【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者名 一般社団法人日本機械学会 刊行物名 ダイナミクス アンド デザイン カンファレンス 2013 および 第13回「運動と振動の制御」シンポジウム USB論文集 発行日 平成25年8月26日 [刊行物等] 集会名 ダイナミクス アンド デザイン カンファレンス 2013 および 第13回「運動と振動の制御」シンポジウム 開催日 平成25年8月28日 [刊行物等] ウェブサイトのアドレス http://papers.sae.org/2013−01−2410/ 掲載日 平成25年9月24日 [刊行物等] 集会名 エスエーイー 2013 コマーシャル ビークル エンジニアリング コングレス 開催日 平成25年10月1日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の可動部材と、これら可動部材をそれぞれ動作させる複数の流体圧シリンダと、いずれかの流体圧シリンダの動力を最も先端側の可動部材に伝達するリンクとをそれぞれ関節部により連結した作業装置の最も先端側の可動部材を荷の積載部とするとともに、この積載部に積載する荷によりこの積載部に加わる外力を算出する積載部の外力算出方法であって、
各可動部材についての動力学方程式をそれぞれ導出し、
これら動力学方程式を仮想仕事の原理に基づく各流体圧シリンダの仕事の式に用いて各流体圧シリンダについての運動方程式をそれぞれ導出し、
これら運動方程式を各流体圧シリンダに関する検出値に基づいて解くことで積載部に外力が作用しないときのシリンダ発生力を算出し、
このシリンダ発生力と、実測のシリンダ発生力との差に基づいて積載部に加わる外力を算出する
ことを特徴とした積載部の外力算出方法。
複数の可動部材と、これら可動部材をそれぞれ動作させる複数の流体圧シリンダと、いずれかの流体圧シリンダの動力を最も先端側の可動部材に伝達するリンクとをそれぞれ関節部により連結した作業装置の最も先端側の可動部材を荷の積載部とするとともに、この積載部に積載する荷によりこの積載部に加わる外力を算出する積載部の外力算出装置であって、
各可動部材についての動力学方程式をそれぞれ導出する第1方程式導出手段と、
この第1方程式導出手段により導出した動力学方程式を仮想仕事の原理に基づく各流体圧シリンダの仕事の式に用いて各流体圧シリンダについての運動方程式をそれぞれ導出する第2方程式導出手段と、
この第2方程式導出手段により導出した運動方程式を各流体圧シリンダに関する検出値に基づいて解くことで積載部に外力が作用しないときのシリンダ発生力を算出する発生力算出手段と、
各流体圧シリンダのシリンダ発生力を実測する検出手段と、
発生力算出手段で算出したシリンダ発生力と、検出手段で実測したシリンダ発生力との差に基づいて積載部に加わる外力を算出する外力算出手段とを備えた
ことを特徴とした積載部の外力算出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の方法では、各シリンダの質量、およびバケットシリンダ先端部とスティックおよびバケットとの間に連結される各リンクの質量をそれぞれ考慮に入れていないため、算出精度が良好とは言えない。
【0006】
特に、この方法では、静止時と比較して慣性力の影響がさらに大きい動作時に適用した場合の算出精度に課題が生じ、また、機体質量(機体サイズ)が大きい大型の作業機械の場合には、考慮に入れない各シリンダおよび各リンクの質量および慣性モーメントがさらに大きくなり、大型であるほど算出精度が低下することとなる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、機体サイズ、および静止時あるいは動作時に拘らず、積載する荷により積載部に加わる外力を精度よく算出できる積載部の外力算出方法およびその装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、複数の可動部材と、これら可