(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
異なる2以上の前記傾斜角を定め、それぞれの傾斜角で設定される前記傾斜空間座標系に基づいて、前記標準空間座標及び前記標準平面座標を算出するとともに、該標準平面座標に基づいて建物の輪郭を抽出し、
前記標準空間座標、及び前記建物の輪郭に基づいて、前記数値表層モデルを作成することを特徴とする請求項1記載の数値表層モデル作成方法。
さらに、前記数値表層モデルに基づいて、前記ステレオペア画像から正射投影写真を作成する正射投影写真作成工程を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の数値表層モデル作成方法。
さらに、前記数値表層モデルに基づいて、前記ステレオペア画像から正射投影写真を作成する正射投影写真作成手段を備えたことを特徴とする請求項4記載の数値表層モデル作成装置。
【背景技術】
【0002】
地形図の作製など広範囲に渡って地形を計測する場合、航空機から撮影した空中写真を利用する空中写真測量を実施するのが主流である。空中写真測量は、同一箇所を写した異なる2枚の空中写真を一組とするステレオペア写真を用意し、双方の写真に写された同一対象物を同定するとともに、その対象物の写真上の位置の相違(視差)を利用して地上における対象物の座標を求める手法である。
【0003】
空中写真に写された地上物の座標は、カメラ中心点(主点)を基準とする前方交会法によって求められる。そのため、ステレオペア写真それぞれを撮影した時のカメラ主点座標と撮影方向、カメラの焦点距離や、主点位置のずれ、各種ひずみ(放射性ひずみ、非対称性ひずみ等)といったカメラ諸元は既値でなければならない。なお、写真撮影時のカメラ主点座標と撮影方向は外部標定要素と呼ばれ、カメラの焦点距離や、主点位置のずれ、各種ひずみ等は内部標定要素と呼ばれており、外部標定要素と内部標定要素の総称が標定要素である。
【0004】
空中写真測量によって地上物の座標を求めるには外部標定要素を既値としなければならないと説明したが、必ずしもこの外部標定要素が計測等によって明らかにされるとは限らない。もちろん、GPS(Global Positioning System)とIMU(Inertia Measurement Unit)を航空機に搭載すれば、直接的に外部標定要素を得ることができるが、このような計測機器を搭載していない場合は空中三角測量により外部標定要素を求めるのが一般的である。空中三角測量は、地上座標が既値である対空標識を設置し、この対空標識を写した複数枚の空中写真を基に解析を行って外部標定要素(あるいは標定要素)を求めるものである。
【0005】
ところで、計測結果を地形モデルとして表現する場合、目的に応じて2種類のモデルに大別される。一つは、地表面を覆う樹木や建造物など(以下、「被覆物」という。)を地形モデルとして含むもので、すなわち被覆物の表面を表すDSM(Digital Surface Model)等である。他の一つは、被覆物を除く純粋な地表面を表すDTM(Digital Terrain Model)等である。空中写真測量の場合は、被覆物を含む地形を撮影した空中写真を利用することから、直接的には地形モデルとしてDSMが得られる。なお、DSMをはじめ被覆物を含んだ地形モデルのことを、ここでは「数値表層モデル」ということとする。
【0006】
数値表層モデルは、平面位置及び高さを指標とする3次元座標で構成されるものであり、自動的に生成させたメッシュ上に整列配置された点群によって、あるいは無秩序な離散的点群によって表現される。そのため、地盤高が連続的に変化する山地部においては、自動生成した数値表層モデルが原地形を比較的精度よく表現するものの、高層ビルなど建物が多い都市部においては、人工的に造られた不連続な地盤高差が数多く存在し、これを自動生成したメッシュ点群や離散的点群によって表現することは困難である。
【0007】
図8は数値表層モデルの概念を示すモデル図であり、(a)はその側面図、(b)はその平面図である。
図8(a)に示すように、建物があるところは建物の表面、建物がないところは地面を示す点群によって数値表層モデルは構成される。例えば、数値表層モデルがメッシュ状の点群で構成されている場合、点群の配置は
