特許第6238099号(P6238099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三浦工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6238099-燃料電池システム 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6238099
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/06 20160101AFI20171120BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20171120BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01M8/06 B
   H01M8/04 J
   H01M8/12
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-546259(P2017-546259)
(86)(22)【出願日】2017年4月21日
(86)【国際出願番号】JP2017016073
【審査請求日】2017年9月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹本 真典
(72)【発明者】
【氏名】迫田 純
(72)【発明者】
【氏名】筒井 大視
【審査官】 笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−194409(JP,A)
【文献】 特開2007−101004(JP,A)
【文献】 特開2012−221723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00− 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋上又は上層階に設置されると共に、常温水が補給される高架タンクと;前記高架タンクよりも下層階に設置される温水タンクと;前記温水タンク内の貯留水を加熱可能な主熱源機と;前記高架タンクと前記温水タンクとを接続する降水配管と、を建築設備として有する多層階施設で利用される燃料電池システムであって、
前記多層階施設内に給電可能な燃料電池と、
前記降水配管の途中に配設した予熱タンクと、を備え、
前記燃料電池のオフガスの熱回収により、前記予熱タンク内の貯留水を予熱しながら前記オフガスを冷却可能に構成し、
前記高架タンクの貯留水を前記予熱タンクで前記オフガスの冷却用熱源として利用し、
前記オフガスの冷却により生成させた凝縮水を前記燃料電池で再利用する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池は、改質器、セルスタックおよびオフガス熱交換器を有し、
前記オフガス熱交換器において、前記オフガスと冷却液との熱交換によりオフガスを露点温度以下に冷却して、オフガス中の水分を凝縮させ、その凝縮水を前記改質器に再供給し、
前記改質器において、原燃料と前記凝縮水を水蒸気改質反応させることにより水素を含有する改質ガスを生成し、
前記セルスタックにおいて、前記改質ガス中の水素と空気中の酸素を化学反応させて発電する
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記予熱タンク内の前記貯留水を予熱する予熱用熱交換器と、
前記オフガス熱交換器と前記予熱用熱交換器との間で、前記冷却液を循環させる循環液回路と、を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料電池は、固体酸化物形の燃料電池である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記建築設備は、前記温水タンク内に貯留された温水を循環可能に接続された給湯循環配管と;前記給湯循環配管を幹管として当該幹管から温水需要箇所に温水を送る枝管と、を更に含む
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記降水配管は、前記給湯循環配管の復路を介して前記温水タンクと接続される
ことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層階施設で利用される燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市ガス等の炭化水素燃料を原燃料とする燃料電池は、燃料のエネルギーが電気と熱に変換されるコジェネレーション装置である。燃料電池を公共的施設や産業施設などの分散電源として使用する場合には、電力負荷に応じた電主熱従運転が基本となる。燃料電池の効率(総合効率)は、発電効率と熱回収効率との合計によって決まる。そのため、発電に伴って発生するオフガス廃熱をうまく利用できなければ、総合効率の低下を招くことになる。
【0003】
また、燃料電池は、原燃料の水蒸気改質反応によって水素ガスを生成し、その水素ガスをセルスタックに供給して発電している。この際、水蒸気改質反応に使用する改質水は、下記特許文献1に開示されるように、オフガス中の水分を凝縮させることにより確保される(水自立)。そのため、オフガスを露点温度以下に冷却し続けることができなければ、燃料電池の発電を継続することができない。
【0004】
このように、燃料電池をコジェネレーション装置として成立させるためには、公共的施設や産業施設などの様々な熱利用形態に合わせて、オフガス廃熱の熱利用と冷却を同時に確立する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5593948号公報(図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多層階施設の給湯設備として、即湯循環設備が知られている。具体的には、蒸気ボイラ等を主熱源機とする温水タンクと、この温水タンク内の温水を温水需要箇所に送る給湯循環配管とを備えた設備である。そして、このような既存の給湯設備が存在する施設において、後から燃料電池を設置したい場合がある。すなわち、既存の給湯設備を活用しながら、燃料電池の熱回収を可能にし、更には燃料電池の水自立を成立させたい場合がある。
