(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のノズル型の吹出口装置は前記各特許文献に示される構成となっており、調和空気の温度に応じて吹出し角度を変えて、吹出し気流の到達距離を長くすることはできたものの、調整内容は到達距離に係る点のみであり、ノズル型の特徴である吹出し気流の指向性が強い点に変化はないことから、壁等の吹出口装置の設置対象箇所に一旦設置固定すると、その後は吹出し方向の細かい調整は行えず、あらかじめ空気調和が適切に行える吹出口配置を設定していない場合や、吹出口装置の設置後に空気調和対象となる居住域の状況が変わった場合には、居住域における空気調和に不都合が生じ、空気調和による快適な環境が得にくくなるという課題を有していた。
【0006】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、吹出口左右への吹出し方向調整を可能として、空気調和に係る調整の柔軟性を高め、壁等への設置の後においても吹出し方向の調整で好ましい空気調和状態が得られる吹出口装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る吹出口装置は、上流側から供給される調和空気を通過させる円形の開口部を取囲んだ略円筒体として形成され、空気調和対象となる空間に面する壁又は天井に配設される吹出口本体と、当該吹出口本体より小径の略円筒体で形成され、当該略円筒体の円筒中心軸と前記吹出口本体の円筒中心軸のいずれとも直角をなす第1の軸を傾動中心として、吹出口本体に軸支されて吹出口本体開口部に傾動可能に配設される第1案内ノズルと、当該第1案内ノズルより小径の略円筒体で形成され、当該略円筒体の円筒中心軸、第1案内ノズルの円筒中心軸、及び前記第1の軸のいずれとも直角をなす第2の軸を傾動中心として、第1案内ノズルに軸支されて第1案内ノズル内側の開口部に傾動可能に配設される第2案内ノズルと、一部を前記第2案内ノズルに、他部を前記第1案内ノズルにそれぞれ連結されて前記吹出口本体の開口部に配設され、周囲の温度に応じて一部を他部に対し変位させ、前記第2案内ノズルを第1案内ノズルに対し傾動させる傾動手段とを備え、前記吹出口本体が、前記第2案内ノズルの第2の軸を中心とする傾動が上下方向になされるような向きとして配設され、前記傾動手段が、周囲を通過する調和空気が冷房時の温度である場合には、第2案内ノズルの円筒中心軸方向を前記第1案内ノズルの円筒中心軸方向と略一致させ、且つ、調和空気のとり得る温度範囲内で、調和空気の温度が高くなるほど、第2案内ノズルの円筒中心軸が前記第1案内ノズルの円筒中心軸に対し下向きに傾いた角度、が大きくなるように第2案内ノズルを傾動させるものである。
【0008】
このように本発明によれば、略円筒体である吹出口本体の開口部に第1案内ノズルを配設すると共に、第1案内ノズルの開口部にさらに第2案内ノズルを配設し、第1案内ノズルに対する第2案内ノズルの向きを、調和空気の温度に応じて同じ向きから下に傾けた向きまで傾動手段によって調整可能とした上で、第1案内ノズルを第2案内ノズルごと吹出口本体に対し左右に傾動可能として、調和空気の吹出しの向きを左右方向に調整できるようにしたことから、壁等に設置した後でも、吹出口装置からの調和空気の吹出し方向を柔軟に設定でき、空気調和の対象となる居住域の状況に合わせて吹出し状態を適切なものとすることができる。また、吹出し方向が調整可能であり、吹出口本体の取付けの向きのみで吹出し方向が決まることはないため、壁等への取付けの際に吹出口本体の向きを厳密に設定する必要がなく、取付けの作業能率を高めて吹出口設置に係るコストも抑えられる。
【0009】
また、本発明に係る吹出口装置は必要に応じて、前記第2案内ノズルの内側における前記第2の軸より上流側である部位に、第2案内ノズルの円筒中心軸、及び前記第2の軸のいずれとも平行となる薄板状の気流案内板が、ノズル内の開口部を挟んで対向する第2案内ノズルの内周の二箇所間に架け渡されて固定配設されるものである。
【0010】
