【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 刊行物:2013年度精密工学会春季大会 学術講演会 講演論文集(発行所:公益社団法人精密工学会、発行日:平成25年2月27日)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構、復興促進プログラム(A−STEP)探索タイプ、「松葉杖形歩行支援装置の開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記足リンクは、ユーザーの足裏を支持する平板状のベース部と、該ベース部に取り付けられ、装着時にユーザーの踵の後方に位置するように設けられた延長部とを有しており、前記下回転対偶が前記延長部に設けられている請求項1〜5の何れか1項に記載の歩行支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
先ず、
図1、2において、第1の実施形態による歩行支援装置100は、上腿リンク12、下腿リンク14、足リンク20、上腿リンク12と足リンク20との間に延設された直動アクチュエータ40、上腿リンク12と直動アクチュエータ40とを連結する上回転対偶を形成する第1の連結機構30、直動アクチュエータ40と足リンク20とを連結する下回転対偶を形成する第2の連結機構30′、上腿リンク12と下腿リンク14とを連結する膝回転対偶を形成する第1のブレーキ18、下腿リンク14と足リンク20とを連結する足首回転対偶を形成する第2のブレーキ18′を主要な構成要素として具備している。
【0015】
第1と第2のブレーキ18、18′は実質的に同一の構造を有しており、ハウジング内に回転自在に支持された回転軸と、該回転軸の回転を許容、禁止可能な機械要素、例えば、クラッチや、磁性粉体(パウダーブレーキ)等を含んでいる。第1と第2のブレーキ18、18′は固定トルクの増大などのために遊星歯車などの減速機構を含んでいてもよい。歩行支援装置100の動作を円滑にするためには、第1と第2のブレーキ18、18′の固定、解放動作に際してトルク変動の緩やかなものが好ましい。
【0016】
図3を参照すると、下腿リンク14は、互いに平行に延設された複数の、本実施形態では2本の棒状部材14aと、該棒状部材14aの両端に取り付けられた対偶ブロック16とを具備している。対偶ブロック16は、棒状部材14aに対して垂直方向に延びる回転軸16aを回転自在に支持しており、該回転軸16aは第1と第2のブレーキ18、18′の回転軸に連結されるようになっている。棒状部材14aは、断面が円形、矩形その他の多角形状の中実または中空の金属製またはプラスチック製の長尺部材である。
【0017】
上回転対偶と下回転対偶を形成する第1と第2の連結機構30、30′は実質的に同一の構成を有しているので、以下、第1の連結機構30についてのみ説明する。
図1、2に加えて
図5を参照すると、第1の連結機構30は、軸線Oに沿って互いに離間配置された軸受ブロック32、34と該軸受ブロック32、34を連結する連結プレート36とを有して略コの字形に形成されたブロック本体を具備している。軸受ブロック32、34は、軸線Oを中心とした貫通穴32a、34aを有している。一方の軸受ブロック34は、一方の側面において軸線O上にポテンショメータやロータリーエンコーダ等の回転角度センサー38が取り付けられている。
【0018】
上腿リンク12は、概ね下腿リンク14と同様に構成されており、互いに平行に延設された複数の、本実施形態では、4本の棒状部材12aを具備している。該棒状部材12aにおいて装着時にユーザーの腰部に隣接した一端は、第1の連結機構30と同様に形成された第3の連結機構30″を介して装着部10に連結される。棒状部材12aの他端は、膝回転対偶としての第1のブレーキ18のハウジングに固定されている。棒状部材12aは、断面が円形、矩形その他の多角形状の中実または中空の金属製またはプラスチック製の長尺部材である。
【0019】
