特許第6238213号(P6238213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238213
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】トイレ用洗浄剤容器
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/00 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   E03D9/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-548978(P2015-548978)
(86)(22)【出願日】2014年11月12日
(86)【国際出願番号】JP2014005675
(87)【国際公開番号】WO2015075902
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2016年5月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-240815(P2013-240815)
(32)【優先日】2013年11月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598163477
【氏名又は名称】株式会社アメータ
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 繁
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】三橋 秀人
(72)【発明者】
【氏名】櫛田 博之
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−068224(JP,A)
【文献】 欧州特許第00890003(EP,B1)
【文献】 特開2008−248521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00、9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルネード方式のトイレ便器内側の壁面に設置する洗浄用薬剤容器であって、
前記容器のトイレ便器設置側の側面に1つ以上の洗浄水入口を有し、前記容器の上面に1つ以上の洗浄水出口を有し、前記容器の下面に1つ以上の薬液出口を有し、前記容器の側面に1つ以上のスペーサーを有し、さらに
前記容器の内部に仕切り板で仕切られた2ヶ所以上の空間を有し、前記空間の内、少なくとも1ヶ所が薬剤溶解室であり、少なくとも1ヶ所が洗浄水流速調整室であり、前記仕切り板の一部には、洗浄水流速調整室と薬剤溶解室とをつなぐための開口部が設けられていることを特徴とする洗浄用薬剤容器。
【請求項2】
記洗浄水入口に洗浄水の誘導板を有することを特徴とする請求項1に記載の洗浄用薬剤容器。
【請求項3】
さらに前記容器のトイレ便器設置側の側面に、整流用フィンを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄用薬剤容器。
【請求項4】
前記洗浄水出口が前記洗浄水流速調整室の上面に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄用薬剤容器。
【請求項5】
前記薬液出口が前記薬剤溶解室の下面に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の洗浄用薬剤容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水がトルネード方式のトイレ内に設置する洗浄剤の容器に関する。
本願は、2013年11月21日に出願された日本国特許出願第2013−240815号に対して優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年の洋式トイレは、洗浄効果の向上や節水のため、洋式トイレの洗浄水が渦流(トルネード方式)のものが増えてきている。そのため、洗浄水の流速が速くなることにより便器の汚れは減少し、洗浄タンクが無いため洗浄タンクの内部や上部にセットする洗浄剤は使用されなくなってきている。しかし、例えば、高速道路のサービスエリア、大規模展示会場や、映画館等のトイレでは、多数の利用者が、短時間の間に利用するので、トイレの洗浄が不十分になっていた。
