(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記部分ケーシングの中心角が180°であり、一つの前記静翼セグメントの中心角が45°の場合、二つの前記ダミーリングを備え、二つの前記ダミーリングの中心角がそれぞれ70°以上で且つ90°未満である、
請求項1又は2に記載の静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリ。
複数のダミーリングのうち少なくとも一のダミーリングの前記ダミーシュラウド部における前記周方向の第一端面を含む第一端部であって、軸方向の一方側及び他方側のそれぞれに、前記ダミーシュラウド部の前記軸方向の幅が前記周方向の前記第一端面から第二端面に向かうに連れて次第に広がるようテーパ面が形成されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリ。
前記ダミーリングにおける前記周方向の端面に接して取り付けられ、前記静翼セグメントの外側シュラウドの前記周方向の端面及び前記静翼セグメントの内側シュラウドの前記周方向の端面に接して、前記ダミーリングの移動に伴って前記静翼セグメントを押す押付具を備えている、
請求項1から7のいずれか一項に記載の静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリ。
前記リングピースの外径寸法は、前記軸方向に並んでいる複数の前記静翼環のそれぞれの前記外側シュラウドの内径寸法よりも小さく、前記リングピースの内径寸法は、前記軸方向に並んでいる複数の前記静翼環のそれぞれの前記内側シュラウドの外径寸法よりも大きく、
前記溝アタッチメントとして、前記軸方向に並んでいる複数の前記翼環溝に対してそれぞれが嵌り込む複数の溝アタッチメントを有する、
請求項11に記載の静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリ。
前記溝アタッチメントは、前記リングピースの前記周方向における端部に装着される端部溝アタッチメントと、前記端部溝アタッチメントに対して前記周方向に離間して前記リングピースに装着される胴部溝アタッチメントと、を有する、
請求項11又は12に記載の静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の方法では、半円弧状のロールケージアッセンブリ及び半円弧状のダミーセクションを準備する必要がある。これらロールケージアッセンブリ及びダミーセクションは、いずれも、半円弧状で円弧長が長いため、製作コストがかさんでしまう。また、ダミーセクションは、複数の静翼環の形状及び寸法等に合わせて、複数の静翼環毎に製造する必要がある。すなわち、上記特許文献1に記載の方法では、静翼セグメントの取外コストがかさむという問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点に着目し、ケーシングに対する静翼セグメントの取外コストを抑えることができる取外用ダミーリングアッセンブリ、及びこれを用いた静翼セグメントの取外方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するための発明に係る一態様としての静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリは、
軸線を中心として筒状のケーシングと、前記軸線を中心として環状を成し該ケーシングの内周側に形成されている翼環溝に装着されている静翼環と、を備え、前記ケーシングは、前記軸線を中心とする周方向に複数の部分ケーシングに分割可能であり、前記静翼環は、前記周方向に複数の静翼セグメントとして分割可能である回転機械における、静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリにおいて、前記翼環溝に嵌り込めるダミーシュラウド部を有し、前記軸線を中心とする中心角が90°未満の円弧形状を成し、前記翼環溝に沿って前記周方向に移動可能なダミーリングを複数備
え、前記ダミーリングには、前記ダミーリングに対して前記周方向に移動させる力を作用させる移動力作用具を取り付ける金具取付部が形成されている。
【0009】
当該取外用ダミーリングアッセンブリを用いて、静翼セグメントを部分ケーシングから外す場合には、以下の手順で行う。まず、複数のダミーリングのうち、第一ダミーリングのダミーシュラウド部を部分ケーシングの翼環溝に嵌め込んで、第一ダミーリングを周方向に移動させる。第一ダミーリングのダミーシュラウド部の周方向Dcにおける全体が部分ケーシングの翼環溝内に収まると、複数のダミーリングのうちの残りの第二ダミーリングのダミーシュラウド部を部分ケーシングの翼環溝に嵌め込んで、第一ダミーリングと突き合せ、第一ダミーリングと共に第二ダミーリングを周方向Dcに移動させる。第一ダミーリングの移動過程、第一及び第二ダミーリングの移動過程のいずれかで、部分ケーシングの翼環溝から抜け出てきた静翼セグメントを部分ケーシングから引き抜く。
【0010】
当該取外用ダミーリングアッセンブリを用いる場合、以上のように、複数のダミーリングを部分ケーシングに装着し、複数のダミーリングを周方向に移動させることで、部分ケーシング内の複数の静翼セグメントを部分ケーシングから押し出す。このため、当該取外用ダミーリングアッセンブリを用いると、回転機械のロータが部分ケーシングに支持されている状態でも、部分ケーシングから複数の静翼セグメントを取り外すことができる。
【0011】
また、静翼セグメントを取り外す際、中心角が90°未満の複数の円弧状のダミーリングを準備すれば足りる。このため、静翼セグメントの取外コストを抑えることができる。
【0012】
ここで、前記一態様としての静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリにおいて、複数の前記ダミーリングの中心角の合計は、前記部分ケーシングの中心角から一つの前記静翼セグメントの中心角を減算した角度より大きくてもよい。
【0013】
また、以上のいずれかの前記静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリにおいて、前記部分ケーシングの中心角が180°であり、一つの前記静翼セグメントの中心角が45°の場合、二つの前記ダミーリングを備え、二つの前記ダミーリングの中心角がそれぞれ
70°以上で且つ90°未満であってもよい。
【0015】
この場合、前記ダミーリングにおける前記周方向の端面に、前記金具取付部が形成されていてもよい。また、円弧形状の前記ダミーリングにおける外周面に、前記周方向に並んで複数の前記金具取付部が形成されていてもよい。
【0016】
以上のいずれかの前記静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリにおいて、複数のダミーリングのうち少なくとも一のダミーリングの前記ダミーシュラウド部における前記周方向の第一端面を含む第一端部であって、軸方向の一方側及び他方側のそれぞれに、前記ダミーシュラウド部の前記軸方向の幅が前記周方向の前記第一端面から第二端面に向かうに連れて次第に広がるようテーパ面が形成されていてもよい。
【0017】
この場合、前記一のダミーリングの前記第一端面は、前記軸方向の一方側から他方側に向かうに連れて次第に前記周方向の
前記第二端面から前記第一端面の側に向かうよう傾斜しており、前記ダミーシュラウド部の前記軸方向の前記他方側における前記テーパ面の前記周方向に対する角度は、前記一方側における前記テーパ面の前記周方向に対する角度より小さくてもよい。