図4を参照すると、足リンク20は、ユーザーの足裏を支持する平板状のベース部22、該ベース部22の一方の側縁に沿ってベース部22の上面から突出する一対のブラケット24、26、および、該ブラケット24、26に取り付けられた複数の、本実施形態では、4本の棒状部材28を具備している。棒状部材28は、ブラケット24、26から水平に後方へ、つまり、装着時にユーザーの爪先とは反対側へ踵の後方に位置する足リンク20の延長部を形成する。該足リンク20の延長部としての棒状部材28には、下回転対偶を形成する第2の連結機構30′を介して直動アクチュエータ40が連結される。なお、足リンク20は、ベース部22の上にユーザーがその一方の足を載せ、ベルト(図示せず)等の拘束手段によってベース部22に足を固定するようになっている。棒状部材28は、断面が円形、矩形その他の多角形状の中実または中空の金属製またはプラスチック製の長尺部材である。
【0020】
図6、7を参照すると、本実施形態では、直動アクチュエータ40は、機関部50と、該機関部50に固定された第1静止リンク42と、クランク63と、連接棒64を介して第2静止リンク44に対して長手方向に直線的に往復自在に連結された可動リンク66とを主要な構成要素として具備して、スライダクランク機構を形成している。第1静止リンク42は、平行に延設された複数の、本実施形態では、2本の棒状部材より成り、その一端が機関部50のベース部52に固定され、他端に既述した対偶ブロック16と同様の対偶ブロック46が固定されている。第2静止リンク44は、平行に延設された複数の、本実施形態では、2本の棒状部材より成り、その一端がベース部52に固定され、他端に既述した対偶ブロック16と同様の対偶ブロック48が固定される。また、第1静止リンク42と第2静止リンク44は、直動アクチュエータ40の長手方向に互いに平行に延設されている。本実施形態において、第1静止リンク42および第2静止リンク44を形成する棒状部材は、断面が円形、矩形その他の多角形状の中実または中空の金属製またはプラスチック製の長尺部材である。
【0021】
機関部50は、上述したベース部52に固定された変速機54および該変速機54に取り付けられたモータ56を具備している。モータ56の出力軸56aには出力プーリー58が取り付けられている。変速機54の入力軸54aには入力プーリー60が取り付けられており、出力プーリー58と入力プーリー60とはベルト62によって連結されている。変速機54の出力軸54bは、クランク63と連接棒64を介して可動ブロック66に連結されている。また、機関部50のベース部52には、第1静止リンク42および第2静止リンク44に平行に延設されたガイドロッド68が取り付けられており、可動ブロック66はガイドロッド68に沿ってベース部52に対して延設方向に接近、離反可能となっている。
【0022】
以下、本実施形態の作用を説明する。
図8はヒトに装着した歩行支援装置100の模式図を示している。
図8において、白丸は受動回転対偶を示し、黒丸はブレーキ付き回転対偶を示している。より詳細には、Pは、第3の連結機構30″によって形成される装着部10と上腿リンク12との間の回転対偶であり、Uは、第1の連結機構30によって形成される上回転対偶であり、Lは、第2の連結機構30′によって形成される下回転対偶であり、Kは、第1のブレーキ18によって形成される膝回転対偶であり、Aは、第2のブレーキ18′によって形成される足首回転対偶であり、Mは直動アクチュエータ40である。装着時に第1のブレーキ18はユーザーの膝に隣接するように配置され、第2のブレーキ18′はユーザーの足首または踝に隣接するように配置される。上腿リンク12および下腿リンク14は、ユーザーの体格に応じて、第1と第2のブレーキ18、18′のそのような配置を可能とする長さに設定される。
【0023】
本実施形態では、歩行支援装置100は、膝回転対偶Kを形成する第1のブレーキ18を固定すると共に足首回転対偶Aを形成する第2のブレーキ18′を解放して、直動アクチュエータ40を伸展させると、