このように本発明によれば、第2案内ノズル内側の開口部に、気流案内板が開口部を横断する配置として第2案内ノズルと一体に配設され、吹出口本体の開口部を通過する調和空気の一部が気流案内板に沿って流れ、空気調和対象空間に向かうことにより、第2案内ノズルの傾動と共に向きを変える気流案内板が、第2案内ノズルによる調和空気の案内方向と同じ向きへの調和空気の進行を促して、調和空気温度に応じた吹出し方向へのよりスムーズで無理のない吹出しを実行でき、空気調和の効率を高められる。また、気流案内板が第2の軸と平行となる向きで第2案内ノズルにその開口部を横断するようにして配設されることで、第2案内ノズルの強度を高められ、第2案内ノズルの変形を抑えて変形に基づく異音等の悪影響を排除できる。さらに、第2案内ノズルを傾けない場合でも、気流案内板の案内が加わることで吹出し気流の直進性が向上することとなり、従来のように壁への付着の影響を回避し直進性を高めるために壁から吹出口本体の先端部分を大きく突出させる構造が必要なく、先端部分を壁からほとんど突出させないデザインを採用でき、デザイン面での制約を少なくして吹出口装置の適用箇所を増やせる。
【0011】
また、本発明に係る吹出口装置は必要に応じて、前記第1案内ノズルが、薄板製で内周側及び外周側に突出部分を一体形成されない円筒からなると共に、円筒内周の前記第2案内ノズルを軸支する部分の一方における近傍部位と軸支する部分の他方における近傍部位との間に架け渡して配設される連結用部材を有し、当該連結用部材が、第1案内ノズルの円筒中心軸、及び前記第2の軸のいずれとも平行となる略板状体とされてなり、第1案内ノズルにおける前記傾動手段の他部を連結される部位とされるものである。
【0012】
このように本発明によれば、薄板で形成した円筒である第1案内ノズルに対し、傾動手段の他部を連結するための連結用部材を、円筒内周の軸支部分近傍における対向する部分間に架け渡すようにして、第2案内ノズルを支持する第1案内ノズルの強度を向上させることにより、円筒をなす材質が薄くても変形が生じにくく、変形に基づく悪影響を抑え、ノズルとして適切に調和空気の気流を案内できる。また、第1案内ノズルと一体の連結用部材を略板状体とし、調和空気通過の際に抵抗体として作用しないものとすることで、圧力損失を抑えられ、且つ、調和空気の一部が連結用部材に沿ってこれの影響を受けつつ進行することで、調和空気の気流を第1案内ノズルで調整した方向へ進むのを促すことができ、空気調和の効率を高められる。さらに、第1案内ノズルを突出部分のない円筒形状とし、円筒に沿って気流がスムーズに流れる状態を得ていることにより、ノズル内外における気流通過の際の抵抗を抑え、吹出しに係る圧力損失と共に風切り音等の騒音を低減できる。加えて、第1案内ノズル各部に埃が付着しにくく、ノズルの汚損を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る吹出口装置を前記
図1ないし
図7に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係る吹出口装置1は、空気調和の対象となる室内空間に面する壁50に横向きに配設される略円筒形の吹出口本体10と、この吹出口本体10の開口部10aに傾動可能に配設される略円筒形の第1案内ノズル11と、この第1案内ノズル11の内側に傾動可能に配設される略円筒形の第2案内ノズル12と、この第2案内ノズル12と第1案内ノズル11との間に配設されて第2案内ノズルを第1案内ノズルに対し傾動させる傾動手段13とを備える構成である。
【0015】
前記吹出口本体10は、上流側から供給される調和空気を通過させる円形断面の開口部10aを取囲んだ略円筒体として形成される構成である。吹出口本体10の先端部には額縁部10bが折り曲げ形成され、この額縁部10bが壁材に接する状態で配設される。額縁部10bは吹出口本体10の円筒形部分に対し直角に近い角度をなすよう形成しているため、壁面からの吹出口本体突出量は極めて小さい。
【0016】
この吹出口本体10は、壁50の内側でダクト51に接続されて調和空気を供給され、この調和空気を室内空間側開口から室内空間へ吹出す仕組みである。吹出口本体10における内周面の対向する上下の二箇所には、吹出口本体10の円筒中心軸と直角をなす第1支持軸部11aが内側の開口部10aへ突出する状態で取付けられ、この第1支持軸部11aを介して第1案内ノズル11が傾動可能に軸支される。
【0017】
