特許第6238037号(P6238037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6238037無線ピアツーピアネットワークにおいて停止時間を短縮するためのグループ再形成メカニズム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238037
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】無線ピアツーピアネットワークにおいて停止時間を短縮するためのグループ再形成メカニズム
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/22 20090101AFI20171120BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20171120BHJP
   H04W 4/08 20090101ALI20171120BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20171120BHJP
【FI】
   H04W4/22
   H04W84/12
   H04W4/08
   H04W84/18
【請求項の数】23
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-555391(P2016-555391)
(86)(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公表番号】特表2017-511053(P2017-511053A)
(43)【公表日】2017年4月13日
(86)【国際出願番号】JP2014001160
(87)【国際公開番号】WO2015132813
(87)【国際公開日】20150911
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(72)【発明者】
【氏名】プラカシュ、チャキ
(72)【発明者】
【氏名】安田 真人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 範人
【審査官】 大濱 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−129042(JP,A)
【文献】 特開2006−148448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
A63F 13/00
H04L 12/28
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ピアツーピアノードのグループにおけるグループ再形成を制御する方法において、前記ノードの1つがリーダとして動作し、他のノードが前記グループのクライアントとして動作し、該方法が、
グループ形成時に、それぞれが緊急リーダとして動作する意思を有するクライアントノードである所定数の緊急リーダノードを優先順位付けする緊急リーダリストを作成するステップと、
リーダノードが通知なしに前記グループから消失したときに前記緊急リーダノードからビーコンをブロードキャストするステップと、
前記緊急リーダリストの第1優先度の緊急リーダノードを除く各クライアントノードを、該クライアントノードによって検出された緊急リーダノードのうちの最高優先度の緊急リーダノードに接続するステップと
を含むことを特徴とする、無線ピアツーピアノードのグループにおけるグループ再形成を制御する方法。
【請求項2】
前記緊急リーダリストの各緊急リーダノードが他のノードから到達可能であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記緊急リーダリストの緊急リーダノードがそれぞれの位置インデックスを含む因子に基づいて選択され、各位置インデックスはグループの残りのメンバからの平均相対距離を表すことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1優先度の緊急リーダノードがデフォルトで新リーダとして動作することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1優先度の緊急リーダノードを除くクライアントノードが前記第1優先度の緊急リーダノードに直接接続されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1優先度の緊急リーダノードを除くクライアントノードが、前のセッションのセキュリティキーを再利用してピアツーピアインビテーションを用いて前記第1優先度の緊急リーダノードに接続されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
クライアントノードが前記第1優先度の緊急リーダノードの検出に失敗したが次の優先度の緊急リーダノードの検出に成功した場合、該クライアントノードが前記次の優先度の緊急リーダノードを通じて前記第1優先度の緊急リーダノードに接続されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1優先度の緊急リーダノードが自己の送信時間フレームを複数の時間フェーズに再分割し、それらの時間フェーズの1つが、前記次の優先度の緊急リーダノードを通じての前記クライアントノードへの送信に使用されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記グループがWi−Fi Directピアツーピアグループであり、前記リーダが該Wi−Fi Directピアツーピアグループのグループオーナであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
無線ピアツーピアノードのグループにおけるグループ再形成を制御するシステムにおいて、前記ノードの1つがリーダとして動作し、他のノードが前記グループのクライアントとして動作し、
それぞれが緊急リーダとして動作する意思を有するクライアントノードである所定数の緊急リーダノードを優先順位付けする緊急リーダリストが各ノードに提供され、該緊急リーダリストはグループ形成時に作成され、
