【文献】
J. Am. Chem. Soc.,2010年 9月30日,Vol.132, No.42,pp.14724-14726
【文献】
Polym. Chem.,2012年,Vol.3,pp.1399-1401
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ナノ粒子の前記第2のブロック・ポリマの前記カテコール基は、前記カテコール基のポリマ形態または前記カテコール基の酸化形態として存在する、請求項10に記載の方法。
脂肪族カーボネート骨格部分と、前記ポリカーボネート骨格部分と連結した側鎖とを含み、前記側鎖は、芳香族窒素含有複素環(N−複素環)を含む第1の繰り返し単位を含み、前記N−複素環は、遊離塩基のスルホベタイン付加体として前記第1の繰り返し単位中に存在する
ポリカーボネート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
開示されるのは、i)薬物と、ii)N−複素環ペンダントを含む第1のブロック・ポリマと、iii)カテコールペンダント基を含む第2のブロック・ポリマとを含む水分散性ナノ粒子組成物である。別段に明記のない限り、本明細書における用語「ナノ粒子」の使用は、上記3成分を含む粒子を意味する。ナノ粒子は、水中に分散されると0ナノメートルから1マイクロメートルの間の平均直径を有する。ナノ粒子の上記3成分は、互いに接触し、少なくとも非共有結合相互作用(たとえば疎水性結合、水素結合)によって結合している。カテコール基は、酸化もしくは重合またはその両方を行う傾向があるため、ナノ粒子の3成分は、可能性として非共有結合相互作用によって結合するものであってもよい。ナノ粒子は、医療において薬物を制御放出することができる。ナノ粒子は、ファウリング耐性(すなわち血清蛋白質と接触したとき凝集しにくい)もしくはマクロファージから感知されない性質またはその両方を有することができ、体内における「ステルス」特性を備える。ナノ粒子は、薬物の放出に関する高い選択性(すなわち標的細胞との接触の前に最小限の量の薬物を放出する)を示すことができる。これらの性質は、パクリタキセルおよびドキソルビシンなどの疎水性薬物の関与する薬物デリバリ用途にとって特に望ましい。
【0013】
本明細書において、薬物は、医療において用いられるあらゆる生理活性物質であってよい。薬物は、ポリマ薬物および非ポリマ薬物を含む。ポリマ薬物は、医療において用いられる遺伝子およびタンパク質を含む。ナノ粒子は、100g/モルから約1,000g/モルのサイズ範囲の小分子量薬物と、約1,000ダルトンから約100,000ダルトン以上のサイズ範囲のペプチドおよびタンパク質薬物などのより大きな高分子薬物との両方を含んでよい。
【0014】
第1のブロック・ポリマおよび第2のブロック・ポリマは、生分解性もしくは生物適合性またはその両方であってよい。用語「生分解性」は、米国試験材料協会(American Society for Testing and Materials)により、生物活性、特に酵素作用によって引き起こされ、材料の化学構造を顕著に変化させる分解として定義されている。本明細書では、材料は、ASTM D6400に従って180日以内に60%生分解されるなら「生分解性」である。本明細書において、材料は、酵素によって触媒される反応によって分解(たとえば解重合)することができるなら、「酵素的に生分解性」である。
【0015】
「生物適合性」材料は、本明細書においては、具体的な用途において適切な宿主応答を生じることができる材料として定義される。
【0016】
第1のブロック・ポリマは、i)「第1のPEOブロック」と呼ばれるポリ(エチレンオキシド)ブロックと、ii)「第1のPCブロック」と呼ばれるポリカーボネート(PC)ブロックと、を含む。第1のPCブロックは、脂肪族カーボネート骨格部と、該骨格部と連結した側鎖とを有するカーボネート繰り返し単位を含む。側鎖は、芳香族窒素含有複素環を含む。この繰り返し単位は、「第1の繰り返し単位」と呼ばれる。第1のPEOブロックは、約80から約200の重合度を有してよい。ポリ(エチレンオキシド)ブロックの末端は、いずれの適当な末端基(たとえばモノメチルポリ(エチレングリコール)(mPEG−OH)におけるメチル)であってもよい。
【0018】
【化3】
(式中、
u’は、0から6の正の整数であり、
v’は、0から6の正の整数であり、
u’とv’とは、両方が0ではありえず、
n’は、2から約50の正の数であり、
m’は、約80から約200の正の数であり、
E’は、水素と、1以上の炭素を含む官能基と、からなる群から選ばれた1価末端基であり、
H’は、電荷を持たない芳香族窒素含有複素環、芳香族窒素含有複素環の水素塩、芳香族窒素含有複素環のスルホベタイン付加体、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれた官能基であり、
L’は、2以上の炭素を含む2価連結基であり、
R’は、水素と、1から6の炭素を含むアルキル基とからなる群から選ばれた1価ラジカルであり、
W’は、1から10の炭素を含む1価末端基である)
による構造を有する。
【0019】
分りやすくするために、式(1)の構造においてポリカーボネート鎖の「カルボニル端」と「ヒドロキシ端」とに表示を付けてある。好ましくは、図示されるようにE’がポリカーボネート鎖のヒドロキシ端と連結し、PEOブロックがポリカーボネート鎖のカルボニル端と連結する。
【0020】
一実施形態において、u’は、1であり、v’は、1であり、E’は、水素であり、R’は、メチルであり、W’は、メチルである。
【0021】
芳香族窒素含有複素環H’は、連結基L’によってポリカーボネート骨格と間接的に共有結合する。芳香族窒素含有複素環H’の非限定的な例は、置換もしくは非置換またはその両方のピロール類、インドール類、イソインドール類、イミダゾール類、ベンゾイミダール類、ピラゾール類、インダゾール類、ピリジン類、キノリン類、イソキノリン類、ピラジン類、キノキサリン類、ピリミジン類を含む。一実施形態において、窒素含有複素環は、イミダゾール類、ピリジン類、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。種々の窒素含有複素環を含む第1の繰り返し単位は、第1のブロック・ポリマ中に単独でまたは組み合わされて存在してよい。
【0022】
一実施形態において、H’を含む第1の繰り返し単位は、電荷を持たない。電荷を持たない芳香族窒素含有複素環の形は、複素環の遊離塩基の形である。
【0023】
芳香族窒素含有複素環の水素塩は、負の電荷を有する対イオン(たとえば塩化物、臭化物、ヨウ化物)とイオン会合している窒素含有複素環のプロトン化形を指す。芳香族窒素含有複素環の種々の水素塩を含む第1の繰り返し単位が第1のブロック・ポリマ中に単独でまたは組み合わされて存在してよい。
【0024】
窒素含有複素環のスルホベタイン付加体の非限定的な例は、
【0025】
【化4】
を含み、対応する芳香族アミンをプロパンスルトンと反応させることによって調製することができる。芳香族窒素含有複素環の種々のスルホベタイン付加体を含む第1の繰り返し単位が第1のブロック・ポリマ中に単独でまたは組み合わされて存在してよい。
【0026】
好ましくは、第1のブロック・ポリマは、スルホベタイン付加体以外に4級窒素を含まない。一実施形態において、第1のブロック・ポリマは、スルホベタイン付加体以外の4級窒素を除外する。
【0027】
H’を有する第1繰り返し単位は、式(2)
【0028】
【化5】
(式中、
u’は、0から6の正の整数であり、
v’は、0から6の正の整数であり、
u’とv’とは、両方が0ではありえず、
H’は、電荷を持たない芳香族窒素含有複素環、芳香族窒素含有複素環の水素塩、芳香族窒素含有複素環のスルホベタイン付加体、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれた官能基であり、
L’は、2以上の炭素を含む2価連結基であり、
R’は、水素と、1から6の炭素を含むアルキル基と、からなる群から選ばれた1価ラジカルである)
による構造を有する。
【0029】
式(2)の星印の結合は、ポリカーボネート鎖の他の部分もしくは末端基またはその両方との付加点を表す。
【0030】
より具体的な式(2)の第1繰り返し単位は、式(3)
【0031】
【化6】
(式中、
D’は、単結合、二価酸素(*−O−*)、または二価窒素(*−NH−*)であり、
H’は、電荷を持たない芳香族窒素含有複素環、芳香族窒素含有複素環の水素塩、芳香族窒素含有複素環のスルホベタイン付加体、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれた官能基であり、
L
aは、1以上の炭素を含む2価連結基であり、
R’は、水素と、1から6の炭素を含むアルキル基とからなる群から選ばれた1価ラジカルである)
による構造を有する。
なお、本明細書では、星印を付した結合(*−)は、別の化学構造部分に付加する箇所を表す。
【0032】
式(3)の第1の繰り返し単位の非限定的な例は、
【0034】
第1のブロック・ポリマは、式(3)の繰り返し単位を単独でまたは組み合わせて含んでよい。
【0035】
第2のブロック・ポリマは、i)「第2のPEOブロック」と呼ばれるポリ(エチレンオキシド)ブロックと、ii)「第2のPCブロック」と呼ばれるポリカーボネート・ブロックと、を含む。第2のPCブロックは、脂肪族カーボネート骨格部分と、該骨格部分と連結した側鎖とを有するカーボネート繰り返し単位を含む。側鎖は、カテコール基を含む。この繰り返し単位は、「第2繰り返し単位」と呼ばれる。第2繰り返し単位のカテコール基は、側鎖によってポリカーボネート骨格と間接的に共有結合している。第2PEOブロックは、約80から約200の重合度を有してよい。第2PEOブロックの末端は、いずれの適当な末端基(たとえば、メチル)であってもよい。
【0037】
【化8】
(式中、
u”は、0から6の正の整数であり、
u”は、0から6の正の整数であり、
u”とv”とは、両方が0であってはならず、
n”は、2から約50の正の数であり、
m”は、約80から約200の正の数であり、
E”は、水素と、1つ以上の炭素を含む官能基と、からなる群から選ばれた1価末端基であり、
C”は、カテコール基を含む部分であり、
L”は、2以上の炭素を含む2価連結基であり、
R”は、水素と、1から6の炭素を含むアルキル基と、からなる群から選ばれた1価ラジカルであり、
W”は、1から10の炭素を含む1価末端基である)
による構造を有する。
【0038】
式(4)においてポリカーボネート鎖のカルボニル端とヒドロキシ端とに表示を付けてある。一実施形態において、u”は、1であり、v”は、1であり、E”は、水素であり、R”は、メチルである。
【0039】
カテコール基を有する第2PCブロックの第2繰り返し単位は、式(5)
【0040】
【化9】
(式中、
u”は、0から6の正の整数であり、
v”は、0から6の正の整数であり、