図9Aに示すように、足首回転対偶Aが反時計回りの方向に回転し、直動アクチュエータ40が収縮すると、
図9Bに示すように、足首回転対偶Aが時計回りの方向に回転する。反対に、第2のブレーキ18′を固定すると共に第1のブレーキ18を解放して、直動アクチュエータ40を伸展させると、
図10Aに示すように、膝回転対偶Kが
図10において反時計回りの方向に回転し、直動アクチュエータ40が収縮すると、
図10Bに示すように、膝回転対偶Kが時計回りの方向に回転する。
【0024】
図11は、ヒトの歩行過程を示した1つの歩行動作モデルを示している。
図11において、状態Iは左足を前に右足を後にしてヒトが立っている状態である。状態Iから、後側の足(
図11では右足)を後方に蹴り出して体重を前側の足(
図11では左足)に移しつつ重心を前方へ移動させる(状態II)。次いで、状態IIから、蹴り出した後側の脚の膝を曲げて下腿を上方に回転させて後側の足が床面または地面から離反せつつ、股関節を回転させて上腿を前方へ振り出すことによって、接地している側の足(
図11では左足)に体重が完全に移る(状態III)。次いで、状態IIIから、股関節を更に回転させることによって、蹴り出した側の脚、特にその膝が接地している側の脚の膝の前方へ移動する(状態IV)。このとき、蹴り出した側の脚では、次の接地へ向けて爪先が上方へ移動するように足首が回転する。状態IVから、股関節が更に回転することによって、振り出した側の足は接地している側の足よりも歩幅分だけ前方へ移動する(状態V)。このとき膝関節は下腿を伸ばすように回転する。そして、振り出した足を接地させ、足の裏面全体が床面または地面に接触すると状態Iとなる。但し、このとき、最初の状態Iとは左右の足が入れ替わっていることは理解されよう。
【0025】
図12、13を参照して、上記歩行動作モデルに適合した本実施形態の歩行支援装置100の操作を説明する。ここでは、歩行支援装置100は右足に装着しているものとする。
図13は、直動アクチュエータ40としてのスライダクランク機構の変位および第1と第2のブレーキ18、18′の固定と解放のタイミングを示したチャートである。
【0026】
状態Iから状態IIへの移行に際して、第1のブレーキ18を固定すると共に第2のブレーキ18′を解放して、直動アクチュエータ40を収縮させる。これによって、足首回転対偶Aが
図12の矢印R
1で示すように時計回りの方向に回転して、後方への蹴り出し動作が補助される。
【0027】
直動アクチュエータ40は、状態IIから状態IIIへの移行期においても収縮を継続しているが、この間、第1のブレーキ18が解放されると共に第2のブレーキ18′が固定される。これによって、膝回転対偶Kが
図12の矢印R
2で示すように時計回りの方向に回転し、蹴り出した足の床面または地面から上方への離反動作が補助される。このとき、例えば、爪先が床面または地面から上方へ5cm程度離れるように直動アクチュエータ40の収縮量を調節する。状態IIIから状態IVへの移行期の途中で、直動アクチュエータ40は最も収縮した状態となる。この後、歩行支援装置100を装着したユーザーの股関節を中心とした脚の回転動作による爪先の高さの低下を補償するために、第1のブレーキ18を固定しつつ第2のブレーキ18′を解放し、直動アクチュエータ40の伸展運動を開始する。これにより、足首回転対偶Aが矢印R
3で示すように反時計回りの方向に回転され、爪先が上方へ上がる運動が補助される。状態IVにおいて、足底が股関節の鉛直下方向にある最下点を通過する。
【0028】
状態IVから状態Vへの移行期では、直動アクチュエータ40は伸展動作を継続する。この期間の前半では、上の状態から引き続いて第1のブレーキ18が固定され、かつ、第2のブレーキ18′が解放される。該移行期の後半では、第1のブレーキ18が解放され、かつ、第2のブレーキ18′が固定される。これによって、該移行期の前半では前の期間に引き続き足首回転対偶Aが反時計回りの方向に爪先が上方へ上がるように回転し、後半では膝回転対偶Kが矢印R
4で示すように反時計回りの方向に回転する。
