【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0038】
試験例1:窒素含有量の多い模擬廃水の水処理
窒素含有量の多い廃水を想定し、下記の表1に示す組成を有する合成下水培地を水道水で300倍に希釈した模擬廃水(15L)について、
図1に示す装置を7日間運転し、下記の方法により処理前及び7日後(処理後)の模擬廃水の化学的酸素要求量(COD)の測定を行った。以下において、
図1に示す水浄化処理装置を用いた例を実施例1と記載する。
【0039】
【表1】
【0040】
なお、本試験例において、
図1に示す第1の圧送手段4により圧送される処理対象水の単位時間あたりの流量は300mL/分と、第2の圧送手段7により圧送される処理対象水の単位時間あたりの流量は85mL/分となるようにそれぞれ設定した。また、
図1に示す好気性微生物処理部2及び嫌気性微生物処理部5には、微生物吸着多孔質担体としてポリビニルアルコール系樹脂を充填したカラムをそれぞれ用いた。またさらに、
図1に示す好気性微生物処理部2には、微生物吸着多孔質担体としてポリビニルアルコール系樹脂を充填したカラム(カラム内径:50mm、カラム長:200mm、カラム容量:380ml)を1本、及び嫌気性微生物処理部には同カラムを1本、それぞれ用いた。
【0041】
さらに、比較対象として、装置を用いなかった例(比較例1−1)、並びに
図1に示す装置のうち、好気性微生物処理部2及び嫌気性微生物処理部5を有しない装置を用いた例(比較例1−2)、嫌気性微生物処理部5を有しない装置を用いた例(比較例1−3)、及び好気性微生物処理部2を有しない装置を用いた例(比較例1−4)についても同様の試験を行った。
【0042】
<化学的酸素要求量(COD)の測定方法>
各サンプル水100mLを300mL容三角フラスコにそれぞれ取り、硝酸銀0.2g、濃硫酸10mL、及び過マンガン酸カリウム水溶液10mLを加え、ウォーターバスで100℃、30分間加熱した。加熱後、さらに、シュウ酸ナトリウム水溶液(ファクター(f)=1.005)10mLを加え、過マンガン酸カリウム水溶液で滴定し、次式を用いて化学的酸素要求量(COD)を算出した。
【0043】
【数1】
【0044】
実施例1及び比較例1−1〜1−4による処理前後のCODの変化を下記表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2から明らかなように、
図1に示す水浄化処理装置を用いた場合(実施例1)には、比較例1−1〜1−4の場合と比較して、CODが大きく減少することが確認できた。当該結果から、窒素含有量の多い水を浄化するためには、好気性微生物処理部及び嫌気性微生物処理部を共に備えた装置を用いて、緩やかな対流を発生させること及び微生物による処理を行うことが重要であることが分った。特に、好気性微生物処理部と嫌気性微生物処理部とを共に備えることにより、好気性微生物による処理及び嫌気性微生物による処理の相乗効果によって浄化処理が促進されることが分った。
【0047】
試験例2:炭素含有量の多い模擬止水の浄化処理試験
炭素含有量の多い止水を想定し、下記の表3に示す組成を有する模擬止水環境水(15L)について、試験例1と同様にして、
図1に示す水浄化処理装置を7日間運転し、処理前及び7日後(処理後)の模擬止水環境水の化学的酸素要求量(COD)の測定を行った。以下において、
図1に示す装置を用いた例を実施例2と記載する。
【0048】
さらに、試験例1と同様にして、比較対象として、装置を用いなかった例(比較例2−1)、並びに
図1に示す装置のうち、好気性微生物処理部2及び嫌気性微生物処理部5を有しない装置を用いた例(比較例2−2)、嫌気性微生物処理部5を有しない装置を用いた例(比較例2−3)、及び好気性微生物処理部2を有しない装置を用いた例(比較例2−4)についても同様の試験を行った。
【0049】
【表3】
【0050】
実施例2及び比較例2−1〜2−4による処理前後のCODの変化を下記表4に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
表4から明らかなように、
