特許第6238040号(P6238040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6238040
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】点火装置
(51)【国際特許分類】
   F23Q 1/02 20060101AFI20171120BHJP
   F23D 14/38 20060101ALI20171120BHJP
   F23D 14/54 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   F23Q1/02
   F23D14/38 C
   F23D14/54 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-140501(P2017-140501)
(22)【出願日】2017年7月20日
【審査請求日】2017年7月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517254994
【氏名又は名称】株式会社みな商会
(74)【代理人】
【識別番号】100143111
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 秀夫
(74)【代理人】
【識別番号】100189876
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 将晴
(72)【発明者】
【氏名】藤田 厳
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04459096(US,A)
【文献】 実公昭46−018869(JP,Y1)
【文献】 特公昭51−2906(JP,B2)
【文献】 実公昭44−022359(JP,Y1)
【文献】 実開昭58−181159(JP,U)
【文献】 実開昭58−119039(JP,U)
【文献】 実開昭52−104923(JP,U)
【文献】 実開昭50−088533(JP,U)
【文献】 実開昭59−018165(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23Q 1/02
F23D 14/38
F23D 14/54
B23K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス切断器に装着される点火装置であって、
点火手段と、装着手段とを含み、
前記点火手段は、屈曲可能に連結された先方側軸体と後方側軸体と、前記先方側軸体の火花発生部にて火花を発生させる火花発生手段と、トリガーとを有し、
前記トリガーは、前記後方側軸体の後部に備えられ、
前記先方側軸体が、先方に直線状に延びるように、前記後方側軸体の先端に軸動可能に備えられ、
前記装着手段は、前記ガス切断器をなすガス供給管を抱持するように、前記後方側軸体に備えられ、
前記点火手段が、前記ガス供給管に沿うように装着可能とされ、
点火をさせる際には、先方火口に近い側の前記先方側軸体の先端部を折り下げるように屈曲させて、前記火花発生部を前記ガス切断器の先方火口に近接させた状態でトリガーを操作して、火花を前記火花発生部において発生させて前記ガス切断器に点火し、
点火をさせた後には、前記先方側軸体を前記ガス供給管に沿うように上方に復帰させ、前記火花発生部を前記先方火口から離間させることが可能とされる、
ことを特徴とする点火装置。
【請求項2】
前記火花発生手段には、前記トリガーと前記火花発生部とを連結させる連結軸体が含まれ、
前記連結軸体は、前記先方側軸体の中に格納される先方側連結軸体と、前記後方側軸体の中に格納される後方側連結軸体とからなり、
前記先方側連結軸体と前記後方側連結軸体とが屈曲可能に連結され、
前記先方側軸体と前記後方側軸体がなす第1の屈曲軸と、前記先方側連結軸体と前記後方側連結軸体とがなす第2の屈曲軸とが異なった位置とされ、
前記先方側軸体と前記後方側軸体とを屈曲させた状態において、
前記トリガーの操作による、前記後方側軸体に沿った前記後方側連結軸体の摺動動作が、前記先方側連結軸体を介して前記火花発生部に伝達され、火花が発生される、
ことを特徴とする請求項1に記載の点火装置。
【請求項3】
前記火花発生部が、摩擦により火花を発生させる摩擦手段と点火石とされ、
前記連結軸体を摺動させることにより、前記摩擦手段を点火石に擦り合わせて火花を発生させる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の点火装置。
