特許第6238070号(P6238070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6238070-使用済みリチウムイオン電池の処理方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238070
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】使用済みリチウムイオン電池の処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/54 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   H01M10/54
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-72876(P2014-72876)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-195129(P2015-195129A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2016年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】原口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】平田浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】鶴巻 英範
(72)【発明者】
【氏名】林 浩志
【審査官】 高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−004299(JP,A)
【文献】 特開2013−211234(JP,A)
【文献】 特開平06−346160(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/169073(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みリチウムイオン電池の正極材と負極材の混合物を粗破砕して、正極材と負極材の活物質および集電体の粗破砕物を含む粗破砕混合物にし、この粗破砕混合物から樹脂類および磁着物を取り除いた後に、該粗破砕混合物を二次破砕し、該二次破砕物を活物質主体の粒径0.5mm未満の細粒物と、集電体主体の粒径0.5mm以上〜5mm以下の中粒物と、可燃物を含む粒径5mmより大きい粗粒物とに篩分けし、該細粒物から活物質を回収する一方、上記中粒物を0.5mm以上〜1mm以下に粒度調整した後に比重選別してアルミニウム主体の軽量物と銅主体の重量物に分離して回収することを特徴とする使用済みリチウムイオン電池の処理方法。
【請求項2】
中粒物を0.5mm以上〜1mm以下に分級し、1mmより大きいものは再度粉砕して0.5mm以上〜1mm以下に粒度調整する請求項1に記載する使用済みリチウムイオン電池の処理方法。
【請求項3】
使用済みリチウムイオン電池の正極材と負極材の混合物を粗破砕して無害化し、あるいは該混合物を無害化した後に粗破砕して粗破砕混合物にし、この粗破砕混合物を水簸あるいは風力選別して樹脂類を除去し、さらに磁選して磁着物を取り除いた後に二次粉砕する請求項1または請求項2に記載する使用済みリチウムイオン電池の処理方法。
【請求項4】
回収した細粒物をコバルト、ニッケル、マンガン、およびリチウムの原料とし、回収した軽量物をアルミニウム原料とし、回収した重量物を銅原料としておのおの再利用する請求項1〜請求項3の何れかに記載する使用済みリチウムイオン電池の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池に使用される電極材料の選別回収法に関し、より詳しくは、リチウムイオン電池の正極および負極の集電体や該集電体に塗布されている活物質を材質に応じて効果的に分別して回収する処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池などの二次電池の電極集電体はアルミニウムや銅などよって製造されており、その上にはコバルト、ニッケル、マンガン、リチウムなどの化合物またはグラファイトなどの炭素化合物からなる活物質が塗布されている。これらの集電体や活物質として用いられている金属成分は高品位であり、使用済みの電池を処理する際にはこれらの金属成分を各々回収することが望ましい。
【0003】
従来、リチウムイオン電池の処理方法として以下の方法が知られている。
(イ)使用済み電池から回収した正極材を切断し、加熱してバインダーを揮発させた後に、衝撃破砕して活物質を剥離し、振動篩によって集電体と活物質とに分離する(特許第5269228号)。
(ロ)使用済み電池を加熱処理して有機物を除去した後に外装体を切断して取除き、正極材と負極材を目視で手選し、正極負極を選別後に各々破砕し、振動篩で集電体と活物質に選別する(特開2013−80595号)。
