(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238049
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】放射性廃棄物の埋設処分施設
(51)【国際特許分類】
G21F 9/36 20060101AFI20171120BHJP
G21F 9/34 20060101ALI20171120BHJP
E02D 31/02 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
G21F9/36 541D
G21F9/36 541M
G21F9/36 541E
G21F9/34 C
E02D31/02
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-167097(P2013-167097)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-34798(P2015-34798A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】石井 卓
(72)【発明者】
【氏名】白石 知成
【審査官】
藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−285300(JP,A)
【文献】
特開平05−302998(JP,A)
【文献】
特開昭60−013297(JP,A)
【文献】
特開昭62−130398(JP,A)
【文献】
米国特許第4955983(US,A)
【文献】
日本原燃(株)低レベル放射性廃棄物埋設センターの状況について,[online],日本,日本原燃株式会社,2008年 7月 3日,p.1-17,[検索日 平成29年2月27日],URL,http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/028/shiryo/08072410/002.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/36
G21F 9/34
E02D 31/00−31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性廃棄物を地中に埋設処分する放射性廃棄物の埋設処分施設において、
放射性廃棄物入り容器を格納した施設躯体または格納容器の底部と下部地盤との間に床板構造体を設け、
前記施設躯体または前記格納容器は、前記施設躯体または前記格納容器の内周面もしくは外周面に沿って内部を囲み、下部に排出口を有する排水ゾーンが形成され、
前記排水ゾーンと前記排水ゾーンからの排水を監視する監視坑との間には前記排水ゾーンからの排水を前記監視坑に導く点検排水管が設けられ、
周囲の地盤から前記施設躯体もしくは前記格納容器に浸入してくる地下水または前記施設躯体もしくは前記格納容器から浸出してくる漏水を排水として前記排水ゾーンに導き、さらに前記点検排水管を介して前記監視坑に導いて前記排水の放射能汚染度を監視し、
前記監視坑は、坑内領域に監視員が入ることができない大きさであり、
前記監視坑の末端に設けられた連絡坑道内に移動可能な監視装置が設けられ、
前記監視装置は、前記排水の湧出状態の監視及び/または前記排水のサンプリングによる分析測定を行うことを特徴とする放射性廃棄物の埋設処分施設。
【請求項2】
放射性廃棄物を地中に埋設処分する放射性廃棄物の埋設処分施設において、
放射性廃棄物入り容器を格納した施設躯体または格納容器の底部と下部地盤との間に床板構造体を設け、
前記施設躯体または前記格納容器は、前記施設躯体または前記格納容器の内周面もしくは外周面に沿って内部を囲み、下部に排出口を有する排水ゾーンが形成され、
前記排水ゾーンと前記排水ゾーンからの排水を監視する監視坑との間には前記排水ゾーンからの排水を前記監視坑に導く点検排水管が設けられ、
周囲の地盤から前記施設躯体もしくは前記格納容器に浸入してくる地下水または前記施設躯体もしくは前記格納容器から浸出してくる漏水を排水として前記排水ゾーンに導き、さらに前記点検排水管を介して前記監視坑に導いて前記排水の放射能汚染度を監視し、
前記床板構造体は、底板、側壁、及び天板を有する箱型躯体であり、
前記監視坑の床面積は、前記床板構造体の底面積の1/2以上であることを特徴とする放射性廃棄物の埋設処分施設。
【請求項3】
放射性廃棄物を地中に埋設処分する放射性廃棄物の埋設処分施設において、
放射性廃棄物入り容器を格納した施設躯体または格納容器の底部と下部地盤との間に床板構造体を設け、
前記施設躯体または前記格納容器は、前記施設躯体または前記格納容器の内周面もしくは外周面に沿って内部を囲み、下部に排出口を有する排水ゾーンが形成され、