図8(b)に示すとおりである。この図では便宜上、建物輪郭周辺の点群のみを示しているが、これら点群から建物の輪郭を自動的に抽出することはできない。これは、離散的点群で構成された数値表層モデルでも同様である。
【0008】
このように、従来の数値表層モデルから機械的もしくは自動的に建物の輪郭を抽出することは難しく、これまでは人が目視によって建物の輪郭を同定し、この輪郭構成点を手作業で入力して数値表層モデルを作成していた。この手法によれば、作成手間や作成時間がかかるうえ人為的なミスも生じやすいことから、建物の輪郭を抽出するための改善技術が待望されていた。
【0009】
そこで特許文献1では、空中写真から精度よく地物(建物の輪郭)を抽出する試みとして、あらかじめ構築された道路ネットワークを用意し、この道路ネットワーク部分をオルソ写真から取り除いたうえで画像処理を行い、地物を抽出する技術を提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1では、2値化した画像を利用して建物の輪郭を抽出する技術を開示している。特許文献1のように画像処理によって建物の輪郭を抽出する技術は、従来からも行われてきた技術であるが、この手法で正確に抽出することは難しい。画像の最小単位は画素(ピクセル)であり、1画素よりも細かく線分等を特定することができないのがその理由である。
図8(b)で説明すれば、建物の輪郭を含む画素(この場合は1メッシュ)を特定することはできても、輪郭線そのものを特定することはできないことが分かる。
【0012】
本願発明者は、建物の輪郭を特定するために、建物の壁面の情報を利用することに着目した。例えば、高層ビルのように略直方体と考えることのできる建物であれば、4壁面(側面)を特定することで建物の輪郭が明確に把握できる。具体的には、壁面を構成する点群を平面配置すると建物の輪郭に点群が高密度(集中的に)で分布され、このことから建物の輪郭が把握できるわけである。あるいは、天井面を特定し、この天井面と4壁面が交差する4直線を求めることでも建物の輪郭が把握できる。
【0013】
一方、従来の数値表層モデルでは壁面が表現されることはなかった。既述のとおり、数値表層モデルは3次元座標で構成されるが、同一平面点においては最高点(最も標高値が高い点)のみを構成点としている。言い換えれば、従来の数値表層モデルでは、同一平面点について一つの座標しか持つことがなく、実際、市販されているソフトウェアもこのような構造をとっている。したがってこれまでの数値表層モデルは、略鉛直に立設する壁面上に、複数の点群が配置されることはなかった。
【0014】
ところが、傾きをもって撮影される空中写真には、建物の壁面が写っていることが多い。先に説明した空中写真測量の原理によれば、壁面であってもステレオペア写真が成立すれば座標を求めることはできる。同一平面点につき一つの座標しか持たないという理由により、従来、空中写真から壁面の座標を求め、この壁面上の点を数値表層モデルの構成点とすることはなかった。すなわち、これまでは空中写真に写った壁面の情報を、利用することなく取り除いていたわけである。なお、壁面の座標を取得する手段としてはレーザー計測が考えられるが、この場合はマルチパス(壁面や路面における乱反射)の問題があって、やはり壁面上の点群を構成点とした数値表層モデルを作成するのは容易でなない。
【0015】
本願発明の課題は上記問題を解決することであり、すなわち空中写真などの画像から建物の壁面座標を取得し、この壁面上の点群を利用して建物の輪郭を抽出しつつ数値表層モデルを作成する技術を提供することであり、具体的には数値表層モデル作成方法、及び数値表層モデル作成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願発明は、従来固定されていた座標系を水平面から任意角だけ傾斜させて壁面上の点を計測するという点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0017】