【0029】
歩行支援装置100は、該装置を装着する脚(装着脚)が麻痺している場合でも、歩行運動の創成や体幹の支持を可能とする。装着脚が麻痺している場合を含め、装置の使用中に使用者の転倒を防止し、安全な歩行支援を達成するため、使用者の身体と歩行支援機械から成る運動系の重心位置や足裏反力を力覚センサー、姿勢センサー、接触センサー等を用いて測定し、歩行支援装置100の適切な運動軌道を創成することが望ましい。以下、このような使用者の転倒を防止しながら適切な歩行支援を行うための歩行支援装置100の制御について説明する。
【0030】
歩行支援装置100を制御するために用いられる計装システムの一例を
図14に示す。
図14において、計装システムは、歩行支援装置100を使用者の胴体に装着するための装着部10に取り付けられた制御器70、計装システムに電力を供給するためのバッテリー72、および、使用者の胴体の3次元空間内での姿勢を測定する姿勢角センサー74、第1の連結機構30に設けられ上腿リンク12と直動アクチュエータ40との間の角度αを測定するための第1の角度センサー78、第2の連結機構30′に設けられ直動アクチュエータ40と足リンク20との間の角度βを測定する第2の角度センサー82、第3の連結機構30″に設けられ装着部10に対する上腿リンク12の角度γを測定する第3の角度センサー76、直動アクチュエータ40の変位量または長さを測定する変位センサーまたは測長センサー80、足リンク20の底面に取り付けられた力覚センサー86および接触センサー88を備えている。また、制御器70には、使用者が手に持って歩行支援装置100を操作するための操作部としての握りスイッチ90が接続されている。
【0031】
制御器70は、例えば、ROM、RAM、CPU、一連のセンサー74、78、82、76、80、86、88および握りスイッチ90のための入力インターフェースとしてのA/Dコンバーター、バッテリー72からの電力を受け入れる受電素子、直動アクチュエータ40のモーター56、第1と第2のブレーキ18、18′へ電力を出力する出力素子、および、これらの要素を相互接続するバスを含むマイクロコンピュータとすることができる。また、制御器70は、歩行支援装置100を起動、停止させるためのスイッチや、歩行支援装置100の作動状態を示す、例えばLEDや液晶パネルのような表示部を備えていてもよい。
【0032】
更に、
図14において、力覚センサー86および接触センサー88は、足リンク20の底面において、踵側および爪先側に配置されているように図示されているが、これは、単に力覚センサー86および接触センサー88が足リンク20の底面に取り付けられていることを示すものであって、本発明において力覚センサー86および接触センサー88の配置がこれに限定される趣旨ではない。力覚センサー86および接触センサー88の個数、配置は、必要に応じて適宜決定することができる。
【0033】
次に、
図15に示すフローチャートを参照して、歩行支援装置100の制御方法を説明する。
使用者が、ベルト等を用いて装着部10を胴体に固定することによって、歩行支援装置100をその身体に装着した後、握りスイッチ90または制御器70上に設けられたメインスイッチ(図示せず)によって歩行支援装置100を起動する(ステップS10)と、ステップS12において、歩行運動を開始するに際して使用者が安定した直立姿勢にあり、かつ足裏が安定して地面と接触していることが確認される。その際、(1)姿勢センサー74からの信号の変化が所定範囲内にあり使用者の身体がふらついていないこと、(2)力覚センサー86からの信号の変化が所定範囲内にあり足リンク20の裏面にしっかりと反力が作用していること、(3)接触センサー88からの信号から足リンク20が床面に接触していることが確認される。(1)〜(3)の条件が満たされていない、つまりステップS12においてNoの場合、ステップS12における判定が繰り返される。
【0034】
