(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238077
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】開口部閉塞方法、開口部閉塞構造および閉塞部材
(51)【国際特許分類】
F16L 55/12 20060101AFI20171120BHJP
G21F 9/30 20060101ALI20171120BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20171120BHJP
G21C 13/10 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
F16L55/12
G21F9/30 535B
E04G23/08 J
G21C13/10
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-132970(P2014-132970)
(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公開番号】特開2016-11703(P2016-11703A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】木村 博
(72)【発明者】
【氏名】長原 大
【審査官】
宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】
実開平03−011199(JP,U)
【文献】
特開昭49−035910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/12
E04G 23/08
G21C 13/10
G21F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉物が設けられ、水で満たされた開口部に水中不分離性の硬化材を充填することで前記開口部を閉塞する方法であって、
前記硬化材を前記開口部に注入するための注入管の先端部に、伸縮性を有する袋状の透水性の内側ネット部材の袋口を取り付けるとともに、この内側ネット部材の外側を被覆するように、内側ネット部材のはらみ出しを拘束するための袋状の透水性の外側ネット部材を取り付けた後、前記注入管の先端部を前記開口部に配置し、前記注入管から内側ネット部材の内部に向けて前記硬化材を吐出し、内側ネット部材を伸張させて前記開口部を閉塞することを特徴とする開口部閉塞方法。
【請求項2】
前記開口部は、水で満たされた内部に干渉物が設けられ、所定の傾斜勾配を有する管路であることを特徴とする請求項1に記載の開口部閉塞方法。
【請求項3】
干渉物が設けられ、水で満たされた開口部に水中不分離性の硬化材を充填することで前記開口部を閉塞した構造であって、
前記硬化材を前記開口部に注入するための注入管と、
前記注入管の先端部に袋口が取り付けられ、伸縮性を有する袋状の透水性の内側ネット部材と、
この内側ネット部材の外側を被覆するように取り付けられ、内側ネット部材のはらみ出しを拘束するための袋状の透水性の外側ネット部材とを有し、
前記開口部に配置した前記注入管の先端部から内側ネット部材の内部に向けて前記硬化材を吐出することで内側ネット部材を伸張させて前記開口部を閉塞したことを特徴とする開口部閉塞構造。
【請求項4】
前記開口部は、水で満たされた内部に干渉物が設けられ、所定の傾斜勾配を有する管路であることを特徴とする請求項3に記載の開口部閉塞構造。
【請求項5】
干渉物が設けられ、水で満たされた開口部に水中不分離性の硬化材を充填することで前記開口部を閉塞するための閉塞部材であって、
前記硬化材を前記開口部に注入するための注入管の先端部に袋口が取り付けられ、伸縮性を有する袋状の透水性の内側ネット部材と、
この内側ネット部材の外側を被覆するように取り付けられ、内側ネット部材のはらみ出しを拘束するための袋状の透水性の外側ネット部材とを有することを特徴とする閉塞部材。
【請求項6】