動部材をそれぞれ動作させる複数の流体圧シリンダと、いずれかの流体圧シリンダの動力を最も先端側の可動部材に伝達するリンクとをそれぞれ関節部により連結した作業装置の最も先端側の可動部材を荷の積載部とするとともに、この積載部に積載する荷によりこの積載部に加わる外力を算出する積載部の外力算出方法であって、各可動部材についての動力学方程式をそれぞれ導出し、これら動力学方程式を仮想仕事の原理に基づく各流体圧シリンダの仕事の式に用いて各流体圧シリンダについての運動方程式をそれぞれ導出し、これら運動方程式を各流体圧シリンダに関する検出値に基づいて解くことで積載部に外力が作用しないときのシリンダ発生力を算出し、このシリンダ発生力と、実測のシリンダ発生力との差に基づいて積載部に加わる外力を算出するものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の積載部の外力算出方法において、各可動部材についての動力学方程式を、ニュートン・オイラー法により導出するものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、複数の可動部材と、これら可動部材をそれぞれ動作させる複数の流体圧シリンダと、いずれかの流体圧シリンダの動力を最も先端側の可動部材に伝達するリンクとをそれぞれ関節部により連結した作業装置の最も先端側の可動部材を荷の積載部とするとともに、この積載部に積載する荷によりこの積載部に加わる外力を算出する積載部の外力算出装置であって、各可動部材についての動力学方程式をそれぞれ導出する第1方程式導出手段と、この第1方程式導出手段により導出した動力学方程式を仮想仕事の原理に基づく各流体圧シリンダの仕事の式に用いて各流体圧シリンダについての運動方程式をそれぞれ導出する第2方程式導出手段と、この第2方程式導出手段により導出した運動方程式を各流体圧シリンダに関する検出値に基づいて解くことで積載部に外力が作用しないときのシリンダ発生力を算出する発生力算出手段と、各流体圧シリンダのシリンダ発生力を実測する検出手段と、発生力算出手段で算出したシリンダ発生力と、検出手段で実測したシリンダ発生力との差に基づいて積載部に加わる外力を算出する外力算出手段とを備えたものである。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の積載部の外力算出装置において、第1方程式導出手段は、各可動部材についての動力学方程式を、ニュートン・オイラー法により導出するものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、各可動部材についてそれぞれ導出した動力学方程式を仮想仕事の原理に基づく各流体圧シリンダの仕事の式に用いて各流体圧シリンダについての運動方程式をそれぞれ導出し、これら運動方程式を各流体圧シリンダに関する検出値に基づいて解くことで積載部に外力が作用しないときのシリンダ発生力を算出するとともに、このシリンダ発生力と実測のシリンダ発生力との差に基づいて積載部に加わる外力を算出することにより、全ての可動部材、関節部および流体圧シリンダを考慮して積載部に加わる外力を算出できる。したがって、機体サイズ、および静止時あるいは動作時に拘らず、積載する荷により積載部に加わる外力を精度よく算出できる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、各可動部材についての動力学方程式を、ニュートン・オイラー法により導出することで、演算量を抑制でき、高速処理が可能となる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、各可動部材についてそれぞれ導出した動力学方程式を仮想仕事の原理に基づく各流体圧シリンダの仕事の式に用いて各流体圧シリンダについての運動方程式をそれぞれ導出し、これら運動方程式を各流体圧シリンダに関する検出値に基づいて解くことで積載部に外力が作用しないときのシリンダ発生力を算出するとともに、このシリンダ発生力と実測のシリンダ発生力との差に基づいて積載部に加わる外力を算出することにより、全ての可動部材、関節部および流体圧シリンダを考慮して積載部に加わる外力を算出できる。