【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.公開物 本願発明者である中村洋之が実質的に発明した内容を含む配布資料「″電子書籍″Carbon Footprint of Products−Product Category Rule of ″e−book″」 2.公開日 平成25年3月25日 3.公開場所 電子書籍PCR策定ワーキンググループ第1回 4.公開者 中村 洋之 〔刊行物等〕 1.公開物 本願発明者である中村洋之が実質的に発明した内容を含む配布資料「″電子書籍″Carbon Footprint of Products−Product Category Rule of ″e−book″」 2.公開日 平成25年4月2日 3.公開場所 電子書籍PCR策定ワーキンググループ第2回 4.公開者 中村 洋之 〔刊行物等〕 1.公開物 本願発明者である中村洋之が実質的に発明した内容を含む配布資料「″電子書籍″Carbon Footprint of Products−Product Category Rule of ″e−book″」 2.公開日 平成25年4月11日 3.公開場所 電子書籍PCR策定ワーキンググループ第3回 4.公開者 中村 洋之 〔刊行物等〕 1.公開物 本願発明者である中村洋之が実質的に発明した内容を含む配布資料「″電子書籍″Carbon Footprint of Products−Product Category Rule of ″e−book″」 2.公開日 平成25年4月18日 3.公開場所 電子書籍PCR策定ワーキンググループ第4回 4.公開者 中村 洋之
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、前記電子メディアのダウンロード回数が前記予測したダウンロード回数を超えた場合の前記第2排出量と前記第3排出量との合算により算出される前記合算量と、前記一定量とを対応づけて提示することを特徴とする請求項2に記載の温室効果ガス排出量提示方法。
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、前記電子メディアのダウンロード回数が前記予測したダウンロード回数を超えた場合の前記第2排出量と前記第3排出量との合算により算出される前記合算量と前記一定量との差分を提示することを特徴とする請求項2に記載の温室効果ガス排出量提示方法。
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、前記差分に応じた対価をユーザに提供するか、または前記差分に応じて温室効果ガス削減活動資金を増額することを特徴とする請求項4に記載の温室効果ガス排出量提示方法。
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、ダウンロード回数と前記合算量との対応関係を示すグラフまたはテーブルを提示するとともに、前記グラフまたはテーブル中に、今回のダウンロード回数と対応する前記合算量とを明示することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の温室効果ガス排出量提示方法。
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、ダウンロード回数が前記予測したダウンロード回数に達するまでは前記合算量を前記一定量にし、前記予測したダウンロード回数を超えるとダウンロード回数が増えるに従って前記合算量を減少させることを示す、ダウンロード回数と前記合算量との対応関係を示すグラフまたはテーブルを提示するとともに、前記グラフまたはテーブル中に、今回のダウンロード回数と対応する前記合算量とを明示することを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の温室効果ガス排出量提示方法。
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、ユーザが前記電子メディアをダウンロードする前または後に、そのダウンロードを行う際の前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の温室効果ガス排出量提示方法。
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、現時点でのダウンロード回数により算出された前記合算量に基づく前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の温室効果ガス排出量提示方法。