前記排水ゾーンと前記排水ゾーンからの排水を監視する監視坑との間には前記排水ゾーンからの排水を前記監視坑に導く点検排水管が設けられ、
周囲の地盤から前記施設躯体もしくは前記格納容器に浸入してくる地下水または前記施設躯体もしくは前記格納容器から浸出してくる漏水を排水として前記排水ゾーンに導き、さらに前記点検排水管を介して前記監視坑に導いて前記排水の放射能汚染度を監視し、
前記監視坑は、並行して複数配置され、
隣接する監視坑間をつなぎ前記監視坑に直交する方向に配置される複数の排水孔が設けられ、
下部地盤から前記床板構造体を通過して前記施設躯体または前記格納容器に向かって流れる地下水を前記排水孔に湧出させ、この排水孔に湧出した排水を前記監視坑に集水することを特徴とする放射性廃棄物の埋設処分施設。
【請求項4】
前記監視坑は、前記床板構造体内に設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の放射性廃棄物の埋設処分施設。
【請求項5】
前記施設躯体または前記格納容器の底板は、前記床板構造体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の放射性廃棄物の埋設処分施設。
【請求項6】
前記床板構造体は、下部地盤から前記床板構造体を通過して前記施設躯体または前記格納容器に向かって流れる地下水を前記監視坑に集水することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の放射性廃棄物の埋設処分施設。
【請求項7】
下部地盤、下部地盤の上部表面部を平滑にするための均しコンクリート、または下部岩盤面と、前記床板構造体との間に、止水材が敷設されていることを特徴とする請求項1,2,4,5のいずれか一つに記載の放射性廃棄物の埋設処分施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射線廃棄物の監視作業や汚染処理作業の負荷を軽減することができる放射性廃棄物の埋設処分施設に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の操業あるいは廃炉に伴って発生する放射性廃棄物は、比較的浅い深さの地中埋設施設に格納して埋設処分される。この施設は、例えば非特許文献1によれば、コンクリートビット型の施設である。
【0003】
また、非特許文献2によれば、このような地中埋設施設では事業の進展に沿って、段階的な安全性の管理が行われる。第1段階では埋設施設の躯体は埋設されていない状態であり、埋設設備からの排水及び監視が行われる。さらに、第2段階では埋設施設の躯体は覆土で覆われて埋設されるが、埋設設備からの排水及び監視が引き続き行われる。その後、埋設設備からの排水及び監視は実施せずに、主に周辺土壤等により放射性物質の漏出は抑制されて安全性が確保される。
【0004】
すなわち、第1段階および第2段階の期間では、埋設設備からの排水及び監視を実施できることが必要である。この排水及び監視を実施できるようにするために、廃棄体の周囲に多重構造の埋設設備が構築される。この結果、埋設施設の躯体内部からの漏水は点検路に集水して監視することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4687939号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】”埋設事業,埋設設備の構造”[online]、2008年、日本原燃株式会社、[平成25年8月6日検索]、インターネット<http://www.jnfl.co.jp/business-cycle/llw/structure.html>
【非特許文献2】”埋設事業,埋設後の段階管理”[online]、2008年、日本原燃株式会社、[平成25年8月6日検索]、インターネット<http://www.jnfl.co.jp/business-cycle/llw/phase.html>
【非特許文献3】”工法概要”[online]、ピングラウト協議会、[平成25年7月31日検索]、インターネット<http://www.pigrout.com/method.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、埋設施設の躯体から排水を継続すると、躯体内部に向かって周囲の地盤からの地下水が浸透してくる。埋設施設の下にある地盤から埋設施設の底面に浸入した地下水は、廃棄体に比較的近い位置の排水ゾーンを通ってから点検路に集水されることになる。埋設施設の側部もしくは上部にある地盤から埋設施設内部に浸入する地下水は、廃棄体に接触する可能性があるのに対して、埋設施設の下にある地盤からの地下水は、廃棄体に接触する可能性が低い。この両者の地下水が混じって点検路に集水することによって、監視対象となる湧水の量が大きくなる。これによって、放射性廃棄物の監視作業や万一の汚染処理作業の負荷が大きくなるという問題があった。