前記開口部は、水で満たされた内部に干渉物が設けられ、所定の傾斜勾配を有する管路であることを特徴とする請求項5に記載の閉塞部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水で満たされた配管などの開口部に水中不分離性モルタルなどの硬化材を充填することでこの開口部を閉塞する方法、および、開口部を閉塞する構造、ならびに、この方法または構造に用いられる閉塞部材に関し、特に、原子力発電所などの原子力施設の解体工事の準備工事として、水で満たされたベント管などの配管を閉塞するのに好適な開口部閉塞方法、開口部閉塞構造および閉塞部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、解体工事を控えた原子力発電所建屋の状況を例示した模式図である。この図の例では、原子炉建屋1に原子炉圧力容器(PRV)、原子炉格納容器(PCV)、トーラス室2が設けられており、RPVとPCVのバウンダリ機能は喪失した状態にある。RPVとPCVの下部には燃料デブリ4が溜まっている。また、PCVの下部と、圧力抑制室3には破損部分があり、圧力抑制室3を収容するトーラス室2には放射能汚染水が溜まっている。
【0003】
RPVとPCVのバウンダリ機能が喪失した状態で燃料デブリ4を取り出すためには、PCVの下部の漏えい箇所を補修してバウンダリを再構築し、PCV内をPRVとともに水で満たして冠水した状態にする必要がある。PCV下部の補修方法の一案としては、例えば
図8および
図9に示すように、PCV内に連通する圧力抑制室3のベント管5の端部に水中不分離性モルタル6を充填することで、ベント管5を閉塞する方法が考えられる。
【0004】
ベント管5は、所定の管路勾配(例えば水平とのなす角が20°)を有する直径数メートル(例えば1.75m)の配管である。ベント管5の下端部にはベントヘッダーと呼ばれる水平方向に延びる配管7が接続している。ベント管5を閉止すると、PCV内の滞留水による水圧(例えば約60kPa)がベント管5の閉止部にかかることが予想される。また、燃料デブリ取り出しのために冠水させたときは大きな水圧(例えば約300kPa)がかかることが予想される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、ベント管5の端部にはベントヘッダー7が取り付いており、水で満たされたベント管5の内部にそのまま水中不分離性モルタル6を充填するとこのモルタルがベントヘッダー7に流出して水密性が損なわれるおそれがあるため、水中不分離性モルタル6がベントヘッダー7に流出しないようにするための対策が必要である。
【0006】
一方、ベント管5内には、
図9に示すように、アングルや支持脚などの干渉物8が設置されており、これらの干渉物8を回避してベントヘッダー7への水中不分離性モルタル6の流出を阻止しなければならないとともに、これらの干渉物8周りに水中不分離性モルタル6を密実に充填する必要がある。
【0007】
このため、水中不分離性モルタルなどの硬化材を水で満たされたベント管などの開口部に充填してここを閉塞する場合において、開口部に設けられた干渉物の周りにも硬化材を密実に充填することができ、しかも、開口部の下流側への硬化材の流出を阻止することのできる技術が求められていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、水で満たされた開口部の干渉物の周りに硬化材を密実に充填することができ、硬化材の流出を阻止することのできる開口部閉塞方法、開口部閉塞構造および閉塞部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る開口部閉塞方法は、干渉物が設けられ、水で満たされた開口部に水中不分離性の硬化材を充填することで前記開口部を閉塞する方法であって、前記硬化材を前記開口部に注入するための注入管の先端部に、伸縮性を有する袋状の透水性の内側ネット部材の袋口を取り付けるとともに、この内側ネット部材の外側を被覆するように、内側ネット部材のはらみ出しを拘束するための袋状の透水性の外側ネット部材を取り付けた後、前記注入管の先端部を前記開口部に配置し、前記注入管から内側ネット部材の内部に向けて前記硬化材を吐出し、内側ネット部材を伸張させて前記開口部を閉塞することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の開口部閉塞方法は、上述した発明において、前記開口部は、水で満たされた内部に干渉物が設けられ、所定の傾斜勾配を有する管路であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る開口部閉