図1に示す装置を用いた場合(実施例2)には、比較例2−1〜2−4の場合と比較して、CODが大きく減少することが確認できた。当該結果から、炭素含有量の多い水を浄化するためには、好気性微生物処理部及び嫌気性微生物処理部を共に備えた装置を用いて、緩やかな対流を発生させること及び微生物による処理を行うことが重要であることが分った。特に、好気性微生物処理部と嫌気性微生物処理部とを共に備えることにより、好気性微生物による処理及び嫌気性微生物による処理の相乗効果によって浄化処理が促進されることが分った。
【0053】
試験例3−1:自然止水域の水質調査試験
2013年4月16日から2014年4月14日の期間、約2週間ごとに立命館大学びわこ・くさつキャンパス内にある八左衛門池の水の化学的酸素要求量(COD)、全炭素量(TC)、及び全窒素量(TN)を測定することにより水質調査を行った。八左衛門池の概観を
図2に示す。
【0054】
なお、化学的酸素要求量(COD)の測定は試験例1及び2と同様にして行い、全炭素量(TC)及び全窒素量(TN)の測定は、全有機炭素計(TOC−VCPH、島津製作所社製)を用いて下記表5に示す条件により行った。
【0055】
【表5】
【0056】
化学的酸素要求量(COD)、全炭素量(TC)、及び全窒素量(TN)の測定結果を下記表6及び
図3〜5に示す。
【0057】
【表6】
【0058】
試験例3−2:実止水域水の浄化処理試験
2013年4月16日から2014年4月14日の期間、約2週間ごとに八左衛門池から水200Lを汲み取り、
図1に示す水浄化処理装置を2週間運転した後、試験例3−1と同様にして化学的酸素要求量(COD)、全炭素量(TC)、及び全窒素量(TN)の測定を行った。
【0059】
なお、本試験例において、
図1に示す第1の圧送手段4により圧送される処理対象水の単位時間あたりの流量は3L/分と、第2の圧送手段7により圧送される処理対象水の単位時間あたりの流量は2.4L/分となるようにそれぞれ設定した。また、
図1に示す好気性微生物処理部2内をより好気的環境とするために、第1の循環路に空気導入手段を接続した(図示なし)。さらに、
図1に示す嫌気性微生物処理部5内をより嫌気的環境とするために、第2の圧送手段には、15分間処理対象水の圧送を行い、45分間処理対象水の圧送を停止させる圧送制御手段を接続した(図示なし)。またさらに、
図1に示す好気性微生物処理部2には、微生物吸着多孔質担体としてポリビニルアルコール系樹脂を充填したカラム(カラム内径:52mm、カラム長:347mm)を6本、及び嫌気性微生物処理部には同カラムを3本、それぞれ用いた。
【0060】
化学的酸素要求量(COD)の測定結果を下記表7に、全炭素量(TC)の測定結果を下記表8に、及び全窒素量(TN)の測定結果を下記表9にそれぞれ示す。なお、下記表7〜9では、例えば、2013年5月16日に汲み取った水について2週間処理を行った後のCOD、TC及びTNの測定結果を「5/16」の行に記載している。また、下記表7〜9における「処理前COD」、「処理前TC」及び「処理前TN」は、上記試験例3−1において行った水質調査結果のデータを記載している。
【0061】
【表7】
【0062】
【表8】
【0063】
【表9】
【0064】
表7〜9から明らかなように、2週間の処理によって、COD、TC及びTNが減少することが確認できた。当該結果から、好気性微生物処理部及び嫌気性微生物処理部を共に備えた装置を用いて、緩やかな対流を発生させると同時に微生物による処理を行うことにより、効果的に水処理が行われることが明らかとなった。特に、好気性微生物処理部と嫌気性微生物処理部とを共に備えることにより、好気性微生物による処理及び嫌気性微生物による処理の相乗効果によって浄化処理が促進されることが分った。
【0065】
試験例3−3: カラム内に存在する微生物群の解析
<環境DNA法(eDNA法)による微生物数の解析>
試験例3−2で用いた浄化処理装置における好気性微生物処理部2及び嫌気性微生物処理部5内の微生物数(即ち、ポリビニルアルコール系樹脂に担持された微生物数)を、下記の環境DNA法(eDNA法)により解析した。
【0066】