【0007】
このような要求に応えるシステムとして、出願人は、先に、次のようなシステムを提案し、既に特許出願を済ませている(特願2016−64802)。すなわち、この先願のシステムでは、燃料電池の熱回収により製造した温水と、主熱源機により製造した温水とを、並列に給湯循環配管に供給可能とし、かつ燃料電池側の温水を優先的に利用しようとするものである。しかしながら、このシステムには、次のような課題が残る。
【0008】
(a)燃料電池側の温水を優先利用させる補助機器(減圧弁やポンプ等)が必要となる。また、その補助機器による圧力損失や電力消費の大きさによっては、システム全体の効率が低下するおそれがある。
【0009】
(b)燃料電池側の湯切れ時に給水を遮断する補助機器(温度センサおよび遮断弁)が必要となる。なお、燃料電池は、分散電源として発電出力を基準に選定される。そのため、燃料電池の廃熱量、すなわち熱出力は大きくないので、温水需要の大きい施設では頻繁に湯切れを起こすおそれがある。
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、上記のような補助機器を必要とせず、既存の設備環境を利用できる簡易な構成で、燃料電池の熱回収と水自立を両立させた燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、屋上又は上層階に設置される高架タンクと;前記高架タンクよりも下層階に設置される温水タンクと;前記温水タンク内の貯留水を加熱可能な主熱源機と;前記高架タンクと前記温水タンクとを接続する降水配管と、を建築設備として有する多層階施設で利用される燃料電池システムであって、前記多層階施設内に給電可能な燃料電池と、前記降水配管の途中に配設した予熱タンクと、を備え、前記燃料電池のオフガスの熱回収により、前記予熱タンク内の貯留水を予熱しながら前記オフガスを冷却可能に構成し、前記高架タンクの貯留水を前記予熱タンクで前記オフガスの冷却用熱源として利用し、前記オフガスの冷却により生成させた凝縮水を前記燃料電池で再利用することを特徴とする燃料電池システムである。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、高架タンクから温水タンクへの降水配管に予熱タンクを設けて、この予熱タンク内の貯留水ひいては温水タンクへの給水を、燃料電池の廃熱で予熱しながら、燃料電池のオフガスを冷却して水自立を図ることができる。また、仮に、燃料電池による温水と主熱源機による温水とを並列に出湯可能とする場合には、燃料電池側の温水を優先利用したり、燃料電池側の湯切れ時に給水を遮断したりするための構成が必要となるが、温水タンクへの給水を燃料電池の廃熱で予熱すると共に、温水タンク内の貯留水を主熱源機で加熱可能とするので、簡易な構成で、燃料電池の廃熱を優先利用した温水を得ることができる。しかも、多層階施設内において、高架タンクから予熱タンクを介した温水タンクへの給水を、ポンプを用いることなく、水頭圧差を用いて自然に行うことができる。なお、高架タンク、温水タンク、主熱源機および降水配管として、多層階施設の既存建築設備を利用することもでき、その既存建築設備に、燃料電池および予熱タンクを新設してもよい。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記燃料電池は、改質器、セルスタックおよびオフガス熱交換器を有し、前記オフガス熱交換器において、前記オフガスと冷却液との熱交換によりオフガスを露点温度以下に冷却して、オフガス中の水分を凝縮させ、その凝縮水を前記改質器に再供給し、前記改質器において、原燃料と前記凝縮水を水蒸気改質反応させることにより水素を含有する改質ガスを生成し、前記セルスタックにおいて、前記改質ガス中の水素と空気中の酸素を化学反応させて発電することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システムである。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、オフガス熱交換器において、オフガス中の水分を凝縮させてその凝縮水を改質器に再供給することで、外部からの補給水なしで運転できる水自立可能な燃料電池システムとなる。
【0015】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記予熱タンク内の前記貯留水を予熱する予熱用熱交換器と、前記オフガス熱交換器と前記予熱用熱交換器との間で、前記冷却液を循環させる循環液回路と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システムである。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、燃料電池側のオフガス熱交換器と、予熱タンク内の予熱用熱交換器との間で、冷却液を循環させる。そして、オフガス熱交換器において、オフガスと冷却液とを熱交換して、オフガスを冷却しつつ冷却液を加熱し、この加熱された冷却液の熱で、予熱用熱交換器において、予熱タンク内の貯留水を加熱することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、前記燃料電池は、固体酸化物形の燃料電池であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池システムである。
【0018】