u”とv”とは、両方が0ではありえず、
C”は、カテコール基を含む部分であり、
L”は、2以上の炭素を含む2価連結基であり、
R’は、水素と、1から6の炭素を含むアルキル基と、からなる群から選ばれた1価ラジカルである)
による構造を有する。
【0041】
式(5)の星印の結合は、ポリカーボネート鎖の他の部分もしくは末端基またはその両方との付加点を表す。
【0042】
より具体的な式(5)のカーボネート繰り返し単位は、式(6)
【0043】
【化10】
(式中、
D”は、単結合、2価酸素(*−O−*)、または2価窒素(*−NH−*)であり、
C”は、カテコール基を含む部分であり、
L
bは、1以上の炭素を含む2価連結基であり、
R”は、水素と、1から6の炭素を含むアルキル基と、からなる群から選ばれた1価ラジカルである)
の構造を有する。
【0044】
式(6)の繰り返し単位の非限定的な例は、
【0046】
第2ブロック・ポリマは、式(6)の繰り返し単位を単独でまたは組み合わせて含んでよい。
【0047】
開環重合(ROP)
好ましくは、第1のブロック・ポリマおよび第2のブロック・ポリマは、環状カーボネートモノマーの有機触媒開環重合を含むプロセスによって調製され、環状カーボネートモノマーは、ROP後に第一アミンで求核置換されてアミド基、カルバメート基、または尿素基をそれぞれ形成することができるペンタフルオロフェニルエステルペンダント基、ペンタフルオロフェニルカーボネート基、またはペンタフルオロフェニルカルバメート基を有する。
【0048】
ROPの例は、i)溶媒と、ii)活性なペンタフルオロフェニルエステルペンダント基、ペンタフルオロフェニルカーボネート基、またはペンタフルオロフェニルカルバメート基を有する第1の環状カーボネートモノマーと、iii)触媒と、iv)モノ求核ポリエーテル開始剤と、v)任意選択の塩基性促進剤と、を含む反応混合物を攪拌し、それによってポリエーテルブロックと、ポリカーボネート・ブロックとを含み、ポリカーボネート・ブロックが活性なペンタフルオロフェニルペンダント基を有する初期ブロック・ポリマを形成することを含む。初期ブロック・ポリマは、別のROPを開始することができる活性末端基(ヒドロキシル基)を含む。活性末端基は、末端修飾して(たとえばヒドロキシル基を無水酢酸でアシル化することによって)ポリカーボネート鎖を安定化する(たとえばバックバイティング鎖切断反応(backbiting chain scission reactions)から)か、もしくは望ましい末端官能基(たとえば細胞認識基)を導入するか、またはその両方を行ってよい。一実施形態において、初期ブロック・ポリマのポリカーボネート・ブロックのヒドロキシ末端は、修飾されない。
【0049】
初期ブロック・ポリマは、第1のブロック・ポリマと、第2のブロック・ポリマとの調製における共通中間体であってもよい。この場合、i)活性ペンタフルオロフェニル基を置換することができる求核基と、ii)芳香族窒素含有複素環とを含む第1の化合物で初期ブロック・ポリマを処理すると第1のブロック・ポリマが得られる。別の反応において、i)活性ペンタフルオロフェニル基を置換することができる求核基と、ii)カテコール基(たとえばドーパミン)と、を含む第2の化合物で初期ブロック・ポリマを処理すると第2のブロック・ポリマが得られる。
【0050】
環状カルボニルモノマー
活性ペンタフルオロフェニル基を有する環状カーボネートモノマーの非限定的な例は、
【0051】
【化12】
を含む。MTC−OC6F5は、第1アミンと反応してアミドを形成することができるペンタフルオロフェニルエステルペンダントを有する。TMCPFPは、第1アミンと反応してカルバメート(ウレタン)を形成することができるペンタフルオロフェニルカーボネートペンダント基を有する。TMCUPFPは、第1アミンと反応して尿素を形成することができるペンタフルオロフェニルカルバメートペンダント基を有する。上記環状カーボネートは、単独でまたは組み合わせて用いてよい。
【0052】
ROP反応混合物は、環状カーボネートモノマー、環状エステルモノマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれた1種以上の追加の環状カルボニルモノマーを含むことができる。これらの希釈剤モノマーは、第1のブロック・ポリマの疎水性または他の特性を調節するために使用することができる。したがって、初期ブロック・ポリマもしくは第1のブロック・ポリマもしくは第2のブロック・ポリマまたはそれらのうち2種類以上のポリカーボネート・ブロックは、活性ペンタフルオロフェニル基を有する第1のカーボネートモノマーのホモポリマまたは第1の環状カーボネートモノマーのランダム・コポリマであってよい。たとえば、コポリマは、環状カーボネートモノマーの混合物から調製されるポリカーボネート・コポリマ、または環状カーボネートと環状エステルモノマーとの混合物から調製されるポリエステルカーボネート共重合体であってよい。
【0053】
コポリマを生成させるための希釈剤環状カルボニルモノマーの例は、表1に挙げる環状カーボネートおよび環状エステルモノマーを含む。
【0057】
開始剤
一般に、ROP開始剤は、アルコール、アミンおよびチオールなどの求核試薬を含む。第1のブロック・ポリマおよび第2のブロック・ポリマを調製するために用いられるROPのための開始剤は、好ましくは、モノ求核ポリエーテル開始剤である。第1のブロック・ポリマおよび第2のブロック・ポリマは、同じポリエーテル開始剤または異なるポリエーテル開始剤を用いて調製してよい。より具体的なポリエーテル開始剤は、1つの開始部位(たとえば末端ヒドロキシ基)を有するモノ末端保護ポリ(エチレングリコール)(PEG)を含む。あるいは、ポリエーテル開始剤は、商品名PEG−アミンとして知られる末端第1アミン基を有するポリ(エチレンオキシド)であってよい。ポリエーテル開始剤は、第1のPEOブロックもしくは第2のPEOブロックまたはその両方への前駆体であってよい。
【0058】
モノ末端保護ポリ(エチレングリコール)の非限定的な例は、モノ−メチルポリ(エチレングリコール)(mPEG−OH)
【0060】
である。下付き記号mは、約50から約200、より好ましくは約80から約150、もっとも好ましくは約80から約120の範囲の値を有することができる。
【0061】
触媒
ROP反応混合物は、1種以上の触媒を含んでよい。ROP触媒は、環状カルボニルモノマーに対して1/20から1/40,000モル、好ましくは1/100から1/20,000モルの比率で加えられる。
【0062】
活性ペンタフルオロフェニル基を有する環状カーボネートモノマーの開環重合のための触媒は、好ましくは、金属を含まない酸(たとえばトリフル酸CF
3SO
3H)である。金属を含まない他のROP触媒は、少なくとも1つの1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール−2−イル(HFP)基を含む水素結合触媒
【0064】
単一供与型の水素結合触媒は、式(C−1)
【0066】
R
2は、水素、または1から20の炭素を有する1価ラジカル、たとえばアルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、置換ヘテロシクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、またはそれらの組み合わせを表す。表2に単一供与型水素結合触媒の例を挙げる。
【0068】
二重供与型水素結合触媒は、2つのHFP基を有し、一般式(C−2)
【0070】
によって表される。R
3は、1から20の炭素を含む2価ラジカル架橋基、たとえばアルキレン基、置換アルキレン基、シクロアルキレン基、置換シクロアルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基、置換ヘテロシクロアルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基、またはそれらの組み合わせである。式(C−2)の代表的な二重水素結合触媒は、表3に挙げたものを含む。具体的な実施形態において、R
2は、アリーレンまたは置換アリーレン基であり、HFP基は、芳香環において互いにメタ位を占める。
【0072】
また、予想されるのは、担体に結合したHFP含有基を含む触媒である。一実施形態において、担体は、ポリマ、架橋ポリマビーズ、無機粒子、または金属粒子を含む。HFP含有ポリマは、HFP含有モノマー(たとえばメタクリレートモノマー3,5−HFA−MAまたはスチリルモノマー3,5−HFA−St)の直接重合を含む公知の方法によって形成することができる。直接重合(またはコモノマーとの重合)を行うことができるHFP含有モノマー中の官能基は、アクリレート、メタクリレート、α,α,α−トリフルオロメタクリレート、α−ハロメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ノルボルネン、ビニル、ビニルエーテル、および当分野において公知の他の基を含む。
【0073】
別のROP触媒は、N−ビス(3,5−トリフルオロメチル)フェニル−N’−シクロヘキシル−チオ尿素(TU)である。
【0075】
触媒および促進剤は、同じ化合物、たとえば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)であってよい。
【0076】
促進剤
HFP含有触媒を用いて行われるROPは、一般に、促進剤、詳しくは窒素塩基を含む。酸触媒(たとえばトリフル酸)によって触媒されるROPは、窒素塩基性促進剤を使用しないで行われる。
【0077】
窒素塩基性促進剤の例は、下記に挙げられ、ピリジン(Py)、N,N−ジメチルアミノシクロヘキサン(Me
2NCy)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、trans−1,2−ビス(ジメチルアミノ)シクロヘキサン(TMCHD)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(MTBD)、(−)−スパルテイン、(Sp)1,3−ビス(2−プロピル)−4,5−ジメチルイミダゾール−2−イリデン(Im−1)、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン(Im−2)、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル(イミダゾール−2−イリデン(Im−3)、1,3−ビス(1−アダマンチル)イミダゾール−2−イリデン(Im−4)、1,3−ジ−i−プロピルイミダゾール−2−イリデン(Im−5)、1,3−ジ−t−ブチルイミダゾール−2−イリデン(Im−6)、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン(Im−7)、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン(Im−8)または表4に示されているそれらの組み合わせを含む。
