【実施例1】
【0012】
図1は、実施例1に係る半導体装置の上面図である。
図2(a)は、
図1のA−A間の断面図、
図2(b)は、
図1のB−B間の断面図である。なお、
図1では、樹脂封止部を透視して図示している。
図1から
図2(b)のように、実施例1の半導体装置100は、ダイパッド10と入力端子12と出力端子14と基準電位端子16とを含むリードフレーム18と、プリント基板である樹脂基板20と、半導体チップ22と、樹脂封止部24と、を有する。なお、実施例1では、基準電位がグランド電位である場合を例に説明するが、グランド電位以外の電位の場合でもよい。リードフレーム18は、例えば銅等の金属からなる。樹脂基板20は、例えばガラスエポキシ基板又はポリイミド基板を含む。半導体チップ22は、例えば高周波及び高出力で動作する半導体チップであり、窒化物半導体を用いた高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)チップである。なお、窒化物半導体としては、例えばGaN、InN、AlN、InGaN、AlGaN、InAlN、InAlGaNが挙げられる。樹脂封止部24は、例えばエポキシ樹脂からなる。
【0013】
樹脂基板20は、導電性接着剤26によって、ダイパッド10の上面に実装されている。導電性接着剤26は、例えば金−錫の合金、銀、又は半田など金属を含むペーストを用いることができる。樹脂基板20は、中央部分にダイパッド10の表面を露出する開口部28を有している。半導体チップ22は、この開口部28内で、導電性接着剤26によって、ダイパッド10の上面に実装されている。半導体チップ22の上面には、半導体チップ22の上面に形成された機能部分におけるゲート及びドレインに電気的に接続されたゲート電極パッド30及びドレイン電極パッド32が設けられている。半導体チップ22の下面には、半導体チップ22の上面に形成された機能部分におけるソースに、半導体チップ22を貫通するビア配線(不図示)によって電気的に接続されたソース電極パッド34が設けられている。
【0014】
樹脂基板20上には、入力配線36(入力整合回路)、出力配線38(出力整合回路)、及び基準電位配線40が設けられている。入力配線36と出力配線38とは、開口部28を挟んで設けられている。入力配線36は、半導体チップ22のゲート電極パッド30に第1ワイヤ46a(第1接続部:第1接続部はワイヤ以外にもリボンを用いることができる)によって電気的に接続され、入力端子12に第2ワイヤ46b(第2接続部:第2接続部はワイヤ以外にもリボンを用いることができる)によって電気的に接続されている。したがって、ゲート電極パッド30と入力端子12とは、入力配線36を介して電気的に接続されている。出力配線38は、半導体チップ22のドレイン電極パッド32に第1ワイヤ46a(第1接続部)によって電気的に接続され、出力端子14に第2ワイヤ46b(第2接続部)によって電気的に接続されている。したがって、ドレイン電極パッド32と出力端子14とは、出力配線38を介して電気的に接続されている。半導体チップ22のソース電極パッド34は、導電性接着剤26を介して、ダイパッド10に電気的に接続されている。ダイパッド10は、樹脂封止部24の下面から露出していて、これにより、半導体チップ22で発生した熱を効果的に放熱させることができると共に、ダイパッド10を基準電位(例えばグランド電位)とすることができる。したがって、ソース電極パッド34は、ダイパッド10に電気的に接続されることで、基準電位に接続されている。
【0015】
基準電位配線40は、樹脂基板20を貫通するビア配線42を介して、樹脂基板20の下面に設けられた金属膜43に電気的に接続されている。樹脂基板20は導電性接着剤26によってダイパッド10に接続されていることから、金属膜43、ビア配線42、及び基準電位配線40は、ダイパッド10に電気的に接続されている。したがって、金属膜43、ビア配線42、及び基準電位配線40は基準電位に接続されている。
【0016】
