特許第6238281号(P6238281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6238281噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータとその異常検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238281
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータとその異常検知方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   F16K31/04 B
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-183723(P2013-183723)
(22)【出願日】2013年9月5日
(65)【公開番号】特開2015-52329(P2015-52329A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】唐沢 仁
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−248701(JP,A)
【文献】 特開2008−151240(JP,A)
【文献】 特開平06−281039(JP,A)
【文献】 特開平02−072278(JP,A)
【文献】 特開平05−106754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00−31/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の動作開始位置である全開位置又は全閉位置からバルブの作動を開始し、この動作開始位置から予め設定しておいた第1の設定時間内にバルブが動作完了位置である全閉位置又は全開位置に到達するか否かを判定し、前記第1の設定時間内にバルブが動作完了位置に到達していないと噛み込みが生じていると判断してバルブの動作を停止する第1検知手段と、噛み込みが生じていると判断した場合には、所定範囲でバルブを逆方向に動作させてから停止した後、この停止位置から正方向への動作を再開させる揺動運転を実施するか、又はバルブを逆方向に動作させてから停止した後、その停止位置でバルブをその停止位置から動作完了位置までの範囲よりも小さい範囲内で複数回の揺動動作させた後に正方向への動作を再開させる揺動運転を実施し、前記停止位置に応じて変化させる第2の設定時間内にバルブが動作完了位置に到達していないと噛み込みが生じていると判断してバルブの動作を停止する第2検知手段とを備え、前記第2検知手段においてバルブが動作完了位置に到達したと判断するまで、所定範囲でバルブを逆方向に動作させてから停止した後、この停止位置から正方向への動作を再開させる揺動運転を実施するか、又はバルブを逆方向に動作させてから停止した後、その停止位置でバルブをその停止位置から動作完了位置までの範囲よりも小さい範囲内で複数回の揺動動作させた後に正方向への動作を再開させる揺動運転を実施することを特徴とする噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記揺動運転を所定の回数繰り返しても、前記第2検知手段においてバルブが動作完了位置に到達したと判定されないと、噛み込みを解消できないと判断して、バルブを逆方向へ動作した後に停止させる請求項1に記載の噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記第1の設定時間及び前記第2の設定時間として、全開から全閉方向と、全から全方向とでそれぞれ異なる値を用いる請求項1又は請求項2に記載の噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータ。
【請求項4】
予め全開位置から全閉位置、及び全閉位置から全開位置までのバルブの正常動作を行っておき、それに基づいて前記第1の設定時間及び前記第2の設定時間を決定する請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータ。
【請求項5】
バルブの前記停止位置から前記動作完了位置までの残りの動作角度を第2の設定時間で除した値(平均回転角速度)が、残りの動作角度が小さくなるほど小さな値となるように変化させる請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータ。
【請求項6】
前記第1の設定時間及び前記第2の設定時間を、バルブ及びアクチュエータの種類に応じて変更できる請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータ。
【請求項7】
所定の動作開始位置である全開位置又は全閉位置からバルブの作動を開始し、この動作開始位置から予め設定しておいた第1の設定時間内にバルブが動作完了位置である全閉位置又は全開位置に到達するか否かを判定し、前記第1の設定時間内にバルブが動作完了位置に到達していないと噛み込みが生じていると判断してバルブの動作を停止する第1工程と、噛み込みが生じていると判断した場合には、所定範囲でバルブを逆方向に動作させてから停止した後、この停止位置から正方向への動作を再開させる揺動運転を実施するか、又はバルブを逆方向に動作させてから停止した後、その停止位置でバルブをその停止位置から動作完了位置までの範囲よりも小さい範囲内で複数回の揺動動作させた後に正方向への動作を再開させる揺動運転を実施し、前記停止位置に応じて変化させる第2の設定時間内にバルブが動作完了位置に到達していないと噛み込みが生じていると判断してバルブの動作を停止する第2工程とを備え、前記第2工程においてバルブが動作完了位置に到達したと判断するまで、バルブを逆方向に動作させてから停止した後、この停止位置から正方向への動作を再開させる揺動運転を実施するか、又はバルブを逆方向に動作させてから停止した後、その停止位置でバルブをその停止位置から動作完了位置までの範囲よりも小さい範囲内で複数回の揺動動作させた後に正方向への動作を再開させる揺動運転を実施することを特徴とする噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータの異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータとその異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配管系統を流れる流体中に異物が含まれていると、配管系統に設けられたバルブを開閉する際に流体内に混在していた異物がバルブ内の流体通過部分で弁体と噛み込みを起こすことがある。バルブ内でこのような異物の噛み込みが発生すると、弁体が開閉動作の途中で停止してバルブを所望の開閉状態にすることができなくなって流量の制御ができなくなるだけでなく、弁体を駆動するモータのコイルに過電流が流れ、コイルが焼損する原因となることがある。