【請求項4】
前記装着手段は、分割された抱持帯からなり、
各々の前記抱持帯は湾曲された帯であり、各々の前記抱持帯の窪んだ湾曲側を向かい合わせ、抱持する管の直径に適合させて、一体化可能とされている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の点火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス切断器の点火装置に関する。より詳細には、ガス切断器に装着されて使用され、安全に燃料ガスに点火させることができると共に、ガス切断器の使用性を損なわず、耐久性にすぐれた点火装置に関する。また、先方部の形状が異なる複数種類のガス切断器であっても、装着できる汎用性のある点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス切断器は、燃料ガスを供給させるガス供給管と、高圧酸素を供給させる酸素管とが備えられ、燃料ガスと高圧酸素とを独立して先方火口に供給できるようにされている。ガス切断器が使用される際には、まず燃料ガスを供給して、先方火口から噴出させた燃料ガスに点火し、点火後に燃料ガスと高圧酸素との混合比率を調整して、ガス炎を細く集束させてから切断作業が行われる。この準備作業において、最も危険性が高いのは、燃料ガスに点火をする際である。
【0003】
従来のガス切断器には、点火装置が備えられていなかったため、燃料ガスに点火させる際には、先方火口から酸素ガスと燃料ガスの混合ガスを噴出させた状態で、片手でガス切断器を掴んで、他方の手でライターを先方火口に近づけて点火させていた。そのため、点火時にガス炎が手元まで広がって、作業者が火傷をする危険性があった。
【0004】
特に、狭い閉ざされた空間においては、空間内に混合ガスが広がって溜まりやすく、混合ガスが爆発するように点火されることもあった。そこで、安全に燃料ガスに点火させることができる点火装置が求められていた。また、各々の作業者が点火用のライターを携帯している必要があり、ライターを持参し忘れると、作業に支障が出るという課題もあった。
【0005】
特許文献1には、ガス溶接機に装着される吹管の技術が開示されている。特許文献1に記載の技術によれば、先方火口の近傍に圧電素子が内装された点火器本体を取付け、点火用操作部材の操作に連動して、圧電素子に電気的に接続された放電電極を先方火口の前端に設け、燃料ガスに点火させるとされている。また、点火器本体から操作ワイヤーを延ばし、先方火口から離間された位置で点火操作できるようにした例も開示されている。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の技術は、細長い放電電極を先方火口近傍に揺動可能に配設させる必要があり、保管している間や現場における作業中に、放電電極を引っ掛けて破損させやすいという課題があった。また、操作ワイヤーを設けない場合には、先方火口近傍で点火操作させる必要があり、点火の際の危険は解消されなかった、
【0007】
特許文献2にも、ガス切断器の点火装置の技術が開示されている。特許文献2に記載の技術によれば、ガス供給管の側面に回動可能な軸体からなる点火装置を装着させて、格納時には後方に向いている点火部を、点火時には回動させて先方火口に近接させる際に、内蔵された押圧スプリングにより圧電素子に打撃を与えて、火花を発生させるとしている。
【0008】
しかし、特許文献2の技術によれば、軸体を先方に回動させる途中で、先方火口から離れた位置で火花が発生し点火することになった場合には、火炎は手元近くに広がることになり危険であるという課題があった。回動操作をしても火花が発生しなかった場合には、何度も回動操作を繰り返す必要があり、点火装置の耐久性が著しく損なわれるという課題もあった。また、点火部を後方にするように、軸体を後方に折り返した状態では、燃料ガス又は酸素ガスの流量調整操作バルブの近くに軸体が位置し、燃料流量の調整がしにくくなるという課題もあった。
【0009】
特許文献3には、ガス切断器等に取り付けられる点火器の技術が開示されている。特許文献3に記載の技術によれば、1本の銅線を曲げて形成させた取付金具により、高電圧発生装置を内蔵したガス点火器をガス切断器に装着できるようにされている。また、高電圧発生装置にフレキシブル管で覆われた導線を接続させ、フレキシブル管の先端に点火プラグを備えさせている。
【0010】