【0008】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、放射線廃棄物の監視作業や汚染処理作業の負荷を軽減することができる放射性廃棄物の埋設処分施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる放射性廃棄物の埋設処分施設は、放射性廃棄物を地中に埋設処分する放射性廃棄物の埋設処分施設において、放射性廃棄物入り容器を格納した施設躯体または格納容器の底部と下部地盤との間に床板構造体を設け、前記施設躯体または前記格納容器は、前記施設躯体または前記格納容器の内周面もしくは外周面に沿って内部を囲み、下部に排出口を有する排水ゾーンが形成され、前記排水ゾーンと前記排水ゾーンからの排水を監視する監視坑との間には前記排水ゾーンからの排水を前記監視坑に導く点検排水管が設けられ、周囲の地盤から前記施設躯体もしくは前記格納容器に浸入してくる地下水または前記施設躯体もしくは前記格納容器から浸出してくる漏水を排水として前記排水ゾーンに導き、さらに前記点検排水管を介して前記監視坑に導いて前記排水の放射能汚染度を監視することを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる放射性廃棄物の埋設処分施設は、上記の発明において、前記監視坑は、前記床板構造体内に設けられることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる放射性廃棄物の埋設処分施設は、上記の発明において、前記施設躯体または前記格納容器の底板は、前記床板構造体であることを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる放射性廃棄物の埋設処分施設は、上記の発明において、前記床板構造体は、下部地盤から前記床板構造体を通過して前記施設躯体または前記格納容器に向かって流れる地下水を前記監視坑に集水することを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる放射性廃棄物の埋設処分施設は、上記の発明において、前記監視坑は、坑内領域に監視員が入ることができない大きさであり、前記監視坑の末端に設けられた連絡坑道内に移動可能な監視装置が設けられ、前記監視装置は、前記排水の湧出状態の監視及び/または前記排水のサンプリングによる分析測定を行うことを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる放射性廃棄物の埋設処分施設は、上記の発明において、前記床板構造体は、底板、側壁、及び天板を有する箱型躯体であり、前記監視坑の床面積は、前記床板構造体の底面積の1/2以上であることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる放射性廃棄物の埋設処分施設は、上記の発明において、前記監視坑は、並行して複数配置され、隣接する監視坑間をつなぎ前記監視坑に直交する方向に配置される複数の排水孔が設けられ、下部地盤から前記床板構造体を通過して前記施設躯体または前記格納容器に向かって流れる地下水を前記排水孔に湧出させ、この排水孔に湧出した排水を前記監視坑に集水することを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる放射性廃棄物の埋設処分施設は、上記の発明において、下部地盤、下部地盤の上部表面部を平滑にするための均しコンクリート、または下部岩盤面と、前記床板構造体との間に、止水材が敷設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、放射性廃棄物入り容器を格納した施設躯体または格納容器の底部と下部地盤との間に床板構造体を設け、前記施設躯体または前記格納容器は、前記施設躯体または前記格納容器の内周面もしくは外周面に沿って内部を囲み、下部に排出口を有する排水ゾーンが形成され、前記排水ゾーンと前記排水ゾーンからの排水を監視する監視坑との間には前記排水ゾーンからの排水を前記監視坑に導く点検排水管が設けられ、周囲の地盤から前記施設躯体もしくは前記格納容器に浸入してくる地下水または前記施設躯体もしくは前記格納容器から浸出してくる漏水を排水として前記排水ゾーンに導き、さらに前記点検排水管を介して前記監視坑に導いて前記排水の放射能汚染度を監視するようにしているので、放射線廃棄物の監視作業や汚染処理