特許第6238052号(P6238052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238052
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】牽引台車
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20171120BHJP
   B62D 53/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B61B13/00 S
   B62D53/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-183021(P2013-183021)
(22)【出願日】2013年9月4日
(65)【公開番号】特開2015-48033(P2015-48033A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 等
(72)【発明者】
【氏名】金森 洋史
【審査官】 前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−107168(JP,A)
【文献】 特開平10−044987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/00
B62D 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の動力を有する牽引動力車によって牽引される走行用の動力を有しない牽引台車であって、
車体の左右方向中央の前側と後側にそれぞれ取り付けられた操舵輪と、前記車体の前側左右と後側左右にそれぞれ取り付けられ、車輪の方向が任意の方向に旋回可能な自在キャスターと、前記各操舵輪の近傍にそれぞれ取り付けられ、床面に設けられた誘導線を検知する誘導線センサーと、前記各操舵輪をそれぞれ操舵するための駆動手段と、前記誘導線センサーの検知に基づいて前記駆動手段を駆動して前記各操舵輪を操舵制御する自動操舵機構とを備えることを特徴とする牽引台車。
【請求項2】
前記牽引動力車を前記誘導線に沿って走行するように構成し、
前記牽引動力車の前進動作および後退動作のいずれの場合でも、前記牽引動力車と同じ軌跡を通過可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の牽引台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物や部品などの運搬等に用いられ、単数の状態または複数台が連結された状態で牽引される牽引台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、荷物の集配センターや工場等の生産現場等では、牽引先頭車(牽引動力車)に連結された単数または複数の牽引台車に部品や荷物等を載せて運搬しており、各牽引台車は、牽引先頭車の走行軌跡に沿うように牽引される。一般的な牽引台車の車輪の構成では四隅にキャスターが設けられており、前側左右には車輪の方向が任意の方向に旋回可能な自在キャスターが、後側左右には車輪の方向が前後に固定された固定キャスターが設けられている。
【0003】
一方、構内トレーラーなどで用いられる牽引台車として、機械的リンク機構によって四隅の車輪を操舵するようにした四輪操舵台車が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。この四輪操舵台車は、牽引先頭車とほぼ同一軌跡を通過することができるため、工場、空港などで大量の荷物を一度に搬送する際に、複数台を連結した状態で用いられている。しかし、この四輪操舵台車は前方の車両と同じ軌跡を通過するという性能を有するが、同一軌跡を描くのは前進動作の時に限られる。
【0004】
他方、床面に敷設した磁気テープ等の誘導路に沿って無人状態で走行することにより、荷物等を自動搬送するようにした自動操舵機構を有する自動搬送台車が知られている(例えば、特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「構内トレーラー情報/大量・重量運搬に最適の4WS式台車など|中部産業」、[online]、[平成25年8月19日検索]、インターネット<URL:http://www.chubu-sangyo.co.jp/toreraor/toreraor.htm>
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−39925号公報
【特許文献2】実開昭60−78663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、上記の従来の四輪操舵台車は、前方の車両と同じ軌跡を通過するという性能を有するが、同一軌跡を描くのは前進動作の時に限られる。したがって、この四輪操舵台車を使用する場合には、前進動作を前提とするために搬送経路をループ状に計画する必要があるので、無駄なスペースを要してしまうという問題があった。
【0008】
