特許第6238282号(P6238282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6238282磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法及び磁気ディスク用ガラス基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238282
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法及び磁気ディスク用ガラス基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/84 20060101AFI20171120BHJP
   C03B 32/02 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G11B5/84 Z
   C03B32/02
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-202850(P2013-202850)
(22)【出願日】2013年9月29日
(65)【公開番号】特開2015-69669(P2015-69669A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113343
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 武史
(72)【発明者】
【氏名】三浦 正文
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和明
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−278859(JP,A)
【文献】 特開2008−226377(JP,A)
【文献】 特開2006−306660(JP,A)
【文献】 特開2003−054965(JP,A)
【文献】 特開2007−223884(JP,A)
【文献】 特開平08−178532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/84
C03B 32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セッター材を介してそれぞれ積層された複数のガラスブランクの積層体を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後に行われ、前記積層体を冷却する冷却工程とを有する磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法であって、
前記加熱工程では、前記積層体を前記ガラスブランクのガラス転移点よりも高い温度まで加熱し、
前記冷却工程は、前記積層体の積層方向の温度分布が均一となるように、前記積層体を前記ガラスブランクのガラス転移点よりも低い温度まで冷却する一次冷却工程と、該一次冷却工程の後に行われ、冷却速度が前記一次冷却工程よりも速い二次冷却工程とを含み、
前記一次冷却工程は、前記ガラスブランクのガラス転移点よりも50℃以上低い温度まで前記積層体を冷却する工程であり、
前記一次冷却工程での前記積層体内の温度偏差は、5.0℃以下となるように調整しながら、前記積層体を冷却することを特徴とする磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
【請求項2】
前記セッター材の平坦度は、前記ガラスブランクの目標平坦度よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程における加熱処理は、前記ガラスブランクの結晶化処理であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
【請求項4】
結晶化度合いを55%以下とすることを特徴とする請求項に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程における加熱処理は、前記ガラスブランクのアニール処理であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程では、少なくとも2つ以上のヒーターが独立して温度制御可能で、前記積層体内の温度偏差を小さくすることが可能な熱処理炉を用いることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法によって製造されたガラスブランクに対して、機械加工を施す処理を含むことを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブ(HDD)等に搭載される磁気ディスク用の基板材料として好適なガラス基板に用いるガラスブランクの製造方法及び磁気ディスク用ガラス基板の製造方法に関する。