(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。本明細書では、便宜上、モータの中心軸Jの方向を上下方向として説明するが、本発明によるモータの使用時における姿勢を限定するものではない。また、モータの中心軸Jの方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向及び周方向を単に「径方向」及び「周方向」と呼ぶことにする。また、図中では、適宜、圧入固定を×印、隙間嵌めを△印で示している。
【0015】
実施の形態1.
図1〜3は、本発明の実施の形態1によるモータ100の一構成例を示した図である。
図1は、モータ100の外観斜視図であり、図中の(a)及び(b)には、互いに異なる方向から見た外観が示されている。
図2は、モータ100の展開斜視図であり、モータ100を構成する各部品を軸方向に展開させた様子が示されている。
図3は、モータ100の断面図であり、モータ100の中心軸Jを含む切断面により切断した場合の断面が示されている。
【0016】
モータ100は、シャフト10にロータマグネット12が固定され、ロータマグネット12の径方向外方に間隙を介してステータ2を対向させたインナーロータ型モータである。ロータマグネット12の軸方向の両側には、シャフト10を支持する上軸受5及び下軸受6が設けられている。また、ステータ2の軸方向の両側には、上ブラケット3及び下ブラケット4が設けられ、上ブラケット3及び下ブラケット4が、上軸受5及び下軸受6を保持している。
【0017】
モータ100は、家電製品、事務機器、医療機器、自動車などの駆動装置の駆動源として使用され、駆動装置の枠体に固定される静止部と、当該静止部により回転可能に支持される回転部1とにより構成される。回転部1には、シャフト10、ロータホルダ11及びロータマグネット12が含まれる。一方、静止部には、ステータ2、上ブラケット3、下ブラケット4、上軸受5、下軸受6、予圧部材7及び回路基板8が含まれる。以下、これらの各部品について詳しく説明する。
【0018】
<回転部1>
シャフト10は、軸方向(上下方向)に延びる略円柱状の部材であり、上軸受5及び下軸受6により支持され、中心軸Jを中心として回転する。シャフト10の下端部は、下ブラケット4の下方へ突出し、当該突出部が出力軸として、駆動装置の駆動部に連結される。なお、シャフト10の上端部を上ブラケット3の上方へ突出させ、当該突出部を出力軸として、駆動装置の駆動部に連結することもできる。
【0019】
ロータホルダ11は、ステータ2の径方向内側において、シャフト10とともに回転する部材である。図示したロータホルダ11は、軸方向に延びる筒状部と、当該筒状部の軸方向中央から径方向内方に延びる連結部とを備え、その断面は略H形状からなる。
【0020】
ロータマグネット12は、円筒形状の永久磁石であり、ロータホルダ11の外周面に固定されている。また、ロータマグネット12の径方向外側には、径方向においてステータ2と対向する磁極面が形成され、当該磁極面は、N極の磁極面とS極の磁極面とが周方向に交互に並ぶように着磁されている。なお、ロータホルダ11を用いることなく、ロータマグネット12をシャフト10に直接的に固定することもできる。
【0021】
<ステータ2>
ステータ2は、モータ100の電機子であり、ステータコア21、コイル22及びインシュレータ23を備えている。ステータ2は、ロータマグネット12の径方向外側に形成された略円筒形状からなり、間隙を介してロータマグネット12の外周面と径方向に対向している。
【0022】
ステータコア21は、ケイ素鋼板などの磁性鋼板を軸方向に積層した積層鋼板からなる。各磁性鋼板は、円環状のコアバック210と、当該コアバック210から径方向内方に突出する複数本の磁極歯211とを有する。
【0023】
