(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加振部は、被検体における前記超音波エラストグラフィ用超音波探触子が接触する接触面に対して略垂直方向に、前記支持部を予め定められた振動パターンで振動させ、
前記振動パターンは、前記超音波エラストグラフィ用超音波探触子の上下移動を繰り返させて振動させるパターンである、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の振動装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る振動装置(加振装置)を備えるエラストグラフィ装置を説明する。
【0018】
本実施形態に係るエラストグラフィ装置は、手首を被検体とし、被検体の弾性率を可視化する装置であり、超音波探触子を振動させる(加振する)振動装置を備える。
【0019】
振動装置10は、
図1(a)、(b)に示すように、腕載置台11、手載置台12と、ヒンジ部13と、位置決めテーブル14と、Zステージ15と、加振機構20とから構成される。
【0020】
腕載置台11は、被検者が腕を載置しやすいサイズの平面長方形状、高さを有し、ほぼ水平に設置される。腕載置台11は、図示するように、脚部11a、11bを備えても良い。また、腕を固定するための固定用ストラップ等を備えても良い。
【0021】
手載置台12は、被検者が手を載置する台であり、ヒンジ部13により、腕載置台の長手方向の端に揺動可能に連結されている。手載置台12は、ヒンジ部13により、腕載置台11を基準として、任意の角度に傾斜可能で、且つ、任意の角度で固定可能である。
【0022】
ヒンジ部13は、手載置台12と腕載置台11に揺動可能にヒンジ結合すると共に腕載置台12を任意の傾斜角で固定する。固定のため、固定部材13b、例えば、係止フックや固定ネジが配置されている。ヒンジ部13は、さらに、分度器13aを備え、手載置台12の腕載置台11への傾き角度を容易に把握可能とする。なお、分度器13aとして、ロータリーエンコーダなどから構成される角度測定装置を配置し、測定した角度を後述する振動コントローラ40等に通知するように構成してもよい。
【0023】
位置決めテーブル14は、加振機構20等を支持するフレームであり、腕載置台11の両側部に配置された脚部14a、14bと、脚部14aと14bの上端同士を繋ぐ天板14cとを備える。脚部14aと14bは、被検者の腕が容易に通過可能な高さを有する。天板14cは、脚部14a、14b間にブリッジ状に掛け渡されている。位置決めテーブル14は、全体として、Zステージ15と加振機構20とを安定して支えるに十分な強度と剛性を備える。また、その共振周波数は、加振機構20が発生する振動の周波数の整数倍以外の振動数に設定されている。
【0024】
Zステージ15は、位置決めテーブル14の天板14cに設置され、ユーザの位置調整つまみ15aの操作に従って、ステージ15bをZ軸方向(鉛直方向)に移動すると共にその停止位置を保持する。Zステージ15により設定された位置が、超音波探触子の0点位置となる。
【0025】
次に、加振機構20は、Zステージ15に固定された回転モータ21と、スクリューシャフト22と、ボールナット23と、スライダ24と、固定部25とから構成される。
【0026】
回転モータ21は、回転角の制御が容易なモータから構成され、Zステージ15の上端部に回転軸をZ軸方向下方に向けて固定されている。回転モータ21は、後述する振動コントローラ40により駆動及び制御される。回転角の制御が容易なモータとして、ステッピングモータ、ACサーボモータ等があるが、以下の説明では、理解を容易にするため、ステッピングモータであるとする。
【0027】
スクリューシャフト22は、
図2に示すように、回転モータ21の回転軸に直結されたシャフトであり、所定ピッチPの雄ねじ22aが形成されている。
【0028】