燃料電池には、固体酸化物形(SOFC)の他、リン酸形(PAFC)や固体高分子形(PEFC)もあるが、請求項4に記載の発明によれば、SOFCが用いられる。SOFCは、高温型の動作温度が650〜800℃、中温型の動作温度が450〜650℃と高いため、セルスタック保護の観点から、起動・昇温後は停止させることなく、電主熱従運転させるのが基本である。そのため、発生し続けるオフガス廃熱の回収を可能とすることで、高い総合効率を維持することができる。但し、SOFCはPAFCやPEFCに比べて発電効率が高い分、同じ発電出力で比較するとオフガス廃熱量が少なく、単独では多層階施設の温水需要には応えられないおそれがある。ところが、主熱源機で貯留水を加熱可能な温水タンクへの給水予熱にオフガス廃熱を利用することで、多層階施設の電力需要と温水需要を同時に満足するシステムを構築することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、前記建築設備は、前記温水タンク内に貯留された温水を循環可能に接続された給湯循環配管と;前記給湯循環配管を幹管として、当該幹管から温水需要箇所に温水を送る枝管と、を更に含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池システムである。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、温水タンク内に貯留された温水を給湯循環配管(幹管)に循環させておくことで、その循環配管から分岐した枝管を介して、温水需要箇所にて温水を迅速に取り出すことができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、前記降水配管は、前記給湯循環配管の復路を介して前記温水タンクと接続されることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システムである。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、少なくとも一部において、降水配管と給湯循環配管の復路とを共用して、構成の簡素化を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、既存の設備環境を利用できる簡易な構成で、燃料電池の熱回収と水自立を両立させた燃料電池システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施例の燃料電池システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例の燃料電池システム1を示す概略図である。
【0026】
本実施例の燃料電池システム1は、高層ビルのような多層階施設2における建築設備の一部として利用される。多層階施設2は、地下も含めて三以上の階を備えた建築物であり、典型的には地上3階建て以上(たとえば地下1階、地上4階建て)の建築物である。図1では、地下1階B1の他、地上1階F1と最上階(ここでは4階F4)が示されており、途中の階(2階および3階)は、最上階と同様として図示を省略している。
【0027】
本実施例の多層階施設2は、建築設備として、給水源から給水可能な受水タンク3と、この受水タンク3から給水可能な高架タンク4と、この高架タンク4から給水可能な温水タンク5と、高架タンク4から温水タンク5への給水系統に設けられる予熱タンク6と、温水タンク5内の貯留水を加熱可能な主熱源機7と、予熱タンク6内の貯留水の加熱にオフガス廃熱が用いられる燃料電池8と、温水タンク5内に貯留された温水を各階に循環させる給湯循環配管9とを有する。そして、これらの建築設備のうち、燃料電池8および予熱タンク6が燃料電池システム1の主要部を構成している。
【0028】
建築設備とは、人が生活を営むうえで必要になる様々な機能を果たすために、住宅・公共的施設・産業施設などの建築物に一体化されて機能する機器・装置をいう。建築設備には、建築基準法第2条第3号に定義されている設備等のほか、建築物利用者のニーズに応じた各種設備(たとえばボイラ設備や通信設備など)を含み得る。
【0029】
受水タンク3は、地下または下層階(典型的には1階F1)に設置され、本実施例では地下(ここでは地下1階B1)に設置される。受水タンク3は、本実施例では開放型タンク(大気開放されたタンク)とされる。受水タンク3には、給水配管10を介して、水道水が供給され貯留される。本実施例では、定水位弁(ボールタップ)11を用いて、受水タンク3への給水の有無が切り替えられ、受水タンク3内は所定水位に維持される。なお、受水タンク3への給水は、常温の水道水であるため、受水タンク3内の貯留水の水温は、季節変動するものの、通常5〜30℃程度である。
【0030】
高架タンク4は、屋上Rまたは上層階(典型的には最上階)に設置され、本実施例では屋上Rに設置される。高架タンク4は、本実施例では開放型タンクとされる。高架タンク4には、受水タンク3から揚水配管12を介して、水が供給され貯留される。揚水配管12には、受水タンク3の出口部に揚水ポンプ13が設けられており、この揚水ポンプ13を作動させることで、受水タンク3内の水を高架タンク4へ供給することができる。高架タンク4に設けた水位検出器(たとえば水位電極棒やフロートスイッチ)14の検出信号に基づき揚水ポンプ13を自動制御することで、高架タンク4内を所定水位に維持することができる。たとえば、水位検出器14にて、下限水位と上限水位とを検出可能としておき、下限水位を下回れば揚水ポンプ13を作動させる一方、上限水位を上回れば揚水ポンプ13を停止させればよい。
【0031】
ここで、高架タンク4への補給水は、受水タンク3からの常温水である。そのため、高架タンク4には、燃料電池8のオフガスの露点温度(たとえば40℃)以下の水が補給されることになる。後述するように、高架タンク4の貯留水は、予熱タンク6でオフガスの冷却用熱源として利用される。燃料電池8の水自立とは、オフガスの冷却により生成させた凝縮水を燃料電池8で再利用するものであるため、高架タンク4への補給水の温度は、燃料電池8の水自立の成否と密接に関係している。