コイル22は、インシュレータ23を介して、ステータコア21の磁極歯211に巻回された巻き線である。コイル22に駆動電流を供給すれば、磁芯である磁極歯211に径方向の磁束が発生する。このため、磁極歯211とロータマグネット12との間に周方向のトルクが発生し、回転部1が中心軸Jを中心として回転する。
【0024】
インシュレータ23は、ステータコア21とコイル22とを電気的に絶縁する樹脂製の部材である。インシュレータ23は、例えば、軸方向の両側からステータコア21を挟む上インシュレータ及び下インシュレータで構成され、ステータコア21の磁極歯211に対し、インシュレータ23の上からコイル22を巻き付けることにより、ステータコア21に固定される。
【0025】
<上ブラケット3>
上ブラケット3は、ステータ2に圧入固定され、上軸受5を保持する金属製の部材であり、例えば、亜鉛メッキ鋼板などの金属板をプレス加工することにより得られる。上ブラケット3は、上円筒カバー31、天板部32及び上軸受保持部33により構成される。
【0026】
上円筒カバー31は、軸方向に延び、上端に天板部32が設けられ、下端を開放した有蓋円筒形状からなる。上円筒カバー31は、ステータコア21の外周に上方向から圧入され、ステータコア21に固定される。また、上円筒カバー31の内周面の下端側には、径方向に傾斜するテーパー部31sが設けられ、その内径は下端31eに近づくほど広がっている。このため、ステータコア21の上端を上円筒カバー31内に圧入する際、ステータコア21の外周面が損傷するのを防止することができる。
【0027】
天板部32は、上円筒カバー31の上端から径方向内方に延び、上軸受保持部33の下端につながる略板状体からなる。つまり、天板部32は、上軸受保持部33を取り囲む円環状の平面形状を有する。また、天板部32には、コネクタ開口部32h及び凹部32cが設けられている。
【0028】
コネクタ開口部32hは、コネクタ8cを露出させるための開口である。凹部32cは、天板部32の内周縁に形成された窪みである。凹部32cを形成することにより、凹部32cがない場合に比べ、天板部32の内周端をより下方に位置させることができる。その結果、上軸受保持部33をよりステータ2側に配置することができる。このため、軸方向に関し、モータ100の長さを抑制しつつ、上軸受保持部33に対する上軸受5の挿入長を長くすることができる。このため、上軸受5の取り付け精度を向上させ、シャフト10の軸合わせを高精度で行うことができる。なお、凹部32cは省略することもできる。
【0029】
上軸受保持部33は、軸方向に延びる上円筒部34と、上軸受5の外輪53の上面を覆う上蓋部35とにより構成される有蓋円筒形状からなり、上軸受5を保持している。
【0030】
上円筒部34は、天板部32の内周端から上方に延びる略円筒形状からなる。上軸受5は、上円筒部34の下端を開放させた開口部から挿入される。上軸受5の外輪53は、上円筒部34内に隙間嵌めされ、上円筒部34の内周面により、軸方向に移動可能に保持される。なお、上軸受5の外輪53は、径方向の移動が制限されていればよく、
図3に示した様に、外輪53の一部が上円筒部34から下方に突出している状態であってもよい。
【0031】
上蓋部35は、上円筒部34の上端から径方向内方に延びる略板状体であり、シャフト10に対応する軸穴35hが設けられている。つまり、上蓋部35は、軸穴35hを取り囲み、上軸受5の外輪53の上面を覆う円環状の平面形状を有する。
【0032】
<下ブラケット4>
下ブラケット4は、ステータ2に圧入固定され、下軸受6を保持する金属製の部材であり、例えば、アルミニウム板をプレス加工することにより得られる。下ブラケット4は、下円筒カバー41、底板部42及び下軸受保持部43により構成される。
【0033】