塞構造は、干渉物が設けられ、水で満たされた開口部に水中不分離性の硬化材を充填することで前記開口部を閉塞した構造であって、前記硬化材を前記開口部に注入するための注入管と、前記注入管の先端部に袋口が取り付けられ、伸縮性を有する袋状の透水性の内側ネット部材と、この内側ネット部材の外側を被覆するように取り付けられ、内側ネット部材のはらみ出しを拘束するための袋状の透水性の外側ネット部材とを有し、前記開口部に配置した前記注入管の先端部から内側ネット部材の内部に向けて前記硬化材を吐出することで内側ネット部材を伸張させて前記開口部を閉塞したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る他の開口部閉塞構造は、上述した発明において、前記開口部は、水で満たされた内部に干渉物が設けられ、所定の傾斜勾配を有する管路であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る閉塞部材は、干渉物が設けられ、水で満たされた開口部に水中不分離性の硬化材を充填することで前記開口部を閉塞するための閉塞部材であって、前記硬化材を前記開口部に注入するための注入管の先端部に袋口が取り付けられ、伸縮性を有する袋状の透水性の内側ネット部材と、この内側ネット部材の外側を被覆するように取り付けられ、内側ネット部材のはらみ出しを拘束するための袋状の透水性の外側ネット部材とを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る他の閉塞部材は、上述した発明において、前記開口部は、水で満たされた内部に干渉物が設けられ、所定の傾斜勾配を有する管路であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る開口部閉塞方法によれば、干渉物が設けられ、水で満たされた開口部に水中不分離性の硬化材を充填することで前記開口部を閉塞する方法であって、前記硬化材を前記開口部に注入するための注入管の先端部に、伸縮性を有する袋状の透水性の内側ネット部材の袋口を取り付けるとともに、この内側ネット部材の外側を被覆するように、内側ネット部材のはらみ出しを拘束するための袋状の透水性の外側ネット部材を取り付けた後、前記注入管の先端部を前記開口部に配置し、前記注入管から内側ネット部材の内部に向けて前記硬化材を吐出し、内側ネット部材を伸張させて前記開口部を閉塞するので、硬化材が入り込む伸縮性の内側ネット部材が干渉物の周りの形状に合わせて変形しながら伸張することで、水で満たされた開口部の干渉物の周りに硬化材を密実に充填することができる。また、内側ネット部材の伸張変形に連動して、これを被覆する外側ネット部材も変形し、硬化材が入り込む内側ネット部材の開口部外へのはらみ出しを抑制するので、開口部外への硬化材の流出を阻止することができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る他の開口部閉塞方法によれば、前記開口部は、水で満たされた内部に干渉物が設けられ、所定の傾斜勾配を有する管路であるので、水で満たされた管路の干渉物の周りに硬化材を密実に充填することができ、管路の下流側への硬化材の流出を阻止することができるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る開口部閉塞構造によれば、干渉物が設けられ、水で満たされた開口部に水中不分離性の硬化材を充填することで前記開口部を閉塞した構造であって、前記硬化材を前記開口部に注入するための注入管と、前記注入管の先端部に袋口が取り付けられ、伸縮性を有する袋状の透水性の内側ネット部材と、この内側ネット部材の外側を被覆するように取り付けられ、内側ネット部材のはらみ出しを拘束するための袋状の透水性の外側ネット部材とを有し、前記開口部に配置した前記注入管の先端部から内側ネット部材の内部に向けて前記硬化材を吐出することで内側ネット部材を伸張させて前記開口部を閉塞したので、硬化材が入り込む伸縮性の内側ネット部材が干渉物の周りの形状に合わせて変形しながら伸張することで、水で満たされた開口部の干渉物の周りに硬化材を密実に充填することができる。また、内側ネット部材の伸張変形に連動して、これを被覆する外側ネット部材も変形し、硬化材が入り込む内側ネット部材の開口部外へのはらみ出しを抑制するので、開口部外への硬化材の流出を阻止することができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係る他の開口部閉塞構造によれば、前記開口部は、水で満たされた内部に干渉物が設けられ、所定の傾斜勾配を有する管路であるので、水で満たされた管路の干渉物の周りに硬化材を密実に充填することができ、管路の下流側への硬化材の流出を阻止することができるという効果を奏する。