したがって、機体サイズ、および静止時あるいは動作時に拘らず、積載する荷により積載部に加わる外力を精度よく算出できる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、各可動部材についての動力学方程式を、ニュートン・オイラー法により導出することで、演算量を抑制でき、高速処理が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、
図1乃至
図3に示された一実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図2は、作業機械の構成および検出手段の取付位置を示し、
図3は、その外力算出装置の構成を示す。
【0019】
図2は、例えば油圧ショベルなどの作業機械を示し、下部走行体1に上部旋回体2が水平旋回自在に連結され、この上部旋回体2に作業装置としてのフロント作業装置3が上下方向揺動自在に取付けられ、このフロント作業装置3の最も先端側には可動部材としての荷の積載部であるバケット4が装着されている。このフロント作業装置3は、バケット4により掘削した土などの荷の荷重(ペイロード)によりバケット4に加わる外力(以下、バケット反力という)を演算しながらダンプトラックなどの運搬車へ荷を積載作業する機能を備えている。
【0020】
フロント作業装置3は、上部旋回体2の図示されないブラケットに可動部材としてのブーム5のフート部が上下方向回動自在に取付けられ、このブーム5の先端部に可動部材としてのスティック(アーム)6が回動自在に取付けられ、このスティック6の先端部にバケット4が回動自在に取付けられ、ブーム5は、流体圧シリンダとしてのブームシリンダ7により作動され、スティック6は、流体圧シリンダとしてのスティックシリンダ(アームシリンダ)8により作動され、バケット4は、流体圧シリンダとしてのバケットシリンダ9およびリンク10,11により作動される。
【0021】
ブーム5、スティック6およびバケット4は、関節部としてのピン12,13,14により順次連結され、さらに、リンク10,11は関節部としてのピン15,16によりスティック6およびバケット4に連結され、バケットシリンダ9の動力をバケット4に伝達している。
【0022】
さらに、ブームシリンダ7は、基端であるヘッドが関節部としてのピン17aにより上部旋回体2に連結され、先端であるロッドが関節部としてのピン17bによりブーム5下部に連結されている。また、スティックシリンダ8は、基端であるヘッドが関節部としてのピン18aによりブーム5上部に連結され、先端であるロッドが関節部としてのピン18bによりスティック6に連結されている。そして、バケットシリンダ9は、基端であるヘッドが関節部としてのピン19aによりスティック6上部に連結され、先端であるロッドが関節部としてのピン19bによりリンク10,11に連結されている。
【0023】
したがって、ブーム5の基端がピン(ブームフートピン)12を介して上部旋回体2に軸連結され、ブーム5の先端とスティック6の基端とがピン(ブーム先端ピン)13を介して互いに軸連結され、スティック6の先端とバケット4の基端とがピン(アーム先端ピン)14を介して互いに軸連結されているとともに、ブームシリンダ7のヘッドがピン17aを介して上部旋回体2に軸連結され、ブームシリンダ7のロッドおよびブーム5がピン17bを介して互いに軸連結され、スティックシリンダ8のヘッドおよびブーム5がピン18aを介して互いに軸連結され、スティックシリンダ8のロッドおよびスティック6がピン18bを介して互いに軸連結され、バケットシリンダ9のヘッドおよびスティック6がピン19aを介して互いに軸連結され、バケットシリンダ9のロッドおよびリンク10,11の基端がピン19bを介して互いに軸連結され、リンク10の先端およびスティック6の先端上部がピン15を介して互いに軸連結され、かつ、リンク11の先端およびバケット4の背面がピン16を介して互いに軸連結されている。
