特許第6238046号(P6238046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238046
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】微生物の検査方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20171120BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C12Q1/02
   G01N21/64 F
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-112978(P2013-112978)
(22)【出願日】2013年5月29日
(65)【公開番号】特開2014-230514(P2014-230514A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(72)【発明者】
【氏名】保坂 幸男
(72)【発明者】
【氏名】伏田 真矢
(72)【発明者】
【氏名】中田 明子
(72)【発明者】
【氏名】小池 一彦
【審査官】 池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−244395(JP,A)
【文献】 特開2008−054509(JP,A)
【文献】 特開2004−187534(JP,A)
【文献】 特開2007−135582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−3/00
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶から排出される微生物入りのバラスト水を試料として透明な試料容器に投入し、前記試料容器に投入された試料中の微生物量を測定するための微生物の検査方法であって、
前記試料中の微生物量の測定は、試料及び蛍光染色試薬を撹拌・混合して試料を調製する試料調製工程と、前記試料に特定波長の励起光を照射して得られた蛍光発光の発光数から微生物量を算出する微生物量算出工程と、を含むものであり、
前記試料調製工程は、一定量の試料及び前記蛍光染色試薬を撹拌・混合する蛍光染色工程と、該蛍光染色工程後の溶液を一定時間静置する静置工程と、前記静置工程後の溶液に蛍光発光しない液体で希釈する希釈工程と、を含み、
前記染色工程は、前記試料容器に該試料容器全体の容積の1〜10%容量の試料を投入するとともに、前記試料容器に前記試料1容量に対して1%容量の蛍光染色試薬を投入して混合・撹拌し
前記希釈工程では、前記試料容器に該試料容器全体の容積の90〜99%容量の希釈液を投入して希釈することを特徴とする微生物の検査方法。
【請求項2】
前記蛍光染色試薬は、FDAを使用し、希釈前の試料中の濃度が0.01mMとなるように添加してなる請求項1記載の微生物の検査方法。
【請求項3】
船舶から排出される微生物入りのバラスト水を試料として透明な試料容器に投入し、前記試料容器に投入された試料中の微生物量を測定するための微生物の検査方法であって、
前記試料中の微生物量の測定は、試料及び蛍光染色試薬を撹拌・混合して試料を調製する試料調製工程と、前記試料に特定波長の励起光を照射して得られた蛍光発光の発光数から微生物量を算出する微生物量算出工程と、を含むものであり、
前記試料調製工程は、一定量の試料及び前記蛍光染色試薬を、試薬添加後の試料中の試薬の濃度が0.01mMとなるように添加し、撹拌・混合する蛍光染色工程と、該蛍光染色工程後の溶液を一定時間静置する静置工程と、前記静置工程後の溶液にpH調整剤を添加するpH調整工程と、を含み、
前記pH調整工程は、前記蛍光染色工程での溶液のpHが8.0であったときに、当該pH調整工程にてpHが6.0となるようにpH調整剤を添加し
前記試料調製工程では、前記蛍光染色試薬としてFDAを使用することを特徴とする微生物の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物の検査方法に関し、特にバラスト水等に含まれて生存しているプランクトン等の微生物を検出するのに適した微生物の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物を積載していない船舶は、当該船舶を安定させるためにバラスト水を搭載して航行し、荷物を積載する海域において前記バラスト水を排出する。