本願発明の数値表層モデル作成方法は、外部標定要素が既知である2枚の画像を一組とするステレオペア画像を用いて数値表層モデルを作成する方法であり、傾斜座標系設定工程と、傾斜空間標定工程、傾斜座標算出工程、座標変換工程、標準平面座標取得工程、建物輪郭抽出工程を備えた方法である。傾斜座標系設定工程では、所定の傾斜角を定めてこの傾斜角だけ水平面から傾けた「傾斜基準面」を設定するとともに、傾斜基準面上に配置される「傾斜平面座標系」とこれに直交する座標軸を加えた「傾斜空間座標系」を設定する。傾斜空間標定工程では、外部標定要素及び傾斜空間座標系に基づいて、傾斜空間座標系における外部標定要素を「傾斜外部標定要素」として算出する。傾斜座標算出工程では、ステレオペア画像で画像照合する対応点、及び傾斜外部標定要素に基づいて、対応点の傾斜空間座標系における座標を「傾斜空間座標」として算出する。座標変換工程では、傾斜空間座標を水平面上に配置される「標準平面座標系」と鉛直座標軸からなる「標準空間座標系」に変換して「標準空間座標」を求める。標準平面座標取得工程では、標準空間座標のうち標準平面座標系における座標要素を抽出して、「標準平面座標」を得る。建物輪郭抽出工程では、標準平面座標取得工程で得られた標準平面座標に基づいて、「建物の輪郭」を抽出する。そして、座標変換工程で求めた標準空間座標、及び建物輪郭抽出工程で抽出した建物の輪郭に基づいて数値表層モデルを作成する。
【0018】
本願発明の数値表層モデル作成方法は、異なる2以上の傾斜角を定めそれぞれ傾斜空間座標系を設定し、これら傾斜空間座標系に基づいて標準空間座標及び標準平面座標を算出するとともに、標準平面座標に基づいて建物の輪郭を抽出したうえで数値表層モデルを作成することもできる。
【0019】
本願発明の数値表層モデル作成方法は、数値表層モデルに基づいてステレオペア画像から正射投影写真を作成する正射投影写真作成工程を備えた方法とすることもできる。
【0020】
本願発明の数値表層モデル作成装置は、外部標定要素が既知である2枚の画像を一組とするステレオペア画像を用いて数値表層モデルを作成するものであり、傾斜角指定手段と、傾斜座標系設定手段、傾斜空間標定手段、傾斜座標算出手段、座標変換手段、標準平面座標取得手段、建物輪郭抽出手段、数値表層モデル作成手段を備えたものである。傾斜角指定手段は、所定の傾斜角を指定することができる。傾斜座標系設定手段は、傾斜角だけ水平面から傾いた「傾斜基準面」を設定するとともに、この傾斜基準面上に配置される「傾斜平面座標系」とこれに直交する座標軸を加えた「傾斜空間座標系」を設定することができる。傾斜空間標定手段は、外部標定要素及び傾斜空間座標系に基づいて、傾斜空間座標系における外部標定要素を「傾斜外部標定要素」として算出することができる。傾斜座標算出手段は、テレオペア画像で画像照合する対応点、及び傾斜外部標定要素に基づいて対応点の傾斜空間座標系における座標を、「傾斜空間座標」として算出することができる。座標変換手段は、傾斜空間座標を水平面上に配置される標準平面座標系と鉛直座標軸からなる「標準空間座標系」に変換して「標準空間座標」を求めることができる。標準平面座標取得手段は、標準空間座標のうち標準平面座標系における座標要素を抽出して「標準平面座標」を得ることができる。建物輪郭抽出手段は、標準平面座標取得工程で得られた標準平面座標に基づいて、建物の輪郭を抽出することができる。数値表層モデル作成手段は、座標変換工程で求めた標準空間座標、及び建物輪郭抽出工程で抽出した建物の輪郭に基づいて、数値表層モデルを作成することができる。
【0021】
本願発明の数値表層モデル作成装置は、数数値表層モデルに基づいてステレオペア画像から正射投影写真を作成する正射投影写真作成手段を備えたものとすることもできる。
【発明の効果】
【0022】
本願発明の数値表層モデル作成方法、及び数値表層モデル作成装置には、次のような効果がある。
(1)画像のうち壁面を含む情報を細大漏らさず利用するため、建物の輪郭を自動的に抽出することができる。その結果、作業時間及び労力を大幅に削減できるうえ、人為的ミスを排除することができ、経済的かつ正確に建物の輪郭を抽出することができる。
(2)傾斜空間座標系の傾斜角を変えて、壁面上の点を含む点群座標の算出を複行すれば、より精度よく建物の輪郭を抽出できるとともに、壁面上の点を含む高密度な点群による数値表層モデルを得ることができる。