【0032】
温水タンク5は、高架タンク4よりも下層階に設置され、本実施例では地下(ここでは地下1階B1)に設置される。温水タンク5は、本実施例では開放型タンクとされる。温水タンク5には、高架タンク4から降水配管15(15A〜15C)を介して、水が供給され貯留される。高架タンク4から温水タンク5への給水は、水頭圧差を用いて自然になされる。そのため、降水配管15にポンプを設置する必要はない。降水配管15には、給水弁16が設けられており、この給水弁16を開けることで、高架タンク4内の水を温水タンク5へ供給することができる。温水タンク5に設けた水位検出器(たとえば水位電極棒やフロートスイッチ)17の検出信号に基づき給水弁16を自動制御することで、温水タンク5内を設定水位に維持することができる。たとえば、水位検出器17にて、下限水位と上限水位とを検出可能としておき、下限水位を下回れば給水弁16を開放する一方、上限水位を上回れば給水弁16を閉鎖すればよい。
【0033】
温水タンク5内の貯留水は、主熱源機7により加熱可能とされる。後述するように、温水タンク5への給水は燃料電池8のオフガス廃熱を用いて予熱されるが、この予熱がなくても(つまり燃料電池8の発電が停止していても)、主熱源機7は、温水タンク5内の水温を所望に維持でき、多層階施設2内への温水供給には影響を及ぼさない加熱能力を有する。言い換えれば、主熱源機7は、単独で多層階施設2の温水需要を賄うことのできる熱出力を有する。
【0034】
主熱源機7は、特に問わないが、本実施例では、蒸気ボイラ7Aとされる。この場合、温水タンク5には蒸気ヒータ(蒸気ボイラ7Aからの蒸気と温水タンク5内の貯留水との熱交換器)18が組み込まれており、蒸気ボイラ7Aからの蒸気が蒸気ヒータ18に供給され、温水タンク5内の貯留水を加熱する。温水タンク5内の貯留水の水温に基づき、蒸気ボイラ7Aから蒸気ヒータ18への給蒸を自動制御することで、温水タンク5内の貯留水を設定温度に維持することができる。このようにして、温水タンク5内には、多層階施設2内に供給するための温水が貯留される。なお、後述するように、温水タンク5内に貯留された温水は、給湯循環配管9を通じて多層階施設2の各階に循環される。そのため、循環温水のレジオネラ汚染防止など衛生上の観点からは、蒸気ヒータ18による加熱時の設定温度を60℃以上にしておくのが望ましい。
【0035】
予熱タンク6は、高架タンク4から温水タンク5への降水配管15の途中に設けられる。具体的には、予熱タンク6は、高架タンク4と温水タンク5との間の階に設置され、本実施例では1階F1に設置される。予熱タンク6は、本実施例では密閉型タンク(大気開放されないタンク)とされる。予熱タンク6は、上流側降水配管15Aを介して高架タンク4と接続される一方、下流側降水配管15Bを介して温水タンク5と接続される。そのため、高架タンク4からの水は、上流側降水配管15Aを介して予熱タンク6を満たし、下流側降水配管15Bを介して温水タンク5へ供給可能とされる。下流側降水配管15B(または上流側降水配管15A)には給水弁16が設けられており、この給水弁16を開けることで、高架タンク4内の水を、上流側降水配管15A、予熱タンク6および下流側降水配管15Bを介して、温水タンク5へ供給することができる。つまり、給水弁16の開放により、予熱タンク6から温水タンク5へ給水しつつ、その給水分の水を高架タンク4から予熱タンク6へ補給することができる。
【0036】
予熱タンク6内の貯留水は、燃料電池8のオフガス廃熱を用いて加熱されるが、その際、予熱タンク6内には温度成層(上部ほど高温で下部ほど低温の状態)が形成される。この温度成層を乱さないために、予熱タンク6には、図示例のように、下部に、高架タンク4からの上流側降水配管15Aが接続され、上部に、温水タンク5への下流側降水配管15Bが接続されるのが好ましい。
【0037】
上流側降水配管15Aと下流側降水配管15Bとは、所望によりバイパス配管15Cで接続される。この場合、高架タンク4からの水を、予熱タンク6を介して温水タンク5へ供給するか、予熱タンク6を介さずにバイパス配管15Cを介して温水タンク5へ供給するかを切替可能とされる。そのために、本実施例では、上流側降水配管15Aには、バイパス配管15Cとの分岐部より下流に入口弁19が設けられる一方、下流側降水配管15Bには、バイパス配管15Cとの合流部より上流に出口弁20が設けられる。さらに、バイパス配管15Cには、バイパス弁21が設けられる。これら入口弁19、出口弁20およびバイパス弁21は、本実施例では手動弁から構成される。そして、通常、バイパス弁21が閉じられると共に、入口弁19および出口弁20が開かれた状態に維持される。従って、高架タンク4内の水は、バイパス配管15Cを介することなく、上流側降水配管15Aを介して予熱タンク6へ供給され、予熱タンク6内の水が、下流側降水配管15Bを介して温水タンク5へ供給される。
【0038】
一方、所望時には、バイパス弁21を開ける一方、入口弁19および出口弁20を閉じた状態として、高架タンク4内の水を、予熱タンク6を介することなく、バイパス配管15Cを介して温水タンク5へ供給可能とされる。たとえば、予熱タンク6や後述する循環液回路22などをメンテナンスする際、バイパス弁21を開ける一方、入口弁19および出口弁20を閉じた状態としておけばよい。その場合、温水タンク5には高架タンク4から直接に給水可能であると共に、温水タンク5において主熱源機7にて温水を製造可能であるから、温水需要箇所への湯切れを防止することができる。
【0039】