前記緊急リーダノードは、リーダノードが通知なしに前記グループから消失したときにビーコンをブロードキャストし、
前記緊急リーダリストの第1優先度の緊急リーダノードを除く各クライアントノードが、該クライアントノードによって検出された緊急リーダノードのうちの最高優先度の緊急リーダノードに接続する
ことを特徴とする、無線ピアツーピアノードのグループにおけるグループ再形成を制御するシステム。
【請求項11】
前記緊急リーダリストの各緊急リーダノードが他のノードから到達可能であることを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記緊急リーダリストの緊急リーダノードがそれぞれの位置インデックスを含む因子に基づいて選択され、各位置インデックスはグループの残りのメンバからの平均相対距離を表すことを特徴とする請求項10または11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1優先度の緊急リーダノードがデフォルトで新リーダとして動作することを特徴とする請求項10ないし12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1優先度の緊急リーダノード以外のクライアントノードが前記第1優先度の緊急リーダノードに直接接続されることを特徴とする請求項10ないし13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1優先度の緊急リーダノードを除くクライアントノードが、前のセッションのセキュリティキーを再利用してピアツーピアインビテーションを用いて前記第1優先度の緊急リーダノードに接続されることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
クライアントノードが前記第1優先度の緊急リーダノードの検出に失敗したが次の優先度の緊急リーダノードの検出に成功した場合、該クライアントノードが前記次の優先度の緊急リーダノードを通じて前記第1優先度の緊急リーダノードに接続されることを特徴とする請求項10ないし13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1優先度の緊急リーダノードが自己の送信時間フレームを複数の時間フェーズに再分割し、それらの時間フェーズの1つが、前記次の優先度の緊急リーダノードを通じての前記クライアントノードへの送信に使用されることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記グループがWi−Fi Directピアツーピアグループであり、前記リーダが該Wi−Fi Directピアツーピアグループのグループオーナであることを特徴とする請求項10ないし17のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
請求項10に記載の前記システムにおける前記無線ピアツーピアグループの前記ノードにおいて、該ノードは前記グループのリーダまたはクライアントのいずれかとして動作し、
他のノードデバイスと通信する無線通信部と、
前記緊急リーダリストを格納する格納部と、
該ノードが前記緊急リーダリストの第1優先度の緊急リーダノードである状態で前記リーダノードが通知なしに前記グループから消失すると、前記無線通信部がビーコンをブロードキャストし他の各クライアントノードに接続するように制御するコントローラと
を備えたことを特徴とするノード
【請求項20】
無線ピアツーピアグループのノードデバイスにおいて、該ノードデバイスは前記グループのリーダまたはクライアントのいずれかとして動作し、
他のノードデバイスと通信する無線通信部と、
それぞれが緊急リーダとして動作する意思を有するクライアントノードである所定数の緊急リーダノードを優先順位付けする緊急リーダリストであって、グループ形成時に作成される緊急リーダリストと、
該ノードデバイスが前記緊急リーダリストの緊急リーダノードであるが第1優先度の緊急リーダノードでない状態でリーダノードが通知なしに前記グループから消失すると、前記無線通信部がビーコンをブロードキャストし前記第1優先度の緊急リーダノードに接続するように制御するコントローラと
を備えたことを特徴とするノードデバイス。
【請求項21】
前記ビーコンブロードキャストに応答して他のノードデバイスに接続するとき、前記コントローラは、該ノードデバイスが前記他のノードデバイスと前記第1優先度の緊急リーダノードとの間のリレーとして動作するように制御することを特徴とする請求項20に記載のノードデバイス。
【請求項22】
無線ピアツーピアグループのノードデバイスにおいて、該ノードデバイスは前記グループのリーダまたはクライアントのいずれかとして動作し、
他のノードデバイスと通信する無線通信部と、
それぞれが緊急リーダとして動作する意思を有するクライアントノードである所定数の緊急リーダノードを優先順位付けする緊急リーダリストであって、グループ形成時に作成される緊急リーダリストと、
該ノードデバイスがクライアントであるが緊急リーダノードでない状態でリーダノードが通知なしに前記グループから消失すると、前記無線通信部が緊急リーダノードからのビーコンを聴取し前記緊急リーダノードのうち最高優先度の緊急リーダノードに接続するように制御するコントローラと
を備えたことを特徴とするノードデバイス。
【請求項23】
無線ピアツーピアグループのノードデバイスにおいて、該ノードデバイスは前記グループのリーダまたはクライアントのいずれかとして動作し、
他のノードデバイスと通信する無線通信部と、
それぞれが緊急リーダとして動作する意思を有するクライアントノードである所定数の緊急リーダノードを優先順位付けする緊急リーダリストであって、グループ形成時に作成される緊急リーダリストと、
該ノードデバイスが前記緊急リーダリストの第1優先度の緊急リーダノードである状態でリーダノードが通知なしに前記グループから消失すると、前記無線通信部がビーコンをブロードキャストし他の各クライアントノードに接続するように制御するコントローラと、