樹脂基板20上に、基準電位配線40と入力配線36とに跨るチップ部品44が、導電性接着剤26によって実装されている。つまり、チップ部品44は、基準電位配線40と入力配線36との間に電気的に接続されている。チップ部品44は、例えば容量チップである。樹脂基板20、半導体チップ22、第1ワイヤ46a、及び第2ワイヤ46bを封止して樹脂封止部24が設けられている。入力端子12、及び出力端子14の下面は、樹脂封止部24の下面から露出している。
【0017】
図3は、実施例1に係る半導体装置を示す回路図である。
図3のように、入力端子Inから出力端子Outにかけて、インダクタL1、L2、L3、HEMT22a、インダクタL4、L5が直列に接続されている。インダクタL3は、HEMT22aのゲート電極Gに接続され、インダクタL4は、HEMT22aのドレイン電極Dに接続されている。HEMT22aのソース電極Sは基準電位(例えばグランド電位)に接続されている。インダクタL1とL2との間のノードn1と基準電位(例えばグランド電位)との間にキャパシタC1が接続されている。インダクタL4とL5との間のノードn2と基準電位(例えばグランド電位)との間にキャパシタC2が接続されている。
【0018】
HEMT22aは、
図1及び
図2(a)における半導体チップ22に対応する。インダクタL1は、入力端子12と入力配線36との間の第2ワイヤ46bにより生成される。インダクタL2は、入力配線36により生成される。インダクタL3は、入力配線36と半導体チップ22との間の第1ワイヤ46aにより生成される。インダクタL4は、半導体チップ22と出力配線38との間の第1ワイヤ46aにより生成される。インダクタL5は、出力配線38と出力端子14との間の第2ワイヤ46bにより生成される。キャパシタC1は、チップ部品44によるキャパシタである。キャパシタC2は、出力配線38により生成される。
【0019】
入力端子Inに入力された高周波信号は、HEMT22aにより増幅されて、出力端子Outから出力される。HEMT22aの入力側にインダクタL1、L2、L3とキャパシタC1とが接続され、出力側にインダクタL4、L5とキャパシタC2とが接続されている。このため、入力側及び出力側におけるインピーダンス整合がなされる。
【0020】
次に、実施例1に係る半導体装置の製造方法について説明する。
図4は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図4のように、まず、中央部分に開口部28を有すると共に、入力配線36、出力配線38、基準電位配線40、ビア配線42、及び金属膜43が形成された樹脂基板20を形成する(ステップS10)。開口部28は、例えばルータ加工によって形成することができる。
図5は、樹脂基板20を示す上面図である。なお、
図5では、入力配線36等の図示は省略している。
図5のように、複数の樹脂基板20が形成された多面取り構造とすることができる。多面取り構造を採用することで、複数の半導体装置を同時に形成することが可能となり、製造コストを削減できる。以下において、複数の樹脂基板20が形成された基板を多面取り樹脂基板と称すこととする。
【0021】
図4に戻り、多面取り樹脂基板に含まれる複数の樹脂基板20それぞれにチップ部品44を搭載する(ステップS12)。ダイパッド10、入力端子12、出力端子14、及び基準電位端子16を有するリードフレーム18が複数形成された多面取り構造のリードフレーム(以下、多面取りリードフレームと称す)を準備する。多面取りリードフレーム上に、導電性接着剤26を挟んで、多面取り樹脂基板を配置する(ステップS14)。この際、各樹脂基板20が、各リードフレーム18のダイパッド10上になるように位置合せをする。これにより、複数の樹脂基板20をダイパッド10上に同時に配置することができる。
【0022】
各樹脂基板20の開口部28内のダイパッド10上に、導電性接着剤26を挟んで、半導体チップ22を配置する(ステップS16)。その後、導電性接着剤26を熱硬化させる(ステップS18)。これにより、各樹脂基板20と各半導体チップ22とが、ダイパッド10の上面に固定される。
【0023】