【0024】
このフロント作業装置3において、各シリンダ7,8,9には、それらのシリンダ変位(シリンダ長さ)を検出する変位センサ21,22,23と、それらの発生力(シリンダ圧)を検出する圧力センサ25,26,27とがそれぞれ取付けられている。変位センサ21,22,23は、例えば各シリンダ7,8,9の変位を、水平方向(X方向)および垂直方向(Y方向)にそれぞれ検出する。また、圧力センサ25,26,27は、例えば各シリンダ7,8,9のヘッド圧およびロッド圧を検出する。そして、これらセンサ21〜27により、検出手段29が構成されている。
【0025】
図3に示されるように、検出手段29(センサ21〜27)は、コントローラ31の入力側に接続され、この検出手段29の検出信号は、コントローラ31に入力される。
【0026】
このコントローラ31は、中央処理装置(CPU)および記憶装置(各種メモリ)を備え、演算機能を有する。そして、このコントローラ31は、オペレータからの入力操作を受ける図示しない操作レバーやインターフェースと接続されているとともに、後述する第1方程式導出工程を行う第1方程式導出手段、第2方程式導出工程を行う第2方程式導出手段、第1算出工程を行う第1算出手段、第2算出工程を行う第2算出手段、発生力算出工程を行う発生力算出手段および外力算出工程を行う外力算出手段のそれぞれの機能を有している。なお、このコントローラ31の出力側には、前記検出信号から演算して求めたバケット反力を表示するモニタなどの外力表示手段が接続されていてもよい。
【0027】
次に、この作業機械に用いられた外力算出方法の原理を説明する。
【0028】
フロント作業装置3を駆動するためのシリンダ7,8,9のシリンダ発生力(ベクトル)τ
dは、バケット反力fが作用しないときのフロント作業装置3の慣性力などの影響により生じる動的なシリンダ発生力(ベクトル)τ
d1と、バケット反力fの影響による静的なシリンダ発生力(ベクトル)τ
Sとの和である(τ
d=τ
d1+τ
S)。そこで、本実施の形態では、シリンダ7,8,9のシリンダ発生力τ
dを圧力センサ25,26,27により検出(実測)するとともに、動的なシリンダ発生力τ
d1を、ニュートン・オイラー法および仮想仕事の原理を用いて算出し、これらの差である静的なシリンダ発生力τ
Sからバケット反力fを求める。
【0029】
具体的に、この外力算出方法のコントローラ31による処理手順を、
図1に示されたフローチャートも参照しながら説明する。なお、図中の丸数字は、ステップ番号を表わす。
【0030】
まず、検出手段29の変位センサ21,22,23および圧力センサ25,26,27により検出したフロント作業装置3の各シリンダ7,8,9のシリンダ変位q
dおよびシリンダ発生力(ベクトル)τ
dを読込む(ステップ1(検出工程))。なお、シリンダ発生力τ
dについては、後のステップで演算に必要なタイミングにおいて読込むこともできる。
【0031】
次いで、これら読込んだシリンダ変位q
dおよびシリンダ発生力τ
dに対してフィルタ処理を行い、不要なノイズ成分を除去する(ステップ2(フィルタリング工程))。
【0032】
さらに、コントローラ31は、ステップ2を経たシリンダ変位q
dを時間微分して、シリンダ7,8,9の速度v
d(=d(q
d)/dt)および加速度a
d(=d
2(q
d)/dt
2)を算出する(ステップ3(第1算出工程))。
【0033】
この後、各ピン12,13,14,15,16,17a,17b,18a,18b,19a,19bのそれぞれの変位q
a、角速度ω
aおよび角加速度α
aを算出する(ステップ4(第2算出工程))。このとき、変位q
aは、ステップ3で演算したシリンダ変位q
dの関数(q
a=q
a(q
d))、角速度ω
aはステップ3で演算したシリンダ速度v
dの関数(ω
a=Qv
d)、角加速度α
aはステップ3で演算したシリンダ速度v
dおよびシリンダ加速度a
dの関数(α