を有し、前記他の各クライアントノードが、前記ビーコンを受信すると、前のセッションのセキュリティキーを再利用するピアツーピアインビテーションを用いて当該ノードデバイスに直接接続される、ことを特徴とするノードデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムの分野に関し、より詳細には、無線ピアツーピア(peer-to-peer, P2P)ネットワークにおけるグループ再形成の方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
Wi−Fiアライアンスによって公開・管理されているWi−Fi Directは、中心的なアクセスポイント(Access Point, AP)を必要とせずにピアツーピア方式で行うデバイス間通信の分野で最近策定された標準である。インフラストラクチャモードのIEEE802.11ベースのWLANにおいて従来のAPがもっている特殊なハードウェア機能をソフトウェアに移行することによって、どのデバイスもAPの機能を備えることができる。この基本機能を使用することにより、Wi−Fi DirectではAPが不要となり、ノードどうしの間でインターネット接続を必要とせずにグループを形成することが可能となる。Wi−Fi Directにおけるこのようなピアツーピアグループは、標準仕様においてグループオーナ(Group Owner, GO)として定義されるリーダによって管理される。リーダは、GOネゴシエーションによって選択される。グループが形成されると、GOは従来のAPの役割を果たす。すなわち、周期的なビーコンを送出し、あるノードから別のノードへデータパケットをルーティングする。標準の現在のバージョンは、GOがそのクライアントに通知する十分な時間をとらずにグループを退出するときに生じるグループ停止の問題に対処していない。GOの欠如によって、クライアントノードは、互いを再発見しネゴシエーションをして新たなグループを形成するまでに相当の時間がかかるために機能停止に陥る。これは実質的に、スループットの低下とレイテンシ(待ち時間)の増大につながる。
【0003】
GO欠如時のクライアントのサービス停止という問題に対する1つの解決法によれば、GOに追加的な責任を課することなくクライアントが相互にシームレスに接続し続けることが可能となる。GOがグループを退出しなければならなくなる理由はさまざまな可能性があるが、次の2つに大別することができる。すなわち、(a)無線チャネルのランダムな挙動、モビリティ、急な停電や人災/天災によって引き起こされる突然のリンク障害の場合と、(b)セルフィッシュGO(Selfish GO)の場合である。セルフィッシュGOは、グループに対するサービス要求が満たされるとすぐにグループを退出して新たなグループに加入するGOである。従来のインフラストラクチャベースのWi−Fiにおいて、アクセスポイントは、関連するクライアントがアクティブである限りアクティブであることが必要なハードウェアである。しかし、Wi−Fi Directのようなピアツーピアネットワークでは、GOはラップトップコンピュータやスマートフォンのような、人間が介在するデバイスであり得るので、セルフィッシュGOの場合が非常に一般的なケースとなり得る。同時にGOの側としても、グループに対するサービス要求がもはやなく、現在のグループで利用可能でない緊急サービスが必要となって別のグループに加入しなければならないのにグループ管理のサービスを継続するよう求められるとすれば不公平であろう。デバイスは、互いのサービスを必要とするときにピアツーピアグループに加入する。クライアントデバイスがそのサービス要求が満たされたら自由にグループを退出してもよいとすれば、同じルールがGOにも適用されるべきである。Wi−Fi Directの元々の動機は、どのデバイスもGOとして動作できるようにすることによってAPの役割を一般化することであるから、次のステップはそれをさらに一般化して、GOがグループ内の他のノードと同じようにいつでもグループから退出することもできるようにすることとなるはずである。
【0004】
関連技術には、現在のグループを停止させずにGOが退出するための退出方式を提案するいくつかの文献がある。しかし、これらの文献は、GOが退出するときに、その後継者を選択し、退出前にGO権限を計画的に引き継ぐ場合を対象としている。例えば、特許文献1(米国特許出願公開第2012/0278389A1号明細書)に開示された方式では、退出するGOが、複数のクライアントに対してGOインテントを尋ねた後で、退出することを決定し、すべてのノードのうちから次のGOとなる意思(インテント)を応答した最も適当なノードを選択する。そして、新たなGOに関する情報は、退出するGOによって退出前に共有される。特許文献2(国際公開第2013162496A1号)に開示された方式では、退出するGOが、グループメンバに対して後継意思を尋ね、後継者GOのリストを作成する。後継者GOは、クレデンシャル(証明書)に基づいて優先順位付けされてもよい。そして、退出するGOは退出前にグループメンバとそのリストを共有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0278389A1号明細書
【0006】
【特許文献2】国際公開第2013162496A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1によって提案された方式は、退出するGOが退出前に後継者を選択する十分な時間があると暗黙のうちに仮定しているので、GOが上記のような災害、急な停電、モビリティ、無線チャネルのランダムな挙動のような突然のイベントにより急に消失するケースあるいはセルフィッシュGOの場合には失敗する。特許文献2によって提案された方式も、GOの急な消失によって生じる問題に対処できないので同じ欠点を有する。また、退出前に複数の後継者ノードを含むリストを共有することが提案されているが、すべてのノードがリスト内の第1のノードに接続するので、そのような共有を行う根拠も利益もない。したがって、複数の後継者ノードを含むリストを作成し共有することには利点がない。すなわち、本質的に、これは第1の考え方そのものに帰着する。
【0008】
本発明の目的は、ピアツーピアネットワークにおいて、そのネットワークリーダが不意に退出するときに相互接続性を維持することである。
