(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の二酸化炭素吸脱着部及び前記第2の二酸化炭素吸脱着部は、複数のアルミ板、及び前記複数のアルミ板のそれぞれの表面上に前記活性炭からなる活性炭薄膜を有することを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素除去装置。
前記ガス導入部及び前記ガス排出部を制御するとともに、前記第1の二酸化炭素吸脱着部及び前記第2の二酸化炭素吸脱着部を選択的に加熱するように前記第1ペルチェ素子、前記第2ペルチェ素子、及び前記第3ペルチェ素子に供給する電流の極性を制御する制御部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二酸化炭素除去装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような一方の吸着床から引き出された熱を利用して他方の吸着床における二酸化炭素の脱離を行う構造では、他方の吸着床の加熱に時間がかかり、脱離及び吸着の変換サイクルが比較的長くなる。同様に、特許文献2のように2つのキャニスターの接合部分に共通の熱電素子を設ける構造では、1つのキャニスターの加熱に時間がかかり、脱離及び吸着の交換サイクルが比較的長く(具体的には20分〜30分)なる。
【0006】
また、特許文献1及び特許文献2に記載されている二酸化炭素の吸着剤は、固体アミン等の固体状の材料であるため、二酸化炭素を含むガスとの接触面積が小さくなる。このため、二酸化炭素の除去効率を向上させるために、当該ガスとの接触面積を拡大しようとすると、当該吸着剤の数量を増加する必要があり、二酸化炭素除去装置の大型化及びコスト増加という問題が生じていた。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、二酸化炭素の脱離及び吸着の交換サイクルの短縮化を図りつつ、小型化及びコスト低減を容易に図ることができる二酸化炭素除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の二酸化炭素除去装置は、浄化前のガスから二酸化炭素を除去して浄化ガスを排出する二酸化炭素除去装置であって、前記浄化前のガスに含まれる前記二酸化炭素を吸着し、且つ加熱によって前記二酸化炭素を脱離す
る第1の二酸化炭素吸脱着部及び第2の二酸化炭素吸脱着部と、前記第1の二酸化炭素吸脱着部及び前記第2の二酸化炭素吸脱着部に対して前記浄化前のガスを選択的に導入するガス導入部と、前記第1の二酸化炭素吸脱着部から前記二酸化炭素及び前記浄化ガスを交互に排出するとともに、前記第1の二酸化炭素吸脱着部から前記二酸化炭素を排出するときに前記浄化ガスを前記第2の二酸化炭素吸脱着部から排出し、前記第1の二酸化炭素吸脱着部から前記浄化ガスを排出するときに前記二酸化炭素を前記第2の二酸化炭素吸脱着部から排出するガス排出部と、前記第1の二酸化炭素吸脱着部と前記第2の二酸化炭素吸脱着部との間に配置された第1ペルチェ素子と、前記第1の二酸化炭素吸脱着部を前記第1ペルチェ素子と挟むように配置され、
前記第1ペルチェ素子とによって前記第1の二酸化炭素吸脱着部を両側から加熱及び冷却する第2ペルチェ素子と、前記第2の二酸化炭素吸脱着部を前記第1ペルチェ素子と挟むように配置され、
前記第1ペルチェ素子とによって前記第2の二酸化炭素吸脱着部を両側から加熱及び冷却する第3ペルチェ素子と、を有することを特徴とする。
【0009】
上述した二酸化炭素除去装置において、前記第1の二酸化炭素吸脱着部及び前記第2の二酸化炭素吸脱着部は、金属材料の表面上に粉末状の活性炭を塗布してなる積層構造を有していてもよい。この場合に、前記第1の二酸化炭素吸脱着部及び前記第2の二酸化炭素吸脱着部は、複数のアルミ板、及び前記複数のアルミ板のそれぞれの表面上に前記活性炭からなる活性炭薄膜を有していてもよい。