(3)正確かつ容易に建物の輪郭を抽出できる結果、建物を含む詳細な正射投影写真であるトゥルーオルソ(登録商標)写真も正確かつ容易に作成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願発明の数値表層モデル作成方法、及び数値表層モデル作成装置の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。
【0025】
(全体概要)
本願発明は、画像に表示された建物の壁面を計測し、その結果得られる点群を用いて建物の輪郭を把握するとともに、この建物の輪郭を含む数値表層モデルを作成するための方法と装置である。建物壁面の座標を取得するにあたって地上位置を表す座標系を傾斜させる点が、本願発明の技術的特徴の一つである。通常、建物を含む地形を基に作成される数値表層モデルは、大量の点群で構成される。したがって、地形を対象とした本願発明の数値表層モデル作成方法は、コンピュータを利用して実施するのが適当であり、また本願発明の数値表層モデル作成装置はコンピュータを利用して構成するのが適当である。このコンピュータは、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリを具備したもので、さらにマウスやキーボード等の入力手段やディスプレイを含むこともあり、パーソナルコンピュータ(PC)や、iPad(登録商標)といったタブレットPC、あるいはPDA(Personal Data Assistance)などを例示することができる。
【0026】
図1は、本願発明の主な流れを示すフロー図である。この図に従って、本願発明の概要を説明する。まず2枚の画像を一組とするステレオペア画像を用意する(Step10)。次に、2枚の画像それぞれについて外部標定要素を求める(Step21、Step22)。ここまでの準備が整えば、水平面から所定角度だけ傾けた「傾斜基準面」を設定し、この傾斜基準面に対応した座標系である「傾斜空間座標系」を設定する(Step30)。そして、改めて傾斜空間座標系における外部標定要素を求め(Step41、Step42)、一連の手順によって画像内に含まれる対象物の地上座標を求める。すなわち、ステレオペア画像を用いて照合する対応点を複数(
図1ではN個)同定し(Step50)、前方交会法によって対応点の座標を算出する(Step60)。このとき、座標を算出する座標系は「傾斜空間座標系」が基準となる。この傾斜空間座標系における対象物の地上座標を、今度は水平面を基準とする座標系に変換する(Step70)。Step30〜Step70の一連の処理がひと通り終われば、今度は水平面を傾ける傾斜角度を変えて再度Step30〜Step70の処理を繰り返し行う(Step80)。所定回数だけ処理が繰り返されると、ここまでに求めた対象物の地上座標に基づいて建物の輪郭を抽出し(Step90)、この建物の輪郭を反映させた数値表層モデルを完成させる(Step100)。
【0027】
以下、本願発明の数値表層モデル作成方法、及び数値表層モデル作成装置を、構成する要素ごとに詳述する。
【0028】
(ステレオペア画像)
ここでいう「画像」とは、カメラやビデオ等により撮像した写真や映像の一コマに限らず、レーダーやレーザーによって計測された物理量(反射強度等)を画像化したもの含まれる。また、ステレオペア画像を構成する2枚の画像には同一の対象物が含まれており、それぞれの画像は異なる位置から撮像(レーダーやレーザーの場合は計測)されたものである。なお、ここでは便宜上、航空機から撮影した空中写真を「画像」の例として説明するが、本願発明が空中写真の場合に限られるわけではない。
【0029】
(外部標定)
次に、ステレオペア画像を構成する2枚の空中写真それぞれについて、撮影時のカメラ主点座標及び撮影方向からなる外部標定要素を求める。