【0018】
また、以上のいずれかの前記静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリにおいて、前記ダミーリングにおける前記周方向の端面に接して取り付けられ、前記静翼セグメントの外側シュラウドの前記周方向の端面及び前記静翼セグメントの内側シュラウドの前記周方向の端面に接して、前記ダミーリングの移動に伴って前記静翼セグメントを押す押付具を備えていてもよい。
【0019】
以上のいずれかの前記静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリにおいて、前記ダミーリングは、アルミニウム合金で形成されていてもよい。
【0020】
上記問題点を解決するための発明に係る一態様としての静翼セグメントの取外方法は、
以上のいずれかの前記静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリを用いて、前記静翼セグメントを前記部分ケーシングから外す静翼セグメントの取外方法において、複数の前記ダミーリングのうち、第一ダミーリングの前記ダミーシュラウド部を前記部分ケーシングの前記翼環溝に嵌め込んで、前記第一ダミーリングを前記周方向に移動させる第一移動工程と、前記第一ダミーリングの前記ダミーシュラウド部の周方向における全体が前記部分ケーシングの前記翼環溝内に収まると、複数の前記ダミーリングのうちの残りの第二ダミーリングの前記ダミーシュラウド部を前記部分ケーシングの前記翼環溝に嵌め込んで、前記第一ダミーリングと突き合せ、前記第一ダミーリングと共に前記第二ダミーリングを前記周方向に移動させる第二移動工程と、前記第一移動工程と前記第二移動工程とのいずれかの工程の実行で、前記部分ケーシングの前記翼環溝から抜け出てきた前記静翼セグメントを前記部分ケーシングから引き抜くセグメント引抜工程と、を実行する。
【0021】
上記問題点を解決するための発明に係る他の態様としての静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリは、
軸線を中心として筒状のケーシングと、前記軸線を中心として環状を成し前記軸線が延びる軸方向に並んでいる複数の静翼環と、を備え、前記ケーシングの内周側には、前記軸線を中心として環状を成し、それぞれに前記静翼環の外側シュラウドが嵌り込む複数の翼環溝が前記軸方向に並んで形成され、前記ケーシングは、前記軸線を中心とする周方向に複数の部分ケーシングに分割可能であり、前記静翼環は、前記周方向に複数の静翼セグメントとして分割可能である回転機械における、静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリにおいて、前記静翼環の前記外側シュラウドの内径寸法より小さい外径寸法で、前記静翼環の内側シュラウドの外径寸法より大きい内径寸法の円弧形状のリングピースと、前記リングピースに対して着脱可能で、前記翼環溝に嵌り込める溝アタッチメントと、を備えている。
【0022】
当該取外用ダミーリングアッセンブリを用いて、静翼セグメントを部分ケーシングから外す場合には、以下の手順で行う。まず、複数の翼環溝のうち、一の翼環溝に嵌り込める溝アタッチメントをリングピースに装着する。次に、リングピースに装着された溝アタッチメントを一の翼環溝に嵌め込んで、リングピースと溝アタッチメントとを一体的に周方向に移動させる。この移動過程で、一の翼環溝から抜け出てきた静翼セグメントを部分ケーシングから引き抜く。一の翼環溝に取り付けられている全ての静翼セグメントの取り外しが完了すると、他の翼環溝に嵌り込める溝アタッチメントをリングピースに装着する。次に、リングピースに装着された溝アタッチメントを他の翼環溝に嵌め込んで、リングピースと溝アタッチメントとを一体的に周方向に移動させる。この移動過程で、他の翼環溝から抜け出てきた静翼セグメントを部分ケーシングから引き抜く。
【0023】
当該取外用ダミーリングアッセンブリを用いる場合、以上のように、リングピースと溝アタッチメントとを一体的に周方向に移動させることで、部分ケーシング内の複数の静翼セグメントを部分ケーシングから押し出す。このため、当該取外用ダミーリングアッセンブリを用いると、回転機械のロータが部分ケーシングに支持されている状態でも、部分ケーシングから複数の静翼セグメントを取り外すことができる。
【0024】
また、当該取外用ダミーリングアッセンブリを用いる場合、複数の翼環溝に対して一つのリングピースを用いれば足りるので、静翼セグメントの取外コストを抑えることができる。
【0025】
ここで、前記他の態様としての静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリにおいて、前記リングピースの外径寸法は、前記軸方向に並んでいる複数の前記静翼環のそれぞれの前記外側シュラウドの内径寸法よりも小さく、前記リングピースの内径寸法は、前記軸方向に並んでいる複数の前記静翼環のそれぞれの前記内側シュラウドの外径寸法よりも大きく、前記溝アタッチメントとして、前記軸方向に並んでいる複数の前記翼環溝に対してそれぞれが嵌り込む複数の溝アタッチメントを有してもよい。
【0026】
また、前記他の態様としてのいずれかの前記静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリにおいて、前記溝アタッチメントは、前記リングピースの前記周方向における端部に装着される端部溝アタッチメントと、前記端部アタッチメントに対して前記周方向に離間して前記リングピースに装着される胴部溝アタッチメントと、を有してもよい。
【0027】
また、前記他の態様としてのいずれかの前記静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリにおいて、前記軸線を基準にした前記端部溝アタッチメントの装着位置に対する前記胴部溝アタッチメントの装着位置の角度は、90°未満であってもよい。
【0028】
上記問題点を解決するための発明に係る他の態様としての静翼セグメントの取外方法は、
前記他の態様としてのいずれかの前記静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリを用いて、前記静翼セグメントを前記部分ケーシングから外す静翼セグメントの取外方法において、前記リングピースに前記溝アタッチメントを装着する準備工程と、前記リングピースに装着された前記溝アタッチメントを前記部分ケーシングの前記翼環溝に嵌め込んで、前記リングピースと前記溝アタッチメントとを一体的に前記周方向に移動させる移動工程と、前記移動工程の実行で、前記部分ケーシングの前記翼環溝から抜け出てきた前記静翼セグメントを前記部分ケーシングから引き抜くセグメント引抜工程と、を実行する。
【0029】
上記問題点を解決するための発明に係るさらに他の態様としての静翼セグメントの取外方法は、
前記他の態様としての前記静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリを用いて、前記静翼セグメントを前記部分ケーシングから外す静翼セグメントの取外方法において、
前記部分ケーシングの複数の前記翼環溝毎に、当該翼環溝に対応する前記溝アタッチメントを前記リングピースに装着する準備工程と、前記リングピースに装着された前記溝アタッチメントを当該翼環溝に嵌め込んで、前記リングピースと前記溝アタッチメントとを一体的に前記周方向に移動させる移動工程と、前記移動工程の実行で、前記翼環溝から抜け出てきた前記静翼セグメントを前記部分ケーシングから引き抜くセグメント引抜工程と、を実行する。