a=Qa
d+(dQ/dt)v
d)として演算される。ここで、Qはヤコビ行列(Q=∂q
a/∂q
d)である。
【0034】
そして、このステップ4で演算した変位q
a、角速度ω
aおよび角加速度α
aに基づき、全ての可動部材であるブーム5、スティック6、バケット4(および上部旋回体2)、およびシリンダ7,8,9、リンク10,11のそれぞれについての動力学方程式を導出する(ステップ5(第1方程式導出工程))。これら動力学方程式を導出する際には、ピン15,16,17b,18b,19bにおいては、拘束が存在せずモーメントが働かない(仮定1)、および、ピン12,13,14,17a,18a,19a,19bが仮想的なアクチュエータを有する(仮定2)との各仮定の下で、ニュートン・オイラー法を用いて動力学方程式をそれぞれ構築する。このとき、ピン12,13,14,17a,18a,18b,19a,19bでの仮想的なアクチュエータの発生力とシリンダの力(ベクトル)τ
aは、
τ
a=M(q
a)α
a+h(q
a,ω
a)+g(q
a) …(数式1)
と表せる。
【0035】
ここで、M(q
a)は11×11の正則対称行列である慣性行列(質量行列)であり、各ピン12,13,14,15,16,17a,17b,18a,18b,19a,19bの加速度によりそのピン12,13,14,15,16,17a,17b,18a,18b,19a,19b自体に発生するトルクならびに他のピン12,13,14,15,16,17a,17b,18a,18b,19a,19bの加速度によって発生する干渉トルクを示す。また、h(q
a,ω
a)は11×1のベクトルであり、遠心力およびコリオリ力などの、各ピン12,13,14,15,16,17a,17b,18a,18b,19a,19bの速度により生じる遠心力およびコリオリ力の影響で生じるトルクを示す。そして、g(q
a)は11×1の重力ベクトルであり、重力加速度の影響により発生するトルクを示す。これらM(q
a)、h(q
a,ω
a)およびg(q
a)は、それぞれ機構パラメータと各ピン12,13,14,15,16,17a,17b,18a,18b,19a,19bの位置および速度から算出できる。機構パラメータとは、各ピン12,13,14,15,16,17a,17b,18a,18b,19a,19bに接続される各可動部材、すなわちブーム5、スティック6、リンク10,11、バケット4(および上部旋回体2)、および、シリンダ7,8,9のそれぞれの質量(重量)、重心位置、慣性テンソル(慣性モーメント(イナーシャ))および長さを含む。これらのパラメータは、フロント作業装置3の機構やブーム5、スティック6、リンク10,11、バケット4(および上部旋回体2)、および、シリンダ7,8,9の形状や材質などに基づいて予め求めておくことが可能な既知の固定値であり、コントローラ31の記憶装置などに予め記憶しておくことができる。そして、これらの値に基づいたM(q
a)、h(q
a,ω
a)およびg(q
a)の算出方法は既知であるため、説明を省略する。
【0036】
続いて、ステップ5で算出した各動力学方程式を用いて、各シリンダ7,8,9の運動方程式を導出する(ステップ6(第2方程式導出工程))。このとき、まず、仮想仕事の原理に基づいて、シリンダ7,8,9およびステップ5で仮定した仮想的なアクチュエータのそれぞれの仕事の式を考える。すなわち、シリンダ7,8,9および仮想的なアクチュエータについては、ピン12,13,14,15,16,17a,17b,18a,18b,19a,19bの位置での仕事がそれぞれ0であるから、シリンダ7,8,9のそれぞれのシリンダ発生力(ベクトル)τ
d1および仮想的なアクチュエータの発生力τ
aについて、微小時間Δtにおいて、
τ
d1TΔtv
d=0 …(数式2)
τ
aTΔtω
a=0 …(数式3)
がそれぞれ成り立つ。ここで、ステップ4で算出したように、ω
a=Qv
dであるから、数式3に代入すると、
τ
aTQΔtv
d=0 …(数式4)
となる。したがって、数式2および数式4より、
τ