作業の負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、この発明の実施の形態1である放射性廃棄物の埋設処分施設の概要構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した埋設処分施設の詳細構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、この発明の実施の形態2である放射性廃棄物の埋設処分施設の概要構成を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1,2の構成に対する止水処理などの補修方法の概要を説明する説明図である。
【
図5】
図5は、この発明の実施の形態3である放射性廃棄物の埋設処分施設の概要構成を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態3の構成に対する止水処理などの補修方法の概要を説明する説明図である。
【
図7】
図7は、この発明の実施の形態4である放射性廃棄物の埋設処分施設の概要構成を示す断面図である。
【
図8】
図8は、この発明の実施の形態5である放射性廃棄物の埋設処分施設の概要構成を示す断面図である。
【
図9】
図9は、この発明の実施の形態6である放射性廃棄物の埋設処分施設の斜視図である。
【
図10】
図10は、この発明の実施の形態6である放射性廃棄物の埋設処分施設の概要構成を示す断面図である。
【
図11】
図11は、この発明の実施の形態6の変形例である放射性廃棄物の埋設処分施設の概要構成を示す断面図である。
【
図12】
図12は、施設躯体を、放射性廃棄物を直接格納できる複数の大型の格納容器に替えた一例である放射性廃棄物の埋設処分施設の概要構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照してこの発明を実施するための形態について説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1である放射性廃棄物の埋設処分施設の概要構成を示す断面図である。また、
図2は、
図1に示した埋設処分施設の詳細構成を示す断面図である。
図1及び
図2に示すように、埋設処分施設は、施設本体1と、床板構造体2とを有し、地中に埋設される。床板構造体2は、埋設空間101を形成する岩盤などの下部地盤100上に配置される。施設本体1は、床板構造体2の上部に配置される。
【0021】
施設本体1は、施設躯体12内で、放射性廃棄物がドラム缶などに詰められた複数の廃棄体13がモルタルで充填された状態となっている。施設躯体12は、複数の有底の容器を形成するRC躯体10と、これらの容器の蓋となる複数のPC(プレキャスト)板11とを有し、複数の格納容器を形成する。この格納容器内には、複数の廃棄体13が格納される。複数の廃棄体13は、隙間なくモルタルで充填された充填モルタル廃棄体15として形成されるとともに、同時に、充填モルタル廃棄体15と施設躯体12との間にモルタルが充填されてホワイトゾーン14を形成する。複数の廃棄体13と施設躯体12との間にモルタルを充填するのは、放射性物質をモルタル材に収着させて廃棄体周囲の間隙水の汚染濃度を低下させるためである。また、ホワイトゾーン14は、放射性廃棄物の拡散抑制を期待するためである。
【0022】
また、施設躯体12の内周面には、水を通しやすい多孔質のコンクリート(ポーラスコンクリート)層で形成された排水ゾーン16が内部の複数の廃棄体13を囲むように形成される。この排水ゾーン16は、施設躯体12の外周面に形成されてもよい。また、排水ゾーン16は、下部に排出口16aを有する。
【0023】
一方、床板構造体2は、施設躯体12と同様にコンクリートで形成され、ひび割れが発生してもよく、数十年程度維持する強度をもつ。床板構造体2内には、監視坑3が設けられる。監視坑3と排出口16aとは、点検排水管17で接続される。監視坑3は、監視員が入れる広さを有する。監視坑3内には、上部の埋設設備からの排水を集水し、排水管4bを介して地上に排水する排水装置4を有する。排水装置4は、施設躯体12側から流入する排水をサンプリングし、分析測定することによって放射能汚染度を監視する。また、監視坑3内の下部には、床板構造体2の下部から地下水を貯留する貯留部5aと、この貯留部5aに貯留した地下水を、排水管5bを介して地上に排水する排水装置5を有する。なお、監視坑3と地上との間には、監視員が監視坑3に立ち入る際に通ることができる図示しない立坑が設けられる。上述した排水管4b,5bは、この立坑内に沿って配置される。
【0024】