【0009】
本発明のもう1つの目的は、ネットワークリーダの役割を一般化し、ネットワークリーダが、ピアツーピアグループ内の他のクライアントノードと全く同じようにいつでもグループを退出できるようにすることである。
【0010】
上記の目的に加えて、本発明の他の明らかな利点は、詳細な説明および図面から理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
可能性のあるさまざまな理由によるリーダの不意の消失後にグループにおける急な停止が起こる問題を解決するため、緊急リーダとなる意思(インテント)がグループ形成と同時にグループ内で共有される。新たなクライアントがそのグループに追加される場合、リーダは、緊急リーダのインテントおよびメトリックに基づいて緊急リーダのリストを作成・更新してもよい。リストは、事前に決定されたリーダの退出時刻を待つ代わりに、グループセッションの継続時間中、関連するクライアントと周期的に共有されてもよい(または、リストが変更されたら直ちに共有されてもよい)。クライアントは、最後に受信した緊急リーダリストを保存する。
本発明による方法は、無線ピアツーピアノードのグループにおけるグループ再形成を制御する方法である。前記ノードの1つがリーダとして動作し、他のノードが前記グループのクライアントとして動作する。該方法は、それぞれが緊急リーダとして動作する意思を有するクライアントノードである所定数の緊急リーダノードを優先順位付けする緊急リーダリストを前記ノードに提供するステップと、リーダノードが通知なしに前記グループから消失したときに前記緊急リーダノードからビーコンをブロードキャストするステップと、前記緊急リーダリストの第1優先度の緊急リーダノードを除く各クライアントノードを、該クライアントノードによって検出された緊急リーダノードのうちの最高優先度の緊急リーダノードに接続するステップとを含む。
本発明によるシステムは、無線ピアツーピアノードのグループにおけるグループ再形成を制御するシステムである。前記ノードの1つがリーダとして動作し、他のノードが前記グループのクライアントとして動作する。それぞれが緊急リーダとして動作する意思を有するクライアントノードである所定数の緊急リーダノードを優先順位付けする緊急リーダリストが各ノードに提供される。前記緊急リーダノードは、リーダノードが通知なしに前記グループから消失したときにビーコンをブロードキャストする。前記緊急リーダリストの第1優先度の緊急リーダノード以外の各クライアントノードが、該クライアントノードによって検出された緊急リーダノードのうちの最高優先度の緊急リーダノードに接続する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ピアツーピアネットワークにおいて、そのネットワークリーダが不意に退出するときに相互接続性を迅速に回復することができる。
【0013】
本発明は、以上のように複数のステップおよびそのようなステップの相互関係と、そのようなステップを実行するように適応した構成、要素の組合せおよび部品の配置を実現する装置とを含み、これらはすべて、以下の詳細な説明と、特許請求の範囲に記載される本発明の技術的範囲とにおいて具体化される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態による無線ピアツーピア(P2P)ネットワークを示す模式図である。
図2】本発明の実施形態によるノードの機能的構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態によるノードに提供されるEGOリストの例を示す模式図である。
図4】本発明の実施形態によるグループ再形成方法を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態による、GOが急に消失したときに行われるネットワークのグループ再形成の例を示す模式図である。
図6】本発明の実施形態によるシステムの可能なネットワークトポロジーの例を示す模式図である。
図7】本発明の実施形態によるシステムの可能なネットワークトポロジーの別の例を示す模式図である。
図8】本発明の実施形態による、グループが存在しないときにEGOリストを生成する動作を示すフローチャートである。
図9】本発明の実施形態による、グループが既に存在するときにEGOリストを生成する動作を示すフローチャートである。
図10】実施形態の動作を説明するための、ノードの送信領域を示す模式図である。
図11】実施形態により提案される考え方を用いたWiFi Directを示すタイミングシーケンスである。
図12】実施形態の動作を説明するための、ノードの送信領域の例を示す模式図である。
図13】実施形態の動作を説明するための、システムの可能なネットワークトポロジーの例を示す模式図である。
図14】実施形態の動作を説明するための、システムの可能なネットワークトポロジーの別の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の例示的実施形態について、例としてWiFi Direct標準に従って説明する。例示的実施形態は、添付図面とともに十分詳細に記述され、最後に典型例ケースを用いて説明される。
【0016】
前述のように、リーダ(GO:グループオーナ)の不意の消失後にグループにおける急な停止が起こる問題を解決するため、緊急リーダ(EGO:緊急グループオーナ)となる意思がグループ形成と同時にコネクション要求フレームで共有される。GOは、そのグループに新たなクライアントの追加を継続するとともに、EGOインテントおよびEGOメトリックに基づいて、k個のEGOノードを含むリストの作成・更新を継続する。リストは、事前に決定されたGOの退出時刻を待つ代わりに、グループセッションの継続時間中、関連するクライアントと周期的に共有される。クライアントは、最後に受信したEGOリストを保存する。
【0017】
EGOリスト内のノードは、以下のセクションで詳細に説明するアルゴリズムに従ってGOによって決定される優先度順に配列される。
【0018】