また、次世代の磁気記録媒体に求められる物性を有している磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法及び磁気ディスク用ガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の磁気記録媒体の記録密度向上に伴い、磁気記録媒体の作製に用いる磁気ディスク用ガラス基板には、平坦性をより一層改善することが求められている。また、磁気ディスクの高速回転時に磁気ヘッドの浮上量を安定に保つためには、高い剛性を有する磁気ディスク用基板が必要である。高い弾性を有する磁気ディスク用ガラス基板に用いるガラスブランクの代表に、結晶化ガラスが挙げられる。
【0003】
結晶化ガラスは、一般的に加工性が悪いため、加工工程の前に可能な限り平坦な状態にしておく事が望ましい。これが出来る事により、加工での生産性悪化を軽減する事ができる。従来の結晶化ガラスの作製方法は、生産性を上げるために、ガラス、セッターを交互に複数枚積層し、最上段に荷重をかけ、熱処理をする方式を用いている(特許文献1〜3等を参照)。平坦性の優れたセッターで、ガラスブランクをはさみ込み、熱処理を行うことで、平坦性の良い結晶化ガラスを製造していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4430806号公報
【特許文献2】特開2006−306660号公報
【特許文献3】特開平11−278859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、従来は生産性を上げるために、ガラス、セッターを交互に複数枚積層して熱処理をする方式を用いている。ガラスn枚に対し、セッターはn+1枚を使用し、最上段に荷重をかけている。熱処理中にガラスは変形を起こすが、平坦性の優れたセッターで、ガラスをはさみ込み、熱処理を行うことで、その平坦性がおおむね転写する。
【0006】
従来の磁気ディスク用の結晶化ガラスは、ガラスの持つ物性の限界まで、結晶化度を上げていたため、先行技術にあるような方法を用いても結晶化後に変化を生じる事はなかった。そのため、結晶化中に修正された平坦度は、そのまま基板の平坦度となり、平坦度に問題は生じていなかった。しかし、このように作製されたガラス基板は、加工性が悪く、その後の加工工程の大きな負担となっていた。現在のガラス基板には、メディアとして750Gbit/inchを超える高記録密度を実現するために、主表面の粗さRaが0.12nm以下の平滑性が求められ、この平滑性を実現するためには、プレス後のガラス素材に対して研磨等の加工を行う必要があり、ガラス基板としては加工性も重要視される。
【0007】
最近の磁気ディスクの市場では、結晶化度をコントロールし、加工性と弾性のバランスを図る材料が求められている。このような材料を作製するためには、結晶化度をある所望の値にコントロールする必要がある。しかし、このようなガラスを作製するにあたり、結晶化プロセスにおける熱処理の冷却を従来のように通常冷却してしまうと、熱処理で修正された平坦度は悪化してしまう。結晶化度の低いガラスは、冷却過程で変形可能域にいるため、その後の冷却過程で変化が生じる。
【0008】
ガラス、セッターを交互に複数枚積層した状態での熱処理では、積層体の上下面に配置されたガラスの平坦度が悪くなってしまう。これにより、ガラスの配置位置による平坦度のバラつきが発生してしまい、品質が均一化しなくなってしまう。複数枚積層せずに、セッター2枚でガラス1枚を挟み込む方式で熱処理を行えば、修正された平坦度は悪化しにくい。しかし、生産性が著しく悪くなってしまう。
【0009】
結晶化プロセスに限らず、アモルファスガラスの積層状態でのアニール処理においても、積層内での基板の平坦度バラツキが問題となっている。熱処理の冷却を従来のように通常冷却してしまうと、熱処理で修正された平坦度は悪化してしまう。熱処理後の冷却過程で変形可能域にいるため、その後の冷却過程で変化が生じる。
【0010】
そこで、本発明では、加工性と弾性のバランスの良い結晶化ガラスを作製し、積層したガラス全てが磁気ディスクに求められる良好な平坦度となっている磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法及びこれによって得られたガラスブランクを用いる磁気ディスク用ガラス基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するために種々の検討を行った。その結果、加工性が良く、弾性率もある一定以上の値を持つ結晶化ガラスを作製するには、結晶化プロセスの核形成、核成長の温度、時間を最適にする事で得られる事が分かった。平坦度については、結晶化プロセスの冷却工程において、積層体内での所定の領域の温度偏差を所定の範囲内に制御する事により、上記目的を達成できる事を見出した。平坦度に関しては、結晶化プロセスに限らず、アモルファスガラスのアニール工程でも同様の効果が言える。