しかし、特許文献3の技術によれば、取付金具が1本の銅線を曲げて形成され、燃料ガスに点火させる際には、取付金具を折り曲げるようにし、ガス点火器全体を先方火口に向けて傾けるとされている。そうすると、取付金具をなす1本の銅線が繰り返し折り曲げられることにより破断される可能性があると共に、ガス点火器の位置が固定されず使用性が損なわれるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
特許文献1:実開昭57−55877号公報
特許文献2:実開昭51−7424号公報
特許文献3:実開昭57−150365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、ガス切断器に装着されて使用され、安全に燃料ガスに点火させることができると共に、ガス切断器の使用性を損なわず、耐久性にすぐれた点火装置を提供することである。また、先方部の形状が異なる複数種類のガス切断器であっても、装着できる汎用性のある点火装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の発明は、ガス切断器に装着される点火装置であって、 点火手段と、装着手段とを含み、前記点火手段は、屈曲可能に連結された先方側軸体と後方側軸体と、前記先方側軸体の火花発生部にて火花を発生させる火花発生手段と、トリガーとを有し、前記トリガーは、前記後方側軸体の後部に備えられ、前記先方側軸体が、先方に直線状に延びるように、前記後方側軸体の先端に軸動可能に備えられ、前記装着手段は、前記ガス切断器をなすガス供給管を抱持するように、前記後方側軸体に備えられ、前記点火手段が、前記ガス供給管に沿うように装着可能とされ、点火をさせる際には、先方火口に近い側の前記先方側軸体の先端部を折り下げるように屈曲させて、前記火花発生部を前記ガス切断器の先方火口に近接させた状態でトリガーを操作して、火花を前記火花発生部において発生させて前記ガス切断器に点火し、点火をさせた後には、前記先方側軸体を前記ガス供給管に沿うように上方に復帰させ、前記火花発生部を前記先方火口から離間させることが可能とされることを特徴としている。
【0014】
先方側軸体と後方側軸体は、細長く伸びた板体であってもよく、断面矩形形状の筒体とされてもよい。火花発生手段が、挟まれ又は内蔵されるように格納されると好適である。また、材質は金属質が好適であるが限定されない。先方側軸体と後方側軸体とが屈曲される角度は限定されず、装着されるガス切断器の形状・大きさに応じて調整されればよい。また、各々の軸体の長さも限定されないことは勿論のことである。
【0015】
火花発生部においては、点火石と摩擦部との機械的な擦り合わせにより火花を発生させてもよく、圧電素子により発生させた高電圧によって火花放電を発生させてもよく、電子回路により火花放電を発生させてもよく限定されない。例えば、火花発生部が圧電素子とされる場合には、バネとハンマーとを組み合わせて、圧電素子に打撃を加えるようにし火花を発生させるようにすればよい。また、トリガーの近くで発生させた高電圧電気を導電線により火花発生部に導いて、火花を発生させるようにすればよい。
【0016】
火花発生手段は、後方側軸体の後部に備えられたトリガーを操作させることにより、火花発生部から火花を発生させることができればよく限定されない。火花発生部を先方火口に近づけるように、先方側軸体を傾けてから、トリガーの操作により点火させるため点火ミスが無い。またトリガーが、後方側軸体の後部に備えられているため、トリガーを操作しながら、ガス流量の調整が容易である。
【0017】
本発明の第1の発明によれば、ガス切断器の先方火口の位置・形状に合わせるように先方側軸体の基端部を下方に引き下げるようにして、先方側軸体を下方に屈曲させ、火花発生部を先方火口の近くに近接させることができる。また、先方火口から離間された後方側軸体の後部に備えられるトリガーの操作により点火を行うことができる。これにより、作業者が先方火口の近傍に手を近付ける必要がなく、安全に点火を行うことができる。
【0018】
また、点火をさせた後には、先方側軸体の基端部を持上げるようにして、先方側軸体をガス供給管に沿うように復帰することができる。先方側軸体が復帰された状態で、火花発生部は先方火口から離間されるため、火花発生部が高温に晒されにくい。これにより、耐久性が損なわれにくく、ガス切断を行う部分の視認性を悪化させにくく、点火装置がガス供給管に装着された状態でも、従来のガス切断作業に支障を及ぼすことはない。
【0019】