【0081】
用いられるとき、促進剤は、好ましくは、たとえば(−)−スパルテインの構造におけるようにそれぞれがルイス塩基として参加することができる2つまたは3つの窒素を有する。一般に、強い塩基ほど重合速度を向上させる。
【0082】
溶媒
ROP用溶媒の例は、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンゾトリフルオリド、石油エーテル、アセトニトリル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、t−ブチルジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、または前記溶媒の1種を含む組み合わせを含む。反応混合物中の環状カルボニルモノマー濃度は、リットルあたり約0.1から5モル、より具体的にはリットルあたり約0.2から4モルである。
【0083】
ROPは、ほぼ周囲温度またはそれより高い、より具体的には15℃から約50℃、より具体的には20℃から30℃の温度で行うことができる。反応時間は、溶媒、温度、撹拌速度、圧力および装置によって変わるが、一般に、重合は、1から100時間以内に完了する。
【0084】
重合は、不活性(すなわち無水)雰囲気において100から500MPa(1から5気圧)の圧力、より典型的には100から200MPa(1から2気圧)の圧力で行われる。反応が完了したら、溶媒は減圧を用いて除去することができる。
【0085】
用いられるとき、窒素塩基性促進剤は、環状カルボニルモノマーの全モル数を基準として0.1から5.0モル%、0.1から2.5モル%、0.1から1.0モル%、または0.2から0.5モル%の量でROP反応混合物中に存在する。
【0086】
開始剤の量は、開始剤中の求核開始基(たとえばアルコール基)あたりの当量分子量にもとづいて計算される。開始基は、環状カルボニルモノマーの全モル数を基準として0.001から10.0モル%、0.1から2.5モル%、0.1から1.0モル%、0.2から0.5モル%の量で存在する。たとえば、開始剤の分子量が100g/モルであり、開始剤が2つのヒドロキシル基を有するなら、ヒドロキシル基あたりの当量分子量は、50g/モルである。重合がモノマーのモルあたり5モル%のヒドロキシル基を必要とするなら、開始剤の量は、モノマーのモルあたり0.05×50=2.5gである。
【0087】
HFP触媒が用いられるときHFP触媒は、開始剤の求核基あたりの当量分子量を基準としてROP反応混合物中に約0.2から20モル%の量で存在し、窒素塩基性促進剤は、0.1から5.0モル%の量で存在し、開始剤のヒドロキシル基は、0.1から5.0モル%の量で存在する。
【0088】
第1のブロック・ポリマは、サイズ排除クロマトグラフィーによって定量して少なくとも2500g/モル、より具体的には4000g/モルから150000g/モル、さらに具体的には10000g/モルから50000g/モルの数平均分子量Mnを有してよい。一実施形態において、第1のブロック・ポリマは、10000から20000g/モルの数平均分子量Mnを有する。第1のブロック・ポリマは、一般に1.01から1.35、より具体的には1.1から1.30、さらに具体的には1.1から1.25の狭い多分散度(PDI)を有することができる。
【0089】
第2のブロック・ポリマは、サイズ排除クロマトグラフィーによって定量して少なくとも2500g/モル、より具体的には4000g/モルから150000g/モル、さらに具体的には10000g/モルから50000g/モルの数平均分子量Mnを有してよい。一実施形態において、第2のブロック・ポリマは、10000から20000g/モルの数平均分子量Mnを有する。第2のブロック・ポリマは、一般に1.01から1.35、より具体的には1.1から1.30、さらに具体的には1.1から1.25の狭い多分散度(PDI)を有することができる。
【0090】
ミセル形成
本明細書において、用語「ミセル」および「混合ミセル」は、薬物を含まない。第1のブロック・ポリマおよび第2のブロック・ポリマは、個別に(単独で)水に溶解するとそれぞれミセルを形成することができる。第1のブロック・ポリマおよび第2のブロック・ポリマは、一緒に水に溶解すると混合ミセルを形成することができ、所定の混合ミセル粒子が少なくとも非共有結合相互作用によって結合した両方のポリマを含むことを意味する。
【0091】
薬物充填の前に、混合ミセルは、約20nmから約500nmの平均粒径(平均円直径)および約0.06から約0.50の多分散度を有する。薬物充填の前に、混合ミセルは、0%から20%、0%から15%、0%から10%、0%から5%、0%から2%、またはより詳しくは0%から1%の細胞毒性を誘導することができる。一実施形態において、混合ミセルは、細胞毒性を示さない。
【0092】
薬物充填混合ミセル(ナノ粒子)
混合ミセルを含有する水溶液を、水と相溶性の有機溶媒(たとえばN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解した薬物を含有する第2の溶液と、撹拌しながら一緒にすることによって、混合ミセルに薬物、より具体的には疎水性薬物を充填することができる。結果として得られる混合物から有機溶媒を除去する(たとえば透析によって)と、薬物充填混合ミセル、または単にナノ粒子、が得られる。得られたナノ粒子は、薬物と、第1のブロック・ポリマと、第2のブロック・ポリマとを共に接触させて含み、それらは少なくとも非共有結合相互作用によって結合している。ナノ粒子は、水を除去することによって(たとえば凍結乾燥によって)、水分散性固体粒子として単離することができる。一実施形態において、薬物は、ドキソルビシンである。
【0093】
ナノ粒子のカテコール基は、既知のカテコール反応によれば自発酸化もしくは重合またはその両方を行うことができる(たとえばドーパミンは基板表面に配置されると容易にポリドーパミンを形成する)可能性がある。下記の実施例においては、カテコール基の副反応の可能性を最小にすることも、形成される化学副産物をキャラクタリゼーションすることもしなかった。したがって、ナノ粒子のカテコール基は、カテコール、酸化されたカテコール(キノン)、重合したカテコール、重合したキノン、または前記官能基のいずれかの組み合わせとして存在する可能性がある。カテコール副反応が起り得るとすれば、ナノ粒子は、カテコール基のカップリングから生じる第2のブロック・ポリマの架橋された形態を含む可能性がある。架橋度をキャラクタリゼーションすることはしなかった。結果として得られるナノ粒子の化学構造は複雑なものになる可能性があるため、ナノ粒子組成は、別段に指示のない限り、ナノ粒子を調製するために用いた原材料にもとづいて記載される。
【0094】
ナノ粒子は、好ましくは、5.0から8.0のpHにおいて約20nmから約700nmの平均粒径(平均円直径)を有する。ナノ粒子は、約0.2から約0.5のサイズ多分散性を有してよい。
【0095】
さらに開示されるのは、細胞を、開示されたナノ粒子を含む水性混合物と接触させることを含む、細胞を処理する方法である。生物的に活性なカーゴ(cargo)は、単一の薬物または薬物の混合物を含んでよい。細胞は、in vitro、ex vivoまたはin vivoで接触させてよい。
【0096】
ナノ粒子の薬物の重量パーセント(wt%)と、第1のブロック・ポリマのwt%と、第2のブロック・ポリマのwt%との和は、100wt%に等しい。ここで、重量パーセント(wt%)は、ナノ粒子の全乾燥重量を基準とする。これらの条件の下で、ナノ粒子は、ナノ粒子の全乾燥重量を基準として薬物を約0.1wt%から約30wt%、より具体的には約3.0wt%から約20wt%の量で含んでよい。
【0097】
ナノ粒子は、ナノ粒子の全乾燥重量を基準として第1のブロック・ポリマを約10wt%から約90wt%、好ましくは約30wt%から約60wt%の量で含んでよい。
【0098】
ナノ粒子は、ナノ粒子の全乾燥重量を基準として第2のブロック・ポリマを約10wt%から約90wt%、好ましくは約30wt%から約60wt%の量で含んでよい。
【0099】
薬物
タンパク質薬物の例は、ペプチドホルモン、たとえばインシュリン、グルカゴン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、バソプレッシン、レニン、プロラクチン、成長ホルモン;絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、および黄体形成ホルモンを含む生殖腺刺激ホルモン;生理的に活性な酵素、たとえばトランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、ホスファターゼ、グリコシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、第VIII因子、プラスミノーゲンアクチベーター;およびタンパク質因子、たとえば上皮成長因子、インシュリン様成長因子、腫瘍壊死因子、変換成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、エリスロポイエチン、コロニー形成刺激因子、骨形成タンパク質、インターロイキンおよびインターフェロンを含むその他の治療薬剤を含む。非タンパク質高分子の例は、多糖、核酸ポリマ、およびビンブラスチン、ビンクリスチン、タキソールなどの植物産物を含む治療用二次代謝物を含む。
【0100】
他の薬物は、アスピリン、ジフルニサル、ジクロフェナク、アセクロフェナク、アセメタシン、エトドラク、インドメタシン、スリンダック、トルメチン、イブプロフェン、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラック、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、チアプロフェン酸、スプロフェン、メフェナム酸、メクロフェナム酸、ルミラコキシブ、オキシフェンブタゾン、ピロキシカム、ロルノキシカム、メロキシカムおよびテノキシカムを含む。ステロイド抗炎症薬は、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、酢酸フルドロコルチゾンおよびアルドステロンを含む。化学療法薬は、ドキソルビシンおよびDNAアルキル化剤、たとえばメルファラン、クロラムブシル、ダカルバジン、テモゾロマイドおよびストレプトゾトシンを含む。代謝抵抗薬物は、メトトレキセート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、チオグアニン、フルダラビン、ペントスタチン、クラドリビン、フロクスウリジンおよびゲムシタビンを含む。アルカロイド薬物は、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシンおよびトポイソメラーゼを含む。阻害剤は、エトポシド、テニポシド、イリノテカンおよびトポテカンを含む。タキサンは、パクリタキセルおよびドセタキセルを含む。抗血液凝固物質は、ワーファリン、アセノクマロール、フェンプロクモン、アルガトロバンおよびキシメラガトランを含む。
