(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238154
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】管路施設のケーブル敷設構造及びそれに使用する耐震用固定具
(51)【国際特許分類】
E03F 3/06 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
E03F3/06
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-139129(P2013-139129)
(22)【出願日】2013年7月2日
(65)【公開番号】特開2015-10458(P2015-10458A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220675
【氏名又は名称】東京都下水道サービス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500343371
【氏名又は名称】一般社団法人日本下水道光ファイバー技術協会
(73)【特許権者】
【識別番号】513166983
【氏名又は名称】株式会社エヌ・エス・シー・エンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】000165424
【氏名又は名称】株式会社コンセック
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(72)【発明者】
【氏名】中村 敏信
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊男
(72)【発明者】
【氏名】星崎 紀一
(72)【発明者】
【氏名】織田 敬治
(72)【発明者】
【氏名】小西 健太郎
【審査官】
竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−059939(JP,A)
【文献】
発明協会公開技報公技番号2006−503194
【文献】
特開2013−090397(JP,A)
【文献】
特開2002−317883(JP,A)
【文献】
特開平10−66238(JP,A)
【文献】
特開2013−5706(JP,A)
【文献】
特開2003−32821(JP,A)
【文献】
米国特許第03861631(US,A)
【文献】
米国特許第05639049(US,A)
【文献】
米国特許第04776138(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 3/06、7/00
E21D 11/00、21/00
F16L 3/00−3/24
H02G 1/06−3/30、9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路の途中に縦向き筒状の立穴構造物を有する管路施設にケーブルを敷設するための構造であって、
前記ケーブルの立穴構造物内に敷設される部分に、各管渠用管体より前記立穴構造物内壁に沿って上方に引き出した直線部と、該一方の直線部の上端から他方の直線部の上端に亘って立穴構造物の内周に沿って円弧状に配置した曲線部とを備え、前記両直線部及び曲線部を複数の固定具によって前記立穴構造物内壁に固定するようにした管路施設のケーブル敷設構造において、
前記複数の固定具の一部又は全部に耐震用固定具を使用し、
該耐震用固定具は、弾性を有する合成樹脂材によって一体成形され、長手方向の一端がアンカー式固定部材によって立穴構造物の内側面に固定される固定片と、該固定片の長手方向他端表面に突設され、前記ケーブルを把持するケーブル把持部とを備え、
該ケーブル把持部の突端部に着脱用開口部を備え、前記ケーブルに一定以上の力が作用した際に前記ケーブルがケーブル把持部から離脱するようにしたことを特徴としてなる管路施設のケーブル敷設構造。
【請求項2】
前記直線部の下端を前記耐震用固定具で前記立穴構造物内壁に固定した請求項1に記載の管路施設のケーブル敷設構造。
【請求項3】
前記直線部と前記曲線部とに跨る部分の両側をそれぞれ前記耐震用固定具で固定した請求項1又は2に記載の管路施設のケーブル敷設構造。
【請求項4】
前記直線部が前記立穴構造物を構成する互いに連続するブロック間に跨って配置され、前記直線部の前記両ブロック間に跨った部分の両側をそれぞれ前記耐震用固定具で固定した請求項1、2又は3に記載の管路施設のケーブル敷設構造。