【0019】
また、本発明に係る閉塞部材によれば、干渉物が設けられ、水で満たされた開口部に水中不分離性の硬化材を充填することで前記開口部を閉塞するための閉塞部材であって、前記硬化材を前記開口部に注入するための注入管の先端部に袋口が取り付けられ、伸縮性を有する袋状の透水性の内側ネット部材と、この内側ネット部材の外側を被覆するように取り付けられ、内側ネット部材のはらみ出しを拘束するための袋状の透水性の外側ネット部材とを有するので、硬化材が入り込む伸縮性の内側ネット部材が干渉物の周りの形状に合わせて変形しながら伸張することで、水で満たされた開口部の干渉物の周りに硬化材を密実に充填することができる。また、内側ネット部材の伸張変形に連動して、これを被覆する外側ネット部材も変形し、硬化材が入り込む内側ネット部材の開口部外へのはらみ出しを抑制するので、開口部外への硬化材の流出を阻止することができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明に係る他の閉塞部材によれば、前記開口部は、水で満たされた内部に干渉物が設けられ、所定の傾斜勾配を有する管路であるので、水で満たされた管路の干渉物の周りに硬化材を密実に充填することができ、管路の下流側への硬化材の流出を阻止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明に係る閉塞部材の実施の形態を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る閉塞部材の実施の形態を示す図である。
【
図3-1】
図3−1は、本発明に係る開口部閉塞方法の実施の形態1を示す断面図であり、(1)はモルタル注入前の状態、(2)はモルタル注入後の状態の図である。
【
図3-2】
図3−2は、本発明に係る開口部閉塞方法の実施の形態2を示す断面図であり、(1)はモルタル注入前の状態、(2)はモルタル注入後の状態の図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る閉塞部材の実施の形態を示す写真図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る閉塞部材の実施の形態を示す写真図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る開口部閉塞構造の実施の形態を示す写真図である。
【
図7】
図7は、解体工事を控えた原子力発電所建屋の状況を示す正面断面図である。
【
図8】
図8は、原子炉格納容器の下部の拡大斜視図である。
【
図9】
図9は、原子炉格納容器の下部の補修対象範囲の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る開口部閉塞方法、開口部閉塞構造および閉塞部材の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0023】
[閉塞部材]
まず、本発明に係る閉塞部材の実施の形態について説明する。
【0024】
本発明に係る閉塞部材は、干渉物が設けられ、水で満たされた所定の傾斜勾配(例えば水平線となす角度が20°)を有するベント管(開口部)に水中不分離性モルタル(硬化材)を充填することでベント管を閉塞するためのものである。
【0025】
図1に示すように、本発明に係る閉塞部材10は、モルタルをベント管に注入するための可撓性の注入管12の先端部14を内挿した状態で注入管12に対して袋口16が取り付けられる内側ネット部材18と、この内側ネット部材18の外側を被覆するように取り付けられ、内側ネット部材18のはらみ出しを拘束するための外側ネット部材20とを有している。
【0026】
内側ネット部材18は、伸縮性を有する袋状の透水性のものであり、注入管12から注入されるモルタルを外部に漏らさない材質・構造にて構成される。内側ネット部材18の袋口16は、図示しない紐部材等で注入管12の外周に縛り付けられ、注入管12と袋口16との間に隙間が生じないようにしてある。