下円筒カバー41は、軸方向に延び、下端に底板部42が設けられ、上端を開放した有底円筒形状からなる。下円筒カバー41は、ステータコア21の外周に下方向から圧入され、ステータコア21に固定される。また、下円筒カバー41の内周面の上端側には、径方向に傾斜するテーパー部41sが設けられ、その内径は上端41eに近づくほど広がっている。このため、ステータコア21の下端を下円筒カバー41内に圧入する際、ステータコア21の外周面が損傷するのを防止することができる。
【0034】
位置決め部41aは、下ブラケット4に対するステータコア21の圧入長を規定する手段である。位置決め部41aは、周方向に延びる下円筒カバー41の段差形状として形成される。下円筒カバー41の内径は、位置決め部41aを境界として異なり、下側よりも上側の方が大きくなっている。このため、ステータコア21の外周の下端が位置決め部41aに当接するように、ステータコア21を圧入すれば、下ブラケット4に対するステータコア21の圧入長を予め定められた長さにすることができる。
【0035】
なお、位置決め部41aは、省略することもできる。また、位置決め部41aに対し、インシュレータ23を当接させて位置決めすることもできる。ただし、インシュレータ23を介在させることなく、ステータコア21を位置決め部41aに当接させる場合の方が、位置決めを精度よく行うことができる。
【0036】
底板部42は、下円筒カバー41の下端から径方向内方に延び、下軸受保持部43の上端につながる略板状体からなる。つまり、底板部42は、下軸受保持部43を取り囲む円環状の平面形状を有する。また、底板部42の下端面は、駆動装置(不図示)にモータ100を取り付けるための取付面として使用され、底板部42には、複数の取付穴42hが設けられている。
【0037】
下軸受保持部43は、軸方向に延びる下円筒部44と、下軸受6の外輪63の下面を覆う下蓋部45とにより構成される有底円筒形状を有し、下軸受6を保持している。
【0038】
下円筒部44は、底板部42の内周端から下方に延びる略円筒形状からなる。下軸受6は、下円筒部44の上端を開放させた開口部から挿入される。下軸受6の外輪63は、下円筒部44内に隙間嵌めされ、下円筒部44の内周面により、軸方向に移動可能に保持される。なお、下軸受6の外輪63は、径方向の移動が制限されていればよく、
図3に示した様に、外輪63の一部が下円筒部44から上方に突出している状態であってもよい。
【0039】
下蓋部45は、下円筒部44の下端から径方向内方に延びる略板状体であり、シャフト10に対応する軸穴45hが設けられている。つまり、下蓋部45は、軸穴45hを取り囲む円環状の平面形状を有する。また、下軸受6の外輪63は下蓋部45と軸方向に対向する一方、下軸受6の内輪61は軸穴45hと軸方向に対向する。このため、下ブラケット4を軸方向上方へ付勢した場合、下軸受6の外輪63は下蓋部45に当接するが、下軸受6の内輪61は下蓋部45に当接しない。
【0040】
<上軸受5・下軸受6>
上軸受5は、ロータマグネット12よりも上側において、シャフト10を回転自在に支持する部材であり、2以上の転動体52を内輪51及び外輪53で挟持して構成される。上軸受5の内輪51は、圧入によりシャフト10に固定される。上軸受5の外輪53は、上軸受保持部33に隙間嵌めされ、軸方向に移動可能に保持される。
【0041】
下軸受6は、ロータマグネット12よりも下側において、シャフト10を回転自在に支持する部材であり、2以上の転動体62を内輪61及び外輪63で挟持して構成される。下軸受6の内輪61は、圧入によりシャフト10に固定される。下軸受6の外輪63は、下軸受保持部43に隙間嵌めされ、軸方向に移動可能に保持される。
【0042】
<予圧部材7>
予圧部材7は、上軸受5及び下軸受6に予圧を付与する弾性部材であり、例えば、ウェーブワッシャが用いられる。予圧部材7は、軸方向において上軸受5の外輪53に隣接して配置され、上軸受5及び下軸受6に予圧を付与する。
【0043】