【0003】
最近注目されている雨水を利用した中水道では、水源である雨水中のゴミを完全に除去することができないので、その配管系に使用されるバルブではこのような異物噛み込みが発生する蓋然性が高く、その対策を講じる必要がある。
【0004】
従来から、種々の方式により噛み込みを検知するとともに、噛み込んだ異物を自動的に配管系の流れの方向に排除する噛み込み防止機能を備えたバルブ用電動アクチュエータに関する技術が提案されている。
【0005】
このような電動アクチュエータとしては、特許文献1に、弁体に異物が噛み込んで、バルブの規定開閉時間以上タイマ及びモータに通電されると逆転タイマが作動し、一定時間逆転動作が行われるバイパス回路が形成され、モータは逆転動作を行い次にまた一定時間正転動作を行う反復動作を繰り返し、正転、逆転の反復動作により異物が排出された後は、開又は閉の予め定められた所定の位置で停止する異物噛み込み防止機構付電動バルブが提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、アクチュエータの出力軸に取り付けられた弁体が異物を噛み込んだ際に、出力軸に発生する過大トルクを出力軸にモータの回転を伝えるウォーム軸が変位することにより検出し、一旦電動弁を逆動作させることにより弁体内部の異物を流体の圧力により排除する電動弁の自動制御方式が提案されている。
【0007】
さらに特許文献3には、モータ電流検出手段により閉弁中のモータに流れる電流を検出し、異物の噛み込みによる過電流(ロック電流)を検知すると、モータを逆回転して弁体を開弁方向へ一定角度戻した後、開放された異物が弁体から外れるのに十分な時間が経過するとモータを正転して閉弁方向に動かし、再度過負荷による過電流を検出すると、モータを逆転して弁体を開弁方向へ一定角度戻した後、モータを正転して閉弁方向へ動かす排出動作を複数回繰り返す電動弁が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−72278号公報
【特許文献2】特開平5-106754号公報
【特許文献3】特開2012−229735号公報
【特許文献4】特許第4776409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、この特許文献1に記載された電動バルブでは、弁体の開閉動作中に異物の噛み込みが発生しても、既定開閉時間が経過するまではモータへの通電が継続されて噛み込み状態が続くため、バルブの弁体、アクチュエータを破損するおそれが解消されていない。また、異物が排出されるまでの間、モータの正転、逆転の反復動作が繰り返されるので、この動作により異物の排出ができない場合には、長時間に亘って噛み込み状態が継続し、バルブの弁体、アクチュエータを破損するおそれがあるだけでなく、流体の制御を正常に行えなくなる可能性もある。
【0010】
特許文献2に記載された電動弁の自動制御方式では、運転回数が増すとともにウォームギア、ウォームホイールが摩耗し、ウォームギアの軸方向のガタが大きくなることが知られており、このガタにより検出トルクにヒステリシスが発生し、過大トルクの発生時に正確に検出ができない問題点がある。また、全開側と全閉側のそれぞれの方向にトルクを検出する場合、検出部の構造が複雑になるという問題もある。
【0011】
特許文献3に記載された電動弁をバラフライ弁の開閉に使用した場合には、特に、ジスクが閉動作する際の全閉近傍閉動作(ジスクのシート乗り上げ時)で生じる急激なトルク上昇を噛み込みの発生と誤検知し、誤作動するおそれがある。
【0012】
特許文献4に記載された電動バルブは、異常を検出するための基準値を設定するため、予め正常な電動バルブが所定の移動量を移動するのに要する時間をバルブごとに計測してメモリー手段に記憶させる必要があり、設置時の作業が煩雑となる。
【0013】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、バルブの動作方向にかかわらず、流体の圧力や流速等の変動やバルブの特性による一時的なモータのトルク上昇を噛み込発生と誤検知することなく、異物の噛み込みを正確、かつ短時間に検知することができるとともに、異物の噛み込みを検知した場合には異物の排出動作を自動的に行い、異物の排出ができない場合には作動を停止してバルブ、アクチュエータにダメージを与えることを防止し、外部に噛み込み発生の警報を発することができ、かつ所要のバルブと簡単に組み合わせて使用することができる噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータとその異常検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、所定の動作開始位置である全開位置又は全閉位置からバルブの作動を開始し、この動作開始位置から予め設定しておいた第1の設定時間内にバルブが動作完了位置である全閉位置又は全開位置に到達するか否かを判定し、前記第1の設定時間内にバルブが動作完了位置に到達していないと噛み込みが生じていると判断してバルブの動作を停止する第1検知手段と、噛み込みが生じていると判断した場合には、所定範囲でバルブを逆方向に動作させてから停止した後、この停止位置から正方向への動作を再開させる揺動運転を実施するか、又はバルブを逆方向に動作させてから停止した後、その停止位置でバルブをその停止位置から動作完了位置までの範囲よりも小さい範囲内で複数回の揺動動作させた後に正方向への動作を再開させる揺動運転を実施し、前記停止位置に応じて変化させる第2の設定時間内にバルブが動作完了位置に到達していないと噛み込みが生じていると判断してバルブの動作を停止する第2検知手段とを備え、前記第2検知手段においてバルブが動作完了位置に到達したと判断するまで、所定範囲でバルブを逆方向に動作させてから停止した後、この停止位置から正方向への動作を再開させる揺動運転を実施するか、又はバルブを逆方向に動作させてから停止した後、その停止位置でバルブをその停止位置から動作完了位置までの範囲よりも小さい範囲内で複数回の揺動動作させた後に正方向への動作を再開させる揺動運転を実施することを特徴とする噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータである。