本発明の第2の発明は、第1の発明の点火装置であって、前記火花発生手段には、前記トリガーと前記火花発生部とを連結させる連結軸体が含まれ、前記連結軸体は、前記先方側軸体の中に格納される先方側連結軸体と、前記後方側軸体の中に格納される後方側連結軸体とからなり、前記先方側連結軸体と前記後方側連結軸体とが屈曲可能に連結され、前記先方側軸体と前記後方側軸体がなす第1の屈曲軸と、前記先方側連結軸体と前記後方側連結軸体とがなす第2の屈曲軸とが異なった位置とされ、前記先方側軸体と前記後方側軸体とを屈曲させた状態において、前記トリガーの操作による、前記後方側軸体に沿った前記後方側連結軸体の摺動動作が、前記先方側連結軸体を介して前記火花発生部に伝達され、火花が発生されることを特徴としている。
【0020】
先方側軸体と後方側軸体がなす第1の屈曲軸と、各々の中に格納される先方側連結軸体と後方側連結軸体がなす第2の屈曲軸の位置が異なっているため、先方側軸体と後方側軸体が折り曲げられた状態でも、後方側連結軸体が後方側軸体の中でスライド可能とされ、トリガーによる後方側連結軸体のスライド動作が、先方側軸体の中の先方側連結軸体に伝達される。これにより、折り曲げられた先方側軸体と後方側軸体の中で、先方側連結軸体にトリガーの動作が伝達可能となる。
【0021】
火花発生手段をなす先方側連結軸体と後方側連結軸体とが、先方側軸体と後方側軸体の中に格納されているため、樹脂被覆された露出電線と異なり、ガス切断作業による高温に晒されても、点火装置が破損されにくい。また、火花発生手段をなす軸体が格納されているため、点火手段を壁や配管等にぶつけて、衝撃が加えられても破損されにくい。これにより、点火装置の耐久性を高くさせることができる。
【0022】
本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明の点火装置であって、前記火花発生部が、摩擦により火花を発生させる摩擦手段と点火石とされ、前記連結軸体を摺動させることにより、前記摩擦手段を点火石に擦り合わせて火花を発生させることを特徴としている。
【0023】
火花発生部が、機械的な擦り合わせにより火花を発生させる摩擦手段と点火石とされている。これにより、火花発生部がガス炎に晒されたとしても壊れにくく、耐久性の高い点火装置とすることができる。
【0024】
本発明の第4の発明は、第1から第3の発明の点火装置であって、前記装着手段は、分割された抱持帯からなり、各々の前記抱持帯は湾曲された帯であり、各々の前記抱持帯の窪んだ湾曲側を向かい合わせ、抱持する管の直径に適合させて、一体化可能とされていることを特徴としている。
【0025】
抱持帯は、窪んだ湾曲側を向かい合わせるようにして、ガス供給管を抱持できればよい。例えば、一対の細幅の板体を湾曲させて抱持帯とし、ガス供給管を上下から挟むようにして、ガス供給管を抱持させるように後方側軸体に固定すればよい。一対の抱持帯を一体にさせるには、各々の抱持帯の開放端にフランジ部を設け、フランジ部を重ね合わせ、ボルトとナットにより締め込んで一体とさせればよいが、これに限定されない。
【0026】
直径が異なるガス供給管を抱持させるには、抱持帯を交換し、窪んだ湾曲の曲率を変更させればよい。抱持帯を変更しない場合には、後方側軸部に抱持帯の固定箇所を複数設けておき、抱持帯が固定される位置を選択可能にしておけばよい。これにより、ガス供給管の径が異なるガス切断器であっても、同一の点火装置を装着させることができ、汎用性の高い点火装置とすることができる。
【発明の効果】
【0027】
・本発明の第1の発明によれば、作業者が先方火口の近傍に手を近付ける必要がなく、安全に点火を行うことができる。また、耐久性が損なわれにくく、ガス切断を行う部分の視認性を悪化させにくく、点火装置がガス供給管に装着された状態でも、従来のガス切断作業に支障を及ぼすことはない。
・本発明の第2の発明によれば、折り曲げられた先方側軸体と後方側軸体の空間の中で、先方側連結軸体にトリガーの動作が伝達可能となる。また、点火装置の耐久性を高くさせることができる。
【0028】
・本発明の第3の発明によれば、火花発生部がガス炎に晒されたとしても壊れにくく、耐久性の高い点火装置とすることができる。
・本発明の第4の発明によれば、ガス供給管の径が異なるガス切断器であっても、同一の点火装置を装着させることができ、汎用性の高い点火装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】点火装置をガス切断器に装着させた状態を説明する説明図(実施例1)。
図2】点火装置の構成を説明する説明図(実施例1)。
図3】点火装置の内部構造を説明する説明図(実施例1)。
図4】火花発生手段の動作を説明する説明図(実施例1)。
図5】装着手段を説明する説明図(実施例1)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