【0010】
また、上述したいずれかの二酸化炭素除去装置において、前記第2ペルチェ素子及び前記第3ペルチェ素子のそれぞれには、ヒートシンクが設置されていてもよい。
【0011】
更に、上述したいずれかの二酸化炭素除去装置において、前記ガス導入部及び前記ガス排出部を制御するとともに、前記第1の二酸化炭素吸脱着部及び前記第2の二酸化炭素吸脱着部を選択的に加熱するように前記第1ペルチェ素子、前記第2ペルチェ素子、及び前記第3ペルチェ素子に供給する電流の極性を制御する制御部を有していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の二酸化炭素除去装置においては、各二酸化炭素吸脱着部がペルチェ素子に挟まれているため、各二酸化炭素吸脱着部を効率よく加熱及び冷却することができる。また、本発明の二酸化炭素除去装置においては、二酸化炭素吸脱着部を2つのペルチェ素子によって挟む構造を備えない従来の二酸化炭素除去装置と比較して、二酸化炭素の脱離及び吸着のサイクルを短縮することができる。
【0013】
また、本発明の二酸化炭素除去装置においては、二酸化炭素吸脱着部に粉末状の活性炭が用いられるため、二酸化炭素と活性炭との接触面積を増加させることができる。これにより、二酸化炭素吸脱着部の小型化を図ることができ、二酸化炭素除去装置自体のコスト低減を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について、実施例及び変形例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施例及び変形例の説明に用いる図面は、いずれも本発明による二酸化炭素除去装置及びその構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、各構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。更に、実施例及び変形例で用いる様々な数値は、いずれも一例を示すものであり、必要に応じて様々に変更することが可能である。
【0016】
<実施例>
(二酸化炭素除去装置の全体構成)
先ず、
図1を参照しつつ本発明の実施例に係る二酸化炭素除去装置10の構成を説明する。
図1は、実施例に係る二酸化炭素除去装置10の全体構成の概略を示す概略構成図である。
【0017】
図1に示すように、二酸化炭素除去装置10は、二酸化炭素を含む空気(すなわち、浄化前のガス)から二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去部11と、二酸化炭素除去部11に当該浄化前のガスを導入するガス導入部12と、二酸化炭素が除去された空気(すなわち、浄化ガス)及び二酸化炭素を排出するガス排出部13と、各部を制御する制御部14とから構成されている。
【0018】
二酸化炭素除去部11は、温度変化によって二酸化炭素の吸着及び脱離を自在に行うことができる第1の二酸化炭素吸脱着部21及び第2の二酸化炭素吸脱着部22と、第1の二酸化炭素吸脱着部21及び第2の二酸化炭素吸脱着部22を加熱及び冷却する3つのペルチェ素子(第1ペルチェ素子23、第2ペルチェ素子24、及び第3ペルチェ素子25)と、第2ペルチェ素子24及び第3ペルチェ素子25を冷却するためのヒートシンク26、27と、を有している。具体的な配置構成としては、2つの第1の二酸化炭素吸脱着部21及び第2の二酸化炭素吸脱着部22が第1ペルチェ素子23を挟んで隣接して配置され、第1の二酸化炭素吸脱着部21を第1ペルチェ素子23と挟むように第2ペルチェ素子24が配置され、第2の二酸化炭素吸脱着部22を第1ペルチェ素子23と挟むように第3ペルチェ素子25が配置されている。また、第2ペルチェ素子24の第1の二酸化炭素吸脱着部21が配置されていない側にはヒートシンク26が設置され、第3ペルチェ素子25の第2の二酸化炭素吸脱着部22が配置されていない側にはヒートシンク27が設置されている。