本発明は、上記知見に基づき、鋭意研究の結果なされたものであり、以下の構成を有するものである。
【0012】
(構成1)
セッター材を介してそれぞれ積層された複数のガラスブランクの積層体を加熱する加熱工程と、前記加熱工程の後に行われ、前記積層体を冷却する冷却工程とを有する磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法であって、前記冷却工程では、前記積層体の積層方向の温度分布が均一となるように、前記積層体を冷却することを特徴とする磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
【0013】
(構成2)
前記加熱工程では、前記積層体を前記ガラスブランクのガラス転移点よりも高い温度まで加熱し、前記冷却工程は、前記積層体の積層方向の温度分布が均一となるように、前記積層体を前記ガラス基板のガラス転移点よりも低い温度まで冷却する一次冷却工程と、該一次冷却工程の後に行われ、冷却速度が前記一次冷却工程よりも速い二次冷却工程とを含むことを特徴とする構成1に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
【0014】
(構成3)
前記一次冷却工程は、前記ガラスブランクのガラス転移点よりも50℃低い温度まで前記積層体を冷却する工程であることを特徴とする構成2に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
(構成4)
前記セッター材の平坦度は、前記ガラスブランクの目標平坦度よりも小さいことを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
【0015】
(構成5)
前記加熱工程における加熱処理は、前記ガラスブランクの結晶化処理であることを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
(構成6)
結晶化度合いを55%以下とすることを特徴とする構成5に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
【0016】
(構成7)
前記加熱工程における加熱処理は、前記ガラスブランクのアニール処理であることを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
(構成8)
前記加熱工程では、少なくとも2つ以上のヒーターが独立して温度制御可能で、前記積層体内の温度偏差を小さくすることが可能な熱処理炉を用いることを特徴とする構成1乃至7のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
【0017】
(構成9)
構成1乃至8のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法によって製造されたガラスブランクに対して、機械加工を施す処理を含むことを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の方法によれば、市場ニーズのある低結晶化度のガラスブランクを作製するにあたり、結晶化プロセスの冷却工程における積層体の積層方向の温度分布が均一となるように、つまり積層体内の温度偏差をある所定の範囲内に制御することで、積層したガラス全てが磁気ディスクに求められる良好な平坦度を得ることができる。その結果、高い生産性を維持しつつ、平坦度バラつきの小さい結晶化ガラスが得られる。
また、上記した積層ガラス全てが磁気ディスクに適した平坦度を得る方法は、結晶化ガラスに限らず、アモルファスガラスにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】セッターとガラスブランクを積層した状態の模式図である。
図2】結晶化温度プロファイルの例を示す図である。
図3】ガラスブランクの配置位置とそのガラスブランクの反りの様子を模式的に示す図である。
図4】密度とヤング率の関係を示した図である。
図5】(a)〜(c)は実施例1〜3におけるガラス配置位置(段積み位置)と平坦度の関係を示した図である。
図6】(a)、(b)は比較例2におけるガラス配置位置(段積み位置)と平坦度の関係を示した図である。
【発明の実施の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。