ガス切断器に装着される点火装置をなす点火手段に、屈曲可能に連結された先方側軸体と後方側軸体を備えさせた。先方側軸体を下方に屈曲させた状態で、トリガーの操作により火花を発生させてガス切断器に点火し、点火をさせた後には、先方側軸体をガス供給管に沿うように上方に復帰させ、火花発生部を先方火口から離間させることができるようにした。これにより、ガス切断器に安全に点火できると共に、耐久性が高く、従来の作業性を損なわない点火装置とすることができた。
【実施例1】
【0031】
実施例1では、ガス切断器100に安全に点火させることのできる点火装置1を、図1から図5を参照して説明する。図1は、点火装置1の使用状態を説明する説明図を示している。図2は点火装置1の構成を説明する説明図を示している。図3は、点火装置1の内部構造を説明する説明図を示している。図4は、火花発生手段40の動作を説明する説明図を示している。図5は、装着手段80を説明する説明図を示している。
【0032】
まず、点火装置1の構造を、図2から図3を参照して説明する。図2(A)図は、先方側軸体20と後方側軸体30を屈曲させる前の状態の正面図を示し、図2(B)図は、屈曲させた後の状態を示している。図2(C)図は、点火装置1の背面図を示している。図3(A)図は、点火装置1の内部構造を正面図で示し、図3(B)図は、図3(A)図のA−A位置における先方側軸体20の断面図を示している。
【0033】
点火装置1は、点火手段10と装着手段80(図2(C)図,図5参照)とを含んでいる。点火手段10には、屈曲可能に連結された先方側軸体20と後方側軸体30と、先方側軸体の火花発生部60にて火花を発生させる火花発生手段40(図3参照)と、トリガー70とが備えられる。
【0034】
先方側軸体20は、中空の軸体とされており、火花発生部60と、火花発生手段40をなす先方側連結軸体41が格納されている(図3(A)図参照)。先方側軸体20の後方下側には、後方側軸体30と屈曲可能に連結させる第1の屈曲軸21が備えられる(図2(A)図参照)。先方側軸体20の後方上側には、先方側軸体20が屈曲される角度を規制させる規制手段22が備えられている。規制手段22は、湾曲された一対の長穴23と、それに挿通される軸24から構成されている。これにより、先方側軸体20と後方側軸体30とが第1の屈曲軸21を基軸として、下方に屈曲可能とされる。
【0035】
先方側連結軸体41は、後端部が後方側軸体51と屈曲可能に連結される第2の屈曲軸42を備えている(図3(A)図参照)。第2の屈曲軸42と第1の屈曲軸21とが異なった位置とされているため、先方側軸体20と後方側軸体30が屈曲された状態であっても、後方側連結軸体51のスライド動作が先方側連結軸体41に伝達可能とされる。先方側連結軸体41は、先端部に後述する摩擦手段の歯車部分62と係合される平歯部43を備えている(図4参照)。また、上方に突出した凸部44を備えており、後方側連結軸体51のスライド動作が伝達された際に、凸部44がストッパー軸25に接した位置が先方側連結軸体41の停止位置とされる(図4(C)図参照)。
【0036】
先方側軸体20の先端には、火花発生部60が備えられている(図3参照)。火花発生部60は、摩擦手段61と点火石64とされている。点火石64は、点火石保持具65に保持されて、摩擦手段61と接する。点火石保持具65は、後方側が先方側連結軸体のストッパー軸31に係止されており、先方側がU字状に折り返されており、U字形状とされた空間に点火石64が嵌められ、上方から押圧片66を介して押圧用のバネ67により、摩擦手段61に押し付けられている。
【0037】
摩擦手段61は、歯車部分62とヤスリ部分63とが一体にされてなり、軸動可能とされている(図3(B)図参照)。先方側連結軸体41の先端の平歯部43は、歯車部分62のみと噛み合わされ、歯車部分を一方向にのみ軸動させる。歯車部分62と一体とされたヤスリ部分63のみが点火石64と接している。先方側連結軸体41が後方にスライドされてから、先方側連結軸体が後述するコイルバネ52の弾発作用により、前方に押し出されることにより、歯車部分62が軸動され、それに伴いヤスリ部分63も軸動し、ヤスリ部分が点火石64と擦れ合って火花が発生される(図4(C)図参照)。
【0038】
後方側軸体30も、中空の軸体とされており、火花発生手段40をなす後方側連結軸体51が格納されている(図3(A)図参照)。また、後方側軸体30の後部にはトリガー70が備えられている。また、トリガー70と後方側連結軸体51との間には、後方側連結軸体を弾発作用により前方に押し出させるコイルバネ52が装着されている。
【0039】
