特許第6238197号(P6238197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238197
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   F24F11/02 S
   F24F11/02 102H
   F24F11/02 103A
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-188288(P2013-188288)
(22)【出願日】2013年9月11日
(65)【公開番号】特開2015-55393(P2015-55393A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2015年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】糸井川 高穂
(72)【発明者】
【氏名】上田 貴郎
(72)【発明者】
【氏名】小松 佑人
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−159887(JP,A)
【文献】 特開平11−141953(JP,A)
【文献】 特開平07−055227(JP,A)
【文献】 特開平06−147594(JP,A)
【文献】 特開昭62−175540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調する室内の撮像画像を取得する撮像部と、
前記撮像画像と略同一の範囲の放射熱を検知して温度分布画像を取得する温度検出部と、を備え、
前記撮像画像を基に顔検出処理がおこなわれて複数人の顔位置が算定され、
複数人のそれぞれについて、前記温度分布画像において前記顔位置に対応する位置から所定の距離離れた位置の温度情報が取得され、
前記取得された温度情報の平均値を求めて空調制御温度とし、
前記取得された温度情報の最大値をもつ人の顔位置からその人が居る方向が算出され、
前記温度情報と前記人が居る方向により空調制御がおこなわれる
ことを特徴とする空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の温度や人物を検出して室温を制御する空気調和機に係り、室内の温度や人物を検出するセンサの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像素子や温度センサを搭載して室内の温度分布や在室中の人物の動作を検出し、吹き出し風の温度・方向・風量を制御し、空調の快適性向上や省エネを実現する空気調和機が実現されている。
上記の空気調和機は、例えば、特許文献1に開示されている。詳しくは、特許文献1の空気調和機は、室内空間の画像情報を取り込む画像センサを搭載し、取得した画像情報により動きを検出するとともに、室内機の上下方向の風向きを制御する上下フラップと左右方向の風向きを制御する左右フラップを、人の居場所によらず自由に気流を制御するフラップ機構として気流を振り分けられる構成とし、前記画像情報の動き量から、人の位置を特定して、人が存在する領域に向けて空気を吹出す方向及び距離を制御している。
さらに、特許文献1の空気調和機は、左右上下方向に数分割したエリアの床温度を検出する床温度センサを搭載し、前記画像センサで取得した人の位置の近傍の床温度に応じて、最適な設定温度の設定やファンの回転速度の制御をおこなう技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献2に開示される空気調和機は、8つの受光素子が縦に配設された赤外線センサを左右方向に回動走査して室内の熱画像を取得し、熱画像から床面や壁面の温度を検出するとともに、熱画像データの変化から人の位置検出し、空気調和機の空調制御をおこなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−220405号公報
【特許文献2】特開2010−276324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、撮像素子や温度センサを搭載することで、室内状況の把握や人物の検出が容易となり、細かな空調管理をおこなえるようになってきた。特に、特許文献1や2には、床温度や壁面温度を検知して空調制御をおこなうことが開示されている。しかし、体感温度に影響する在室者の周囲の温度とは別の検出温度、例えば、室内機の吸込み温度により温度制御をおこなっている場合には、在室者に快適に空調されているか分からない問題があった。