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、前記電子メディアの製品番号、前記電子メディアをダウンロードした際のダウンロード回数を示すダウンロード番号、前記電子メディアの発注番号、決済番号または納品番号、あるいは前記電子メディアをダウンロードした日時情報を、前記合算量と対応づけて提示することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の温室効果ガス排出量提示方法。
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、前記電子メディアに前記カーボンフットプリント情報を付加したデータを前記情報通信機器にダウンロードさせることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の温室効果ガス排出量提示方法。
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、前記電子メディアをダウンロードした前記情報通信機器に前記カーボンフットプリント情報または前記カーボンフットプリント情報を提供するサイトのURL(Universal Resource Locator)アドレスを表示させることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の温室効果ガス排出量提示方法。
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、ユーザがダウンロードした前記電子メディアの電子決済情報または電子納品情報に前記カーボンフットプリント情報または前記カーボンフットプリント情報を提供するサイトのURL(Universal Resource Locator)アドレスを含めてユーザに提示することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の温室効果ガス排出量提示方法。
情報通信機器で閲覧または再生可能な電子メディアのコンテンツを生産および流通する際に排出される温室効果ガスの排出量を二酸化炭素の排出量に換算した第1排出量を算出する第1排出量算出部と、
前記第1排出量を、対応する前記電子メディアのコンテンツを電子メディア提供装置からダウンロードした回数にて割った値に、個々の電子メディアの使用段階での温室効果ガスの排出量を加算した第2排出量を算出する第2排出量算出部と、
前記情報通信機器の原材料調達、生産、流通および使用を経て廃棄またはリサイクルまでに排出される温室効果ガスの排出量を二酸化炭素の排出量に換算した第3排出量を算出する第3排出量算出部と、
前記第2排出量と前記第3排出量とを合算した合算量を算出する合算量算出部と、
前記合算量に基づくカーボンフットプリント情報を、対応する前記電子メディアをダウンロード指示したユーザに提示するカーボンフットプリント提示部と、を備えることを特徴とする温室効果ガス排出量提示装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近、電子書籍が急速に普及している。電子書籍は、紙を消費しない点で、地球環境の保全に貢献しているとも言えるが、電子書籍を生産するには、文字や画像の入力作業や編集作業をコンピュータ等の情報処理装置上で行わなければならず、また、生産した電子書籍を配信する際には通信装置を用いなければならない。また、電子書籍を購入した購入者は、専用端末や汎用の携帯端末等の種々の情報通信機器を利用して電子書籍を閲覧することから、紙の書籍を生産するよりも、情報処理装置、通信装置および情報通信機器等の使用時間が増大する。よって、これらの装置を生産して使用する場合等に排出される温室効果ガスをできるだけ削減することが望まれる。
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1を含めて従来は、電子書籍の生産から使用までに排出される温室効果ガスと、電子書籍の閲覧または再生を行う情報通信機器の部品材料の調達から廃棄またはリサイクルまでに排出される温室効果ガスとを適切に見積もって購入者に提示する具体的な手法が提案されていないのが実情である。
【0007】
また、電子書籍は、紙の書籍と異なり、販売数が増えても、電子書籍本体の温室効果ガスの排出量は増えない。したがって、販売数が増えるに従って、電子書籍一つ当たりの温室効果ガスの排出量は減るはずであるが、このような電子書籍特有の事情を考慮して温室効果ガスの排出量を算出して提示する例は従来提案されていない。
【0008】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、電子メディアとその閲覧または再生を行う情報通信機器にて排出される温室効果ガスを適切に見積もって提示することが可能な温室効果ガス排出量提示方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る温室効果ガス排出量提示方法は、情報通信機器で閲覧または再生可能な電子メディアのコンテンツを生産および流通する際に排出される温室効果ガスの排出量を二酸化炭素の排出量に換算した第1排出量を個々の電子メディアごとに算出するステップと、