【0027】
外側ネット部材20は、内側ネット部材18に比べて幅広の袋口22を有する袋状の透水性のものであり、袋口22は内側ネット部材18の中間部に位置している。この外側ネット部材20は、内側ネット部材18がモルタルの充填に伴いベント管の下流側のベントヘッダーの側へ膨らみ、伸張限界を超えて破裂するのを防ぐために用いられる。外側ネット部材20の内側の底部の隅2か所には、紐部材24が取り付けてあり、外側ネット部材20と内側ネット部材18の外側の底部の隅2か所とは、これら紐部材24を介してそれぞれ接続されている。なお、外側ネット部材20の内部の任意箇所または袋口22と、内側ネット部材18の外側の対向する箇所とを同様な紐部材を介して接続した構成としてもよい。
【0028】
内側ネット部材18および外側ネット部材20を注入管12の周りに巻き付けて収縮した状態としたものを
図2に示す。ベント管を閉塞する際には、この図に示すように収縮した状態の閉塞部材10をベント管内に挿入し、注入管12の先端部14から硬化材を注入することで内側ネット部材18および外側ネット部材20を伸張させるようにする。
【0029】
上記の構成によれば、モルタルが入り込む伸縮性の内側ネット部材18が干渉物の周りの形状に合わせて変形しながら伸張して膨張することで、水で満たされたベント管の干渉物の周りにモルタルを密実に充填することができる。また、内側ネット部材18の伸張変形に連動して、これを被覆する外側ネット部材20も変形し、ベント管の下流側のベントヘッダーへの内側ネット部材18のはらみ出しを抑制するので、ベントヘッダーへのモルタルの流出を阻止することができる。
【0030】
このように、本発明では、伸縮性を有する内側ネット部材18だけを注入管12に取り付けた状態で水中不分離性モルタルを充填した際に、ベント管の下流側のベントヘッダーにまで伸張した内側ネット部材18がはらみ出すおそれがあることから、内側ネット部材18のベントヘッダー側の外側に、はらみ出しを拘束するための外側ネット部材20を設けている。はらみ出しを拘束するための外側ネット部材20が伸縮性の内側ネット部材18の過大な伸張を抑えることで、ベントヘッダーへのはらみ出しを防止し、ベント管における閉塞が可能である。
【0031】
[開口部閉塞方法]
次に、本発明に係る開口部閉塞方法の実施の形態について説明する。なお、以下においては、ベント管に孔を開けてこの孔から閉塞部材10を挿入する方法(実施の形態1)と、ベント管に取り付く真空破壊ラインにガイドパイプを取り付け、そこから閉塞部材10を挿入する方法(実施の形態2)とについて説明する。
【0032】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1について説明する。
図3−1は、本発明に係る開口部閉塞方法の実施の形態1を示したものである。
図3−1(1)に示すように、本実施の形態1に係る開口部閉塞方法は、干渉物8が設けられ、水で満たされた所定の傾斜勾配(例えば水平線となす角度が20°)を有するベント管5(開口部)に水中不分離性モルタル(硬化材)を充填することでベント管5を閉塞する方法である。
【0033】
本実施の形態1では、まず、モルタルをベント管5に注入するための注入管12の先端部14を内挿するように、上述した内側ネット部材18の袋口16を注入管12に対して取り付けるとともに、この内側ネット部材18の外側を被覆するように、上述した外側ネット部材20を取り付ける。
【0034】
次に、ベント管5に開けた図示しない貫通孔を通じて、注入管12の先端部14をベント管5の内部の充填予定箇所に配置する。
【0035】
次に、
図3−1(2)に示すように、注入管12から内側ネット部材18の内部に向けてモルタルを吐出し、内側ネット部材18を伸張させる。この場合、モルタルが入り込む伸縮性の内側ネット部材18は、干渉物8の周りの形状に合わせて変形しながら伸張してベント管5を閉塞する。
【0036】
このようにすることで、水で満たされたベント管5内の干渉物8の周りにモルタルを密実に充填することができる。また、内側ネット部材18の伸張変形に連動して、これを被覆する外側ネット部材20も変形し、モルタルが入り込む内側ネット部材18のベントヘッダー7へのはらみ出しを抑制するので、ベントヘッダー7へのモルタルの流出を阻止することができる。
