【実施例】
【0018】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、乗り物として電車に搭載されるシート用の漏電検出装置を例示する。また、本実施例では、電車内には、複数のシートを連結した連結シート及び/又は単独シートを組み合わせて横方向に並べたシート列が縦方向に複数設けられているものとする。
【0019】
(1)シートの構成
本実施例に係るシート1は、
図1及び
図2に示すように、シート本体2と、このシート本体2をその後方及び側方を覆うように収容するシェル3と、を備えている。また、シート本体2は、座席となるクッション部4と、クッション部4の前端側に連なり足のせとなるオットマン部5と、クッション部4の後端側に連なり背もたれとなるバック部6と、を備えている。このクッション部4は、モータM1の駆動により傾動可能(すなわち、チルト可能)に設けられている。また、オットマン部5は、モータM2の駆動により傾動可能に設けられている。さらに、バック部6は、モータM3の駆動により傾動可能(すなわち、クライニング可能)に設けられている。
【0020】
なお、上記各モータM1〜M3の駆動は、シート1のアームレストの先端側に設けられるスイッチ操作部7(
図1参照)を操作することで、後述する制御部の制御により実行される。また、上記各モータM1〜M3によって、本発明に係る「アクチュエータ」が構成されている。
【0021】
(2)漏電検出装置の構成
本実施例に係る漏電検出装置11は、シート1に備えられている(
図1参照)。この漏電検出装置11は、
図3に示すように、各モータM1〜M3の駆動制御等を司る制御部12(ECU(Electronic Control Unit)とも称される。)を備えている。この制御部12は、CPU13(Central Processing Unit)と、図示しないメモリ(例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等)と、を備えている。また、制御部12は、スイッチ操作部7の各スイッチ15からの操作信号が入力される入力回路14を備えている。さらに、制御部12は、モータM1〜M3を駆動するためのモータ駆動回路16と、このモータ駆動回路16を流れる電流値を検出する電流検出回路17と、を備えている。これらモータ駆動回路16と電流検出回路17との間には、両回路16、17の接続を遮断するためのリレー19が介在されている。また、モータ駆動回路16には、電源18が供給される。
【0022】
上記制御部12は、以下に述べる漏電検出処理を実行する。この漏電検出処理では、
図4に示すように、モータM1〜M3の停止中において、モータ駆動回路16を流れる電流値(すなわち、電流検出回路17で検出される電流値)が所定の閾値(例えば、0.4A)以上であるか否かを判定する(ステップS1)。次に、その電流値の検知が所定時間(例えば、100ms)継続したか否かを判定する(ステップS2)。その結果、電流値が所定の閾値以上で且つその検知が所定時間継続した場合(ステップS1、S2でYES判定)には、漏電予兆を検知し(ステップS3)、その検知回数をカウントして記憶する(ステップS4)。なお、ステップS1又はステップS2でNO判定の場合には、ステップS1に戻る。
【0023】
次に、漏電予兆の検知回数が予め決められた複数回数である所定値(例えば、2回)未満であるか否かを判定する(ステップS5)。その結果、検知回数が所定値未満である場合(ステップS5でYES判定)には、モータM1〜M3が動作不能な状態となる所定の安定期間(例えば、10秒)を設定する(ステップS5)。次いで、その安定期間の経過後、ステップS1に戻って次回の漏電予兆の検知を実行する。一方、検知回数が所定値に達した場合(ステップS5でNO判定)には、完全な漏電であることを判定する(ステップS7)。
【0024】
ここで、上記モータM1〜M3が動作不能な状態は、リレー19によりモータ駆動回路16と電流検出回路17との接続が遮断されるとともに、スイッチ操作部7の各スイッチからの操作信号を受け付けないことでなされる。また、漏電予兆の検知(ステップS1〜S3)は、リレー19によりモータ駆動回路16と電流検出回路17とが接続された状態で実行される。