前記第1排出量を、対応する前記電子メディアのコンテンツを電子メディア提供装置からダウンロードした回数にて割った値に、個々の電子メディアの使用段階での温室効果ガスの排出量を加算した第2排出量を算出するステップと、
前記情報通信機器の原材料調達、生産、流通および使用を経て廃棄またはリサイクルまでに排出される温室効果ガスの排出量を二酸化炭素の排出量に換算した第3排出量を算出するステップと、
前記第2排出量と前記第3排出量とを合算した合算量を算出するステップと、
前記合算量に基づくカーボンフットプリント情報を、対応する前記電子メディアをダウンロード指示したユーザに提示するステップと、を備える。
【0010】
前記電子メディアのそれぞれごとにダウンロード回数を予測して、予測したダウンロード回数に達するまでは、対応する前記電子メディアにおける前記合算量をダウンロード回数によらず一定量にするステップを備えてもよく、
前記第2排出量を算出するステップは、前記電子メディアのダウンロード回数が前記予測したダウンロード回数を超えた場合に、ダウンロード回数が増えるに従って前記第2排出量を減少させてもよい。
【0011】
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、前記電子メディアのダウンロード回数が前記予測したダウンロード回数を超えた場合の前記第2排出量と前記第3排出量との合算により算出される前記合算量と、前記一定量とを対応づけて提示してもよい。
【0012】
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、前記電子メディアのダウンロード回数が前記予測したダウンロード回数を超えた場合の前記第2排出量と前記第3排出量との合算により算出される前記合算量と、前記一定量との差分を提示してもよい。
【0013】
前記差分に応じた対価をユーザに提供するか、または前記差分に応じて温室効果ガス削減活動資金を増額するステップを備えてもよい。
【0014】
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、ダウンロード回数と前記合算量との対応関係を示すグラフまたはテーブルを提示するとともに、前記グラフまたはテーブル中に、今回のダウンロード回数と対応する前記合算量とを明示してもよい。
【0015】
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、ダウンロード回数が前記予測したダウンロード回数に達するまでは前記合算量を前記一定量にし、前記予測したダウンロード回数を超えるとダウンロード回数が増えるに従って前記合算量を減少させることを示す、ダウンロード回数と前記合算量との対応関係を示すグラフまたはテーブルを提示するとともに、前記グラフまたはテーブル中に、今回のダウンロード回数と対応する前記合算量とを明示してもよい。
【0016】
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、ユーザが前記電子メディアをダウンロードする前または後に、そのダウンロードを行う際の前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示してもよい。
【0017】
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、現時点でのダウンロード回数により算出された前記合算量に基づく前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示してもよい。
【0018】
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、前記電子メディアの製品番号、前記電子メディアをダウンロードした際のダウンロード回数を示すダウンロード番号、前記電子メディアの発注番号、決済番号または納品番号、あるいは前記電子メディアをダウンロードした日時情報を、前記合算量と対応づけて提示してもよい。
【0019】
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、前記電子メディアに前記カーボンフットプリント情報を付加したデータを前記情報通信機器にダウンロードさせてもよい。
【0020】
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、前記電子メディアをダウンロードした前記情報通信機器に前記カーボンフットプリント情報または前記カーボンフットプリント情報を提供するサイトのURL(Universal Resource Locator)アドレスを表示させてもよい。
【0021】