予熱タンク6内の貯留水は、燃料電池8のオフガス廃熱を用いて加熱可能とされる。そのために、本実施例では、燃料電池8(より具体的には後述する燃料電池本体23)のオフガスとその冷却液とを熱交換するオフガス熱交換器24と、このオフガス熱交換器24で加熱された冷却液で予熱タンク6内の貯留水を加熱する予熱用熱交換器25と、オフガス熱交換器24と予熱用熱交換器25との間で冷却液を循環させる循環液回路22とを備える。循環液回路22を循環する冷却液は、ここでは水であるが、その他の液体(たとえばエチレングリコールなどを主成分とする不凍液)であってもよい。
【0040】
燃料電池8は、オフガス熱交換器24の他、燃料電池本体23、パワーコンディショナ(図示せず)および各種の補機(図示せず)などを備える。燃料電池本体23は、改質器(図示せず)およびセルスタック(図示せず)などを備える。具体的には、燃料電池本体23は、発電に使用する主要機器を断熱容器に収容した発電モジュールとして構成されており、主要機器には、(I)蒸発部、混合部及び改質部を有する改質器;(II)複数の発電セルよりなるセルスタック;(III)アノードオフガスとカソードオフガスを燃焼させる燃焼器;(IV)燃焼オフガスとアノード空気を熱交換させる空気予熱器などが含まれる。
【0041】
燃料電池本体23には、原燃料(都市ガス)G、空気A、および水(改質水)Wが供給される。そして、原燃料(メタンガスを主成分とする都市ガス)と水(水蒸気)とを改質器において水蒸気改質反応させることにより水素を含有する改質ガスを生成し、改質ガス中の水素と空気中の酸素とをセルスタックにおいて化学反応させて発電する。セルスタックでは、発電に伴ってアノードオフガスおよびカソードオフガスが生成されるが、これらのガスは、燃焼器に供給されたのち、燃焼オフガスとなって排出される。この燃焼オフガスは、セルスタックの前段に配置された空気予熱器に通され、カソード空気の予熱に利用される。
【0042】
セルスタックの電池出力は、パワーコンディショナで調整された後に、多層階施設2内に給電される。パワーコンディショナは、セルスタックから出力された直流電圧を昇圧するDC/DCコンバータ(昇圧回路)と、DC/DCコンバータで昇圧された直流電圧を系統電源と同期の取れた交流電圧に変換する系統連系インバータ(電圧変換回路)と、セルスタックの出力電流を制御する出力電流制御部(出力制御回路)と、を有している。系統連系インバータは、多層階施設2内に設置された商用電力系統の配電盤と電気的に接続されている。系統連系インバータと配電盤とは、系統連系用のスイッチを介して並列・解列を切換可能である。配電盤には、系統電源及び複数の分電盤が電気的に接続されている。分電盤には、多層階施設2の各階で使用する照明器具、動力装置、コンセント等の負荷機器が電気的に接続されている。
【0043】
燃料電池本体23の種類は、特に問わないが、好適には固体酸化物形(SOFC)とされる。SOFCは、高温型の動作温度が650〜800℃、中温型の動作温度が450〜650℃と高いため、セルスタック保護の観点から、起動・昇温後は停止させることなく、電主熱従運転させるのが基本である。そのため、発生し続けるオフガス廃熱の回収を可能とすることで、高い総合効率を維持することができる。但し、SOFC(固体酸化物形)はPAFC(リン酸形)やPEFC(固体高分子形)に比べて発電効率が高い分、同じ発電出力で比較するとオフガス廃熱量が少なく、単独では多層階施設2の温水需要には応えられないおそれがある。ところが、主熱源機7で貯留水を加熱可能な温水タンク5への給水予熱にオフガス廃熱を利用することで、多層階施設2の電力需要と温水需要を同時に満足する熱電併給システムを構築することができる。
【0044】
オフガス熱交換器24は、燃料電池本体23からのオフガスとその冷却液とを混ぜることなく熱交換する間接熱交換器である。そのために、オフガス熱交換器24には、燃料電池本体23からオフガス配管26を介してオフガスが通されると共に、循環液回路22の循環液がオフガスの冷却液として通される。これにより、オフガス熱交換器24において、オフガスは循環冷却液により冷却され、オフガス中の水分(水蒸気)の凝縮が図られる。一方、循環液回路22の循環冷却液は、オフガス熱交換器24において、オフガスと熱交換することで加熱される。
【0045】
オフガス熱交換器24での熱交換の対象となるオフガスは、燃料電池本体23で発生する水蒸気を含むオフガスである。具体的には、(i)セルスタックのアノード側から排出されるアノードオフガス;(ii)セルスタックのカソード側から排出されるカソードオフガス;(iii)燃焼器から排出される燃焼オフガスから選ばれた一種以上を熱交換の対象とすることができる。オフガス熱交換器24に通されるオフガスは、空気予熱器等で部分的に熱回収された後の状態であってもよい。
【0046】
SOFCセルスタックのアノード側では、水素と酸素の化学反応が起こるので、アノードオフガスには水蒸気が含まれる。SOFCセルスタックのカソード側に供給される空気には大気の水蒸気が含まれるので、カソードオフガスにも水蒸気が含まれる。燃焼オフガスには、アノードオフガスおよびカソードオフガスに由来する水蒸気のほか、アノードオフガス中の残留水素とカソードオフガス中の残留酸素の燃焼反応によって生成した水蒸気が含まれる。そのため、いずれのオフガスを熱交換の対象とした場合でも、露点温度以下に冷却することで凝縮水を得ることができる。
【0047】
オフガス熱交換器24からのオフガスの出口側には、セパレータタンク27が設けられており、オフガス熱交換器24に通されたオフガスの気液分離が図られる。そして、気液分離後の凝縮水は、燃料電池本体23への改質水Wとして、供給ポンプ28を介して燃料電池本体23の改質器へ再供給可能とされる。これにより、燃料電池8は、外部からの補給水なしで発電を継続できる水自立運転が可能になっている。なお、気液分離後のアノードオフガスおよびカソードオフガスは燃焼器に供給され、気液分離後の燃焼オフガスは外部に排出される。
【0048】
燃料電池8の水自立運転において、改質器では、蒸発部で改質水Wとしての凝縮水が気化された後、混合部で原燃料Gと水蒸気が混合される。そして、この混合ガスが改質部の触媒層に供給されて、水素を含有する改質ガスが生成される。改質部で得られた改質ガスは、アノード燃料としてセルスタックのアノード側に送られる。
