特許第6238296号(P6238296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238296
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】シールド掘進機
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/12 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   E21D9/12 J
   E21D9/12 K
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-89766(P2014-89766)
(22)【出願日】2014年4月24日
(65)【公開番号】特開2015-209640(P2015-209640A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(72)【発明者】
【氏名】庄村 典生
(72)【発明者】
【氏名】戸崎 雅之
(72)【発明者】
【氏名】桃坂 利彦
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−232194(JP,A)
【文献】 実開昭59−089198(JP,U)
【文献】 実開昭59−116499(JP,U)
【文献】 米国特許第04848963(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動されるスクリューと、該スクリューを収容する略円筒状のケーシングと、からなるスクリューコンベヤを備え、掘削した土砂を該スクリューコンベヤで排土しながら掘進を行うシールド掘進機において、
前記ケーシングには、略円筒状の部材(以下、“筒状部材”とする)が摺動自在となる状態で外嵌され、
該筒状部材には貫通孔(以下、“筒側貫通孔”とする)が形成され、
前記ケーシングには、前記筒状部材の摺動位置に応じて前記筒側貫通孔に一致するように貫通孔(以下、“ケーシング側貫通孔”とする)が形成され、
削岩機のビットを挿入可能なビット挿入口を有する蓋部材が、前記筒側貫通孔を閉塞するように前記筒状部材に取り付けられ、
該削岩機のビットが、前記ビット挿入口、前記筒側貫通孔及び前記ケーシング側貫通孔を通って前記ケーシングの内部に挿入され得るように構成された、
ことを特徴とするシールド掘進機。
【請求項2】
前記蓋部材には、前記ケーシングに近づくほど幅広となるテーパー状の孔部が設けられ、
該蓋部材において前記ビットを支持する部分が、回転可能なボールジョイントであり、
該ビットは、前記テーパー状の孔部の内部で揺動できるように構成された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシールド掘進機。
【請求項3】
前記筒状部材は、前記ケーシングの長手方向に沿って摺動自在となるような状態で該ケーシングに外嵌された、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシールド掘進機。
【請求項4】
前記筒状部材は、前記ケーシングの周方向に摺動できるように該ケーシングに回転自在となる状態で外嵌された、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシールド掘進機。
【請求項5】
前記筒状部材が配置される位置は、前記ケーシングの前端部近傍である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシールド掘進機。
【請求項6】
前記ケーシング側貫通孔は、前記ケーシングの周方向に沿って複数形成され、
前記筒側貫通孔は、少なくとも一つ形成され、
該ケーシング側貫通孔及び該筒側貫通孔は、複数のケーシング側貫通孔の内の一つのケーシング側貫通孔が前記筒側貫通孔に一致している場合に、他のケーシング側貫通孔の少なくとも一つのケーシング側貫通孔が前記筒状部材によって閉塞された状態となる位置に形成された、
ことを特徴とする請求項4に記載のシールド掘進機。
【請求項7】
2つの筒側貫通孔を“第1筒側貫通孔”“第2筒側貫通孔”とし、2つのケーシング側貫通孔を“第1ケーシング側貫通孔”“第2ケーシング側貫通孔”とした場合に、
前記筒状部材が所定の回転位置にある場合には前記第1筒側貫通孔と前記第1ケーシング側貫通孔とが一致すると共に前記第2筒側貫通孔と前記第2ケーシング側貫通孔とが一致せず、前記筒状部材が別の回転位置にある場合には前記第2筒側貫通孔と前記第2ケーシング側貫通孔とが一致すると共に前記第1筒側貫通孔と前記第1ケーシング側貫通孔とが一致しないような位置に、各貫通孔が形成された、
