【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の構成を有するリチウムイオン電池の処理方法に関する。
〔1〕使用済みリチウムイオン電池の正極材と負極材の混合物を
粗破砕して、正極材と負極材の活物質および集電体の粗破砕物を含む粗破砕混合物にし、この粗破砕混合物から樹脂類および磁着物を取り除いた後に、該粗破砕混合物を二次破砕し、該二次破砕物を活物質主体の粒径0.5mm未満の細粒物と、集電体主体の粒径0.5mm以上〜5mm以下の中粒物と、可燃物を含む粒径5mmより大きい粗粒物とに篩分けし、該細粒物から活物質を回収する一方、上記中粒物を0.5mm以上〜1mm以下に粒度調整した後に比重選別してアルミニウム主体の軽量物と銅主体の重量物に分離して回収することを特徴とする使用済みリチウムイオン電池の処理方法。
〔2〕
中粒物を0.5mm以上〜1mm以下に分級し、1mmより大きいものは再度粉砕して0.5mm以上〜1mm以下に粒度調整する上記[1]に記載する使用済みリチウムイオン電池の処理方法。
〔3〕使用済みリチウムイオン電池の正極材と負極材の混合物を粗破砕して無害化し、あるいは該混合物を無害化した後に粗破砕して
粗破砕混合物にし、この粗破砕混合物を水簸あるいは風力選別して樹脂類を除去し、さらに磁選して磁着物を取り除いた後に二次粉砕する上記[1]または上記[2]に記載する使用済みリチウムイオン電池の処理方法。
〔4〕回収した細粒物をコバルト、ニッケル、マンガン、およびリチウムの原料とし、回収した軽量物をアルミニウム原料とし、回収した重量物を銅原料としておのおの再利用する上記[1]〜上記[3]の何れかに記載する使用済みリチウムイオン電池の処理方法。
【0008】
〔具体的な説明〕
本発明の処理方法は、使用済みリチウムイオン電池の正極材と負極材の混合物を
粗破砕して、正極材と負極材の活物質および集電体の粗破砕物を含む粗破砕混合物にし、この粗破砕混合物から樹脂類および磁着物を取り除いた後に、該粗破砕混合物を二次破砕し、該二次破砕物を活物質主体の粒径0.5mm未満の細粒物と、集電体主体の粒径0.5mm以上〜5mm以下の中粒物と、可燃物を含む粒径5mmより大きい粗粒物とに篩分けし、該細粒物から活物質を回収する一方、上記中粒物を0.5mm以上〜1mm以下に粒度調整した後に比重選別してアルミニウム主体の軽量物と銅主体の重量物に分離して回収することを特徴とする使用済みリチウムイオン電池の処理方法である。
本発明の処理方法の一例を
図1に示す。
【0009】
本発明の処理方法は、使用済みリチウムイオン電池の正極材と負極材の混合物を破砕処理する。正極材と負極材の混合物とは、セパレータや外装体などのプラスチック類(樹脂類)を分離除去して正極材と負極材のみの混合物にしたもの、あるいはセパレータや外装体などを含有した状態のものなど何れでも良い。プラスチック類は粗破砕(一次破砕)後に水簸や風力選別などによって除去することができる。
【0010】
本発明の処理対象である使用済みリチウムイオン電池は、無害化処理しないものを用いることができるが、無害化処理したものが好ましい。無害化処理と粗破砕は、例えば、以下のように行うと良い。
(イ)内部の電解液を洗浄除去して無害化した後に粗破砕する。(ロ)内部の電解液を洗浄除去して無害化した後に乾燥して粗破砕する。(ハ)電池を粗破砕した後に内部の電解液を洗浄除去して無害化処理する。(ニ)電池を粗破砕した後に内部の電解液を洗浄除去して無害化処理して乾燥する。(ホ)電池を高温処理して電解液を気化または分解して無害化した後に粗破砕する。(ヘ)電池を粗破砕した後に電解液を気化または分解して無害化処理する。上記(イ)〜上記(ヘ)の処理において、電池の残留電圧が2V以上のものはあらかじめ放電処理しておくとよい。
【0011】
洗浄する場合には洗浄液の主溶媒は有機溶媒や水が好ましい。さらに有機系洗浄液を使用するときは、リチウムイオン電池に含まれる電解液の有機成分を回収して利用すると洗浄液の購入コストや廃液処理が不要になるので好ましい。乾燥手段は通気式、熱風式、気流式、赤外線式、ドラム式、真空乾燥などの乾燥機を用いることができる。このときの排ガスは後燃焼して大気解放してもよく、また気化した溶媒を回収して再利用することもできる。
【0012】