【請求項5】
前記耐震用固定具は、前記ケーブルのケーブル軸方向の移動を許容した状態に該ケーブルを把持するようにした請求項1〜3又は4に記載の管路施設のケーブル敷設構造。
【請求項6】
請求項1〜4又は5の管理施設のケーブル敷設構造に使用する耐震用固定具であって、
一端をアンカー式固定部材によって前記立穴構造物に固定する固定片と、該固定片の他端表面に一体に突設されて前記ケーブルが挿通されるケーブル把持部とを備え、
該ケーブル把持部の突端部に着脱用開口部を備え、前記ケーブルに一定以上の力が作用することによって、前記ケーブルが前記着脱用開口部を押し広げて前記ケーブル把持部より離脱するようにしたことを特徴としてなる耐震用固定具。
【請求項7】
前記ケーブル把持部の両端開口縁部に面取り加工によってせん断用ケーブル保護部を備えた請求項6に記載の耐震用固定具。
【請求項8】
前記着脱用開口部の内側縁部に面取り加工によって着脱用ケーブル保護部を備えた請求項6又は7に記載の耐震用固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道等の管路施設に光ファイバーケーブル等のケーブルを敷設するための管路施設のケーブル敷設構造及びそれに使用する耐震用固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットやデジタル放送に代表されるデジタル情報通信技術の発展に伴い、高速且つ大容量の情報通信を可能にする光ファイバーケーブル等を用いたケーブルネットワークの整備が推進されている。
【0003】
また、このようなケーブルネットワークは、都市の景観や地震、台風、火災等の災害対策として地中への設置が進められている。
【0004】
しかし、新たにケーブルを地中に埋設するには、莫大な費用と長い工期が必要となることから、近年では、大型施設のみならず各家庭とも繋がっている下水道等の管路施設を活用し、この管路施設に光ファイバーケーブル等のケーブルを敷設する工法が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
一方、このような管路施設は、管路の途中に人孔等の縦向き筒状の立穴構造物を有し、この立穴構造物内にその直径方向を横切るようにケーブルを配置すると、当該ケーブルに立穴構造物内に流入した雨水等が直接当たり、その衝撃によってケーブルが破損、脱落又は振動する虞がある。
【0006】
そこで従来の立穴構造物内のケーブル敷設は、
図10に示すように、ケーブル1を立穴構造物2内壁部に沿って配置し、そのケーブル1を所定の位置でサドル3,3...を用いて堅固に固定することにより、ケーブル1が落下水や下水水位の変動等によって振動や脱落しないようにしている。
【0007】
このケーブル1の立穴構造物2内に敷設される部分は、各管渠用管体4,4の端部開口より立穴構造物2の内壁に沿ってケーブル1を筒軸方向上方に引き出した直線部5a,5bと、一方の直線部5aの上端から他方の直線部5bの上端に亘って構造物内壁2の内周に沿って半円弧状に配置した曲線部6とを備え、曲線部6の高さ位置をインバート上面より一定の高さを隔てた位置とし、曲線部6が維持管理作業の動線を邪魔しないようにするとともに下水流の影響を避けられるようにしている。
【0008】
尚、曲線部6の高さ位置は、分岐用の接続箱の設置等の条件によって各直線部5a,5bが立穴構造物2の躯体ブロック7と中間ブロック(側塊)8との継ぎ目2aを跨ぐように設定されることもある。
【0009】
一方、ケーブル1を立穴構造物2の内壁部に固定する固定具(サドル)3は、
図11に示すように、金属板材により一体に成形され、半円弧状の把持部10と、把持部10の両端より外向きに張り出した形状の固定部11,11とを備え、把持部10内側にケーブル1を嵌め込んだ状態で固定部11,11をアンカー部材12により立穴構造物2内壁に固定することにより、ケーブル1が移動不能に立穴構造物2内壁部に固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002-182087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、大規模な地震動により管渠部管体と立穴構造物との間又は立穴構造物の躯体ブロックと中間ブロックとの間に相対変位が生じた場合、それに伴いケーブルに多大な引張力やせん断力が作用するため、サドル型固定具によって堅固に固定された部分のケーブルには多大な負荷が生じ、ケーブル外皮が傷つけられる虞があった。