前記第1案内ノズル11は、吹出口本体10より小径の略円筒体で形成され、この略円筒体の円筒中心軸と吹出口本体10の円筒中心軸のいずれとも直角をなす第1の軸を傾動中心として、より具体的には、前記第1の軸に中心を一致させた配置の第1支持軸部11aと連結されて、吹出口本体10に軸支されて吹出口本体10の開口部10aに傾動可能に配設される構成である。
【0018】
この第1案内ノズル11は、その外周面上下部分を第1支持軸部11aと連結されているが、この上下の第1支持軸部11aと第1案内ノズル11及び/又は吹出口本体10とが相対回動可能として連結されることで、第1案内ノズル11が吹出口本体10に対し横方向へ向きを調整可能とされる仕組みである。
【0019】
こうして、第1案内ノズル11を、その内側の第2案内ノズル12も含めて吹出口本体10に対し横へ傾動させて、調和空気の吹出し方向を左右に調整できることから、吹出口本体10を壁50に取り付けた後でも、調和空気の吹出し方向を室内空間の居住域の状況に合わせて柔軟に設定でき、また、壁50への取付けの際に吹出口本体10の向きを厳密に設定する作業を省略でき、取付け作業のコスト低減が図れる。
【0020】
この第1案内ノズル11における、前記第1支持軸部11aの取付け位置から約90°ずれた内周面の対向する左右の二箇所には、第1案内ノズル11の円筒中心軸と直角をなす第2支持軸部11bが内側の開口部11cへ突出する状態で取付けられ、この第2支持軸部11bを介して第2案内ノズル12が傾動可能に支持される。
【0021】
第1案内ノズル11は、詳細には、薄板製で内周側及び外周側に突出部分を一体形成されない円筒からなり、表面は光の反射の極めて少ない黒色塗装仕上げ面とされる構成である。また、第1案内ノズル11には、前記傾動手段13の他部を取り付けられる前記連結用部材としての連結用板部14が、第1案内ノズル11の二箇所の第2支持軸部11b取付け部分のうち一方における上流側近傍部位と、他方における上流側近傍部位との間に架け渡して配設される。
【0022】
こうして第1案内ノズル11において対向する第2支持軸部11b取付け部分の近傍部位間に連結用板部14を配設し、第2支持軸部11b取付け部分の剛性を高めて第1案内ノズル11全体の強度を向上させていることで、調和空気の気流からの力や、第2案内ノズルの傾動に伴う力を受けても、第1案内ノズル11の変形が生じにくく、変形に基づく悪影響を抑えられる。
【0023】
この連結用板部14は、薄板状体で形成され、その板面が第1案内ノズル11の円筒中心軸、及び第2支持軸部11bのいずれとも平行となる向きとして取り付けられる。そして、その表面は第1案内ノズル11同様の黒色塗装仕上げ面とされる。
【0024】
第1案内ノズル11を突出部分のない薄板製の円筒で構成し、円筒に沿って気流がスムーズに流れる状態を得られることに加え、連結用板部14を気流に対する抵抗の小さい薄板状体としていることで、第1案内ノズル11全体として調和空気の通過に係る圧力損失を小さくできると共に、風切り音等の騒音も抑えられる。さらに、薄板製で正面側における投影面積の小さい第1案内ノズル11及び連結用板部14の各表面を光の反射の少ない黒色塗装仕上げ面とすることで、第1案内ノズル11及び連結用板部14をほとんど目立たせず、吹出口装置を一般的な二重ノズル型の吹出口に近いシンプルな外観として、ノズル多重化による違和感を軽減できる。
【0025】
前記第2案内ノズル12は、第1案内ノズル11より小径の略円筒体で形成され、この略円筒体の円筒中心軸、第1案内ノズル11の円筒中心軸、及び前記第1の軸のいずれとも直角をなす第2の軸を傾動中心として、より具体的には、前記第2の軸に中心を一致させた配置の第2支持軸部11bと連結されて、第1案内ノズル11に軸支されて第1案内ノズル11の内側の開口部11cに傾動可能に配設される構成である。
【0026】
第2案内ノズル12は、吹出側先端縁部をカール加工して強度を高めた略円筒体とされ、その円筒軸方向を第1案内ノズル11のそれと一致させた状態では、第1案内ノズル11の吹出側端面位置と略一致する配置として、第2支持軸部11bを介して第1案内ノズル11の内側に取り付けられ、吹出口本体10の開口部中央に配設される。この第2案内ノズル12における一方の第2支持軸部11bとの連結部分のある側部には、前記傾動手段13の一部を連結するためのリンク板12aが一体に取付固定される。