本発明では、図1に示すように、熱処理炉(図示せず)内において、移動可能なように下部に複数のローラー5を取り付けた台座4の上に、セッター2とガラスブランク(以下、単にガラスと呼ぶこともある。)1を交互に積層し、最上段に荷重3を負荷し、結晶化の熱処理を行う。熱処理は、各々が独立して温度制御可能な上部ヒーター6及び下部ヒーター7によって施される。
【0021】
図2に結晶化温度プロファイルの例を示す。結晶化度をコントロールするには、核形成、核成長のキープ温度を高精度に制御し、積層内の温度偏差を小さく保つ。これにより、結晶化度のバラつきの小さな結晶化ガラスが得られる。その際、平坦度を良好に保つには、結晶化プロセスの冷却1の温度偏差を小さくする事が非常に重要である。積層内の上下の温度を考えた時、放熱が先に進むのは、囲まれていない積層体の上下面である。そのため、最上段に配置されているガラスは、ガラスの上面側が先に冷却され、下面側は遅れて冷却が進む。これにより、その表裏の温度差の影響で基板に反りが生じてしまう。最下段に配置されたガラスも同様である。中央付近に配置されたガラスは、上下面の冷却速度の差が小さいので、このような反りは生じない。つまり、図3に示すように、積層体の上下面に配置されたガラスの平坦度は悪くなるが、中央付近に近づくにつれ、平坦度は良くなっていく。このような現象は、冷却時にガラスが動ける状態、つまりガラス転移点Tg以上の温度域にあるガラスで起こる。熱処理の最大温度とTgの差分が大きなガラスは、冷却管理が重要となるが、その差が少ない従来のようなガラスは、冷却温度管理の必要がない。ただし、現在の市場で求められている、弾性が高く、加工性の良いガラスブランクを得るには、熱処理の最大温度とTgの差分が大きくなる熱処理条件を用いる必要がある。このことから本発明は重要であると言える。
【0022】
本発明は、上記構成1にあるとおり、セッター材を介してそれぞれ積層された複数のガラスブランクの積層体を加熱する加熱工程と、前記加熱工程の後に行われ、前記積層体を冷却する冷却工程とを有する磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法であって、前記冷却工程では、前記積層体の積層方向の温度分布が均一となるように、前記積層体を冷却することを特徴とするものである。
【0023】
ガラスブランク1とセッター2を交互に複数枚積層した状態で、結晶化度をコントロールするには、上記したように、核形成、核成長のキープ温度を高精度に制御する必要がある。積層内で温度偏差が大きくなってしまうと、積層内で結晶化度のバラつきが大きくなってしまう。積層内の温度偏差は、小さければ小さいほど良い。
本発明においては、結晶化度合いを55%以下とすることが好ましい。結晶化度合いが55%を超える場合には、加工性が低下し、低表面粗さと高加工性との両立が困難になるためである。
【0024】
本発明における加熱工程では、積層体をガラスブランクのガラス転移点よりも高い温度まで加熱し、冷却工程では、積層体の積層方向の温度分布が均一となるように、積層体をガラス基板のガラス転移点よりも低い温度まで冷却する一次冷却工程と、該一次冷却工程の後に行われ、冷却速度が一次冷却工程よりも速い二次冷却工程とを含むことが好適である。
そして、上記一次冷却工程は、ガラスブランクのガラス転移点よりも50℃以上低い温度まで積層体を冷却する工程であることが好適である。
【0025】
結晶化プロセスの冷却工程において、積層体内での温度偏差が小さくなるように制御しながら冷却する事で、積層ガラス全てが、低結晶化度の平坦度良好なガラス基板が得られる。温度偏差を小さく管理する範囲は限定されており、特に冷却工程前の熱処理温度から熱処理後のガラス基板のTg−50℃までが重要である。結晶化後のガラス基板のTgで、Tg−50℃までが重要であり、好ましくはTg−80℃である。温度偏差を小さく管理する範囲はおおよそこの範囲に限定される。このTgから80℃を超えた低い範囲の場合、どんなに温度偏差が大きくなっても、ガラスが変形域にはないため、平坦度の悪化が生じにくい。そのため、ガラスとセッターが破損しない範囲で急冷が可能である(上記二次冷却工程)。
【0026】
上記のTg−50℃までの範囲の温度偏差は、5.0℃以下で冷却する事が好ましい。本発明における温度測定は、セッターとセッターの間に挟まれたガラスブランクの外周にK熱電対を接触させ測定した値である。5.0℃以下で冷却する場合、磁気ディスク用に適した平坦度、6μm以下になる。したがって、平坦度の修正のための研削加工を1段とすることができる。より好ましくは、2.5℃以下である。なお、求める平坦度が大きい場合、又は加工工程の簡略化を図らない場合(2段階の研削加工を行う場合)には、必要とする平坦度に合わせて、Tg−50℃までの範囲の温度偏差を例えば8.0℃以下、10℃以下と適時調整すれば良い。
【0027】