50mL容遠沈管に各処理部におけるポリビニルアルコール系樹脂1.0gを量り取り、下記表10に示す組成のDNA抽出緩衝液(pH8.0)8.0mL、及び20%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム溶液1.0mLを加え、室温にて1500rpmの条件で20分間攪拌した。攪拌後、50mL容遠沈管から滅菌済み1.5mLマイクロチューブに1.5mLサンプルを分取し、20℃、8000rpmの条件で10分間遠心分離した。遠心分離後、水層を新たなマイクロチューブに700μL分取し、クロロホルム・イソアミルアルコール(24:1、v/v)を700μL加えて混和した後、16℃、13000rpmの条件で10分間遠心分離した。遠心分離後、水層を新たなマイクロチューブに500μL分取し、2−プロパノールを300μL加えて緩やかに混和し、16℃、13000rpmの条件で10分間遠心分離した。遠心分離後、上清を除去し、70%(v/v)エタノールを500μL加え、16℃、13000rpmの条件で5分間遠心分離した。遠心分離後、上清を除去し、アスピレーターで30分間減圧乾燥させた。その後、これに下記表11に示す組成の10:1TE緩衝液(pH8.0)を50μL加え、よく溶解させたものをeDNA溶液とした。
【0067】
【表10】
【0068】
【表11】
【0069】
次いで、eDNA溶液5.0μLにLoading Dye(東洋紡社製)1.0μLを混合し、全量6.0μL、及び既知量のDNAを含むSmart Ladder(ニッポン・ジーン社製)1.5μLを、下記表12に示す組成の1.0%アガロースゲルの各ウェルにアプライし、100Vで40分間電気泳動を行った。その後、アガロースゲルにUVを照指し、KODAK1D Image Analysis software(KODAK社製)により、エチジウムブロマイドを標識とした蛍光強度の測定を行った。Smart Ladderの蛍光強度の測定値から、バンドの蛍光強度に対するDNA量の検量線を作成し、これを基に各サンプルDNA溶液のバンドの蛍光強度からDNA量を求め、各ポリビニルアルコール系樹脂1.0gあたりのeDNA量を算出した。
【0070】
【表12】
【0071】
【表13】
【0072】
上記で算出したeDNA量から、DAPI染色による総生菌数に換算する関係式Y=1.7×10
8X(R
2=0.96)[Y:微生物数(cells/g−PVA)、X:eDNA量(g/g−PVA)]を用いて、各ポリビニルアルコール系樹脂1.0gあたりの微生物数を算出した。算出結果を下記表14に示す。
【0073】
【表14】
【0074】
表14から明らかなように、好気性微生物処理部及び嫌気性微生物処理部におけるポリビニルアルコール系樹脂には、1×10
9(cells/g−PVA)以上の微生物が担持されており、一般的な土壌環境における微生物数(6×10
8(cells/g−soil))よりも多くの微生物が好気性微生物処理部及び嫌気性微生物処理部内に棲息していることが確認できた。当該結果から、好気性微生物処理部及び嫌気性微生物処理部では自然環境に近い、あるいは自然環境よりも良好な微生物環境が形成されており、これにより効率的な処理が行われていることが示唆された。
【0075】
<PCR−DGGE法による微生物群の解析>
試験例3−2で用いた水浄化処理装置における好気性微生物処理部2及び嫌気性微生物処理部5における微生物群(即ち、ポリビニルアルコール系樹脂に吸着された微生物群)を、下記のPCR−DGGE(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis;変性剤濃度勾配ゲル電気泳動)法により解析した。
【0076】
試験例3−3の方法により得られたeDNA溶液をテンプレートとし、PCR反応によって微生物の16S rRNA遺伝子におけるV3領域を含む領域の増幅を行った。200μL容チューブに下記表15に示すPCR溶液を加え、サーマルサイクラー(BIOLAD社製)にセットして、下記表16に示す条件でPCRを行った。PCRに用いたプライマーの塩基配列を下記表17に示す。
【0077】
【表15】
【0078】
【表16】
【0079】
【表17】
【0080】