洗浄処理しない場合や洗浄が不十分な場合には、電池に水を添加することによって電解質のヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を分解、無害化することができる。水は電池破砕物に直接噴霧ないし塗布するか、水蒸気や湿気の気流中に電池を曝して水を添加すると良い。なお、ヘキサフルオロリン酸リチウムが分解して生成したフッ化水素(HF)は炭酸カルシウムと反応させてフッ化カルシウム(CaF
2)にして回収することができる。
【0013】
また、電池に酸やアルカリを添加すると集電体と活物質の結着力が弱くなり、表面に付着している活物質の剥離が容易になる。ただし、水および酸やアルカリが過剰になると集電体が脆化、変質しすぎるなどして剥離が困難になる場合がある。
【0014】
粗破砕は、例えば、使用済みリチウムイオン電池を二軸破砕機など用いて2〜10cm程度の断片に粗破砕(一次破砕)する。
【0015】
風力選別や磁選などによって樹脂類や磁着物などを取り除いた粗破砕物を、さらに2cm以下、好ましくは5mm以下に破砕(二次破砕)して正極集電体および負極集電体からそれぞれ活物質を剥離させる。破砕手段はハンマーミルなど、あるいはカッターミル、ミキサー、アトライターなど衝撃破砕、せん断破砕や表面粉砕やシート状の集電体の丸まりを促進させる破砕などを効果的に実施できる手段を用いると良い。なお、過粉砕を避けるために、破砕機に一定粒度以下の破砕物を系外に排出するスクリーンなどを設置してもよい。
【0016】
一般に正極の集電体は高純度のアルミニウム製、負極の集電体は高純度の銅製であり、いずれの集電体も10μm程度の厚みのシートないし箔である。これらのシートないし箔の集電体は展性があるため微細には破砕されずに中粒の破砕物になる。一方、集電体に付着している活物質は1〜50μm程度の粒子の集合体であるため細かく破砕されて細粒の破砕物になり、集電体から剥離する。
【0017】
具体的には、正極材と負極材の混合物を粗破砕(一次破砕)した粗破砕混合物を数ミリ以下、例えば5mm以下に二次破砕すると、集電体は概ね5mm以下〜0.5mm以上の中粒の破砕物になり、活物質は概ね0.5mm未満の細粒の破砕物になるので、これらを篩分けして選別することができる。なお、電池の構成物によっては粗破砕物に含まれるアルミラミネートや除去しきれなかったプラスチック類などのその他可燃物は二次破砕の段階でもほとんど破砕されないため、粗破砕(一次破砕)の粒度、例えば5mmより大きいまま残る。
【0018】
この二次破砕物を篩分けして、集電体破砕物が主体の中粒物と、活物質破砕物が主体の細粒物に分離し、電池の構成物によってはその他可燃物を含む粗粒に分離する。例えば、細粒物と中粒物の分離においては、目開き0.5mmの振動篩を用いて篩分けするとよい。この篩分けによって、例えば、正極活物質の約98wt%、負極活物質の100wt%を集電体から剥離して分離することができる。
【0019】
プラスチック類などのその他可燃物は二次破砕の段階でもほとんど破砕されず、粗破砕の粒度、例えば5mmより大きいまま残るので、二次破砕後の篩分けでは、5mm以上〜一次破砕粒度の間の適当な目開きの振動篩を用いて篩分けするとよい。
【0020】
分離した細粒物(粒径0.5mm未満)はコバルト、ニッケル、マンガン、またはリチウムなどの高品位化合物であるので、これらを上記金属のリサイクル原料として再利用することができる。
【0021】
一方、分離した中粒物(粒径5mm以下〜0.5mm以上)を、(イ)そのまま比重選別するか、あるいは、(ロ)2mm以下〜0.5mm以上に分級(粒度調整)して比重選別するか、あるいは、(ハ)1mm以下〜0.5mm以上に分級(粒度調整)して比重選別する。分級する場合には振動篩を用いると良い。この比重選別によって軽量物と重量物に選別することができる。上記〔ハ〕のように分級して比重選別すれば、アルミニウム主体の軽量物と、銅主体の重量物とに分離しやすい。このとき粒径が1mmより大きいまま残るものは二次破砕に戻して再度破砕するとよい。
【0022】
比重選別において、乾式選別を行う場合には風力選別、揺動テーブル、エアーテーブルを用いてもよい。例えば、エアーテーブルでは比重の大きい粒子は空気流の影響をあまり受けずに振動・摩擦によってテーブル面を運搬されるが、比重の小さい粒子は空気流の影響を受けてテーブル面から浮遊し滑落するので、重量物と軽量物とに容易に分離することができる。また、湿式選別を行う場合にはジグ選別や薄流選別、重選などを利用することができる。
【0023】
選別した軽量物は高品位のアルミニウム化合物であり、重量物は高品位の銅化合物であるので、これらをアルミニウムや銅のリサイクル原料として再利用することができる。