本発明の目的は、在室者に快適な空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の空気調和機は、空調する室内の撮像画像を取得する撮像部と、前記撮像画像と略同一の範囲の放射熱を検知して温度分布画像を取得する温度検出部と、を備え、前記撮像画像を基に顔検出処理がおこなわれて複数人の顔位置が算定され、複数人のそれぞれについて、前記温度分布画像において前記顔位置に対応する位置から所定の距離離れた位置の温度情報が取得され、前記取得された温度情報の平均値を求めて空調制御温度とし、前記取得された温度情報の最大値をもつ人の顔位置からその人が居る方向が算出され、前記温度情報と前記人が居る方向により空調制御がおこなわれるようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明を適用した空気調和機は、在室者の近傍の雰囲気温度を検出できるので、体感温度に適合した空調が可能となり、在室者に快適な空調環境を提供できる。
また、室内の在室者の近傍の空調をおこなうことができるので、空調範囲を限定することができ、室内全域を空調するのに比べて省エネをおこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例の空気調和機の正面外観を示す図である。
図2】実施例の室内機1の側断面図である。
図3a】温度検出手段27のサーモパイル27bの水平走査を説明する図である。
図3b】撮像手段26のCCDイメージセンサ26bの水平走査を説明する図である。
図4】撮像手段26のCCDイメージセンサ26bと温度検出手段27のサーモパイル27bの回動角度の関係を説明する図である。
図5a】温度検出手段27の撮像結果を示す図である。
図5b】撮像手段26の撮像結果を示す図である。
図6a】温度検出手段あるいは撮像手段の機構に係り、ギア接続の構成の一例を示す図である。
図6b】温度検出手段あるいは撮像手段の機構に係り、4節リンク接続の構成の一例を示す図である。
図7】温度検出手段27の鉛直断面の撮像状態を示す図である。
図8】実施例の空気調和機の制御ブロック図である。
図9】撮像手段26と温度検出手段27の並行動作を説明する図である。
図10a】顔位置と温度を検出するマスの関係を示す図である。
図10b】顔位置と温度を検出する着衣温度マスの関係を示す図である。
図11】着衣温度を検出して空調をおこなう処理フロー図である。
図12】複数人がいる場合の着衣温度を検出して空調をおこなう処理フロー図である。
図13】着衣温度を検出して空調をおこなう他の処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。なお、各図および各実施例において、同一又は類似の構成要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
図1は本実施例に係る空気調和機の外観を示す正面図である。空気調和機は、室内機1と、室外機2と、リモコン3と、から構成され、室内機1と室外機2とは図示していない冷媒配管で接続され、周知の冷媒サイクルによって、室内機1が設置されている室内を空調する。また、室内機1と室外機2とは、通信ケーブル(図示せず)を介して互いに情報を送受信するようになっている。
【0011】
リモコン3はユーザによって操作され、室内機1のリモコン3受信部に対して、ユーザの操作指示に対応する赤外線信号を送信する。当該信号の内容は、運転要求、設定温度の変更、タイマ、運転モードの変更、停止要求などの指令である。空気調和機は、これらの信号に基づいて、冷房モード、暖房モード、除湿モードなどの空調運転をおこなう。
【0012】
また、空気調和機の室内機1の正面には、詳細を後述する撮像手段26と温度検出手段27が設けられている。
また、室内機には、室内機1に取り込む空気の温度を測定する室温センサと、湿度センサと、照度センサとから成るセンサ部4がある。室外機2にも、同様に、外気温センサが設けられている。
11は電装品であり、当該空気調和機1の制御をおこなう制御部7が構成されている。詳細は、図8により説明する。