(ハ)使用済み電池を破砕し、洗浄して有機溶剤および電解質を除去した後に正極材と他の部分に分離し、正極材にアルカリを添加して活物質を剥離して集電体との混合スラリーにし、この残渣を回収し篩分けして集電体と活物質に分離する(特開2012−126945号)
(二)使用済み電池を予備焙焼して有機物を除去した後に破砕して主に集電体の塊状物と主に活物質の粉状物とに篩分けし、粉状物を酸化焙焼した後に還元焙焼してCoやNiをメタルにし、鉄やマンガンの酸化物にしてスラリーにし、残渣を磁選して磁着物(Co,Ni)を分離回収する(特開2012−229481号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5269228号公報
【特許文献2】特開2013−80595号公報
【特許文献3】特開2012−126945号公報
【特許文献4】特開2012−229481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の上記処理方法は、正極材を主な対象にして処理する方法が多く、電池全体を処理する場合でも負極を分離した後に正極材を中心にして処理している。また、正極材と負極材を同時に処理する場合でも、活物質はコバルトなどの希少金属を含むので、集電体から分離した活物質については種々の処理方法によってこれらの金属を回収しているが、残った集電体の混合物の処理工程はあまり細緻ではない。特に集電体はシート状であるので直接的な物理選別が難しく、効果的な処理方法が求められている。また、集電体や活物質の処理を主として湿式で行うと、固液分離操作や廃水処理操作などの負担が生じる。さらに、電池粉砕物を焙焼して有機物を除去する方法は排ガスによる環境負荷が問題になる。また、目視による手選を行う処理方法は負担が大きい。
【0006】
本発明は、従来の処理方法における上記課題を解決したものであり、処理効果に優れおり、経済性に優れ、環境負荷が小さく、実施しやすい処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の構成を有するリチウムイオン電池の処理方法に関する。
〔1〕使用済みリチウムイオン電池の正極材と負極材の混合物を粗破砕して、正極材と負極材の活物質および集電体の粗破砕物を含む粗破砕混合物にし、この粗破砕混合物から樹脂類および磁着物を取り除いた後に、該粗破砕混合物を二次破砕し、該二次破砕物を活物質主体の粒径0.5mm未満の細粒物と、集電体主体の粒径0.5mm以上〜5mm以下の中粒物と、可燃物を含む粒径5mmより大きい粗粒物とに篩分けし、該細粒物から活物質を回収する一方、上記中粒物を0.5mm以上〜1mm以下に粒度調整した後に比重選別してアルミニウム主体の軽量物と銅主体の重量物に分離して回収することを特徴とする使用済みリチウムイオン電池の処理方法。
〔2〕中粒物を0.5mm以上〜1mm以下に分級し、1mmより大きいものは再度粉砕して0.5mm以上〜1mm以下に粒度調整する上記[1]に記載する使用済みリチウムイオン電池の処理方法。
〔3〕使用済みリチウムイオン電池の正極材と負極材の混合物を粗破砕して無害化し、あるいは該混合物を無害化した後に粗破砕して粗破砕混合物にし、この粗破砕混合物を水簸あるいは風力選別して樹脂類を除去し、さらに磁選して磁着物を取り除いた後に二次粉砕する上記[1]または上記[2]に記載する使用済みリチウムイオン電池の処理方法。
〔4〕回収した細粒物をコバルト、ニッケル、マンガン、およびリチウムの原料とし、回収した軽量物をアルミニウム原料とし、回収した重量物を銅原料としておのおの再利用する上記[1]〜上記[3]の何れかに記載する使用済みリチウムイオン電池の処理方法。
【0008】
〔具体的な説明〕
本発明の処理方法は、使用済みリチウムイオン電池の正極材と負極材の混合物を粗破砕して、正極材と負極材の活物質および集電体の粗破砕物を含む粗破砕混合物にし、この粗破砕混合物から樹脂類および磁着物を取り除いた後に、該粗破砕混合物を二次破砕し、該二次破砕物を活物質主体の粒径0.5mm未満の細粒物と、集電体主体の粒径0.5mm以上〜5mm以下の中粒物と、可燃物を含む粒径5mmより大きい粗粒物とに篩分けし、該細粒物から活物質を回収する一方、上記中粒物を0.5mm以上〜1mm以下に粒度調整した後に比重選別してアルミニウム主体の軽量物と銅主体の重量物に分離して回収することを特徴とする使用済みリチウムイオン電池の処理方法である。
本発明の処理方法の一例を図1に示す。
【0009】
本発明の処理方法は、使用済みリチウムイオン電池の正極材と負極材の混合物を破砕処理する。正極材と負極材の混合物とは、セパレータや外装体などのプラスチック類(樹脂類)を分離除去して正極材と負極材のみの混合物にしたもの、あるいはセパレータや外装体などを含有した状態のものなど何れでも良い。プラスチック類は粗破砕(一次破砕)後に水簸や風力選別などによって除去することができる。
【0010】
本発明の処理対象である使用済みリチウムイオン電池は、無害化処理しないものを用いることができるが、無害化処理したものが好ましい。無害化処理と粗破砕は、例えば、以下のように行うと良い。