【0027】
また、第2案内ノズル12の内側で、前記第2の軸、具体的には、第2支持軸部11b、より上流側の部分に、第2案内ノズル12の円筒中心軸、及び第2支持軸部11bのいずれとも平行となる薄板状の気流案内板15が配設される。
【0028】
この気流案内板15は、第2案内ノズル内側の開口部12bを横断し、且つ第2案内ノズル12の上流側端部から所定長さ突出する大きさとして形成され、開口部12bを挟んで対向する第2案内ノズル12の内周の二箇所間に架け渡されて固定配設される構成である(
図3参照)。この気流案内板15の表面も、光の反射の極めて少ない黒色塗装仕上げ面とされる。そして、気流案内板15は、第2案内ノズル12の円筒軸方向を第1案内ノズル11のそれと一致させた状態で、第2案内ノズル12の正面側(下流側)から見て、第1案内ノズル11の連結用板部14の前方(下流側)に重なるように位置することとなる(
図1、
図2参照)。
【0029】
第2案内ノズル12は調和空気の気流から力を受けるが、気流案内板15が第2案内ノズル12にその開口部12bを横断する配置で一体に配設されることで、第2案内ノズル12の強度は高くなっており、第2案内ノズル12の変形や変形に伴う振動・異音等の発生を抑制できる。なお、気流案内板15は第2案内ノズル12の開口部12bを二等分する位置に一つ設けられる構成に限られるものではなく、第2案内ノズル12の円筒中心軸、及び第2支持軸部11bのいずれとも平行となる向きの気流案内板を複数所定間隔で設けるようにしてもよい。
【0030】
前記傾動手段13は、一部を第2案内ノズル12に、他部を第1案内ノズル11にそれぞれ取り付けられて吹出口本体10の開口部10aに配設され、周囲の温度に応じて一部を他部に対し変位させ、第2案内ノズル12を第1案内ノズル11に対し傾動させるものである。
【0031】
傾動手段13は、詳細には、第1案内ノズル11の連結用板部14に支持されるアクチュエータ16と、所定長さの細長い略板状部材として形成されて、その両端部をアクチュエータ16と第2案内ノズル12のリンク板12aにそれぞれ連結されるリンクアーム17とを備える構成である。
【0032】
前記アクチュエータ16は、周囲の気体の温度変化に対応して本体部16aからのニードル16bの突出量を変化させる、公知のいわゆるワックスサーモエレメントであり、詳細な説明を省略する。このアクチュエータ16は、連結用板部14に取付固定されたアクチュエータ支持枠13aを介して、連結用板部14に支持される。アクチュエータ16のニードル16bがアクチュエータ支持枠13aに連結固定される一方、本体部16aはアクチュエータ支持枠13aに対し移動可能として支持される。アクチュエータ16の本体部16aには、リンクアーム17の端部が連結される他、本体部16aにニードル16bを相対的に押込む方向に本体部16aを付勢するスプリング13bが併設される。
【0033】
前記リンクアーム17は、その一端部を、第2案内ノズル12と一体に前記第2の軸を傾動中心として傾動するリンク板12aに対し、第2の軸、すなわち第2支持軸部11bの中心、から所定距離離れた部位で第2支持軸部11bと平行な軸を中心に回動可能に軸支されて連結される。また、リンクアーム17の他端部はアクチュエータ16の本体部16aに連結されており、アクチュエータ16の固定されたニードル16bに対する本体部16aの温度変化に応じた移動に伴って、リンクアーム17が前後方向に動き、このリンクアーム17と連結するリンク板12aを揺動させることで、第2案内ノズル12を傾動させる、一種のクランク機構が構成されている。
【0034】
このような傾動手段13により、第2案内ノズル12を第1案内ノズル11に対して所定角度に傾け、吹出方向を変化させられる仕組みである。第2案内ノズル12の傾動範囲は、第1案内ノズル11に対する第2案内ノズル12の大きさ、並びに、リンク板12a、リンクアーム17、及びアクチュエータ16のリンクをなす各部品の配置関係によって決り、室内空間の諸条件や用途に応じて適切な範囲となるようそれぞれの寸法や配置等が決定される。本実施形態においては、第2案内ノズル12の傾動範囲が、横向き(0°)から下方に30°までの範囲に設定されている。