【0013】
図2は、室内機1の側断面図である。筐体ベース8は、熱交換器9、送風ファン10、電装品11(図1参照)、センサ部4(図1参照)、撮像手段26、温度検出手段27などの内部構造体を収容している。
熱交換器9は、複数本の伝熱管を有し、送風ファン10により室内機1内に取り込まれた空気を、伝熱管を通流する冷媒と熱交換させ、前記空気を加熱又は冷却するように構成されている。なお、伝熱管は、前記した冷媒配管(図示せず)に連通し、周知の冷媒サイクル(図示せず)の一部を構成している。
【0014】
左右風向板13は、制御部7(図8参照)からの指示に従い、下部に設けた回動軸(図示せず)を支点にして左右風向板13用モータ(図示せず)により回動される。
上下風向板14は、制御部7(図8参照)からの指示に従い、両端部に設けた回動軸(図示せず)を支点にして上下風向板14用モータ(図示せず)により回動される。
前面パネル15は、室内機1の前面を覆うように設置されており、下端を軸として前面パネル15用モータ(図示せず)により回動可能な構成となっている。ちなみに、前面パネル15を、上端に固定されるものとして構成してもよく、回動できない構成であってもよい。
【0015】
図2に示す送風ファン10が回転することによって、空気吸込み口17及びフィルタ16を介して、室内機1の前面から室内空気を取り込み、熱交換器9で熱交換された空気が吹出し風路18に導かれる。さらに、吹出し風路18に導かれた空気は、左右風向板13及び上下風向板14によって風向きを調整され、空気吹出し口19から外部に送り出されて室内を空調する。
つまり、送風ファン10の回転速度により吹き出し風量が制御され、左右風向板13の回動により左右の吹出し方向が制御され、上下風向板14の回動により上下の吹出し方向が制御される。
【0016】
撮像手段26は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ26b(図3b参照)であり、前面パネル15の左右方向中央の下部に設置されている。これ以外にも、赤外線センサを使用してもよい。
また、温度検出手段27は、例えば横×縦が1×1画素、4×4画素、1×8画素で構成されるサーモパイル27b(図3a参照)であり、前面パネル15の左右方向中央の下部に設置されている。本実施例では、1×8画素で構成されるサーモパイル27bを使用した場合について述べる。これ以外にも、サーモグラフィーを使用してもよい。
【0017】
撮像手段26と温度検出手段27は、レンズの光軸36が水平線37に対して所定角度だけ下方を向くように設置されており、室内機1が設置されている室内を適切に撮像できるようになっている。撮像手段26が下方を向く角度は、温度検出手段27が下方を向く角度と略同じである。
撮像手段26と温度検出手段27の鉛直方向の検出範囲が異なる場合、検出範囲の上端をそろえる。あるいは、下端をそろえてもよい。
【0018】
撮像手段26と温度検出手段27の水平方向の画角は略同じ角度である。あるいは、一方が他方より大きく、回動することにより画角を変更することで略同等の画角を得てもよい。撮像手段26と温度検出手段27は互いに水平方向または鉛直方向に位置するように設けられる。
また、撮像手段26と温度検出手段27は室内機1の前面中央部や前面上部など空間の検出が可能な位置に近接して設けることが望ましい。これにより、撮像手段26の取得画像と温度検出手段27の取得画像のずれ量を小さくすることができる。
また、撮像手段26あるいは温度検出手段27は、同一の画角で部屋のより広い範囲を見られるよう、前面パネル15の上端にあってもよい。
【0019】
つぎに、図3aと図3bにより、撮像手段26と温度検出手段27による撮像について説明する。撮像手段26は、640×480画素のCCDイメージセンサ26bにより構成され、温度検出手段27は1×8画素のサーモパイル27bにより構成される。そして、CCDイメージセンサ26bやサーモパイル27bの前面にはレンズが設けられており、視野像がセンサに結像される。
【0020】
サーモパイル27bの検出素子は、1次元配置された受熱素子となっている。図3aにしめすように、検出素子の配列方向を回転軸にしてサーモパイル27bを回動することにより、検出素子の配列方向に垂直な方向に走査する。これにより、縦方向に8画素の2次元の放射熱像を取得することができる。取得画像の走査方向(水平方向)の画素数については後述する。