温度偏差を小さくしながら冷却を行う際、温度制御を行いながら冷却する必要がある。ヒーターが積層体に対して上下部の片側もしくは、左右に配置してある熱処理炉では、積層物の温度偏差を小さくする事は困難である。そのため、図1に示すように、ヒーターは積層体の上下にそれぞれ設置されている事が望ましく、上下を別々に温度制御する事で、積層物の温度偏差を小さくする事が可能である。また、熱処理炉内に強制的に対流を起こす事で、温度偏差を小さくしながら冷却する事は可能である。
【0028】
また、生産性を考慮すると、結晶化の熱処理を行う熱処理炉は、バッチ式の炉ではなく連続炉が望ましい。その中でも、温度制御に優れたローラーハース炉を用いることが望ましい。
【0029】
また、セッターの平坦度は、概ねガラスの平坦度に転写するので、得たいガラスの平坦度以上の面に仕上げておく必要がある。得たいガラスの平坦度を考慮すると、通常5μm以下であり、好ましくは、3μm以下である。
【0030】
以上のようにして得られる磁気ディスク用ガラスブランクを利用して磁気ディスク用ガラス基板を得ることができる。本発明は、上記本発明に係る磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法によって製造されたガラスブランクに対して、機械加工を施す処理を含むことを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法についても提供するものである。
磁気ディスク用ガラス基板は、通常、主表面研削、端面研磨、主表面研磨、化学強化、等を経て製造される。
【0031】
上記のようにして得られた磁気ディスク用ガラスブランクに対し、寸法精度及び形状精度を向上させるための研削加工処理を行う。この研削加工は、通常両面研削装置を用い、ダイヤモンドペレットやダイヤモンドシート等の硬質の固定砥粒を用いてガラス基板主表面の研削を行う。こうしてガラス基板主表面を研削加工することにより、所定の板厚、平坦度に加工するとともに、所定の表面粗さを得る。
【0032】
研削加工処理の終了後は、端面研磨を行う。例えばブラシ研磨により、端面を所定の鏡面に仕上げる。
次に、高精度な平面を得るための主表面鏡面研磨加工を行う。
ガラス基板の鏡面研磨方法としては、酸化セリウムやコロイダルシリカ等の金属酸化物の研磨材を含有するスラリー(研磨液)を供給しながら、ポリウレタン等のポリシャの研磨パッドを用いて行うのが好適である。高い平滑性を有するガラス基板は、たとえば酸化セリウム系研磨材を用いて研磨した後(第1研磨加工)、さらにコロイダルシリカ砥粒を用いた仕上げ研磨(鏡面研磨)(第2研磨加工)によって得ることが可能である。
【0033】
本発明においては、鏡面研磨加工後のガラス基板の表面は、算術平均表面粗さRaが0.2nm以下、さらに好ましくは0.1nm以下である鏡面とされることが好ましい。なお、本発明において算術平均粗さRaというときは、日本工業規格(JIS)B0601に準拠して算出される粗さのことである。
また、本発明において表面粗さ(上記算術平均粗さRa)は、原子間力顕微鏡(AFM)で測定したときに得られる表面形状の表面粗さとすることが実用上好ましい。
【0034】
本発明においては、化学強化処理を施すことができる。化学強化処理の方法としては、例えば、ガラス転移点の温度を超えない温度領域で、イオン交換を行う低温型イオン交換法などが好ましい。化学強化処理とは、溶融させた化学強化塩とガラス基板とを接触させることにより、化学強化塩中の相対的に大きな原子半径のアルカリ金属元素と、ガラス基板中の相対的に小さな原子半径のアルカリ金属元素とをイオン交換し、ガラス基板の表層に該イオン半径の大きなアルカリ金属元素を浸透させ、ガラス基板の表面に圧縮応力を生じさせる処理のことである。化学強化処理されたガラス基板は耐衝撃性に優れているので、例えばモバイル用途のHDDに搭載するのに特に好ましい。化学強化塩としては、硝酸カリウムや硝酸ナトリウムなどのアルカリ金属硝酸塩を好ましく用いることができる。
以上の工程を経て、磁気ディスク用ガラス基板が得られる。
【0035】
本実施形態におけるガラス基板を構成するガラス(の硝種)は、SiO2を主成分とし、さらにアルミナを含むアルミノシリケートガラスであって、後述する結晶化処理が可能なものを用いることが好ましい。このようなガラスを用いたガラス基板は、表面を鏡面研磨することにより平滑な鏡面に仕上げることができ、また結晶化処理によって強度を飛躍的に高めることができる。化学強化によってさらに強度を上げることもできる。
本実施形態で用いられるガラスの組成は、例えば、
SiO2:35〜65モル%、
Al23:5〜25モル%、
MgO:10〜40モル%、
TiO2:5〜15モル%、
ZrO2:0.5〜5モル%、
23:0.1〜1モル%、である
このとき、上記組成の合計が少なくとも92モル%以上であるガラス組成(第1のガラス組成)が好ましい。このようなガラスに結晶化処理を施すことによって、主結晶がエンスタタイト及びその固溶体の少なくとも一方となる結晶化ガラスとすることができる。
