がある程度詳しい。
【0005】
クリアランスレジスト構造においてはオーバレジスト構造とは異なり、リフロー時に加熱して粘性が低下したはんだペーストから液状のフラックスが導体ランド外に流れ出し易い傾向にあり、この際はんだ粒子の表面に形成された酸化皮膜が還元されず、はんだ溶融不良(濡れ不良)を起こしてしまうという課題がある(特許文献2を参照。)。さらに、リフロー雰囲気が大気の場合ではこの不良はより顕著となる。
【0006】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−249747
【特許文献2】特開2010−212318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、大気雰囲気下でもクリアランスレジスト上の電極における鉛フリーはんだ金属の濡れ性を高めることが可能なフラックスを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、所定のベース樹脂、溶剤および活性剤を配合したものがクリアランスレジスト用鉛フリーはんだペースト向けのフラックスとして奏功することを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、ロジン系ベース樹脂(A)(以下、(A)成分という。)、溶剤(B)(以下、(B)成分という。)、活性剤(C)(以下、(C)成分という。)、チキソトロピック剤(D)(以下、(D)成分という。)および酸化防止剤(E)(以下、(E)成分という。)を含み、かつ(A)成分がα,β不飽和カルボン酸変性ロジン(a1)(以下、(a1)成分という。)を含み、かつ(B)成分が沸点275℃以下のプロピレングリコール系エーテル(b1)(以下、(b1)成分という。)であり、かつ(C)成分が一般式(1):HOOC−R−COOH(式中、Rは炭素数2〜4の炭化水素基を示す。)で表される二塩基酸(c1)(以下、(c1)成分という。)であることを特徴とする、クリアランスレジスト用鉛フリーはんだペースト向けフラックス(以下、単にフラックスということがある。)、ならびに当該フラックスと鉛フリーはんだ粉末を含有するクリアランスレジスト用鉛フリーはんだペースト(以下、単に鉛フリーはんだペーストということがある。)、に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフラックスによれば、大気雰囲気下でもクリアランスレジスト上の電極における鉛フリーはんだ金属の十分な濡れ性を確保できる。また、このフラックスは残渣を洗浄除去する必要が特に無いため、特に無洗浄タイプの実装基板に適している。また、本発明のフラックスを用いて得られる鉛フリーはんだペーストはスクリーン印刷適性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例、比較例におけるリフロー温度プロファイルを示したグラフである。
【
図2】オーバーレジスト構造の模式図(断面)、はんだ付ランドの上面図(写真)、および当該ランド上で比較例1に係る鉛フリーはんだペーストを溶融させたときの状態図(写真)である。
【
図3】クリアランスレジスト構造の模式図(断面)、はんだ付ランドの上面図(写真)、および当該ランド上で比較例1に係る鉛フリーはんだペーストを溶融させたときの状態図(写真)である。
【
図4】オーバーレジスト構造のはんだ付ランド上で、実施例1に係る鉛フリーはんだペーストを溶融させたときの状態図(写真)である。
【
図5】クリアランスレジスト構造のはんだ付ランド上で、実施例1に係る鉛フリーはんだペーストを溶融させたときの状態図(写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(A)成分は、本発明の効果を得るうえで、(a1)成分を必須要件とする。(a1)成分をなすα,β不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸等のα,β不飽和モノカルボン酸や、マレイン酸、無水マレイン酸およびフマル酸等のα,β不飽和シジカルボン酸が挙げられる。また、(a1)成分をなすロジン類としては、例えば、ガムロジンやウッドロジン等の原料ロジン類、原料ロジンのその精製物(精製ロジン類)、それらの水素化物(水添ロジン)、それらの不均化物(不均化ロジン)等が挙げられ、特に精製ロジン類が好ましい。(a1)成分としては、α,β不飽和モノカルボン酸変性ロジンが、特に水添アクリル酸変性ロジンが好ましい。
【0014】