【0021】
CCDイメージセンサ26bは2次元の撮像素子であるが、撮像手段26の取得画像範囲を広くするために、図3bにしめすように、CCDイメージセンサ26bの縦方向を回転軸にしてCCDイメージセンサ26bを回動し、水平方向の走査をおこなう。これにより、CCDイメージセンサ26bの水平方向の画素数より大きな撮像画像を得ることができる。
【0022】
図4は、撮像手段26のCCDイメージセンサ26bと温度検出手段27のサーモパイル27bの回転角度の関係を説明する図である。ここで、CCDイメージセンサ26bは、60°の画角をもち、サーモパイル27bは、5°の画角をもち、撮像手段26と温度検出手段27は、水平方向が150°の画角で、同じ視野の画像取得をおこなうものとする。
【0023】
図4の実線はCCDイメージセンサ26bの1回の撮像角度範囲を示し、点線はサーモパイル27bの1回の検出角度範囲を示している。図に示されるように150°の画角の取得画像を得るには、サーモパイル27bは、中央の左右75°の範囲を5°の回転角度ごとに、放射熱像を取得し、CCDイメージセンサ26bは、中央と左右45°の3つの回転角度で撮像をおこない画像取得をおこなえばよい。
【0024】
図5aと図5bは、上記の条件で撮像をおこなった撮像手段26と温度検出手段27の撮像結果をしめす図である。撮像手段26は、水平方向が150°の画角で、1600×480の画素数の画像取得がおこなえる。温度検出手段27は、水平方向が150°の画角で、30×8の画素数の熱画像取得がおこなえる。
このとき、撮像手段26による撮像画像には、重複する領域があるので、適宜削除あるいは平均化して、上記の画素数の画像取得をおこなう。
【0025】
上記の取得画像の画素数は一例であって、取得する画角や、使用するCCDイメージセンサ26bやサーモパイル27bの種類によって種々選択可能であることは言うまでもない。
なお、一見、サーモパイル27bの分解能が低いように思えるが、実施例のように空気調和機の送風制御のために室内の温度分布を測定する用途であれば、上記の分解能であれば充分に制御をおこなうことができる。もちろん、高分解能であることが望ましいことは言うまでもない。
【0026】
つぎに、サーモパイル27bあるいはCCDイメージセンサ26bを回動させる機構について説明する。図6aと図6bは機構概要をしめす図である。ここで、サーモパイル27bあるいはCCDイメージセンサ26bを回動する駆動源は、ステッピングモータ42を使用するものとする。
【0027】
図6aに示す機構では、サーモパイル27bあるいはCCDイメージセンサ26bを回動する回転軸とステッピングモータ42の駆動軸を、ギアを介して接続するものである。ステップ数の小さなステッピングモータ42であっても、ギア比を選択することにより所望の回転角を得ることができる。
図6bに示す機構では、サーモパイル27bあるいはCCDイメージセンサ26bを回動する回転軸とステッピングモータ42の駆動軸を、4節リンクにより接続し、回転運動を揺動運動に変換することができる。
【0028】
上述のギアやリンクにより駆動軸の接続をおこなった場合は、ギアのバックラッシュやリンクの“あそび”により、回動位置精度に誤差が生じることがある。このため、撮像時のサーモパイル27bあるいはCCDイメージセンサ26bの撮像時の回動方向を一方向にして“あそび”による回動角の誤差が生じないようにすることが望ましい。また、予め“あそび”を吸収する調整量を求めておき、回動方向が反転する際に調整をおこなうようにしてもよい。
【0029】
図7は、温度検出手段27の鉛直断面の撮像状態を示す図である。上述のとおり、温度検出手段27のサーモパイル27bは、縦方向に8素子から構成されている。図7の1から8の領域の放射熱が受熱素子により検出される。図7から分かるように、撮像結果の上側と下側がそれぞれ室内の壁と床に対応している。
【0030】
図8は、実施例の空気調和機の制御回路の構成図である。
上述の撮像手段26のCCDイメージセンサ26bと温度検出手段27のサーモパイル27bは、それぞれ独立に、センサ走査制御部50により回動駆動される。CCDイメージセンサ26bとサーモパイル27bの出力信号は、温度分布生成・判定処理部5により、図5aや図5bに示す2次元の放射熱画像と撮像画像が生成される。