【0049】
また、オフガス熱交換器24は、その構造や流体の流し方を工夫することにより、オフガスの気液分離をセパレータタンク27ではなく、オフガス熱交換器24内で行うようにすることもできる。その場合、オフガス熱交換器24からのオフガスの出口側に、排気用の分岐ラインを接続する。
【0050】
予熱用熱交換器25は、予熱タンク6内に配置され、予熱タンク6内の貯留水とオフガス熱交換器24からの循環冷却液とを混ぜることなく熱交換する間接熱交換器(たとえば伝熱コイル)である。予熱用熱交換器25は、予熱タンク6の内部領域のうち、少なくとも常温水が流入する下層領域(たとえば底部から30〜50%の高さ領域)を加熱可能に配置される。これにより、予熱用熱交換器25において、予熱タンク6内の貯留水が加熱される一方、循環液回路22の循環冷却液は冷却される。
【0051】
循環液回路22は、オフガス熱交換器24と予熱用熱交換器25との間で、冷却液を循環させる。具体的には、予熱用熱交換器25からオフガス熱交換器24へは、冷却液送り路22Aを介して冷却液が供給され、オフガス熱交換器24から予熱用熱交換器25へは、冷却液戻し路22Bを介して冷却液が戻される。そして、冷却液送り路22A(または冷却液戻し路22B)に設けた循環ポンプ29を作動させることで、オフガス熱交換器24と予熱用熱交換器25との間で冷却液を循環させることができる。
【0052】
本実施例では、冷却液送り路22Aには、予熱用熱交換器25からオフガス熱交換器24へ向けて順に、ラジエータ30および循環ポンプ29が設けられている。なお、循環ポンプ29は、冷却液送り路22Aに設けられる代わりに、冷却液戻し路22Bに設けられてもよい。
【0053】
ラジエータ30は、オフガス熱交換器24への冷却液とファン31による通風との熱交換器である。所望時にラジエータ30のファン31を作動させることで、オフガス熱交換器24へ供給する冷却液を、外気で冷却することができる。たとえば予熱タンク6でオフガス廃熱の熱回収が十分にできない場合に、ラジエータ30の冷却作用によってオフガス熱交換器24への冷却液温度をオフガスの露点温度以下にすることで、オフガス熱交換器24においてオフガス中の水分を凝縮させ、燃料電池8の水自立を図ることができる。
【0054】
ラジエータ30は、好ましくは、通風量を調整可能とされる。本実施例では、ファン31のモータの駆動周波数ひいては回転数をインバータで制御することで、ラジエータ30の通風量を調整可能とされる。他の手段としては、冷却液送り路22Aに複数台のラジエータ30を配置しておき、その稼動台数を制御することで、通風量を調整することもできる。
【0055】
循環液回路22には、冷却液の循環流量調整手段を設けるのが好ましい。本実施例では、循環流量調整手段として、流量調整弁32が、オフガス熱交換器24から予熱用熱交換器25への冷却液戻し路22Bに設けられる。循環ポンプ29の作動中、流量調整弁32の開度を調整することで、循環液回路22内の循環流量を調整することができる。なお、流量調整弁32は、本実施例では、オフガス熱交換器24から予熱用熱交換器25への冷却液戻し路22Bに設けられるが、場合により、予熱用熱交換器25からオフガス熱交換器24への冷却液送り路22Aに設けられてもよい。また、循環流量調整手段は、循環ポンプ29の駆動周波数ひいては回転数を変更するためのインバータから構成されてもよい。つまり、流量調整弁32の設置と制御に替えて、循環ポンプ29をインバータ制御することで、循環液回路22内の循環流量を調整してもよい。
【0056】
冷却液送り路22Aには、ラジエータ30の出口側に第一温度センサ33が設けられる一方、冷却液戻し路22Bには、第二温度センサ34が設けられる。第一温度センサ33は、オフガス熱交換器24の入口側の冷却液の温度を検出し、第二温度センサ34は、オフガス熱交換器24の出口側の冷却液の温度を検出する。
【0057】
燃料電池8の稼働時、循環ポンプ29を作動させる。これにより、オフガス熱交換器24と予熱用熱交換器25との間で冷却液が循環される。オフガス熱交換器24において、燃料電池本体23からのオフガスが冷却される一方、予熱用熱交換器25への冷却液が加熱される。一方、予熱用熱交換器25において、オフガス熱交換器24からの冷却液で、予熱タンク6内の貯留水が加熱される。このようにして、燃料電池8のオフガス廃熱を、予熱タンク6内の貯留水の加熱に用いて、熱回収することができる。
【0058】
循環ポンプ29の作動中、第一温度センサ33の検出温度を第一目標温度(たとえば40℃)に維持するように、ファン31のモータがインバータ制御される。これにより、冷却液の温度が高まり過ぎるのを防止して、水自立を確実に図ることができる。すなわち、オフガス熱交換器24においてオフガスを露点温度以下に冷却して、オフガス中の水分を凝縮させ、その凝縮水を前記改質器へ再供給することができる。
【0059】
循環ポンプ29の作動中、第二温度センサ34の検出温度を第二目標温度(たとえば60〜75℃)に維持するように、流量調整弁32の開度が調整される。これにより、予熱用熱交換器25へ供給する循環液温度を所定温度に維持して、予熱タンク6内の貯留水を所望温度に加熱することができる。
【0060】
温水タンク5内の温水は、多層階施設2内の一または複数の温水需要箇所に供給され利用可能とされる。本実施例では、多層階施設2内には、温水タンク5内に貯留された温水を循環させる給湯循環配管9が敷設されており、その給湯循環配管9に設けた出湯部35から温水を取り出し可能とされている。
【0061】