【発明の効果】
【0030】
本発明では、静翼セグメントをケーシングから取り外すためのコストを抑えることができる。さらに、本発明では、静翼セグメントをケーシングから外す際に、ロータを外す必要がないので、作業工期を短くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリ、及びこれを用いた静翼セグメントの取外方法の各種実施形態について説明する。
【0033】
「回転機械の実施形態」
静翼セグメントを備えている回転機械の実施形態について、
図1〜
図4を用いて説明する。
【0034】
本実施形態の回転機械は、ガスタービンである。ガスタービンは、
図1に示すように、ガスタービンは、
図1に示すように、外気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機1と、燃料供給源からの燃料を圧縮空気に混合して燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器6と、燃焼ガスにより駆動するタービン7と、を備えている。
【0035】
圧縮機1及びタービン7は、いずれも軸流回転機械で、回転軸線Arを中心として回転するロータ2,8と、このロータ2,8を覆うケーシング5,9とを有している。圧縮機ロータ2及びタービンロータ8は、同一の回転軸線Arを中心として回転するもので、相互に連結されている。燃焼器6は、タービンケーシング9に固定されている。なお、以下では、回転軸線Arが延びている方向を軸方向Daとし、回転軸線Arに対する径方向を単に径方向Dr、回転軸線Arに対する周方向を単に周方向Dcという。また、軸方向Daであって、タービン7を基準にして圧縮機1側を上流側、反対側を下流側という。
【0036】
圧縮機ロータ2は、
図2に示すように、軸方向Daに延びているロータ本体3と、このロータ本体3の外周に固定され軸方向Daに並んでいる複数の動翼段4と、を有している。圧縮機ケーシング5は、回転軸線Arを中心として筒状を成している。圧縮機ケーシング5の内周側には、各動翼段4の上流側のそれぞれの位置に、径方向内側から径方向外側に向かって凹み回転軸線Arを中心として環状の翼環溝5aが形成されている。すなわち、圧縮機ケーシング5の内周側には、軸方向Daに並んでいる複数の翼環溝5aが形成されている。各翼環溝5aには、回転軸線Arを中心として環状の静翼環10が取り付けられている。
【0037】
1つの静翼環10は、
図3に示すように、組立の都合上、周方向Dcに複数の静翼セグメント11として分割可能である。各静翼セグメント11は、回転軸線Arを中心として円弧状を成している。ここでの静翼環10は、8つの静翼セグメント11に分割可能である。このため、ここでの1つの静翼セグメント11の中心角は、45°(=360°÷8)である。また、圧縮機ケーシング5は、半円筒状の二つの部分ケーシング5u,5dに分割可能である。二つの部分ケーシング5u,5dのうち、一方の部分ケーシング5uが圧縮機ケーシング5の上半分を形成する上ケーシング5uを成し、他方の部分ケーシング5dが圧縮機ケーシング5の下半分を形成する下ケーシング5dを成す。
【0038】
静翼セグメント11は、
図4に示すように、周方向Dcに並んでいる複数の静翼12と、複数の静翼12の径方向内側の部分が装着される連結ホルダ18と、複数の静翼12の径方向外側の部分相互を周方向Dcに連結する連結バンド19と、を有している。
【0039】
静翼12は、径方向Drに延びる翼体13と、翼体13の径方向内側に設けられている内側シュラウド14と、翼体13の径方向外側に設けられている外側シュラウド15と、を有している。圧縮機ケーシング5内で圧縮気体が通る主流路は、静翼12の内側シュラウド14の外周側と外側シュラウド15の内周側との間に形成される。連結ホルダ18には、複数の静翼12の各内側シュラウド14が装着され、連結バンド19には、複数の静翼12の各外側シュラウド15が装着される。圧縮機ケーシング5の翼環溝5aには、
図2に示すように、静翼セグメント11の構成要素のうち、複数の静翼12の各外側シュラウド15が嵌り込む。
【0040】
なお、ここでは、複数の静翼12を連結ホルダ18及び連結バンド19を用いて連結し、一つの静翼セグメント11を構成しているが、複数の静翼12を連結するにあたっては、如何なる方法で連結してもよい。
【0041】
「静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリ、及びこれを用いた静翼セグメントの取外方法の第一実施形態」
以上で説明した静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリ、及びこれを用いた静翼セグメントの取外方法の第一実施形態について、
図5〜
図16を用いて説明する。
【0042】
本実施形態の取外用ダミーリングアッセンブリ20は、
図5〜
図8に示すように、回転軸線Arを中心として円弧状を成す二つのダミーリング21a,21bを有する。各ダミーリング21a,21bは、圧縮機ケーシング5の翼環溝5aに嵌り込めるダミーシュラウド部22と、ダミーシュラウド部22から径方向内側に突出する内周側リング部23と、を有する。円弧状のダミーリング21a,21bの中心角θ1は、90°未満の例えば70°である。ダミーリング21a,21bの外周面の径、つまりダミーリング21a,21bの外径は、翼環溝5aの溝底面の内径と実質的に同じである。
【0043】
ダミーリング21a,21bには、ダミーリング21a,21bに対して周方向Dcに移動させる力を作用させるアイボルト(移動力作用具)を取り付ける複数のネジ穴(金具取付部)24が形成されている。ネジ穴24は、ダミーリング21a,21bの周方向Dcの両端面、つまり第一端面25及び第二端面26に形成されている。第一端面25及び第二端面26に形成されているネジ穴24は、周方向Dcに凹んでいる。ネジ穴24は、さらに、ダミーリング21a,21bの外周面にも周方向Dcに並んで複数形成されている。外周面に形成されているネジ穴24は、径方向内側に向かって凹んでいる。なお、アイボルトとは、ネジ部とリング部とが一体となったボルトである。
【0044】
二つのダミーリング21a,21bのうち、少なくとも第一ダミーリング21aの第一端面25を含む第一端部25pには、テーパ面28u,28dが形成されている。
図7に示すように、テーパ面28u,28dは、第一ダミーリング21aの外面で軸方向Daを向く一対の側面27u,27dと第一ダミーリング21aの第一端面25との角部に形成されている。一対の側面27u,27dのうち、軸方向Daの上流側の側面27uと第一端面25との角部に形成されている上流側のテーパ面28uは、周方向Dcにおいて第一端面25から第二端面26に向かうに連れて次第に上流側に向かうよう傾斜している。また、軸方向Daの下流側の側面27dと第一端面25との角部に形成されている下流側のテーパ面28dは、周方向Dcにおいて第一端面25から第二端面26に向かうに連れて次第に下流側に向かうよう傾斜している。このため、第一ダミーリング21aの第一端部25pにおける軸方向Daの幅は、周方向Dcにおいて第一端面25から第二端面26に向かうに連れて次第に広がる。
【0045】
テーパ面28u,28dは、
図7及び