【0031】
温度分布生成・判定処理部5は、上記の2次元の撮像画像と放射熱画像を解析して、レイアウト状態、人物の有無やその人数やその活動率、温度分布を、算出する。
そして、空調温度・風向処理部6は、この算出結果と、外気温センサ制御部51、室温センサ制御部52、湿度センサ制御部53、照度センサ制御部54の入力値と、リモコン制御部55と通信するリモコン3による設定値を参照して、送風の温度・風量と方向等の制御量を決める。
機器制御部7は、空調温度・風向処理部6からの指示に基づいて、室外機2の圧縮機駆動部22bと室外機ファンモータ駆動部24と四方弁駆動部34と電動弁駆動部35を制御して、冷房・暖房をおこなう冷媒サイクルの制御をおこなうとともに、前記空調温度・風向処理部6の指示に基づいて、上下風向板駆動部14bと左右風向板駆動部13bと送風ファン駆動部10bを制御して冷却風や暖房風の吹き出し方向・風量を制御する。
また、空調温度・風向処理部6は、センサ走査制御部50の動作状態を設定する。
【0032】
前記温度分布生成・判定処理部5と空調温度・風向処理部6と機器制御部7は、マイクロプロセッサによるプログラム処理で実現される。
【0033】
ぎに本実施例の具体的な処理内容を説明する。
まず、独立に撮像動作をおこなえる撮像手段26と温度検出手段27とにより、撮像画像と温度分布画像を生成する手順を説明する。本実施例では、撮像手段26と温度検出手段27を並行動作させて撮像タイミングのずれを小さくする方法について説明するが、空調する室内を静止状態と見なせる場合(人の移動を考慮しない場合等)には、撮像手段26と温度検出手段27により交互に撮像をおこなってもよい。
【0034】
図9は、撮像手段26と温度検出手段27の並行動作を説明する図である。図4の撮像手段26と温度検出手段27の回動角度の関係を基に説明する。
温度検出手段27のサーモパイル27bは、図4の30ポイントの検出点で一定の回動角速度で駆動され、かつ、一定間隔で撮像(信号検出)する。これに対して、撮像手段26のCCDイメージセンサ26bは、サーモパイル27bの10ポイントの検出点ごとに、回動動作をおこなうようにする。そして、CCDイメージセンサ26bの撮像(信号検出)のタイミングはサーモパイル27bの10ポイントの検出点の範囲の中央とする。これにより、人物の撮像と温度検出のタイミングのずれを小さくする。
【0035】
より詳細には、サーモパイル27bが図4に示した1から9の回動角度に在るときには、CCDイメージセンサ26bは回度角度が1の位置にあり、サーモパイル27bの回動角度が5の位置になったときに、CCDイメージセンサ26bの撮像をおこなう。
つぎに、サーモパイル27bの回動角度が10の位置になったときに、CCDイメージセンサ26bを回度角度10の位置に駆動する。そして、サーモパイル27bの回動角度が15の位置になったときに、CCDイメージセンサ26bの撮像をおこなう。
さらに、サーモパイル27bの回動角度が19の位置になったときに、CCDイメージセンサ26bを回度角度19の位置に駆動する。そして、サーモパイル27bの回動角度が26の位置になったときに、CCDイメージセンサ26bの撮像をおこなう。
【0036】
上記の手順により、図5aと図5bに示した撮像結果を得ることができる。前述のとおり、図は、撮像手段26と温度検出手段27により同一の視野を撮像したものである。撮像手段26と温度検出手段27の分解能の違いから、異なるマトリックスサイズとなっているが、座標位置には対応関係がある。したがって、図5bの特定座標の温度は、図5aを参照することにより求めることができる。
【0037】
図10aと図10bは、ひとりの人物が在室していた場合の例を示したもので、撮像手段26と温度検出手段27の撮像結果を重ねて記載したものとなっている。ただし、撮像手段26の撮像結果は、マス目の表示が省略されている。
図の人体を検出したマスは、例えば、既知の顔検索技術を使用して撮像手段26の撮像画像から顔を検出し、検出した顔の画像中心座標を求め、この座標に対応する温度検出手段27の撮像結果の位置を求めたものである。
【0038】