【0015】
請求項2に係る発明は、前記揺動運転を所定の回数繰り返しても、前記第2検知手段においてバルブが動作完了位置に到達したと判定されないと、噛み込みを解消できないと判断して、バルブを逆方向へ動作した後に停止させる噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータである。
【0016】
請求項3に係る発明は、前記第1の設定時間及び前記第2の設定時間として、全開から全閉方向と、全から全方向とでそれぞれ異なる値を用いる噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータである。
【0017】
請求項4に係る発明は、予め全開位置から全閉位置、及び全閉位置から全開位置までのバルブの正常動作を行っておき、それに基づいて前記第1の設定時間及び前記第2の設定時間を決定する噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータである。
【0018】
請求項5に係る発明は、バルブの前記停止位置から前記動作完了位置までの残りの動作角度を第2の設定時間で除した値(平均回転角速度)が、残りの動作角度が小さくなるほど小さな値となるように変化させる噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータである。
【0019】
請求項6に係る発明は、前記第1の設定時間及び前記第2の設定時間を、バルブ及びアクチュエータの種類に応じて変更できる噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータである。
【0020】
請求項7に係る発明は、所定の動作開始位置である全開位置又は全閉位置からバルブの作動を開始し、この動作開始位置から予め設定しておいた第1の設定時間内にバルブが動作完了位置である全閉位置又は全開位置に到達するか否かを判定し、前記第1の設定時間内にバルブが動作完了位置に到達していないと噛み込みが生じていると判断してバルブの動作を停止する第1工程と、噛み込みが生じていると判断した場合には、所定範囲でバルブを逆方向に動作させてから停止した後、この停止位置から正方向への動作を再開させる揺動運転を実施するか、又はバルブを逆方向に動作させてから停止した後、その停止位置でバルブをその停止位置から動作完了位置までの範囲よりも小さい範囲内で複数回の揺動動作させた後に正方向への動作を再開させる揺動運転を実施し、前記停止位置に応じて変化させる第2の設定時間内にバルブが動作完了位置に到達していないと噛み込みが生じていると判断してバルブの動作を停止する第2工程とを備え、前記第2工程においてバルブが動作完了位置に到達したと判断するまで、バルブを逆方向に動作させてから停止した後、この停止位置から正方向への動作を再開させる揺動運転を実施するか、又はバルブを逆方向に動作させてから停止した後、その停止位置でバルブをその停止位置から動作完了位置までの範囲よりも小さい範囲内で複数回の揺動動作させた後に正方向への動作を再開させる揺動運転を実施することを特徴とする噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータの異常検出方法である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によると、所定の動作開始位置である全開又は全閉から動作完了位置である全閉又は全開に到達したか否かを判定する第1の設定時間とは別に、噛み込みが発生したと判断した場合に所定時間だけ逆方向に動作させて停止した後、この停止位置から動作完了位置に到達したか否かを判定する第2の設定時間を設けるので、バルブの揺動運転では第1の設定時間が経過するまで待つことなく、それよりも短い第2の設定時間が経過したか否かによって噛み込みを解消したか否かを短時間で検知することができる。この第2の設定時間は、バルブが所定時間だけ逆方向に動作する毎に、その時のバルブの停止位置に対応して新たに設定するので、バルブの揺動運転における噛み込み検知時間を常に最短化することができる。
【0022】
また、ステムに発生するトルクの増加ではなく、バルブの「トルク−開閉時間特性」を基準に噛み込み発生の有無を判断しているので、例えば、バタフライバルブのように全閉位置近傍における開閉の際にジスクのシート乗り上げによるステムトルクの著しい上昇がみられるバルブに適用したとしても噛み込みを誤検知することがなく、正確に検知することができる。また、バルブが動作完了位置に到達したと判断するまでバルブの揺動運転を実施するので、異物の噛み込みを解消し、異物を下流方向に流出させる可能性を増やすことができる。
【0023】
請求項2に係る発明によると、所定の回数だけバルブの揺動運転を実施しても噛み込みが解消しない場合にはバルブを逆方向に動作させた後に停止するので、バルブ、モータ、ギア機構等に過大なトルクが印加される時間を短時間に限定することが可能となり、バルブ、モータ、ギア機構等へのダメージを防止することができる。
【0024】
請求項3に係る発明によると、全開から全閉方向への動作と、全閉から全開方向への動作とでは開閉速度が異なるバルブであっても、バルブが全開、全閉のどちら側の方向へ動作しているのかにかかわらず、短時間で異物の噛み込みを検知することができる。