ボールナット23は、ピッチPの雌ねじが形成されており、スクリューシャフト22の雄ねじ22aと螺合している。ボールナット23にはピン23aが配置されており、ピン23aにより、ボールナット23の回転が規制されている。このため、ボールナット23は、スクリューシャフト22の回転に伴って、スクリューシャフト22に沿って移動する。ボールナット23の移動速度は、スクリューシャフト22の回転速度に比例し、移動方向は、雄ねじ22aのスクリューシャフト22が正回転の場合は、一方方向、スクリューシャフト22が逆回転の場合は反対方向となる。
【0029】
このような構成により、回転モータ21の1回の正転により、スクリューシャフト22が1回正転し、ボールナット23がスクリューシャフト22の回転軸の一方向に1ピッチP分移動し、回転モータ21の1回の逆転により、スクリューシャフト22が1回逆転し、ボールナット23がスクリューシャフト22の回転軸の他方向に1ピッチP分移動する回動−直動変換機構(リニアスライダ)が構成される。
【0030】
スライダ24は、ボールナット23のピン23aに固定されており、ボールナット23の回転を規制しつつレール、ガイド等の案内部に案内され、ボールナット23の移動に伴ってZ軸方向にスライドする。
【0031】
図1に示す固定部25は、エラストグラフィ用超音波探触子30を、その超音波送受信面をスライダ24の下端から突出させた状態で、把持・固定する。把持或いは固定の手法自体は任意であり、ネジ止め、弾性体による固定などでもよい。スライダ24と固定部25は、超音波探触子30を支持して振動させる支持部として機能する。
【0032】
回転モータ21の回転による振動は、振動コントローラ40により制御される。
振動コントローラ40は、コンピュータ装置から構成され、
図3に示すように、入力部41と、表示部42、モータドライバ43、制御部44とを備える。
【0033】
入力部41は、様々なデータを、制御部44に入力する。この実施形態では特に、超音波探触子30の上下動の振幅、周波数(又は周期)、波形形状を入力する。入力部41は、入力されたデータを制御部44に通知する。
【0034】
表示部42は、超音波探触子30の振動を示す情報、例えば、振幅、周波数、波形を画面に表示する。
モータドライバ43は、制御部44の制御に従って、相切り換え制御などを行って、ステッピングモータから構成される回転モータ21を駆動するための駆動信号(相切り換え信号)を出力する。
【0035】
制御部44は、プロセッサ、メモリ等を備え、入力部41から指示された振動を超音波探触子30を与えるために、相切り換えタイミングを検出し、相切り換えに必要な制御信号をモータドライバ43に与える。
【0036】
制御部44が制御信号を生成する手順の一例を説明する。
ここでは、回転モータ21を構成するステッピングモータの1回転あたりのステップ数をN、スクリューシャフト22に形成された雄ねじのピッチをPとする。
【0037】
この場合、回転モータ21のロータが1相(ステップ)進む毎に、超音波探触子30がP/Nだけ移動する。制御部44は、指示された振動に従って、超音波探触子30(即ち、ボールナット23)がP/Nだけ移動すべき時間毎に回転モータ21のロータが1ステップだけ進むように、制御信号を生成すればよい。
【0038】
例えば、超音波探触子30に加えるべき振動が、
図4(a)に示す三角波(等速移動)であるとすれば、超音波探触子30は、半周期(T/2)の間に、ピークからピークへ2・A(Aは振幅)だけ移動する。従って、P/N移動するために、要する時間は、T/(4・A)である。従って、制御部44は、期間T/(4・A)経過する度に、回転モータ21のロータが1ステップ進むように駆動信号を切り換えるための制御信号を出力する。
【0039】
例えば、超音波探触子30に加えるべき振動が、等加速度運動の場合には、超音波探触子30のZ方向の位置は、
図4(b)に示すグラフで表される。ここでは、1周期Tの0〜T/4と3T/4〜Tの期間は、加速度αは負の一定値、T/4〜3T/4の期間は、加速度αは正の一定値を示す。制御部44は、超音波探触子30がP/Nだけ移動するのに要する微小時間Δt0、Δt1、Δt2、...を回転開始時刻t=0から順次1周期分求め、これを記憶しておく。制御部44は、記憶している微小時間Δtが経過する毎に、回転モータ21を1ステップ進めるために相切り換える制御信号を出力する。そして、1周期分の制御が終了する度に、同様の制御を繰り返す。