ことを特徴とする請求項6に記載のシールド掘進機。
【請求項8】
前記ケーシング側貫通孔は、前記ケーシングの円筒の上半分の部分に形成され、
該ケーシング側貫通孔と前記筒側貫通孔とが一致された場合にこれらの貫通孔を通って土砂が入り込みにくいように構成された、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシールド掘進機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削した土砂をスクリューコンベヤで排土しながら掘進を行うシールド掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルを掘削する際にシールド掘進機が使用されており、泥土圧式や泥水式などの様々な構造のものが提案されている。
【0003】
図7は、泥土圧式のシールド掘進機の従来構造の一例を示す断面図であり、図中の符号402は、掘削した土砂を排土するためのスクリューコンベヤを示している。
【0004】
ところで、シールド掘進機による掘進時には、想定外の大きさの礫Qが前記スクリューコンベヤ402の前端開口部(土砂取込口)を塞いでしまうことがある。そのような礫Qを破砕するため、同図に符号M1で示すように削岩機を前記スクリューコンベヤ402内に挿入して該礫Qを破砕することが行われていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】島豊行、外3名,「気泡シールド工法による玉石混じり砂礫層の掘進」,土木学会第63回年次学術講演会,平成20年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図に示す構造の削岩機M1は、外筒駆動方式の軸を持たないスクリュー(いわゆるリボン式のもの)でなければ使用できず、軸を持つスクリューや軸駆動方式のリボンスクリューには使用できないという問題があった。
【0007】
また、上述のような削岩機M1を使用する場合は、スクリューコンベヤ402のゲートを開けなければならず、その作業が煩雑になってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上述の問題を解消することのできるシールド掘進機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、図1乃至図3に例示するものであって、回転駆動されるスクリュー(20)と、該スクリュー(20)を収容する略円筒状のケーシング(21)と、からなるスクリューコンベヤ(2)を備え、掘削した土砂を該スクリューコンベヤ(2)で排土しながら掘進を行うシールド掘進機(1)において、
前記ケーシング(21)には、略円筒状の部材(符号22参照。以下、“筒状部材”とする)が摺動自在となる状態で外嵌され、
該筒状部材(22)には貫通孔(図3(a) (b) の符号22a,22b参照。以下、“筒側貫通孔”とする)が形成され、
前記ケーシング(21)には、前記筒状部材(22)の摺動位置に応じて前記筒側貫通孔(22a及び/又は22b)に一致するように貫通孔(符号21a,21b参照。以下、“ケーシング側貫通孔”とする)が形成され、
削岩機(M)のビット(P)を挿入可能なビット挿入口(図3(a) の符号23Aa,23Ba参照)を有する蓋部材(23A,23B)が、前記筒側貫通孔(22a,22b)を閉塞するように前記筒状部材(22)に取り付けられ、
該削岩機(M)のビット(P)が、前記ビット挿入口(23Aa又は23Ba)、前記筒側貫通孔(22a又は22b)及び前記ケーシング側貫通孔(21a又は21b)を通って前記ケーシング(21)の内部に挿入され得るように構成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、図3(a) に例示するものであって、請求項1に係る発明において、前記蓋部材(23A,23B)には、前記ケーシング(21)に近づくほど幅広となるテーパー状の孔部(C)が設けられ、
該蓋部材(23A,23B)において前記ビット(P)を支持する部分(23Ab,23Bb,…)が、回転可能なボールジョイントであり、