【0037】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。
図3−2は、本発明に係る開口部閉塞方法の実施の形態2を示したものである。
図3−2(1)に示すように、本実施の形態2に係る開口部閉塞方法は、干渉物8が設けられ、水で満たされた所定の傾斜勾配(例えば水平線となす角度が20°)を有するベント管5(開口部)に水中不分離性モルタル(硬化材)を充填することでベント管5を閉塞する方法である。
【0038】
本実施の形態2では、まず、モルタルをベント管5に注入するための注入管12の先端部14を内挿するように、上述した内側ネット部材18の袋口16を注入管12に対して取り付けるとともに、この内側ネット部材18の外側を被覆するように、上述した外側ネット部材20を取り付ける。
【0039】
次に、ベント管5に取り付く真空破壊ラインを構成するパイプ26にガイドパイプ28を取り付け、このガイドパイプ28に注入管12を挿入し、注入管12の先端部14をベント管5の内部の充填予定箇所に配置する。ここで、注入管12は可撓性のものであるから、鉛直に延びるガイドパイプ28、水平に延びる真空破壊ラインのパイプ26、ベント管5の内部に湾曲した状態で挿通され、その先端部をベント管5の内部の充填予定箇所に配置することが可能である。
【0040】
次に、
図3−2(2)に示すように、注入管12から内側ネット部材18の内部に向けてモルタルを吐出し、内側ネット部材18を伸張させる。この場合、モルタルが入り込む伸縮性の内側ネット部材18は、干渉物8の周りの形状に合わせて変形しながら伸張してベント管5を閉塞する。
【0041】
このようにすることで、水で満たされたベント管5内の干渉物8の周りにモルタルを密実に充填することができる。また、内側ネット部材18の伸張変形に連動して、これを被覆する外側ネット部材20も変形し、モルタルが入り込む内側ネット部材18のベントヘッダー7へのはらみ出しを抑制するので、ベントヘッダー7へのモルタルの流出を阻止することができる。
【0042】
[開口部閉塞構造]
次に、本発明に係る開口部閉塞構造の実施の形態について説明する。
【0043】
本発明に係る開口部閉塞構造は、干渉物が設けられ、水で満たされた所定の傾斜勾配(例えば水平線となす角度が20°)を有するベント管(開口部)に水中不分離性モルタル(硬化材)を充填することでベント管を閉塞する構造である。
【0044】
本発明に係る開口部閉塞構造は、
図3−1(2)または
図3−2(2)、
図1および
図2に示すように、モルタルをベント管5に注入するための注入管12と、注入管12の先端部14に袋口16が取り付けられ、伸縮性を有する袋状の透水性の内側ネット部材18と、この内側ネット部材18の外側を被覆するように取り付けられ、内側ネット部材18のはらみ出しを拘束するための袋状の透水性の外側ネット部材20とを有し、ベント管5に配置した注入管12の先端部14から内側ネット部材18の内部に向けてモルタルを吐出することで内側ネット部材18を伸張させてベント管5を閉塞したものである。
【0045】
本発明に係る開口部閉塞構造によれば、モルタルが入り込む伸縮性の内側ネット部材18が干渉物8の周りの形状に合わせて変形しながら伸張、膨張することで、水で満たされたベント管5の干渉物8の周りにモルタルを密実に充填することができる。また、内側ネット部材18の伸張変形に連動して、これを被覆する外側ネット部材20も変形し、モルタルが入り込む内側ネット部材18のベントヘッダー7へのはらみ出しを抑制するので、ベントヘッダー7へのモルタルの流出を阻止することができる。
【0046】
図6は、ベント管を模擬した管の内部に対して、上述した閉塞部材10を配置し、注入管12を通じて内側ネット部材18の内部へ水中不分離性モルタルを充填した状況を示している。この図に例示されるものが、本発明の実施の形態に係る開口部閉塞構造に相当する。この図に示すように、内側ネット部材および外側ネット部材によって、アングルなどの干渉物の周りに水中不分離性モルタルを密実に充填することが可能となることがわかる。
【0047】