予圧部材7は、上軸受5の外輪53と、上ブラケット3の上蓋部35との間に配置され、外輪53を軸方向下方へ付勢する。このとき、上ブラケット3の上蓋部35には、当該付勢力の反力が作用する。上ブラケット3及び下ブラケット4は、ともにステータコア21に固定されているため、上記反力により、下ブラケット4の下蓋部45は軸方向上方へ付勢され、下蓋部45により、下軸受6の外輪63も軸方向上方へ付勢される。
【0044】
つまり、予圧部材7は、同一の付勢力で、上軸受5の外輪53を軸方向下方へ付勢するとともに、下軸受6の外輪63を軸方向上方へ付勢する。一方、上軸受5の内輪51及び下軸受6の内輪61は、いずれもシャフト10に固定されている。このため、予圧部材7の付勢力が、上軸受5及び下軸受6の予圧となる。
【0045】
予圧部材7の付勢力は、上蓋部35及び下蓋部45の間隔によって決まり、当該間隔をを短くすれば増大し、当該間隔を長くすれば減少する。従って、上軸受5及び下軸受6の予圧は、上ブラケット3及び下ブラケット4の相対的距離に応じた値となり、圧入作業時に調整することができる。
【0046】
<回路基板8>
回路基板8は、コイル22に駆動電流を供給するための電子回路を搭載した基板であり、インシュレータ23により固定されている。回路基板8は、略円板形状からなり、シャフト10に対応する貫通孔8hが設けられている。また、回路基板8の下面には、磁気センサ8sが設けられ、回路基板8の上面には、コネクタ8cが設けられる。
【0047】
ステータ2が取り付けられた下ブラケット4に対し、シャフト10に上軸受5を圧入固定した回転部1を取り付けることができる。また、貫通孔8hは、上軸受5の外径よりも大きな内径を有している。このとき、回路基板8は、上軸受5を通り、インシュレータ23に固定される。
【0048】
磁気センサ8sは、ロータマグネット12の回転位置を検出するセンサであり、ロータマグネット12の上端と対向するように配置されている。磁気センサ8sには、例えば、ホール素子を用いることができる。
【0049】
コネクタ8cは、回路基板8を外部装置と着脱可能に接続するための手段であり、上ブラケット3のコネクタ開口部32hと対向するように配置されている。回路基板8は、コネクタ8cを介して、外部から電源が供給される。また、磁気センサ8sの検出結果は、コネクタ8cを介して外部へ出力される。
【0050】
本実施の形態によるモータ100を構成する各部品は、上述した通りである。以下では、これらの部品相互の関係や、それによって生じる作用効果について詳しく説明する。
【0051】
(1)ブラケットの圧入固定
本実施の形態によるモータ100では、上ブラケット3及び下ブラケット4と、ステータコア21とが、圧入により固定される。より具体的には、上軸受5を保持する上ブラケット3が、ステータコア21の外周に上方向から圧入され、下軸受6を保持する下ブラケット4が、ステータコア21の外周に下方向から圧入される。
【0052】
このような構成を採用することにより、ステータコア21を上ブラケット3及び下ブラケット4で挟み込んだ状態で、上ブラケット3及び下ブラケット4と、ステータ2とを互いに固定し、一体化することができる。このため、ステータコア21の長さが異なるモータ100に対し、同一の上ブラケット3及び下ブラケット4を使用することができる。
【0053】
ステータをブラケットで完全に覆っている従来のモータは、ステータの長さに応じて、形状の異なるブラケットを使用しなければならず、出力やトルクなどの要求特性が異なるモータに対し、同一のブラケットを共用することができないという問題があった。
【0054】
これに対し、本実施の形態によるモータ100では、ステータコア21の長さが異なるモータ100に対し、上ブラケット3及び下ブラケット4を共用することができる。特に、ステータコア21が積層鋼板である場合、磁性鋼板の外径が同一であれば、各磁性鋼板の厚みや積層枚数などが異なっていても、上ブラケット3及び下ブラケット4を共用することができる。従って、部品の共用化により製造コストを抑制することができ、要求特性が異なる種々のモータ100を安価に提供することができる。