こうしたことから、前進動作の時には、前方の車両と同じ軌跡を通過する一方で、後退動作の時には、後方の車両と同じ軌跡を通過することができるような牽引台車、言い換えれば、牽引動力車の前進動作、後退動作にかかわらず、所定のルート上を走行することが可能な牽引台車の開発が求められていた。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、牽引動力車の前進動作、後退動作にかかわらず、所定のルート上を走行することが可能な牽引台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る牽引台車は、走行用の動力を有する牽引動力車によって牽引される走行用の動力を有しない牽引台車であって、車体の前側と後側にそれぞれ取り付けられた車輪と、前記各車輪の近傍にそれぞれ取り付けられ、床面に設けられた誘導線を検知する誘導線センサーと、前記各車輪をそれぞれ操舵するための駆動手段と、前記誘導線センサーの検知に基づいて前記駆動手段を駆動して前記車輪を操舵制御する自動操舵機構とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の牽引台車は、上述した発明において、前記牽引動力車を前記誘導線に沿って走行するように構成し、前記牽引動力車の前進動作および後退動作のいずれの場合でも、前記牽引動力車と同じ軌跡を通過可能に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る牽引台車によれば、走行用の動力を有する牽引動力車によって牽引される走行用の動力を有しない牽引台車であって、車体の前側と後側にそれぞれ取り付けられた車輪と、前記各車輪の近傍にそれぞれ取り付けられ、床面に設けられた誘導線を検知する誘導線センサーと、前記各車輪をそれぞれ操舵するための駆動手段と、前記誘導線センサーの検知に基づいて前記駆動手段を駆動して前記車輪を操舵制御する自動操舵機構とを備えるので、牽引台車は前進の際も後退の際も、誘導線を検知しながら所定のルートに沿って通過することができるという効果を奏する。このため、牽引動力車の前進動作、後退動作にかかわらず、牽引台車は所定のルート上を走行することができる。特に、従来は後方の車両に追従することが困難であった後退動作においても、牽引台車は後方の車両と同じ軌跡を走行可能である。
【0013】
また、走行ルートをループ状にする必要がなく、単線ルートの往復走行も可能となるので、最短ルート計画が可能となり、従来のようにスペースを無駄に占有するような事態も生じない。さらに、牽引動力車の前進動作、後退動作にかかわらず、牽引台車は所定のルート上を走行できるので、例えば鉄道の貨物基地のように、使用しない牽引台車を牽引動力車で待機エリアへ誘導することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係る牽引台車の実施例を示す概略下面図である。
図2図2は、図1のA−A線に沿った側断面図である。
図3図3は、図2のB−B線に沿った正面断面図である。
図4図4は、本発明に係る牽引台車を複数台連結して、牽引先頭車の動力で前進動作および後退動作を行う場合の例を示した概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る牽引台車の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
図1図2および図3に示すように、本発明に係る牽引台車10は、走行用の動力を有する牽引動力車によって牽引される走行用の動力を有しない台車である。この牽引台車10は、車体12の左右方向中央の前側12fと後側12rとにそれぞれ取り付けられた左右2個の操舵輪14(車輪)と、前側と後側の各操舵輪14をそれぞれ操舵するための操舵用のモーター16(駆動手段)とを備えている。モーター16は車体12の下面に取り付けた基台18に懸垂状態に固定されている。
【0017】
さらに、この牽引台車10は、前後の各操舵輪14の近傍においてそれぞれ前側と後側に取り付けられ、床面1に設けられた磁気テープ2(誘導線)からの発生磁気を検知する磁気センサー20(誘導線センサー)と、前後の各操舵輪14をそれぞれ操舵制御するための自動操舵機構22とを備えている。磁気センサー20は、各操舵輪14の車輪支持部24から前後に延びる支持部材26の前端と後端とにおいて、下向きに取り付けてある。
【0018】
自動操舵機構22は、磁気センサー20の検知に基づいてモーター16を駆動して操舵輪14を操舵制御するものであり、左右の操舵輪14の回転軸を連結支持する正面視で逆U字状の車輪支持部24の上面中央から鉛直上向きに立ち上がり、車体下面に回動自在に固定された操舵軸28を有している。この操舵軸28の軸線は左右の操舵輪14の間の左右方向中央に位置している。
【0019】
この操舵軸28とモーター16の出力軸は、図示しないプーリー、タイミングベルト、歯車などを介して連結されており、操舵輪14はモーター16による操舵軸28の回動を介して車輪の方向を旋回して自動操舵されるようになっている。このようにして、自動操舵機構22は、牽引台車10の進行方向を操舵制御することができる。なお、車体下面のモーター16近傍には、図示しない自動操舵機構22の制御装置およびモーター16用の電源バッテリーが固定されている。
【0020】
また、この牽引台車10は、車体の下面の四隅、すなわち車体の前側左右および後側左右に設けられたキャスター30をさらに備えている。このキャスター30は車輪の方向が任意の方向に旋回可能な自在キャスターとして構成され、車輪32と車輪支持部34と摺動部36と基台38とからなる。
【0021】
上記の構成の動作および作用について説明する。ただし、以下の説明では、牽引台車10は、操作者の図示しない開始ボタン入力操作によって始動され、その後、停止ボタンが入力操作されるまでは、自動操舵機構22による自動操舵制御運転が行われるように制御装置のソフトウエアがあらかじめ組み立てられているものとする。