後方側連結軸体51は、中間位置に上方に突出した凸部53を備えており、後方側連結軸体51が押し出されて停止される位置が、凸部53がストッパー軸31に接した位置とされる(図4(C)図参照)。また、後方側連結軸体51には、後述する操作軸73に引っ掛かる二段に形成された凹部54が備えられている(図3(A)図,図4(A)図参照)。
【0040】
トリガー70は、下方が細幅の指掛け部71とされ、上方が左右後方に折り返された折曲部72とされている。折曲部72の間には、折曲部に挟まれるようにして後方側連結軸体51が挿通されている。折曲部72の上端部は、トリガー軸32により後方側軸体30に回動自在に軸支され、折曲部72の後方にはコイルバネ52が係止されている。トリガー軸32の下方の折曲部72には、折曲部を貫通するように操作軸73が備えられ、後方側連結軸体51の前記凹部54に引っ掛けられる。
【0041】
次に、火花発生手段40をなす先方側連結軸体41と後方側連結軸体51のスライド動作について、図4を参照して説明する。図4の各々の図では、各々の連結軸体の動作の理解を容易にするために、トリガーを一点鎖線で示し、後方側連結軸体51を実線で示している。同様に、火花発生部60について先方側連結軸体41に噛み合わされる歯車部分62のみを示している。
【0042】
図4(A)図は、トリガー70の操作前の状態を示し、図4(B)図は、トリガー70が後方に引っ張られた状態を示している。図4(C)図は、後方側連結軸体51が前方に押し出された状態を示している。トリガー70が後方に引かれる前においては、トリガーに備えられた操作軸73が後方側連結軸体51の凹部の下方段部55に引っ掛かった状態とされ、コイルバネ52が縮んだ状態となっている(図4(A)図参照)。
【0043】
トリガー70が後方に引かれた状態を、図4(B)図を参照して説明する。トリガー70が後方に引かれると、凹部の下方段部55に引っ掛かった操作軸73の移動により後方側連結軸体51が後方に移動され、コイルバネ52が伸張される(矢印A参照)と共に、後方側連結軸体51が後方に引き込まれる(矢印B参照)。それに連動して先方側連結軸体41も後方に引き込まれる(矢印C参照)。
【0044】
更にトリガー70が後方に引かれて、操作軸73が凹部の下方段部55から外れた状態を、図4(C)図を参照して説明する。更にトリガー70が後方に引かれると、操作軸73が凹部の下方段部55から外れ、上方段部56の位置となる。そうすると、伸張されていたコイルバネ52が弾発力により収縮され(矢印D参照)、後方側連結軸体51が後方側軸体30に沿って先方にスライドされる(矢印E参照)。
【0045】
そして、後方側連結軸体51のスライド動作が先方側連結軸体41を介して(矢印F参照)、火花発生部をなす歯車部分62を軸動させて(矢印G参照)、ヤスリ部分63と点火石64を擦り合わせて、火花が発生される(図3参照)。トリガー70を前方に移動させると、操作軸73は凹部の下方段部55に引っ掛かった状態に戻る(図4(A)図参照)。
【0046】
次に、装着手段80の構成を図2(C)図及び図5を参照して説明する。図5の各々の図では、点火装置1の内部構造については記載を省略している。図5(A)図は、点火装置1を装着させたガス切断器100の背面図を示している。図5(B)図は、図5(A)図のA−A位置断面図を示し、図5(C)図は、ガス供給管の径が異なる例を示している。
【0047】
装着手段80は、二対の抱持帯81,82とされる。各々の抱持帯は、ガス供給管101の連結部をなす六角ナット103を挟んだ前方と後方を抱持させるように装着される。後方側に配された抱持帯82は、ガス供給管の径が太い基端側を抱持し、先方側に配された抱持帯81はガス供給管の径が細い前方側を抱持させている。夫々の抱持帯81,82が六角ナットに引っ掛かり、点火操作をしている間に、点火装置1の位置がずれることがなく、ガス切断器100に点火装置1が堅固に装着される(図5(A)図参照)。
【0048】
各々の抱持帯81,82は、上方側抱持帯83と下方側抱持帯93とに分割されている。上方側抱持帯83は、後方側軸体30に螺子により固定されるフランジ部84と、湾曲部85と、分割された抱持帯を一体化させる一体化用フランジ部86とを備えている。下方側抱持帯93は、後方側軸体に形成された係止孔に引っ掛けるフランジ部94と、湾曲部95と、分割された抱持帯を一体化させる一体化用フランジ部96とを備えている(図5(B)図参照)。また、後方側軸体30に形成された係止孔33,34は、上下の複数の位置に設けられる。
【0049】