該ビット(P)は、前記テーパー状の孔部(C)の内部で揺動できるように構成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記筒状部材が、前記ケーシングの長手方向に沿って摺動自在となるような状態で該ケーシングに外嵌されたことを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、前記筒状部材(22)が、前記ケーシング(21)の周方向に摺動できるように該ケーシング(21)に回転自在となる状態で外嵌されたことを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明において、前記筒状部材(22)が配置される位置が、前記ケーシング(21)の前端部近傍であることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、図4に例示するものであって、請求項4に係る発明において、前記ケーシング側貫通孔(図4の符号121a,121b参照)が、前記ケーシング(同図の符号121参照)の周方向に沿って複数形成され、
前記筒側貫通孔(同図の符号122a参照)は、少なくとも一つ形成され、
該ケーシング側貫通孔(121a,121b)及び該筒側貫通孔(122a)は、複数のケーシング側貫通孔(121a,121b)の内の一つのケーシング側貫通孔(121b)が前記筒側貫通孔(122a)に一致している場合に、他のケーシング側貫通孔の少なくとも一つのケーシング側貫通孔(121a)が前記筒状部材(122)によって閉塞された状態となる位置に形成されたことを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の発明において、図5(a) (b) に例示するものであって、2つの筒側貫通孔(222a,222b)を“第1筒側貫通孔(222a)”“第2筒側貫通孔(222b)”とし、2つのケーシング側貫通孔(221a,221b)を“第1ケーシング側貫通孔(221a)”“第2ケーシング側貫通孔(221b)”とした場合に、
前記筒状部材(図5(a) の符号222参照)が所定の回転位置にある場合には前記第1筒側貫通孔(222a)と前記第1ケーシング側貫通孔(221a)とが一致すると共に前記第2筒側貫通孔(222b)と前記第2ケーシング側貫通孔(221b)とが一致せず、前記筒状部材(222)が別の回転位置にある場合には前記第2筒側貫通孔(222b)と前記第2ケーシング側貫通孔(221b)とが一致すると共に前記第1筒側貫通孔(222a)と前記第1ケーシング側貫通孔(221a)とが一致しないような位置に、各貫通孔(221a,221b,222a,222b)が形成されたことを特徴とする。
【0016】
請求項8に係る発明は、図6に例示するものであって、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の発明において、前記ケーシング側貫通孔(図6の符号321a,321b参照)が、前記ケーシング(同図の符号321)の円筒の上半分の部分に形成され、
該ケーシング側貫通孔(321a及び/又は321b)と前記筒側貫通孔(322a及び/又は322b)とが一致された場合にこれらの貫通孔を通って土砂が入り込みにくいように構成されたことを特徴とする。
【0017】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0018】
請求項1、3及び5に係る発明によれば、前記筒状部材が所定の摺動位置にある場合には、前記筒側貫通孔と前記ケーシング側貫通孔が一致することとなる。したがって、前記ケーシングの内部で大径の礫が前記スクリューの回転を阻害しているような場合には、(該スクリューへの動力の供給を停止させた状態で)それらの貫通孔を通るように前記削岩機のビットを挿入して該礫を破砕することができ、該スクリューの回転を回復させることができる。また、前記筒状部材を前記ケーシングの周方向又は長手方向に所定量だけ摺動させれば前記ケーシング側貫通孔を閉塞することができる。したがって、該ケーシング側貫通孔や前記筒側貫通孔に礫が入り込むことを防止でき、掘進時におけるスクリューの回転が該礫(つまり、該スクリューの側に一部が突出した状態で前記ケーシング側貫通孔や前記筒側貫通孔に入り込んでしまう礫)によって阻害されるおそれを低減することができる。さらに、本発明は、軸を持つ構造のスクリュー/軸を持たない構造のスクリューのいずれにも適用することができ、スクリューの駆動方式が軸駆動方式であっても外筒駆動方式であっても適用することが可能である。またさらに、従来装置のように、削岩機を挿入する際にスクリューコンベヤのゲートを開ける必要は無いので、礫を破砕する作業を簡素化することができる。