【0101】
市販の薬物のさらに他の例は、13−cis−レチノイン酸、2−CdA、2−クロロデオキシアデノシン、5−アザシチジン、5−フルオロウラシル、5−FU、6−メルカプトプリン、6−MP、6−TG、6−チオグアニン、アブラキサン、アキュテイン(登録商標)、アクチノマイシンD、アドリアマイシン(登録商標)、アドルシル(登録商標)、アフィニトール(登録商標)、アグリリン(登録商標)、アラ−コート(登録商標)、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリムタ、アリトレチノイン、アルカバン−AQ(登録商標)、アルケラン(登録商標)、all trans−レチノイン酸、α−インターフェロン、アルトレタミン、アメトプテリン、アミホスチン、アミノグルテチミド、アナグレリド、アナンドロン(登録商標)、アナストロゾール、アラビノシルシトシン、アラ−C、アラネスプ(登録商標)、アレディア(登録商標)、アリミデックス(登録商標)、アロマシン(登録商標)、アラノン(登録商標)、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、ATRA、アバスチン(登録商標)、アザシチジン、BCG、BCNU、ベンダムスチン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ベクサール(登録商標)、ビカルタミド、BiCNU、ブレノキサン(登録商標)、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、ブスルフェックス(登録商標)、C225、カルシウムロイコボリン、キャンパス(登録商標)、カンプトサー(登録商標)、カンプトセシン−11、カペシタビン、カラック(商標)、カルボプラチン、カルムスチン、カルムスチンウエハ、カソデックス(登録商標)、CC−5013、CCI−779、CCNU、CDDP、シーヌ、セルビジン(登録商標)、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、シトロボラム因子、クラドリビン、コルチゾン、コスメゲン(登録商標)、CPT−11、シクロホスファミド、シタドレン(登録商標)、シタラビン、シタラビンリポソーム、サイトサール−U(登録商標)、シトキサン(登録商標)、ダカルバジン、ダコゲン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンアルファ、ダサチニブ、ダウノマイシン、ダウノルビシン、塩酸ダウノルビシン、ダウノルビシンリポソーム、ダウノキソーム(登録商標)、デカドロン、デシタビン、デルタ−コルテフ(登録商標)、デルタソン(登録商標)、デニロイキンジフチトックス、デポサイト(商標)、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウムデキサソン、デクスラゾキサン、DHAD、DIC、ディオデックス、ドセタキセル、ドキシル(登録商標)、ドキソルビシン、ドキソルビシンリポソーム、ドロキシア(商標)、DTIC、DTIC−ドーム(登録商標)、デュラロン(登録商標)、エフデックス(登録商標)、エリガード(商標)、エレンセ(商標)、エロキサチン(商標)、エルスパル(登録商標)、エムサイト(登録商標)、エピルビシン、エポエチンアルファ、アービタックス、エルロチニブ、エルウィニアL−アスパラギナーゼ、エストラムスチン、エチヨル、エトポホス(登録商標)、エトポシド、エトポシドリン酸、オイレキシン(登録商標)、エベロリムス、エビスタ(登録商標)、エクセメスタン、フェアストン(登録商標)、ファスロデックス(登録商標)、フェマーラ(登録商標)、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラ(登録商標)、フルダラビン、フルオロプレックス(登録商標)、フルオロウラシル、フルオロウラシル(クリーム)、フルオキシメステロン、フルタミド、フォリン酸、FUDR(登録商標)、フルベストラント、G−CSF、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲムザール、グリベック(商標)、グリアデル(登録商標)ウエハ、GM−CSF、ゴセレリン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球単球コロニー刺激因子、ハロテスチン(登録商標)、ハーセプチン(登録商標)、ヘキサドロール、ヘキサレン(登録商標)、ヘキサメチルメラミン、HMM、ハイカムチン(登録商標)、ハイドレア(登録商標)、酢酸ヒドロコート(登録商標)、ヒドロコルチゾン、リン酸ナトリウムヒドロコルチゾン、コハク酸ナトリウムヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルトン、ヒドロキシ尿素、イブリツモマブ、イブリツモマブチウキセタンイダマイシン(登録商標)、イダルビシン、Ifex(登録商標)、IFN−アルファイホスファミド、IL−11 IL−2イマチニブメシレート、イミダゾールカルボキサミドインターフェロンアルファ、インターフェロンアルファ−2b(PEG共役体)、インターロイキン−2、インターロイキン−11、イントロンA(登録商標)(インターフェロンアルファ−2b)、イレッサ(登録商標)、イリノテカン、イソトレチノイン、イキサベピロン、イクセンプラ(商標)、Kキドロラーゼ(t)、ラナコート(登録商標)、ラバチニブ、L−アスパラギナーゼ、LCR、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリン、リューケラン、リューカイン(商標)、ロイプロリド、ロイロクリスチン、ロイスタチン(商標)、リポソームアラ−C、液体プレッド(登録商標)、ロムスチン、L−PAM、L−サルコリシン、ループロン(登録商標)、ループロンデポ(登録商標)、マチュレーン(登録商標)、マキシデックス、メクロレタミン、塩酸メクロレタミン、メドラロン(登録商標)、メドロール(登録商標)、メガース(登録商標)、メゲストロール、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メスネックス(商標)、メトトレキセート、メトトレキセートナトリウム、メチルプレドニゾロン、メチコルテン(登録商標)、マイトマイシン、マイトマイシン−C、ミトキサントロン、M−プレドニゾル(登録商標)、MTC、MTX、マスタージェン(登録商標)、ムスチンムタマイシン(登録商標)、マイルラン(登録商標)、マイロセル(商標)、マイロターグ(登録商標)、ナベルビン(登録商標)、ネララビン、ネオサール(登録商標)、ニューラスタ(商標)、ニューメガ(登録商標)、ニューポジェン(登録商標)、ネクサバール(登録商標)、ニランドロン(登録商標)、ニルタミド、ニペント(登録商標)、ナイトロジェンマスタード、ノルバデックス(登録商標)、ノバントロン(登録商標)、オクトレオチド、酢酸オクトレオチド、オンコスパー(登録商標)、オンコビン(登録商標)、オンタック(登録商標)、オンキサル(商標)、オプレベルキン、オプラプレッド(登録商標)、オラソン(登録商標)、オキサリプラチン、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル、パミドロネート、パニツムマブ、パンレチン(登録商標)、パラプラチン(登録商標)、ペディアプレッド(登録商標)、PEGインターフェロン、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、PEG−イントロン(商標)、PEG−L−アスパラギナーゼ、ペメトレキセド、ペントスタチン、フェニルアラニンマスタード、プラチノール(登録商標)、プラチノール−AQ(登録商標)、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレロン(登録商標)、プロカルバジン、プロクリット(登録商標)、プロリュウキン(登録商標)、カルムスチンインプラントを有するプロリフェプロスパン20、プリナソール(登録商標)、ラロキシフェン、レブラミド(登録商標)、リウマトレックス(登録商標)、リツキサン(登録商標)、リツキシマブ、ロフェロン−A(登録商標)(インターフェロンアルファ−2a)ルベックス(登録商標)、塩酸ルビドマイシン、サンドスタチン(登録商標)、サンドスタチンLAR(登録商標)、サルグラモスチム、ソル−コルテフ(登録商標)、ソル−メドロール(登録商標)、ソラフェニブ、スプリセル(商標)、STI−571、ストレプトゾシン、SU11248、スニチニブ、スーテント(登録商標)、タモキシフェン、タルセバ(登録商標)、タルグレチン(登録商標)、タキソール(登録商標)、タキソテール(登録商標)、テモダール(登録商標)、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、TESPA、サリドマイド、サロミド(登録商標)、セラシス(登録商標)、チオグアニン、チオグアニンタブロイド(登録商標)、チオホスホアミド、チオプレックス(登録商標)、チオテパ、TICE(登録商標)、トポサール(登録商標)、トポテカン、トレミフェン、トーリセル(登録商標)、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレアンダ(登録商標)、トレチノイン、トレックサール(商標)、トリセノックス(登録商標)、TSPA、TYKERB(登録商標)、VCR、ベクティビックス(商標)、ベルバン(登録商標)、ベルケード(登録商標)、ベプシド(登録商標)、ベサノイド(登録商標)、ビアヅール(商標)、ビダーザ(登録商標)、ビンブラスチン、硫酸ビンブラスチン、ビンカサールPfs(登録商標)、ビンクリスチン、ビノレルビン、酒石酸ビノレルビン、VLB、VM−26、ボリノスタット、VP−16、ブモン(登録商標)、キセローダ(登録商標)、ザノサー(登録商標)、ゼバリン(商標)、ザインカード(登録商標)、ゾラデックス(登録商標)、ゾレドロン酸、ゾリンザおよびゾメタを含む。
【0102】
上記のナノ粒子で処理することができる細胞の種類について制約はない。具体的には、細胞は、真核細胞、哺乳類細胞、より具体的には、齧歯類もしくはヒト細胞またはその両方であってよい。細胞は、胚外または胚性幹細胞、全能性または多能性、分裂性または非分裂性、柔組織または上皮組織、不死化または形質転換などを含むさまざまな組織から誘導することができる。細胞は、幹細胞または分化細胞であってよい。分化した細胞の型としては、脂肪細胞、線維芽細胞、筋細胞、心筋細胞、内皮細胞、樹状細胞、神経細胞、グリア、肥満細胞、血液細胞および白血球(たとえば、赤血球、巨核球細胞、B、Tおよびナチュラルキラー細胞などのリンパ球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、血小板、顆粒白血球)、上皮細胞、表皮細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、肝細胞、および内分泌腺または外分泌腺の細胞、ならびに感覚細胞が挙げられる。