【0040】
こうして、超音波探触子30は、ユーザが指定した振幅、周波数、波形で振動する。なお、本実施形態では、加振機構20が発生する振動の振動方向は、超音波探触子30の超音波送受信面及び被検体の体表面に略垂直方向である。
【0041】
なお、振動波形によっては、1/4周期分又は1/2周期分のΔtを求めて、繰り返し制御をおこなってもよい。
【0042】
超音波探触子30の検出信号は、通常のエラストグラフィ装置に出力される。エラストグラフィ装置は、超音波探触子30に超音波を発振するための信号を与え、超音波探触子30が検出した反射波を処理することにより、被検体の断面の各位置での弾性率を求め、これを画像化して、表示画面に表示する。
【0043】
なお、振幅Aとしては、0.2mm〜1mm、望ましくは0.3〜0.7mm程度が好適である。
【0044】
次に、上記構成を有するエラストグラフィ装置を用いた診断手順について説明する。
被検者は、手首の関節がほぼヒンジ部13上に位置するように、位置決めテーブル14と腕載置台11との間に手を通す。さらに、超音波探触子30が手首に当接しやすいように、手載置台12の角度を調整する。この状態を、
図5に例示する。ここで、必要に応じて、腕及び手を固定用ストラップで固定する。
【0045】
続いて、Zステージ15の位置調整つまみ15aを操作して、超音波探触子30の位置を下げ、手首に接触させる。
なお、手首の表面を押し込む量を適宜調整することができる。
【0046】
一方で、振動コントローラ40の入力部41を介して制御部44に、超音波探触子30に与える振動を定義する情報、即ち、振幅、周波数(周期)、波形を入力する。制御部44は、前述したように、入力データに基づいて、相切り換えタイミングを特定するデータを求め、内部メモリに記憶する。
続いて、ユーザは、入力部41からエラストグラフィ装置による診断を開始すると共に制御部44に振動開始を指示する。
【0047】
指示に応答して、制御部44は求めて置いた、微小時間Δtの経過を計測し、微小時間Δtが経過する毎に、回転モータ21のロータを1ステップ進めるための相切り換えタイミングを示す制御信号を出力する動作を繰り返す。モータドライバ43は、相の切り換えが指示されるたびに、駆動信号を切り換えて、回転モータ21のロータを1ステップ進める。そして、半周期T/2が経過するたびに、回転モータ21の回転方向を反転する。
また、制御部44は、現在加えている振動を特定する振動パラメータ、振動波形等を表示部42に表示する。
【0048】
これにより、回転モータ21は、半周期T/2毎に回転方向を反転しながら、回転し、これに伴って、ボールナット23が上方向と下方向に交互に移動し、ボールナットに連結されたスライダ24に固定された超音波探触子30も上下に移動(振動)する。
【0049】
超音波探触子30が振動することにより、被検体である手首の体表面にほぼ垂直に振動が与えられる。
【0050】
超音波探触子30は、手首に振動を与えつつ、手首に超音波を発すると共に反射波を受信し、エラストグラフィ装置に供給する。エラストグラフィ装置は、これを処理し、手首部分の弾性率の分布を示す断層画像を表示する。
【0051】
以上説明したように、本装置を用いれば、加振機構20が予め定められた振動パターンで超音波探触子30を振動させることにより、一連の圧迫過程で連続して、高画質化に適した圧迫速度範囲で圧迫し続けることが可能となる。このため、高画質な弾性画像を任意の時相において安定して描出できる。
【0052】
また、被検者の前腕と探触子の位置を固定すれば、検者は描出される画像のみ注視すればよく、画像の記録や計測がより簡便に客観性をもって行える。また従来の方法では、安定的な画像の描出は困難であった手関節部における筋・腱・神経・靱帯などのエラストグラフィの客観的な評価も可能になる。
【0053】
なお、エラストグラフィ装置、振動コントローラ40等を、ネットワークを介して医用データベースに接続し、
図6に例示するように、患者ID、日付、分度器で測定した角度、振動波形を特定するデータ(振幅、周期、波形等)等と共に得られた画像データを登録する等してもよい。また、他のモダリティ装置で得られたデータと関連付けて記憶し、次回の検査に役立ててもよい。