【0036】
また、他のガラス組成の一例は、酸化物基準の質量%で、
SiO2:45.60〜60%、
Al23:7〜20%、
23:1.00以上8%未満、
25:0.50〜7%、
TiO2:1〜15%、
ROの合計量:5〜35%(ただしRはZn及びMg)、である。この場合、CaOの含有量が3.00%以下、BaOの含有量が4%以下であり、PbO、As23およびSb23およびCl−、NO−、SO3−、F−成分を含有しないガラス組成(第2のガラス組成)を用いることも好ましい。
このようなガラスに結晶化処理を施すことによって、主結晶相としてRAl24、R2TiO4(ただしRはZn、Mgから選択される1種類以上)から選ばれる一種以上を含有し、主結晶相の結晶粒径が0.5nm〜20nmの範囲であり、結晶化度が15%以下であり、比重が2.95以下である結晶化ガラスとすることができる。
【0037】
ここで、本発明において、結晶化処理に代えてアニール処理を行う場合、ガラスブランクを構成するガラス(の硝種)は、アモルファスのアルミノシリケートガラスとすることが好ましい。このようなガラス基板は表面を鏡面研磨することにより平滑な鏡面に仕上げることができ、また加工後の強度が良好である。このようなアルミノシリケートガラスとしては、例えば、SiO2 を主成分としてAl23を20重量%以下含むガラスが好ましい。さらに、SiO2 を主成分としてAl23を15重量%以下含むガラスとするとより好ましい。具体的には、SiO2 を62重量%以上75重量%以下、Al23を5重量%以上15重量%以下、Li2 Oを4重量%以上10重量%以下、Na2 Oを4重量%以上12重量%以下、ZrO2を5.5重量%以上15重量%以下、主成分として含有するとともに、Na2O/ZrO2 の重量比が0.5以上2.0以下、Al23 /ZrO2 の重量比が0.4以上2.5以下であるリン酸化物を含まないアモルファスのアルミノシリケートガラスを用いることができる。
【0038】
また、本発明において、結晶化処理に代えてアニール処理を行う場合、次世代の熱アシスト磁気記録用の磁気ディスクに用いられる耐熱性ガラスとしては、例えば、モル%表示にて、SiOを50〜75%、Alを0〜5%、BaOを0〜2%、LiOを0〜3%、ZnOを0〜5%、NaOおよびKOを合計で3〜15%、MgO、CaO、SrOおよびBaOを合計で14〜35%、ZrO、TiO、La、Y、Yb、Ta、NbおよびHfOを合計で2〜9%、含み、モル比[(MgO+CaO)/(MgO+CaO+SrO+BaO)]が0.85〜1の範囲であり、且つモル比[Al/(MgO+CaO)]が0〜0.30の範囲であるガラスを好ましく用いることができる。
また、SiOを56〜75モル%、Alを1〜9モル%、LiO、NaOおよびKOからなる群から選ばれるアルカリ金属酸化物を合計で6〜15モル%、MgO、CaOおよびSrOからなる群から選ばれるアルカリ土類金属酸化物を合計で10〜30モル%、ZrO、TiO、Y、La、Gd、NbおよびTaからなる群から選ばれる酸化物を合計で0%超かつ10モル%以下、含むガラスであってもよい。
本発明において、ガラス組成におけるAlの含有量が15重量%以下であると好ましい。さらには、Alの含有量が5モル%以下であるとなお好ましい。
【0039】
また、本発明は、以上の磁気ディスク用ガラス基板を用いた磁気ディスクの製造方法についても提供する。
磁気ディスクは、本発明による磁気ディスク用ガラス基板の上に少なくとも磁気記録層(磁性層)を形成して製造される。磁性層の材料としては、異方性磁界の大きな六方晶系であるCoCrPt系やCoPt系強磁性合金を用いることができる。磁性層の形成方法としてはスパッタリング法、例えばDCマグネトロンスパッタリング法によりガラス基板の上に磁性層を成膜する方法を用いることが好適である。
また、上記磁気記録層の上に、保護層、潤滑層を形成してもよい。保護層としてはアモルファスの炭素系保護層が好適である。また、潤滑層としては、パーフルオロポリエーテル化合物の主鎖の末端に官能基を有する潤滑剤を用いることができる。
本発明によって得られる磁気ディスク用ガラス基板を利用することにより、信頼性の高い磁気ディスクを得ることができる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
(実施例1)
ダイレクトプレス法により作製したφ80mm×0.8mm厚み(最終的にはφ65mm×0.635mm厚みの材料向け)のガラスブランクを熱処理し、結晶化ガラスを作製した。熱処理は、図1に示すように、セッターとガラスを交互に積層し、最上段に約400gの荷重を負荷した。ガラスを20枚、セッターを21枚使用した。セッターは、平坦度は2μm以下、厚み2mmのSiCを用いた。SiCを用いた理由は、耐熱衝撃性に優れており、耐熱性、熱伝導率も高いため、冷却時の温度制御範囲以降で急冷が可能で、生産性に優位と考えたためである。熱処理炉は、積層内の温度偏差を高精度に制御するために、図1のように上下にヒーターが設置されており、それぞれ独立して制御可能な電気炉を使用した。