GOが消失すると、EGOが自律的なグループオーナとなり、ビーコンの送信を開始する。クライアントは、好ましくは前のセッションのクレデンシャル(セキュリティキー)を用いて招待要求(invitation)を送信することによって、受信したすべてのEGOビーコンのうちでEGOメトリックの最も高いEGOに接続する。こうして、内部レジストラにより認証キーを生成しエンローリー(Enrollee)と共有するためのGOネゴシエーションとWPS(Wireless Protected Setup)プロビジョニング段階の最初の部分を省略する。これにより、再接続時間がかなり短縮される。あらゆるノードが互いの送信範囲(送信到達距離)内にある小規模ネットワークでは、すべてのクライアントが必然的に第1のEGOに接続することになる。残りのEGOも通常のクライアントとして第1のEGOに結合する。しかし、大規模な分散ネットワークでは、クライアントは、第1のEGOを見つけられない場合、リスト内の次の優先度のEGOに接続する。このような特別な場合、より優先度の低いEGOが、クライアントと第1のEGOとの間でコネクションを交互に切り替えることによって、第1のEGOと遠隔クライアントとの間の中継(リレー)ノードとして動作する。特定のEGOにクライアントが全く接続しない場合、そのEGOは通常のクライアントとして第1優先度のEGOに結合する。こうして、事前の情報なしにGOが急に退出した後であっても、関連するクライアントはばらばらにならない。また、ゼロからグループの形成を開始する必要もない。したがって、本方法は、大きいサイズのファイルのストリーミングや共有のために連続的な接続を必要とするアプリケーションにおいて、レイテンシを短縮しスループットを増大させるという目的に役立つ。
【0019】
1.システム構成
図1に示すように、簡単のため、6個のノード101〜106が、本発明のメカニズムによって、通常のWiFi Directグループを形成すると仮定する。ここで、ノード101はグループオーナ(GO)として動作し、他のノード102〜106はそれぞれ関連するクライアントとして動作する。GOノード101は、従来のインフラストラクチャベースのWi−Fiにおけるアクセスポイント(AP)と同様の役割を果たすとともに、緊急グループオーナのリスト(EGOリスト)を管理する。後述するように、EGOは、すべてのクライアントのEGOメトリックと、緊急グループオーナとなるEGOインテントとに基づいて選択される。EGOリストは、更新されるたびに、または周期的に、クライアントノード102〜106と共有される。
【0020】
図2を参照すると、ノード101〜106は同じ構成を有するが、GOまたはクライアントとして動作可能である。ノードは以下の機能、すなわち、無線システム201、ユーザコントローラ202、EGOリスト203、プロセッサ204、およびメモリ205を有する。無線システム201は、WiFi Direct通信機能を有する。ユーザコントローラ202は、デバイスディスカバリ、GOネゴシエーションおよびプロビジョニングサービスディスカバリのようなWiFi Direct接続手続きを制御する。EGOリスト203は、EGOインテントがゼロでないすべてのクライアントのEGOメトリックを比較するアルゴリズムに従って選択されたEGOを含む。プロセッサ204は、本実施形態によるグループ再形成を含め、メモリ205に保存されたオペレーティングシステムおよびアプリケーションを実行することができる。EGOリスト203は、メモリ205に含まれてもよいし、半導体メモリのような別個のストレージデバイスに含まれてもよい。
【0021】
図3を参照すると、EGOリスト203は、少なくとも、ノード識別子(例えばMACアドレス)によって識別され優先順位付けされたEGOの情報を含む。EGO優先度は、EGOの位置インデックス、電力可用性、デバイスタイプ、処理速度、メモリサイズ、アンテナ利得等のような因子に基づいて決定可能である。EGOリスト203内のエントリの最大数を制限するのが好ましい。後述するように、EGOリスト203はGOノードに生成され、関連するすべてのクライアントノードと共有されることにより、クライアントノードは、GOの消失時にグループ再形成を実行することができる。
【0022】
2.グループ再形成
図4を参照すると、GOの消失が検出されると(動作S301)、各EGOノードは自律的なGOとなり、ビーコンの送信を開始する(動作S302)。各クライアントノードは、ビーコンを聴取できた最高優先度のEGOへ招待要求を送信する(動作S303)。クライアントノードが最高優先度EGOのビーコンを聴取できない場合、そのクライアントノードはEGOリスト203内の次の優先度のEGOに接続する。この場合、次の優先度のEGOは、2つの状態、すなわち、一方から切断した状態と他方に接続した状態との間で交互に切り替わることによって、クライアントノードと新GO(最高優先度EGO)との間の中継ノードとして動作する。
【0023】
別の例として、EGOは、ビーコンブロードキャストを送信しなくてもよい。GOが退出すると、グループのすべてのメンバが互いを発見するためにP2Pファインド(find)動作を開始する。そして、各クライアントノードが、聴取できた最高優先度のEGOに接続する。
【0024】
図1に示すようなネットワークトポロジーを例として、グループ再形成の概要について図5図7を参照して説明する。EGOリスト203において、クライアントノード106が最高優先度のEGOであり、クライアントノード103が次の優先度のEGOであると仮定する。
【0025】
図5を参照すると、GOノード101が急に消失すると、EGOノード103および106が、CSMA/CAメカニズムを用いて同じ動作チャネル上でビーコンのブロードキャストを開始する。すべてのクライアントノードは、受信されるすべてのビーコンのうちで、EGOリストに保存された最高優先度のノード106を発見しようとする。クライアントは、各ビーコン期間にビーコンを聴取し続け、より高い優先度のGOが見つかればそれに切り替える。
【0026】