【0054】
上記実施形態においては、超音波探触子30のZ方向の初期位置は、検者の操作にゆだねられている。一方、本願発明者は、観察対象に応じて、良好な観察結果を得るために、適切な押し込み深さがあることを発見した。
例えば、手首の正中神経の場合、
図7に破線で示すように、実線で示す接触位置(押し込み深さ0)から、3〜5mm、望ましくは3.5〜4.5mm程度圧迫して押し込んだ方が測定結果が良好となることを発見した。そこで、
図8に例示する構成を採用し、押し込み深さを自動調整するようにしてもよい。
図8では、Zステージ15(又は超音波探触子30等でもよい)に圧力センサ等から構成される接触センサ51を配置している。また、Zステージ15にZ軸モータ52を配置している。
振動コントローラ40の制御部44には、
図9に示すように部位毎に最適な押し込み深さが予め記憶されている。振動コントローラ40は、超音波探触子30が検体に接触したことを、接触センサ51の検出から判別すると、Z軸モータ52を駆動して、Zステージ15を予め記憶している押し込み深さだけ、押し込む。なお、制御部44には、部位を指定する情報を入力する。
なお、押し込み深さは、同じ部位でも年齢、性別、個人差などにより異なる場合がある。このため、患者ID毎に、押し込み深さをカスタマイズできるようにしてもよい。即ち、患者(被検査者)ID、部位ID、押し込み深さ、最適傾斜角(2つの載置部の成す角)、過去のデータとその取得日時・条件等を医用データベース(DB)に登録しておき、測定時に、DBを参照して、患者と部位毎に最適な押し込み深さを求めて、位置調整を行うようにしてもよい。
【0055】
また、今回の測定データと前回の測定データと比較したい場合には、医用DBに登録されている前回のデータを参照して、手載置部12の角度を前回の角度と同一とし、且つ、振動パターンを前回と同一としてもよい。このようにすることにより、再現性が良く、適切に比較可能な画像が得られる。
【0056】
また、超音波探触子30の位置を調整する手段として、手動で調整するZステージ15を例示した。これに限定されない、例えば、
図9の構成を採用して、ユーザの入力部41への指示があると、接触センサ51が接触を検出するまで、Z軸モータ52を駆動してZステージ15を移動し、超音波探触子30の超音波送受信面が検体の体表面に接触するまで、Z軸モータ52で位置を調整するように構成してもよい。この場合、超音波探触子30を検体から離す際も、例えば、入力部41への指示に応答して、制御部44がZ軸モータ52を駆動して、超音波探触子30を検体から離間し、ホームポジションに移動する。
【0057】
なお、この発明は上記実施の形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。
例えば、上記実施の形態では、超音波探触子30を支持する支持部として、スライダ24を例示したが、超音波探触子30を安定して支持(把持・固定)し、これを振動させることができるならば、その構造は任意である。
【0058】
上記実施の形態では、被検体を手首とし、これに合わせて、腕載置台11と手載置台12と配置したが、検査対象は、肘、指の関節、膝、足首、胸、腹、腰等、任意である。この場合、測定する部位のサイズ・曲がる向きなどにあわせて、2つの載置台のサイズ、位置、強度、材質なども調整される。何れの場合も、被検体(検査対象)としての関節を挟む第1の生体部位を第1の載置台に載置し、第2の生体部位を第2の載置台に載置し、前記第1の載置台に対し第2の載置台を揺動可能にヒンジ機構により支持し、さらに、任意の角度位置で固定可能とする。このような構成とすることにより、被検者に無理な体勢を強いることなく、被検体を固定しつつ超音波探触子30で振動を加えることができる。
なお、このような構成の載置台に限定されず、被検体を無理無く安定して固定し、超音波探触子30を当接させることができれば、その構造は任意である。
【0059】
また、例えば、乳腺などを被検体とする場合には、例えば、載置台を取り払い、位置決めテーブル14を被検者がベッドに仰臥可能な高さとしてベッド又は近傍の台に配置し、上方より胸腺近傍に超音波探触子30を接触させ且つ振動させるようにしてもよい。