【0055】
また、特許文献1に記載された従来のモータでは、ステータを2つのブラケットで挟持した状態で、ステータを貫通する固定ねじを用いて、当該ブラケットを締結している。このため、ブラケット締結用の固定ねじが必要となり、部品数を増大させるという問題があった。また、ステータの長さに応じて、長さの異なる固定ねじを使用しなければならないという問題もあった。さらに、ステータ内に固定ねじを挿通する領域を確保しなければならず、ステータコアの磁気特性を低下させ、モータの効率を低下させるという問題があった。
【0056】
これに対し、本実施の形態によるモータ100では、上ブラケット3及び下ブラケット4と、ステータコア21とが圧入により固定されるため、固定ねじが不要となり、部品数を削減することができる。また、固定ねじ用の挿通領域を確保するために、ステータコアの磁気特性を低下させることがなく、モータのエネルギー効率を向上させることができる。
【0057】
また、上ブラケット3及び下ブラケット4は、互いに離間して配置される。つまり、上ブラケット3の下端と、下ブラケット4の上端とは、軸方向に隙間を持って対向し、当該隙間からステータ2の外周面の一部が露出している。このため、ステータ2の熱を効率的に放出することができ、モータの効率を更に向上させることができる。
【0058】
(2)ブラケット間隔による予圧調整
本実施の形態によるモータ100は、以下の構成を備えている。上軸受5及び下軸受6の内輪51,61は、ともにシャフト10に固定される。上ブラケット3は、有蓋円筒形からなる上軸受保持部33を有し、上軸受5の外輪53を軸方向に移動可能に保持する。下ブラケット4は、有底円筒形からなる下軸受保持部43を有し、下軸受6の外輪63を軸方向に移動可能に保持する。予圧部材7は、上軸受保持部33の上蓋部35と、上軸受5の外輪53との間に配置される。
【0059】
このような構成を採用することにより、上軸受5及び下軸受6に対し、上ブラケット3及び下ブラケット4の相対的距離に応じた予圧を付与することができる。上ブラケット3及び下ブラケット4の相対的距離は、上ブラケット3又は下ブラケット4に対するステータコア21の圧入時に調整することができる。従って、上軸受5及び下軸受6の予圧を組み立て時に調整し、所望の予圧を上軸受5及び下軸受6に付与することができる。
【0060】
特許文献1に記載された従来のモータは、ブラケットの相対的距離が、ステータの長さで決まるため、ステータの長さの誤差が、上軸受及び下軸受の予圧に影響を与えるという問題があった。特に、ステータコアが、積層鋼板である場合、各磁性鋼板の厚みの誤差が積層枚数だけ累積され、ステータコアの長さに大きな誤差が生じ易く、上軸受及び下軸受に適切な予圧を付与することが難しいという問題があった。
【0061】
これに対し、本実施の形態によるモータ100では、上ブラケット3及び下ブラケット4と、ステータコア21とが圧入により固定されるため、当該圧入時に、上ブラケット3及び下ブラケット4の相対的距離を調整することができる。このため、製造ばらつきなどによりステータ2に形状誤差が生じている場合であっても、上軸受5及び下軸受6に適切な予圧を付与することができる。従って、動作時における振動や騒音の発生を抑制することができるとともに、モータ100の耐久性を向上させることができる。
【0062】
(3)上ブラケット3の圧入長と、上軸受5の挿入長との関係
本実施の形態によるモータ100は、上ブラケット3の上軸受保持部33に対する上軸受5の挿入長が、上ブラケット3の上円筒カバー31に対するステータコア21の圧入長以上となるように構成される。
【0063】
このような構成を採用することにより、下ブラケット4に回転部1及びステータ2を取り付けた後、上ブラケット3を取り付ける際、上軸受保持部33に対する上軸受5の挿入が開始される前に、上円筒カバー31に対するステータコア21の圧入が開始されるのを防止することができる。