下記表18に記載の組成の20%及び40%変性剤濃度のアクリルアミド溶液を16mLずつ作製し、各溶液に10%(w/v)過硫酸アンモニウム150μL及びN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン15.0μLを加えて混合し、グラジエントメーカーによりグラジエントゲルを作製し、5時間静置した。その後、7Lの1×TAE緩衝液で満たした電気泳動槽にグラジエントゲルをセットし、60℃に加温した。
【0081】
【表18】
【0082】
【表19】
【0083】
次いで、上記により得られた各PCR産物10μLとLoading Buffer 5μLの混合溶液をグラジエントゲルの各ウェルにアプライし、44.5V、60℃の条件で18時間電気泳動を行った。電気泳動後、グラジエントゲルをサイバーゴールド溶液に40分間浸漬し、染色を行った後、トランスイルミネーター上でUVを照射し、KODAK 1D Image Analysis software(KODAK社製)により、バンドパターンを撮影した。バンドパターンを
図6に示す。
【0084】
さらに、上記で撮影したバンドパターンについて、解析ソフト(Total Lab TL120 v2006、Nonlinea dynamics)を用いて、次式によりBand Similarity Index(BSI)を算出した。さらに、当該BSIから、Unweighted Pair Group Method with Arithmetic Mean(UPGMA)法により、クラスター解析を行った。バンドパターンのクラスター解析結果を
図7に示す。
【0085】
【数2】
【0086】
図6から明らかなように、好気性微生物処理部と嫌気性微生物処理部とでは、バンドパターンが異なることが確認できた。また、
図7から明らかなように、バンドパターンのクラスター解析の結果、好気性微生物処理部(レーン2及び3)と嫌気性微生物処理部(レーン4及び5)との類似度係数が約40%であることから、嫌気性微生物処理部と嫌気性微生物処理部とでは菌叢が異なることが確認できた。
【0087】
以上のように、嫌気性微生物処理部と嫌気性微生物処理部との菌叢が異なる理由としては次のように考えられる。嫌気性微生物処理部内では、水の流入口付近では溶存酸素濃度が比較的高いものの、該処理部内を通過する水の流速が遅いため流入口付近に棲息する微生物によって酸素がすぐに消費されること、及び第2の圧送手段の停止により、嫌気性微生物処理部内全体の溶存酸素濃度が極めて低い状態となっていると考えられる。これに対して、好気性微生物処理部内では、常に水が流れており、さらに、その流速も速いことから、好気性微生物処理部内の溶存酸素濃度が比較的高い状態となっていると考えられる。従って、好気性微生物処理部内には、主に、絶対好気性微生物及び通性嫌気性微生物が棲息しており、嫌気性微生物処理部内には、主に通性嫌気性微生物及び偏性嫌気性微生物が棲息しているものと考えられる。
【0088】
試験例3−4:実止水域の水浄化処理試験
図8に示すように、八左衛門池に循環路及び水浄化処理装置を敷設した。当該循環路には、
図8中の「吸入」の位置から八左衛門池の水を導入し、「吐出」の位置から水を排出するように水を圧送する圧送手段が接続されている。また、八左衛門池内に対流を発生させるため、水底付近から水を導入し、水面に水を排出した(即ち、循環路における「吸入」部を水底付近に配置し、循環路における「吐出」部を水面付近に配置した。)。さらに、当該圧送手段により循環路に圧送される水の単位時間あたりの流量は800L/分となるように設定した。またさらに、
図8に示すように、循環路には水浄化処理装置が接続されており、循環路を流れる水の一部を好気性微生物処理部及び嫌気性微生物処理部に導入させた。循環路に接続された水浄化処理装置1の一部を
図9に示す。
図9では、第3の循環路8に接続された水浄化処理装置1のうち、好気性微生物処理部2側の概要を示している。