【0025】
請求項4に係る発明によると、全開位置から全閉位置、及び全閉位置から全開位置までのバルブの正常動作を実際に行って取得したデータに基づき、第1の設定時間及び第2の設定時間を予め設定するので、バルブが動作を開始する位置がどこであるのかかわらず、短時間で異物の噛み込みを検知することができる。
【0026】
請求項5に係る発明によると、バルブの停止位置から動作完了位置までの残りの動作角度を第2の設定時間で除した値(平均回転角速度)を残りの動作角度が小さくなるほど小さな値となるように変化させているので、例えばバタフライバルブのようにバルブの全閉位置付近でステムトルクが上昇することにより、ステムを回動させるモータの回転速度が減少するような特性を有するバルブに使用した場合であっても、ステムトルク上昇によりステムの回転速度が減少する影響を考慮することができるので、噛み込み発生を誤検知することがない。
【0027】
請求項6に係る発明によると、前記第1の設定時間及び前記第2の設定時間をバルブ及びアクチュエータの種類に応じて変更できるので、特定のバルブとアクチュエータの組み合わせに制限されることなく、所要のバルブとアクチュエータを組み合わせて使用することができるので、設置現場での作業を軽減することができる。
【0028】
請求項7に係る発明によると、所定の動作開始位置である全開位置又は全閉位置から動作完了位置である全閉位置又は全開位置に到達したか否かを判定する第1の設定時間とは別に、噛み込みが発生したと判断した場合に所定時間だけ逆方向に動作させて停止した後、この停止位置から動作完了位置に到達したか否かを判定する第2の設定時間を設けるので、バルブの揺動運転では第1の設定時間が経過するまで待つことなく、それよりも短い第2の設定時間が経過したか否かによって噛み込みを解消し得たか否かを短時間で検知することができる。この第2の設定時間は、バルブが所定時間だけ逆方向に動作する毎に、その時のバルブの停止位置に対応して新たに設定するので、バルブの揺動運転における噛み込み検知時間を常に最短化することができる。
【0029】
また、ステムに発生するトルクの増加ではなく、バルブの「トルク−開閉時間特性」を基準に噛み込み発生の有無を判断しているので、例えば、バタフライバルブのように全閉位置近傍における開閉の際に弁体のシート乗り上げによるステムトルクの著しい上昇がみられるバルブに適用したとしても噛み込みを誤検出することなく、正確に噛み込みの発生を検知することができる。また、バルブが動作完了位置に到達したと判断するまでバルブの揺動運転を実施するので、異物の噛み込みを解消し、異物を下流方向に流出させる可能性を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明における噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータの一実施形態の構成ブロック図である。
図2】(a)バタフライバルブを開閉する場合のステム角度位置とステムトルクとの関係を示す図である。(b)バタフライバルブを開閉する場合のステム角度位置と噛み込み検出時間閾値との関係を示す図である。本発明における噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータの動作原理を示す図である。
図3】モータの回転数とモータの負荷トルクとの関係を示す図である。
図4】本発明における噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータの動作原理を示す図である。
図5】本発明における噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータの一実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明における噛み込み検知機能付きバルブ用電動アクチュエータ(以下、単に「バルブ用電動アクチュエータ」という。)の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、バルブ用電動アクチュエータの一実施形態の構成ブロック図を示している。図1に示すように、バルブ用電動アクチュエータ1はバルブ2の上部に、弁体3のステム4と直結して取り付けられ、外部電源5の供給を受け、操作パネル6により操作されて前記バルブ2の開閉を実施している。
【0032】
図中、バルブ用電動アクチュエータ1は、駆動機構11と、前記弁体3の作動状況を前記ステム4の角度位置に基づき認識する作動センサ機構12と、前記作動センサ機構12からの信号に基づき噛み込みの発生を検知するとともに前記駆動機構11の作動を制御する制御回路13と、使用しているアクチュエータ及びバルブの種類及びサイズを前記制御回路13に設定する動作機能設定部14と、前記制御回路13のメモリーに記憶された噛み込み検知時間閾値テーブルを書き換えることができるデータメモリ書き込み制御部15と、前記操作パネル6から入力されたバルブ操作信号を前記制御回路13に伝達する入出力インターフェース回路16と、前記制御回路13からの制御信号に基づき前記駆動機構11に電力を供給するモータ駆動回路17と、前記外部電源5から供給される電力から前記制御回路13に必要な直流電源を生成する電源回路18と、アクチュエータの再起動時に内部データをリセットするリセット部19から構成されている。
【0033】
駆動機構11は、モータ21と、複数のギアを組み合わせて前記モータ21の回転を減速するギア減速機構22と、前記ギア減速機構22で減速された前記モータ21の回転をアクチュエータの外部に出力する出力軸23により構成されている。モータ21の回転動力はギア減速機構22に伝達され、出力軸23を介してバルブ2のステム4にトルク伝達されており、ステム4を介してバルブ2の弁体3を回動させ、バルブ2の開閉を行うことができる。モータ21には、交流(AC)非同期モータもしくは直流(DC)モータを使用することができる。また、ギア減速機構22は、所要の減速比を有するものであれば減速方式は自由であるが、本実施例では、減速機構にかみ合い率が高くバックラッシュが殆んどないサイクロン減速機を使用したため、ウォームホイール減速機構を使用したトルクスイッチ方式のようにギアのバックラッシュによる検出誤差が殆んど生じない効果を得ることができる。