半導体チップ22と樹脂基板20上に形成された入力配線36及び出力配線38との間、並びに、入力配線36及び出力配線38と入力端子12及び出力端子14との間を、第1ワイヤ46a及び第2ワイヤ46bを用いて、ワイヤボンディングする(ステップS20)。樹脂基板20、半導体チップ22、第1ワイヤ46a、及び第2ワイヤ46bを封止する封止樹脂を充填し、熱硬化させる(ステップS22)。これにより、樹脂基板20、半導体チップ22、第1ワイヤ46a、及び第2ワイヤ46bを封止する樹脂封止部24が形成される。その後、半田めっきを行った後、ダイシングを行って、半導体装置100を個片化する(ステップS24)。このような工程を含んで、実施例1の半導体装置100が形成される。
【0024】
ここで、実施例1の半導体装置100の効果を説明するにあたり、まず、比較例1の半導体装置について説明する。
図6は、比較例1に係る半導体装置の断面図である。
図6のように、樹脂基板60上に、導電性接着剤62によって、半導体チップ64が実装されている。半導体チップ64の上面に設けられたゲート電極パッド(不図示)は、ワイヤ78によって、入力配線70とチップ部品72とに電気的に接続されている。チップ部品72は、入力側のインピーダンス整合を行う整合回路を形成するためのチップ部品であり、例えば容量チップである。入力配線70は、樹脂基板60を貫通して設けられたビア配線74を介して、樹脂基板60の下面に設けられた入力端子76に電気的に接続されている。
【0025】
半導体チップ64の上面に設けられたドレイン電極パッド(不図示)は、ワイヤ78によって、出力配線80とチップ部品82とに電気的に接続されている。チップ部品82は、出力側のインピーダンス整合を行う整合回路を形成するためのチップ部品であり、例えば容量チップである。出力配線80は、樹脂基板60を貫通して設けられたビア配線84を介して、樹脂基板60の下面に設けられた出力端子86に電気的に接続されている。
【0026】
半導体チップ64下の樹脂基板60には、半導体チップ64で発生した熱を放熱させるためのビア金属90が設けられている。ビア金属90は、樹脂基板60の下面に設けられた金属膜92に接続されている。樹脂基板60上には、半導体チップ64等を封止する樹脂封止部94が設けられている。
【0027】
比較例1では、半導体チップ64で発生した熱は、ビア金属90を介して放熱されることになるため、熱抵抗が高くなり、良好な放熱性が得られない。また、入力端子76及び出力端子86は、樹脂基板60の下面に設けられる。ビア金属90に接続された金属膜92も、樹脂基板60の下面に設けられる。このため、樹脂基板60の下面に、入力端子76、出力端子86、及び金属膜92を形成するためのパターン形成工程が必要となるため、製造コストが増大してしまう。
【0028】
一方、実施例1では、半導体チップ22は、樹脂基板20に設けられた開口部28内のダイパッド10上に実装されている。ダイパッド10は、銅等の金属からなることから、優れた放熱性が得られる。また、ダイパッド10、入力端子12、及び出力端子14はリードフレーム18からなり、樹脂基板20上に配置され、開口部28を挟んで設けられた入力配線36及び出力配線38は、第2ワイヤ46bによって入力端子12及び出力端子14に接続されている。このため、樹脂基板20の下面に形成される金属膜43をベタ膜とすることができ、比較例1のようなパターン形成が不要となるため、製造コストを削減することができる。
【0029】
実施例1では、半導体チップ22の前後に入力配線36、及び出力配線38がそれぞれ設けられている。半導体チップ22に対して、入力配線36及び出力配線38は高い精度で位置あわせされる必要がある。つまり、半導体チップ22に対して、入力整合回路および出力整合回路は、高い精度で位置あわせされる必要がある。入力整合回路や出力整合回路は、半導体チップと別部品であるので、これらを個別に用意した場合には、それぞれの位置あわせ精度が加算されることから、その相対的な位置精度のばらつきが大きくなる。また、入力整合回路と出力整合回路を一体に形成すると、これらを構成する基板には、半導体チップ22を収容する開口部を設ける必要がある。ところで、整合回路部品を構成するために一般に用いられる材料はセラミックスである。しかしながら、上記のように入力整合回路および出力整合回路を一体化したうえ、さらに開口部を設けると、セラミックスの割れや欠けが生じやすい。いっぽう、実施例1ではこの基板材料として樹脂を採用している。樹脂で基板を構成すれば、モールド型を利用した整形が可能になり、その形状の自由度が向上する。実施例1では、以上の構成を採用することにより、半導体チップ22と入力整合回路及び出力整合回路の位置関係が高精度に規定できるとともに、基板を容易に構成することができる効果を有している。