図2に示すように、施設躯体12の上部及び側部から浸入してくる地下水または施設躯体12から浸出してくる漏水は、排水として排水ゾーン16に導かれ、さらに点検排水管17を介して排水装置4に導かれる。一方、床板構造体2の下部地盤100から施設躯体12に向かって流れる地下水は、床板構造体2を通過して監視坑3内に集水される。したがって、床板構造体2の下部地盤100から施設躯体12に向かって流れる地下水が施設躯体12側に流れるのを抑制することができる。すなわち、排水ゾーン16から流れる監視対象の排水と、床板構造体2の下部地盤100から施設躯体12に向かって流れる地下水とを分離することができ、排水ゾーン16から流れる監視対象の排水のみを監視すればよい。
【0025】
なお、非特許文献2に記載されているように、埋設処分施設では、第1段階と第2段階とで排水の監視が行われる。第1段階から第2段階に移る際、埋設処分施設の上面及び側面は、ベントナイトを混合したベントナイト混合土102で締め固められ、岩盤などの下部地盤100よりも水を通し難くしている。
【0026】
この実施の形態1では、廃棄体13を有する施設本体1と下部地盤100との間に床板構造体2を設け、排水ゾーン16から流れる監視対象の排水と、床板構造体2の下部地盤100から施設躯体12に向かって流れる地下水とを分離することができるため、検査対象の水量が減り、監視作業の負荷が軽減される。
【0027】
また、床板構造体2は、施設本体1よりも下方に配置されるため、施設本体1から漏出した排水は、重力によって施設本体1の下方の床板構造体2側に導かれる。この結果、床板構造体2に設けられた監視坑3で施設本体1側からの排水を確実に集水することができる。
【0028】
さらに、下部地盤100から上方に向かって施設本体1側に浸入しようとする地下水は、放射性廃棄物に接触することなく、床板構造体2を介して監視坑3に確実に集水され、排水することができる。
【0029】
(実施の形態2)
この実施の形態2は、
図3に示すように、施設本体1の底板を床板構造体2とする施設本体21としている。すなわち、施設躯体12はRC躯体10の底板をなくしたものであり、施設躯体12の底板を床板構造体2としている。この場合、格納容器のホワイトゾーン14と床板構造体2との間には、排水ゾーン16が形成されている。
【0030】
この実施の形態2では、床板構造体2の構造を施設本体21の底板として兼用しているので、埋設処分施設の構造が簡易となり、埋設処分施設のコンパクト化を図ることができる。
【0031】
ここで、実施の形態1,2では、従来に比して監視坑3の領域が広く、かつ施設本体1,21の下方に存在するため、埋設処分施設の修復が容易となる。すなわち、埋設処分施設の第1段階では、ベントナイト混合土102を埋めない状態で監視を行うが、この第1段階では、埋設処分施設の修復を行うことが求められる。この実施の形態1,2では、施設本体1,21の下方に監視坑3が設けられているため、埋設処分施設の修復を容易に行うことができる。たとえば、
図4に示すように、床板構造体2にひび割れ等の水みち23が発生した場合、この水みち23の発生の場所を特定しやすい。
【0032】
なお、床板構造体2にひび割れ等の水みち23が発生した場合、第2段階である埋め戻し後においても止水処理等の補修が可能である。この補修方法としては、例えば、第1の補修方法として、
図4に示すように、ひび割れ調査兼止水剤注入管32を介して浸水性一液型ポリウレタン樹脂をひび割れに注入し、ひび割れに存在している水と反応させてシールする方法がある(非特許文献3参照)。あるいは、第2の補修方法として、エタノール水とベントナイトとを混合して作られるエタノール・ベントナイトスラリーを注入して埋設処分施設の遮水性を改良する方法がある(特許文献1参照)。または、第3の補修方法として、セメント系材料をグラウトして遮水する方法がある。
【0033】
(実施の形態3)
上述した実施の形態1,2では、床板構造体2内に3つの監視坑3を設けるようにしていたが、この実施の形態3では、監視坑3の床面積が床板構造体2の床面積の1/2以上となるようにしている。すなわち、監視坑3の領域を広げた構造としている。
【0034】
このため、この実施の形態3では、
図5に示すように、床板構造体2を、底板2a、側壁2b、天板2cによる箱型躯体としている。
【0035】
この実施の形態3では、実施の形態1,2に比して監視坑3の領域が広がったため、さらに埋設処分施設の修復を容易に行うことができる。特に、施設本体1の底板の真下に監視坑3を設けることができるため、実施の形態1,2に比して修復を容易に行うことができる。特に
図6に示すように、短い止水剤注入管33を用いて、ひび割れなどに対する止水処理などの修復を容易に行うことができる。
【0036】
(実施の形態4)
この実施の形態4では、