前記カーボンフットプリント情報をユーザに提示するステップは、ユーザがダウンロードした前記電子メディアの電子決済情報または電子納品情報に前記カーボンフットプリント情報または前記カーボンフットプリント情報を提供するサイトのURLアドレスを含めてユーザに提示してもよい。
【0022】
本発明の一態様による温室効果ガス排出量提示装置は、情報通信機器で閲覧または再生可能な電子メディアのコンテンツを生産および流通する際に排出される温室効果ガスの排出量を二酸化炭素の排出量に換算した第1排出量を算出する第1排出量算出部と、
前記第1排出量を、対応する前記電子メディアのコンテンツを電子メディア提供装置からダウンロードした回数にて割った値に、個々の電子メディアの使用段階での温室効果ガスの排出量を加算した第2排出量を算出する第2排出量算出部と、
前記情報通信機器の原材料調達、生産、流通および使用を経て廃棄またはリサイクルまでに排出される温室効果ガスの排出量を二酸化炭素の排出量に換算した第3排出量を算出する第3排出量算出部と、
前記第2排出量と前記第3排出量とを合算した合算量を算出する合算量算出部と、
前記合算量に基づくカーボンフットプリント情報を、対応する前記電子メディアをダウンロード指示したユーザに提示するカーボンフットプリント提示部と、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電子メディアとその閲覧または再生を行う情報通信機器にて排出される温室効果ガスを適切に見積もって提示することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0026】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る温室効果ガス排出量提示装置1の概略構成を示すブロック図である。
図1の温室効果ガス排出量提示装置1は、電子書籍等の電子メディアのコンテンツを生産してからユーザに提供するまでに排出される温室効果ガスの排出量と、ユーザが電子メディアを閲覧または再生するのに使用する情報通信機器2の原材料の調達から廃棄またはリサイクルまでに排出される温室効果ガスの排出量とを合算して、ユーザに提示することを特徴としている。
【0027】
ここで、電子メディアとは、書籍や出版物の情報をデジタル化し、インターネット等のネットワーク10を通じて情報通信機器2の表示画面上で閲覧または再生可能なデジタルデータの総称である。電子メディアには、例えば、電子書籍、電子雑誌、電子新聞、電子カタログ、電子チラシ等の文字記号数字情報および静止画像情報の他に、動画像情報や音声情報も含まれる。電子メディアの具体的なデータ形式は特に問わない。また、電子メディアのコンテンツとは、電子メディアを構成する文字数字記号のコード情報と、画像情報と、音声情報と、電子メディアを情報通信機器2に表示するのに必要な種々の書式情報とを含むデータである。
【0028】
情報通信機器2は、上述した電子メディアの内容を閲覧または再生可能な通信機能を有する電子機器であり、例えば、電子メディアの販売業者が提供する専用端末や、汎用の携帯電話やスマートフォン、タブレット、PCなどである。
【0029】
ユーザに提示とは、温室効果ガスの排出量を何等かの表示形態で表示させる場合や、音声で通知する場合、データとして記録する場合など、種々の提示方法が考えられ、具体的な提示方法は問わない。
【0030】
本明細書では、電子メディアを閲覧または再生するユーザは、電子メディアの提供先である電子メディア提供装置3から、インターネット等のネットワーク10経由で、特定の電子メディアを情報通信機器2にダウンロードすることを念頭に置いている。電子メディア提供装置3は、例えばインターネット上の特定のURLアドレスに電子メディアの販売サイトを有するサーバである。なお、個々の電子メディアごとに商品価値が異なるため、電子メディアは、ユーザに対して有料で提供する場合と、無料で提供する場合がありうる。よって、電子メディア提供装置3は、必ずしも、電子メディアの販売を目的としたものとは限らない。
【0031】
図1の温室効果ガス排出量提示装置1は、例えば、インターネット経由で電子メディアを提供する電子メディア提供装置3に内蔵される。あるいは、電子メディア提供装置3とは別個の装置内に
図1の温室効果ガス排出量提示装置1を設けてもよい。また、
図1の温室効果ガス排出量提示装置1が行う処理動作を複数の装置で分散して行ってもよい。例えば、情報通信機器2の原材料調達から廃棄またはリサイクルまでに排出される温室効果ガスの排出量を、情報通信機器2の製造または販売メーカが算出して、その算出情報を電子メディア提供装置3に送信するようにしてもよい。すなわち、温室効果ガス排出量提示装置1は、算出すべき温室効果ガスの排出量の少なくとも一部については、外部から提供を受けてもよい。
【0032】
図1の温室効果ガス排出量提示装置1が取り扱う温室効果ガスは、例えば、京都議定書で対象とされたCO
2、CH
4、N
20、HFCs、PFCs、SF