【0060】
加振部、即ち、加振機構20と振動コントローラ40が、超音波探触子30に加える振動の例として、
図4に三角波振動と等加速度振動の例を示したが、これらに限定されない。例えば、正弦波振動でもよい。なお、超音波エラストグラフィ用としては、
図4(b)に例示するような等加速度振動が一番好適である。
また、上記実施の形態においては、振動を特定するパラメータとして、振幅、周波数、波形を検者等が入力部41から制御部44に入力・指定する例を示した。これに限定されず、例えば、制御部44に振動の波形、例えば、三角波状、のこぎり波状、等加速度運動状、正弦波状などを予め記憶しておき、検者は、予め記憶されている波形のうちから1つを指定・選択し、他の振幅、周波数のパラメータのみを指定するようにしてもよい。
さらに、制御部44が振動を特定するパラメータの組を予め記憶しておき、検者等が入力部41からいずれかのパラメータを指定・選択するようにしてもよい。
さらに、振動パターンは固定でもよい。
【0061】
理解を容易するため、回転モータ21をステッピングモータとして説明したが、前述のように、回転位置の制御が可能ならばどのような回転式のモータを使用してもよい。例えば、モータ軸(回転軸)の回転角度や回転速度を検知しフィードバック制御する機能を有するACサーボモータでもよい。回転モータ21としてサーボモータを使用する場合、振動コントローラ40は、例えば、振動パラメータで特定されるロータの回転角を示す制御信号を回転モータ21に送信し、回転モータ21は、制御信号で指示される位置にロータの位置を一致させるように制御(サーボ制御)を行う。サーボ機構の中に、振動コントローラ40の機能の一部を取り込んでもよい。
【0062】
また、回転モータ21の回転をボールナット23の直線運動に変換する動力変換機構を採用したが、回転モータ21の回転を直線往復運動に変換できるならば、どのような構成を採用してもよい。さらに、リニアモータを使用して、スライダ24の動きを直接制御してもよい。
【0063】
その他、加振部を構成する加振機構20の構造は、超音波探触子を支持している支持部を、予め定められた振動パターン(パラメータ)或いは検者が指定した振動パターン(パラメータ)で安定して振動できるならば、任意に変更可能である。
【0064】
また、被検体に対して、超音波探触子30を支持する支持部を位置を調整する位置調整部としてZステージ15を例示したが、例えば、位置決めテーブル14上に、Zステージ15に加えて、X軸ステージ、Y軸ステージなどを配置してもよい。このようにすれば、超音波探触子30の位置を、被検体の位置をより正確に調整することが可能となる。
【実施例】
【0065】
予備的検討として、本装置を用いて手関節を模したファントムを作成し、既知の歪み計測を行った.計測はファントム表面に探触干が接した状態(0mm)と、2mmと4mm圧迫した状態の3条件で行った。日立メディコ社製超音波装置を用いた。超音波探触子30に基準となる歪み値を持つカプラ(ゼリー)を装著し、エラストグラフィモードで計測した。自動振動装置により超音波探触子に0.4〜0.6mmの上下動を加え、歪み値が0.7以下の範囲で観測した。カプラとファン卜ムの歪み比を求め、既知の歪み比と最も近い圧迫条件を調べた。その結果、正中神経ファントムの歪み比は圧迫条件0、2と4mmでそれぞれ1.03、0.80、0.55であった。ファン卜ムとカプラの歪み比は0.45であることから、4mmの圧迫条件が深部にある正中神経の歪み計測に最適であることがわかった。
【0066】
次に、健常女性15名(27−62歳)を対象として、両手関節部で正中神経の歪み計測を行った。ファントム計測と同様の方法で計測し、5回の平均値を求めた。2人の検者(A,B)が同じ対象群につき計測した。検者Aは初回計測の1週間後に再度同じ被験者の計測を行った。Aの検者内信頼性、AとBの検者間信頼性を評価した。
その結果、歪み比の平均は検者A:1回目1.69、2回目1.65、検者B:1.56であった。Aの検者内信頼性は0.91、AとBの検者間信頼性はAの1回目、2回目で0.72と0.78であった。以上から本装置を用いた超音波エラストグラフィにおいて良好な再現性が得られることが確認された。