バラスト水は、通常、搭載する海域と異なる海域に排出されるため、該バラスト水に含まれるプランクトンや細菌等の微生物を本来の生息地以外の海域に運び、生態系を破壊する等の問題を引き起こす虞がある。
【0003】
このような問題に対処するため、バラスト水の規制に関する国際的なルールが策定され、「船舶のバラスト水および沈殿物の規制および管理のための国際条約(バラスト水管理条約)」が採択されている。
【0004】
上記バラスト水管理条約に関連する「バラスト水サンプリングに関するガイドライン(G2)」は、「バラスト水排出基準(D−2)」において、船舶から排出されるバラスト水に含まれて生存している微生物の許容個体数を、例えば、最小サイズが50μm以上の微生物(以下、「Lサイズ生物」という。)については10個/m以下、最小サイズが10μm以上50μm未満の微生物(以下、「Sサイズ生物」という。)については10個/mL以下と、前記微生物の最小サイズにより区分して規定している。
【0005】
現在までに、上記バラスト水を排出する際に上記排出基準を満たしているか否かを確認するための手法として、送水ポンプで汲み上げた海水をフローセルに通水して画像計測するもの(例えば、特許文献1)、送水ポンプで汲み上げた海水を目開きの異なるフィルタユニットに通水してフィルタ上の微生物を発光させて微生物を計数するもの(例えば、特許文献2)などの微生物検査装置が知られている。
【0006】
上記特許文献1に記載の微生物検査装置によれば、液体の検体を流しつつ該検体中に存在する生細胞を持つ生物を染色する染色部と、前記染色が施された検体を流しつつ前記生物の濃度を高めるように濃縮する濃縮部と、前記濃縮された検体中の前記生物を含む個体の画像情報を取得する個体計測部と、前記個体計測部より出力された前記個体の画像情報より前記生物の測定を行う制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
これにより、検体の液体中の生物の染色工程、液体中の生物の濃縮工程、液体中の生物の情報取得の工程等をフロー方式で行えるため、各方式をバッチ方式で行う手法と比べて、ひとつの工程を終えた検体の一部が次の工程に進むまでの待機時間を大幅に短縮、または0とすることができ、待機時間での染色の状態の劣化を防ぐ意味で安定した生物の生死の情報を取得することができるといったメリットがある。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の微生物検査装置にあっては、送水ポンプで汲み上げた海水を各種工程に順次通水させるものであり、装置が大掛かりとなり、また、製造コスト高となる問題がある。そして、各種工程に順次通水させて待機時間が短縮されるものであるが、測定が完了するには少なくとも数時間かかるといった問題がある。
【0008】
また、上記特許文献2に記載の微生物検査装置は、海水を目開きの異なる3種のフィルタを直列に配置してなるフィルタユニットに通水する工程と、フィルタに補集され生存している微生物による発色、発光および蛍光のうちいずれかを発生させる工程と、発色、発光および蛍光のうちいずれかを検出して画像解析によってバラスト水または海水中の微生物数を計数する工程とをそなえたことを特徴とするものである。
これにより、段階的なサイズごとの微生物の捕捉を実現でき、その結果、サイズごとの基準で規制された許容残存基準を満たしているかどうかを迅速に測定できるといったメリットがある。
【0009】
しかしながら、特許文献2記載の微生物検査装置にあっても、特許文献1と同様に送水ポンプで汲み上げた海水を各種工程に順次通水させるものであり、装置が大掛かりとなり、製造コスト高になる問題点があった。
【0010】
そこで、本出願人は、上記問題点にかんがみ、バッチ式の測定セルを利用することにより、バラスト水中の微生物の量を簡便かつ短時間で、しかも高精度に測定することができる微生物の検査方法を、特願2012−185523号により提案しているところである。
【0011】
本出願人が提案した微生物の検査方法によれば、バッチ式の試料容器内で試料に蛍光染色試薬を添加した試料溶液の撹拌・混合を行う撹拌混合工程と、前記試料溶液を撹拌しつつ前記試料容器の被照射面に励起光を照射する励起工程と、前記励起光により蛍光発光した微生物の蛍光をカウントする受光工程と、該受光工程により検出した発光数から試料容器中の試料に含まれる微生物量を算出する微生物数推定工程と、を備えたものである。