図8に示すように、第一ダミーリング21aの第一端部25pにおけるダミーシュラウド部22及び内周側リング部23にわたって形成されている。各テーパ面28u,28dは、第一ダミーリング21aのダミーシュラウド部22を第一端部25p側から圧縮機ケーシング5に翼環溝5aに入れる際の挿入性を高めるためのものである。このため、各テーパ面28u,28dは、第一ダミーリング21aの第一端部25pにおける少なくともダミーシュラウド部22に形成されていればよい。
【0046】
本実施形態のダミーリング21a,21bは、アルミニウム合金で形成されている。このダミーリング21a,21bの製造にあたっては、まず、ダミーシュラウド部22及び内周側リング部23に相当する部分を有する直線状の部材を形成する。次に、この直線状の部材に対してロール曲げ加工を施し、円弧状の部材にする。そして、この円弧状の部材に対して、ネジ穴24等の形成加工を施して、ダミーリング21a,21bを完成する。
【0047】
次に、
図9〜
図14を用いて、以上で説明した取外用ダミーリングアッセンブリ20を用いた静翼セグメントの取外手順について説明する。
【0048】
まず、
図9に示すように、
図3に示す圧縮機ケーシング5を分解して、上ケーシング5uを取り外す。この時点で、圧縮機ロータ2は、下ケーシング5dに設けられている図示されていない軸受部に支持されている。また、下ケーシング5dには、静翼環10を構成する8つの静翼セグメント11のうち4つの静翼セグメント11が装着されている。ここで、以下の説明の都合上、全体で半円弧状を成す4つの静翼セグメント11のうち、周方向Dcの一方側の端に位置する静翼セグメント11を第一静翼セグメント11aとし、周方向Dcの他方側で第一静翼セグメント11aに隣接する静翼セグメント11を第二静翼セグメント11bとし、周方向Dcの他方側で第二静翼セグメント11bに隣接する静翼セグメント11を第三静翼セグメント11cとし、周方向Dcの他方側で第三静翼セグメント11cに隣接する静翼セグメント11を第四静翼セグメント11dとする。
【0049】
次に、全体で半円弧状を成す4つの静翼セグメント11のうち、周方向Dcの両端に位置する静翼セグメント11である第一静翼セグメント11a及び第四静翼セグメント11dを周方向Dcに移動させて、下ケーシング5dから引き抜く。静翼セグメント11の引き抜きは、例えば、作業者が直接静翼セグメント11を把持して、作業者自身の力で行う。また、この静翼セグメント11の引き抜きは、例えば、チェーンブロックを用いて行ってもよい。具体的には、静翼セグメント11を構成している複数の静翼12のうち、周方向Dcの端に位置している静翼12の翼体13にバンド等を巻き付ける。このバンド等にチェーンブロックから延びるチェーンの一端を取り付ける。そして、チェーンブロックを操作して、この静翼セグメント11を下ケーシング5dから引き抜く。
【0050】
次に、
図10に示すように、第一ダミーリング21aを下ケーシング5d上に配置する。この際、第一ダミーリング21aの第一端部25pにおけるダミーシュラウド部22が下ケーシング5dの翼環溝5aにおける周方向Dcの端の開口と対向させる。そして、第一ダミーリング21aのダミーシュラウド部22を第一端部25p側から下ケーシング5dの翼環溝5aに差し込む。前述したように、第一ダミーリング21aの第一端部25pには、テーパ面28u,28dが形成されているため、ダミーシュラウド部22を翼環溝5aへ容易に差し込むことができる。
【0051】
第一ダミーリング21aのダミーシュラウド部22の第一端部25p側を翼環溝5aに差し込んだ後、この第一ダミーリング21aを翼環溝5aに沿って周方向Dcに移動させる(第一移動工程)。第一ダミーリング21aを周方向Dcに移動させると、
図11に示すように、第一ダミーリング21aの第一端面25が下ケーシング5d内に残っている第三静翼セグメント11cの周方向Dcの端面14cに接触する。第一ダミーリング21aの第一端面25と第三静翼セグメント11cの周方向Dcの端面14cとが接触している状態で、第一ダミーリング21aを周方向Dcにさらに移動させると、この第一ダミーリング21aの周方向Dcの移動に伴って、第三静翼セグメント11c及び第二静翼セグメント11bも周方向Dcに移動する。この際、第一ダミーリング21aの周方向Dcへの手動による移動が、第三静翼セグメント11c及び第二静翼セグメント11bと下ケーシング5dとの間の摩擦力で困難な場合には、例えば、チェーンブロックを用いる。このチェーンブロックを用いる際には、まず、第一ダミーリング21aの外周面に形成されているネジ穴24のうち、ネジ穴24が下ケーシング5dの翼環溝5aの溝底面と対向していないネジ穴24、言い換えると、下ケーシング5dから露出しているネジ穴24の一つにアイボルト91を捻じ込む。次に、下ケーシング5dのフランジ5f又は下ケーシング5dよりも下方の位置に、チェーンブロックから延びる第一のチェーンの端部を取り付ける。次に、このチェーンブロックから延びる第二のチェーンの端部をアイボルト91のリング部に取り付ける。そして、チェーンブロックを操作して、第一ダミーリング21aを周方向Dcに移動させる。
【0052】
図12に示すように、第一ダミーリング21aにおけるダミーシュラウド部22の周方向Dcの全体が下ケーシング5dの翼環溝5a内に収まると、第二ダミーリング21bを下ケーシング5d上に配置する。この際も、第一ダミーリング21aを下ケーシング5d上に配置した際と同様、第二ダミーリング21bの第一端部25pにおけるダミーシュラウド部22を下ケーシング5dの翼環溝5aにおける周方向Dcの端の開口と対向させる。そして、第二ダミーリング21bのダミーシュラウド部22を第一端部25p側から下ケーシング5dの翼環溝5aに差し込み、この第二ダミーリング21bを翼環溝5aに沿って周方向Dcに移動させる(第二移動工程)。
【0053】
第二ダミーリング21bを周方向Dcに移動させると、
図13に示すように、この第二ダミーリング21bの周方向Dcの移動に伴って、第一ダミーリング21a、第三静翼セグメント11c及び第二静翼セグメント11bも周方向Dcに移動する。この際、第二ダミーリング21bの周方向Dcへの手動による移動が困難な場合には、前述した第一ダミーリング21aの移動の際と同様、チェーンブロックを用いる。
【0054】
第二ダミーリング21bの周方向Dcの移動に伴う第三静翼セグメント11c及び第二静翼セグメント11bの周方向Dcの移動により、第二静翼セグメント11bの周方向Dcの端部は、
図13に示すように、下ケーシング5dから周方向Dcの突出する。第二静翼セグメント11bの周方向Dcの端部が下ケーシング5dから周方向Dcの突出すると、この第二静翼セグメント11bを下ケーシング5dから引き抜く(セグメント引抜工程)。
【0055】
半円筒状の下ケーシング5dの中心角は、180°である。また、二つのダミーリング21a,21bの中心角の合計は、140°(=70°×2)である。一つの静翼セグメント11の中心角は、45°である。すなわち、二つのダミーリング21a,21bの中心角の合計(140°)は、下ケーシング5dの中心角(180°)から一つの静翼セグメント11の中心角(45°)を減算した角度(135°)より大きい。このため、
図14に示すように、二つのダミーリング21a,21bの周方向Dcの全体が下ケーシング5dに収まると、半円筒状の下ケーシング5d中、二つのダミーリング21a,21bが収まっていない領域の中心角は、40°(=180°−140°)になる。よって、二つのダミーリング21a,21bの周方向Dcの全体が下ケーシング5d内に収まった状態では、下ケーシング5d内に一つの静翼セグメント11の周方向Dcの全体を下ケーシング5d内に収めることができなくなる。そこで、