図6を参照すると、すべてのクライアントノード102〜105が最高優先度のEGOノード106を発見することに成功すると、ノード102〜105は、新GOノード106に接続する。図6は、GOノード106がEGOリスト内の最高優先度ノードである緊急GOの責任を負っているWi−Fi DirectグループIIを示している。また、すべてのクライアントノード102〜105がEGOノード106のビーコンを聴取できるようなより単純なネットワークのケースでは、すべてのクライアントノード102〜105が、前のセッションのセキュリティキーを再利用してP2Pインバイト(invite)を用いてEGOノード106に接続することができる。持続的なグループを再開するため、EGOは、前のセッションのネットワークidおよび前のセッションのすべてのメンバのMACアドレスを含む設定ファイルを擬似的に生成することができる。クライアントも、このEGOをGOとした(すなわち、EGOのMACアドレスをBSSIDとした)仮想的な過去のセッションのクレデンシャルを含む設定ファイルを擬似的に生成することができる。これにより、EGOはあたかも前のセッションのGOであるかのように振る舞うことが可能となり、他のすべてのクライアントは単に招待要求を送信することで、持続的グループを再開することができる。このような持続的グループの生成は、再接続時間を短縮することを目指している。
【0027】
しかし、EGOノード106がクライアントノードから到達不能であるとき、そのノードは、より低い優先度のEGOに接続しようとする。図7に示すように、クライアントノード102がEGOノード106のビーコンを聴取できないため、次の優先度のEGOノード103に接続すると仮定する。すべてのEGOは互いから到達可能であるので、クライアントノード103は、クライアントノード102と新GOノード106との間の中継ノードとして動作する。この動作の詳細について次に説明する。
【0028】
EGOノード106は、GOを引き継ぐと、前のグループIのすべてのクライアントからの加入要求を待機する。EGOノード106は、自己のビーコンをうまく聴取できなかったクライアントがあることを他の低優先度のEGOを通じて知った場合、自己の送信レートを半分にする。
【0029】
すなわち、図7に示すように、新GOノード(すなわちEGOノード106)は、通常のクライアントノード104および105へ完全な時間スーパーフレームでデータを送信する。時間スーパーフレームは、複数の時間スロットの集まりである。しかし、新GOノード106は、低優先度EGOノード(ここではクライアントノード103)へは、1つの完全な時間スーパーフレームの一部(ここでは半分)だけデータを送信する。具体的には、新GOノード106が1つの完全な時間スーパーフレームのうち前半はデータを送信し後半は停止することにより、低優先度EGOノード103は、RTS−CTSメカニズムを用いたCSMA/CAのような衝突回避方式を用いることにより、同じチャネル上で、前半はデータを受信し、後半は遠隔クライアントノード(ここではノード102のみ)へデータを転送することが可能となる。換言すれば、低優先度EGOは、第1優先度のEGOノード106および遠隔クライアント102に交互に接続・切断を行うメカニズムに従ってリレーとして動作する。時間フレームの前半で、第2優先度のEGOノード103は、第1優先度のEGOノード106のグループ内のクライアントとして、第1優先度のEGOノード106からメッセージを受信する。しかし、後半では、第2優先度のEGOノード103は第1優先度のEGOノード106から切断し、遠隔クライアント102とグループを形成して情報を再送する。このメカニズムは、災害やノードモビリティの影響を受けやすいWiFi DirectベースのP2Pネットワークの通常の広域配備において、すべてではなくても最大限の数のノードと連絡をとることに関して、システムの堅牢性を大幅に向上させる。
【0030】
3.EGOリストの生成およびEGOの選択
前述のように、新グループIの形成時に、グループを形成しようとするノードは、P2Pグループ形成の接続要求フレーム内にEGOインテントを含める。GOネゴシエーションに勝ったノード(ここではノード101)は、グループの開始時にただちに、その相手のEGOインテント(EGOi)に基づいてEGOリストを作成する。EGOiは、クライアントがEGOとして動作したい場合にそのクライアントによって1にセットされる1ビットのフラグである。EGOインテント情報(EGOフラグ)は、P2Pグループ形成のP2Pコネクトフレームに埋め込まれる。EGOiは、2つのノードがグループを形成するときにP2Pコネクトフレームに含められ、ノードが既存のグループに加入する場合にプロビジョニングサービスディスカバリフレームに含められる。そこで、EGO選択およびEGOリスト生成の動作について、GOネゴシエーションおよびプロビジョニングディスカバリを用いた上記のそれぞれの場合において説明する。
【0031】
3.1)グループが存在しないときのEGOリスト生成
図8を参照すると、例えばノード101および106がデバイスディスカバリ手続き(動作S401)を通じて互いを発見し、ノード101がGOネゴシエーション手続き(動作S402)を通じてグループIのGOとなる。両方のノードとも、自己の接続要求フレーム内にEGOiを含める。GOネゴシエーションに勝ったノードがGOとなり、GOネゴシエーション中に交換されるP2Pコネクトフレームにおいて、他方のノードのEGOiフラグをチェックする(動作S403)。EGOiは、クライアントがEGOとして動作したい場合にそのクライアントによって1にセットされる1ビットのフラグである。別の可能な例として、GOは、EGOインテントをP2Pコネクトフレームに含める代わりに、グループ形成後にEGOインテントを尋ねてもよい。
【0032】
GOノード101がクライアントノード106からEGOi=1(非ゼロ)を受信した場合(動作S404:YES)、GOノード101はEGOクレデンシャルを要求する(動作S405)。EGOクレデンシャルは、クライアントノードの情報であって、以下のものを含み得るが、これらに限定されない:位置(EGOとなる可能性のあるノードは、GPSのようなメカニズムを備えていることが好ましい)、CPU速度、一次メモリ、固定かモバイルか、残存電力(モバイルの場合)、アンテナ利得、送信電力、送信範囲および最大サポートデータレート。
【0033】