【0064】
上円筒カバー31に対するステータコア21の圧入が先に開始され、その後に、上軸受保持部33に対する上軸受5の挿入が開始された場合、傾いた状態の上軸受5が上軸受保持部33に挿入され、シャフト10の軸合わせの精度を低下させる可能性がある。このため、上軸受保持部33に対する上軸受5の挿入長を、上円筒カバー31に対するステータコア21の圧入長以上にすることにより、上軸受5の挿入が先に開始される。その結果、上軸受5と下軸受6との同軸を合わせながら、上ブラケット3をステータ2に固定することができる。従って、上軸受5の取り付け精度を向上させ、シャフト10の軸合わせを高精度で行うことができる。
【0065】
特に、上ブラケット3の上軸受保持部33に対する上軸受5の挿入長が、上ブラケット3の上円筒カバー31に対するステータコア21の圧入長と略同一であることが望ましい。上円筒カバー31に対するステータコア21の圧入長を長くすることにより、ステータ2及び上ブラケット3の締結強度を増大させることができる。このため、上軸受5の挿入長と、上ブラケット3への圧入長とを略同一にすることにより、シャフト10の軸合わせを高精度で行うとともに、ステータ2と上ブラケット3との締結強度も向上させることができる。
【0066】
(4)ブラケット4の圧入長
本実施の形態によるモータ100は、下ブラケット4の下円筒カバー41に対するステータコア21の圧入長が、上ブラケット3の上円筒カバー31に対するステータコア21の圧入長よりも長くなるように構成される。このような構成を採用することにより、ステータ2と下ブラケット4との締結強度を向上させることができる。
【0067】
下ブラケット4の下円筒カバー41に対するステータコア21の圧入長を長くすれば、ステータ2及び下ブラケット4の締結強度を増大させることができる。上述した通り、上ブラケット3に対するステータコア21の圧入長には、シャフト10の軸合わせの精度の観点から制約があるのに対し、下ブラケット4に対するステータコア21の圧入長には、このような制限がない。このため、下ブラケット4への圧入長を上ブラケット3への圧入長よりも長くすることにより、ステータ2と下ブラケット4との締結強度を向上させることができる。特に、シャフト10の下側が出力軸になり、上ブラケット3に比べ、下ブラケット4により大きな負荷が加わる場合に好適である。
【0068】
また、本実施の形態によるモータ100は、ステータコア21の圧入長を規定する位置決め部41aが下ブラケット4の下円筒カバー41上に設けられ、ステータコア21の外周の下端を当接させている。このため、下円筒カバー41に対するステータコア21の圧入長を一定にすることができる。
【0069】
下ブラケット4の下円筒カバー41に対するステータコア21の圧入長を一定にすることにより、ステータ2及び下ブラケット4を一定の締結強度で固定することができる。また、下ブラケット4に対するステータコア21の圧入が十分でない場合、回転部1に対し、ステータ2が浮き上がった状態になる。この場合、上ブラケット3の取り付け時に、上軸受5の挿入開始前に、ステータコア21の圧入が開始されてしまう。このため、下円筒カバー41に位置決め部41aを設け、下ブラケット4に対するステータコア21の圧入長を一定にすることにより、シャフト10の軸合わせの精度を向上させることができる。
【0070】
(5)上軸受5及び下軸受6の挿入長の関係
下軸受保持部43に対する下軸受6の挿入長は、上軸受保持部33に対する上軸受5の挿入長よりも長くなるように構成される。シャフト10の下側が出力軸になる場合、上ブラケット3に比べ、下ブラケット4により大きな負荷が加わる。このため、下軸受6の挿入長を長くすることにより、シャフト10の軸精度の経時劣化を抑制し、モータの耐久性を向上させることができる。
【0071】
実施の形態2.