これにより、極めて短時間で微生物が明るく発光し、バラスト水中の微生物の量を簡便かつ短時間で計測することができる、また、蛍光発光の厚み部分が薄くなるため、バックグラウンドと微生物の蛍光発光との光量差が極めて明確となり、微生物の蛍光発光の検出精度を向上することができる、といった作用・効果がある。
【0012】
上述の微生物の検出原理としては、蛍光染色したプランクトンなどの微生物を光電子増倍管にて電気信号にて検出し、連続的に検出されるバックグラウンド成分(約0.9Vの電圧)と、生きたプランクトンが通過する蛍光強度とを比較して、プランクトンが通過したときの蛍光強度の山の高さ(電圧の高さ)によりバックグラウンド成分と識別することができるものである(例えば、図6参照)。ここで、バックグラウンド成分とは、サンプル水自体の蛍光(自家蛍光や染色剤がサンプル水中で自然分解して蛍光したもの。)である。
【0013】
しかしながら、上記提案にあっては、バックグラウンド成分が大きくなるに従ってノイズ成分も大きくなる傾向にあり、その結果、バックグラウンド成分が大きいとSN比が低くなり、検出精度に影響を及ぼすといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−85898号公報
【特許文献2】特開2007−135582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記問題点にかんがみ本発明は、バックグラウンド成分の蛍光発光を低減させて検出精度を向上させることができる微生物の検出方法を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、船舶から排出される微生物入りのバラスト水を試料として透明な試料容器に投入し、前記試料容器に投入された試料中の微生物量を測定するための微生物の検査方法であって、前記試料中の微生物量の測定は、試料及び蛍光染色試薬を撹拌・混合して試料を調製する試料調製工程と、前記試料に特定波長の励起光を照射して得られた蛍光発光の発光数から微生物量を算出する微生物量算出工程と、を含むものであり、前記試料調製工程は、一定量の試料及び前記蛍光染色試薬を撹拌・混合する蛍光染色工程と、該蛍光染色工程後の溶液を一定時間静置する静置工程と、前記静置工程後の溶液に蛍光発光しない液体で希釈する希釈工程と、を含み、前記染色工程は、試料容器に該試料容器全体の容積の1〜10%容量の試料を投入するとともに、前記試料容器に前記試料1容量に対して1%容量の蛍光染色試薬を投入して混合・撹拌し、前記希釈工程では、前記試料容器に該試料容器全体の容積の90〜99%容量の希釈液を投入して希釈することを特徴とする微生物の検査方法とした。
【0017】
また、請求項2記載の発明では、前記蛍光染色試薬としてFDAを使用し、希釈前の試料中の濃度が0.01mMとなるように添加することを特徴とする。
【0019】
請求項記載の発明では、船舶から排出される微生物入りのバラスト水を試料として透明な試料容器に投入し、前記試料容器に投入された試料中の微生物量を測定するための微生物の検査方法であって、前記試料中の微生物量の測定は、試料及び蛍光染色試薬を撹拌・混合して試料を調製する試料調製工程と、前記試料に特定波長の励起光を照射して得られた蛍光発光の発光数から微生物量を算出する微生物量算出工程と、を含むものであり、前記試料調製工程は、一定量の試料及び前記蛍光染色試薬を、試薬添加後の試料中の試薬の濃度が0.01mMとなるように添加し、撹拌・混合する蛍光染色工程と、該蛍光染色工程後の溶液を一定時間静置する静置工程と、前記静置工程後の溶液にpH調整剤を添加するpH調整工程と、を含み、前記pH調整工程は、前記蛍光染色工程での溶液のpHが8.0であったときに、当該pH調整工程にてpHが6.0となるようにpH調整剤を添加し、前記試料調製工程では、前記蛍光染色試薬としてFDAを使用することを特徴とする微生物の検査方法とした。
【0020】
そして、請求項5記載の発明では、前記pH調整工程において、前記蛍光染色工程での溶液のpHが8.0であったときに、当該pH調整工程にてpHが6.0となるようにpH調整剤を添加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明によれば、まず、蛍光染色工程において少量の試料に蛍光染色試薬を撹拌・混合し、次いで、静置工程において溶液を一定時間静置し、さらに、希釈工程において蛍光発光しない液体で希釈するものであるから、前記蛍光染色工程にて少量の試料中に含まれる微生物と蛍光染色試薬とが撹拌・混合されて、極めて斑のない状態できれいに染色され、前記希釈工程にて希釈液が添加されたときには、もはや蛍光染色試薬の染色活性度が作用せず、最終工程の微生物量算出工程においては、バックグラウンド成分の蛍光発光を低減させ、SN比を高くして、検出精度に格段に向上させることが可能となるのである。