【0012】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、通常時には堅固にケーブルを固定でき、且つ、地震時にはケーブルに作用する負荷を軽減することができる管路施設のケーブル敷設構造及びそれに使用する耐震用固定具の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、管路の途中に縦向き筒状の立穴構造物を有する管路施設にケーブルを敷設するための構造であって、前記ケーブルの立穴構造物内に敷設される部分に、各管渠用管体より前記立穴構造物内壁に沿って上方に引き出した直線部と、該一方の直線部の上端から他方の直線部の上端に亘って立穴構造物の内周に沿って円弧状に配置した曲線部とを備え、前記両直線部及び曲線部を複数の固定具によって前記立穴構造物内壁に固定するようにした管路施設のケーブル敷設構造において、前記複数の固定具の一部又は全部に耐震用固定具を使用し、該耐震用固定具は、
弾性を有する合成樹脂材によって一体成形され、長手方向の一端がアンカー式固定部材によって立穴構造物の内側面に固定される固定片と、該固定片の長手方向他端表面に突設され、前記ケーブルを把持するケーブル把持部とを備え、
該ケーブル把持部の突端部に着脱用開口部を備え、前記ケーブルに一定以上の力が作用した際に前記ケーブルが
ケーブル把持部から離脱するようにした管路施設のケーブル敷設構造にある。
【0014】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記直線部の下端を前記耐震用固定具で前記立穴構造物内壁に固定したことにある。
【0015】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記直線部と前記曲線部とに跨る部分
の両側をそれぞれ前記耐震用固定具で固定したことにある。
【0016】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1、2又は3の構成に加え、前記直線部が前記立穴構造物を構成する互いに連続するブロック間に跨って配置され、前記直線部の前記両ブロック間に跨った部分
の両側をそれぞれ前記耐震用固定具で固定したことにある。
【0017】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項1〜3又は4の構成に加え、前記耐震用固定具は、前記ケーブルのケーブル軸方向の移動を許容した状態に該ケーブルを把持するようにしたことにある。
【0018】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項1〜4又は5の管理施設のケーブル敷設構造に使用する耐震用固定具であって、一端を固定部材によって前記立穴構造物に固定する固定片と、該固定片の他端表面に一体に突設されて前記ケーブルが挿通されるケーブル把持部とを備え、
該ケーブル把持部の突端部に着脱用開口部を備え、前記ケーブルに一定以上の力が作用することによって、前記ケーブルが前記着脱用開口部を押し広げて前記ケーブル把持部より離脱するようにした耐震用固定具にある。
【0019】
請求項7に記載の発明特徴は、請求項6の構成に加え、前記ケーブル把持部の両端開口縁部に面取り加工によってせん断用ケーブル保護部を備えたことにある。
【0020】
請求項8に記載の発明の特徴は、請求項6又は7の構成に加え、前記着脱用開口部の内側縁部に面取り加工によって着脱用ケーブル保護部を備えたことにある。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る管路施設のケーブル敷設構造は、上述したように、管路の途中に縦向き筒状の立穴構造物を有する管路施設にケーブルを敷設するための構造であって、前記ケーブルの立穴構造物内に敷設される部分に、各管渠用管体より前記立穴構造物内壁に沿って上方に引き出した直線部と、該一方の直線部の上端から他方の直線部の上端に亘って立穴構造物の内周に沿って円弧状に配置した曲線部とを備え、前記両直線部及び曲線部を複数の固定具によって前記立穴構造物内壁に固定するようにした管路施設のケーブル敷設構造において、前記複数の固定具の一部又は全部に耐震用固定具を使用し、該耐震用固定具は、前記ケーブルを把持するケーブル把持部を備えるとともに、該ケーブル把持部を前記ケーブルに一定以上の力が作用した際に前記ケーブルが離脱するように形成したことによって、人孔等の立穴構造物部分のケーブルを通常時においては、立穴構造物の内壁面に堅固に固定し、弛みのない状態で維持し、下水道水位の変動や雨水の流入等による負荷が生じてもケーブルが移動及び振動しないようにでき、地震動によってケーブルに多大な負荷が生じた際には、耐震用固定具からケーブルを離脱させ、ケーブルを緩めることによって当該負荷を緩和し、ケーブルに過大な負荷が生じないようにし、ケーブル外皮の破損を防止す