実施の形態1では、位置決め部41aにステータコア21の下端を当接させることにより、下ブラケット4の圧入長を一定にする場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、他の方法により下ブラケット4の圧入長を一定にする場合について説明する。なお、上記実施の形態によるモータ100と同一の構成部分についての重複する説明は省略する。
【0072】
図4は、本発明の実施の形態2によるモータ101の一構成例を示した断面図である。図中の当接部24aは、径方向外方に張り出したインシュレータ23の一部である。当接部24aの外径は、ステータコア21の外径と略一致し、ステータコア21の外周面の下方に、当接部24aの外周面が配置される。
【0073】
下ブラケット4にステータ2を圧入すれば、当接部24aの外周の下端が、下円筒カバー41の位置決め部41aに当接する。このため、ステータ2に対する下ブラケット4の位置決めを行うことができ、下ブラケット4に対するステータコア21の圧入長を予め定められた長さにすることができる。つまり、位置決め部41aに対し、ステータコア21を当接させるのに代えて、インシュレータ23を当接させることにより、下ブラケット4に対するステータコア21の圧入長を一定にしている。
【0074】
図5は、本発明の実施の形態2によるモータ102の一構成例を示した断面図である。図中の当接部24bは、下ブラケット4の底板部42に当接するステータ2の一部である。この当接部24bは、下方に突出するインシュレータ23の一部であるが、下方に突出するステータコア21の一部であってもよい。
【0075】
下ブラケット4にステータ2を圧入すれば、当接部24bの下端が、下ブラケット4の底板部42に当接する。このため、ステータ2に対する下ブラケット4の位置決めを行うことができ、下ブラケット4に対するステータコア21の圧入長を予め定められた長さにすることができる。つまり、位置決め部41aを用いるのに代えて、当接部24bを底板部42に当接させることにより、下ブラケット4に対するステータコア21の圧入長を一定にしている。
【0076】
図6は、本発明の実施の形態2によるモータ103の一構成例を示した断面図である。モータ103は、下ブラケット4に対するステータコア21の圧入長を規定する手段として、位置決め部41aに代えて、位置決め部21aを備えている。
【0077】
位置決め部21aは、ステータコア21の外周面上において周方向に延びる段差形状として形成される。ステータコア21の外径は、位置決め部21aを境界として異なり、下側よりも上側の方が大きくなっている。このため、下ブラケット4の下円筒カバー41の上端41eが位置決め部21aに当接するように、ステータコア21を圧入すれば、下ブラケット4に対するステータコア21の圧入長を予め定められた長さにすることができる。
【0078】
実施の形態3.
実施の形態1では、予圧部材7が上軸受5に隣接して配置される場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、予圧部材7が下軸受6に隣接して配置される場合について説明する。なお、上記実施の形態によるモータ100〜103と同一の構成部分についての重複する説明は省略する。
【0079】
図7は、本発明の実施の形態3によるモータ104の一構成例を示した断面図である。図中の予圧部材7は、軸方向において下軸受6の外輪63に隣接して配置され、上軸受5及び下軸受6に予圧を付与する弾性部材であり、例えば、ウェーブワッシャが用いられる。
【0080】
予圧部材7は、下軸受6の外輪63と、下ブラケット4の下蓋部45との間に配置され、外輪63を軸方向上方へ付勢する。このとき、下ブラケット4の下蓋部45には、当該付勢力の反力が作用する。上ブラケット3及び下ブラケット4は、ともにステータコア21に固定されているため、上記反力により、上ブラケット3の上蓋部35は軸方向下方へ付勢され、上蓋部35により、上軸受5の外輪53も軸方向下方へ付勢される。
【0081】
つまり、予圧部材7を上軸受5に隣接して配置する構成に代えて、予圧部材7を下軸受6に隣接して配置する構成を採用することができる。なお、予圧部材7の付勢力が、上軸受5及び下軸受6の予圧となることや、上軸受5及び下軸受6の予圧が、上ブラケット3及び下ブラケット4の相対的距離に応じた値となることは、
図3のモータ100(実施の形態1)の場合と全く同様である。
【0082】
なお、上軸受5の外輪53は上蓋部35と軸方向に対向する一方、上軸受5の内輪51は軸穴35hと軸方向に対向する。このため、上ブラケット3を軸方向下方へ付勢した場合、上軸受5の外輪53は上蓋部35に当接するが、上軸受5の内輪51は上蓋部35に当接しないように構成されている。
【0083】
実施の形態4.