そこで、薬液を使って洗浄効果を向上させる目的で、自動の洗浄装置(特許文献1)や腰かけたときの押圧力で薬液が吐出される装置(特許文献2)等が知られている。しかし、自動装置は仕組みが複雑であり、腰掛けた時の押圧力を利用した物は、洗浄水を流すのと同時に薬液を流す事ができなかった。
また、発明者は固形薬剤を収納した、市販の洗浄剤容器をトルネード式の洋式便器に設置してみたが、洗浄水の流速が速すぎて、容器内で洗浄薬剤を勢いよく溶解させてしまい、洗浄薬剤を短期間で消耗するとともに容器に洗浄水が当たって飛散する現象が発生した。洗浄水の入口を狭くして容器内に入る水量および流速を調整したが調整が難しく、また、容器を便器壁面から離れた位置に設置し洗浄水との接触を減少させると、洗浄水の飛散は少なくなり洗浄薬剤の溶解も遅くなったが、容器自体が徐々に汚れていき、容器の衛生環境が悪くなってしまった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−104319号公報
【特許文献2】特開2008−111296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、渦流(トルネード方式)による水洗式の洋式トイレ等の大便器内部に設置するトイレ洗浄用薬剤の容器であって、該薬剤を適正な濃度で溶解させることができて、容器自体も汚れにくい容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、上記トイレ洗浄用薬剤の容器において、洗浄水の飛散を防止し、かつ容器内に入ってきた洗浄水を、薬剤を溶解させるために必要になる洗浄水以外は、容器の上部から排出させることにより、適量の水量で薬剤を溶解させることができ、さらに容器の上部から排出される洗浄水によって、自ら容器を洗浄することで容器の清潔性も保つことができ、さらに、洗浄水が流れ終わった後に、容器内の薬液が容器下部の排出口から薬液が流れることにより洗浄水で希釈されない薬液が便器下部の溜水部に流れ込むため汚れやすい溜水部の洗浄を効率的に行えることを見出し、発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
(1)トルネード方式のトイレ便器内側の壁面に設置する洗浄用薬剤容器であって、
前記容器のトイレ便器設置側の側面に1つ以上の洗浄水入口を有し、前記容器の上面に1つ以上の洗浄水出口を有し、前記容器の下面に1つ以上の薬液出口を有し、前記容器の側面に1つ以上のスペーサーを有することを特徴とする洗浄用薬剤容器、
(2)前記容器の内部に仕切り板で仕切られた2ヶ所以上の空間を有し、前記空間の内、少なくとも1ヶ所が薬剤溶解室であり、少なくとも1ヶ所が洗浄水流速調整室であり、前記仕切り板の一部には、洗浄水流速調整室と薬剤溶解室とをつなぐための開口部が設けられ、前記洗浄水入口に洗浄水の誘導板を有することを特徴とする(1)に記載の洗浄用薬剤容器、
(3)さらに、前記容器のトイレ便器設置側の側面に、整流用フィンを有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の洗浄用薬剤容器、
(4)前記洗浄水出口が前記洗浄水流速調整室の上面に設けられていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の洗浄用薬剤容器、及び
(5)前記薬液出口が前記薬剤溶解室の下面に設けられていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の洗浄用薬剤容器に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のトイレの洗浄用薬剤容器は、トルネード方式の洗浄水が出る洋式トイレ等に設置することができ、排泄後洗浄水を流すと、その内部に洗浄水の一部を引き込んで薬液を作成して容器からその薬液を排出し、その薬液でトイレ便器を洗浄することが出来る。
特に薬液の出口が小さいため、容器内の薬液の一部は洗浄水が流れ終わった後に便器下部の溜水部に洗浄水で希釈されずに流れ込むため、汚れが発生しやすい溜水部分を効率的に洗浄することが出来る。