ステップS12においてYesとなると、ステップS14において、握りスイッチ90がOnになっているか否かが判定される。その際、握りスイッチ90が使用者の意図に反してOnされている場合を除外し歩行支援装置100の誤操作を防止するため、握りスイッチ90がOnされている時間τが所定の時間τ
0以上継続しているか否かが判定される。握りスイッチ90がOnされている時間τが所定の時間τ
0継続していない場合(ステップS14でNoの場合)、制御フローはステップS12へ帰還する。
【0035】
握りスイッチ90がOnされている時間τが所定の時間τ
0以上となると(ステップS14でYesの場合)、直動アクチュエータ40および第1と第2のブレーキ18、18′への指令値が更新され、第1〜第3の角度センサー78、82、76および変位センサー80からの信号に基づくフィードバック制御によって、
図11〜
図13を参照して説明したように歩行支援装置100を駆動して歩行動作が生成される(ステップS16)。この操作は歩行運動の1周期が完了するまで継続する(ステップS24)。その間、歩行状態が不安定になったり握りスイッチが離されたりした場合(ステップS18、S20の何れか一方でNoの場合)には強制的に直立静止状態に移行させる。すなわち、ステップS18において、(4)姿勢センサー74からの信号から使用者の身体が極端に傾いていないこと、(5)姿勢センサー74からの信号に急激な変化がないこと、(6)力覚センサー86からの信号に急激な変化がないこと(足リンク20が床面から離れる瞬間は除く)が確認され、ステップS20において握りスイッチ90がOnされていることが確認される。その際、誤動作や瞬間的な外乱による暴走を防止するため、歩行支援を中断する前には異常状態が一定時間継続したことを確認する(ステップS22)。つまり、ステップS22では、異常状態の時間tが所定時間t
0以上となっているか否かが判定される。
【0036】
その後、使用者が安定した直立姿勢を取っていること、すなわち、(7)姿勢センサー74からの信号に急激な変化がないこと、(8)力覚センサー86からの信号の変化が所定範囲内にあること、(9)接触センサー88と力覚センサー86からの信号から足リンク20が床面に接触していることが確認され(ステップS26)、条件が満たされていなければ(ステップS26でNoの場合)、一連のセンサー74、78、82、76、80、86、88からの情報を元に安定した直立状態となるよう歩行支援装置100の姿勢を調整する(ステップS28)。
【0037】
条件(7)〜(9)が満たされている場合(ステップS26でYesの場合)またはステップS28における歩行支援装置100の姿勢調整の後、直動アクチュエータ40と第1と第2のブレーキ18、18′を固定して待機状態に移行し(ステップS30)、制御フローは終了する(ステップS30)。この制御フローを繰り返すことによって、使用者の継続的な歩行動作が支援される。
【0038】
次に、
図16、17を参照すると、本発明の第2の実施形態による歩行支援装置200が図示されている。第1の実施形態による歩行支援装置100では、上回転対偶Uは、上腿リンク12において、装着部10が連結される端部である第3の連結機構30″と、膝回転対偶Kを形成する第1のブレーキ18との間に設けられている。これに対して歩行支援装置200では、上回転対偶を形成する第1の連結機構30は、上腿リンク12において膝回転対偶Kの外側、つまり、上腿リンク12において第1のブレーキ18よりも下方に突出した延長部分15に設けられている。第2の実施形態による歩行支援装置200のその余の構成は、第1の実施形態による歩行支援装置100と概ね同様となっている。従って、
図16、17において、第1の実施形態と同様の構成要素には
図1、2と同じ参照番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0039】
本実施形態では、歩行支援装置200は、膝回転対偶Kを形成する第1のブレーキ18を固定すると共に足首回転対偶Aを形成する第2のブレーキ18′を解放して、直動アクチュエータ40を伸展させると、