(イ)内部の電解液を洗浄除去して無害化した後に粗破砕する。(ロ)内部の電解液を洗浄除去して無害化した後に乾燥して粗破砕する。(ハ)電池を粗破砕した後に内部の電解液を洗浄除去して無害化処理する。(ニ)電池を粗破砕した後に内部の電解液を洗浄除去して無害化処理して乾燥する。(ホ)電池を高温処理して電解液を気化または分解して無害化した後に粗破砕する。(ヘ)電池を粗破砕した後に電解液を気化または分解して無害化処理する。上記(イ)〜上記(ヘ)の処理において、電池の残留電圧が2V以上のものはあらかじめ放電処理しておくとよい。
【0011】
洗浄する場合には洗浄液の主溶媒は有機溶媒や水が好ましい。さらに有機系洗浄液を使用するときは、リチウムイオン電池に含まれる電解液の有機成分を回収して利用すると洗浄液の購入コストや廃液処理が不要になるので好ましい。乾燥手段は通気式、熱風式、気流式、赤外線式、ドラム式、真空乾燥などの乾燥機を用いることができる。このときの排ガスは後燃焼して大気解放してもよく、また気化した溶媒を回収して再利用することもできる。
【0012】
洗浄処理しない場合や洗浄が不十分な場合には、電池に水を添加することによって電解質のヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を分解、無害化することができる。水は電池破砕物に直接噴霧ないし塗布するか、水蒸気や湿気の気流中に電池を曝して水を添加すると良い。なお、ヘキサフルオロリン酸リチウムが分解して生成したフッ化水素(HF)は炭酸カルシウムと反応させてフッ化カルシウム(CaF2)にして回収することができる。
【0013】
また、電池に酸やアルカリを添加すると集電体と活物質の結着力が弱くなり、表面に付着している活物質の剥離が容易になる。ただし、水および酸やアルカリが過剰になると集電体が脆化、変質しすぎるなどして剥離が困難になる場合がある。
【0014】
粗破砕は、例えば、使用済みリチウムイオン電池を二軸破砕機など用いて2〜10cm程度の断片に粗破砕(一次破砕)する。
【0015】
風力選別や磁選などによって樹脂類や磁着物などを取り除いた粗破砕物を、さらに2cm以下、好ましくは5mm以下に破砕(二次破砕)して正極集電体および負極集電体からそれぞれ活物質を剥離させる。破砕手段はハンマーミルなど、あるいはカッターミル、ミキサー、アトライターなど衝撃破砕、せん断破砕や表面粉砕やシート状の集電体の丸まりを促進させる破砕などを効果的に実施できる手段を用いると良い。なお、過粉砕を避けるために、破砕機に一定粒度以下の破砕物を系外に排出するスクリーンなどを設置してもよい。
【0016】
一般に正極の集電体は高純度のアルミニウム製、負極の集電体は高純度の銅製であり、いずれの集電体も10μm程度の厚みのシートないし箔である。これらのシートないし箔の集電体は展性があるため微細には破砕されずに中粒の破砕物になる。一方、集電体に付着している活物質は1〜50μm程度の粒子の集合体であるため細かく破砕されて細粒の破砕物になり、集電体から剥離する。
【0017】
具体的には、正極材と負極材の混合物を粗破砕(一次破砕)した粗破砕混合物を数ミリ以下、例えば5mm以下に二次破砕すると、集電体は概ね5mm以下〜0.5mm以上の中粒の破砕物になり、活物質は概ね0.5mm未満の細粒の破砕物になるので、これらを篩分けして選別することができる。なお、電池の構成物によっては粗破砕物に含まれるアルミラミネートや除去しきれなかったプラスチック類などのその他可燃物は二次破砕の段階でもほとんど破砕されないため、粗破砕(一次破砕)の粒度、例えば5mmより大きいまま残る。
【0018】
この二次破砕物を篩分けして、集電体破砕物が主体の中粒物と、活物質破砕物が主体の細粒物に分離し、電池の構成物によってはその他可燃物を含む粗粒に分離する。例えば、細粒物と中粒物の分離においては、目開き0.5mmの振動篩を用いて篩分けするとよい。この篩分けによって、例えば、正極活物質の約98wt%、負極活物質の100wt%を集電体から剥離して分離することができる。
【0019】
プラスチック類などのその他可燃物は二次破砕の段階でもほとんど破砕されず、粗破砕の粒度、例えば5mmより大きいまま残るので、二次破砕後の篩分けでは、5mm以上〜一次破砕粒度の間の適当な目開きの振動篩を用いて篩分けするとよい。
【0020】
分離した細粒物(粒径0.5mm未満)はコバルト、ニッケル、マンガン、またはリチウムなどの高品位化合物であるので、これらを上記金属のリサイクル原料として再利用することができる。
【0021】
一方、分離した中粒物(粒径5mm以下〜0.5mm以上)を、(イ)そのまま比重選別するか、あるいは、(ロ)2mm以下〜0.5mm以上に分級(粒度調整)して比重選別するか、あるいは、(ハ)1mm以下〜0.5mm以上に分級(粒度調整)して比重選別する。分級する場合には振動篩を用いると良い。この比重選別によって軽量物と重量物に選別することができる。上記〔ハ〕のように分級して比重選別すれば、アルミニウム主体の軽量物と、銅主体の重量物とに分離しやすい。このとき粒径が1mmより大きいまま残るものは二次破砕に戻して再度破砕するとよい。
【0022】
比重選別において、乾式選別を行う場合には風力選別、揺動テーブル、エアーテーブルを用いてもよい。例えば、エアーテーブルでは比重の大きい粒子は空気流の影響をあまり受けずに振動・摩擦によってテーブル面を運搬されるが、比重の小さい粒子は空気流の影響を受けてテーブル面から浮遊し滑落するので、重量物と軽量物とに容易に分離することができる。また、湿式選別を行う場合にはジグ選別や薄流選別、重選などを利用することができる。