ることができる。
【0022】
本発明において、前記直線部の下端を前記耐震用固定具で前記立穴構造物内壁に固定したことにより、立穴構造物に対し管渠用管体が押し込み方向に相対移動した際に当該相対移動に連動して耐震用固定具よりケーブルを離脱させることができる。
【0023】
また、本発明において、前記直線部と前記曲線部とに跨る部分を前記耐震用固定具で固定したことにより、地震動等によりケーブルに過大な引張力が作用した場合、耐震用固定具よりケーブルが離脱し、ケーブルに作用する引張力を緩和することができる。
【0024】
更に本発明において、前記直線部が前記立穴構造物を構成する互いに連続するブロック間に跨って配置され、前記直線部の前記両ブロック間に跨った部分を前記耐震用固定具で固定したことにより、地震動により躯体ブロックと側塊ブロックとが相対移動した際に、ケーブルへの過大な負荷を緩和することができる。
【0025】
また、本発明において、前記耐震用固定具は、前記ケーブルのケーブル軸方向の移動を許容した状態に該ケーブルを把持するようにしたことにより、ケーブルの固定部分に作用する過大な負荷を緩和することができる。
【0026】
本発明に係る耐震用固定具は、請求項1〜4又は5の管理施設のケーブル敷設構造に使用する耐震用固定具であって、一端を固定部材によって前記立穴構造物に固定する固定片と、該固定片の他端表面に一体に突設されて前記ケーブルが挿通されるケーブル把持部とを備え、該ケーブル把持部は、その突端部に着脱用開口部を備え、前記ケーブルに一定以上の力が作用することによって、前記ケーブルが前記着脱用開口部を押し広げて前記ケーブル把持部より離脱するようにしたことによって、立穴構造物の内壁部に容易に固定することができ、作業効率が向上する。
【0027】
また、本発明において、前記ケーブル把持部の両端開口縁部に面取り加工によってせん断用ケーブル保護部を備えたこと、及び、前記着脱用開口部の内側縁部に面取り加工によって着脱用ケーブル保護部を備えたことにより、ケーブルが傷付き難い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る管路施設のケーブル敷設構造を使用した管路施設を示す縦断面図である。
【
図4】各固定具の配置を説明するための立穴構造物内壁面部の部分展開図である。
【
図5】(a)
図1中の耐震用固定具の一例を示す正面図、(b)は同側面図、(c)は同C−C線断面図である。
【
図6】
図1中の耐震用固定具の取り付け状態を示す断面図である。
【
図7】地震動発生時におけるケーブルの挙動を説明する為の部分拡大横断面図である。
【
図8】地震動発生時におけるケーブルの挙動を説明する為の部分拡大縦断面図である。
【
図9】(a)は
図1中の耐震用固定具の他の一例を示す正面図、(b)は同側面図、(c)は同D−D線断面図である。
【
図10】管路施設のケーブル敷設状態を説明するための管路施設の概略図である。
【
図11】従来のサドル型固定具の使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明に係る管路施設のケーブル敷設構造及びそれに使用する耐震用固定具の実施の態様を
図1〜
図8に示す実施例に基づいて説明する。
【0030】
また、本実施例では、管路の途中に人孔等の縦向き筒状の立穴構造物2を有する管路施設に光ファイバーケーブル等のケーブル1を敷設する場合について説明し、図中符号2は人孔等の立穴構造物、符号4は立穴構造物2に連結された下水道管渠を構成する管渠用管体である。尚、上述の従来例と同様の構成には同一符号を付して説明する。
【0031】
立穴構造物2は、プレキャストコンクリ−ト製の躯体ブロック7、中間ブロック8及び上端ブロック9を上下方向に積み重ねて縦向き筒状に形成され、躯体ブロック7の周壁に管渠用管体4,4が可撓継手20を介して連結されている。尚、図中符号21はインバートコンクリートである。
【0032】
この管理施設へのケーブル1の敷設は、上流側の管渠用管体4から立穴構造物2を経て下流側の管渠用管体4にケーブル1を通すとともに、そのケーブル1を管渠用管体4,4の内周面部及び立穴構造物2内壁部に固定する構造となっている。
【0033】