以上説明したように、本発明に係る開口部閉塞方法によれば、干渉物が設けられ、水で満たされた開口部に水中不分離性の硬化材を充填することで前記開口部を閉塞する方法であって、前記硬化材を前記開口部に注入するための注入管の先端部に、伸縮性を有する袋状の透水性の内側ネット部材の袋口を取り付けるとともに、この内側ネット部材の外側を被覆するように、内側ネット部材のはらみ出しを拘束するための袋状の透水性の外側ネット部材を取り付けた後、前記注入管の先端部を前記開口部に配置し、前記注入管から内側ネット部材の内部に向けて前記硬化材を吐出し、内側ネット部材を伸張させて前記開口部を閉塞するので、硬化材が入り込む伸縮性の内側ネット部材が干渉物の周りの形状に合わせて変形しながら伸張することで、水で満たされた開口部の干渉物の周りに硬化材を密実に充填することができる。また、内側ネット部材の伸張変形に連動して、これを被覆する外側ネット部材も変形し、硬化材が入り込む内側ネット部材の開口部外へのはらみ出しを抑制するので、開口部外への硬化材の流出を阻止することができる。
【0048】
また、本発明に係る他の開口部閉塞方法によれば、前記開口部は、水で満たされた内部に干渉物が設けられ、所定の傾斜勾配を有する管路であるので、水で満たされた管路の干渉物の周りに硬化材を密実に充填することができ、管路の下流側への硬化材の流出を阻止することができる。
【0049】
また、本発明に係る開口部閉塞構造によれば、干渉物が設けられ、水で満たされた開口部に水中不分離性の硬化材を充填することで前記開口部を閉塞した構造であって、前記硬化材を前記開口部に注入するための注入管と、前記注入管の先端部に袋口が取り付けられ、伸縮性を有する袋状の透水性の内側ネット部材と、この内側ネット部材の外側を被覆するように取り付けられ、内側ネット部材のはらみ出しを拘束するための袋状の透水性の外側ネット部材とを有し、前記開口部に配置した前記注入管の先端部から内側ネット部材の内部に向けて前記硬化材を吐出することで内側ネット部材を伸張させて前記開口部を閉塞したので、硬化材が入り込む伸縮性の内側ネット部材が干渉物の周りの形状に合わせて変形しながら伸張することで、水で満たされた開口部の干渉物の周りに硬化材を密実に充填することができる。また、内側ネット部材の伸張変形に連動して、これを被覆する外側ネット部材も変形し、硬化材が入り込む内側ネット部材の開口部外へのはらみ出しを抑制するので、開口部外への硬化材の流出を阻止することができる。
【0050】
また、本発明に係る他の開口部閉塞構造によれば、前記開口部は、水で満たされた内部に干渉物が設けられ、所定の傾斜勾配を有する管路であるので、水で満たされた管路の干渉物の周りに硬化材を密実に充填することができ、管路の下流側への硬化材の流出を阻止することができる。
【0051】
また、本発明に係る閉塞部材によれば、干渉物が設けられ、水で満たされた開口部に水中不分離性の硬化材を充填することで前記開口部を閉塞するための閉塞部材であって、前記硬化材を前記開口部に注入するための注入管の先端部に袋口が取り付けられ、伸縮性を有する袋状の透水性の内側ネット部材と、この内側ネット部材の外側を被覆するように取り付けられ、内側ネット部材のはらみ出しを拘束するための袋状の透水性の外側ネット部材とを有するので、硬化材が入り込む伸縮性の内側ネット部材が干渉物の周りの形状に合わせて変形しながら伸張することで、水で満たされた開口部の干渉物の周りに硬化材を密実に充填することができる。また、内側ネット部材の伸張変形に連動して、これを被覆する外側ネット部材も変形し、硬化材が入り込む内側ネット部材の開口部外へのはらみ出しを抑制するので、開口部外への硬化材の流出を阻止することができる。
【0052】
また、本発明に係る他の閉塞部材によれば、前記開口部は、水で満たされた内部に干渉物が設けられ、所定の傾斜勾配を有する管路であるので、水で満たされた管路の干渉物の周りに硬化材を密実に充填することができ、管路の下流側への硬化材の流出を阻止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明に係る開口部閉塞方法、開口部閉塞構造および閉塞部材は、水で満たされた配管などの開口部に水中不分離性モルタルなどの硬化材を充填することでこの開口部を閉塞する方法および構造ならびにこれらに用いる部材に有用であり、特に、原子力発電所などの原子力施設の解体工事の準備工事として、水で満たされたベント管などの配管を閉塞するのに適している。
【符号の説明】
【0054】
5 ベント管(開口部)
7 ベントヘッダー
8 干渉物
10 閉塞部材
12 注入管
14 先端部
16 袋口
18 内側ネット部材
20 外側ネット部材
22 袋口
24 紐部材