図7に示すように、複数の監視坑3を並行配置し、隣接する監視坑3間をつなぎ監視坑3に直交する方向に複数の排水孔22を配置している。この排水孔22は、下部地盤100から床板構造体2を通過して施設本体1に向かって流れる地下水を排水孔22内に湧出させ、この排水孔22に湧出した排水を監視坑3に集水するようにしている。
【0037】
この実施の形態4では、床板構造体2に排水孔22を設けることによって、さらに地下水の集水を容易にするとともに、この地下水が施設本体1側に流れるのを抑えることができる。
【0038】
(実施の形態5)
この実施の形態5では、
図8に示すように、監視坑43が、坑内領域に監視員が入ることができない大きさにしている。また、
図9に示すように、床板構造体43の監視坑43の末端に連結し、監視員が立ち入り可能な連絡坑道44を有する。さらに、この連絡坑道44の一端には、監視員が地上と連絡坑道44との間の出入りを可能にする立坑46が設けられている。監視坑43は、連絡坑道44に向かって鉛直下方に下がる勾配が形成されている。したがって、監視坑43に湧出された排水は、連絡坑道44側に集水される。連絡坑道44に集水された排水は、立坑46の下端に設けられた排水装置47によって地上に排水される。連絡坑道44内には、少なくとも、監視坑43内の排水の湧出状態を監視する移動可能な監視装置45が設けられている。監視装置45は、排水の湧出状態の監視及び/または排水のサンプリングによる分析測定を行う。ここで、遠隔監視を行う場合には、地上に設置された図示しない監視制御装置の制御のもとに、監視装置45を遠隔制御する。また、監視員が直接監視を行う場合は、監視員の操作のもと、監視装置45を直接制御する。
【0039】
この実施の形態5では、監視坑43の坑内領域に監視員が入ることができない大きさであるため、床板構造体2の厚さを減らすことができ、埋設処分施設全体の構成をコンパクトにすることができる。また、監視坑3の排水は、自然勾配によって連絡坑道44に流れてくるため、監視坑3内あるいは監視坑3間に排水管を設ける必要がなくなる。
【0040】
(実施の形態6)
この実施の形態6では、
図10に示すように、下部地盤100と、床板構造体2との間に、止水材6を敷設している。なお、下部地盤100の上部表面部を平滑にするための均しコンクリートを形成した後、この均しコンクリートと床板構造体2との間に止水材6を敷設するようにしてもよい。
【0041】
具体的な止水材6は、塩化ビニル製の止水シートで実現される。止水シートの下側に不織布などの排水材を設けることによって、地下水の底部からの浸透を一層抑制することができる。なお、止水シート以外にも、アスファルト材、吸水膨張性の止水材などを敷設してもよい。
【0042】
この実施の形態6では、止水材6によって地下水の底部から床板構造体2への浸透を抑制することができ、監視坑3は、排水ゾーン16からの排水のみを監視対象の水として監視すればよいので、監視作業の負荷を軽減することができるとともに、排水処理の負荷も軽減することができる。
【0043】
なお、
図11に示すように、床板構造体2内に監視坑3を設けず、床板構造体2の側部に監視坑53を設けるようにしてもよい。
【0044】
なお、上述した実施の形態1〜6では、コンクリート躯体である施設躯体12内に廃棄体13の層として格納する埋設処分施設を例にあげて説明したが、これに限らず、例えば、
図12に示すように、施設躯体41に囲まれる廃棄物格納空間E内に放射性廃棄物を直接格納できる複数の独立した大型で移動可能な格納容器31にも適用することができる。
図12では、実施の形態4に対応し、施設本体1に替えて複数の格納容器31を設け、格納容器31と下部地盤100との間に床板構造体2を設けている。なお、施設躯体41の外縁部には、施設躯体41を覆うように排水ゾーン36が形成されている。この排水ゾーン36は、排水ゾーン16と同様に、施設躯体41の内縁部に形成してもよい。また、
図12では、排水ゾーン36の外周を覆うように金属板が形成されている。
【0045】
また、上述した実施の形態の構成要素は、適宜組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 施設本体
2 床板構造体
2a 底板
2b 側壁
2c 天板
3,43,53 監視坑
4,5,47 排水装置
5a 貯留部
5b 排水管
6 止水材
10 RC躯体
11 PC板
12,41 施設躯体
13 廃棄体
14 ホワイトゾーン
15 充填モルタル廃棄体
16,36 排水ゾーン
16a 排出口
17 点検排水管
21 施設本体
22 排水孔
23 水みち
31 格納容器
32 調査兼止水剤注入管
33 止水剤注入管
44 連絡坑道
45 監視装置
46 立坑
100 下部地盤
101 埋設空間
102 ベントナイト混合土