また、(a1)成分とともに、前記原料ロジン類、精製ロジン類、水添ロジン類(但し、(a1)成分を除く。)、不均化ロジン類、重合ロジン類、これらロジン類とポリオールとのエステル(ロジンエステル類)を併用できる。該ポリオールとしては、グリセリンやペンタエリスリトール等が挙げられる。これらのなかでも水添ロジン類(但し、α,β不飽和カルボン酸変性ロジンに相当するものを除く。)および/または不均化ロジン類は鉛フリーはんだ金属の酸化膜除去作用に優れ、その濡れ性を高めるため好ましい。
【0015】
(B)成分は、本発明の効果を得るうえで、(b1)成分を必須要件とする。(b1)成分は、沸点275℃以下、具体的には沸点200〜275℃程度、好ましくは200〜250℃程度の高沸点溶剤であり、例えば、ブチルプロピレントリグリコール(沸点274℃)メチルプロピレントリグリコール(沸点242℃)やフェニルプロピレングリコール(沸点243℃)、ブチルプロピレンジグリコール(沸点231℃)、プロピルプロピレンジグリコール(沸点212℃)などを例示できる。これらのなかでもクリアランスレジスト上における濡れ性の点よりメチルプロピレントリグリコール、ブチルプロピレンジグリコール、フェニルプロピレングリコールおよびブチルプロピレントリグリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種が、特にメチルプロピレントリグリコール、ブチルプロピレンジグリコールおよびフェニルプロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。なお、プロピレングリコール系エーテル以外の溶剤を使用したり、プロピレングリコール系エーテルであってもより高沸点のものを使用したりすると、部品搭載時にクリアランスレジスト上ではんだの未溶融が発生しやすくなる。
【0016】
(C)成分は、本発明の効果を得るうえで、(c1)成分を必須要件とする。(c1)成分は、一般式(1):HOOC−R−COOH(式中、Rは炭素数2〜4の炭化水素基を示す。)で表される化合物であり、具体例としては、例えば、コハク酸、グルタル酸およびアジピン酸等のアルキレン系脂肪族二塩基酸、ならびに/または、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、ペンテンジカルボン酸、ヘキセンジカルボン酸およびアセチレンジカルボン酸等のアルケニレン系脂肪族二塩基酸が挙げられ、これらのなかでもクリアランスレジスト上における濡れ性の点より、特にコハク酸、グルタル酸およびアジピン酸ならびにフマル酸およびマレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。なお、Rが1であったり、5を超えたりする二塩基酸を用いても本発明の効果は得がたい。
【0017】
なお、(C)成分には必要に応じて(c1)成分以外の活性剤を含めることができる。そのようなものとしては、例えば、シュウ酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、イタコン酸等の飽和又は不飽和の脂肪族二塩基酸類;trans−2,3−ジブロモ−1,4−ブテンジオールやcis−2,3−ジブロモ−1,4−ブテンジオール、1−ブロモ−2−ブタノール、1−ブロモ−2−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール等のブロモアルコール類;3−ブロモプロピオン酸、2−ブロモ吉草酸、5−ブロモ−n−吉草酸、2−ブロモイソ吉草酸、2,3−ジブロモコハク酸、2−ブロモコハク酸、2,2−ジブロモアジピン酸等のブロモジカルボン酸類;カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等の飽和又は不飽和の脂肪族一塩基酸類;ベンゾイル安息香酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ピコリン酸、フランカルボン酸等の芳香環又は複素環を有する一塩基酸類;ジブロモサリチル酸等のブロモヒドロキシカルボン酸類;エチルアミン臭素酸塩やジエチルアミン臭素酸塩、ジエチルアミン塩化水素酸塩、メチルアミン臭素酸塩等のアミン系ブロモ化合物;1−ブロモ−3−メチル−1−ブテンや1,4−ジブロモブテン、1−ブロモ−1−プロペン、2,3−ジブロモプロペン、1,2−ジブロモ−1−フェニルエタン、1,2−ジブロモスチレン、4−ステアロイルオキシベンジルブロマイド、4−ステアリルオキシベンジルブロマイド、4−ステアリルベンジルブロマイド、4−ブロモメチルベンジルステアレート、4−ステアロイルアミノベンジルブロマイド、2,4−ビスブロモメチルべンジルステアレート、4−パルミトイルオキシベンジルブロマイド、4−ミリストイルオキシベンジルブロマイド、4−ラウロイルオキシべンジルブロマイド、4−ウンデカノイルオキシベンジルブロマイド等の活性水素非含有ブロモ化合物;ステアリルアミンやジステアリルアミン、ジブチルアミン等のハロゲン原子非含有アミン類などを例示でき、これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0018】