【0103】
ナノ粒子は、非ウイルス型トランスフェクション・ベクターとして用いることができる。標的遺伝子は、いかなる具体的な型の標的遺伝子にもヌクレオチド配列にも限定されない。たとえば、標的遺伝子は、細胞性遺伝子、内因性遺伝子、腫瘍遺伝子、導入遺伝子、または翻訳RNAおよび非翻訳RNAを含むウイルス遺伝子であってよい。可能な標的遺伝子の例は、転写因子および発生遺伝子(たとえば、接着分子、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、Wntファミリー・メンバー、Paxファミリー・メンバー、Wingedファミリー・メンバー、Hoxファミリー・メンバー、サイトカイン/リンフォカインおよびそれらの受容体、成長/分化因子およびそれらの受容体、神経伝達物質およびそれらの受容体);腫瘍遺伝子(たとえばABLI、BCLI、BCL2、BCL6、CBFA2、CBL、CSFIR、ERBA、ERBB、ERBB2、ETSI、ETV6、FGR、FOS、FYN、HCR、HRAS、JUN、KRAS、LCK、LYN、MDM2、MLL、MYB、MYC、MYCLI、MYCN、NRAS、PIMI、PML、RET、SKP2、SRC、TALI、TCL3およびYES);腫瘍抑制遺伝子(たとえば、APC、BRAI、BRCA2、CTMP、MADH4、MCC、NFI、NF2、RBI、TP53およびWTI);および酵素(たとえば、ACPデサチュラーゼおよびヒドロキシラーゼ、ADPグルコースピロホリラーゼ、ATPアーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、カタラーゼ、シクロオキシゲナーゼ、デカルボキシラーゼ、デキストリナーゼ、DNAおよびRNAポリメラーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、GTPアーゼ、ヘリカーゼ、インテグラーゼ、インスリナーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、キナーゼ、ラクターゼ、リパーゼ、リポキシゲナーゼ、リゾチーム、ペルオキシダーゼ、ホスファターゼ、ホスホリパーゼ、ホスホリラーゼ、プロテイナーゼおよびペプチダーゼ、RNA成分もしくはタンパク質成分またはその両方を含むリコンビナーゼ、逆転写酵素、テロメラーゼ、およびトポイソメラーゼ)を含む。
【0104】
ポリ(スルホベタイン)は、ホスファチジルコリン系生体膜を模することができる可能性のあるポリ双性イオンである。これらのポリマは、一般に、高度に吸湿性であり、水性媒質に溶解すると分子鎖が水分子の鞘によって囲まれる傾向があり、in vivoのステルス特性で知られているポリ(エチレングリコール)(PEG)系の場合のように、細胞接着および抗体オプソニン作用に対する抵抗性を増加させることができる。本開示のポリカーボネート系ポリ(スルホベタイン)は、低分子量PEOブロックを利用し、毒性問題につながりかねない生物蓄積を低下させることができるインビボ生分解性によって先行技術のPEG系より有利である。したがって、本発明において合成したポリ(スルホベタイン)は、生物適合性および血液適合性の耐ファウリング材料ならびにタンパク質デリバリ剤などの利用において生分解性PEG代替物として魅力的である。
【0105】
また、開示されるのは、N−複素環ペンダントを有するポリカーボネートの4級化誘導体である。アルキル化剤によるN−複素環の4級化によって高度に水溶性の高分子電解質が得られる。結果として得られる4級化N−複素環ポリマは、正電荷を有する側鎖がアニオン性の細菌細胞膜を崩壊させることができるため、生分解性抗菌剤として用いることができる可能性がある。この合成はモジュール方式であることから、多数の異なるアルキル化剤(たとえばヨウ化メチル、臭化ベンジルまたはさまざまな鎖長の他のハロゲン化アルキル)を使用することが可能になる。
【0106】
また、開示されるのは、N−複素環ペンダントを有するポリカーボネートの部分4級化誘導体である。準化学量論量のアルキル化剤を用いる部分4級化は、「プロトン−スポンジ」効果によるRNA/DNAトランスフェクションに有用となりうるポリマを作り出すことができる可能性がある。原理上、これらのポリカーボネートは、その正電荷を有するペンダント環を用いて負電荷を有するポリヌクレオチド鎖とクーロン引力によって結合し、結果として得られる「ポリプレックス」は、エンドサイトーシスによって細胞に入ることになる。4級化されておらず電荷を持たないN−複素環ペンダントによって付与されるポリマの多大な緩衝能は、細胞内輸送時のリソソームヌクレアーゼの作用を阻害するだけでなく、v−ATPアーゼプロトンポンプによって供給されるプロトンを(「スポンジ」のように)捕捉することもできる可能性がある。長期にわたるプロトン捕捉は、エンドソームが溶解し、それによってカプセル化ポリ/オリゴヌクレオチドのカーゴを細胞核へ供給するために放出する点まで、エンドソームのモル浸透圧濃度を変えることができる。したがって、部分4級化N−複素環含有ポリカーボネートは、生分解性遺伝子デリバリビヒクルの可能性をもたらす。
【0107】
以下の実施例は、N−複素環ペンダントを有するブロックポリカーボネートを形成する方法と、カテコール基を有するブロックポリカーボネートによる混合ミセルの形成と、薬物充填混合ミセル(ナノ粒子)の形成の方法とを例示する。実施例は、スルトンとの反応によるスルホベタイン誘導体の形成を含むN−複素環ペンダントを官能化する方法も開示する。実施例は、単一の複素環含有ポリカーボネートが、より複雑な官能化ポリマへの共通の前駆体として用いられうることを示す。環状カルボニルモノマーの選択、開始ポリカーボネートにグラフトされるN−複素環化合物の選択、およびペンダントN−複素環の化学修飾の型によって、構造的な多様性を組み込むことができる。ポリマの精製は、沈殿、洗浄、超音波処理、遠心分離、およびそれらの組み合わせによって実現することができる。
【実施例】
【0108】
以下の実施例において用いられる材料を表5に挙げる。
【0109】
【表5】
【0110】
本明細書において、Mnは、数平均分子量であり、Mwは、重量平均分子量であり、MWは、1モルの分子量である。
【0111】
MTC−OC
6F
5は、セントラル硝子(Central Glass)から取得し、酢酸エチルとヘキサンとの混合物から2回結晶化することによって精製した。無水溶媒は、活性化アルミナカラムを用いて脱水し、モレキュラーシーブス(3オングストローム(0.3nm))上で保管した。他の材料はすべて、シグマアルドリッチ(Sigma−Aldrich)から購入し、そのまま用いた。
【0112】
1H NMRスペクトルは、ブルッカー(Bruker)のアバンス(Avance)400装置を用いて400MHzで取得した。ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)は、細孔径の増加する順に(100、1000、105および106オングストローム(10、100、10.5および10.6nm))直列に接続した4本のウォーターズ(Waters)の5マイクロメートルカラム(300mm×7.7mm)、ウォーターズ(Waters)410示差屈折計、および996フォトダイオードアレイ検出器を備えるウォーターズのシステムを用いてテトラヒドロフラン(THF)中で行った。このシステムは、ポリスチレン標準を用いて較正した。GPC分析は、直列に接続した2本のアジレント(Agilent)ポリポア(PolyPore)カラム(300mm×7.5mm)およびウォーターズ410示差屈折計を備えるウォーターズのシステムを用いて0.01MのLiBrを加えたN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中でも行った。このシステムは、ポリ(メタクリル酸メチル)標準で較正した。
【0113】
モノマー合成
5−メチル−5−エチルオキシカルボニル−1,3−ジオキサン−2−オン(MTC−OEt)(MW 188.2)の調製:
【0114】
【化18】
【0115】
(i)アンバーリスト(AMBERLYST)15(6.8g)を含むエタノール(150mL)にビス−MPA(22.1g、0.165モル)を加え、一晩還流した。次に、樹脂を濾別し、濾液を蒸発させた。得られた粘稠な液体に塩化メチレン(DCM、200mL)を加え、濾過した。濾液をMgSO
4で脱水し、蒸発させ、2,2−ビス(メチロール)プロピオン酸エチルを透明な無色の液体(24.3g、91%)として得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3、22℃):δ=4.09(q、2H、−OCH
2CH
3)、3.74(d、2H、−CH
2OH)、3.57(d、2H、−CH
2OH)、1.18(t、3H、−OCH
2CH
3)、0.98(s、3H、−CH
3)。(ii)ドライアイス/アセトンを用いて−75℃の窒素雰囲気で2,2−ビス(メチロール)プロピオン酸エチル(12.6g、0.078モル)およびピリジン(39mL、0.47モル)のDCM溶液(150mL)に、DCM(150mL)中のトリホスゲン(11.7g、0.039モル)の溶液を30分間かけて滴下した。反応混合物を冷却条件でさらに2時間撹拌してから室温へ上昇させた。NH
4Cl飽和水溶液(75mL)の添加によって反応を停止させ、その後に有機相を1M HCl水溶液(3×100mL)、NaHCO
3飽和水溶液(1×100mL)で洗浄し、MgSO
4で脱水し、濾過し、蒸発させた。残留物を酢酸エチルから再結晶してMTC−OEtを白色の結晶(8.0g、55%)として得た。
1H NMR(400MHz、CDCl
3、22℃):δ=4.67(d、2H、−CH
2OCOO)、4.25(q、2H、−OCH
2CH
3)、4.19(d、2H、−CH
2OCOO)、1.30(s、3H、−CH
3)、1.27(t、3H、−OCH
2CH
3)
【0116】
以下のポリマ調製において、ポリカーボネート鎖は、ヒドロキシル末端をキャップされない。ポリカーボネート骨格のカルボニル末端は、開環重合(ROP)用開始剤から誘導された断片と連結する。
【0117】
活性ペンタフルオロフェニルエステル含有ポリマの調製。
【0118】
フッ素化されたポリマは、「F」で始まる名称を有する。
【実施例1】
【0119】
F−1(重合度(DP)=100)の調製。
【0120】
【化19】
【0121】
窒素パージしたグローブボックス内で、開始剤3−ブチン−1−オール(3mg、0.01ミリモル)、MTC−OC
6F