また薬剤を溶解させるために必要になる水以外は、容器の上部から排出されるため、適量の水量で薬剤を溶解させることができ、さらに容器の上部から洗浄水を排出させるため、自ら容器を洗浄することで容器の清潔性も保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の容器を設置した洋式トイレ用便器の斜視図である。太い矢印は水の流れを示す。
図2】トイレ設置側の側面から見た本発明の容器の本体及び蓋の斜視図である。
図3】トイレに設置した本発明の容器の本体の上面図である。太い矢印は水の流れを示す。
図4】本発明の容器本体を下方から見た斜視図である。太い矢印は水の流れを示す。
図5】トイレ設置側から見た本体の側面図である。点線で記載したものは内部構造を示している。太い矢印は水の流れを示す。
図6】トイレ設置側から見た別形態の本発明の容器の本体の側面図である。
図7】トイレ設置側から見た別形態の本発明の容器の本体の側面図である。
図8】トイレに設置した別形態の本発明の容器の本体の上面図である。
図9】トイレ設置側から見た、薬液だまりを有する別形態の本発明の容器の本体の側面断面図である。
図10】トイレ設置側から見た、サイフォン型薬液出口を有する別形態の本発明の容器の本体の側面断面図である。
図11】別形態の本発明の容器の蓋の斜視図である。
図12】本発明の容器を便器に取り付ける一態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、「トルネード方式のトイレ」とは、水洗式であって便座に直接座るタイプのトイレ(洋式トイレ)等において、洗浄水が便器の縁を流れて、徐々に便器の奥の方に流れるものである。そのため、便器の縁から自然落下して便器の奥の方に流れるものはトルネード方式に含まれない。
「洗浄水」とは、洋式トイレ等のトイレにおいて、トイレ内の排泄物を流しだす目的の水のことを指し、自動的若しくは手動によって便器内を流れる水を指す。
「薬剤」とは、薬液を作成するために本発明の容器に収納された固形状物質のことを示し、洗浄に関する薬効成分を含有している。
「薬液」とは、本発明の洗浄剤容器内の薬剤が洗浄水に溶解した液を示す。洗浄水が洗浄剤容器内の薬剤を溶解する前に既に洗浄成分を含有している場合には、その洗浄剤容器内の薬剤を溶解する前の洗浄水は、本発明でいう薬液とは言わない。
以下に、添付の図と共に、本発明の洗浄用薬剤容器について説明するが、本発明の洗浄用薬剤容器の技術的範囲は添付の図に限定されない。なお、( )内の数字は、添付の図における番号を示す。
【0009】
(洗浄用薬剤容器)
本発明の洗浄用薬剤容器は、トイレ便器の縁に金具、バンド等の部材を用いて取り外し自在に設置することができる(図12)。当該容器は、トイレ便器に接する側の側面に1つ以上の洗浄水入口(4)を有し、上面には、1つ以上の洗浄水出口(5)を有し、下面には1つ以上の薬液出口(6)を有している。
なお、ここで、上面、下面、側面とは、容器をトイレに設置した状態で、上方の面を上面、下方の面を下面、横を側面とする。面は特に平面である必要がなく、曲面であっても良い。上方から容器を見た場合に概ね見える部分を上面とし、下方から容器を見た場合に概ね見える部分を下面とし、横から容器を見た場合に概ね見える部分を側面とする。
本発明の洗浄用薬剤容器は、通常、略筺体であるが、球状、あるいは卵状であってもよい。容器が球状、あるいは卵状である場合は、上面と側面で重なり合う部分を有することになる。
容器内部には、洗浄用薬剤を収納し、流入した洗浄水により薬剤を溶解するための薬剤溶解室(8)、及び洗浄水入口から流入した洗浄水を一端溜めてからオーバーフローした洗浄水を薬剤溶解室に送り込むための洗浄水流速調整室(9)を有する。
「洗浄水入口」とは、洗浄水を容器内に取り込むための入口である。
「洗浄水出口」とは、容器内の洗浄水で、薬剤を溶解させる目的以外の洗浄水を容器外に排出するために、上面に設けている出口である。
「薬液出口」とは、薬液を排出するための出口である。薬液出口は、直径2mm以上が好ましく、それ以下であれば表面張力によって薬液が排出しにくくなり、また、薬液出口が大きすぎると洗浄水が流れ終わった後に流出する薬液の量が少なくなる。溜まった薬液量と薬液出口の大きさを適時調整することで、容器内に溜まった薬液が2〜10秒、好ましくは3〜6秒で流出すると効率的に便器の洗浄が出来る。