図18Aに示すように、足首回転対偶Aが反時計回りの方向に回転し、直動アクチュエータ40が収縮すると、
図18Bに示すように、足首回転対偶Aが時計回りの方向に回転する。反対に、第2のブレーキ18′を固定すると共に第1のブレーキ18を解放して、直動アクチュエータ40を収縮させると、
図19Aに示すように、膝回転対偶Kが反時計回りの方向に回転し、直動アクチュエータ40が伸展すると、
図19Bに示すように、膝回転対偶Kが時計回りの方向に回転する。
【0040】
図12、20を参照して、上記歩行動作モデルに適合した本実施形態の歩行支援装置200の操作を説明する。
図20は、直動アクチュエータ40としてのスライダクランク機構の変位および第1と第2のブレーキ18、18′の固定と解放のタイミングを示した
図13と同様のチャートである。
【0041】
状態Iから状態IIへの移行に際して、第1のブレーキ18を固定すると共に第2のブレーキ18′を解放して、直動アクチュエータ40を収縮させる。これによって、足首回転対偶Aが
図12の矢印R
1で示すように時計回りの方向に回転して、後方への蹴り出し動作が補助される。
【0042】
状態IIから状態IIIへの移行期においては、第1のブレーキ18を解放すると共に第2のブレーキ18′を固定して、直動アクチュエータ40を伸展させる。これによって、膝回転対偶Kが
図12の矢印R
2で示すように時計回りの方向に回転し、蹴り出した足の床面または地面から上方への離反動作が補助される。このとき、例えば、爪先が床面または地面から上方へ5cm程度離れるように直動アクチュエータ40の伸展量を調節する。この後、歩行支援装置200を装着したユーザーの股関節を中心とした脚の回転動作による爪先の高さの低下を補償するために、直動アクチュエータ40の伸展は継続しながら第1のブレーキ18を固定しつつ第2のブレーキ18′を解放する。これにより、足首回転対偶Aが矢印R
3で示すように反時計回りの方向に回転され、爪先が上方へ上がる運動が補助される。状態IVにおいて、足底が股関節の鉛直下方向にある最下点を通過する。
【0043】
状態IVから状態Vへの移行期の直前から、直動アクチュエータ40は収縮動作を開始し、第1のブレーキ18が解放され、かつ、第2のブレーキ18′が固定される。これによって、膝回転対偶Kが矢印R
4で示すように反時計回りの方向に回転する。
【0044】
上述した第1と第2の実施形態では、直動アクチュエータ40としてスライダクランク機構を用いたので、モータ56の回転方向を変更することなく、モータ56の回転速度の制御と第1と第2のブレーキ18、18′のオン・オフ(固定、解放)制御のみで、状態Iから状態Vへ至る全てのプロセスを実行することができる。従って、従来技術のように、モータの回転方向の変更に伴う消費電力の増大が防止される。モータの回転方向の反転がある場合、モータの消費動力のピーク値は歩行運動全体で算出した平均値の2倍程度にまで達するが、歩行支援装置100、200ではそうした消費電力の大きなピークはなくなり、モータ自体も小型化される。更に、モータ56が反転しないので、慣性力に伴う駆動トルクの急激な変化が防止され歩行支援装置100、200の動作が円滑になる。
【0045】
また、既述の説明から理解されるように、本実施形態では、ヒトの歩行運動は1自由度である、つまり腰部と足部との間の距離の時間的変化として表現が可能であるので、歩行支援装置100、200は、腰部と足部の2箇所のみで、ユーザーの身体に取り付けられる。また、歩行支援装置100、200は、ヒトの歩行運動は1自由度であることに着目して、1つの直動アクチュエータによってヒトの歩行運動を創成している。そして、実際の歩行運動の蹴り出し時および着地時の下腿および足部の姿勢を2つのブレーキ18、18′によって創成するようにしている。
【0046】
また、ヒトの歩行運動の状態IIIから状態IVを経て状態Vへ至る過程では、ヒトは股関節を回転させることによって下肢全体を前方へ振り出しているが、歩行支援装置100、200は、この動作の補助、支援は行なっていない。