5(0.357g、1.09ミリモル)および1.45gのジクロロメタン(DCM、MTC−OC6F5の初濃度は1.0Mとなる)をガラスバイアルに入れた。MTC−OC6F5は、この濃度では一部しか溶解しなかった。この混合物を撹拌してトリフルオロメタンスルホン酸(トリフル酸)(0.008g、0.05ミリモル)を加えた。反応が進むにつれて未溶解MTC−OC
6F
5がゆっくり溶解した。
1H NMRによって反応を観測した。反応が完結したら(この触媒使用量および重合度では約12時間)、ヘキサンにポリマF−1を沈殿させ、分離し、乾燥して白色の固体(収量:0.356g、99%)を得た。
1H NMR(CDCl
3、400MHz):δ=4.48(s、CH
2、4H)、1.51(s、CH
3、3H)。GPC(RI):Mn(PDI)=22.0kDa(1.19)。
【実施例2】
【0122】
F‐2(DP=50)の調製。
【0123】
【化20】
【0124】
ベンジルアルコールを開始剤(2.2mg、0.020ミリモル)として、MTC−OC6F5(0.357g、1.09ミリモル)、1.45gのジクロロメタン(MTC−OC
6F
5の初濃度は1.0Mとなる)およびトリフル酸(0.008g、0.05ミリモル)を用いて実施例1の手順によりポリマF‐2(DP=50)を調製した。ヘキサンにポリマF−2を沈殿させ、分離し、乾燥して白色の固体(収量:0.356g、99%)を得た。
1H NMR(CDCl
3、400MHz):δ=4.48(s、CH
2、4H)、1.51(s、CH
3、3H)。GPC(RI):Mn(PDI)=13.2kDa(1.21)。
【実施例3】
【0125】
F−3(DP=32)の調製。
【0126】
【化21】
【0127】
開始剤3−ブチン−1−オール(9.9mg、0.033ミリモル)、MTC−OC6F5(0.357g、1.09ミリモル)、1.45gのジクロロメタン(MTC−OC6F5の初濃度は1.0Mとなる)およびトリフル酸(0.008g、0.05ミリモル)を用いて実施例1の手順によりポリマF−3(DP=32)を調製した。ヘキサンにポリマF−3を沈殿させ、分離し、乾燥して白色の固体(収量:0.356g、99%)を得た。
1H NMR(CDCl
3、400MHz):δ=4.48(s、CH
2、4H)、1.51(s、CH
3、3H)。GPC(RI):Mn(PDI)=7.5kDa(1.27)。DP=32(
1H NMR末端基積分/解析による);Mn(NMRによる)=10.4kDa。
【実施例4】
【0128】
ブロック・コポリマF−4(ポリカーボネートDP=11)の調製。
【0129】
【化22】
【0130】
窒素パージしたグローブボックス内で、5kDaのmPEG−OH(4.0g、0.80 ミリモル)、MTC−OC
6F
5(3.39g、10.4ミリモル)および10.4mLのジクロロメタン(MTC−OC
6F
5は1Mになる)を小バイアルに入れた。5kDaのmPEG−OHが完全に溶解するまでこの溶液を撹拌した。MTC−OC6F5は、この濃度では一部しか溶けなかった。撹拌されている溶液にトリフル酸(0.12g、0.80ミリモル)を加えた。反応が進むにつれて、残りのMTC−OC
6F
5がゆっくり溶解し、均一溶液が得られた。
1H NMRによって反応を監視した。反応が完結したら、冷たいジエチルエーテルにポリマを沈殿させ、分離し、乾燥して白色の固体F−4(収量:0.616g、62%)を得た。
1H NMR(CDCl
3、400MHz):δ=4.46(s、4H、カーボネートCH
2)、3.64(s、4H、OCH
2CH
2)、1.51(s、3H、CH
3)。GPC(RI)。Mn(PDI)=11.26kDa(1.10)。NMRによるMTC−OC6F5ブロックのDP=11。
【実施例5】
【0131】
ブロック・コポリマF−5の調製
【0132】
【化23】
【0133】
窒素パージしたグローブボックス内で、3−ブチン−1−オール(0.006g、0.02ミリモル)、MTC−OC6F5(0.357g、1.09ミリモル)および1.45gのジクロロメタン(MTC−OC6F5は1.0Mとなる)を4mLガラスバイアルに入れた。3−ブチン−1−オールが完全に溶解するまでこの溶液を撹拌した。MTC−OC
6F
5は、この濃度では一部しか溶けなかった。撹拌されている溶液にトリフル酸(0.008g、0.06ミリモル)を加えた。反応が進むにつれて未溶解のMTC−OC
6F
5がゆっくり溶けた。
1H NMRによって反応を観測した。MTC−OC
6F
5の>95%反応率を観測したら、MTC−OEt(0.205g、1.09ミリモル)を最小限のジクロロメタンに溶解し、重合混合物に加えた。MTC−OEtの反応率が90%より大きくなったら、ヘキサンにポリマF−5を沈殿させ、分離し、乾燥して白色の固体(収量:0.476g、85%)を得た。
1H NMR(CDCl
3、400MHz):δ=4.48(s、CH
2ポリ(MTC−OC6F5)、4H)、4.26(m、CH
2ポリ(MTC−OEt)、4H)、4.20(m、CH
2CH
3ポリ(MTC−OEt)、2H)、1.51(s、CH
3、3H)ポリ(MTC−OC
6F
5)、1.26(m、CH
3ポリ(MTC−OEt)、3H)、1.26(m、CH
2CH
3ポリ(MTC−OEt)、3H)。GPC(RI):ブロック1 Mn(PDI)=8770
Da(1.20);ブロック1および2 Mn(PDI)=12.5kDa(1.24)。
【0134】
N−複素環含有ポリマの形成
これらのアミン官能化ポリマは、「A」で始まる名称を有する。
【実施例6】
【0135】
ポリマA−1(DP=100)の調製。
【0136】
【化24】
【0137】
磁気撹拌バーを入れた20mLのガラスバイアルにF−1(DP=100、0.800g、2.46ミリモル繰り返し単位)、無水THF(5.0mL)およびトリエチルアミン(TEA、0.273g、2.70ミリモル)を入れ、この溶液を氷−水浴中で0℃に冷却した。強く撹拌しながらTHF(1mL)中の1−(3−アミノプロピル)イミダゾール(APIm、0.307g、2.46ミリモル)の溶液を滴下して加えた。数分以内に濁りが観察され、続いて灰色がかった白色の沈殿物が次第に形成された。氷浴を取り外し、混合物をさらに30分間撹拌し続け、その後に過剰量のジエチルエーテル(15mL)を加えた。混合物に超音波を短時間照射してから遠心分離した。母液をデカンテーションし、さらにジエチルエーテル(20mL)を加えた。2回目の超音波処理、遠心分離およびデカンテーションを行って白色の固体A−1を回収し、次に高真空下で24時間乾燥した。収量:0.57g(87%)。
1H NMR(MeOD、400MHz):δ=7.68(s、1H)、7.14(s、1H)、6.97(s、1H)、4.25(s、4H、カーボネートCH
2)、4.00(m、2H)、3.15(m、2H)、1.95(m、2H)、1.20(s、3H、CH
3)。
【実施例7】
【0138】
ポリマA−2(DP=50)の調製。
【0139】
【化25】
【0140】
F−2(0.20g、0.613ミリモル繰り返し単位)、無水THF(1.0mL)、TEA(0.0680g、0.674ミリモル)およびTHF(0.5mL)中の1−(3−アミノプロピル)イミダゾール(0.0730g、0.583ミリモル)を用いて実施例4の手順によりポリマA−2(DP=50)を調製し、ジエチルエーテルでA‐2を沈殿させた。収量:0.164g(〜100%)。
1H NMR(MeOD、400MHz):δ=7.68(s、1H)、7.14(s、1H)、6.97(s、1H)、4.25(s、4H、カーボネートCH
2)、4.00(m、2H)、3.15(m、2H)、1.95(m、2H)、1.20(s、3H、CH
3)。
【実施例8】
【0141】
ポリマA−3(DP=32)の調製。
【0142】
【化26】
【0143】
F−3(DP=32、0.910g、2.79ミリモル繰り返し単位)、無水THF(5.0mL)、トリエチルアミン(0.31g、3.07ミリモル)、およびTHF(1mL)中の1−(3−アミノプロピル)イミダゾール(0.332g、2.65ミリモル)を用いて実施例4の手順によりポリマA−3(DP=32)を調製し、A−3をジエチルエーテルで沈殿させた。収量:0.746g(〜100%)。
1H NMR(MeOD、400MHz):δ=7.68(s、1H)、7.14(s、1H)、6.97(s、1H)、4.25(s、4H、カーボネートCH
2)、4.00(m、2H)、3.15(m、2H)、1.95(m、2H)、1.20(s、3H、CH
3)。
【実施例9】
【0144】
ポリマA−4(DP=32)の調製。
【0145】
【化27】
【0146】
F−3(0.910g、2.79ミリモル繰り返し単位)、無水THF(5.0mL)、トリエチルアミン(0.311g、3.07ミリモル)、THF(1.0mL)中の2−(2’−アミノエチル)ピリジン(0.341g、2.79ミリモル)を用いて実施例4の手順によりポリマA−4(DP=32)を調製し、A−4をジエチルエーテルで沈殿させた。収量:0.729g(〜99%)。
1H NMR(CDCl
3、400MHz):δ=8.45(ピリジンCH、1H)、7.60(ピリジンCH、1H)、7.43(広幅s、NH、1H)、7.14(ピリジンCH、1H)、7.12(ピリジンCH、1H)、4.20(s、カーボネートCH
2、4H)、3.58(CH
2、2H)、2.92(CH
2、2H)、1.17(s、CH
3、3H)。
【実施例10】
【0147】
ポリマA−5(DP=100)の調製。
【0148】
【化28】
【0149】
F−1(0.530g、1.62ミリモル繰り返し単位)、無水THF(3.0mL)、トリエチルアミン(0.200g、0.198ミリモル)、THF(1.0mL)中の3−(N、N−ジメチルアミノ)−1−プロピルアミン(0.183g、1.79ミリモル)を用いて実施例4の手順によりポリマA−5(DP=100)を調製し、A−5をジエチルエーテルで沈殿させた。収量:0.334g(84%)。
1H NMR(MeOD、400MHz):δ=4.28(s、カーボネートCH
2、4H)、3.25(t、CH
2、2H)、2.55(CH
2、2H)、2.41(−N(CH
3)2、6H)、1.75(CH
2、m、2H)、1.26(s、CH
3、3H)。ポリマA−5は、水に溶けない。MeOD中で
1H NMRを行い、1時間(試料の調製およびスペクトルの取得の時間)後に少量の分解が明らかであった。一般に、ジメチルアミノ部分があると水またはアルコールなどの求核溶媒の存在下で骨格の分解が起こる傾向があった。
【実施例11】
【0150】
ポリマA−6(ポリカーボネートDP=10)の調製。
【0151】
【化29】
【0152】