【0019】
ガス導入部12は、所定の空間内の浄化前のガスを二酸化炭素除去装置10内に導入するためのガス導入弁31と、ガス導入弁31と第1の二酸化炭素吸脱着部21とを接続する流入路32と、ガス導入弁31と第2の二酸化炭素吸脱着部22とを接続する流入路33と、を有している。ガス導入弁31は、制御部14から送信される制御信号に応じて、弁の開口状態を変更することができ、流入路32及び流入路33のいずれか一方に浄化前のガスを導入することができる構造を有している。すなわち、ガス導入弁31は、二酸化炭素除去装置10の外部と流入路32及び流入路33とを選択的に連通し、選択した流路に対して浄化前のガスを導入することになる。換言すれば、ガス導入部12は、制御部14から送信される制御信号に応じて、第1の二酸化炭素吸脱着部21及び第2の二酸化炭素吸脱着部22に対して浄化前のガスを選択的に導入する。
【0020】
ガス排出部13は、二酸化炭素が除去された空気である浄化ガスを排出する浄化ガス排出弁41と、二酸化炭素を排出するための二酸化炭素排出弁42と、二酸化炭素排出弁42を介して二酸化炭素除去装置10の外部に二酸化炭素を効率よく排出するためのポンプ43と、第1の二酸化炭素吸脱着部21と浄化ガス排出弁41及び二酸化炭素排出弁42とを接続する流出路44と、第2の二酸化炭素吸脱着部22と浄化ガス排出弁41及び二酸化炭素排出弁42とを接続する流出路45と、二酸化炭素排出弁42とポンプ43と接続する流出路46と、を有している。
【0021】
浄化ガス排出弁41は、制御部14から送信される制御信号に応じて、弁の開口状態を変更することができ、流出路44及び流出路45のいずれか一方と二酸化炭素除去装置10の外部とを連通することができる構造を有している。すなわち、浄化ガス排出弁41は、流出路44及び流出路45から選択して浄化ガスを排出することになる。
【0022】
二酸化炭素排出弁42は、制御部14から送信される制御信号に応じて、弁の開口状態を変更することができ、流出路44及び流出路45のいずれか一方とポンプ43とを連通することができる構造を有している。すなわち、二酸化炭素排出弁42は、流出路44及び流出路45から選択し、選択した流路から二酸化炭素排出をポンプ43に向かって排出することになる。
【0023】
ポンプ43には、ロータリーポンプ、拡散ポンプ、又はターボ分子ポンプ等の各種の一般的なポンプを用いることができる。例えば、本実施例に係る二酸化炭素除去装置10が国際宇宙ステーション等の所定の空間に設置される場合、ポンプ43は、当該国際宇宙ステーションから外部の宇宙空間に二酸化炭素を排出することになる。
【0024】
以上のようなガス排出部13の構成から、ガス排出部13は、第1の二酸化炭素吸脱着部21から二酸化炭素及び浄化ガスを交互に排出するとともに、第1の二酸化炭素吸脱着部21から二酸化炭素を排出するときに浄化ガスを第2の二酸化炭素吸脱着部22から排出し、第1の二酸化炭素吸脱着部21から浄化ガスを排出するときに二酸化炭素を第2の二酸化炭素吸脱着部22から排出することができる。換言すれば、ガス排出部13は、第1の二酸化炭素吸脱着部21及び第2の二酸化炭素吸脱着部22から各種のガスを交互に排出することになる。
【0025】