図10aに示す顔検出位置(人体を検出したマス)の温度が、顔の表面温度になる。一般に、人の周囲温度は着衣温度に近いと考えられるので、図10bに示すように、温度検出手段27の撮像結果において、顔検出位置(人体を検出したマス)の下側のマスの温度が周囲温度とみなすことができる(図10bでは、温度を抽出するマスと表記)。本実施例の撮像手段26と温度検出手段27は水平方向に回動走査して撮像しているため、顔検出したマスの下側のマスを着衣としているが、異なる方向に走査した場合には下側に限定されない。また、図10bでは1マス下としているが、1マスに限定されるものではない。
もし、顔検出位置が撮像結果の最下段のマスとなった場合には、そのマスの温度を着衣温度とする。
【0039】
空調温度・風向処理部6は、上記で求めた着衣温度を空調の制御温度として温度・風量・風向の空調制御をおこなう。また、顔検出位置から人の方向を算出し、送風ファンと左右風向板を駆動して空調風の風量と風向を制御するようにしてもよい。
【0040】
図11は、温度分布生成・判定部5と空調温度・風向処理部6がマイクロコンピュータのプログラムで実現される場合の、上述の処理のフロー図である。
上述のとおり、まず、撮像手段26と温度検出手段27を並行動作して撮像画像と温度分布画像を取得し(S201)、つぎに、撮像手段26の撮像画像に顔検出処理を適用して顔検出をおこない、撮像画像上の顔位置を算出する(S202)。そして、検出した撮像画像上の顔位置に対応する温度分布画像の顔位置を算出し(S203)、温度分布画像の顔位置のひとつ下のマスを着衣として温度を取得する(S204)。さらに、温度分布画像の顔位置の方向を算出する(S205)。そして、取得した着衣温度と顔位置の方向に基づいて空調の温度・風量・風向を制御する(S206)。
【0041】
実施例は、室内に複数人が居る場合の例である。撮像画像により、それぞれの顔位置を検出して、各人の着衣温度と顔の方向を求める。そして、各人の着衣温度の平均値を空調の制御温度とし、最も着衣温度の高い人に向けて空調風を向けるか、または、最も着衣温度の高い人が空調風の送風時間が長くなるように風向板を制御する。図12にその処理フローをしめす。
【0042】
図12のフロー図にしめす本実施例は、図11のフロー図のS202〜S205の処理を、S201で取得した撮像画像から顔検出した人数分繰り返し(S207)、顔検出した人の着衣温度の平均値を求め(S208)、着衣温度が最も高い人の顔位置の方向を求め(S209)、着衣温度の平均値と着衣温度が最も高い人の顔位置の方向に基づいて、空調の温度・風量・風向を制御する(S210)ようにした。
【0043】
記の実施例では、撮像手段26と温度検出手段27を並行動作させて撮像をおこなう例を説明したが、空調する室内を静止状態と見なせる場合(人の移動を考慮しない場合等)には、図13に示すように、撮像手段26と温度検出手段27により順に交互に撮像をおこなってもよい。
【0044】
詳しくは、まず、撮像手段により撮像画像を取得し(S211)、取得した撮像画像を基に顔検出処理をおこなって、撮像画像上の顔位置を算出する(S212)。そして、撮像画像上の顔位置から対応するサーモパイルの回動角度と顔の方向を算出する(S213)。つぎに、サーモパイルを算出した回動角度に駆動して温度を取得し(S214)、顔位置のひとつ下を着衣として、着衣温度を取得する(S215)。そして、取得した着衣温度と顔位置の方向に基づいて空調の温度・風量・風向を制御する(S216)。
【0045】
また、上記の実施例では、顔検出処理を撮像画像についておこなっているが、温度分布画像の特定の温度より低い領域に対応する撮像画像の領域のデータをマスク処理するようにしてもよい。これによれば、顔検出する領域を限定できるので、データ処理量を低減することができる。
【0046】
尚、本発明は、上記実施形態の構成に限られるものではなく、特許請求の範囲で示した機能、または本実施形態の構成が持つ機能が達成できる構成であればどのようなものであっても適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
5 温度分布生成・判定処理部
6 空調温度・風向処理部
7 機器制御部
10b 送風ファン駆動部
13b 左右風向板駆動部
14b 上下風向板駆動部
26b 撮像装置CCD(撮像部)
27b 温度検出手段サーモパイル(温度検出部)
50 センサ走査制御部
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10a
図10b
図11
図12
図13