【0034】
作動センサ機構12は、前記駆動機構11の出力軸23の上部に、前記出力軸23と同軸に立設した制御軸24に設けられ、バルブ2の弁体3が全開位置又は全閉位置に達した際に前記モータ21への電力供給を遮断して弁体3を全開位置又は全閉位置に保持する主リミットスイッチ25a、25bと、前記制御軸24に設けられバルブ2の弁体3が全開位置又は全閉位置に達したことを前記制御機構11に連絡する信号を発する補助リミットスイッチ26a、26bと、前記制御軸24の回転角度を計測して弁体3のステム軸4の角度位置を検知する回転角度センサ27から構成されている。二個の主リミットスイッチ25a、25b及び二個の補助リミットスイッチ26a、26bは、主リミットスイッチ同士、補助リミットスイッチ同士が90度の位相差を以って制御軸24に取り付けられており、図2(a)に示すように弁体3の全開、全閉状態を検知することができる。
【0035】
前記制御軸24と前記出力軸23と前記ステム4は同一回転軸を有するように固定されているので、前記制御軸24の角度位置を測定することによりステム4の角度位置を検知することができる。本実施例では、回転角度センサとしてポテンショメータを使用したが、ロータリーエンコーダを使用することもできる。なお、ロータリーエンコーダを使用する場合には、後述するA/Dコンバータの代わりにデジタルカウンタ又はデコード回路を用いることによって、デジタル信号でバルブのステム角度情報を得ることができる。
【0036】
制御回路13は、バルブの種類別に噛み込み検知時間閾値テーブルを記憶したデータメモリ(EEPROM:Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)28と、前記回転角度センサ27からのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ29と、前記モータ21への電力供給時間を計測するタイマーカウンタ30と、異物の噛み込み発生の検知と前記駆動機構11の作動の制御を行うCPU31から構成されている。
【0037】
ここで、以下に、CPU31で行う異物噛み込みの検知方法について詳細に説明する。
電動モータにより駆動するバルブに異物の噛み込み等が発生し、ステムトルクが上昇すると、当然にモータの負荷トルクも上昇するが、電動モータにAC非同期モータあるいはDCモータを使用している場合には、図3に示すように、モータの負荷トルクの上昇に伴ってモータ回転数が低下する特性がある。このため、AC非同期モータあるいはDCモータを使用している電動バルブに異物の噛み込みが発生すると、ステムトルクの増加によりステム回転速度が低下することにより、バルブの開閉時間に遅れが発生する。
【0038】
本発明におけるバルブ用電動アクチュエータの異物噛み込みの検知方法は、この「トルク−開閉時間特性」を利用している。すなわち、予め、バルブが正常に動作する状態で、バルブの弁体が全開位置又は全閉位置から、全閉位置又は全開位置に至るまでの動作時間を求めておき、この求めた時間に一定の安全率を考慮した値を噛み込み検知時間閾値(第1の設定時間)として設定し、バルブがこの噛みこみ検知時間閾値以内に全開位置又は全閉位置から全閉位置又は全開位置に到達しない場合には、バルブに異物の噛み込みが発生したものと判断している。このため、バルブが正常に作動する状態では、バルブの動作時間が第1の設定時間を超過することはないので、噛み込み発生を誤検知することがない。
【0039】
この噛み込み検知時間閾値による噛み込み検知は、全閉位置近傍で弁体のシート乗り上げ等によりステムトルクが著しく変化するバタフライバルブの場合に特に効果的である。図2(a)にバタフライバルブを開閉する際のステムトルク値の変化を示すが、バルブを全閉する直前に急激にステムトルク値が上昇しており、モータの電流値でステムトルクを検出する方法では、このステムトルク値の急上昇を噛み込みの発生と誤検知しないようにすることは困難である。一方、本発明における噛み込み検知時間閾値を利用した方式では、図2(b)に示すように、バルブの作動時間が噛み込み検知時間閾値を超えるか否かで異物の噛み込みの発生の有無を判断するため、ステムトルクの上昇による開閉時間の遅れを考慮することができ、異物噛み込みの発生を誤検知することがない。
【0040】
本発明におけるバルブ用電動アクチュエータでは、全開位置又は全閉位置から全閉位置又は全開位置に(正方向)弁体が動作する間に異物の噛み込みが発生したと判断した場合には、弁体を一定時間逆方向に動作させた後に正方向に動作させる揺動運転を実施して異物の噛み込みを解消しようとしている。この揺動運転により噛み込みが解消されたか否かの判断にあたっては、弁体を一定時間逆方向に動作させ後に停止させた位置から一定時間内に弁体が全閉位置又は全開位置に到達することができたか否かを基準にしている。このため、弁体が一定時間逆方向に動作した停止位置から、再度、正方向に弁体を動作させるに際し、全開位置又は全閉位置から全閉位置又は全開位置までの全範囲を移動する場合に対応した噛み込み検知時間閾値(第1の設定時間)を用いると、実際の弁体の動作量は全範囲を動作する場合よりも少ないのにもかかわらず、全範囲を動作する場合に対応した噛み込み検知時間閾値(第1の設定時間)が経過するまでは噛み込み発生の有無を検知することができず、無駄時間が発生する不具合が生じる。
【0041】
この不具合を避けるため、本発明におけるバルブ用電動アクチュエータでは、弁体の現在のステム角度位置を測定できるように制御軸24に回転角度センサ27を設けるとともに、噛み込み検知時間閾値についても、全開位置又は全閉位置から全閉位置又は全開位置に弁体が移動する場合だけでなく、バルブが逆方向に動作して停止した位置である現在のステム角度位置から全閉位置又は全開位置に弁体が移動する場合の噛み込み検知時間閾値(第2の設定時間)を設定することにより、最短時間で噛み込み発生を検知することを可能としている。
【0042】
なお、バルブの揺動運転を行うに際し、弁体を一定時間逆方向に動作させ後に停止させた位置で、弁体をその停止位置から全閉位置又は全開位置(動作完了位置)までの範囲よりも小さい範囲内で複数回の揺動動作させることも異物の噛み込みを解消し、異物を下流に流出させるためには効果がある。