図14に示すように、第二ダミーリング21bを周方向Dcに移動させ、二つのダミーリング21a,21bの周方向Dcのほぼ全体が下ケーシング5d内に収まる状態にすると、第三静翼セグメント11cの周方向Dcの端部が下ケーシング5dから周方向Dcに突出する。第三静翼セグメント11cの周方向Dcの端部が下ケーシング5dから周方向Dcの突出すると、この第三静翼セグメント11cを下ケーシング5dから引き抜く(セグメント引抜工程)。
【0056】
以上で、下ケーシング5dの翼環溝5aに収まっていた全ての静翼セグメント11が、この下ケーシング5dから取り外される。
【0057】
下ケーシング5d内に残った二つのダミーリング21a,21bのうち、第二ダミーリング21bは、下ケーシング5dから引き抜かれる。この際、第二ダミーリング21bの第二端面26に形成されているネジ穴24にアイボルト91を捻じ込み、このアイボルト91のリング部に引き抜き方向の力をかけて、第二ダミーリング21bを下ケーシング5dから引き抜く。なお、この際、アイボルト91のリング部にチェーンブロックから延びるチェーンの端部を取り付け、チェーンブロックを操作して、第二ダミーリング21bを引き抜いてもよい。
【0058】
一方、下ケーシング5d内に残った二つのダミーリング21a,21bのうち、第一ダミーリング21aは、下ケーシング5dから取り外した静翼セグメント11の修理等の最中においても、下ケーシング5d内に残される。この第一ダミーリング21aは、修理等が完了した複数の静翼セグメント11を順次下ケーシング5dに取り付ける過程で、静翼セグメント11により、下ケーシング5dから押し出される。
【0059】
図3に示す上ケーシング5u内に収まっている複数の静翼セグメント11は、以上の取外用ダミーリングアッセンブリ20を用いずに、上ケーシング5uから取り外される。圧縮機ケーシング5の分解後の上ケーシング5u内に収まっている複数の静翼セグメント11の内周側には、圧縮機ロータ2は存在しない。このため、上ケーシング5u内に収まっている複数の静翼セグメント11のいずれに関しても、圧縮機ロータ2に邪魔されずに直接アクセスすることができる。そこで、上ケーシング5u内に収まっている複数の静翼セグメント11に関しては、以上の取外用ダミーリングアッセンブリ20を用いずに、人手で、必要に応じてチェーブロック等を用いて、上ケーシング5uから取り外す。
【0060】
以上のように、本実施形態では、二つのダミーリング21a,21bを下ケーシング5dに取り付け、二つのダミーリング21a,21bを周方向Dcに移動させることで、下ケーシング5d内の複数の静翼セグメント11を下ケーシング5dから押し出している。このため、本実施形態では、圧縮機ロータ2が軸受部を介して下ケーシング5dに支持されている状態でも、下ケーシング5dから複数の静翼セグメント11を取り外すことができる。このため、静翼セグメントを外す作業工期を短くすることができる。
【0061】
また、特許文献1に記載の方法では、背景技術の欄で説明したように、半円弧状(中心角:180°)を成し円弧長の長いロールケージアッセンブリ及びダミーセクションを準備する必要がある。しかも、中心角が180°の円弧状の部材をロール加工で精密に製造することは極めて困難である。このため、中心角が180°の円弧状の部材を精密に製造するにはコストがかさむ。一方、本実施形態では、中心角が90°未満の二つの円弧状のダミーリング21a,21bを準備すれば足りる。しかも、本実施形態では、ダミーリング21a,21bをアルミニウム合金で形成しているため、ロール加工性がよい。このため、本実施形態では、静翼セグメント11の取外コストを抑えることができる。
【0062】
ところで、本実施形態において、一つの円弧状のダミーリング21a,21bの中心角が90°未満にしている理由は、上記のようにコスト面の理由のみではない。
【0063】
特許文献1に記載の方法では、中心角が180°の半円弧状のダミーセクションにおける周方向Dcの両端を、下ケーシングの翼環溝に嵌り込んでいる静翼セグメントに接続し、ダミーセクションと複数の静翼セグメントとで一つのリングを形成している。そして、このリングを周方向Dcに回転させている。このように、特許文献1に記載の方法では、下ケーシングの翼環溝に装着されている複数の静翼セグメントとダミーセクションとで一つのリングを形成するため、ダミーセクションの中心角は180°である必要がある。一方、以上で説明したように、下ケーシング5dに装着されている複数の静翼セグメント11のうちの一つの静翼セグメント11の端面14cにのみ、ダミーリングの一方の端面を接触させて、複数の静翼セグメント11を下ケーシング5dから取り外す場合には、ダミーリングの中心角は180°未満になる。
【0064】
比較例として、
図15及び
図16に示すように、中心角が90°以上で180未満のダミーリング21cを用いる場合について考察する。
【0065】
この場合も、以上の実施形態と同様、ダミーリング21cを下ケーシング5d上に配置し、このダミーリング21cの第一端部25pにおけるダミーシュラウド部22が下ケーシング5dの翼環溝5aにおける周方向Dcの端の開口と対向させる。そして、ダミーリング21cのダミーシュラウド部22を第一端部25p側から下ケーシング5dの翼環溝5aに差し込む。その後、ダミーリング21cを周方向Dcに移動させるため、ダミーリング21cの第二端面26に垂直な力Fをかけるとする。この力Fの鉛直方向の分力F1は鉛直上方向きである。これに対して、ダミーリング21cの第一端面25は、下方に移動しなければ、ダミーリング21cは翼環溝5aに沿って移動しない。このため、比較例のダミーリング21cの第二端面26に垂直な力Fをかけたのみでは、ダミーリング21cは翼環溝5aに沿って移動できない。そこで、例えば、比較例のダミーリング21cの第二端面26に垂直な力Fをかけると共に、このダミーリング21cの第一端部25pにも何らかの力をかける必要が生じる。このため、比較例のダミーリング21cでは、ダミーリング21cの第一端部25pにおけるダミーシュラウド部22を下ケーシング5dの翼環溝5aに差し込んだ後、このダミーリング21cを翼環溝5aに沿って移動させる作業が面倒である。
【0066】
本実施形態でも、
図10に示すように、本実施形態の第一ダミーリング21aの第一端部25pにおけるダミーシュラウド部22を下ケーシング5dの翼環溝5aに差し込んだ後、第一ダミーリング21aの第二端面26に垂直な力Fをかけたとする。本実施形態のダミーリング21a,21bの中心角は、90°未満の70°である。このため、この際の力Fの鉛直方向の分力F2は鉛直下向きになる。よって、この分力F2の方向は、第一ダミーリング21aの第一端部25pが移動しなければならいない方向に一致する。このため、本実施形態のダミーリング21a,21bでは、ダミーリング21a,21bの第一端部25pにおけるダミーシュラウド部22を下ケーシング5dの翼環溝5aに差し込んだ後、このダミーリング21a,21bを翼環溝5aに沿って移動させる作業が容易になる。
【0067】
図16に示すように、比較例のダミーリング21cの第一端面25が下ケーシング5dに装着されている静翼セグメント11の端面14cに接した後も、このダミーリング21cの第二端面26に垂直な力Fをかけるとする。ダミーリング21cの第一端面25が下ケーシング5dに装着されている静翼セグメント11の端面14cに接した後は、ダミーリング21cと共に下ケーシング5dに装着されている静翼セグメント11も移動させる必要があるため、ダミーリング21cの第二端面26にはより大きな力をかける必要がある。