また、洗浄水出口の面積の合計と薬液出口の面積の合計は特に限定されるものではないが、洗浄水出口の面積の合計は薬液出口の面積の合計より大きい方が好ましく、2〜10倍好ましくは3〜6倍がさらに好ましい。容器内に取り込まれた洗浄水の大部分は上面の洗浄水出口より流出し、容器の外面の洗浄に使用され、薬剤を溶解した薬液は下面の薬液出口より流出し、洗浄水が流れている間は洗浄水に希釈されて便器壁面を洗浄し、洗浄水が流れ終わった後には容器内に残った薬液が洗浄水に希釈されずに流出し、便器下部の溜水部に流れ込み、汚れが発生しやすい溜水部を効率的に洗浄することが出来る。
また、容器壁面にスペーサーを1ヶ所以上有することができる。「スペーサー」は、容器壁面と便器壁面の間に設置されるものであって、容器全体が便器壁面に密着することを防ぐものである。スペーサーの形状はとくに限定されるものではないが、水の抵抗が少ない形状が好ましい。流線型、円形、半球状、線状等を例示することができる。また、スペーサーの材料は容器と同一であってもよく、便器とのクッション性を向上させるために、シリコンゴム、天然ゴム、軟質プラスティック等の材料を用いることもでき、強度を強くするために金属等の材料を用いることができる。スペーサーは下記誘導板や整流用フィンとは別に設置することができるが、下記誘導板や整流用フィンをスペーサーとして代替することもできる。
薬液出口は、通常、容器底面に設置するが、薬液出口に配管を設置することで、薬液出口の位置を容器の底部よりも上方に設置することができる。これにより薬液だまりを設けることができる。また、前記配管をS字にしてサイフォン式にすることにより、一旦、薬剤溶解室に洗浄水を溜めて、薬剤を溶解した後に薬液として排出することができる(図10)。
本発明の容器は、薬剤を出し入れするための薬剤用の出入口を有する。そのための構造としては、上面あるいは上面を含む本体(3)の上部を蓋(2)にして取り外し自在にしてもよいし、容器を2つ以上に縦に分解できるようにしてもよい。蓋と本体、あるいは分解した容器部分同士は、分離できるようにしてもよいし、一端を回動自在に軸着してもよい。
容器の上面あるいは蓋は、洗浄水出口の部分を周囲より高くして、洗浄水が周囲に流れ落ちやすくすることができる。
【0010】
(仕切り板)
本体には、縦方向の仕切り板(7)で仕切られた2ヶ所以上の空間を有している。仕切り板は、その一部に後記薬剤溶解室と洗浄水流速調整室とをつないで、洗浄水等が流れるようにするための開口部を有する。たとえば、仕切り板の上方に洗浄水や薬液が流れるための開口部を設けることができる。その場合、仕切り板の高さは、特に限定されるものではなく、高くすると前記開口部が狭くなるので流れる量を少なくすることができ、低くすると前記開口部が広くなるので流れる量を多くすることができる。仕切り板は、本体に設置することもできるし、上面に設置することもできる。上面に設置する場合は、上面と接する部分と接しない部分を有し、接しない部分で前記開口部を確保する。仕切り板を上面と全て接するようにして、仕切り板の下部に開口部を有するようにすることもできる。また、仕切り板を増やすことで、空間の数を増やすことができる。空間の数を増やすことで薬剤を2ヶ所以上に設置することが出来る(図8)。薬剤を2ヶ所以上設置することができれば、薬剤を一定期間毎に順次入れることで、薬剤が無くなることを防止することができる。
【0011】
(薬剤溶解室)
前記空間の内、少なくとも1ヶ所は「薬剤溶解室」(8)である。薬剤溶解室には、固形状の薬剤を設置することができる。薬剤の数は特に限定されるものではなく、1以上であればよい。薬剤溶解室の底面には突起物を設けて、薬剤を突起物上に載せるようにしてもよい。突起物を有する場合は、前記固形状の薬剤と本体との間に空間ができるので、ここに洗浄水が流れて前記薬剤を溶解させ易くなる。また、前記薬剤と本体とが密着しないので、薬剤が本体に固着することを防止できる。前記突起物の形状は、台形、円柱、三角錐、円錐、細長い棒状、または幾何学模様であってもよく、特に限定されるものではない。突起物の数は特に限定されるものではないが、1ヶ所以上あればよい。
薬剤溶解室には、底部に窪み(薬液だまり(14))を有することができる(図9)。薬液だまりを有することで、薬液を保存することができ、その薬液は次回洗浄水が流れてきたときに、洗浄水とともに薬液になるため、洗浄水が流入した初期に低濃度の薬液が排出されるのを防止することができる。
【0012】
(洗浄水流速調整室)