【0043】
噛み込み検知時間閾値(第1の設定時間及び第2の設定時間)を設定するために必要となる現在のステム角度位置からバルブの弁体が全閉あるいは全開に至るまでの動作時間は、バルブの種類(ボールバルブ、バタフライバルブ等)、バルブのサイズ及びバルブを駆動するアクチュエータの機種(サイズ)によって異なるため、予めバルブの種類別に、バルブのサイズ及び搭載するアクチュエータの機種毎に、種々のステム角度位置から弁体が全閉あるいは全開に至るまでの動作時間を求め、この求めた動作時間に所定の安全率を乗じた噛み込み検知時間閾値を計算しておく。
【0044】
なお、この噛み込み検知時間閾値の設定にあたっては、例えば、バタフライバルブの様に、全閉位置近傍における開閉の際に弁体のシート乗り上げによりステムトルクが著しく上昇し、そのためにステムを駆動するモータの回転速度が低下する特性を有するバルブにあっては、一定時間逆方向に動作させ後に停止させた位置から動作完了位置までの動作範囲が小さい場合には、バルブ停止位置から動作完了位置までのバルブの回動に要する時間全体の中に占めるステムトルクの上昇によりステムの回転速度が低下する部分の影響が大きくなる現象を踏まえることが好ましい。そのため、バルブの停止位置から動作完了位置までの残りの動作角度を第2の設定時間で除した値(平均回転角速度)が、残りの動作角度が小さくなる程小さな値となるように噛み込み検出時間閾値を設定するように考慮し、噛み込み発生の誤検知を防止することができる。
【0045】
このようにして作成した噛み込み検知時間閾値データテーブルの一例を表1に示す。データテーブルは、作成及び利用を容易にするため、ステム角度位置に一定の幅を持たせ、その幅内であれば同じ値の噛み込み検知時間閾値を用いるようにしている。
【0046】
【表1】
【0047】
図2(b)に示すように、バルブの弁体が閉側に向かう場合と開側に向かう場合とでは動作時間が異なり、噛み込み検知時間閾値も違ってくる場合があるため、噛み込み検知時間閾値のデータテーブルは、必要により、弁体が閉側に向かう場合と開側に向かう場合の双方について作成する必要がある。
【0048】
CPU31は、バルブの種類別に噛み込み検知時間閾値テーブルを記憶したデータメモリバ28から、後述する方法により指定された噛み込み検知時間閾値データを読み込む。この指定時に、使用するアクチュエータの機種も指定されるので、データテーブルのどの列の噛み込み検知時間閾値を用いるべきかが明確になる。
【0049】
CPU31は、回転角度センサ27からA/Dコンバータ29を介して送られてくる弁体3のステム角度位置情報から全閉あるいは全開するまでに必要な弁体回転角度(残り絶対角度)を計算し、その弁体回転角度が含まれる閾値区分の噛み込み検知時間閾値を読み込んだデータから求め、タイマーカウンタ31が計時するモータ21の動作時間と比較し、モータ21の動作時間が噛み込み検知時間閾値データテーブルから求めた噛み込み検知時間閾値(秒)を超過しても補助リミットスイッチ26から全閉あるいは全開信号を受信しない場合に、噛み込みが発生したと判断する。
【0050】
噛み込み発生を検知したCPU31は、モータ駆動回路17を介してモータ21への給電を停止するとともに、予め動作機能設定部14により指定された時間だけモータ21に通電して弁体2を逆回転させ、その後、弁体2を全閉位置あるいは全開位置へ動作させる揺動運転を指定された回数行わせる。
【0051】
この揺動運転においては、指定された時間だけ弁体2を逆方向に動作させてから停止させた後、停止後のステム角度位置を回転角度センサ27で読み取り、その角度位置から全閉あるいは全開するまでに必要な弁体回転角度(残り絶対角度)を計算し、その残り絶対角度が含まれる閾値区分に属する噛み込み検知時間閾値(第2の設定時間)をCPU31に読み込んだデータから求める。その後、弁体3を全閉位置あるいは全開位置へ動作させる際に、この第2の設定時間を超過しても補助リミットスイッチ26から全閉あるいは全開信号を受信しない場合には、噛み込んだ異物の排出に成功しなかったものと判断し、予め指定された回数に至るまでこの逆転揺動を繰り返す。
【0052】
以上の揺動運転を図4により説明する。当初、弁体はステム角度が90度である全開位置35にあり、ステム角度が0度となる全閉位置36へと動作している。この時、全開位置35から全閉位置36まで弁体は初回の正方向への動作をしており、閉側補助リミットスイッチ37が作動するまでの初回噛み込み検知時間閾値(第1の設定時間)38は、閉方向の動作時間に安全率αを乗じた値として求められる。初回噛み込み停止位置39で初回の異物噛み込みが発生すると、初回噛み込み検知時間閾値(第1の設定時間)38を経過しても閉側補助リミットスイッチ37が作動しないため、モータへの給電が停止され、弁体も停止する。
【0053】
この後、弁体の1回目の逆方向への動作が行われ、定められた時間だけ逆方向に動作した弁体は1回目逆転停止位置40まで戻った後、停止する。この時、1回目逆転停止位置40のステム角度位置から1回目噛み込み検知時間閾値(第2の設定時間)41が求められ、その後、弁体は1回目の正方向への動作を開始する。この1回目の逆方向への動作で異物の噛み込みが解消していないと、弁体は1回目正転噛み込み停止位置42で停止するので、1回目噛み込み検知時間閾値(第2の設定時間)41が経過しても閉側補助リミットスイッチ37は作動しない。
【0054】
このため、弁体は定められた時間だけ2回目の逆方向への動作を行い、2回目逆転停止位置43で停止し、2回目噛み込み検知時間閾値(第2の設定時間)44を求める。その後、弁体は2回目の正方向への動作を開始し、異物の噛み込みが解消していない場合には、2回目正転噛み込み停止位置45で停止し、2回目噛み込み検知時間閾値(第2の設定時間)44が経過しても閉側補助リミットスイッチ37は作動しないので、設定された揺動運転回数に達するまで揺動運転を繰り返す。
【0055】
一方、この噛み込み検知時間閾値(第2の設定時間)を経過する前に補助リミットスイッチ37が作動した場合には、噛み込んだ異物の排出に成功したと判断し、その時点で揺動運転を中止するとともに、モータへの給電を停止して弁体を全閉位置に維持する。