制御部14は、第1〜第3ペルチェ素子23、24、25、ガス導入弁31、浄化ガス排出弁41、二酸化炭素排出弁42、及びポンプ43の動作を制御する一般的な中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)等を含む制御装置から構成されている。具体的に、制御部14は、第1〜第3ペルチェ素子23、24、25に供給する電流の向きを決定し、当該電流の向きに対応させて、第1〜第3ペルチェ素子23、24、25への電流供給を行う。また、制御部14は、ガス導入弁31、浄化ガス排出弁41、及び二酸化炭素排出弁42の開口状態を決定し、当該開口状態に応じた制御信号を各弁に送信し、各弁の開口状態を制御する。更に、制御部14は、ポンプ43の駆動を制御する制御信号を送信し、ポンプ43のオンオフ駆動を行う。
【0026】
次に、
図2乃至
図4を参照しつつ、二酸化炭素除去部11の構成をより詳細に説明する。
図2は二酸化炭素除去部11の側面図であり、
図3は
図2のIII−III線(一点鎖線で示す)に沿った断面図であり、
図4は
図3の破線IVによって囲まれた領域の拡大図である。なお、
図2乃至4においては、流入路及び流出路の延在方向をX方向とし、X方向に直交する方向をそれぞれY方向及びZ方向と定義している。
【0027】
図2及び
図3から分かるように、二酸化炭素除去部11は、金属又はプラスチック等の比較的硬質な材料からなる筐体51を備えており、当該筐体51の内部に第1〜第3ペルチェ素子23、24、25が配置され、第1の二酸化炭素吸脱着部21及び第2の二酸化炭素吸脱着部22が形成されている。より具体的には、筐体51の内部には、第1の二酸化炭素吸脱着部21及び第2の二酸化炭素吸脱着部22を形成するための2つの空洞52、53が隣接して設けられており、当該空洞52、53の間に第1ペルチェ素子23を埋設するための空洞54が形成されている。また、空洞52を空洞54と挟むように空洞55が+Z方向側(一方側)に設けられ、空洞53を空洞54と挟むように空洞56が−Z方向側(他方側)に設けられている。
【0028】
空洞52、53には、XZ平面(すなわち、ガスの流れる方向)において延在する薄板状の複数のアルミ板57が互いに離間して平行に配設されている。各空洞に配設されるアルミ板57の枚数は、
図3及び
図4に示すような7枚に限定されることなく、それ以上(例えば10枚)又はそれ以下(例えば5枚)であってもよい。なお、二酸化炭素の吸着効率を向上させる観点からは、できる限りその枚数を多くすることが好ましい。また、空洞52、53内に配設される薄板の材料はアルミに限定されることなく、他の金属材料(例えば、金、銀、銅)又は他の熱伝導率が比較的高い材料(例えば、樹脂からなるプラスチック)を用いることができる。
【0029】
アルミ板57の表面には、
図4に示すように、二酸化炭素の吸着及び脱離をなす活性炭の粉末を塗布してなる活性炭薄膜58が形成されている。ここで、活性炭の粉末は、接着剤を用いてアルミ板57に塗布されている。活性炭薄膜58は、その温度が約15℃〜25℃の範囲では二酸化炭素を吸着し、その温度が約35℃〜85℃の範囲では二酸化炭素を脱離する特性を有している。
【0030】
以上のように、第1の二酸化炭素吸脱着部21及び第2の二酸化炭素吸脱着部22は、複数のアルミ板57、及びその表面上に形成された活性炭薄膜58から構成され、アルミ板57及び活性炭薄膜58からなる2層の積層構造を備えている。
【0031】