前記空間の内、少なくとも1ヶ所は「洗浄水流速調整室」(9)である。洗浄水流速調整室は、洗浄水が流入する入口と洗浄水を排出する口をそれぞれ1ヶ所以上有する。洗浄水流速調整室は、流入してきた洗浄水の流れを弱くして、その一部を前記薬剤溶解室へ供給するために設けている。流入してきた洗浄水の流れを弱くする方法としては、洗浄水の一部を薬剤溶解室以外へ排出することである。そのために、容器の上面に1つ以上の洗浄水出口を設けることである(図2)。別な方法としては、前記洗浄水出口の位置を側面に設けた洗浄水入口の位置に近づけることである。さらに別な方法としては、洗浄水流速調整室と薬剤溶解室の間にある仕切り板の形状をL字型にして、薬剤に直接洗浄水が当たらないような構造にすることもできる(図6)。さらに、洗浄水流速調整室と薬剤溶解室の間に2つの仕切り板を設け、一方は上方に開口部を設け、他方は下方に開口部を設けて、両方の仕切り板の間を狭くすることもできる(図7)。
【0013】
(誘導板)
本発明の容器は、前記洗浄水入口付近に、誘導板(10)を有する。誘導板はトイレの壁面に流れる洗浄水を効率的に容器内部へ誘導する形状であればよく、たとえば、洗浄水の流れに対して洗浄水入口後方に突起物を設けることができる。洗浄水が誘導板に当たり、その洗浄水の流れ方向が変化することで容器内部へ誘導することができる。誘導板は容器をトイレに設置したときに、トイレの内側壁面に接する方が好ましいが、特に限定されるものではない。誘導板が大きいと洗浄水を多く誘導でき、小さいと洗浄水を少なくすることができる。誘導板は洗浄水の流れに対して、斜めになる方が好ましいが、垂直に当たるように設置しても構わない。斜めに設置する場合は、容器側面と誘導板との角度は30〜60°が好ましいが、特に限定されるものではない。誘導板は洗浄水入口付近に1つ以上有する。
【0014】
(整流用フィン)
前記容器のトイレ便器設置側の側面に、整流用フィン(11)を設置することができる。「整流用フィン」とは、洗浄水の流れに対して洗浄水入口の前方に設けているフィンである。これを設けることで洗浄水を容易に洗浄水入口に導入することができる。また、整流用フィンがトイレ内部壁面に接した場合、容器と壁面との間に空間を設けることができるため、洗浄水の流れをせき止めずに洗浄水入口に導入することができる。整流用フィンは、1つ以上であれば良いが、好ましくは3つである。整流用フィンの形状は流線型である方が好ましいが、特に限定されるものではなく、整流できるか、または、容器と壁面との間に空間を設けることができればよい。
【0015】
(設置用部材)
本発明の容器を洋式トイレに設置する場合、設置用部材を用いる。設置用部材は容器に固着していても良く、着脱できるものであっても良い。また、複数の部材で構成されていても良い。
洗浄水が容器にあたって飛散することを防止するために、容器は便器壁面から離れて設置することができる。そのためには容器の便器壁面と接する面に洗浄水の流れを阻害しない大きさのスペーサーを設けることができる。また、設置用部材も便器面から容器を離して設置できるような構造とすることができる。
設置用部材の一例として、容器のトイレ壁面の反対側の側面に2つのL字型の部材(12)を設けることができる。この2つのL字型の部材の間に、板状の部材を挿入できるようにすることができる。この場合は、板状の部材の反対側の形状をコの字型にすることで、洋式トイレの縁に引っかけることができる(図12)。
【0016】
(薬剤)
薬剤は、特に限定されるものではないが、洗浄効果のある化合物を含有した固形状の薬剤(13)である。薬剤は打錠製剤であっても溶融成型錠剤であってもよく、適時、薬剤組成に最適な方法で薬剤を作製すればよい。
薬剤に含有する成分は洗浄効果のある化合物を含有していればよく、好ましくは、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤を含有する。さらに消臭成分、香料、着色成分等を添加することができる。
【0017】
(イオン性界面活性剤)
イオン性界面活性剤としては、アニオン界面活性剤が好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンラウリル硫酸塩等の硫酸塩、ミリスチン酸塩等のカルボン酸塩等を例示することができる。
イオン性界面活性剤の含有量は、全組成物の重量に対して、10〜90重量%、好ましくは、20〜70重量%、さらに好ましくは30〜50重量%である。