【0056】
本発明におけるバルブ用電動アクチュエータでは、このように揺動運転における角度範囲を必要最小限に制限するように弁体の逆方向への動作時間を設定することができるとともに、弁体が逆転停止した各時点のステム角度位置に対応した噛み込み検知時間閾値を求め、その都度噛み込み発生検知の基準を新たに設定しているため、配管内の流量を大きく変化させることなく、また、従来のように、弁体が全開あるいは全閉位置から全閉あるいは全開位置に回動する時間のみを異物噛み込み発生の判断基準とする場合に比べ、最短時間で異物の噛み込みが解消していないことを検知することができる。
【0057】
このように、最短時間で異物の噛み込みが解消していないことを検知して揺動運転を継続し、規定の回数揺動運転を実施しても異物の噛み込みが解消しない場合には、モータを逆方向へ作動した後に停止するので、弁体、モータ等に過大なトルクが印加されている時間を大幅に短縮することが可能となり、バルブ、アクチュエータにダメージを与えることがない。
【0058】
また、既定回数の揺動運転を行っても噛み込みが解消しない場合には、CPU31はモータ21への給電を中止するとともに、入力インターフェース16を介して操作パネル6にエラー警報を出力し、バルブに異物の噛み込みが発生して流体の制御に問題が生じていること、及びバルブの分解による異物の除去が必要なことを警告するので、迅速に所要の対応を採ることができる。
【0059】
動作設定部14は、使用するアクチュエータのサイズ(機種)を設定する弁種サイズ設定部32と、噛み込み発生時の弁体の搖動回数を設定する揺動回数設定部33と、噛み込み発生時のモータの逆転時間を設定する揺動時間設定部34で構成されている。
【0060】
本実施例においては、動作設定部14としてディップスイッチを使用しており、表2に示すように、機種選定、噛み込み検知の可否、揺動回数、揺動時間をB0からB7の8個のスイッチに割り当て行い、アクチュエータ機種設定部32、揺動回数設定部33、逆転時間設定部34としている。後述するように、各スイッチを「1(ON)」又は「0(OFF)」の位置に合わせることにより、機種選定、噛み込み検知の可否、揺動回数、揺動時間を簡単に設定することができる。
【0061】
【表2】
【0062】
アクチュエータの機種は、ディップスイッチのB0からB2スイッチにより設定することができる。表3に示すようにB0乃至B2スイッチを設定することにより、1型から8型までの8種類のアクチュエータの機種を指定することができる。
【0063】
【表3】
【0064】
異物の噛み込み検知の要否は、ディップスイッチのB3スイッチにより設定することができる。異物の噛み込み検知が必要な場合には「1」に、不要な場合は「0」に設定する。このように、本発明のおけるバルブ用電動アクチュエータは、噛み込み検知が必要な個所にも、また不要な個所にも簡単な操作により所要の機能を選択して使用することができる。
【0065】
バルブの揺動運転の回数は、ディップスイッチのB4及びB5により設定することができる。表4に示すようにB4及びB5スイッチを設定することにより、揺動運転の回数を2回から5回の範囲で指定することができる。
【0066】
【表4】
【0067】
バルブを逆方向動作させる逆転時間は、ディップスイッチのB6及びB7スイッチにより設定することができる。表5に示すように、B6及びB7スイッチを設定することにより、弁体を逆方向動作させる時間である逆転時間を2秒から5秒の範囲で1秒刻みに設定することができる。
【0068】
【表5】
【0069】
動作設定部14での設定に対応する動作条件は予めCPU31に記憶させてあるため、使用するバルブの種類やサイズを変更する場合であっても、CPUのデータを書き換えることなく、ディップスイッチの所定のスイッチの位置を切り替えるだけで対応することができ、また設定状態を目視で確認することができる。
【0070】
データメモリ書き込み制御部15は、データメモリ部28に格納されている噛み込み検知時間閾値のデータテーブルを必要に応じ書き換え変更するために使用する。バルブ設置後、噛み込み検出時間が実情に適合しない場合には、設置場所においても簡単に変更して調整することができる。
【0071】
入力インターフェース部16は、操作パネル6からのバルブ全開あるいは全閉に入力をCPU31に伝達し、CPU31からの噛み込み発生のエラー信号を操作パネル6側に伝達する機能を有している。
【0072】
モータ駆動回路17は、CPU31からの信号を受け、弁体が所定の方向に回転するようにモータ21に電力を供給する機能を有している。
【0073】
電源回路18は、外部電源5から電力(交流又は直流)の供給を受け、制御回路13及びモータ駆動回路17に電力を供給するが、外部電源5が交流の場合には直流に変換した後に制御回路13に供給する。
【0074】
リセット部19は、噛み込み発生のエラー信号が発せられ、所要の処置によりバルブから異物の除去が完了した後、CPU31及びモータ駆動回路17を使用可能な状態に復する機能を有している。
【0075】
以下に、本発明におけるバルブ用電動アクチュエータによりバルブの噛み込みを防止する制御方法について説明する。図5は、本発明におけるバルブ用電動モジュールによりバルブの噛み込みを防止する制御のフローチャートである。
【0076】
まず、ステップ101においてアクチュエータに初期設定、動作設定を行う。このステップにより、使用するバルブの種類、アクチュエータの種類(サイズ)等を動作機能設定部14により設定する。次に、ステップ102でモータを停止させ、弁体を全開位置あるいは全閉位置に維持する。ステップ103でバルブ開閉入力が入力されたか否か、ステップ104で開側入力かの判断が行われる。
【0077】
バルブが全開状態であったとすると、開側入力であることはないので、ステップ105Rに移行する。ステップ105Rで全閉側補助リミットスイッチがONであるか(バルブが閉じているか)が判定されるが、バルブが全開状態であるならば、全閉側リミットスイッチがONであることはないので、ステップ106Rに移行し、揺動回数がゼロにリセットされる。もしバルブが全閉状態であるならば、ステップ102に戻る。
【0078】