【0035】
こうした傾動手段13を用いることで、調和空気の温度に応じて第2案内ノズル12が傾動し、第1案内ノズル11に対する角度を調整される。冷房の場合には、冷気に当ったアクチュエータ16の本体部16aがニードル16bを引き込むような状態変化を生じることに基づき、本体部16aがスプリング13bの付勢によりニードル16bを相対的に引込んで突出量を小さくするように移動し、第1案内ノズル11に対し第2案内ノズル12の角度を起して横向き(
図2参照)とし、冷気をそのまま横方向に吹出して室内に分散させる。暖房の場合には、暖気に当ったアクチュエータ16の本体部16aがニードル16bを押出すような状態変化を生じることに基づき、本体部16aがスプリング13bの付勢に抗ってニードル16bを相対的に押出して突出量を大きくするように移動することにより、第1案内ノズル11に対し第2案内ノズル12の角度を下方へ傾け(
図6参照)、軽い暖気を斜め下向きに吹出して暖気の上昇を抑えつつ到達距離を伸ばし、室内空間全体を暖められるようにしている。
【0036】
なお、アクチュエータ16としては、ワックスサーモエレメントに限らず、他の感熱応動部材として、温度変化に応じて一部を他部分に対し変位させる性質のある形状記憶合金等を用いることもできる。
【0037】
次に、本実施形態に係る吹出口装置における調和空気温度による吹出し方向の調整状態について説明する。第1案内ノズル11は吹出口本体10に対し第1支持軸部11aを中心として横方向に傾動し、また、第2案内ノズル12は第1案内ノズル11に対し第2支持軸部11bを中心として傾動する仕組みとなっており、従来の吹出口装置と同様に、調和空気の温度に応じて第2案内ノズル12を第1案内ノズル11に対し所定角度傾動させ、室内空間側へ向う調和空気の吹出し方向を温度に応じた適切なものに調整できる他、居住域の状況に応じて、第1案内ノズル11の吹出口本体10に対する傾斜角度を調節して、室内空間側へ向う調和空気の気流を左右方向についても変化させることができる。
【0038】
冷えた調和空気が吹出口装置1を経て室内空間側に供給されている冷房の場合には、アクチュエータ16は、壁内のダクト51を通じて供給される冷房用の調和空気との接触で、本体部16aからのニードル16bの突出量を小さくする状態となることから、本体部16aはアクチュエータ支持枠13aに対し最も前方寄りの位置となり、本体部16aに連結されたリンクアーム17も、リンク板12aとの連結位置を最も前方に位置させた状態となる(
図2参照)。この場合、第2案内ノズル12は通常の冷房時状態として吹出口本体10同様に横向きの状態にあり、ダクト51から送られた冷気を吹出口本体10、第1案内ノズル11、及び第2案内ノズル12に沿って直進させて略水平に室内空間に吹出す。室内の空気より重い冷えた調和空気を水平に吹出すことで、室内空間において最大限の到達距離を得ることができる。
【0039】
調和空気の気流が吹出口本体10の開口部10a、特に第1案内ノズル11内側の開口部11cを直進するにあたり、第1案内ノズル11に設けられた連結用板部14と第2案内ノズル12に設けられた気流案内板15が、吹出口本体10の円筒軸方向に並び、調和空気の一部がこれら連結用板部14と気流案内板15に沿ってこれらの影響を受けつつ進行することで、調和空気の気流が直進して第1案内ノズル11の正面側へ進むのを促すこととなり、吹出口装置から直進する気流をスムーズに吹き出すことができる。
【0040】
この時、吹出口本体10に対する第1案内ノズル11の向きを調整した場合(
図4、
図5参照)、横方向の傾けた向きに冷えた調和空気が向かうこととなり、居住域における調和空気を到達させたい箇所が、吹出口装置の設置時の想定と異なる、すなわち吹出口装置の正面方向からずれている状況においても、所望の到達状態を得られる。
【0041】
一方、暖房の場合には、温かい暖房用の空気の影響により、アクチュエータ16は、本体部16aからのニードル16bの突出量を増大させるように動作して、本体部16aはアクチュエータ支持枠13aに対し最も後方の位置となり、本体部16aに連結されたリンクアーム17も、リンク板12aとの連結位置を最も後方に位置させた状態となる(