【0018】
(非イオン性界面活性剤)
非イオン性界面活性剤としては、プロピレンオキシド・エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル、アルキルトリメチルアンモニウムブロマイド、ポリエチレングリコール等を例示することができる。
非イオン性界面活性剤の含有量は、全組成物の重量に対して、10〜90重量%、好ましくは、20〜70重量%、さらに好ましくは30〜50重量%である。
【0019】
(消臭成分)
消臭成分は、水に拡散できる消臭成分であれば、特に限定されるものではない。水に拡散できる消臭成分とは、水に溶解することができる消臭成分、水に分散することができる消臭成分等である。
水に溶解することができる消臭成分としては、第四級アンモニウム塩、カテキン、タンニン、アミノ酸等を例示することができる。
水に分散することができる消臭成分としては、木炭や活性炭等を例示することができる。
消臭成分としては、好ましくは、第四級アンモニウム塩である。
消臭成分の含有量は、全組成物の重量に対して、0.001〜10重量%、好ましくは、0.002〜1重量%、さらに好ましくは0.005〜0.1重量%である。
【0020】
(香料)
香料としては、好ましい香りであれば特に限定されないが、本発明品としては、植物性香料が好ましく、ユーカリ精油がさらに好ましい。
植物性香料としては、アニス精油、アンゲリカ精油、イランイラン精油、イリス精油、ウイキョウ精油、オレンジ精油、カナンガ精油、カラウェー精油、カルダモン精油、グアヤクウッド精油、クミン精油、黒文字精油、ケイ皮精油、シンナモン精油、ゲラニウム精油、コパイババルサム精油、コリアンダー精油、シソ精油、シダーウッド精油、シトロネラ精油、ジャスミン精油、ジンジャーグラス精油、杉精油、スペアミント精油、西洋ハッカ精油、大茴香精油、チュベローズ精油、丁字精油、橙花精油、冬緑精油、トルーバルサム精油、パチュリー精油、バラ精油、パルマローザ精油、桧精油、ヒバ精油、白檀精油、プチグレン精油、ベイ精油、ベチバー精油、ベルガモット精油、ペルーバルサム精油、ボアドローズ精油、芳樟精油、マンダリン精油、ユーカリ精油、ライム精油、ラベンダー精油、リナロエ精油、レモングラス精油、レモン精油、ローズマリー精油、和種ハッカ精油等を例示することができる。
香料の含有量は、全組成物の重量に対して、0.01〜10.0重量%、好ましくは、
0.1〜5.0重量%、さらに好ましくは0.2〜1.5重量%である。
【0021】
(着色成分)
着色成分としては特に限定されるものではないが、水溶性が好ましい。また、着色成分自体に消臭効果、香料、洗浄効果等の効果を有していてもよい。
【0022】
(実施形態)
本発明品は、水洗トイレ、特に洋式トイレに使用することができる。洋式水洗トイレであれば、特に限定するものではないが、洗浄水がトルネード方式の洋式トイレが好ましい。洗浄水がトイレの縁から奥へ落ちる方式のトイレの場合でも、洗浄水入口に設置する誘導板の設置位置を変えることで使用することができる。
また、水の流れが左回りであることを前提に説明したが、水が右回りの場合は、左右逆にしたものを用いることができる。
【0023】
以下に本発明品の試験例を示す。
【0024】
試験例1
薬剤(ミリスチン酸を30質量%含有)を入れた、添付の図2〜5に示す本発明品を洋式トイレ(TOTO社製 型番:TCF9563R)に設置し、洗浄水を数回流した。その後、洋式トイレ内の水をサンプリングし、そのミリスチン酸を定量分析した結果、その値は0.01質量%であった。この値は十分便器を洗浄するのに十分な値であるので、本発明品によって薬液が供給できることを確認した。
試験例2
上記本発明品を1ヶ月間連続して使用した(およそ100回、洗浄水を流した)。その後、この容器表面の目視で確認した所、糞等の付着やその他の汚れは確認できなかった。これにより、容器自体を洗浄する機能を有していることを確認した。
【符号の説明】
【0025】
1 本発明の容器
2 蓋
3 本体
4 洗浄水入口
5 洗浄水出口
6 薬液出口
7 仕切り板
8 薬剤溶解室
9 洗浄水流速調整室
10 誘導板
11 整流用フィン
12 設置用部材
13 薬剤
14 薬液だまり
15 便器
16 便器壁面
17 便器の縁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12