【0068】
比較例のダミーリング21cの第二端面26に力Fをかけている際、ダミーリング21cの外周面中で下ケーシング5dの周方向Dcの端と接している位置(以下、端接触位置とする)Pにかかる曲げモーメントは、この力Fの水平方向の分力F3に、端接触位置Pから分力F3の作用線までの距離R3を掛けた値になる。
【0069】
本実施形態でも、
図11に示すように、第一ダミーリング21aの第一端面25が下ケーシング5dに装着されている静翼セグメント11の端面14cに接した後も、第一ダミーリング21aの第二端面26に垂直な力Fをかけるとする。第一ダミーリング21aの第二端面26に力Fをかけている際、第一ダミーリング21aの外周面中で下ケーシング5dの周方向Dcの端と接している端接触位置Pにかかる曲げモーメントも、この力Fの水平方向の分力F4に、端接触位置Pから分力F4の作用線までの距離R4を掛けた値になる。
【0070】
比較例のダミーリング21cの中心角は、本実施形態のダミーリング21a,21bの中心角より大きい90°以上である。このため、比較例のダミーリング21cでは、その第一端面25が下ケーシング5dに装着されている静翼セグメント11の端面14cに接した時点で、第二端面26にかけた力Fの水平方向の分力F3が本実施形態のダミーリング21a,21bを用いた場合の分力F4に比べて大きくなる。さらに、比較例のダミーリング21cでは、同時点で、端接触位置Pから第二端面26にかけた力Fの水平方向の分力F3の作用線までの距離R3が、本実施形態のダミーリング21a,21bを用いた場合の距離R4に比べて大きくなる。よって、比較例のダミーリング21cでは、端接触位置Pにかかる曲げモーメントが本実施形態のダミーリング21a,21bを用いる場合よりも遥に大きくなる。このため、比較例では、端接触位置Pを基準にしたダミーリング21cの曲り量が大きくなり、ダミーリング21cを下ケーシング5dの翼環溝5aに沿って容易に移動させることが困難になる。
【0071】
逆に、本実施形態のダミーリング21a,21bでは、端接触位置Pにかかる曲げモーメントが比較例のダミーリング21cを用いる場合よりも遥に小さくなる。このため、本実施形態では、端接触位置Pを基準にしたダミーリング21a,21bの曲り量が小さくなり、ダミーリング21a,21bを下ケーシング5dの翼環溝5aに沿って容易に移動させることができる。
【0072】
以上のように、本実施形態において、一つの円弧状のダミーリング21a,21bの中心角が90°未満にしている理由は、ダミーリング21a,21bを翼環溝5aに沿って移動させる作業性の面からの理由にもよる。
【0073】
このように、一つの円弧状のダミーリング21a,21bの中心角を90°未満にすると、静翼セグメント11の取外コストを抑えることができるのみならず、ダミーリング21a,21bの移動の作業性を高めることができる。
【0074】
しかしながら、一つの円弧状のダミーリング21a,21bの中心角を極端に小さくすると、多数のダミーリングが必要になり、ダミーリングのダミーシュラウド部を下ケーシング5dの翼環溝5aに差し込む手間が増えてしまう。このため、一つのダミーリングの中心角は90°未満で45°以上であることが好ましい。なお、例えば、中心角が45°の静翼セグメント11を中心角が50°のダミーリングを用いて、この静翼セグメント11を下ケーシング5dから取り外す場合に場合には、三つのダミーリングが必要になる。
【0075】
「第一実施形態の第一変形例」
第一実施形態における取外用ダミーリングアッセンブリの第一変形例について、
図17を用いて説明する。
【0076】
第一実施形態における取外用ダミーリングアッセンブリ20の第一ダミーリング21aの第一端部25pには、二つのテーパ面28u,28dが形成されている。各テーパ面28u,28dの周方向Dcに対する角度は、互いに同じである。
【0077】
本変形例における取外用ダミーリングアッセンブリの第一ダミーリング21dの第一端部25pにも、第一実施形態と同様に、二つのテーパ面28ud,28ddが形成されている。但し、本変形例では、各テーパ面28ud,28ddの周方向Dcに対する角度α,βは、互いに異なっている。
【0078】
静翼セグメントを構成する複数の静翼の外側シュラウド15は、
図17に
示すように、周方向Dcの端面15dが回転軸線Arに対して、軸方向Daの上流側から下流側に向かうに連れて次第に周方向Dcの一方側から他方側に向かうよう傾斜している場合がある。
【0079】
この場合、第一ダミーリング21dの第一端面25dも、外側シュラウド15の周方向Dcの端面15dと同様に、傾斜させることになる。具体的に、第一ダミーリング21dの第一端面25dを、軸方向Daの上流側から下流側に向かうに連れて次第に周方向Dcの一方側から他方側に向かうよう傾斜させる。
【0080】
この場合、この第一ダミーリング21dを周方向Dcの一方側から他方側に移動させる力Fdは、第一ダミーリング21dで外側シュラウド15の端面15dと接する部分では、外側シュラウド15の端面15dに垂直な方向に作用する第一分力Fd1と、外側シュラウド15の端面15dに平行な方向に作用する第二分力Fd2として表すことができる。この第二分力Fd2は、第一ダミーリング21dの第一端部25pを下流側に向かわせようとする力になる。つまり、第二分力Fd2は、第一ダミーリング21dの第一端部25pを、周方向Dcに延びている翼環溝5aの下流側の溝側面5adに接触させようとして、第一ダミーリング21dの周方向Dcへの移動を妨げる力になる。
【0081】
そこで、本変形例では、第一ダミーリング21dの下流側のテーパ面28ddの周方向Dcに対する角度βを、第一ダミーリング21dの上流側のテーパ面28udの周方向Dcに対する角度αよりも小さくしている。この結果、本変形例では、第一ダミーリング21dの第一端部25pを下流側に向かわせようとする力が作用しても、第一ダミーリング21dは周方向Dcへスムーズに移動できる。
【0082】
なお、以上では、第一ダミーリング21dを周方向Dcの一方側から他方側に移動させる場合を例示したが、第一ダミーリング21dを周方向Dcの他方側から一方側に移動させる場合には、第一ダミーリング21dの上流側のテーパ面28udの周方向Dcに対する角度αを小さくする。
【0083】
「第一実施形態の第二変形例」
第一実施形態における取外用ダミーリングアッセンブリの第二変形例について、
図18を用いて説明する。
【0084】
本変形例の取外用ダミーリングアッセンブリは、第一実施形態の取外用ダミーリングアッセンブリ20に、押付具31を追加したものである。
【0085】
この押付具31は、第一ダミーリング21aの第一端面25に接触するダミーリング係合部32と、静翼セグメント11を構成する複数の静翼12のうち、周方向Dcの端の静翼12の外側シュラウド15及び内側シュラウド14に接する押付部33と、を有する。
【0086】
本変形例では、第一ダミーリング21aの周方向Dcに押すことで、下ケーシング5dの翼環溝5aに収まっている静翼セグメント11の外側シュラウド15のみならず、この静翼セグメント11の内側シュラウド14も周方向Dcに押すことができる。このため、本変形例では、下ケーシング5dに収まっている静翼セグメント11を周方向Dcにスムーズに押すことができる。
【0087】