図3から分かるように、第1〜第3ペルチェ素子23、24、25は、第1の二酸化炭素吸脱着部21及び第2の二酸化炭素吸脱着部22を構成するアルミ板57に近接しているため、当該アルミ板57を第1〜第3ペルチェ素子23、24、25によって効率よく加熱又は冷却することができる。そして、アルミ板57は比較的高い熱伝導率を有しているため、活性炭薄膜58も効率よく加熱又は冷却することができる。本実施例においては、第1の二酸化炭素吸脱着部21を冷却する場合には、第1ペルチェ素子23及び第2ペルチェ素子24に同一方向に流れる電流を供給する。この際、第1ペルチェ素子23の第1の二酸化炭素吸脱着部21に隣接する面(すなわち、冷却面)とは反対側面は加熱されるため、当該加熱を利用し且つ第3ペルチェ素子25に電流を供給することによって第2の二酸化炭素吸脱着部22を同時に加熱することができる。この場合に、第3ペルチェ素子25に供給する電流の向きは、第1ペルチェ素子23及び第2ペルチェ素子24に供給する電流の向きとは逆になる。なお、上述した電流の向き関係が成立するためには、第1〜第3ペルチェ素子23、24、25の配置方向が同一であることが前提となる。
【0032】
また、
図2及び
図3から分かるように、アルミ板57及び活性炭薄膜58からなる第1の二酸化炭素吸脱着部21が配置された空洞52には、流入路32及び流出路44が連通されている。同様に、アルミ板57及び活性炭薄膜58からなる第2の二酸化炭素吸脱着部22が配置された空洞53には、流入路33及び流出路45が連通されている。このような連通構造により、流入路32、33を経由して浄化前のガスが空洞52、53に導入され、空洞52、53に設けられた第1及び第2の二酸化炭素吸脱着部21、22によって当該浄化前のガスに含まれる二酸化炭素が除去され、浄化ガス及び二酸化炭素が空洞52、53から流出路44、45、46を経由して二酸化炭素除去装置10の外部(すなわち、浄化ガスは二酸化炭素除去装置10の設置空間内、二酸化炭素は宇宙空間)に排出される。
【0033】
更に、
図2及び
図3から分かるように、第2ペルチェ素子24の第1の二酸化炭素吸脱着部21が配置されている逆側にはヒートシンク26が配置され、第3ペルチェ素子25の第2の二酸化炭素吸脱着部22が配置されている逆側にはヒートシンク27が配置されている。ヒートシンク26、27は、複数のフィン26a、27aを備えており、第2ペルチェ素子24及び第3ペルチェ素子25において生じる熱を効率よく冷却することができる。
【0034】
(二酸化炭素除去装置の動作)
次に、
図1及び
図5を参照しつつ、本実施例に係る二酸化炭素除去装置10の動作について説明する。
図5は、本実施例に係る二酸化炭素除去装置10の一連の動作を説明するための動作フロー図である。なお、本動作の開始前の状態において、二酸化炭素除去装置10の第1の二酸化炭素吸脱着部21及び第2の二酸化炭素吸脱着部22のいずれにも二酸化炭素が存在しないことを前提とする。
【0035】
先ず、制御部14がガス導入弁31の開口状態を制御し、二酸化炭素除去装置10の外部と流入路32とを連通する(ステップS1)。これにより、二酸化炭素除去装置10の外部から二酸化炭素を含む空気である浄化前のガスが流入路32に導入され、流入路32を経由して二酸化炭素吸脱着部21に当該浄化前のガスが供給されることになる。この際、流入路33と二酸化炭素除去装置10の外部とは連通されておらず、流入路33には当該浄化前のガスが導入されることはない。
【0036】
次に、第1ペルチェ素子23及び第2ペルチェ素子24に電流を供給して第1の二酸化炭素吸脱着部21を冷却し、第1の二酸化炭素吸脱着部21を構成する活性炭薄膜58に二酸化炭素を吸着させる(ステップS2)。この際、制御部14は、第1の二酸化炭素吸脱着部21の温度が15℃〜25℃となるように電流の方向及び電流量を調整する。ここで、第2ペルチェ素子24の二酸化炭素吸脱着部21と近接する部分が冷却されると、第2ペルチェ素子24の二酸化炭素吸脱着部21と近接しない部分(すなわち、冷却面とは反対の面)が加熱されるが、当該加熱面側にヒートシンク26が設置されていることから第2ペルチェ素子24の熱がヒートシンク26から放熱されるため、第2ペルチェ素子24の加熱面によって二酸化炭素吸脱着部21が影響を受けることがない。
【0037】