図1では、ステレオペア画像のうち一方の空中写真を左画像としてStep21で示し、他方の空中写真を右画像としてStep22で示している。外部標定要素を求めるにあたっては、GPSやIMUを用いたPOS(Position and Orientation System)解析によることもできるし、従来から行われているバンドル調整等を使用した標定によることもできる。なお、外部標定要素が既知であるステレオペア画像を用意できれば本ステップ(Step21、Step22)は省略可能であり、すなわち本願発明を実施するうえで本ステップは必須ではない。
【0030】
(標準空間座標系)
ステレオペア画像それぞれについて外部標定要素と内部標定要素(例えばカメラの諸元等から取得)が得られれば、空中写真内に含まれる地上の対象物(以下、「地上対象物」という。)の地上における座標(以下、「地上座標」という。)を求めることができる。
【0031】
図2は、空中写真測量の概念を示すモデルである。この図に示すように、空中写真から直接得られる情報は、画像内における地上対象物の位置である。具体的には、画像内の任意平面座標系x−y(以下、「写真座標系」という。)における地上対象物の平面座標(P1、P2)のみが取得できる。この平面座標を利用し、さらに情報として左右カメラの標定要素を加えれば、前方交会法によって地上対象物の地上座標Pを算出することができる。
【0032】
このとき、地上座標Pを絶対的に特定するためには「地上で共通する座標系」が必要となる。通常、この座標系としては、
図2に示すX,Y,Zの直交する3軸からなる絶対座標系や、緯度・経度・標高を指標とする測地座標系などが用いられる。いずれにしろ「地上で共通する座標系」は、平面座標系(X−Y、緯度・経度)と鉛直座標軸の組み合わせであり、平面座標系は水平面に配置される。なお本願発明では、「地上で共通する座標系」の他に、これを傾斜させた座標系も用いる。そこでこれらを区別するため、便宜上、上記の「地上で共通する座標系」を「標準空間座標系」と呼び、このうちの平面座標系を「標準平面座標系」と呼ぶこととする。
【0033】
(傾斜基準面の設定)
本願発明では、地上対象物の座標を求めるため「傾斜基準面」を設定する(Step30)。傾斜基準面は、水平面を所定角度だけ傾斜して得られる面であり、この傾斜基準面状に配置されるのが「傾斜平面座標系」であり、これに鉛直軸を加えたものが「傾斜空間座標系」である。
図3は、標準空間座標系と傾斜空間座標系の関係を示すモデルであり、(a)は標準空間座標系を側面から見た側面モデル図、(b)は標準空間座標系を時計まわりに傾斜角θだけ回転して得られる傾斜空間座標系の側面モデル図、(c)は標準空間座標系を反時計まわりに傾斜角θだけ回転して得られる傾斜空間座標系の側面モデル図である。なお、「傾斜基準面」、「傾斜平面座標系」、及び「傾斜空間座標系」は、ステレオペア画像それぞれ別に設定されるのではなく、共通した一つが設定される。
【0034】
図3(b)に示す傾斜空間座標系では、水平面から時計まわりに傾斜角θだけ傾いた傾斜基準面が得られ、その上に配置されるのがXA―YAで示す傾斜平面座標系であり、さらにXA―YAに直交するZA軸を加えたのが傾斜空間座標系である。同様に、
図3(c)に示す傾斜空間座標系では、水平面から反時計まわりに傾斜角θだけ傾いた傾斜基準面が得られ、その上に配置されるのがXB―YBで示す傾斜平面座標系であり、さらにXB―YBに直交するZB軸を加えたのが傾斜空間座標系である。この図では、標準空間座標系のY軸を固定してX軸とZ軸を傾斜させることで傾斜空間座標系を得ているが、これに限らず標準空間座標系のX軸を固定して傾斜させることもできるし、全ての軸を傾斜させて傾斜空間座標系を得ることもできる。要は、標準空間座標系と傾斜空間座標系の間で座標変換できるように、傾斜中心(回転中心)や、傾斜角、傾斜方向が既値となるように傾斜空間座標系を得ればよい。
【0035】
(傾斜空間標定)
傾斜平面座標系、及び傾斜空間座標系が設定できれば、改めてステレオペア画像を構成する2枚の空中写真それぞれについて、撮影時のカメラ主点座標及び撮影方向からなる外部標定要素を求める(Step41、Step42)。Step21とStep22では、標準空間座標系における外部標定要素を求めたのに対して、ここでは傾斜空間座標系における外部標定要素を求める。
図4は、標準空間座標系における外部標定要素の概念を示すモデルであり、