磁気撹拌バーを入れた20mLガラスバイアルにF−4(0.60g、0.78ミリモル繰り返し単位)、無水DMF(2.0mL)およびトリエチルアミン(0.079g、0.78ミリモル)を入れた。撹拌しながらDMF(0.5mL)中の1−(3−アミノプロピル)イミダゾール(0.10g、0.78ミリモル)の溶液を滴下して加えた。混合物を室温で30分間撹拌し、その後、ピペットで過剰量のジエチルエーテル(15mL)に加えてポリマを沈殿させた。混合物を短時間超音波照射し、次に遠心分離した。母液をデカンテーションし、さらにジエチルエーテル(20mL)を加えた。2回目の超音波処理、遠心分離、およびデカンテーションを行って白色の固体を回収し、次に高真空下で24時間乾燥した。透析(H
2O)を用いてさらに精製を行い、A−6を得た。
1H NMR(MeOD、400MHz):δ=7.69(s、1H)、7.14(s、1H)、6.97(s、1H)、4.25(s、4H、カーボネートCH
2)、4.01(m、2H)、3.64(s、4H、OCH
2CH
2)、3.14(m、2H)、1.96(m、2H)、1.20(s、3H、CH
3)。
【実施例12】
【0153】
ポリマA-7(ポリカーボネートDP=10)の調製。
【0154】
【化30】
【0155】
F−4(0.30g、0.39ミリモル繰り返し単位)、無水DMF(2.0mL)およびトリエチルアミン(0.039g、0.39ミリモル)、DMF(0.5mL)中の2−(2−アミノエチル)ピリジン(0.047g、0.39ミリモル)を用いて実施例11の手順によりポリマA−7を調製し、ポリマをジエチルエーテルに沈殿させた。透析(H
2O)を用いてさらに精製を行った。
1H NMR(MeOD、400MHz):δ=8.44(br、1H)、7.74(m、1H)、7.28(br、2H)、4.24(s、4H、カーボネートCH
2)、3.65(s、4H、OCH
2CH
2)、3.50(m、2H)、2.95(m、2H)、1.19(s、3H、CH
3)。
【実施例13】
【0156】
ポリマA−8(ポリカーボネートDP=10)の調製
【0157】
【化31】
【0158】
磁気撹拌バーを入れた20mLのガラスバイアルにF−5(0.700g、1.79ミリモルのMTC−OC
6F
5繰り返し単位)、無水THF(5.0mL)およびトリエチルアミン(0.200g、1.97ミリモル)を入れ、この溶液を氷−水浴中で0℃に冷却した。次に、撹拌しながらTHF(1.0mL)中の1−(3−アミノプロピル)イミダゾール(0.225g、1.79ミリモル)の溶液を滴下して加えた。氷浴を取り外し、混合物を45分間撹拌し、その後過剰量のジエチルエーテル(15mL)にピペットで加えてポリマを沈殿させた。混合物に超音波を短時間照射し、次に遠心分離した。母液をデカンテーションし、さらにジエチルエーテル(20mL)を加えた。2回目の超音波処理、遠心分離、およびデカンテーションを行って白色の固体A−8を回収し、次に高真空下で24時間乾燥した。
1H NMR(MeOD、400MHz):δ=7.68(s、1H)、7.14(s、1H)、6.97(s、1H)、4.25(s、4H、カーボネートCH
2)、4.17(br、2H)、4.00(m、2H)、3.14(m、2H)、1.94(m、2H)、1.20(s、3H、CH
3)。
【実施例14】
【0159】
ブロック・ポリマA−9(ポリカーボネートDP=10)の調製
【0160】
【化32】
【0161】
磁気撹拌バーを入れた20mLのガラスバイアルにF−4(0.60g、0.77ミリモル繰り返し単位)、無水DMF(2.0mL)、およびチラミン(0.127g、0.930ミリモル)を入れた。次に、DMF(0.5mL)中のトリエチルアミン(0.094g、0.93ミリモル)を加えた。反応混合物を室温(18〜20℃)で4時間撹拌し、その後A−9をジエチルエーテルに沈殿させた。水中の透析によって粗製ポリマをさらに精製した。
【実施例15】
【0162】
ブロック・ポリマA−10(ポリカーボネートDP=11)の調製
【0163】
【化33】
【0164】
磁気撹拌バーを入れた20mLのガラスバイアルにF−4(0.60g、0.77ミリモル繰り返し単位)、無水DMF(1.0mL)、および塩酸ドーパミン(0.176g、0.930ミリモル)を入れた。次に、トリエチルアミン(0.156g、1.55ミリモル)を加えた。反応混合物を室温(約20℃)で4時間撹拌し、その後A−10をジエチルエーテルに沈殿させた。水中の透析によって粗製ポリマA−10をさらに精製した。
【0165】
ポリ(スルホベタイン)ポリマの形成
双性イオンスルホベタインポリマは、「S」で始まる名称を有する。
【実施例16】
【0166】
スルホベタインホモポリマS−1(DP=100)の調製。
【0167】
【化34】
【0168】
磁気撹拌バーを入れた20mLのガラスバイアルにA−1(0.650g、2.43ミリモル繰り返し単位)、1,3−プロパンスルトン(0.446g、3.65ミリモル、1.5当量)、および無水DMF(2.0mL)を入れた。反応混合物を18℃で24時間撹拌し、その間にゲル化が起こった。ゲルを最小限の容積の水(約0.5mL)の添加によって溶解させ、得られた溶液を撹拌されているジエチルエーテルに沈殿させた。次に懸濁液を遠心分離し、溶媒をデカンテーションして目的のスルホベタインポリマS−1を白色の固体として得た。ポリマS−1を追加分のエーテルで洗浄し、高真空で24時間で乾燥した。
1H NMR(D
2O、400MHz):δ=8.80(s、1H、imid)、7.55(s、1H、imid)、7.50(s、1H、imid)、4.34(t、2H、CONH−CH
2)、4.24(広幅s、4H、カーボネート)、4.17(t、2H)、3.18(m、2H)、2.86(t、2H)、2.26(m、2H)、2.06(m、2H)、1.19(s、3H、CH
3)。
【実施例17】
【0169】
スルホベタインホモポリマS−2(DP=50)の調製
【0170】
【化35】
【0171】
ポリマA−2(0.164g、0.613ミリモル繰り返し単位)、1,3−プロパンスルトン(0.112g、0.920ミリモル、1.5当量)、および無水DMF(1.0mL)を用いて実施例8の手順によりポリマS−2(DP=50)を調製し、S−2をジエチルエーテルで沈殿させた。白色固体の収量:0.223g(93%)。
1H NMR(D
2O、400MHz):δ=8.80(s、1H、N=CH−N)、7.55(s、1H、imid)、7.50(s、1H、imid)、4.34(t、2H、CONH−CH
2)、4.24(広幅s、4H、カーボネート)、4.17(t、2H)、3.18(m、2H)、2.86(t、2H)、2.26(m、2H)、2.06(m、2H)、1.19(s、3H、CH
3)。
【実施例18】
【0172】
スルホベタインジブロック・コポリマS−3の調製
【0173】
【化36】
【0174】
磁気撹拌バーを入れた20mLのガラスバイアルにA−8(0.530g、1.60ミリモル繰り返し単位)、1,3−プロパンスルトン(0.293g、2.40ミリモル、1.5当量)、および無水DMF(1.5mL)を入れた。反応混合物を室温(18℃)で24時間撹拌してから、撹拌されているジエチルエーテルに沈殿させた。次に懸濁液を遠心分離し、溶媒をデカンテーションして目的ポリマを白色の固体として得た。ポリマS−3を追加分のエーテルで洗浄し、高真空で24時間乾燥した。
1H NMR(D
2O、400MHz):δ=8.80(s、1H、N=CH−N)、7.55(s、1H、imid)、7.50(s、1H、imid)、4.34(t、2H、CONH−CH
2)、4.24(m、4H、カーボネート)、4.16(m、2H)、3.18(m、2H)、2.86(m、2H)、2.27(m、2H)、2.06(m、2H)、1.19(s、3H、CH
3)。
【0175】
N−複素環ポリマの4級化
4級化されたポリマは、「Q」で始まる名称を有する
【実施例19】
【0176】
4級ホモポリマQ−1(DP=32)の調製
【0177】
【化37】
【0178】
磁気撹拌バーを入れた20mLのガラスバイアルにA−3(0.746g、2.79ミリモル繰り返し単位)、1−ブロモブタン(0.573g、4.18ミリモル、1.5当量)、および無水DMF/アセトニトリル(2:1体積/体積、6.0mL)を入れた。反応混合物を封止バイアル中60℃で一夜加熱し、その後、減圧で濃縮し、次にジエチルエーテルに沈殿させた。懸濁液を遠心分離し、母液をデカンテーションして除いて白色の固体を回収し、高真空で24時間乾燥した。固体のQ−1を脱イオン水に取り込み、透析によってさらに精製し、次いで凍結乾燥によって単離した。収量:1.01g(94%)。
1H NMR(D2O、400MHz):δ=8.75(s、1H)、7.49(s、1H)、7.47(s、1H)、4.10〜4.30(br、8H)、3.17(m、2H)、2.05(m、2H)、1.79(m、2H)、1.25(m、2H)、1.19(s、3H、CH
3)、0.85(s、3H、CH
3)。
【実施例20】
【0179】
ランダム4級コポリマQ−2の調製
【0180】
【化38】
【0181】
磁気撹拌バーを入れた20mLのガラスバイアルにA−3(0.404g、1.51ミリモル繰り返し単位)、1−ブロモブタン(0.145g、1.06ミリモル、0.7当量)、および無水DMF/アセトニトリル(2:1体積/体積、4.0mL)を入れた。反応混合物を封止バイアル中60℃で一夜加熱し、その後、減圧で濃縮し、次にジエチルエーテルに沈殿させた。懸濁液を遠心分離し、母液をデカンテーションして除き、白色の固体を回収し、高真空で24時間乾燥した。ポリマQ−2を脱イオン水中の透析によってさらに精製し、次いで凍結乾燥によって単離した。収量:0.483g(88%)。
1H NMR(D2O、400MHz):δ=8.75(s、1H)、7.49(s、1H)、7.47(s、1H)、4.10〜4.30(br、8H)、3.17(m、2H)、2.05(m、2H)、1.79(m、2H)、1.25(m、2H)、1.19(s、3H、CH
3)、0.85(s、3H、CH
3)。
【0182】
表6にポリマ調製を要約する。
【0183】
【表6】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
細胞生存率試験
ヒト胚腎臓(HEK293)細胞株を含む毒性試験のための代表的なポリマとして2種類のスルホベタインホモポリマ(S−1およびS−2)と1種類の両親媒性スルホベタインジブロック・コポリマ(S−3)とを選んだ。対照としてポリ(エチレングリコール)(PEG)ポリマ(Mn=5kDaおよび10kDa)を用いた。
【0190】
10%ウシ胎児血清(FBS)および1%ペニシリン−ストレプトマイシンを加えて供給されるRPMI-1640中でHEK293細胞を培養した。HEK293細胞を10,000細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種した。37℃、5%CO