d1TΔtv
d=τ
aTQΔtv
d …(数式5)
となり、この数式5から、
τ
d1=Q
Tτ
a …(数式6)
が導かれる。そして、この数式6を、ステップ5で導出した動力学方程式(数式1)に代入して整理すると、運動方程式(動特性方程式)
τ
d1=Q
T{M(q
a)α
a+h(q
a,ω
a)+g(q
a)} …(数式7)
が導かれる。
【0037】
このように、ステップ6で導出した各運動方程式(数式7)は、ピン12,13,14,15,16,17a,17b,18a,18b,19a,19bの変位q
a、角速度ω
aおよび角加速度α
aの関数であり、これら変位q
a、角速度ω
aおよび角加速度α
aはシリンダ7,8,9のシリンダ変位q
d、速度v
dおよび加速度a
dの関数であるから、上記各運動方程式は、シリンダ7,8,9に関する検出値であるこれらシリンダ変位q
d、速度v
dおよび加速度a
dが既知であればそれぞれ解くことができる(逆動力学計算ができる)。そこで、上記各運動方程式を解くことで、バケット反力fが作用しないときの動的なシリンダ発生力τ
d1を算出する(ステップ7(発生力算出工程))。
【0038】
そして、このステップ7で算出したシリンダ発生力τ
d1と、ステップ1で検出手段29により実測したシリンダ発生力τ
d(ステップ2でフィルタリングされたシリンダ発生力τ
d)との差(τ
d−τ
d1)に基づいて、バケット反力fを算出する(ステップ8(外力算出工程))。このステップ8では、まず、シリンダ7,8,9の静的なシリンダ発生力τ
Sに対して仮想仕事の原理に基づいて仕事の式を考える。シリンダ7,8,9のシリンダ発生力τ
Sと、バケット反力fの仕事がそれぞれ0であるから、バケット4の先端の位置ベクトルをq
Eとすると、微小時間Δtにおいて、
τ
STΔtv
d=0 …(数式8)
f
TΔt(dq
E/dt)=0 …(数式9)
がそれぞれ成り立つ。ここで、バケット4の先端の位置ベクトルq
Eは、全てのピン12,13,14,15,16,17a,17b,18a,18b,19a,19bの変位q
aの関数(q
E=q
E(q
a))であるから、この位置ベクトルq
Eの全微分dq
E/dtは、ヤコビアンをJとすると、
dq
E/dt=Jdq
a/dt=Jω
a …(数式10)
となる。また、角速度ω
aについては、ステップ4で算出したように、ω
a=Qv
dであるから、この関係を数式10に代入すると、
dq
E/dt=JQv
d …(数式11)
となる。そこで、この数式11、数式8、数式9により、
τ
STΔtv
d=f
TΔt(dq
E/dt)=f
T(JQ)Δtv
d …(数式12)
となり、この数式12を整理すると、
f={(JQ)
T}
-1τ
S …(数式13)
が導かれる。ここで、τ
d=τ
d1+τ
Sであるから、
τ
S=τ
d−τ
d1 …(数式14)
となり、この数式14を数式13に代入すると、
f={(JQ)
T}
-1(τ
d−τ
d1)=(JQ)
-T[τ
d−Q
T{M(q
a)α
a+h(q
a,ω
a)+g(q
a)}] …(数式15)
となる。
【0039】
したがって、数式15に対して、ステップ7で求めた動的なシリンダ発生力τ
d1と、ステップ1で実測した最も先端側の流体圧シリンダであるバケットシリンダ9のシリンダ発生力τ
dとの差(τ
d−τ
d1)を代入して、この数式15を解くことにより、求めるべきバケット反力fが算出される。
【0040】
そして、このステップ8で算出されたバケット反力のバケット4による掘削終了後の所定時間、例えば1〜2秒での平均値を、バケット反力であると推定する(ステップ9(外力推定工程))。
【0041】
なお、推定したバケット反力に基づき、コントローラ31は所定の制御をする。例えば、コントローラ31は、バケット反力を記憶(格納)したり、外力表示手段によりバケット反力を表示したり、バケット反力に応じてフロント作業装置3(シリンダ7,8,9)の動作を制御したりできる。
【0042】