クライアントノードからEGOクレデンシャルを受信すると、GOノード101は、受信した値に基づいてメトリックを計算し、自己のEGOリスト203にデバイスIDを保存してから、EGOリスト203をクライアントノード106と共有する(動作S406)。EGOメトリックは、EGOインテントが1である各クライアントノードの属性情報から計算される。新たなデバイスがグループに加入すると、GOノード101は、必要であれば、EGOメトリックを計算しEGOリストを更新する。EGOリストはk個のノードからなり、EGOリストに更新があれば、または周期的ビーコンで、すべての関連するクライアントと共有される。EGOリストの更新は、後述するように、グループに加入する可能性の高い新ノードがある場合や、EGOリスト内のノードがグループを退出するか、または、既存のクライアントが、EGOインテントおよびグループ加入時よりも良好なクレデンシャルを送信する場合(例えば、そのノードはスマートフォンであって、グループ加入時にはバッテリ電力が非常に低かったが、その後に電源に差し込まれた場合)に行われ得る。GOノード101がクライアントノード106からEGOi=0を受信すると(動作S404:NO)、クライアントノード106は通常のクライアントとしてグループに追加される(動作S407)。
【0034】
3.2)グループが既に存在するときのEGOリスト生成
図9を参照すると、例えばGOノード101およびノード103がデバイスディスカバリ手続き(動作S501)を通じて発見され、GOノード101はプロビジョニングサービスディスカバリ手続き(動作S502)を通じてノード103をグループIに追加する。クライアントノード103から受信されたプロビジョニングサービスディスカバリフレームにEGOiが埋め込まれているので、GOノード101は、プロビジョニングサービスディスカバリ中にクライアントノード103のEGOiフラグをチェックする(動作S503)。別の可能な例として、GOは、EGOインテントをプロビジョニングサービスディスカバリフレームに含める代わりに、グループ形成後にEGOインテントを尋ねてもよい。
【0035】
GOノード101がクライアントノード103からEGOi=1(非ゼロ)を受信した場合(動作S504:YES)、GOノード101はEGOクレデンシャルを要求する(動作S505)。クライアントノード103からEGOクレデンシャルを受信すると、GOノード101は、受信したEGOクレデンシャル情報に基づいてEGOメトリックMnewを計算した後(動作S506)、計算したEGOメトリックMnewをEGOリスト203内のそれぞれの既存のEGOノードのEGOメトリックMiと比較する(動作S507)。
【0036】
EGOメトリックMnewが既存のEGOノードのEGOメトリックMiよりも良好である場合(動作S508:YES)、クライアントノード103は、EGOリスト203内の新エントリとして既存のEGOノードと置き換わる(動作S509)。その後、置き換わったノード103は、自己のクレデンシャルを再度送信する(動作S510)。例えば、ノード103は、EGOノードによって空き(vacancy)がアドバタイズされるときに、自己のクレデンシャルを送信するように要求される。しかし、通常のクライアントがそのEGOクレデンシャルをGOノードへ送信するように促すのが「空き」である必要はない。稀な場合として、ノードが、グループ加入時に比べて良好なクレデンシャルを後で獲得することがあり得る。例えば、スマートフォンやラップトップコンピュータが、グループ加入時には制限されたバッテリ電力で動作していて、そのEGOメトリックは低かったとする。しかし、グループ加入後のある時に安定電源に接続されれば、今ではEGOメトリックが上昇しているであろう。そこでクライアントは、空きを待つ代わりに、いつでも自己のクレデンシャルを再送することができる。換言すれば、クライアントは、自己のクレデンシャルを送信するためにGOノードからのVACANCY NOTICE(空き通知)を待たなくてもよく、代わりにクライアントは、自己のパラメータが正方向に更新されたら自己のクレデンシャルを直ちに送信することができる。これにより、GOノード101はメトリックを迅速に計算し、それをEGOリスト内のノードのメトリックと比較し、受け入れるか拒否するかを決定することができる。置き換わったノード103からクレデンシャルを受信した後、GOノード101はEGOリスト203を更新してから、EGOリスト203をすべてのクライアントノード106および103と共有する(動作S511)。
【0037】
EGOメトリックMnewが既存のEGOノードのEGOメトリックMiよりも良好でない場合(動作S508:NO)、クライアントノード103は通常のクライアントとして加入する(動作S512)。その後、新ノード103はそのクレデンシャルを送信する(動作S513)。例えば、EGOリストに空きがあるとき、GOノード101は新ノード103に対して、一度そのクレデンシャルを送信するよう要求する。しかし、上記のように、通常のクライアントがそのEGOクレデンシャルをGOノードへ送信するように促すのが「空き」である必要はない。その後、GOノード101はEGOリスト203を更新してから、EGOリスト203をすべてのクライアントノード106および103と共有する(動作S511)。GOノード101がクライアントノード103からEGOi=0を受信すると(動作S504:NO)、クライアントノード103は通常のクライアントとしてグループに加入する(動作S514)。
【0038】
3.3)EGOの選択
GOは、EGO候補の位置インデックス(position index, p.i.)を以下のように計算してもよい。
【0039】
【数1】
【0040】
ここで、(x,y)はEGO候補の位置を表し、(x′,y′)はグループ内の各ノードの位置を表し、Nはグループ内のクライアント数を表す。位置インデックスp.i.は、EGOを選択するために使用される。例えば、最小のp.i.を有するノードは、一様分布したノードの場合にはネットワーク領域の中心近くに位置し、非一様なノード分布においては少なくとも大多数のノードに最も近いため、p.i.の高いノードよりも優先される。
【0041】
ただし、EGOを選択するためにGOによって使用されるパラメータには他のさまざまなものがある。EGOリスト内の各ノードはEGOリスト内の他のノードから必ず到達可能でなければならないため、次の条件も必要である。
【0042】