実施の形態1では、上軸受保持部33が、天板部32よりも上側に形成される場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、上軸受保持部33が、天板部32よりも下側に形成される場合について説明する。なお、上記実施の形態によるモータ100〜104と同一の構成部分についての重複する説明は省略する。
【0084】
図8は、本発明の実施の形態4によるモータ105の一構成例を示した断面図である。モータ105は、
図7のモータ104(実施の形態3)と比較すれば、上軸受保持部33の形状と、上軸受5の保持方法とが異なり、また、ストッパ15を備えている点で異なる。
【0085】
上軸受保持部33は、軸方向に延びる上円筒部34と、上軸受5の外輪53の上面を覆う上蓋部35とにより構成される有底円筒形状からなり、上軸受5を保持している。上円筒部34は、天板部32の内周端から下方に延びる略円筒形状からなる。上軸受5は、上円筒部34の上端を開放させた開口部から挿入される。上蓋部35は、上円筒部34の下端から径方向内方に延びる略板状体であり、シャフト10に対応する軸穴35hが設けられている。
【0086】
ストッパ15は、上軸受5よりもロータマグネット12側において、シャフト10に固定され、上軸受5の内輪51が軸方向下方へ移動するのを制限する。ストッパ15は、例えば、円環状の略平板からなり、シャフト10の外周面に形成された円環状の溝に嵌合され、回転部1を構成する。なお、ストッパ15は、上軸受5の内輪51と軸方向に対向するが、上軸受5の外輪53とは軸方向に対向せず、内輪51の移動のみを制限する。
【0087】
上軸受5の外輪53は、上軸受保持部33に圧入固定される。上軸受5の内輪51は、シャフト10に隙間嵌めされ、軸方向に移動可能に保持されるとともに、下方への移動は、ストッパ15によって制限されている。
【0088】
予圧部材7は、
図7のモータ104(実施の形態3)と同様、下軸受6の外輪63と、下ブラケット4の下蓋部45との間に配置され、外輪63を軸方向上方へ付勢する。このとき、下ブラケット4の下蓋部45には、当該付勢力の反力が作用し、上ブラケット3の上軸受保持部33は軸方向下方へ付勢される。その結果、上軸受保持部33に固定されている上軸受5の外輪53も軸方向下方へ付勢される。
【0089】
つまり、予圧部材7は、同一の付勢力で、下軸受6の外輪63を軸方向上方へ付勢するとともに、上軸受5の外輪53を軸方向下方へ付勢する。一方、下軸受6の内輪61は、シャフト10に固定され、上軸受5の内輪51もストッパ15に当接し、下方へ移動することができない。このため、予圧部材7の付勢力が、上軸受5及び下軸受6の予圧となる。また、当該予圧は、上ブラケット3及び下ブラケット4の相対的距離に応じた値となる。
【0090】
図9は、本発明の実施の形態4によるモータ106の一構成例を示した断面図である。モータ106は、
図8のモータ105と比較すれば、予圧部材7に代えて、予圧部材7'を備えている点で異なる。
【0091】
予圧部材7'は、軸方向において上軸受5の内輪51に隣接して配置され、上軸受5及び下軸受6に予圧を付与する弾性部材であり、例えば、コイルバネが用いられる。予圧部材7'は、上軸受5の内輪51と、ストッパ15との間に配置され、内輪51を軸方向上方へ付勢する。このとき、ストッパ15には、当該付勢力の反力が作用する。ストッパ15及び下軸受6の内輪61は、いずれもシャフト10に固定されているため、上記反力により、下軸受6の内輪61は軸方向下方へ付勢される。
【0092】
つまり、予圧部材7'は、同一の付勢力で、上軸受5の内輪51を軸方向上方へ付勢するとともに、下軸受6の内輪61を軸方向下方へ付勢する。一方、上軸受5の外輪53は上ブラケット3に固定され、下軸受6の外輪63も下蓋部45に当接し、ブラケット4に対し、下方へ移動することができない。このため、予圧部材7の付勢力が、上軸受5及び下軸受6の予圧となる。また、当該予圧は、上ブラケット3及び下ブラケット4の相対的距離に応じた値となる。
【0093】
本実施の形態によるモータ105,106は、上軸受保持部33が、上ブラケットの天板部32よりも下側に配置されている。このため、モータ105,106の長さを短くし、小型化することができる。
【0094】
上述した全ての実施の形態において、上ブラケット3及び下ブラケット4と、ステータ2との固定方法は、圧入に限らず、圧入と接着固定を組み合わせてもよい。また、溶接することにより、上ブラケット3及び下ブラケット4と、ステータ2とを固定してもよい。すなわち、上ブラケット3及び下ブラケット4と、ステータ2との固定は、ねじ等を用いることなく、ステータ2に対する上ブラケット3及び下ブラケット4の軸方向の位置を規定できればよい。