【0022】
また、前記蛍光染色工程において、試料容器に該試料容器全体の容積の1〜10%容量の試料を投入するとともに、前記試料容器に前記試料1容量に対して1%容量の蛍光染色試薬を投入して撹拌・混合すると、さらに検出精度を向上させることができる。
【0023】
光染色試薬としては、FDAを使用し、希釈前の試料中の濃度が0.01mMとなるように添加するのが効果的である。
【0024】
一方、請求項記載のように、前記試料調製工程が、一定量の試料及び前記蛍光染色試薬を撹拌・混合する蛍光染色工程と、該染色工程後の溶液を一定時間静置する静置工程と、該静置工程後の溶液にpH調整剤を添加するpH調整工程と、を含むものであった場合は、蛍光染色工程において試料のpHが弱アルカリ性であると、試料中に含まれる微生物と蛍光染色試薬とが撹拌・混合されて、極めて斑のない状態できれいに染色され、前記pH調整工程にてpH調整剤が添加されて試料のpHが弱酸性になったときには、もはや蛍光染色試薬の染色活性度が作用せず、最終工程の微生物量算出工程においては、バックグラウンド成分の蛍光発光を低減させ、SN比を高くして、検出精度格段に向上させることが可能となるのである。
【0025】
このとき前記pH調整工程において、前記蛍光染色工程での溶液のpHが8.0であったときに、当該pH調整工程にてpHが6.0となるようにpH調整剤を添加すると、さらに検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施例に係る微生物の検査方法の概略工程図である。
図2】本発明の第2実施例に係る微生物の検査方法の概略工程図である。
図3】本発明の微生物の検査方法に適用される検査装置の概略図である。
図4】バックグラウンド成分の一例(希釈しないもの)を示す電圧波形図である。
図5】バックグラウンド成分の一例(希釈するもの)を示す電圧波形図である。
図6】従来のバックグラウンド成分と、生きたプランクトンが通過する蛍光強度とを比較する電圧波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第1実施例に係る微生物の検査方法の概略工程図であり、図2は本発明の第2実施例に係る微生物の検査方法の概略工程図である。
【0028】
図1及び図2に示すように、本発明の微生物の検査方法は、バラスト水を試料として採取し、この試料と蛍光染色試薬とを撹拌・混合して試料を調製する試料調製工程と、微生物検査装置1を使用して試料調製工程で調製した試料に特定波長の励起光を照射して得られた蛍光発光の発光数から微生物量を算出する微生物量算出工程と、を含むものである。
本発明の第1実施例にあっては、前記試料調製工程が、一定量の試料及び前記蛍光染色試薬を撹拌・混合する蛍光染色工程と、該蛍光染色工程後の溶液を一定時間静置する静置工程と、該静置工程後の溶液に蛍光発光しない液体で希釈する希釈工程と、を含むものである。
また、本発明の第2実施例にあっては、前記試料調製工程が、一定量の試料及び前記蛍光染色試薬を撹拌・混合する蛍光染色工程と、該蛍光染色工程後の溶液を一定時間静置する静置工程と、該静置工程後の溶液にpH調整剤を添加するpH調整工程と、を含むものである。
【0029】
図1を参照して第1実施例の試料調製工程を説明すると、作業者は、あらかじめ光を透過する透明な材質(例えば、ガラスや石英やアクリル樹脂等)で形成された、例えば、100ml容積の試料容器2を用意しておく。そして、この試料容器2に試料を採取し、蛍光染色試薬等を添加して調製した後、試料容器2を微生物検査装置1内に収容して微生物量を算出することになる。
【0030】
微生物量の測定に際しては、あらかじめ大量のバラスト水を一定量に濃縮しておくのが望ましい。そして、作業者は一定量に濃縮されたバラスト水からピペット等を使用して試料として採取し、試料容器2の全容積の1〜10%容量の試料を試料容器2に投入する。例えば、試料容器の全容積が100ml(ミリリットル)であれば、試料容器2に投入する量としては1ml〜10ml(ミリリットル)の範囲であり、より好ましくは5ml(ミリリットル)とするのがよい。
【0031】
次に、試料容器2内に蛍光染色試薬を添加する。この蛍光染色試薬は一般的に知られているカルセインAM(Calcein-AM,ドイツ国Promocell GMBH 社製)や、FDA(Fluorescein