(D)成分としては、各種公知のものを特に制限なく使用できるが、特に鉛フリーはんだペーストの印刷適性の点より、特にポリアミド系チキソトロピック剤及び/又は動植物系チキソトロピック剤が好ましい。ポリアミド系チキソトロピック剤としてはステアリン酸アミドや12−ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド等が、また、動植物系チキソトロピック剤成分としては硬化ひまし油や蜜ロウ、カルナバワックス等を例示でき、これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0019】
(E)成分としては、具体的には、例えば、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンアミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンのヒンダードフェノール系酸化防止剤;2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,4−ジメチル−6−t−ブチル−フェノール、スチレネートフェノール、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール等の他のフェノール系酸化防止剤;トリフェニルフォスファイト、トリエチルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファエト、トリス(トリデシル)フォスファイト等のリン系酸化防止剤;系酸化防止剤としてジラウリルチオジプロピオネート、ジラウリルサルファイド、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ラウリルステアリルチオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤などを例示でき、これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、濡れ性やフラックス残渣の色調等の点よりヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。フラックス残渣の色調がよいとはんだ接合部の目視検品(濡れ広がりの確認等)が容易になり、また、洗浄の必要もなくなる。
【0020】
本発明のフラックスにおける(A)成分〜(F)成分の含有量は特に限定されないが、通常は以下の通りである。
(A)成分:通常25〜50重量%程度、好ましくは35〜45重量%
(B)成分:通常20〜70重量%程度、好ましくは25〜55重量%
(C)成分:通常3〜15重量%程度、好ましくは5〜7重量%
(D)成分:通常0〜20重量%程度、好ましくは2.5〜10重量%
(E)成分:通常0〜10重量%程度、好ましくは2〜8重量%
【0021】
本発明の鉛フリーはんだペーストは、本発明のフラックスと鉛フリーはんだ粉末を含有する組成物である。また、それぞれの使用量は特に限定されないが、通常、前者が5〜30重量%程度、後者が70〜95重量%程度である。
【0022】
鉛フリーはんだ粉末としては、鉛を含有しないものであれば各種公知のものを特に制限なく使用できるが、Snをベースとする鉛フリーはんだ粉末、例えばSn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−Sb系、Sn−Zn系、Sn−Bi系の鉛フリーはんだ粉末が好ましい。また、鉛フリーはんだ粉末は、Ag、Al、Au、Bi、Co、Cu、Fe、Ga、Ge、In、Ni、P、Pt、Sb、Znの1種又は2種以上の元素がドープされたものであってよい。鉛フリーはんだ粉末の具体例としては、Sn95Sb5、Sn99.3Cu0.7、Sn97Cu3、Sn92Cu6Ag2、Sn99Cu0.7Ag0.3、Sn95Cu4Ag1、Sn97Ag3、Sn96.3Ag3.7、Sn42−Bi58等を例示できる。また、鉛フリーはんだ粉末の平均粒子径は特に限定されないが、通常は1〜50μm程度、好ましくは15〜40μmである。また、粉末の形状も特に限定されず、球形や不定形であってもよい。なお、球形とは、好ましくは、粉末の縦横のアスペクト比が1.2以内であることを意味する。