【数2】
【0043】
ここで、(x^,y^)はj番目のEGOの位置を表し、x^の記号「^」は文字xの上のバーを示す。Rはj番目のEGOの送信範囲であり、kはEGOリスト内のEGOの数である。これにより、前に説明したように、急な停止中に接続性を維持することに関して、本発明の方法の堅牢性が保証される。
【0044】
図10を参照して、EGO条件が必要な理由を説明する。一般にスマートフォン、ラップトップコンピュータ、プリンタ、カメラ等のさまざまなデバイスからなるP2Pネットワークでは、各デバイスの通信範囲が相異なるのは全く普通である。GOノードAがクライアントノードBおよびCとともにP2Pグループを構成し、ノードBおよびCはGOノードAの送信範囲Raの内部に位置するが、ノードCはノードCの送信範囲Rcの外部にあり、ノードBもノードBの送信範囲Rbの外部にあると仮定する。そこで、図10は、GOノードAがノードBおよびCの両方を検出することができるが、ノードBおよびCは互いを検出できない一般的状況を示している。したがって、GO権限がノードBに引き継がれた場合、ノードCはそれに接続できなくなり、逆も同様である。
【0045】
このようなP2Pネットワークであってもシームレスな接続性を維持するため、単一のEGOの代わりにEGOのリストが各ノードごとに作成され、各EGOが他のすべてのEGOから到達可能でなければならないことが義務づけられる。これにより、あるクライアントが最高優先度のEGOからビーコンを聴取できない場合でも、少なくとも1つのEGOからビーコンを受信できる可能性が高い。受信されるすべてのビーコンのうちから、クライアントは最高優先度のEGOを選択し、それと結合する。すなわち、2個のノードBおよびCは同じGOノードAに関連づけられているが、互いの送信範囲の外部にあるために直接には互いを聴取できない。このため、BまたはCの一方がEGOとして選択された場合、他方のノードはそのビーコンを受信できない。そこで、ネットワークの堅牢性および障害耐性を高めるため、(互いから到達可能な)複数のEGOという考えが提案される。
【0046】
4.例
図11を参照して、フレーム交換の手順を、図12図14に示す典型例を用いて説明する。NODE1およびNODE2は交互にプローブ要求を送信し、互いを発見するためにチャネルを聴取する(動作S601)。互いを発見すると、グループオーナ(GO)ネゴシエーションおよびEGO選択が行われる(動作S602)。すなわち、GOネゴシエーションでは、NODE2がGOとして選択され、NODE1はP2Pコネクトメッセージ内で緊急グループオーナ(EGO)となる意思を表示する。これは図12(A)に示されている。NODE1は、図12(B)に示すように、EGOとなるためにクレデンシャルをNODE2と共有する。図12(B)のEGOリストのノードIDは、例えば、EGOノード(NODE1)のMACアドレスである。
【0047】
次に、NODE2がビーコンブロードキャストを送出し、これがNODE3およびNODE4によって聴取される(動作S603)。NODE3およびNODE4は、P2Pコネクトフレーム(プロビジョニングディスカバリ要求)をNODE2へ送信し、GOノードNODE2に接続する(動作S604およびS605)。NODE3およびNODE4の両者はそれぞれ自己のEGOクレデンシャルをNODE2と共有する。次に、NODE2がビーコンブロードキャストを送出し、これがNODE5によって聴取される(動作S606)。NODE5は、プロビジョニングディスカバリフレームをNODE2と交換し、GOノードNODE2に接続する(動作S607)。NODE5は自己のEGOクレデンシャルをNODE2と共有する。NODE2は自己のメトリックを計算し、EGOリストを更新し、k個(この例ではk=3)のEGOからなるリストを含むブロードキャストメッセージを送出する。このようにしてNODE2は図13(A)に示すようにすべてのクライアントノードに接続され、図13(B)に示すようなEGOリストを共有する。図13(B)のEGOリストのノードIDは、例えば、各EGOノード(NODE1,NODE4,NODE3)のMACアドレスである。
【0048】
NODE2が退出すると(動作S608)、すべてのEGO(すなわち、優先度順にNODE1、NODE3およびNODE4)はCSMA/CAを用いて同じ動作チャネル上にブロードキャストビーコンを送出する(動作S609)。NODE3およびNODE4は第1優先度のEGOであるNODE1のビーコンを聴取でき、それに接続する。NODE5はNODE1のビーコンを受信できず、図14に示すように、次の優先度のEGOすなわちNODE4に結合する。
【0049】
好ましくは、GOノード101が退出しEGOが自律的なGOとしてビーコン送出を開始すると、クライアントノードは、P2Pコネクトフレームを交換して新しいキーを生成する代わりに、前のセッションのセキュリティキーを用いてP2P招待要求を送信してそれらのEGOに接続する。これにより、新たなセキュリティキーを生成するGOネゴシエーションとWPS(Wireless Protected Setup)の最初の部分を取り除くことができる。こうして、GOネゴシエーションを省略して旧キーを使用することにより、再接続時間を短縮することができる。
【0050】
図11図13は、たまたまNODE2がグループのGOとなる例示的ケースを説明するためのものである。GOは、NODE1が第1優先度のEGOでありNODE4が第2優先度のEGOであるようなk個(この例ではk=3)のEGOからなるリストを管理する。GO(NODE2)が消失すると、すべてのノードがNODE1に接続する。NODE5は、NODE1への接続に失敗した後にNODE4に接続する。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、無線ピアツーピア(P2P)ネットワークに適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
101−106 ノード
201 無線システム
202 ユーザコントローラ
203 EGOリスト
204 プロセッサ
205 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14