次に、制御部14が浄化ガス排出弁41の開口状態を制御し、二酸化炭素除去装置10の外部と流出路44とを連通する(ステップS3)。これにより、第1の二酸化炭素吸脱着部21において二酸化炭素が除去された状態の空気である浄化ガスが、二酸化炭素除去装置10の外部に排出される。すなわち、浄化前のガスから二酸化炭素が除去され、浄化ガスが二酸化炭素除去装置10の設置空間内に戻されることになる。この際、流出路45と二酸化炭素除去装置10の外部(設置空間内)とは連通されていない。
【0038】
なお、上述したステップS1からステップS3までの動作は、順次行われる必要はなく、同時に行われてもよい。すなわち、ガス導入弁31から導入された浄化前のガスが流入路32、第1の二酸化炭素吸脱着部21、及び流出路44を経由して浄化ガス排出弁41から二酸化炭素除去装置10の外部へ排出されるための流路を形成するとともに、第1の二酸化炭素吸脱着部21を冷却して二酸化炭素の吸着を同時に行ってもよい。
【0039】
次に、制御部14がガス導入弁31の開口状態を制御し、二酸化炭素除去装置10の外部と流入路33とを連通する(ステップS4)。これにより、流入路32への浄化前のガスの供給が停止し、二酸化炭素除去装置10の外部から二酸化炭素を含む空気である浄化前のガスが流入路33に導入され、流入路33を経由して二酸化炭素吸脱着部22に当該浄化前のガスが供給されることになる。
【0040】
次に、第1ペルチェ素子23及び第2ペルチェ素子24に対してステップS2とは逆方向に流れる電流を供給して第1の二酸化炭素吸脱着部21を加熱し、第1の二酸化炭素吸脱着部21の活性炭薄膜58に吸着した二酸化炭素を脱離するとともに、第3ペルチェ素子25に対して第1ペルチェ素子23及び第2ペルチェ素子24に流れる電流とは逆方向に流れる電流を供給して第2の二酸化炭素吸脱着部22を冷却し、第2の二酸化炭素吸脱着部22を構成する活性炭薄膜58に二酸化炭素を吸着させる(ステップS5)。この際、制御部14は、第1の二酸化炭素吸脱着部21の温度が35℃〜85℃であって、第2の二酸化炭素吸脱着部22の温度が15℃〜25℃となるように各ペルチェ素子に供給する電流量を調整する。
【0041】
ここで、第1ペルチェ素子23の二酸化炭素吸脱着部21と近接する部分が加熱されると、第1ペルチェ素子23の二酸化炭素吸脱着部21と近接しない部分(すなわち、加熱面とは反対の面)が冷却されるが、第1ペルチェ素子23の冷却面は二酸化炭素吸脱着部22と近接しているため、二酸化炭素吸脱着部22の冷却も同時に行うことが可能になる。また、第3ペルチェ素子25の二酸化炭素吸脱着部22と近接する部分が冷却されると、第3ペルチェ素子25の二酸化炭素吸脱着部22と近接しない部分(すなわち、冷却面とは反対の面)が加熱されるが、当該加熱面側にヒートシンク27が設置されていることから第3ペルチェ素子25の熱がヒートシンク27から放熱されるため、第3ペルチェ素子25の加熱面によって二酸化炭素吸脱着部22が影響を受けることがない。
【0042】
次に、制御部14が、浄化ガス排出弁41の開口状態を制御して二酸化炭素除去装置10の外部と流出路45とを連通し、二酸化炭素排出弁42の開口状態を制御して第1の二酸化炭素吸脱着部21からポンプ43までを連通させるとともに、ポンプ43の駆動を開始させる(ステップS6)。これにより、第2の二酸化炭素吸脱着部22において二酸化炭素が除去された状態の空気である浄化ガスが、二酸化炭素除去装置10の外部に排出されるとともに、第1の二酸化炭素吸脱着部21の活性炭薄膜58から脱離した二酸化炭素をポンプ43から二酸化炭素除去装置10が設置された空間の更に外部(例えば、宇宙空間)に排出される。
【0043】