【実施例】
【0023】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲がこれら実施例に限定されるものではない。また実施例中、「%」及び「部」は特に断りのない限り「重量%」、「重量部」を意味する。
【0024】
<フラックスの調製>
実施例1
市販の水添アクリル酸変性ロジン(商品名「KE−604」、荒川化学工業(株)製)を44.5部、市販のメチルプロピレントリグリコール(日本乳化剤(株)社製)を44部、コハク酸(SA)を5部、ポリアミド系チキソトロピック剤(商品名「MA−WAX−O」、川研ファインケミカル(株)社製)を6部、及び酸化防止剤(商品名「Irganox1010」、チバ・ジャパン(株)製)を0.5部、加熱下に良く混合し、フラックスを調製した。
【0025】
実施例2〜12、比較例1〜7
実施例1の原料を表1、表2に示す部数で加熱下に良く混合し、フラックスを調製した。
【0026】
<濡れ性の確認:はんだペースト態様>
市販の鉛フリーはんだ粉末(96.5Sn/3Ag/0.5Cu、三井金属(株)製、粒径20〜38μm、通常品)を89g、実施例1のフラックスを順に89重量%および11重量%となるようソフナーにて混練し、はんだペーストを調製した。次いでこのはんだペーストを厚み100μmのステンシルマスクを用いて、クリアランスレジスト構造を有するパターンに印刷した後、0603コンデンサーをマウンターにて搭載し、大気雰囲気下において、
図1に示す温度プロファイルにてリフローを行った。リフロー後、部品上のはんだの濡れ性を以下の基準で目視判断した。また、実施例2〜12及び比較例1〜7のフラックスについても同様にはんだの濡れ性を目視判断した。
【0027】
(濡れ性の程度)
◎:部品に接合しているはんだにおいて、未溶融はんだが全くない。
○:一部未溶融はんだが確認できる。
×:全てのはんだに未溶融が発生している。
【0028】
なお、
図2は、比較例1のフラックスを用いたはんだペーストを、オーバーレジスト構造を有するパターンの上でリフローしたときの写真であり、はんだ粉末が溶融していることがわかる。
【0029】
一方、
図3は、比較例1のフラックスを用いたはんだペーストを、クリアランスレジスト構造を有するパターンの上でリフローしたときの写真であり、はんだ粉末がほぼ未溶融のままであることが確認できる。
【0030】
他方、
図4は、実施例1のフラックスを用いたはんだペーストを、オーバーレジスト構造を有するパターンの上でリフローしたときの写真であり、未溶融はんだが全くないことが確認できる。
【0031】
また、
図5は、実施例1のフラックスを用いたはんだペーストを、クリアランスレジスト構造を有するパターンの上でリフローしたときの写真であり、同じく未溶融はんだが全くないことが確認できる。
【0032】
【表1】
【0033】
*1・・・市販の水添ロジン(商品名「CRW−300」、荒川化学工業(株)製)
*2・・・メチルプロピレントリグリコール(商品名「MFTG」、日本乳化剤(株)社製、沸点242℃)
*3・・・ブチルプロピレンジグリコール(商品名「BFDG」、日本乳化剤(株)社製、沸点231℃)
*4・・・フェニルプロピレングリコール(商品名「PhFG」、日本乳化剤(株)社製、沸点243℃)
*5・・・ブチルプロピレントリグリコール(商品名「BFTG」、日本乳化剤(株)社製、沸点274℃)
*6・・・コハク酸(東京化成工業(株)社製)
*7・・・グルタル酸(東京化成工業(株)社製)
*8・・・アジピン酸(東京化成工業(株)社製)
*9・・・フマル酸(東京化成工業(株)社製)
【0034】
【表2】
【0035】
*10・・・ヘキシルジグリコール(商品名「HeDG」、日本乳化剤(株)社製、沸点259℃)
*11・・・2−エチルヘキシルジグリコール(商品名「EHDG」、日本乳化剤(株)社製、沸点272℃)
*12・・・2−ヘキシルデカノール(商品名「エヌジェコール160BR」、新日本理化(株)社製、沸点195−215℃)
*13・・・シュウ酸(東京化成工業(株)社製)
*14・・・スベリン酸(東京化成工業(株)社製)
*15・・・ドデカン二酸(東京化成工業(株)社製)
*16・・・比較例2のフラックスはCRW−300の析出が顕著であり、均質なはんだペーストの調製が困難であったため、濡れ性は評価しなかった。