ガス供給管101を抱持させる際には、上方側抱持帯83を後方側軸体30に螺子により固定させる。そして、上方側抱持帯の湾曲部85にガス供給管101を沿わせてから、下方側抱持帯の湾曲部95が向かい合う位置となるように、適合した位置の係止孔33に下方側抱持帯のフランジ部94を挿し込み、上下の抱持帯の一体化用フランジ部86,96を一体化させ、ガス供給管101を抱持させる。径が太い種類のガス供給管104を抱持させる場合には、下方側抱持帯93を係止させる複数の係止孔33,34のうち、下方側の係止孔34を選択すれば、湾曲部の形状が異なる抱持帯に交換しなくてもよい(図5(C)図参照)。
【0050】
最後に、図1を参照して、点火装置1の使用状態を説明する。図1(B)図及び図1(C)図においては、理解を容易にするためガス切断器100を破線で示している。図1(A)図はガス切断器100を示し、図1(B)図は、ガス切断器100に点火装置1を装着させた状態を示している。図1(C)図は、ガス切断器100に点火をする状態を示している。
【0051】
点火をする際には、先方側軸体20の基端部を摘んで下方に屈曲させて先方火口102に火花発生部60を近接させる(図1(C)図)。そして、燃料ガスを噴出させてからトリガー70を操作し、ガス切断器100を点火させる。点火をした後には、先方側軸体20の基端部を摘んで上方に屈曲させて、先方側軸体20をガス供給管101に沿うように上方に復帰させ、先方火口102から離間させる。すなわち、点火装置1を装着させた初期状態に復帰させる(図1(B)図)。これにより、ガス切断器に安全に点火できると共に、耐久性の高い点火装置とすることができた。
(その他)
【0052】
・実施例1では、火花発生手段が連結軸体の例を説明したが、これに限定されないことは勿論のことである。例えば、火花発生手段が圧電素子とされる場合には、圧電素子にバネとハンマーにより打撃を与えて電気を発生させ、圧電素子から延出させた導電線端部から火花を発生させればよい。
・実施例1では、第1の屈曲軸を先方側軸体の後方下側に位置させたが、先方側軸体の後方上部に位置させてもよい。第1の屈曲軸を後方上部に位置させた場合には、第2の屈曲軸を第1の屈曲軸の下方に位置させればよい。
【0053】
・実施例1では、抱持帯をなす湾曲部の形状を変えずに、異なる径のガス供給管を抱持させた例を説明したが、ガス供給管の径に応じて、湾曲部の形状が異なる抱持帯に取り換えてもよいことは勿論のことである。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記した説明に限られず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0054】
1…点火装置、100…ガス切断器、
10…点火手段、40…火花発生手段、70…トリガー、80…装着手段、
20…先方側軸体、21…第1の屈曲軸、22…規制手段、23…長穴、24…軸、
25…ストッパー軸、
30…後方側軸体、31…ストッパー軸、32…トリガー軸、33,34…係止孔、
41…先方側連結軸体、42…第2の屈曲軸、43…平歯部、44…凸部、
51…後方側連結軸体、52…コイルバネ、53…凸部、54…凹部、55…下方段部、
56…上方段部、
60…火花発生部、61…摩擦手段、62…歯車部分、63…ヤスリ部分、
64…点火石、65…点火石保持具、66…押圧片、67…バネ、
71…指掛け部、72…折曲部、73…操作軸、
81,82…抱持帯、
83…上方側抱持帯、84…フランジ部、85…湾曲部、86…一体化用フランジ部、
93…下方側抱持帯、94…フランジ部、95…湾曲部、96…一体化用フランジ部、
101,104…ガス供給管、102…先方火口、103…六角ナット
【要約】
【課題】安全に燃料ガスに点火させることができると共に、耐久性の高い点火装置を提供すること。
【解決手段】ガス切断器に装着される点火装置に、点火手段と、装着手段とを含み、前記点火手段は、屈曲可能に連結された先方側軸体と後方側軸体と、前記先方側軸体の火花発生部にて火花を発生させる火花発生手段と、トリガーとを有し、前記トリガーは、前記後方側軸体の後部に備えられ、前記装着手段は、前記ガス切断器をなすガス供給管を抱持するように、前記後方側軸体に備えられ、前記点火手段を、前記ガス供給管に沿うように装着させるようにした。点火をさせる際には、前記先方側軸体を下方に屈曲させて前記ガス切断器に点火し、点火をさせた後には、前記先方側軸体を前記ガス供給管に沿うように上方に復帰させ、前記火花発生部を前記先方火口から離間させることができるようにした。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5