なお、上述したステップS4からステップS6までの動作は、順次行われる必要はなく、同時に行われてもよい。すなわち、ガス導入弁31から導入された浄化前のガスが流入路33、第2の二酸化炭素吸脱着部22、及び流出路45を経由して浄化ガス排出弁41から二酸化炭素除去装置10の外部へ排出されるための流路の形成と、第1の二酸化炭素吸脱着部21において脱離された二酸化炭素が流出路44、二酸化炭素排出弁42、及び流出路46を経由してポンプ43から二酸化炭素除去装置10の設置空間の更に外部へ排出されるための流路の形成と、第1の二酸化炭素吸脱着部21の加熱による二酸化炭素の脱離と、第2の二酸化炭素吸脱着部22の冷却による二酸化炭素の吸着と、を同時に行ってもよい。
【0044】
次に、制御部14がガス導入弁31の開口状態を制御し、二酸化炭素除去装置10の外部と流入路32とを連通する(ステップS7)。これにより、流入路33への浄化前のガスの供給が停止し、二酸化炭素除去装置10の外部から二酸化炭素を含む空気である浄化前のガスが流入路32に導入され、流入路32を経由して二酸化炭素吸脱着部21に当該浄化前のガスが供給されることになる。
【0045】
次に、第1ペルチェ素子23及び第2ペルチェ素子24に対してステップS2と同一の方向に流れる電流を供給して第1の二酸化炭素吸脱着部21を冷却し、第1の二酸化炭素吸脱着部21の活性炭薄膜58に二酸化炭素を吸着させるとともに、第3ペルチェ素子25に対して第1ペルチェ素子23及び第2ペルチェ素子24に流れる電流とは逆方向に流れる電流を供給して第2の二酸化炭素吸脱着部22を加熱し、第2の二酸化炭素吸脱着部22を構成する活性炭薄膜58から二酸化炭素を脱離させる(ステップS8)。この際、制御部14は、第2の二酸化炭素吸脱着部22の温度が35℃〜85℃であって、第1の二酸化炭素吸脱着部21の温度が15℃〜25℃となるように各ペルチェ素子に供給する電流量を調整する。
【0046】
次に、制御部14が、浄化ガス排出弁41の開口状態を制御して二酸化炭素除去装置10の外部と流出路44とを連通し、二酸化炭素排出弁42の開口状態を制御して第2の二酸化炭素吸脱着部22からポンプ43までを連通させる(ステップS9)。これにより、第1の二酸化炭素吸脱着部21において二酸化炭素が除去された状態の空気である浄化ガスが、二酸化炭素除去装置10の外部に排出されるとともに、第2の二酸化炭素吸脱着部22の活性炭薄膜58から脱離した二酸化炭素をポンプ43から二酸化炭素除去装置10が設置された空間の更に外部に排出される。
【0047】
そして、ステップS9の後は、ステップS4からステップS9を繰り返すことにより、浄化前のガスから二酸化炭素の除去、二酸化炭素の排出、及び浄化ガスの排出を断続的に行う。すなわち、第1の二酸化炭素吸脱着部21及び第2の二酸化炭素吸脱着部22における二酸化炭素の吸着を交互に行いつつ、第1の二酸化炭素吸脱着部21及び第2の二酸化炭素吸脱着部22における二酸化炭素の脱離も交互に行い、二酸化炭素除去装置10から断続的に浄化ガス及び二酸化炭素が排出されることになる。
【0048】
(実施例の効果)
本実施例の二酸化炭素除去装置10においては、各二酸化炭素吸脱着部の両側にペルチェ素子が配置されている(すなわち、Z方向において各二酸化炭素吸脱着部がペルチェ素子に挟まれている)ため、第1の二酸化炭素吸脱着部21及び第2の二酸化炭素吸脱着部22を効率よく加熱及び冷却することができる。また、+Z側及び−Z側に位置する第2ペルチェ素子24及び第3ペルチェ素子25のそれぞれにヒートシンク26、27が近接して設けられているため、第2ペルチェ素子24及び第3ペルチェ素子25の熱移動を促し、効率よく加熱及び冷却を行うことができる。
【0049】
そして、本実施例の二酸化炭素除去装置10においては、二酸化炭素吸脱着部を2つのペルチェ素子によって挟む構造を備えない従来の二酸化炭素除去装置と比較して、二酸化炭素の脱離及び吸着のサイクルを短縮することができる。具体的には、実施例の二酸化炭素除去装置10においては、当該サイクルを5分から10分程度にすることができる。