【0041】
結晶化条件は、図2に示す温度プロファイルを用い、核形成を770℃で30分行い、昇温2を840℃まで、5℃/minで昇温した。結晶成長を840℃で2時間行った。この時、積層内で結晶化度のバラつきが大きくならないように、積層内の温度偏差が2.5℃以下になるようにした。その後の冷却1で、積層内の温度偏差が2.5℃以下になるように炉内の上下のヒーター温度を調整し、730℃(Tg−50℃)まで冷却した。その後は、ヒーターをオフにして、自然放熱により冷却した。
【0042】
本発明に記されているTgの値は、熱機械分析装置(TMA)を用いて測定した。具体的には、ガラスブランクから4.5mm×20mm(厚みはブランクの厚みのまま)の大きさのガラスを切り出し、上記装置にセットして測定を行った。標準(リファレンス)試料には、石英を用い、昇温は4℃/minで測定を実施した。得られた測定物の膨張曲線から膨張が大きくなる前の線と屈服点に達する手前の線の接線の交点を取り、その交点の温度をTgと定義した。
【0043】
以上のようにして作製した20枚の結晶化ガラスの平坦度を非接触の三次元測定機を用いて測定し、比重計を用いて、比重測定を行った。
磁気ディスク用のガラスブランクのような薄板材料は、シングアラウンド法によるヤング率の測定が困難である。そのため、事前に測定用のサンプルを作製し、種々の結晶化条件で、密度とヤング率の関係についてデータを取得した。この結果、図4に示すように密度とヤング率には、非常に高い相関が確認できた。つまり、薄板材料のヤング率は、密度を測定する事で換算出来る事が分かった。そこで、上記で測定した比重の値をヤング率に換算し、その値を作製した結晶化ガラスのヤング率とした。
【0044】
(実施例2)
実施例1と同様の温度条件で、ガラスブランクを熱処理し、結晶化ガラスを作製した。ただし、冷却1の積層内の温度偏差は、3.5℃になるように調整した。平坦度、比重測定、ヤング率への換算についても、実施例1と同様の方法を用いた。
【0045】
(実施例3)
実施例1と同様の温度条件で、ガラスブランクを熱処理し、結晶化ガラスを作製した。ただし、冷却1の積層内の温度偏差は、5.0℃になるように調整した。平坦度、比重の測定、ヤング率への換算についても、実施例1と同様の方法を用いた。
【0046】
実施例1〜3の平坦度結果は、以下のようになった。
温度偏差2.5℃以下の条件では、平坦度2.5〜4μm
温度偏差3.5℃以下の条件では、平坦度2.5〜5μm
温度偏差5.0℃以下の条件では、平坦度2.5〜6μm
以上のように、温度偏差の最も小さい水準が、最も平坦度バラツキの小さい結果を示した。
【0047】
図5に配置位置(段積み位置)によるガラスブランクの平坦度を示した。同図(a)は実施例1、同図(b)は実施例2、同図(c)は実施例3の結果である。求める平坦度の品質に応じて、冷却時の温度偏差を考えれば良い。
密度とヤング率のばらつきは、密度が2.935±0.008g/cm、ヤング率は、120±1.0GPaと非常にばらつきの小さな結晶化ガラスブランクが得られた。
【0048】
(実施例4)
実施例1の結晶化の温度条件を変更し、ヤング率130GPa、145GPa(これは、本発明で用いたガラスの物性で到達できる最大のヤング率)の結晶化ガラスを作製した。ヤング率130GPaは、核形成を770℃で30分行い、昇温2を850℃まで、5℃/minで昇温した。ヤング率145GPaは、核形成を760℃で4時間行い、昇温2を975℃まで、5℃/minで昇温した。そして、結晶成長を975℃で4時間行った。いずれも、冷却1は、温度偏差が2.5℃以下になる条件を用いた。
【0049】
実施例1と同様に、平坦度、比重を測定し、ヤング率に換算した。平坦度は、130GPa、145GPaともに、全て4.0μm以下となった。ヤング率は、130±1.0GPa、145±0.8GPaと非常にばらつきの小さな結晶化ガラスブランクが得られた。ここで得られたガラスブランクと、実施例1で得られたガラスブランクに加え、結晶化前のガラスブランクを用いて、加工性を確認した。更に、参考例として、磁気ディスク用ガラスブランクとして一般的に使用されているアモルファスガラスも確認した。加工性は、ダイヤモンドペレットによる固定砥粒研削、2段階の研磨工程の計3工程を評価した。
【0050】
以下の表1に各水準のヤング率、密度、結晶化度、各工程の加工レートを示した。表1に示すように、どの加工でもヤング率が高くなるにつれ、加工レートは下がっていく。ヤング率が145GPaまで行ってしまうと加工レートは非常に遅くなり、生産性へ与える影響は非常に大きくなる。それに対し、120GPaは、加工レートは少し落ちるものの従来の結晶化ガラスに比べて、はるかに加工性は改善されている。