【0030】
樹脂基板20を用いて、整合回路のキャパシタを形成する場合には、チップ部品によって形成することが好ましい。そこで、樹脂基板20を貫通するビア配線42を形成し、ビア配線42を通じて、樹脂基板20の上面の金属(基準電位配線40)と下面の金属(金属膜43)とが電気的に接続される構成とする。これにより、
図1のように、樹脂基板20上に、基準電位配線40と入力配線36との間に接続されたキャパシタであるチップ部品44を搭載することができる。以上により、樹脂基板20上に、半導体チップ22の入力側のインピーダンス整合を行う整合回路を形成することができる。
【実施例2】
【0031】
図7は、実施例2に係る半導体装置の上面図である。実施例1の半導体装置100では、
図1のように、樹脂基板20は、中央部分に開口部28が設けられたO字型形状をしている。一方、実施例2の半導体装置200では、
図7のように、樹脂基板20aは、第1方向(
図6では左右方向)に延在する一対の第1領域50と、第1方向に交差する第2方向(
図6では上下方向)に延在し、一対の第1領域50の端部に接続する第2領域52と、で形成されたU字型形状をしている。半導体チップ22は、一対の第1領域50の間でダイパッド10上に実装されている。この形状にすることで、半導体チップ22がダイパッド10上に実装された状態を、樹脂基板20aがU字型形状の開放されている方向から検査(目視検査)することができる。その他の構成は、実施例1の
図1と同じであるため説明を省略する。
【0032】
実施例2のように、樹脂基板20aは、第1方向に延在する一対の第1領域50と第2方向に延在し、一対の第1領域50の端部に接続する第2領域52とで形成される場合でもよい。つまり、樹脂基板20aは、片側が開放されたU字型である場合でもよい。この場合でも、半導体チップ22は、一対の第1領域50の間でダイパッド10上に実装されることができるため、優れた放熱性が得られる。
【0033】
実施例1及び実施例2のように、ダイパッド10上に実装される樹脂基板は、1つからなる場合が好ましいが、2つ以上に分かれている場合でもよい。樹脂基板が1つからなる構成とすることで、製造を容易にすることができる。また、キャパシタであるチップ部品は、基準電位配線と入力配線との間に接続される場合に限らず、基準電位配線と出力配線との間に接続されていてもよい。つまり、樹脂基板に、キャパシタであるチップ部品によって、半導体チップ22の出力側のインピーダンス整合を行う整合回路が形成されていてもよい。このように、チップ部品は、基準電位配線と入力配線との間及び基準電位配線と出力配線との間の少なくとも一方に接続されていてもよい。即ち、樹脂基板は、半導体チップ22の入力及び出力の少なくとも一方のインピーダンス整合を行う整合回路を有していてもよい。
【0034】
樹脂基板は、単層の場合に限らず、多層からなる場合でもよい。樹脂基板が多層からなる場合、テフロン(登録商標)等の高周波損失の小さい材料からなる上層とガラスエポキシ等の安価な材料からなる下層とからなる多層基板のように、異なる材料からなる層を有する多層基板としてもよい。また、半導体チップ22のドレイン電極を半導体チップ22の出力端子としたが、ゲート電極又はソース電極を出力端子としてもよい。さらに、半導体チップ22は、窒化物半導体を用いたHEMTの場合に限らず、窒化物半導体又はGaAs系半導体を用いた電界効果トランジスタチップの場合でもよいし、電界効果トランジスタチップ以外の場合でもよい。窒化物半導体を用いた電界効果トランジスタチップは、高周波及び高出力で動作されることから、発熱量が大きい。したがって、半導体チップ22が窒化物半導体を用いた電界効果トランジスタチップである場合に、本発明を適用することが好ましい。
【0035】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。