diacetate)などを使用することができる。カルセインAMは、植物性プランクトンに対して染色しやすい傾向がある一方、FDAは、動物性プランクトンに対して染色しやすい傾向がある。本発明にあっては、染色試薬として、FDAを使用するのが好ましい。このとき、FDAの濃度が1mMである場合、試料容器2には、前記試料1容量に対して1%容量の染色試薬を投入するのが好ましい。すなわち、試料を1ml(ミリリットル)採取した場合は、1mM濃度のFDAを0.01ml(ミリリットル=10μL)添加し、試料を5ml(ミリリットル)採取した場合は、1mM濃度のFDAを0.05ml(ミリリットル=50μL)添加し、試料を10ml(ミリリットル)採取した場合は、1mM濃度のFDAを0.1ml(ミリリットル=100μL)添加するとよい。その後、作業者は試料容器2に回転子などの撹拌手段によって試料溶液を混合・撹拌する(図1の蛍光染色工程)。
【0032】
次に、作業者は上記蛍光染色工程後の試料容器2を一定時間静置する(図1の静置工程)。このときの条件としては、20℃の環境下で、約30分間静置するのが好ましい。
【0033】
さらに、作業者は上記静置工程後の試料容器2に蛍光発光しない液体で希釈するのである(図1の希釈工程)。希釈に際しては、例えば、バックグラウンドノイズの少ない(蛍光を発しない)人工海水を使用するのがよく、希釈量として試料容器2に投入する量は、試料の採取量に対応した90ml〜99ml(ミリリットル)の範囲とするのがよい。なお、蛍光発光しない液体としては、人工海水に限ることなく、例えば、蛍光発光しない液体として、蛍光染色試薬添加前の染色前の生物入り試料が適用可能である。これにより、蛍光発光しない液体(例えば、人工海水)を別途用意(調製)する必要がないというメリットがある。
【0034】
上記のように、まず、少量の試料に蛍光染色試薬を撹拌・混合し、次いで、この溶液を一定時間静置し、さらに、静置後の溶液に蛍光発光しない液体で希釈すると、少量の試料中に含まれる微生物と蛍光染色試薬とが撹拌・混合されて、極めて斑のない状態できれいに染色され、希釈液が添加されたときには、もはや蛍光染色試薬の染色活性度が作用せず、バックグラウンド成分の蛍光発光を低減させることが可能となるのである。
【0035】
次に、図2を参照して第2実施例の試料調製工程を説明する。上記同様、作業者は、あらかじめ100ml容積の試料容器2を用意しておく。そして、作業者は一定量に濃縮されたバラスト水からピペット等を使用して試料として採取し、試料容器2の全容積の容量の試料を試料容器2に投入する。例えば、試料容器の全容積が100ml(ミリリットル)であれば、試料容器2に100ml(ミリリットル)の試料を投入しておく。そして、蛍光染色試薬としてFDAを使用するとともに、試料100ml(ミリリットル)に対し、1mM濃度のFDAを1ml(ミリリットル=1000μL)添加するとよい。その後、作業者は試料容器2に回転子などの撹拌手段によって試料溶液を混合・撹拌する(図2の蛍光染色工程)。このときの溶液のpH8.0付近の弱アルカリ性である。
【0036】
そして、作業者は上記蛍光染色工程後の試料容器2を一定時間静置する(図2の静置工程)。このときの条件としては、20℃の環境下で、約30分間静置するのが好ましい。
【0037】
次に、作業者は上記静置工程後の試料容器2にpH調整剤を添加して溶液のpHがpH6.0付近の弱酸性とするのである(図2のpH調整工程)。pH調整剤としては、例えば、MES bufferを使用し、pHが8.0から6.0に移行するように適宜、濃度や投入量を調節するとよい。
【0038】
上記のように、まず、試料に蛍光染色試薬を撹拌・混合し、次いで、この溶液を一定時間静置し、さらに、静置後の溶液にpH調整剤を添加してpH調整すると、最初の蛍光染色工程ではpHが弱アルカリ性であり、試料中に含まれる微生物と蛍光染色試薬とが撹拌・混合されて、極めて斑のない状態できれいに染色され、最後のpH調整工程のpH調整剤が添加されたときにはpHが弱酸性に移行し、もはや蛍光染色試薬の染色活性度が作用せず、バックグラウンド成分の蛍光発光を低減させることが可能となるのである。
【0039】
図1の第1実施例及び図2の第2実施例に記載の試料調製工程後は、以下の微生物量算出工程に至る。これを図3を参照して説明する。
【0040】