【0050】
更に、本実施例の二酸化炭素除去装置10においては、第1の二酸化炭素吸脱着部21及び第2の二酸化炭素吸脱着部22にアルミ板57が用いられているため、アルミ板57の表面上に形成される活性炭薄膜58と第1〜第3ペルチェ素子23、24、25との間における熱移動を効率よく行うことができ、二酸化炭素の吸着及び脱離を容易且つ迅速に行うことができる。
【0051】
また、本実施例の二酸化炭素除去装置10においては、第1の二酸化炭素吸脱着部21及び第2の二酸化炭素吸脱着部22に粉末状の活性炭が用いられているため、浄化前のガスと活性炭との接触面積をより大きくすることができる。これにより、第1の二酸化炭素吸脱着部21及び第2の二酸化炭素吸脱着部22の小型化を図ることができ、二酸化炭素除去装置10自体のコスト低減を実現することができる。
【0052】
<変形例>
上述した実施例においては、第1の二酸化炭素吸脱着部21及び第2の二酸化炭素吸脱着部22が平板状のアルミ板57及び活性炭薄膜58から構成されていたが、
図6又は
図7に示すような構造を有する二酸化炭素吸脱着部を形成してもよい。以下において、
図6及び
図7を参照しつつ二酸化炭素吸脱着部の変形例を説明する。ここで、
図6及び
図7は
図4と同様にして示す二酸化炭素吸脱着部の拡大断面図である。
【0053】
図6に示すように、変形例に係る第1の二酸化炭素吸脱着部21’は、Y方向及びZ方向において規則的に並列した複数の貫通孔61が形成されたアルミ部材62と、貫通孔61の側面においてアルミ部材62の表面上に積層された活性炭薄膜58と、から構成されている。また、YZ平面における貫通孔61の形状は正方形であり、YZ平面における第1の二酸化炭素吸脱着部21’の形状は格子状である。そして、活性炭薄膜58の形状は、全体形状が筒状であって、YZ平面における断面形状が正方形となっている。
【0054】
このような構成においては、ガス導入部12から導入される浄化前ガスは、貫通孔61を通過する際に、活性炭薄膜58によって二酸化炭素が除去されることになる。そして、二酸化炭素が除去された浄化ガスは、貫通孔61を通過して流出路44又は流出路45に到達することになる。
【0055】
なお、第1の二酸化炭素吸脱着部21’を構成するアルミ部材62は、XZ平面における断面形状も格子状となるように、Y方向に延在する貫通孔が更に形成されていてもよい。
【0056】
図7に示すように、他の変形例に係る第1の二酸化炭素吸脱着部21”は、Y方向及びZ方向においてランダムに配置された複数の貫通孔71が形成されたアルミ部材72と、貫通孔71の側面においてアルミ部材72の表面上に積層された活性炭薄膜58と、から構成されている。また、YZ平面における貫通孔71の形状は円形であり、活性炭薄膜58の形状は、全体形状が筒状であって、YZ平面における断面形状が円形となっている。
【0057】
このような構成においても、ガス導入部12から導入される浄化前ガスは、貫通孔71を通過する際に、活性炭薄膜58によって二酸化炭素が除去されることになる。そして、二酸化炭素が除去された浄化ガスは、貫通孔71を通過して流出路44又は流出路45に到達することになる。
【0058】
なお、上述した変形例においては、第1の二酸化炭素吸脱着部21の変形例として、第1の二酸化炭素吸脱着部21’及び第1の二酸化炭素吸脱着部21”を説明したが、第2の二酸化炭素吸脱着部22も同様に、第1の二酸化炭素吸脱着部21’又は第1の二酸化炭素吸脱着部21”の形状と同じようにしてもよい。また、第1の二酸化炭素吸脱着部21及び第2の二酸化炭素吸脱着部22の更なる変形例の形状として、
図4、
図6、及び
図7から選択した2つ以上の形状を組み合わせてもよい。