【0022】
図4に示すように、牽引台車10は、4台が連結具40を介して直列に連結された状態で、本発明と同じく磁気センサー(不図示)を有し、磁気テープ2に沿って走行するように構成された牽引先頭車V(牽引動力車)によって牽引されている。各牽引台車10の前後2台の自動操舵機構22における磁気センサー10のそれぞれが個別に磁気テープ2を検出するとともに、操舵輪14を操舵している。
【0023】
(前進動作の場合)
まず、牽引先頭車Vが前進方向Fに走行する前進動作の場合について説明する。
各牽引台車10の前後2台の自動操舵機構22は、磁気テープ2が発する磁力線の強さや向きを各操舵輪14の前側(進行方向前側)に位置する磁気センサー20が検出し、磁気テープ2の左端(または右端)の位置が磁気センサー20の定位置となるように前後2台の各モーター16を自動制御して前後2組の操舵輪14を操舵しながら走行する。この場合、例えば、左右の操舵輪14の間の中央部分に磁気テープ2が位置するように操舵輪14を操舵するようにしてもよい。磁気センサー20の検出信号は、それぞれ自動操舵機構22の図示しない制御装置に入力されて演算処理される。この制御装置は、磁気センサー20からの検出信号に基づいてモーター16の駆動制御を行う。このようにして、牽引先頭車Vに牽引される各牽引台車10は、磁気テープ2に沿う操舵を自動的に行う。
【0024】
自動操舵機構22の図示しない制御装置によって前後2台の自動操舵機構22を同期制御すると、前後2組の操舵輪14がそれぞれ磁気テープ2に沿うように自動操舵で走行するため、牽引台車10の四隅の旋回自在なキャスター30が強制操舵される。このため、牽引台車10は直線走行はもちろん、コーナー部等の曲線走行においても磁気テープ2に沿って走行可能である。
【0025】
(後退動作の場合)
次に、牽引先頭車Vが後退方向Rに走行する後退動作の場合について説明する。
各牽引台車10の前後2台の自動操舵機構22は、磁気テープ2が発する磁力線の強さや向きを各操舵輪14の後側(進行方向前側)に位置する磁気センサー20が検出する。上記の前進動作の場合と同様に、磁気テープ2の左端(または右端)の位置が磁気センサー20の定位置となるように前後2台の各モーター16を自動制御して前後2組の操舵輪14を操舵しながら走行する。なお、磁気センサー20、自動操舵機構22の図示しない制御装置、モーター16の動作および作用については、上記の前進動作の場合と同様である。
【0026】
このように、本発明の牽引台車10は、牽引先頭車Vの前進動作および後退動作のいずれの場合でも、磁気テープ2を検知しながら牽引先頭車Vと同じ軌跡を通過することができる。特に、従来は後方の車両に追従することが困難であった牽引先頭車Vの後退動作においても、本発明の牽引台車10は後方の車両と同じ軌跡を走行可能である。
【0027】
また、本発明によれば、走行ルートをループ状にする必要がなく、単線ルートの往復走行も可能となるので、最短ルート計画が可能となり、従来のようにスペースを無駄に占有するような事態も生じない。さらに、牽引先頭車Vの前進動作、後退動作にかかわらず、牽引台車10は所定のルート上を走行できるので、例えば鉄道の貨物基地のように、使用しない牽引台車10を牽引先頭車Vで待機エリアへ誘導することが可能である。
【0028】
以上説明したように、本発明に係る牽引台車によれば、走行用の動力を有する牽引動力車によって牽引される走行用の動力を有しない牽引台車であって、車体の前側と後側にそれぞれ取り付けられた車輪と、前記各車輪の近傍にそれぞれ取り付けられ、床面に設けられた誘導線を検知する誘導線センサーと、前記各車輪をそれぞれ操舵するための駆動手段と、前記誘導線センサーの検知に基づいて前記駆動手段を駆動して前記車輪を操舵制御する自動操舵機構とを備えるので、牽引台車は前進の際も後退の際も、誘導線を検知しながら所定のルートに沿って通過することができる。このため、牽引動力車の前進動作、後退動作にかかわらず、牽引台車は所定のルート上を走行することができる。特に、従来は後方の車両に追従することが困難であった後退動作においても、牽引台車は後方の車両と同じ軌跡を走行可能である。
【0029】
また、走行ルートをループ状にする必要がなく、単線ルートの往復走行も可能となるので、最短ルート計画が可能となり、従来のようにスペースを無駄に占有するような事態も生じない。さらに、牽引動力車の前進動作、後退動作にかかわらず、牽引台車は所定のルート上を走行できるので、例えば鉄道の貨物基地のように、使用しない牽引台車を牽引動力車で待機エリアへ誘導することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、本発明に係る牽引台車は、荷物や部品などの運搬等に用いられ、単数の状態または複数台が連結された状態で牽引される牽引台車に有用であり、特に、牽引先頭車の前進動作、後退動作にかかわらず、所定のルート上を走行するのに適している。
【符号の説明】
【0031】
1 床面
2 磁気テープ(誘導線)
10 牽引台車
12 車体
12f 前側
12r 後側
14 操舵輪(車輪)
16 モーター(駆動手段)
18 基台
20 磁気センサー(誘導線センサー)
22 自動操舵機構
24 車輪支持部
26 支持部材
28 操舵軸
30 キャスター
32 車輪
34 車輪支持部
36 摺動部
38 基台
40 連結具
V 牽引先頭車(牽引動力車)
F 前進方向
R 後退方向
図1
図2
図3
図4