6の6種類である。なお、これら以外のガスを対象に含めてもよい。本実施形態は、これらの温室効果ガスの排出量をCO
2すなわち二酸化炭素に換算して提示する。
【0033】
図1の温室効果ガス排出量提示装置1は、第1排出量算出部4と、第2排出量算出部5と、第3排出量算出部6と、合算量算出部7と、CFP提示部8とを備えている。
【0034】
第1排出量算出部4は、情報通信機器2で閲覧または再生可能な電子メディアのコンテンツを生産および流通するのに要する温室効果ガスの排出量を二酸化炭素の排出量に換算した第1排出量を個々の電子メディアごとに算出する。
【0035】
第2排出量算出部5は、第1排出量を、対応する電子メディアを電子メディア提供装置3からダウンロードした回数で割った値に使用段階での温室効果ガスの排出量を加算した第2排出量を算出する。この第2排出量は、個々の電子メディアのコンテンツの生産、流通および使用段階での合算した温室効果ガスの排出量に相当する。
【0036】
第3排出量算出部6は、対象とする電子メディアに起因する情報通信機器2の原材料調達、生産、流通および使用を経て廃棄またはリサイクルまでの温室効果ガスの排出量を二酸化炭素の排出量に換算した第3排出量を算出する。
【0037】
合算量算出部7は、第2排出量と第3排出量を合算した合算量を算出する。
【0038】
CFP提示部8は、合算量に基づくカーボンフットプリント情報(以下、CFP情報)を、対応する電子メディアをダウンロード指示したユーザに提示する。後述するように、CFP提示部8は、合算量算出部7が算出した合算量の数値をそのまま提示してもよいし、合算量をグラフやテーブル等を用いて提示してもよい。
【0039】
図2は電子メディアのコンテンツおよび情報通信機器2のライフサイクルフロー図である。図示のように、ライフサイクルは、原材料調達段階と、生産段階と、流通段階と、使用段階と、廃棄またはリサイクル段階との5つの段階に分けられており、各段階ごとに温室効果ガスの排出量を算出する必要がある。
【0040】
電子メディアは、無体物のデータであるため、原材料調達段階と、廃棄またはリサイクル段階とは省略して考えることができる。電子メディアの生産段階LC1では、電子メディアの元材料である書籍類のデジタル化とシステム構築作業の際に排出される温室効果ガスが対象となる。電子メディアの流通段階LC2では、構築したシステムの運用作業の際に排出される温室効果ガスが対象となる。電子メディアの使用段階LC3では、不特定多数のユーザからダウンロード要求があると、その要求に応じて、各ユーザへの電子メディアのダウンロード提供が行われるが、その際に排出される温室効果ガスが対象となる。
【0041】
電子メディアを閲覧または再生する情報通信機器2の原材料の調達段階LC4では、情報通信機器2の構成部品や基本ソフトウェア等の調達作業を行う際に排出される温室効果ガスが対象となる。情報通信機器2の生産段階LC5では、情報通信機器2の製造作業の際に排出される温室効果ガスが対象となる。情報通信機器2の流通段階LC6では、完成した情報通信機器2を販売先を経由して購入者まで輸送する作業を行う際に排出される温室効果ガスが対象となる。情報通信機器2の使用段階LC7では、情報通信機器2の購入者が情報通信機器2を起動して、電子メディアの閲覧または再生が行われるが、その際に排出される温室効果ガスが対象となる。情報通信機器2の廃棄またはリサイクル段階LC8では、不要となった情報通信機器2の廃棄またはリサイクル作業を行う際に排出される温室効果ガスが対象となる。
【0042】
このように、電子メディアのコンテンツと情報通信機器2のそれぞれについて、
図2に示した各段階で温室効果ガスの排出が行われる。そこで、
図1の第1排出量算出部4は、電子メディアのコンテンツの生産段階から使用段階までの温室効果ガスの排出量である第1排出量を算出し、第2排出量算出部5は、個々の電子メディアのコンテンツの生産、流通および使用段階での合算した温室効果ガスの排出量である第2排出量を算出する。また、第3排出量算出部6は、情報通信機器2の原材料の調達段階から廃棄またはリサイクル段階までの温室効果ガスの排出量である第3排出量を算出する。
【0043】
以下に具体的な算出例を説明する。第1排出量算出部4は、以下の(1)式に基づいて、電子メディアのコンテンツの生産段階から使用段階までの温室効果ガスの排出量である第1排出量を算出する。
【0044】
第1排出量=Pd(kg−CO
2)+Dd(kg−CO
2) …(1)
【0045】
ここで、Pd(kg−CO
2)は、電子メディアのコンテンツの生産段階での温室効果ガスを二酸化炭素の排出量に換算した重量値、Dd(kg−CO
2)は、電子メディアのコンテンツの流通段階での温室効果ガスを二酸化炭素の排出量に換算した重量値である。
【0046】
第2排出量算出部5は、以下の(2)式に基づいて、個々の電子メディアのコンテンツの生産、流通および使用段階での合算した温室効果ガスの排出量である第2排出量を算出する。