図6参照)。これにより、第2案内ノズル12を冷房時の横向きの状態(
図2参照)から、第1案内ノズル11に対して下方に所定角度(例えば、30°)分傾動させることとなる。
【0042】
ダクト51から送られた暖気は、吹出口本体10及び第1案内ノズル11に沿って進みつつ、第2案内ノズル12により進行方向を変えられ、第2案内ノズル12と同じ傾斜角度で斜め下向きに室内空間に吹出す。第2案内ノズル12内側の開口部12bに、第2案内ノズルの円筒中心軸と平行な気流案内板15を設けていることで、吹出口本体10の開口部10aにおける調和空気の気流は、これを第2案内ノズル12による案内方向へ進めようとする力をより多く受けることとなり、調和空気の気流は傾いた第2案内ノズル12の正面側、すなわち吹出口本体10の円筒軸方向に対し下に傾いた向きにスムーズに吹出される。こうして暖気を斜め下方向へ吹出すことで、室内空間の空気より軽い暖気を早期に天井側へ向かわせることなく、室内空間のより広い範囲へ効率よく均等に到達させられる。
【0043】
この暖房の場合も、吹出口本体10に対する第1案内ノズル11の向きを調整すると(
図7参照)、この第1案内ノズル11を傾けた方向に温かい調和空気が第2案内ノズル12の下向き傾斜の影響を受けつつ進行することとなり、居住域における調和空気を到達させたい箇所が吹出口装置の正面方向にあるか否かに関わりなく、調和空気の所望の到達状態を得られる。
【0044】
このように、本実施形態に係る吹出口装置においては、略円筒体である吹出口本体10の開口部10aに第1案内ノズル11を配設すると共に、第1案内ノズル11の開口部11cにさらに第2案内ノズル12を配設し、第1案内ノズル11に対する第2案内ノズル12の向きを、調和空気の温度に応じて同じ向きから下に傾けた向きまで傾動手段13によって調整可能とした上で、第1案内ノズル11を第2案内ノズル12ごと吹出口本体10に対し左右に傾動可能として、調和空気の吹出しの向きを左右方向に調整できるようにしたことから、壁50に設置した後でも、吹出口装置1からの調和空気の吹出し方向を柔軟に設定でき、空気調和の対象となる居住域の状況に合わせて吹出し状態を適切なものとすることができる。また、吹出し方向が調整可能であり、吹出口本体10の取付けの向きのみで吹出し方向が決まることはないため、壁等への取付けの際に吹出口本体10の向きを厳密に設定する必要がなく、取付けの作業能率を高めて吹出口設置に係るコストも抑えられる。
【0045】
なお、前記実施形態に係る吹出口装置で、傾動手段13としてワックスサーモエレメントのアクチュエータ16により各リンクを動かして第2案内ノズル12を傾動させる機構を用いる構成としているが、これに限らず、傾動手段としては、アクチュエータやリンクを用いたものに限らず、第2案内ノズルを直接又は減速機構を介して、調和空気の温度に応じた制御を受ける電動機により駆動して、第1案内ノズルに対し傾動させる構成とすることもできる。
【0046】
また、前記実施形態に係る吹出口装置において、第1案内ノズル11に設ける連結用部材としての連結用板部14は、一枚の略板状体で形成されて単純に第1案内ノズル11に固定されて配設される構成としているが、これに限らず、
図8に示すように、連結用板部14に補助案内板14aを配設し、傾動手段13と連動する新たなリンク機構を用いて、第2案内ノズル12を下に傾けた場合に補助案内板14aも下へ傾ける構成とすることもでき、第1案内ノズル11における連結用板部14の箇所においても調和空気の気流が斜め下に進行するのを促すことができる。
【0047】
さらに、前記実施形態に係る吹出口装置において、第2案内ノズル12に設ける気流案内板15は、一枚の略板状体で形成されて単純に第2案内ノズル12に固定されて配設される構成としているが、これに限らず、
図9に示すように、気流案内板18を複数の板を重ねつつその一部が可動となるように構成し、傾動手段13と連動する新たなリンク機構を用いて、第2案内ノズル12を下に傾けた場合に気流案内板18の一部を上流側(後方)へずらし、気流案内板18を全体として上流側に延長する構成とすることもでき、調和空気との接触の機会を増やして、調和空気の気流に対する斜め下向きへの案内性能をより一層向上させられる。