給湯循環配管9は、温水タンク5内の温水を多層階施設2の各階に行き渡らせるループ配管である。本実施例では、地下の温水タンク5から最上階へ向けて往路9Aが敷設され、最上階から温水タンク5へ向けて復路9Bが敷設される。往路9Aには、温水タンク5からの出口部に、揚水ポンプを兼ねる循環ポンプ36が設けられる。なお、復路9Bは、温水タンク5側において、給水弁16よりも下流の降水配管15(予熱タンク6から温水タンク5への下流側降水配管15B)と統一管路とされてもよい。言い換えれば、下流側降水配管15Bは、給水弁16よりも下流において、給湯循環配管9の復路9Bを介して温水タンク5と接続されてもよい。
【0062】
ところで、温水タンク5は、典型的には略矩形のボックス状とされ、給湯循環配管9の往路9Aへの給湯口と、復路9Bからの返湯口とが、対角の位置に設けられるのが好ましい。また、温水タンク5は、降水配管15からの給水口と、給湯循環配管9の復路9Bからの返湯口とが、隣接して配置されるのが好ましい。これにより、高架タンク4から予熱タンク6を介した補給水と、給湯循環配管9の復路9Bからの温水との混合を図ることができる。但し、前述したとおり、予熱タンク6から温水タンク5への降水配管15は、温水タンク5に接続するのではなく、給湯循環配管9の復路9Bに合流させてもよい。
【0063】
多層階施設2の各階(あるいは所望の階)には、温水需要箇所への出湯部35が設けられる。本実施例では、1階以上の各階には、給湯循環配管9を幹管として、その幹管から温水需要箇所に温水を送る枝管9Xが設けられている。この際、通常、枝管9Xは、幹管の往路9Aから分岐して設けられる。つまり、枝管9Xは、給湯循環配管9に付随する建築設備である。図示例では、各階に一つの枝管9Xのみを示しているが、複数の枝管9Xを設けてもよい。また、所望により、一つの枝管9Xからさらに枝管9Xを分岐させてもよい。なお、図1では、1階F1と最上階(たとえば4階F4)のみを示しているが、途中の階(2階および3階)についても、同様に枝管9Xが設置可能である。
【0064】
各枝管9Xは、幹管(給湯循環配管9)からの温水を出湯部35に供給するための配管である。出湯部35としては、たとえば、洗面台、浴室、厨房等に設けられた混合栓35Aである。なお、高架タンク4から各階へは、冷水(常温水)の降水配管(給水配管)37が別途、敷設されている。そして、各階の混合栓35Aには、温水タンク5から幹管9Aおよび枝管9Xを介した温水と、高架タンク4から降水配管37を介した冷水とが供給可能とされ、その混合割合を調整することで所望温度の温水を出湯可能とされる。
【0065】
次に、本実施例の燃料電池システム1の作用(運転)について、説明する。
燃料電池8は、系統連系しながら常時発電する電主熱従運転を行っており、多層階施設2内の電力需要に合わせて、燃料電池8の発電出力(セルスタックの電池出力をパワーコンディショナで調整した出力)が調整される。すなわち、燃料電池8をベースロード電源として使用しつつ、系統電源をピークロード電源として使用している。燃料電池8の運転に伴い、オフガス熱交換器24と予熱用熱交換器25との間の循環液回路22の循環ポンプ29が作動する。また、第一温度センサ33の検出温度を第一目標温度に維持するように、ファン31のモータをインバータ制御すると共に、第二温度センサ34の検出温度を第二目標温度に維持するように、流量調整弁32の開度を自動制御するのは前述したとおりである。これにより、オフガス熱交換器24において、オフガスを露点温度以下に冷却して、確実で安定した水自立を図ることができる。また、予熱用熱交換器25において、予熱タンク6内の貯留水を、所定温度(第二目標温度)の循環冷却液で加熱することができる。
【0066】
なお、予熱用熱交換器25での熱交換により、予熱タンク6内の貯留水は最大、第二目標温度まで加熱されることになる。この第二目標温度は、温水タンク5内の設定温度(主熱源機7による加熱目標温度)と同一かそれよりも低い温度とされる。
【0067】
温水タンク5には、水位検出器17の検出信号に基づき給水弁16を自動制御することで、所定水位の水が貯留される。高架タンク4から温水タンク5への降水配管15には予熱タンク6を設けて、燃料電池8のオフガス廃熱が回収されることで、予熱された温水を温水タンク5へ供給することができる。しかも、温水タンク5内の貯留水は、主熱源機7により設定温度に加熱され維持される。なお、高架タンク4から予熱タンク6を介した温水タンク5への給水に伴い、高架タンク4には必要に応じて受水タンク3から給水される。
【0068】
多層階施設2内の温水需要に備えて、給湯循環配管9の循環ポンプ36は、作動を継続する。そのため、所望の階の所望の混合栓35Aを開ければ、即座に出湯することができる。その際、温水タンク5からの温水に、高架タンク4から降水配管37を介した常温水を混合することで、所望の温度で出湯することができる。
【0069】
ところで、予熱タンク6では、燃料電池8のオフガス廃熱を温水タンク5への給水予熱に用いて熱回収することで、予熱タンク6内の貯留水を予熱しながらオフガスの冷却が可能とされる。この点について、具体的に説明すると、次のケースが想定される。
【0070】
(a)夏場以外で、高架タンク4に滞留中の貯留水、すなわちオフガスの冷却用熱源がオフガスの露点温度を超えない場合、予熱タンク6での熱回収のみでオフガスを露点以下に冷却できる。この場合、循環液回路22では、ラジエータ30のファン31を停止しておけばよい。
【0071】
(b)夏場で、高架タンク4に滞留中の貯留水、すなわちオフガスの冷却用熱源がオフガスの露点温度を超える場合、予熱タンク6での熱回収と、ラジエータ30での放熱とにより、オフガスを露点以下に冷却する。但し、夏場であっても多層階施設2内で温水需要が十分にある場合には、高架タンク4の貯留水は頻繁に入れ替わるため、高架タンク4内の貯留水(ひいては予熱タンク6への給水)がオフガスの露点温度以下になれば、ラジエータ30のファン31を停止させればよい。それにより、温水タンク5への補給水の冷熱利用による水自立を成立させつつ、熱回収効率を高めることができる。
【0072】
なお、多層階施設2内での温水需要が少ない場合には、高架タンク4の水温とは無関係に十分な熱回収ができないので、ラジエータ30のファン31を作動させて、外気への放熱によりオフガスを露点以下に冷却して水自立を成立させることになる。