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、角度(挿入角)を適宜変えて前記ビットを前記ケーシング内に挿入して複数の孔を礫に空けることができ、大径の礫であっても容易に破砕することが可能となる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、前記ケーシング側貫通孔を閉塞させる場合には、前記筒状部材を(別の位置に移動させなくても)その位置で回転させるだけで足りるため、該筒状部材が移動するための空きスペースを確保しておく必要が無く、狭いシールド掘進機の内部にてスペースの有効利用が図れる。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、一致している筒側貫通孔及びケーシング側貫通孔にビットを挿入して礫を破砕する作業を行っている間、該作業に使用していないケーシング側貫通孔は前記筒状部材により閉塞された状態となっているので、該ケーシング側貫通孔に異物(小さな礫など)が侵入することを防止できる。
【0022】
いま、礫によって前記スクリューが停止する場合、該スクリューが停止する位置は決まってはいない(不確定である)ので、前記第1ケーシング側貫通孔或いは前記第2ケーシング側貫通孔のいずれに前記ビットを挿入すべきかは、スクリューの停止位置によって異なる。そして、仮に、前記筒状部材に形成した筒側貫通孔の数が1つだけだとすると、該筒側貫通孔が前記第1ケーシング側貫通孔或いは前記第2ケーシング側貫通孔のいずれかに一致するまで前記筒状部材を回転させなければならず、その作業が煩雑になってしまう。しかし、請求項7に係る発明のように筒側貫通孔を複数設けるようにした場合には、該筒状部材は比較的少ない角度だけ回転させれば足り、作業性が向上する。
【0023】
請求項8に係る発明によれば、礫を破砕している作業中に仮に孔部(前記ケーシング側貫通孔及び前記筒側貫通孔で形成される孔部)に土砂が侵入したとしても該土砂は自重で前記ケーシング内に戻ることとなり、作業後に該孔部内に土砂が残留する可能性を低減できる。そのため、作業終了後、前記ケーシング側貫通孔を閉塞するために前記筒状部材を回転する際、土砂により該筒状部材の回転が阻害されるおそれも低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明に係るシールド掘進機の全体構造の一例を示す断面図である。
図2図2は、スクリューコンベヤに削岩機を取り付けた状態の一例を示す断面図(真上から見た状態の部分断面図)である。
図3図3(a) は、スクリューコンベヤの先端部分の構造の一例を示す拡大断面図であり、同図(b) は、そのE−E端面図(要部のみを示したもの)である。
図4図4は、筒状部材及びケーシングの構造の一例を示す断面図である。
図5図5(a) は、一方の筒側貫通孔が開口状態にある様子を示す断面図であり、同図(b) は、他方の筒側貫通孔が開口状態にある様子を示す断面図である。
図6図6は、筒状部材及びケーシングの構造の他の例を示す断面図である。
図7図7は、泥土圧式のシールド掘進機の従来構造の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1乃至図6に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
本発明に係るシールド掘進機は、図1に符号1で例示するものであって、掘削した土砂をスクリューコンベヤ2で排土しながら掘進を行うものである。そして、該スクリューコンベヤ2は、図2に詳示するように、
・ 回転駆動されるスクリュー20と、
・ 該スクリュー20を収容するための略円筒状のケーシング21と、
を有している。
【0027】
また、該略円筒状のケーシング21には、該ケーシング21の外径よりも僅かに大きな内径を持つ略円筒状の部材(以下、“筒状部材”とする)22が摺動自在となる状態(具体的には、前記ケーシング21の長手方向に沿って摺動自在となるような状態、又は前記ケーシング21の周方向に摺動できるように該ケーシング21に回転自在となる状態)で外嵌されており、この筒状部材22には、図3(a) 及び(b) に詳示するように、少なくとも1つの貫通孔(以下、“筒側貫通孔”とする)22a,22b,…が形成されている。この筒状部材22の回転や摺動は、チェーンブロック等の工具を利用して作業者が行うと良い。
【0028】
図3(b) に矢印Fで示すように、前記筒状部材22をその周方向に回転させた場合には前記筒側貫通孔22a,22b,…は前記ケーシング21の外周面に沿ってその周方向に移動することとなり、前記ケーシング21の長手方向に沿って前記筒状部材22を摺動させた場合(不図示)には前記筒側貫通孔22a,22b,…は前記ケーシング21の長手方向に沿って移動することとなるが、その移動経路に対向するように、前記ケーシング21の側にも貫通孔(以下、“ケーシング側貫通孔”とする)21a,21b,…が形成されていて、前記筒状部材22の摺動位置に応じて前記筒側貫通孔22a,22b,…と前記ケーシング側貫通孔21a,21b,…とが一致するように構成されている。