【0025】
なお、上記制御部12による制御処理は、ハードウェア、ソフトウェアのいずれによって実現されてもよく、好適にはCPU、メモリ(ROM、RAM等)、入出力回路等を備えるマイクロコントローラ(マイクロコンピュータ)を中心に、入出力インターフェース等周辺回路を備えることにより構成することができる。
【0026】
(3)漏電検出装置の作用
次に、上記構成の漏電検出装置11の作用について説明する。なお、本実施例では、2回の漏電予兆の検知で漏電を判定するものとする。
図5に示すように、モータ駆動回路16を流れる電流値が所定の閾値以上で且つその検知が所定時間t1継続した場合には、1回目の漏電予兆A1が検知される。次に、モータM1〜M3が動作不能な状態となる所定の安定期間t2の経過後に、モータ駆動回路16を流れる電流値が所定の閾値以上で且つその検知が所定時間t1継続した場合には、2回目の漏電予兆A2が検知される。
【0027】
上述のように、1回目の漏電予兆A1の検知から安定期間t2経過後に2回目の漏電予兆A2が検知されると、完全な漏電であると判定されてハードウェアが停止状態(すなわち、回路上に電流が流れないように遮断する状態)とされる。一方、1回目の漏電予兆A1の検知から安定期間t2経過後に2回目の漏電予兆A2が検知されない場合には、完全な漏電ではないと判定されてハードウェアが駆動状態(すなわち、回路上に電流が流れる通常状態)とされる。
【0028】
(4)実施例の効果
以上より、本実施例の漏電検出装置11によると、電流値が所定の閾値以上であることを複数回検知したときに漏電が検出される。これにより、漏電の誤検出を抑制することができる。さらに、従来のようにヒューズを用いて漏電検出するものに比べて、コスト低減や自由な閾値設定を容易に行うことができる。
【0029】
また、本実施例では、モータM1〜M3を駆動するためのモータ駆動回路16を流れる電流値が閾値以上であるときに漏電予兆を検知し、漏電予兆の検知回数が予め決められた複数回数となっていないときに、n回目(nは自然数)の漏電予兆の検知とn+1回目の漏電予兆の検知との間に、モータM1〜M3が動作不能な状態となる所定の安定期間t2を設定する。これにより、電流値のふれが安定化されて漏電の誤検出を更に確実に抑制できるとともに、モータM1〜M3の損傷を防止できる。
【0030】
さらに、本実施例では、閾値は0.3〜1.0アンペアであるので、比較的微小な電流値に基づいて漏電を検出することができる。
【0031】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例では、シート1用の漏電検出装置11を例示したが、これに限定されず、例えば、乗り物に搭載される限りにおいて、スライドドア、パワーウィンドウ等の可動部を備える可動装置に用いられる漏電検出装置としてもよい。さらに、照明装置やスピーカ装置に用いられる漏電検出装置としてもよい。
【0032】
また、上記実施例では、モータM1〜M3を駆動するためのモータ駆動回路16を流れる電流値に基づいて漏電を判定するようにしたが、これに限定されず、例えば、LED、電球等からなる光源を駆動するための回路を流れる電流値に基づいて漏電を判定したり、スピーカ等で音を出力するための回路を流れる電流値に基づいて漏電を判定したりしてもよい。
【0033】
また、上記実施例では、今回の漏電予兆A1の検知と次回の漏電予兆A2の検知との間に、アクチュエータM1〜M3が動作不能な状態となる所定の安定期間t2を設定するようにしたが、これに限定されず、例えば、今回の漏電予兆A1の検知と次回の漏電予兆A2の検知との間に、アクチュエータM1〜M3が動作可能な状態のままの所定の期間を設定するようにしてもよい。
【0034】
さらに、上記実施例では、2回の漏電予兆A1、A2の検知に応じて漏電を判定するようにしたが、これに限定されず、例えば、3回以上の漏電予兆の検知に応じて漏電を判定するようにしてもよい。
【0035】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0036】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。