図3は本発明の微生物の検査方法に適用される検査装置の概略図である。該検査装置1の原理を説明すると、試料容器2を検査装置1にセットし、操作部3の測定開始ボタンの押下により、所定時間後LED光源4が点灯し、励起光用バンドパスフィルタ5を透過した光が試料容器2に照射されることになる。このとき、例えば、波長特性として450nm〜490nmの波長の光が照射され、試料容器2内の検体(微生物)が蛍光発光することになる。そして、この蛍光が蛍光用バンドパスフィルタ6を透過して光電子増倍管(PMT)7により検知されることになる。
【0041】
光電子増倍管(PMT)7は、光電効果の利用により光エネルギが電気エネルギに変換されるとともに、電流増幅機能が付加され、高感度に蛍光発光を検知することができる。検知した電気信号はCPU基板8に送られ、一定しきい値以上の受光波形がカウントされることになる。
【0042】
さらに、CPU基板8では、受光波形カウント値から前記試料容器5内の水100ml(ミリリットル)中に存在する微生物数を推定して、排水基準を満たすか否かを表示部9に表示するのである。
【0043】
以下、上記第1実施例の結果を検証する。
【実施例1】
【0044】
上述した第1実施例のように、希釈によってバックグラウンドが低減し、その結果ノイズが減少し、SN比が向上するか否かを検証した。
【0045】
希釈しないものの一例として、全容積が100ml(ミリリットル)の試料容器2に対し、試料として生物入りの海水5ml(ミリリットル)と、生物がいない人工海水95ml(ミリリットル)と、1mM濃度のFDAを1ml(ミリリットル)とを投入し、撹拌・混合を行った。そして、この試料容器2を一定時間静置し(20℃の環境下で、約30分間静置)、検査装置1により測定した。そのときのバックグラウンド成分を図4(a)に示す。また、拡大図を図4(b)に示す。このときのバックグラウンド成分の電圧は0.3977Vであり、信号電圧Sが0.006118であり、雑音電圧Nが0.001157であり、S/N比は5.2878となった。
【0046】
希釈するものの一例として、前述の段落0029〜0034の手法により試料の調整を行い、検査装置1により測定した。そのときのバックグラウンド成分を図5(a)に示す。また、拡大図を図5(b)に示す。このときのバックグラウンド成分の電圧は0.03977Vであり、信号電圧Sが0.006354であり、雑音電圧Nが0.000479であり、S/N比は13.2651となった。
【0047】
希釈しないものと希釈するものとを比較すると、バックグラウンド成分の電圧は約20分の1に低減し、S/N比は約2.5倍高くなった。
【0048】
以上のように本実施形態によれば、蛍光染色工程において少量の試料に蛍光染色試薬を撹拌・混合し、次いで、静置工程において溶液を一定時間静置し、さらに、希釈工程において蛍光発光しない液体で希釈するものであるから、前記蛍光染色工程にて少量の試料中に含まれる微生物と蛍光染色試薬とが撹拌・混合されて、極めて斑のない状態できれいに染色され、前記希釈工程にて希釈液が添加されたときには、もはや蛍光染色試薬の染色活性度が作用せず、最終工程の微生物量算出工程においては、バックグラウンド成分の蛍光発光を低減させて、SN比を高くして、検出精度に格段に向上させることが可能となるのである。
【0049】
また、前記試料調製工程が、一定量の試料及び前記蛍光染色試薬を撹拌・混合する蛍光染色工程と、該蛍光染色工程後の溶液を一定時間静置する静置工程と、該静置工程後の溶液にpH調整剤を添加するpH調整工程と、を含むものであった場合は、蛍光染色工程において試料のpHが弱アルカリ性であると、試料中に含まれる微生物と蛍光染色試薬とが撹拌・混合されて、極めて斑のない状態できれいに染色され、前記pH調整工程にてpH調整剤が添加されて試料のpHが弱酸性となったときには、もはや蛍光染色試薬の染色活性度が作用せず、最終工程の微生物量算出工程においては、バックグラウンド成分の蛍光発光を低減させ、SN比を高くして、検出精度に格段に向上させることが可能となるのである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、バックグラウンド成分の蛍光発光を低減させて検出精度を向上させることができる微生物の検出方法などに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 検査装置
2 試料容器
3 操作部
4 LED光源
5 励起光用バンドパスフィルタ
6 蛍光用バンドパスフィルタ
7 光電子増倍管(PMT)
8 CPU基板
9 表示部

図1
図2
図3
図4
図5
図6