図5は、水平面から時計まわりに傾斜角θだけ傾けた傾斜空間座標系における外部標定要素の概念を示すモデル、
図6は、水平面から反時計まわりに傾斜角θだけ傾けた傾斜空間座標系における外部標定要素の概念を示すモデルである。なお便宜上、
図5と
図6は、傾斜平面座標系(XA―YAにやXB―YB)が水平面となるように表示したため、現実には水平面である地表面が傾斜したように表現されている。
【0036】
図4と
図5、あるいは
図4と
図6を見比べると分かるように、標準空間座標系であれ、傾斜平面座標系であれ、実空間における相対的なカメラの主点位置や撮影方向は変わらない。言い換えれば、地表面や建物に対するカメラ主点位置や撮影方向は、傾斜平面座標系においても標準空間座標系における相対的関係が維持されている。したがって、標準空間座標系における外部標定要素が既値であれば、通常の座標変換計算によって傾斜空間座標系における外部標定要素を算出することができる。なお、傾斜空間座標系における外部標定要素を、便宜上ここでは「傾斜外部標定要素」と呼ぶこととする。具体的には、
図4に示す標準空間座標系におけるカメラ主点の座標を(X1,Y1,Z1)と(X2,Y2,Z2)、撮影方向つまりカメラの姿勢を(ω1,φ1,κ1)と(ω2,φ2,κ2)で表せば、
図5に示す傾斜空間座標系XA―YAにおける傾斜外部標定要素を、座標変換により(Xa1,Ya1,Za1)と(ωa1,φa1,κa1)、(Xa2,Ya2,Za2)と(ωa2,φa2,κa2)として求めることができる。同様に、
図6に示す傾斜空間座標系XB―YBにおける傾斜外部標定要素を、座標変換により(Xb1,Yb1,Zb1)と(ωb1,φb1,κb1)、(Xb2,Yb2,Zb2)と(ωb2,φb2,κb2)として求めることができる。
【0037】
(傾斜空間座標の算出)
傾斜外部標定要素が求められれば、傾斜空間座標系における地上対象物の地上座標を算出することができる。この地上座標の算出は、傾斜空間座標系を基準とすることを除けば従来から用いられている手法によることができる。具体的には、ステレオペア画像それぞれに共通して含まれる地上対象物を同定し(Step50)、傾斜外部標定要素に基づく前方交会法により地上対象物の地上座標を算出する(Step60)。ここで求められる地上座標は傾斜空間座標系における座標であり、ここでは便宜上、「傾斜空間座標」と呼ぶこととする。
【0038】
ステレオペア画像から同一の地上対象物を同定する手法は、既述のとおり従来から用いられている手法で行われ、例えば実体視による手動の図化作業による手法や、画像処理によるイメージマッチングなどが例示できる。もちろん、市販されているソフトウェアを利用することもできる。なお、一組のステレオペア画像から同定される地上対象物は複数(
図1ではN個)存在するのが通常であり、同定されたN個の地上対象物について傾斜空間座標を算出することが望ましい。
【0039】
既述のとおり、3次元座標で構成される数値表層モデルは、同一平面点においては最高点(最も標高値が高い点)のみを構成点としている。したがって従来では建物の壁面上の構成点を設けることがなかったことも既に述べた。本願発明でも、傾斜空間座標を算出する限りにおいては従来技術を採用するため、やはり同一平面点では最高点のみを構成点とする。しかしながら、
図5や
図6に示すように傾斜空間座標系を設定した効果によって、壁面上の点が最高点となり、この結果、建物の壁面上の構成点を備えた数値表層モデルを作成することができる。
【0040】
(標準空間座標の算出)
次に、座標変換によって傾斜空間座標を、標準空間座標系における座標として算出し(Step70)、記憶する。なお、傾斜空間座標に基づいて計算された標準空間座標系における座標を、ここでは便宜上、「標準空間座標」と呼ぶこととする。この標準空間座標は、平面座標と高さからなる3次元座標であり、例えば(X,Y,Z)として表される。さらに、3次元の標準空間座標が得られれば、このうちの平面要素を抽出し「標準平面座標」として記憶する。標準空間座標が(X,Y,Z)として表される場合、標準平面座標は(X,Y)として表される。
【0041】
(複 行)
図5に示すように、建物の壁面上の構成点を取得できるのが本願発明の効果の一つであることは既に述べた。ところが、