図2に示すように、複数の静翼環10のほとんどは、その内周側が圧縮機ロータ2のロータ本体3の外周面と対向している。このため、これらの静翼環10の内周側は、さらにその内周側に部材(この場合、ロータ本体3)と非接触である。しかしながら、複数の静翼環10のうち、その内周側が、さらにその内周側の部材と接触している静翼環が存在する場合がある。例えば、
図2に示す例で、最も下流側の静翼環10xは、その外周側が他の静翼環10と同様、ケーシング5と接し、このケーシング5に取り付けられているものの、その内周側は、圧縮機1の内筒5xに接している。この静翼環10xの静翼セグメント11xを周方向Dcに移動させる場合、この静翼セグメント11xの外周側に存在するケーシング5との間で摩擦力が発生すると共に、この静翼セグメント11xの内周側に存在する内筒5xとの間でも摩擦力が発生する。このため、このような静翼セグメント11xをケーシング5から外す際には、静翼セグメント11xの外周側及び内周側を押すことができる本変形例の取外用ダミーリングアッセンブリを用いることが好ましい。
【0088】
なお、この押付具31の押付部33側にも、第一実施形態又はその第一変形例のダミーリングと同様のテーパ面を形成してもよい。
【0089】
「静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリ、及びこれを用いた静翼セグメントの取外方法の第二実施形態」
静翼セグメントの取外用ダミーリングアッセンブリ、及びこれを用いた静翼セグメントの取外方法の第二実施形態について、
図19〜
図25を用いて説明する。
【0090】
本実施形態の取外用ダミーリングアッセンブリ40は、
図19及び図20に示すように、回転軸線Arを中心として円弧状のリングピース41と、下ケーシング5dの翼環溝5aに嵌り込める溝アタッチメント51a,51bと、を備えている。
【0091】
円弧状のリングピース41には、第一実施形態のダミーリング21a,21bと同様に、アイボルト(移動力作用具)を取り付ける複数のネジ穴44(金具取付部)が形成されている。ネジ穴44は、リングピース41の外周面に周方向Dcに並んで複数形成されている。さらに、リングピース41の周方向Dcの両端面、つまり第一端面45及び第二端面46にも、ネジ穴44(
図20参照)が形成されている。
【0092】
溝アタッチメント51a,51bとしては、リングピース41の第一端面45を含む第一端部45pに着脱可能に取り付けられる端部溝アタッチメント51aと、端部溝アタッチメント51aに対して周方向Dcに離間してリングピース41に着脱可能に取り付けられる胴部溝アタッチメント51bとがある。円弧状のリングピース41の中心角θ3は、例えば、180°未満の140°である。端部溝アタッチメント51aの円弧長及び胴部溝アタッチメント51bの円弧長は、リングピース41の円弧長に比べて遥に短い。具体的に、中心角で表すと、端部溝アタッチメント51aの中心角及び胴部溝アタッチメント51bの中心角は、例えば、いずれも10°程度である。胴部溝アタッチメント51bは、このリングピース41の第一端面45から回転軸線Arを基準にして70°(=θ4)の位置に取り付けられる。
【0093】
リングピース41の内径寸法diは、
図25に示すように、軸方向Daで隣り合う複数の静翼環10のそれぞれの内側シュラウド14の外径寸法dsoよりも大きい。また、このリングピース41の外径寸法doは、軸方向Daで隣り合う複数の静翼環10のそれぞれの外側シュラウド15の内径寸法dsiより小さい。よって、このリングピース41の内径寸法di及び外径寸法doは、圧縮機1の主流路内を軸方向Daに移動可能な寸法に設定されている。
【0094】
端部溝アタッチメント51aは、
図20及び
図21に示すように、翼環溝5aに嵌り込めるダミーシュラウド部52と、このダミーシュラウド部52から径方向内側に突出する内周側部53と、内周側部53からさらに径方向内側に突出し、軸方向Daで互いに対向する一対の取付部54,54とを有する。一対の取付部54,54には、軸方向Daに貫通するボルト挿通孔54hが形成されている。この端部溝アタッチメント51aの周方向Dcの第一端面55を含む第一端部55pには、第一実施形態のダミーリング21a,21bと同様に、テーパ面58が形成されている。
【0095】
端部溝アタッチメント51aをリングピース41に取り付ける際には、まず、端部溝アタッチメント51aの第一端面55をリングピース41の第一端面45が向いている方向に向ける。次に、端部溝アタッチメント51aの一対の取付部54,54間にリングピース41の第一端部45pを位置させる。そして、一対の取付部54,54のそれぞれのボルト挿通孔54hにボルト59を挿通させ、これらボルト59をリングピース41に捩じ込む。以上で、端部溝アタッチメント51aのリングピース41への取り付けが完了する。
【0096】
胴部溝アタッチメント51bは、
図22に示すように、端部溝アタッチメント51aと同様、翼環溝5aに嵌り込めるダミーシュラウド部52と、このダミーシュラウド部52から径方向内側に突出する内周側部53と、内周側部53からさらに径方向内側に突出し、軸方向Daで互いに対向する一対の取付部54,54とを有する。一対の取付部54,54には、軸方向Daに貫通するボルト挿通孔54hが形成されている。この胴部溝アタッチメント51bには、端部溝アタッチメント51aのようなテーパ面58が形成されていない。但し、この胴部溝アタッチメント51bにも、端部溝アタッチメント51aと同様のテーパ面58を形成してもよい。つまり、胴部溝アタッチメント51bは、端部溝アタッチメント51aと完全に同一形状であってもよい。
【0097】
胴部溝アタッチメント51bをリングピース41に取り付ける際も、端部溝アタッチメント51aをリングピース41に取り付ける際と同様、胴部溝アタッチメント51bの一対の取付部54,54間にリングピース41を位置させる。そして、一対の取付部54,54のそれぞれのボルト挿通孔54hにボルト59を挿通させ、これらボルト59をリングピース41に捩じ込む。なお、リングピース41に対する端部溝アタッチメント51a及び胴部溝アタッチメント51bの着脱構造は、端部溝アタッチメント51a及び胴部溝アタッチメント51bがリングピース41に対して着脱可能であれば、以上で説明されたものでなくてもよい。
【0098】
図25に示すように、圧縮機ケーシング5に形成されている複数の翼環溝5aは、翼環溝5a相互間で、軸方向Daの溝幅Wa、軸方向Daの溝開口幅Wb、回転軸線Arから溝底面までの距離dc等、各種寸法が異なっている。このため、端部溝アタッチメント51a及び胴部溝アタッチメント51bは、いずれも、複数の翼環溝5a毎に製造され、対応する翼環溝5aに合わせて各種寸法が設定されている。
【0099】
次に、以上で説明した取外用ダミーリングアッセンブリ40を用いた静翼セグメント11の取外手順について説明する。
【0100】
まず、第一実施形態の場合と同様、圧縮機ケーシング5を分解して、上ケーシング5uを取り外す。次に、
図19に示すように、下ケーシング5dのいずれかの翼環溝5aのうち、いずれか一の翼環溝5aに対応する端部溝アタッチメント51a及び胴部溝アタッチメント51bをリングピース41に取り付ける。つまり、この翼環溝5aに対応するアッセンブリ40xを準備する(準備工程)。
【0101】
次に、第一実施形態の場合と同様に、下ケーシング5dの一の翼環溝5aに取り付けられている4つの静翼セグメント11のうち、周方向Dcの両端に位置する静翼セグメント11である第一静翼セグメント11a及び第四静翼セグメント11dを周方向Dcに移動させて、下ケーシング5dから引き抜く。