【0047】
第2排出量=第1排出量/N+Ud(kg−CO
2) …(2)
【0048】
ここで、Nは対応する電子メディアのダウンロード回数、Ud(kg−CO
2)は1ダウンロード当たりのCO
2の排出量である。
【0049】
第3排出量算出部6は、以下の(3)式に基づいて、情報通信機器2の原材料の調達段階から廃棄またはリサイクル段階までの温室効果ガスの排出量である第3排出量を算出する。
【0050】
第3排出量=Mm(kg−CO
2)+Pm(kg−CO
2)+Dm(kg−CO
2)
+Um(kg−CO
2)+Em(kg−CO
2) …(3)
【0051】
ここで、Mm(kg−CO
2)、Pm(kg−CO
2)、Dm(kg−CO
2)、Um(kg−CO
2)、Em(kg−CO
2)はそれぞれ、対応する電子メディアの閲覧または再生に使用する情報通信機器2の原材料の調達段階、生産段階、流通段階、使用および維持管理段階、廃棄またはリサイクル段階での温室効果ガスを二酸化炭素の排出量に換算した重量値である。
【0052】
ユーザが電子メディアの閲覧または再生に使用する情報通信機器2は種類が多く、そのすべてについて、上述した第3排出量を算出するのは容易ではない。そこで、代表的な情報通信機器2についての第3排出量を算出して、その算出した第3排出量を、すべての情報通信機器2について適用してもよい。また、上述したように、情報通信機器2の製造または販売メーカ等が予め算出した第3排出量を受け取って、その値を利用してもよい。
【0053】
合算量算出部7は、以下の(4)式に基づいて、合算量を算出する。
【0054】
合算量=第2排出量+第3排出量
=[{Pd(kg−CO
2)+Dd(kg−CO
2)}÷N]+Ud(kg−CO
2)
+Mm(kg−CO
2)+Pm(kg−CO
2)+Dm(kg−CO
2)
+Um(kg−CO
2)+Em(kg−CO
2) …(4)
【0055】
CFP提示部8は、上述した(4)式にて算出された合算量をCFP情報として、対応する電子メディアのユーザに提示する。以下では、電子メディアをユーザに提示する具体的な手法について説明する。
【0056】
まず、ユーザにCFP情報を提示するタイミングとしては、例えば以下の1.1〜1.3の3通りが考えられる。
【0057】
1.1)ユーザが電子メディアをダウンロードする前に、ダウンロードする場合のCFP情報をユーザに提示する。ダウンロードする前にCFP情報を提示するのは、CFP情報を事前にユーザに知らせて、提示したCFP情報により、ダウンロードするべきか否かの選択の余地をユーザに与えるためである。また、CFP情報の事前提示により、地球環境の保全に熱心に取り組んでいるという姿勢をユーザに伝えて、ダウンロードを促す販売プロモーションとしても利用できる。
【0058】
1.2)ユーザが電子メディアをダウンロードする際に、CFP情報をユーザに提示する。
【0059】
1.3)ユーザが電子メディアをダウンロードする際、あるいはそれ以降の任意の時点で、ユーザからの要求に応じて、その時点でのCFP情報をユーザに提示する。1.3を設けたのは、過去に電子メディアをダウンロードしたユーザに最新のCFP情報を提供して、CFP情報がどのように変化したかをユーザに知らせるためである。
【0060】
上述した(4)式からわかるように、同じ電子メディアであっても、ダウンロード回数によって、合算量が変化する。よって、(4)式で算出した合算量と、ダウンロードした電子メディアとの対応づけが必要となる。対応付けの具体的な手法としては、例えば以下の2.1〜2.4の4通りが考えられる。
【0061】
2.1)ダウンロードされた個々の電子メディアを識別する製品番号またはダウンロード番号とCFP情報とを対応づける。
【0062】
2.2)ダウンロードされた電子メディアの発注番号、決済番号または納品番号等とCFP情報とを対応づける。
【0063】
2.3)同じ日にダウンロードされた電子メディアをグループ化して、各グループごとにCFP情報と対応づける。
【0064】
2.4)ユーザがダウンロードした電子メディアそのものに、CFP情報を付加する。
【0065】
ところで、電子メディアをダウンロードしたユーザに提示するCFP情報は、上述した(4)式で算出した合算量だけとは限らない。電子メディアを有料で販売する業者は、個々の電子メディアごとに、販売数すなわちダウンロード回数を予め予測して、販売計画を立てることが多い。この場合、ユーザが実際に購入すなわちダウンロードを行わなくても、温室効果ガスの排出量をある程度予測できる。
【0066】
図3(a)は上述した(4)式で算出された合算量のグラフ、
図3(b)はダウンロード回数を予測する場合の合算量のグラフである。これらのグラフの横軸はダウンロード回数、縦軸は合算量である。
【0067】
(4)式で算出される合算量は、