【0023】
選別した軽量物は高品位のアルミニウム化合物であり、重量物は高品位の銅化合物であるので、これらをアルミニウムや銅のリサイクル原料として再利用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の処理方法は、投入薬剤や投入エネルギー、あるいは廃水や廃ガスを削減できるため、環境負荷が相対的に低い利点を有する。また、手選など煩雑な処理が無いので実用に適しており、大量処理が可能である。さらに、電池材料をほぼ一括して破砕処理することによって、互いが粉砕媒体として作用し、破砕、粉砕、剥離が促進される。また、集電体から高品位のアルミニウムおよび銅を回収できるので電池の再資源化率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の処理方法の一例を示す工程図
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施例を以下に示す。なお、銅、アルミニウム、マンガンなどの金属成分の分析は王水および硫酸を用いて全溶解した後、誘導結合プラズマ発光分光分析装置にて測定した。
【0027】
〔実施例1〕
電解液を洗浄し、無害化した使用済みリチウムイオン二次電池を乾燥し、セパレータや外装体などを分離除去し、正極材と負極材のみの混合物として試料にした。この試料について、正極材と負極材の混合物を二軸破砕機に供して数cm程度の断片に粗破砕(一次破砕)した。さらに、この粗破砕物を高速ミルに供し、14000rpmで5mm以下に二次破砕した。この二次破砕物を、目開き0.5mmの振動篩を用い、0.5mm以下の細粒の破砕物(細粒物)と、0.5mm以上の中粒の破砕物(中粒物)に分離した。各種破砕物の成分を分析したところ、塗布された活物質の全重量に対する剥離した活物質の重量割合(剥離率)は、正極活物質は97.8wt%、負極活物質は約100wt%であることを確認した。
さらに、中粒物を振動篩に入れて0.5mm〜1mmに分級した。1mm以上の破砕物については再度高速ミルに供し、破砕を繰り返し、0.5mm〜1mmに粒度調整した。この分級した破砕物をエアーテーブルに供し、サイドスロープ角度4°、エンドスロープ角度12°、振動数10Hz、気流条件1m/secの条件下で比重選別を行った。回収した軽量物と重量物の成分を分析したところ、原料のフィード試料の組成が、Al量25.0wt%およびCu量75.0wt%であるのに対し、軽量物のAl量95.9wt%およびCu量4.1%であり、重量物のAl量1.2wt%およびCu量97.8wt%であり、軽量物にアルミニウムを濃縮させ、重量物に銅を濃縮させて回収することができた。また、この時のアルミニウム回収率(軽量物中のアルミニウム重量/投入した試料に含まれる全アルミニウム重量)は88%、銅回収率(重量物中の銅重量/投入した試料に含まれる全銅重量)は96%となり、分離の評価指標である総合分離効率(アルミニウム回収率+銅回収率−100%)は92%という高い値を示した。。この処理条件と結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
〔実施例2〕
実施例1の粗破砕物(一次破砕物)を高速ミルに供し、20mm以下、10mm以下までおのおの二次破砕した。この二次破砕物を、目開き0.5mmの振動篩を用い、0.5mm以下の細粒物と、0.5mmより大きい中粒物に分離した。この場合の正極活物質の剥離率を表2に示す。20mm以下、および10mm以下までの二次破砕では正極活物質の剥離率は90%以下であり、5mm以下まで二次破砕すれば剥離率は97%以上になる。なお、集電体が過剰に破砕されて粒度が0.5mm以下になることを防止するため、二次破砕は5mm基準で留めておくことが好ましい。なお、正極活物質の剥離率は剥離した正極活物質の重量/集電体に塗布されている正極活物質の全重量である。
【0030】
【表2】
【0031】
〔実施例3〕
実施例1の中粒物を、分級や繰り返し破砕することなくそのまま0.5mm〜5mmの粒度を保持した状態で、実施例1と同様の条件下で比重選別を行った。あるいは実施例1の中粒物を、振動篩に入れて0.5mm〜2mmに分級し、2mm以上の破砕物については再度高速ミルに供し、破砕を繰り返して0.5mm〜2mmに粒度調整し、実施例1と同様にして比重選別を行った。この結果を表3に示す。0.5mm〜1mm分級品は総合分離効率が最も高く、従って、0.5mm〜1mmのように試料を限定的な粒度で比重選別に供することが好ましい。
なお、総合分離効率は(アルミニウム回収率+銅回収率−100%)である。アルミニウム回収率は(軽量物中のアルミニウム重量/投入した試料に含まれる全アルミニウム重量)である。銅回収率は(重量物中の銅重量/投入した試料に含まれる全銅重量)である。
【0032】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のリチウムイオン電池の処理方法は、自動車産業などから発生する多量の使用済み電池の処理事業において有益である。
図1