【0073】
本実施例の燃料電池システム1を利用する多層階施設2においては、温水タンク5への給水を燃料電池8の廃熱で予熱すると共に、温水タンク5内の貯留水を主熱源機7で加熱可能とするので、簡易な構成で、燃料電池8の廃熱を優先利用した温水を得ることができる。しかも、多層階施設2内において、高架タンク4、予熱タンク6および温水タンク5と順に設置階を下げていくことで、高架タンク4から予熱タンク6を介した温水タンク5への給水を、ポンプを用いることなく、水頭圧差を用いて自然に行うことができる。また、高架タンク4、温水タンク5、主熱源機7および降水配管15として、多層階施設2の既存建築設備を利用することもでき、その既存建築設備に、燃料電池8および予熱タンク6を新設して構成することも容易である。
【0074】
本発明の燃料電池システム1は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。特に、燃料電池システム1を利用する多層階施設2が、(a)屋上又は上層階に設置される高架タンク4と;(b)高架タンク4よりも下層階に設置される温水タンク5と;(c)温水タンク5内の貯留水を加熱可能な主熱源機7と;(d)高架タンク4と温水タンク5とを接続する降水配管15と、を建築設備として有しており、燃料電池システム1が、(e)多層階施設2内に給電可能な水自立型の燃料電池8と、(f)降水配管15の途中に配設した予熱タンク6と、を備え、(g)燃料電池8のオフガスの熱回収により、予熱タンク6内の貯留水を予熱しながらオフガスを冷却可能に構成し、(h)高架タンク4の貯留水を予熱タンク6でオフガスの冷却用熱源として利用し、(i)オフガスの冷却により生成させた凝縮水を燃料電池8で再利用するものであれば、その他の構成は適宜に変更可能である。
【0075】
たとえば、前記実施例では、温水タンク5は、開放型タンクにより構成されたが、場合により、密閉型タンクにより構成されてもよい。その場合、降水配管15への給水弁16の設置は不要であり、温水需要箇所での出湯に伴い、その出湯分の温水が予熱タンク6を介して温水タンク5へ供給される。
【0076】
また、前記実施例では、予熱タンク6は、密閉型タンクとされたが、場合により開放型タンクとされてもよい。その場合、温水タンク5を開放型タンクとする場合と同様にして、予熱タンク6内の水位を設定水位に維持するように、高架タンク4から予熱タンク6への上流側降水配管15Aに設けた給水弁を自動制御すればよい。
【0077】
また、前記実施例では、予熱タンク6内に予熱用熱交換器25を設置して、循環液回路22の循環冷却液と予熱タンク6内の貯留水とを間接熱交換したが、場合により、予熱用熱交換器25の設置を省略して、予熱タンク6内の貯留水自体をオフガス熱交換器24との間で循環させてもよい。つまり、予熱タンク6内の貯留水を、オフガスの冷却液として、冷却液送り路22Aを介してオフガス熱交換器24に供給して、オフガス熱交換器24においてオフガス廃熱を用いて加熱し、冷却液戻し路22Bを介して予熱タンク6へ戻す循環を繰り返してもよい。
【0078】
また、前記実施例において、受水タンク3は、多層階施設2内に設置したが、場合により、多層階施設2に隣接した屋外(地上)に設置されてもよい。なお、前記実施例では、地下として、地下1階B1のみを示したが、地下2階以上にしてもよい。
【0079】
また、前記実施例では、水頭圧差を用いた給水を実現するために、高所から低所へ順に、高架タンク4、予熱タンク6および温水タンク5を設けたが、予熱タンク6については次のように配置してもよい。すなわち、予熱タンク6は、降水配管15に大気開放部分がなければ、高架タンク4より高い位置でも温水タンク5よりも低い位置でも水は流れる(サイフォンの原理)ので、屋上設置や地下設置も可能である。
【0080】
さらに、前記実施例において、主熱源機7は、蒸気ボイラ7Aから構成されたが、場合により電気ヒータ、バーナ、ヒートポンプなどから構成されてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 燃料電池システム
2 多層階施設
3 受水タンク
4 高架タンク
5 温水タンク
6 予熱タンク
7 主熱源機(7A:ボイラ)
8 燃料電池
9 給湯循環配管(9A:往路、9B:復路、9X:枝管)
10 給水配管
11 定水位弁
12 揚水配管
13 揚水ポンプ
14 水位検出器
15 降水配管(15A:上流側降水配管、15B:下流側降水配管、15C:バイパス配管)
16 給水弁
17 水位検出器
18 蒸気ヒータ
19 入口弁
20 出口弁
21 バイパス弁
22 循環液回路(22A:冷却液送り路、22B:冷却液戻し路)
23 燃料電池本体
24 オフガス熱交換器
25 予熱用熱交換器
26 オフガス配管
27 セパレータタンク
28 供給ポンプ
29 循環ポンプ
30 ラジエータ
31 ファン
32 流量調整弁
33 第一温度センサ
34 第二温度センサ
35 出湯部(35A:混合栓)
36 循環ポンプ
37 降水配管
【要約】
燃料電池システム(1)は、屋上又は上層階に設置される共に、常温水が補給される高架タンク(4)と;高架タンク(4)よりも下層階に設置される温水タンク(5)と;温水タンク(5)内の貯留水を加熱可能な主熱源機(7)と;高架タンク(4)と温水タンク(5)とを接続する降水配管(15)と、を建築設備として有する多層階施設(2)で利用される。燃料電池システム(1)は、多層階施設(2)内に給電可能な燃料電池(8)と、降水配管(15)の途中に配設した予熱タンク(6)とを備える。予熱タンク(6)では、燃料電池(8)のオフガスの熱回収により、貯留水が予熱されながらオフガスが冷却される。高架タンク(4)の貯留水は、予熱タンク(6)でオフガスの冷却用熱源として利用される。オフガスの冷却により生成させた凝縮水は、燃料電池(8)で再利用される。
図1