ケーブル1の立穴構造物2内に敷設される部分は、各管渠用管体4,4の開口部から筒軸方向上方に引き出した両直線部5a,5bと、一方の直線部5aの上端から他方の直線部5bの上端に至るまで構造物内壁の内周に沿って半円弧状に配置した曲線部6とを備え、曲線部6の高さをインバートコンクリート21上面より一定の高さを隔てた位置とし、曲線部6が維持管理作業の動線を邪魔しないようにするとともに下水流の影響を避けられるようにしている。
【0034】
このケーブル1の直線部5a,5bと曲線部6に跨る部分22は、
図4に示す展開図に示すように、円弧状に形成され、直線部5a,5bと曲線部6とが滑らかに連続して配置されるようにしている。
【0035】
尚、この実施例においては、両直線部5a,5bを躯体ブロック7と中間ブロック8とに跨るように配置し、曲線部6の高さ位置が躯体ブロック7と中間ブロック8との継ぎ目2aより上になるようにしている。
【0036】
立穴構造物2内のケーブル1の敷設には、上述の
図11に示す従来例と同様のサドル型固定具3及び
図6に示す耐震用固定具30,30...の2種類の固定具を使用し、両直線部5a,5bの下端、直線部5a,5bと曲線部6とに跨る部分22の両端、直線部5a,5bの躯体ブロック7と中間ブロック8とに跨った部分23の両端がそれぞれ耐震用固定具30,30...を用いて固定され、その他の部分がサドル型固定具3により固定されている。
【0037】
即ち、直線部5a,5bでは、管渠用管体4,4の開口部に最も近い箇所、曲線部6の近傍及び躯体ブロック7と側塊とのつなぎ目を挟んだ両側部をそれぞれ耐震用固定具30a,30b,30cで固定し、曲線部6では、その両端部、即ち各直線部5a,5bに最も近い位置を耐震用固定具30bで固定している。
【0038】
耐震用固定具30には、ケーブル1を把持するケーブル把持部31を備えるとともに、ケーブル把持部31をケーブル1にケーブル把持部31の突端方向に向けた一定以上の力、例えば、10kgf以上の力が作用した際にケーブル1が離脱するように形成したものを使用する。
【0039】
この耐震用固定具30は、
図5、
図6に示すように、弾性を有する合成樹脂材によって一体成形され、一端をアンカーボルト等の固定部材32によって立穴構造物2に固定する固定片33と、固定片33の他端表面に一体に突設されたケーブル把持部31とを備えている。
【0040】
固定片33は、矩形平板状に形成され、その長手方向の一端にアンカーピンやアンカーボルト等の固定部材32が挿通される板厚方向に貫通した挿通孔34が形成され、ケーブル把持部31にケーブル1を把持した状態であっても立穴構造物2の内壁部に容易に固定することができるようになっている。
【0041】
ケーブル把持部31は、直方体状に形成され、固定片33表面と平行、且つ、固定片33長手方向と交差する方向に貫通した丸孔状のケーブル挿通部35を備え、このケーブル挿通部35にケーブル1を挿通させることによりケーブル把持部31にケーブル1が把持されるようになっている。
【0042】
ケーブル挿通部35は、使用する光ファイバーケーブル1外径と同径又はやや小さい径の丸孔状に形成され、ケーブル把持部31がケーブル1のケーブル軸方向の移動を許容した状態にケーブル1を把持するようになっている。
【0043】
また、ケーブル挿通部35の両端開口縁部には、C面又はR面の面取り加工によりせん断用ケーブル保護部36が形成され、ケーブル把持部31に対しケーブル1がせん断方向に相対移動してもケーブル1を傷つけ難いようにしている。
【0044】
また、ケーブル把持部31は、その突端部にケーブル挿通部35と平行配置に切れ込み状の着脱用開口部37を備え、この着脱用開口部37を通してケーブル把持部31に対しケーブル1が着脱可能になっている。
【0045】
着脱用開口部37は、突端面側に拡開した断面台形(V字)溝状に形成され、ケーブル把持部31に対しケーブル1が装着し易く、且つ、離脱し難い構造になっており、ケーブル把持部31に把持されたケーブル1は、ケーブル把持部31の突端側に向けた一定以上の力が作用した場合のみ、着脱用開口部37を押し広げてケーブル把持部31より離脱するようにしている。
【0046】
この着脱用開口部37の互いに対向する傾斜面の外縁部には、C面又はR面の面取り加工により着脱用ケーブル保護部38が形成され、ケーブル把持部31に対しケーブル1を着脱する際にケーブル1が傷付き難いようにしている。
【0047】