図9における水浄化処理装置では、第3の圧送手段15により処理対象水域11から処理対象水を第3の循環路8へ導入し、排出される。これにより、処理対象水域11内に緩やかな対流を発生させることができる。また、第3の循環路8を流れる処理対象水の一部は、通水路13を通過して貯水部12に導入される。貯水部12に貯水された処理対象水は、第1の循環路3及び第2の循環路6にそれぞれ導入され、好気性微生物処理部2及び嫌気性微生物処理部5をそれぞれ通過した後、貯水部12に排出されるようになっている。貯水部12には、排出口14が設けられており、貯水部12内の水位が所定の水位を超えた場合に、処理対象水は排出口14を通して処理対象水域11に排出されるようになっている。
【0089】
なお、本試験例において、第1の圧送手段4により圧送される処理対象水の単位時間あたりの流量は8L/分と、第2の圧送手段により圧送される処理対象水の単位時間あたりの流量は3L/分となるようにそれぞれ設定した。また、好気性微生物処理部2内をより好気的環境とするために、
図9に示すように第1の循環路に空気導入手段10及び空気導入タンク9を接続した。さらに、嫌気性微生物処理部内をより嫌気的環境とするために、第2の圧送手段には、15分間処理対象水の圧送を行い、45分間処理対象水の圧送を停止させる圧送制御手段を接続した(図示なし)。またさらに、好気性微生物処理部2には、微生物吸着多孔質担体としてポリビニルアルコール系樹脂を充填したカラム(カラム内径:50mm、カラム長:350mm)を6本、及び嫌気性微生物処理部には同カラムを3本、それぞれ用いた。
【0090】
上記した浄化処理装置の運転を約1ヶ月間行い、八左衛門池の水面付近及び水底における溶存酸素濃度(DO)の測定を、溶存酸素計(堀場製作所製)を用いて行った。また、試験例3−1と同様にして化学的酸素要求量(COD)の測定を行った。溶存酸素濃度(DO)及び化学的酸素要求量(COD)の測定結果を下記表20及び21に示す。
【0091】
【表20】
【0092】
表20から明らかなように、浄化処理を行う前と比較して、八左衛門池の水面付近及び水底のいずれにおいても溶存酸素濃度が顕著に増加しており、八左衛門池内は好気環境になっていることが確認できた。当該結果から、八左衛門池内における好気性微生物の活動が活性化され、浄化処理が進行しているものと考えられる。
【0093】
【表21】
【0094】
表21から明らかなように、1ヶ月間の処理試験において、八左衛門池のCODは安定した値を示すことが確認できた。特に、夏場(7月〜9月頃)は、試験例3−1の結果からも明らかなように、比較的高いCOD値を示すにもかかわらず、比較的低い値を示すことが確認できた。また、例年、夏場は八左衛門池の付近において嫌気性微生物が原因と考えられる悪臭が漂うが、浄化処理試験開始後はそのような悪臭は一切確認されなかった。
【0095】
試験例4:金魚飼育水の浄化処理試験
八左衛門池の水100L及び他の水槽由来の水100Lを入れ、砂と砂利を計40kg敷き詰めた水槽に、金魚50匹を入れ、
図1に示す水浄化処理装置を用いて浄化処理を行いつつ、39日間室温にて金魚を飼育し、飼育開始から0、5、10、14、17、21、28、31及び39日後の化学的酸素要求量(COD)を試験例1と同様の方法により測定した。また、金魚の餌として、1日に2〜3回の間隔で、1回につき約0.5gのテトラフィン(スペクトラムブランスジャパン株式会社製)を与えた。
【0096】
なお、本試験例において、
図1に示す第1の圧送手段4により圧送される処理対象水の単位時間あたりの流量は6L/分と、第2の圧送手段7により圧送される処理対象水の単位時間あたりの流量は3L/分となるようにそれぞれ設定した。また、
図1に示す好気性微生物処理部2には、微生物吸着多孔質担体としてポリビニルアルコール系樹脂を充填したカラム(カラム内径:52mm、カラム長:347mm)を3本、及び嫌気性微生物処理部5には同カラムを6本、それぞれ用いた。
【0097】
飼育開始から0、5、10、14、17、21、28、31及び39日後の化学的酸素要求量の測定結果を下記表22に示す。
【0098】
【表22】
【0099】
表22から明らかなように、金魚が棲息する水域においても、1ヶ月以上も安定したCODを示すことが確認できた。また、水の濁りはほとんど確認されなかった。さらに、処理開始後28日経過以降CODが減少し始めることが確認できた。これは、微生物処理部内の微生物叢が安定し、金魚の餌や糞などによる水質汚染に対して微生物処理部と対流による浄化能力が向上したことが理由であると考えられる。