このように、全ての可動部材であるブーム5、スティック6、バケット4(および上部旋回体2)、およびシリンダ7,8,9、リンク10,11についてそれぞれ導出した動力学方程式を仮想仕事の原理に基づく各シリンダ7,8,9の仕事の式に用いて各シリンダ7,8,9についての運動方程式をそれぞれ導出し、これら運動方程式を各シリンダ7,8,9に関する検出値に基づいて解くことでバケット4に外力が作用しないときのシリンダ発生力τ
d1を算出するとともに、このシリンダ発生力τ
d1と検出手段29で実測したシリンダ発生力τ
dとの差に基づいてバケット4に加わる外力(バケット反力)を算出することにより、フロント作業装置3を構成する全ての可動部材であるブーム5、スティック6、バケット4、およびリンク10,11と、シリンダ7,8,9の質量(重量)や慣性モーメント(イナーシャ)などを予め考慮に入れた上で、フロント作業装置3の姿勢、各シリンダ7,8,9のシリンダ発生力(シリンダ推力)、フロント作業装置3の質量(重量)および慣性モーメントからバケット4に加わる外力を算出できる。したがって、機体サイズ、および静止時あるいは動作時に拘らず、すなわち、静止時と動作時とを区別することなく、積載する荷の荷重(ペイロード)によりバケット4に加わる外力(バケット反力)を精度よく算出できる。しかも、シリンダ7,8,9の速度が一定(加速度が0)でなくても、バケット反力を算出できる。
【0043】
また、コントローラ31は、第1方程式導出工程においてニュートン・オイラー法を用いて全ての可動部材であるブーム5、スティック6、バケット4(および上部旋回体2)、およびシリンダ7,8,9、リンク10,11についての動力学方程式をそれぞれ導出するため、他の方法を用いる場合と比較して演算量を抑制でき、高速処理が可能となる。
【0044】
また、角度センサなどを用いることなく、変位センサ21,22,23により実測したシリンダ変位のみを用いてピン12,13,14,15,16,17a,17b,18a,18b,19a,19bのそれぞれの変位、角速度および角加速度などを算出できるので、検出手段29の構成をより簡略化でき、作業機械をより安価に構成できる。
【0045】
そして、フロント作業装置3の慣性力などの影響により生じる動的なシリンダ発生力τ
d1と、外力の影響によるシリンダ発生力τ
Sとのそれぞれに対して仮想仕事の原理を用いて式を導出しているので、多数の可動部材(ブーム5、スティック6およびバケット4)およびシリンダ(シリンダ7,8,9)を連結した複雑な構造のフロント作業装置3においても式を導出でき、これらの式に基づいてバケット反力を確実に算出できる。
【0046】
すなわち、本実施の形態では、ニュートン・オイラー法と、仮想仕事の原理とをそれぞれ用いて運動方程式を導出しているので、必要以上に複雑な演算をすることなくバケット反力を確実に算出できる。
【0047】
なお、図示された実施の形態では、ブーム5、スティック6、バケット4の3つの可動部材を関節部(ピン12,13,14)により軸連結したフロント作業装置3について説明したが、2つ、あるいは4つ以上の可動部材を関節部により連結したフロント作業装置3としてもよい。
【0048】
また、上記作業機械では、下部走行体1に対して上部旋回体2を回動可能に軸支しているため、例えば下部走行体1および上部旋回体2をそれぞれ可動部材とみなし、これら下部走行体1と上部旋回体2とを接続する旋回軸受を関節部とみなして、上記の式に含めてバケット反力を算出することで、さらに精度を向上することもできる。
【0049】
さらに、作業機械として、油圧ショベルを例に挙げたが、例えばローダなどの作業機械に対しても好適に用いることができる。
【0050】
また、バケット反力の推定は、作業機械の運転時に常時行ってもよいし、オペレータからの指令があったときなど、適宜の所定条件下において、所定時間のみ行ってもよい。
【0051】
そして、上記の各工程をコントローラ31によりそれぞれ実行されるステップとしたプログラムを構成することもでき、そのプログラムは、例えば光学ディスクなどの記憶媒体に記憶してもよい。