このように構成された管路施設のケーブル敷設構造では、平常時において、両直線部5a,5b及び曲線部6がそれぞれ複数の固定具3,3...及び耐震用固定具30,30...によって立穴構造物2の内壁面に堅固に固定され、弛みのない状態で維持されており、下水道水位の変動や雨水の流入等による負荷が生じてもケーブル1が移動及び振動しないようになっている。
【0048】
一方、大規模な地震動等によって、管渠用管体4,4が立穴構造物2に対し相対移動し、それに伴って立穴構造物2内に敷設されたケーブル1に引張力が作用すると、耐震用固定具30,30...からケーブル1が離脱し、ケーブル1に作用する引張力を緩和するようになっている。
【0049】
具体的には、地震動によって立穴構造物2に対し管渠用管体4が押し込み方向に相対移動した場合、管渠用管体4の端面が直線部5a,5bの下端を内向きに押圧し、それに伴ってケーブル1に引張力が作用する。
【0050】
その際、管渠用管体4,4の押し込みによるケーブル1の変位によって、上流側直線部5a,5bの下端であって管渠用管体4,4端部近傍を固定する耐震用固定具30a,30aに一定以上、例えば10kgf以上の力が作用すると、ケーブル1に押圧されてケーブル把持部31が弾性変形し、着脱用開口部37が押し広げられ、
図1中の一点鎖線で示すように、ケーブル1が耐震用固定具30a,30aより離脱する。
【0051】
そして、ケーブル1が耐震用固定具30a,30aより離脱することにより、ケーブル1に作用する引張力が緩和され、ケーブル1及びケーブル1の固定部分に多大な負荷が生じるのを防止するようになっている。
【0052】
一方、地震動によって立穴構造物2に対し管渠用管体4が押し込み方向に相対移動した場合、又は、立穴構造物2に対し管渠用管体4,4が引抜き方向に相対移動し、立穴構造物2内のケーブル1が管渠側に引き込まれた場合には、それに伴ってケーブル1に引張力が作用する。
【0053】
その際、直線部5a,5bと曲線部6とに跨る部分22を固定する耐震用固定具30b,30bからケーブル1が離脱し、ケーブル1に作用する引張力を緩和するようになっている。
【0054】
即ち、ケーブル1に引張力が作用すると、曲線部6の各固定部分には、
図7に示すように、半径中心方向に向けた分力が生じ、耐震用固定具30bには、ケーブル1によってケーブル把持部31の突端側に向けた押圧力が作用する。
【0055】
そして、この押圧力が一定以上、例えば、10kgf以上を超えると、耐震用固定具30b,30bでは、ケーブル1の外周面に押圧されて着脱用開口部37が押し開かれ、ケーブル把持部31よりケーブル1が離脱する。
【0056】
そして、直線部5a,5bと曲線部6とに跨った部分22を固定していた耐震用固定具30b,30bよりケーブル1が離脱することによってケーブル1が緩み、ケーブル1及びケーブル1の固定部分に多大な負荷が生じるのを防止するようになっている。
【0057】
また、躯体ブロック7と中間ブロック8(側塊)とにずれが生じ、各直線部5a,5bの躯体ブロック7と中間ブロック8とに跨る部分23にせん断方向の力が作用した場合には、そのせん断力が一定の値、例えば、10kgf以上を超えると、
図8に示すように、躯体ブロック7と中間ブロック8とに跨る部分23の両端を固定した耐震用固定具30c,30cの一方又は双方でケーブル把持部31よりケーブル1が離脱し、当該部分に過大なせん断力が働くのを防止するようになっている。
【0058】
尚、上述の実施例では、立穴構造物2内のケーブル1の敷設にサドル型固定具3及び耐震用固定具30の2種類の固定具を使用した例について説明したが、その固定具全てに耐震用固定具30,30...を用いてもよい。
【0059】
また、耐震用固定具30の態様は、上述の実施例に限定されず、例えば、
図9に示すように、ケーブル把持部31のケーブル挿通部40の形状が側面視U字孔状に形成されたものであってもよい。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【符号の説明】
【0060】
1 ケーブル(光ファイバーケーブル)
2 立穴構造物
3 サドル型固定具
4 管渠用管体
5 直線部
6 曲線部
7 躯体ブロック
8 中間ブロック
9 上部ブロック
10 把持部
11 固定部
12 アンカー部材
20 可撓継手
21 インバートコンクリート
22 ケーブルの直線部と曲線部とに跨る部分
23 直線部の躯体ブロックと中間ブロックとに跨った部分
30 耐震用固定具
31 ケーブル把持部
32 固定部材
33 固定片
34 挿通孔
35 ケーブル挿通部
36 せん断用ケーブル保護部
37 着脱用開口部
38 着脱用ケーブル保護部
40 ケーブル挿通部