【0051】
【表1】
【0052】
(比較例1)
最大までヤング率が上がる熱処理条件(ヤング率145GPa作製時の条件)を用いて、冷却1の温度偏差を制御しないで冷却した時の段積み位置による平坦度の変化を確認した。
核形成を760℃で4時間行い、昇温2ステップを975℃まで、5℃/minで昇温した。結晶成長を975℃で4時間行った。その後の冷却1は、上下ヒーターの温度制御はせずに、900℃までを4℃/minで冷却を行った。その時、積層内の温度偏差は、10℃となっていた。
【0053】
ここで、作製した結晶化ガラスを非接触三次元測定機で、全数測定した。その結果、平坦度は2.5〜7μmとなった。低結晶化度のガラスブランクの場合、このような温度偏差では、ここまで良い平坦度を得ることはできない。つまり、従来の結晶化ガラスでは、冷却時の温度偏差を気にする必要はなかったが、市場ニーズのある低結晶化度のガラスでは、温度偏差を気にしながら冷却していく必要がある。また、従来の高結晶化度のガラスは、結晶粒サイズが大きい事や、加工時の結晶部と非結晶部での研磨レート差の影響で、低粗さにする事が容易ではない。これは、従来の結晶化ガラスが、磁気ディスク用ガラスとして適していない理由の一つである。
【0054】
(比較例2)
実施例1と同様の温度条件で、ガラスブランクを熱処理し、結晶化ガラスを作製した。ただし、冷却1の積層内の温度偏差は、8℃、10℃になるように調整した。ここで、作製した結晶化ガラスを非接触三次元測定機で、全数測定した。その結果を図6に示す。同図(a)に示す温度偏差8℃条件で処理したガラスの平坦度は2.5〜13μmとなった。また、同図(b)に示す温度偏差10℃条件で処理したガラスは、平坦度は2.5〜16μmとなった。低結晶化度のガラスブランクの場合、冷却1の積層内の温度偏差に依存して、平坦度バラツキが大きくなると言える。
【0055】
(実施例5)
アモルファスガラスでも平坦度のばらつきを抑制できるか確認するために、実施例1から3と同様の実験を行った。熱処理は、図1と同様にして行い、セッター、電気炉は実施例1と同様のものを用いた。実験に用いたガラスは、磁気ディスク用ガラスブランクに使用されているTg=500℃のアモルファスガラス、φ80mm×0.90mm厚み材を用いた。熱処理条件は、580℃まで1時間で昇温、580℃で1時間保持し、平坦度を修正した。その後の冷却工程おける積層内の温度偏差が2.5℃、3.5℃、5.0℃となるように調整しながら、450℃(Tg−50℃)まで冷却し、その後は、自然放熱で急冷した。得られたガラスブランクを非接触三次元測定機にて、平坦度を測定した。
【0056】
平坦度測定の結果は、以下のようになった。
温度偏差2.5℃以下の条件では、平坦度2.5〜4μm
温度偏差3.5℃以下の条件では、平坦度2.5〜5μm
温度偏差5.0℃以下の条件では、平坦度2.5〜6μm
以上のとおり、実施例1の低結晶化度の結晶化ガラス作製時と同様に、温度偏差の最も小さい水準が、最も平坦度バラツキの小さい結果を示した。冷却時、積層内の温度偏差が大きくなるにつれ、平坦度のバラツキが大きくなっている。求める平坦度の品質に応じて、冷却時の温度偏差を考えれば良い。
【0057】
(比較例3)
実施例5と同様の温度条件で、アモルファスガラスを熱処理し、平坦度を修正した。ただし、冷却1の積層内の温度偏差は、8℃、10℃になるように、それぞれ調整した。熱処理後のガラスを非接触三次元測定機で、全数測定した。温度偏差8℃条件で処理したガラスの平坦度は2.5〜13μm、温度偏差10℃条件で処理したガラスは、2.5〜16μmとなった。低結晶化度のガラスブランク同様にアモルファスガラスでも、冷却1の積層内の温度偏差に依存して、平坦度バラツキが大きくなる。
【0058】
(実施例6)
3.5インチ用磁気ディスク用ガラス基板向けに、φ100mm×0.95mm厚み材を用いて、実施例1と同様の温度条件で、ガラスブランクを熱処理し、結晶化ガラスを作製した。この時、冷却1の積層内の温度偏差は、2.5℃、5.0℃、10℃となるように調整し、3水準評価した。得られたガラスの平坦度を測定した。
【0059】
平坦度測定結果は、以下のようになった。
温度偏差2.5℃以下の条件では、平坦度2.5〜4μm
温度偏差3.5℃以下の条件では、平坦度2.5〜5μm
温度偏差5.0℃以下の条件では、平坦度2.5〜6μm
実施例1〜3と同様に、ガラスブランクの外形サイズに関わらず、温度偏差を適正な範囲に制御する事で、ガラス配置位置による平坦度バラツキの少ないガラスブランクを得る事ができる。
【符号の説明】
【0060】
1 ガラスブランク
2 セッター
3 荷重
4 台座
5 ローラー
6 上部ヒーター
7 下部ヒーター
図1
図2
図3
図4
図5
図6