2で細胞を培養した。24時間後、培地をさまざまな濃度のポリマを含有する新鮮培地に置換した。48時間培養した後に、100マイクロリットルの新しい培地と、20マイクロリットルの(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(すなわちMTT)の5mg/mL溶液とを用いて試料培地を置換した。4時間インキュベーションした後に培地を除き、各ウェルにDMSO(150マイクロリットル)を加えてホルマザン結晶を溶解した。マイクロプレートリーダー(米国バイオ−テック・インスツルメンツ(Bio−tek Instruments)のパワー・ウェーブ(Power−Wave)X)を用いて550nmにおける吸光度から690nmにおける吸光度を減じた差として各ウェルの吸光度を測定した。結果は、550nmにおけるブランク対照試料の吸光度に対する百分率として提示した。
【0191】
両方のPEGポリマと同様に、S−1からS−3の3種類のスルホベタインポリカーボネートは、細胞毒性をあまり示さなかった(
図1から5、棒グラフ)。
【0192】
ポリマ凝集測定
ウシ胎児血清(FBS)を含有するリン酸緩衝食塩水(PBS)培地中のポリマの粒径変化の測定によってS−1からS−3の3種類のスルホベタインポリマの安定性および凝集特性を検討した。血清添加培地のタンパク質は、合成ポリマと結合することができ、その結果、粒径の変化によって検出可能なミセル粒子の凝集が起こる。10%ウシ胎児血清(FBS)を含有するPBSにpH7.4でスルホベタインポリマを溶解させた。対照として10%FBSを含有するPBSを用いた。658nmのヘリウム−ネオンレーザ・ビーム(散乱角:90°)を備える90プラス(90Plus)/BI−MAS(ニューヨーク州ホルツビル(Holtsville、NY)のブルックヘブン・インスツルメンツ・コーポレーション(Brookhaven Instruments Corporation)を用いてポリマ溶液の粒径を24時間または48時間にわたり分析した。スルホベタインポリマの初濃度は、500mg/Lであった。各試料を、3回測定し、平均粒径を得た。
【0193】
FBSだけを含有するPBSの挙動と同様に、S−1およびS−2の粒径は、10%FBSを含有するPBS中で48時間にわたって安定であり(
図6)、ミセル粒子の凝集がないことを示した。しかし、2時間のインキュベーション後、S−3ミセルの凝集が観察された。理由を付けようとするわけではないが、S−3ミセル凝集は、MTC−OEtから誘導された疎水性ブロックの影響に由来する可能性がある。
【0194】
臨界ミセル濃度(CMC)
さまざまなポリマ濃度におけるポリマ溶液の散乱強度(動的光散乱)を追跡することによってCMCを決定した。等しい重量の各ポリマを一緒に水に溶解することによって2種類の異なるポリマの混合ミセルを調製した。表7は、個々のアミンポリマA−6、A−7、A−9およびA−10ならびにこれらのポリマの組み合わせによって形成される混合ミセルのCMC、粒径およびPDIの一覧である。
【0195】
【表7】
【0196】
表8は、ミセル単独(DOXなし)の粒径の一覧である。実施例29から32は、個々のポリマから調製した。実施例33から36(「ミセルの混合物」)は、最初に個々のポリマを別々の溶液に溶解し、次にこれらの溶液を混合することによって調製した。実施例37〜40(「混合ミセル」)は、2種類のポリマを一緒に溶液に溶解することによって調製した。実施例31〜33および37の粒径分布は、二峰性であった。
【0197】
【表8】
【0198】
DOX充填ミセルの調製およびキャラクタリゼーション
上記ミセルへのドキソルビシン(DOX)のカプセル化は、超音波処理/メンブレン透析法を用いて行った。DOX(5mg)を1.5mLのジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解し、3モル過剰のトリエチルアミンで中和した。0.5mLのDMAcに10mgのポリマが溶解しているポリマ溶液をDOX溶液に加え、ボルテックスによって5分間混合した。プローブ系超音波発生装置(バイブラ・セル(Vibra Cell)VCX130)を用いて130Wで超音波照射しながら脱イオン(DI)水(10mL)に薬物およびポリマを含有する溶液を2分間かけ滴下して加えた。次に、1000Daの分子量カットオフを有する透析バッグ(スペクトラム・ラボラトリーズ・インク(Spectrum Laboratories Inc.)のスペクトラ/ポル(Spectra/Por)7)を用いてこの溶液を1000mLの脱イオン水に対して48時間透析した。最初の6時間は3時間ごと、翌日もう1度水を換えた。2日経過した後にDOX充填ミセルを凍結乾燥によって集めた。既知量のDOXを充填したミセルを1mLのDMSOに溶解し、480nmにおいて紫外−可視分光光度計(UV 2501PC、島津、日本)を用いて吸光度を測定することによって、充填されたDOXの量を測定した。以下の式:DOX充填レベル(重量%)=[(見いだされたDOXの質量)/(DOX充填ミセルの質量)]×100%によってDOX充填レベルを計算した。
【0199】
動的光散乱(DLS)測定
658nmのヘリウム−ネオンレーザビーム(動的光散乱、散乱角:90°)を備えるゼータサイザー(Zetasizer)3000 HAS(英国、マルヴァーン(Malvern)のマルヴァーン・インスツルメント・リミテッド(Malvern Instrument Ltd.))を用いて調製直後のDOX充填ミセルの粒径を測定した。各測定を5回繰り返した。5つの測定値から平均値を得た。試料が個々のミセルおよび凝集体を含有するかもしれないので、分解能を最大にするために複数モデル分析を選んでサイズ測定を行った。
【0200】
表9は、DOX充填ミセルを作るために用いた各出発原料の使用量の一覧である。
【0201】
【表9】
【0202】
表10は、DOX充填ミセルの全乾燥重量を基準としたDOX充填ミセル中のDOXの重量パーセント分析値(wt%)の一覧である。表10は、DOX充填ミセルの粒径および多分散指数(PDI)の一覧である。DOX充填レベルは、
図7の棒グラフにも同じものが使用されている。
【0203】
【表10】
【0204】
混合ミセルからのDOXのin vitro放出
以下の手順を用いて実施例47のDOX充填混合ミセルからのDOXの放出を測定した。1000Daの分子量カットオフを有する透析膜管へ1mg/mL(5mL)の濃度のDOX充填ミセル溶液を移した。次に、管を37℃、pH7.4の50mLのリン酸緩衝食塩水(PBS)を含むビーカー中に浸漬した。100回転/分の速度で管を振盪した。特定の時間間隔で1mLの放出培地を吸引し、1mLの新しいPBSに換えた。紫外−可視分光光度計を用いて480nmにおいて試料中のDOX含有率を分析した。
【0205】
図8は、実施例47についてPBS培地中の薬物放出プロファイルを示す。DOXは120時間にわたってほとんど放出されず(<約8%)、DOXが混合ミセル粒子によって強く保持されていることを示した。
【0206】
比較のために、
図8は、以下の構造
【0207】
【化39】
【0208】
【化40】
【0209】
を有する2種類のポリマPEG−PACおよびPEG−PUCSIから調製したDOX充填酸−尿素混合ミセルの放出プロファイルを含む。これらのポリマおよびDOX充填混合ミセルは、C.Yangら、「Supramolecular nanostructures designed for high cargo loading capacity and kinetic stability」、Nano Today2010年、5巻、p.515〜523に従って調製した。PEG−PACへのベンジルエステル前駆体は、Mn=11.4kDaおよびPDI=1.2を有した。PEG−PACのCMCは、152.8mg/Lであった。PEG−PAC/PEG−PUCS1 1:1という名称の充填混合ミセルは、1:1モル比の酸:尿素基を含有し、15.8mg/LのCMCを有した。PEG−PAC/PEG−PUCS1 1:1のDOX充填混合ミセルは、40wt%のDOXを含有し、177nmの平均粒径を有し、約6時間以内にDOXの約60%を培地に放出した(同上、
図5a、p.522)。
【0210】
DOX装填ミセルのHepG2細胞生存率
HepG2肝臓癌細胞を用いて上記にさらに記載されている細胞生死判別試験手順に従った。実施例47のDOX充填混合ミセルにHepG2細胞を48時間曝露した。対照として遊離DOXを用いた。
図9は、実施例47のDOX充填混合ミセルの毒性プロファイルが、遊離DOXプロファイルを高いDOX濃度の方へ移したものと似ていることを示す。これらの結果は、実施例47のDOX充填混合ミセルがPEG−PAC/PEG−PUCS1 1:1DOX充填ミセルと比べて、より高い薬物の放出への選択性を有することと、実施例47のDOX充填混合ミセルからの放出がHepG2細胞との接触を契機とすることと、を示す。放出された薬物は、標的HepG2細胞を殺すことに有効である。
【0211】
まとめ
開示した生分解性混合ミセルは、有効な薬物用キャリアである。薬物充填混合ミセルナノ粒子は、いくつかの有利な特性を示す。ナノ粒子は、血清培地中で凝集しにくくすることができ、血清培地に5日間曝露されたとき薬物の90%以上を保持することができる一方で、標的細胞と接触すると薬物を放出することができる。これらの特性は、薬物効率を犠牲にすることなく所定の用量で所定の薬物の毒性副作用を低下させるために有望である。これらのミセルは、粒径、血清蛋白質に関連する凝集挙動、薬物結合特性、薬物放出特性、および細胞認識特性を制御するために、多様な官能基で官能化することができる。可能性のある使用としては、搬送薬が、唯一と言わないまでも主要な治療薬剤である、がん治療および抗生物質治療が挙げられる。
【0212】
本明細書において用いられる用語法は、具体的な実施形態を記載する目的のために過ぎず、本発明を限定するものではない。本明細書において用いられる単数形「a」、「an」および「the」は、別段に文脈に明記がない限り複数形も含むものとする。本明細書において用いられる用語「含む」もしくは「含むこと」またはその両方は、明示された特徴、整数、ステップ、操作、要素もしくは構成成分またはこれらのいかなる組合せの存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成成分もしくはそれらの群またはそれらのいかなる組合せの存在または追加を除外しないことがさらに理解されるものとする。2つの数値限界XおよびY(たとえばXppmからYppmの濃度)を用いてありうる値を表すために範囲が用いられるとき、別段に明記のない限り、値は、X、YまたはXとYとの間のいずれかの数であってよい。
【0213】
本発明の記載は、例示および説明するために提示されているが、網羅的であることも、開示された形態の発明に限定されることも意図されていない。本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく多くの改変および変化が当業者に自明である。実施形態は、本発明の原理およびその実際の適用をもっともよく説明し、当分野の他の当業者が本発明を理解することを可能にするために、適切に選ばれ、記載された。