図5からもわかるように
、的確に構成点を取得できるのは一方の壁面のみである。もちろん、一方の壁面のみ、あるいは一方の壁面側の建物輪郭のみを必要としている場合は問題とならないが、多くの場合、全ての壁面あるいは建物輪郭の全周を必要とするので、
図5に示す構成点では不足していることになる。
【0042】
そこで、傾斜角の値を変え、新たな傾斜基準面を設定し、改めて傾斜外部標定要素、傾斜空間座標、標準空間座標、及び標準平面座標を算出する。つまり、前回とは異なる傾斜角を設定してStep30〜Step70を繰り返し行う(Step80)。例えば
図6に示すように、
図5とは線対称となるような傾斜基準面を設定すれば、
図5では取得できなかった壁面上の構成点を取得することができる。このように、複数の異なる傾斜基準面を設定するにより、多数の標準空間座標や標準平面座標を記憶することができる。この繰り返し回数は、種々の条件に応じて任意に設計することができる。さらにこれに加えて、傾斜基準面を設定せず従来の方法で、つまり標準空間座標系に基づいて数値表層モデルを作成し、標準空間座標や標準平面座標を記憶すると、建物の天井面等を構成する点群を記憶できるのでより好適となる。
【0043】
(建物の輪郭の抽出)
ここまでで、複数の標準空間座標や標準平面座標が得られており、これらを利用すれば正確かつ容易に建物の輪郭を抽出することができる(Step90)。
図7は、従来技術で求めた点群と本願発明により得られた点群を統合して標準平面座標系に配置し、現実の建物輪郭と対比したモデル図である。従来手法である
図8(b)では建物の輪郭が特定できなかったが、
図7では建物の輪郭の周辺に多数の標準平面座標が配点されているので、明確に建物の輪郭を把握することができる。なお
図7に示す白点Psは従来技術によって求められた点群であり、黒点Pvは本願発明によって得られた標準平面座標である。
【0044】
このように、建物の輪郭の周辺に配置された標準平面座標を用いれば、プログラムによるコンピュータ処理で建物の輪郭を自動抽出することもできる。この場合、標準平面座標の集合を基に、最小二乗法等によって建物の輪郭を構成する線分を抽出したり、従来の画像処理を用いて建物の輪郭を抽出したり、種々の手法を採用することができる。
【0045】
そのほか、標準空間座標を利用して建物の輪郭を自動抽出することもできる。壁面を構成する点群を基に面フィッティングを行い、建物を構成する壁面を特定する。さらに天井面を特定し、この天井面と複数の壁面が交差する線分を求め、この線分により構成されるのが建物の輪郭とすることができる。
【0046】
建物の輪郭が抽出できれば、すなわち建物の大きさ、形状、位置を特定することができるので、これらの情報を反映させればより精細な数値表層モデルを作成することができる(Step100)。
【0047】
(正射投影写真の作成)
数値表層モデルに基づいてオルソ写真を作成することは、従来からも行われていた。具体的には数値表層モデルにテクスチャを貼り付けるわけであるが、建物が倒れこんだ部分は無視されることが多かった。これは、建物の輪郭を自動抽出することができなかったためであり、建物の倒れこみを除去するには人の目視によって建物一つひとつに対して手作業の処理を行う必要があり、莫大な時間と費用を要するのが理由である。
【0048】
ところが本願発明によれば、建物の輪郭を自動抽出することも可能なので、建物の倒れこみを除去した真の正射投影(トゥルーオルソ(登録商標))写真も容易に作成することができる。建物の輪郭が特定できれば、必然的に倒れこんだ壁面部分も取り除けるわけである。また、建物の壁面についても、空中写真への逆変換(バックプロジェクション)処理を行うことでテクスチャを貼り付けることができる。なお、レーザー計測により作成した数値表層モデルに写真のテクスチャを貼り付ける場合など、異なる原資料に基づいて正射投影写真を作成すると、各面の形状と貼り付けるテクスチャに不整合が生じること
が指摘される。本願発明では、数値表層モデルの原資料である空中写真をテクスチャとして用いるため、各面の形状とテクスチャに原理上で不整合を生じることがないという効果がある。