ステップ107Rでは、現在のステム角度位置が回転角度センサ27により測定され、ステップ108Rにおいて、CPU31はそのステム角度位置から全閉位置までに必要な弁体回転角度(残り絶対角度)を計算するとともに、データメモリ部28に格納された閉側の噛み込み検知時間閾値データテーブルから、そのステム角度位置が含まれる閾値区分の噛み込み検知時間閾値(第1の設定時間)を読み込む。
【0079】
ステップ109Rにおいて、モータ21が弁体を全閉位置(正方向)に動作させる駆動を開始するとともに、ステップ110Rにおいて、タイマーカウンタ30がモータ21の動作時間の計測を開始する。
【0080】
ステップ111Rにおいて、全閉側補助リミットスイッチがONであるか否かが判定され、ONであれば弁体は全閉位置に達したので、スッテプ102に移行し、モータ21の作動を停止する。ONでなければ、ステップ112Rに移行し、モータ21の作動時間が第1の設定時間を超過したか否かの判定が行われる。超過していなければスッテプ111Rに戻りモータ21に作動は継続し、超過していれば噛み込みの発生と判断され、スッテプ113Rにおいて、モータ21の作動を停止する。
【0081】
次に、ステップ114Rにおいて、モータ21が弁体を全開位置方向(逆方向)に動作させ、ステップ115Rにおいて、予め動作設定部14で設定した逆転時間を経過したか否かの判定が行われる。経過していなければステップ114Rに戻りモータ21に作動は継続し、経過していればステップ116Rにおいて、モータ21の作動を停止してステップ117Rに移行する。
【0082】
ステップ117Rでは、予め動作設定部14で設定した揺動回数が付与され、ステップ118Rにおいて、既定の揺動回数に達したか否かの判定が行われる。既定の揺動回数に達していなければステップ107Rに戻り、その停止位置でのステム角度位置の測定が行われ、ステップ108Rで逆転運転の後に停止した弁体のステム角度位置が含まれる閾値区分の噛み込み検知時間閾値(第2の設定時間)を読み込み、ステップ118Rまでを繰り返す。この繰り返しにおいて、弁体の揺動動作により噛み込んだ異物が排出されれば、ステップ111Rにおいて全閉側補助リミットスイッチがONとなるので、スッテプ102に移行し、モータ21の作動を停止する。
【0083】
一方、既定の揺動運転回数に達した場合には、噛み込んだ異物を排除することができなかったと判断され、全開位置方向(逆方向)に動作停止した状態のままステップ119に移行し、噛み込み発生のエラー表示が入力インターフェース16を介して操作パネルに表示される。
【0084】
以上は、全開状態にあるバルブに閉側入力が付与された場合の制御のフローチャートを説明したが、全閉状態にあるバルブに開側入力が付与された場合には、ステップ104からステップ105Lに移行し、その後のフローは、バルブを閉側に動作させるか開側に動作させるか、またステップ108Lで開側の噛み込み検知時間閾値データテーブルを読み込むかに違いが存在するだけで、他のフローは前述した全開状態にあるバルブに閉側入力が付与された場合と同様である。
【0085】
以上説明したように、本発明におけるバルブ用電動アクチュエータは、全開位置もしくは全閉位置から全閉位置もしくは全開位置に弁体が動作する時間を計測し、その計測時間に安全率αを乗じた値を第1の設定時間とし、その第1の設定時間内に全閉もしくは全開リミットスイッチ信号が得られるか否かで異物の噛み込みの発生を検知する方式を採用しているが、噛み込みの発生の検知に常にこの第1の設定時間を使用することなく、噛み込んだ異物を排出するために一定時間逆転運転をして停止したバルブのステム角度位置を測定し、そのステム角度位置から全閉位置もしくは全開位置まで弁体が動作する時間に安全率αを乗じた値を第2の設定時間として再設定して使用しているので、揺動運転で異物が排出されなかった場合に、噛み込み状態が解消しなかったことを最短時間で検知し、揺動運転を継続するか、モータの作動を停止することができる。これによって、バルブ本体、シート部、ステム部、弾道アクチュエータ機構部、ブラケット部、各部締結部材、モータ等に過大なトルクが印加されている時間を大幅に短縮することが可能となり、これらの部品に対するダメージを与えないという効果を有する。
【0086】
また、本発明におけるバルブ用電動アクチュエータは、モータの電流値でステムトルクを検出して噛み込みを検知する方法ではなく、現在のステム角度位置から全開位置あるいは全閉位置に至るまでの動作時間に基づいて設定した噛み込み検知時間閾値(第1の設定時間及び第2の設定時間)とアクチュエータの作動時間を比較する方式であるため、ギア減速機構の種類や効率の影響を受けず安定して異物の噛み込み検知ができるという効果を有し、特に、全閉位置近傍で著しいステムトルクの上昇が生じるバタフライバルブ用のアクチュエータに使用した場合であっても、噛み込み発生を誤検知することがない。
【0087】
これに加え、本発明におけるバルブ用電動アクチュエータは、バルブの種類別に噛み込み検知時間閾値テーブルを記憶したデータメモリ(EEPROM)を有しており、取り付けるバルブのサイズと自分の機種を動作設定部で設定するだけで適切な噛み込み検知時間閾値データを取り出して使用することができるので、バルブの設置時のバルブが所定の移動量を移動するのに要する時間をバルブごとに計測してメモリー手段に記憶させる必要がない。
【0088】
さらに、本発明におけるバルブ用電動アクチュエータは、既存の補助リミットスイッチ及びポテンショメータを利用し、新たなメカ機構部を一切追加する必要がなく、外観寸法を従来と同一に保ったままで噛み込み防止機能を持たせたため、既存の配管系に簡単に取り付けることができるので、その利用価値は非常に大きいものがある。
【0089】
以上の説明は弁体が回転する回転型のバルブを対象として行ったが、作動センサ機構内部の構成を工夫することにより、直線移動型のバルブに対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 バルブ用電動アクチュエータ
2 バルブ
3 弁体
4 ステム
5 外部電源
6 操作パネル
11 駆動機構
12 作動センサ機構
13 制御回路
14 動作機能設定部
15 データメモリ書き込み制御部
16 入出力インターフェース部
図1
図2
図3
図4
図5