図3(a)に示すように、ダウンロード回数が増えるに従って線形に減少する。これに対して、ダウンロード回数を予測する場合の合算量は、
図3(b)に示すように、ダウンロード回数がその予測数に達するまでは一定値であり、その後はダウンロード回数が増えるに従って線形に減少する。線形に減少する領域では、上述した(4)式に基づいて合算量を算出してもよいし、別の計算式に基づいて合算量を算出してもよい。
【0068】
このように、ユーザに提示すべきCFP情報としては、ダウンロード回数の予測を行わずに(4)式で算出した合算量と、ダウンロード回数の予測を行って算出した合算量との2種類がある。そこで、ユーザに提示するCFP情報の提示形態としては、例えば以下の3.1〜3.4の4通りが考えられる。
【0069】
3.1)ダウンロード回数に応じて変化する合算量に基づくCFP情報と、予め予測したダウンロード回数に基づくCFP情報とを併記して提示する。この場合、例えば
図4のような表示形態で、2つのCFP情報を並べて提示する。これにより、ユーザは両方のCFP情報の差分を把握できる。この差分の利用方法については、後述する。
【0070】
3.2)
図3(a)のグラフを提示するとともに、このグラフ上に、今回ダウンロードする際の合算量をプロットする。
【0071】
3.3)
図3(b)のグラフを提示するとともに、このグラフ上に、今回ダウンロードする際の合算量をプロットする。
【0072】
3.4)上述した(4)式で算出した合算量と、ダウンロード予測回数に基づく合算量との差分に応じた対価をユーザに提供するか、あるいは差分に応じて温室効果ガス削減活動資金を増額する旨の提示を行う。対価は、換金性のある電子情報、例えばポイントなどでもよい。
【0073】
なお、上述した3.3と3.4では、グラフの代わりに、ダウンロード回数と合算量とを対応づけたテーブルを提示して、このテーブル中に、今回ダウンロードする際の合算量を明示してもよい。
【0074】
図5は(4)式で算出した合算量とダウンロード予測回数に基づく合算量との差分を説明する図である。図示のように、実際のダウンロード回数がダウンロード予測回数を超えると、ダウンロード回数が増えるに従って、合算量は減少するが、このときの合算量と、ダウンロード予測回数の範囲内での一定値との差分が大きいほど、温室効果ガスの削減効果が大きいことを示している。そこで、上述した3.4では、差分の大きさに応じて、何等かの対価をユーザに提供したり、あるいは、電子メディアの提供業者が管理運営している温室効果ガス削減活動資金に、差分に応じた金額を提供業者自ら上乗せして、活動資金を増額するものである。
【0075】
このように、ユーザに対して、差分の情報を提示することで、電子メディアでは、ダウンロード回数が増えるほど、1ダウンロード当たりの温室効果ガスの排出量が減少していくことをユーザに理解させることができるとともに、電子メディアの販売促進に役立てることもできる。
【0076】
上述したCFP情報は、上述した1.1〜1.3のいずれかのタイミングで、ユーザが閲覧または再生に使用する情報通信機器2に表示するようにしてもよい。このとき、上述した2.1〜2.4のいずれかの対応づけを行って、上述した3.1〜3.4のいずれかの表示形態にてCFP情報を表示させる。
【0077】
なお、CFP情報の表示は、ユーザが所持する情報通信機器2の表示画面上で行ってもよいし、情報通信機器2の表示画面には、CFP情報提示を行うURL情報のみを表示させ、ユーザがこのURL情報に従ってインターネットアクセスを行うと、特定のサイトのホームページ上に上述した3.1〜3.4のいずれかの表示形態でCFP情報が表示されるようにしてもよい。このURL情報は、パーソナルURL(PURL)情報でもよい。
【0078】
CFP情報の表示を、ユーザが所持する情報通信機器2の表示画面上で行う場合は、電子メディアのコンテンツのヘッダやフッタ情報にCFP情報を付加したり、電子メディアに電子透かし等の技術を利用してCFP情報を付加しておき、ユーザが電子メディアをダウンロードする際に、合わせてCFP情報も自動的にダウンロードされるようにしておけばよい。
【0079】
あるいは、ユーザが電子メディアをダウンロードする際に、予め登録してあるユーザの電子メールアドレス宛に、CFP情報またはCFP情報の提供先URL情報を送信してもよい。
【0080】
なお、CFP情報またはCFP情報を提供するURL情報を、バーコードやQRコード等によるコード情報の形態でユーザに提示してもよい。あるいは、電子メディア提供装置3が提供する各ユーザごとの仮想本棚上に、各ユーザが購入した電子メディアとともにCFP情報を表示させてもよい。あるいは、電子メディア提供装置3が提供する電子メディアの販売カタログ等に電子メディアととともにCFP情報を表示させてもよい。
【0081】