【0102】
次に、
図23に示すように、先に準備したアッセンブリ40xを下ケーシング5d上に配置する。この際、アッセンブリ40xの端部溝アタッチメント51aのダミーシュラウド部52が下ケーシング5dの翼環溝5aにおける周方向Dcの端の開口と対向させる。そして、このダミーシュラウド部52を下ケーシング5dの翼環溝5aに差し込む。前述したように、端部溝アタッチメント51aの第一端部55pには、テーパ面58が形成されているため、ダミーシュラウド部52を翼環溝5aへ容易に差し込むことができる。
【0103】
アッセンブリ40xの端部溝アタッチメント51aを翼環溝5aに差し込んだ後、このアッセンブリ40xを翼環溝5aに沿って周方向Dcに移動させる(移動工程)。アッセンブリ40xを周方向Dcに移動させると、
図24に示すように、端部溝アタッチメント51aの第一端面55が下ケーシング5d内に残っている第三静翼セグメント11cの周方向Dcの端面14cに接触する。端部溝アタッチメント51aの第一端面55と第三静翼セグメント11cの周方向Dcの端面14cとが接触している状態で、アッセンブリ40xを周方向Dcにさらに移動させると、このアッセンブリ40xの周方向Dcの移動に伴って、第三静翼セグメント11c及び第二静翼セグメント11bも周方向Dcに移動する。この際、アッセンブリ40xの周方向Dcへの手動による移動が、第三静翼セグメント11c及び第二静翼セグメント11bと下ケーシング5dとの間の摩擦力で困難な場合には、第一実施形態で説明したように、チェーンブロックを用いる。
【0104】
ここで、端部溝アタッチメント51aの第一端面55が下ケーシング5dに装着されている静翼セグメント11の端面14cに接した後も、アッセンブリ40xを周方向Dcに移動させるため、リングピース41の第二端面46に垂直な力Fをかけとする。この力Fは、リングピース41に対して曲げモーメントとして作用する。このため、リングピース41は、
図24中の二点鎖線で示すように、端部溝アタッチメント51aが取り付けられている位置を基準にして変形する。しかしながら、このリングピース41は、翼環溝5aに嵌り込んでいないため、このリングピース41が多少変形しても、アッセンブリ40xは、先に説明した第一実施形態の比較例におけるダミーリング21cのように、翼環溝5aに沿っての移動が困難になることはない。
【0105】
アッセンブリ40xを周方向Dcにさらに移動させると、アッセンブリ40xの胴部溝アタッチメント51bのダミーシュラウド部52が下ケーシング5dの翼環溝5aにおける周方向Dcの端の開口と対向するようになる。この際、リングピース41が先に説明したように変形していると、胴部溝アタッチメント51bのダミーシュラウド部52が下ケーシング5dの翼環溝5aに入らない。そこで、リングピース41にかけている力を一端除き、リングピース41を変形していない状態に戻す。そして、胴部溝アタッチメント51bのダミーシュラウド部52を下ケーシング5dの翼環溝5aに差し込む。その後、以上と同様に、リングピース41に力をかけて、アッセンブリ40xを周方向Dcに移動させる。アッセンブリ40xの端部溝アタッチメント51a及び胴部溝アタッチメント51bが翼環溝5aに嵌り込んだ後のアッセンブリ40xの周方向Dcの移動過程では、翼環溝5aに対してアッセンブリ40xが端部溝アタッチメント51a及び胴部溝アタッチメント51bの二箇所で支持された状態になっている。よって、アッセンブリ40xを翼環溝5aに沿ってスムーズに移動させることができる。
【0106】
なお、端部溝アタッチメント51a及び胴部溝アタッチメント51bが翼環溝5aに嵌り込んだ後にアッセンブリ40xを周方向Dcに移動させるため、リングピース41の第二端面46に垂直な力Fをかけた場合も、先に説明したように、リングピース41は変形する。但し、このリングピース41の変形は、端部溝アタッチメント51aが取り付けられている位置を基準にした変形ではなく、胴部溝アタッチメント51bが取り付けられている位置を基準にした変形である。この変形量は、端部溝アタッチメント51aが取り付けられている位置を基準にしたリングピース41の変形量よりも小さい。よって、この場合も、リングピース41は、翼環溝5aに入り込むことはない。
【0107】
アッセンブリ40xの周方向Dcの移動に伴う第三静翼セグメント11c及び第二静翼セグメント11bの周方向Dcの移動により、第二静翼セグメント11bの周方向Dcの端部が下ケーシング5dから周方向Dcに突出すると、この第二静翼セグメント11bを下ケーシング5dから引き抜く(セグメント引抜工程)。さらに、アッセンブリ40xを周方向Dcに移動させ、この移動に伴う第三静翼セグメント11cの周方向Dcの移動により、第三静翼セグメント11cの周方向Dcの端部が下ケーシング5dから周方向Dcに突出すると、この第三静翼セグメント11cを下ケーシング5dから引き抜く(セグメント引抜工程)。
【0108】
以上で、一の翼環溝5aに収まっていた全ての静翼セグメント11が下ケーシング5dから取り外される。
【0109】
次に、下ケーシング5d内に残っているアッセンブリ40xを下ケーシング5dから引き抜く。この際、リングピース41の第二端面46に形成されているネジ穴44にアイボルトを捻じ込み、このアイボルトのリング部に引き抜き方向の力をかけて、アッセンブリ40xを下ケーシング5dから引き抜く。
【0110】
次に、下ケーシング5dから引き抜かれたアッセンブリ40xを分解し、リングピース41から端部溝アタッチメント51a及び胴部溝アタッチメント51bを取り外す。
【0111】
次に、他の翼環溝5aに対応する端部溝アタッチメント51a及び胴部溝アタッチメント51bをリングピース41に取り付けて、新たなアッセンブリ40xを準備する(準備工程)。
【0112】
そして、この他の翼環溝5aに取り付けられている複数の静翼セグメント11に対して、先に説明した一の翼環溝5aに取り付けられている複数の静翼セグメント11に対する処理と同様の処理を事項して、下ケーシング5dから取り外す。
【0113】
すなわち、複数の翼環溝5a毎に、準備工程、移動工程、セグメント引抜工程を実行して、複数の翼環溝5aに取り付けられている複数の静翼セグメント11を順次下ケーシング5dから外す。
【0114】
以上、本実施形態のリングピース41は、翼環溝5aには嵌り込まないため、その断面形状が単純な例えば四角形で足る上に、円弧の曲り具合の正確性が低くても静翼セグメント11の周方向への移動にあまり支障をきたさない。このため、このリングピース41は、中心角が90°以上であるが、このリングピース41を低コストで製造することができる。しかも、本実施形態では、複数の翼環溝5a毎のアッセンブリ40xにおいて、リングピース41の共有化を図ることができる。よって、本実施形態では、静翼セグメント11の取外コストを抑えることができる。
【0115】
なお、本実施形態のリングピース41の中心角は、90°以上で180°未満であるが、これを90°未満にして、第一実施形態と同様、複数のリングピース41と、各リングピース41に装着される溝アタッチメント51a,51bとでアッセンブリ40xを構成してもよい。
【0116】
また、以上の実施形態では、静翼環10を備えている圧縮機1の例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、静翼環を備えているものであれば、例えば、蒸気タービン等、他の回転機械に本発明を適用してもよい。