このように、第1の実施形態では、ユーザが電子メディア提供装置3から電子メディアをダウンロードしたときに、その電子メディアの生産から使用までに排出される温室効果ガスの排出量をダウンロード回数で割った値に基づいて算出したCFP情報をユーザに提示するため、ユーザは電子メディアのダウンロードと閲覧再生によってどの程度の温室効果ガスが排出されるのかを把握できるようになり、地球環境の保全に対する意識をユーザに根付かせることができる。また、電子メディアの1ダウンロードあたりの温室効果ガスの排出量がダウンロード回数が増えるほど減っていく性質があることをユーザに理解させることができ、電子メディアの利用促進を促すこともできる。
【0082】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、電子メディアをユーザに提供する電子メディア提供装置3がユーザに対してCFP情報を提供する例を説明したが、電子メディア提供装置3以外の装置がCFP情報を提供してもよい。以下に説明する第2の実施形態は、電子メディア提供装置3とは別個に、有料の電子メディアの決済処理を行う電子決済装置を設けるものである。
【0083】
図6は本発明の第2の実施形態に係る温室効果ガス排出量提示装置1の概略構成を示すブロック図である。
図6の温室効果ガス排出量提示装置1の内部構成は、
図1の温室効果ガス排出量提示装置1と同様であるが、
図6の温室効果ガス排出量提示装置1は電子メディア提供装置3と電子決済装置11との2つに分散して設けられる。より具体的には、温室効果ガス排出量提示装置1内の第1排出量算出部4、第2排出量算出部5、第3排出量算出部6および合算量算出部7は電子メディア提供装置3の内部に設けられ、CFP提示部8は電子決済装置11の内部に設けられる。あるいは、第1排出量算出部4、第2排出量算出部5、第3排出量算出部6および合算量算出部7の少なくとも一部を電子決済装置11の内部に設けてもよい。
【0084】
本実施形態による電子決済装置11には、決済処理を行う装置だけでなく、他の種々の電子商取引を行う装置も含まれる。電子商取引を行う装置は、EC(Electronic Commerce)装置と呼ばれるものも含まれるし、ASP(Application Service Provider)装置でもよい。また、API(Application Program Interface)等のソフトウェアモジュールに本実施形態に係る温室効果ガス排出量提示装置1の機能を含めてもよい。
【0085】
電子メディア提供装置3と電子決済装置11は、インターネット等の公衆ネットワークまたは専用ネットワーク(以下、単にネットワークと呼ぶ)10に接続されており、ユーザが購入した有料の電子メディアの決済情報はネットワーク10を介して電子決済装置11に伝送される。また、合算量算出部7が算出した合算量に基づくCFP情報も、ネットワーク10を介して電子決済装置11に伝送される。その際、上述した2.1〜2.4のいずれかによる対応づけを行った上でCFP情報と電子メディアの決済情報とが電子決済装置11に伝送される。電子決済装置11は、例えばユーザの会員情報からユーザの電子メールアドレスを取得して、電子請求書を発行し、この電子請求書のヘッダやフッタにCFP情報を付加したり、電子請求書の中に例えば電子透かしの技術を利用してCFP情報を埋め込んで、例えば電子メールの添付ファイルとしてその電子請求書をユーザに送信する。ユーザは、電子請求書を専用のソフトウェアで開いたときに、CFP情報も合わせて確認できる。
【0086】
なお、電子請求書の代わりに、電子決済が終了したことを示す電子決済報告書のヘッダやフッタにCFP情報を付加したり、電子決済報告書に電子透かし等によりCFP情報を含めてもよい。あるいは、電子決済装置11が電子的に発行および送信する他の電子書類にCFP情報を含めてもよい。
【0087】
電子決済装置11が電子請求書等に埋め込むCFP情報は、例えば上述した3.1〜3.4のいずれかの形式でもよいし、他の形式を採用してもよい。
【0088】
このように、第2の実施形態では、電子メディアを提供する電子メディア提供装置3ではなく、電子決済装置11が発行する電子請求書や電子決済報告書などにCFP情報を埋め込んで、電子メディアをダウンロードしたユーザに送信するため、ユーザはダウンロードした電子メディアの決済処理をする際にCFP情報を確認でき、温室効果ガスの削減に対する意識を根付かせることができる。
【0089】
上述した実施形態で説明した温室効果ガス排出量提示装置1の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、温室効果ガス排出量提示装置1の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0090】
また、温室効果ガス排出量提示装置1の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0091】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。