【0029】
また、前記筒状部材22には、前記筒側貫通孔22a,22b,…を閉塞するように蓋部材23A,23B,…が取り付けられており、該蓋部材23A,23B,…には、削岩機Mのビット(以下、必要に応じて、単に“ビット”と表現する)Pを挿入することが可能なビット挿入口23Aa,23Ba,…が形成されている。そして、図3(a) に例示するように、前記筒状部材22が所定の摺動位置に保持されて、前記筒側貫通孔22a,22b,…と前記ケーシング側貫通孔21a,21b,…のいずれか一組が一致している場合に、前記ビット挿入口(図3(a) では符号23Aaで示すビット挿入口)から挿入されたビットPが前記筒側貫通孔(図3(a) では符号22aで示す筒側貫通孔)及び前記ケーシング側貫通孔(図3(a) では符号21aで示すケーシング側貫通孔)を通って前記ケーシング21の内部にまで到達(挿入)されるように構成されている。
【0030】
なお、前記削岩機Mとしては、削岩を行う電動式や油圧式の機械であって、例えば、電動ドリルや電動ハンマや油圧ドリルや油圧ハンマなどを挙げることができる。また、該削岩機Mの前記ケーシング21への挿入や、該削岩機Mを使った礫Qの破砕は、作業者が行うようにすると良い。さらに、前記蓋部材23A,23B,…にはシール機能を付加しておいて、前記ビットPが挿入されている場合や挿入されていない場合には泥水が前記ケーシング21の外部に漏れ出ないようにしておくと良い。またさらに、図3(a) に符号Cで示すように、前記蓋部材23A,23B,…には、前記ケーシング21に近づくほど幅広となる孔部(つまり、テーパー状の孔部)を設けておき、該蓋部材23A,23B,…において前記ビットPを支持する部分23Ab,23Bb,…を、回転可能なボールジョイントとして、前記ビットPを前記テーパー状の孔部Cの内部で(礫Qやスクリュー20等に干渉しない範囲で)矢印Dで示すように揺動させ得るようにしておくと良い。そのようにした場合には、角度(挿入角)を適宜変えて前記ビットPを前記ケーシング21内に挿入して複数の孔を礫Qに空けることができ、大径の礫であっても容易に破砕することが可能となる。ここで、該テーパー状の孔部Cは、略円錐形(斜円錐形)である必要は無く、前記シールド掘進機1の掘進方向Gを含む鉛直面(つまり、図3(a) の紙面)にてテーパー状であれば良い。また、図2及び図3(a) に例示するスクリュー20は、軸を持たない構造(いわゆるリボン式のもの)であるが、もちろんこれに限られるものではなく、軸を持つ構造(いわゆるシャフト式であって、軸駆動方式或いは外筒駆動方式のもの)であっても良い。さらに、前記筒状部材22と前記ケーシング21との間から泥水が漏れ出ないように、それらの間にはシール部材(不図示)を介装しておくと良い。
【0031】
本発明によれば、前記筒状部材22が所定の摺動位置にある場合には、前記筒側貫通孔22a,22b,…と前記ケーシング側貫通孔21a,21b,…の少なくとも一組の貫通孔が一致することとなる。したがって、図1乃至図3(a) に例示するように、前記ケーシング21の内部で大径の礫Qが前記スクリュー20の回転を阻害しているような場合には、(該スクリュー20への動力の供給を停止させた状態で)それらの貫通孔を通るように前記削岩機MのビットPを挿入して該礫Qを破砕することができ、該スクリュー20の回転を回復させることができる。また、前記筒状部材22を前記ケーシング21の周方向(図3(b) の矢印F参照)又は長手方向に所定量だけ摺動させれば前記ケーシング側貫通孔21a,21b,…を閉塞することができる。したがって、該ケーシング側貫通孔21a,21b,…や前記筒側貫通孔22a,22b,…に礫が入り込むことを防止でき、掘進時におけるスクリュー20の回転が該礫(つまり、該スクリュー20の側に一部が突出した状態で前記ケーシング側貫通孔21a,21b,…や前記筒側貫通孔22a,22b,…に入り込んでしまう礫)によって阻害されるおそれを低減することができる。さらに、本発明は、軸を持つ構造のスクリュー/軸を持たない構造のスクリューのいずれにも適用することができ、スクリューの駆動方式が軸駆動方式であっても外筒駆動方式であっても適用することが可能である。またさらに、図7に示す従来装置のように、削岩機M1を挿入する際にスクリューコンベヤ402のゲートを開ける必要は無いので、礫を破砕する作業を簡素化することができる。また、前記筒状部材22を回転自在となる状態で前記ケーシング21に外嵌した場合には、該ケーシング側貫通孔21a,21b,…を閉塞させる場合には、前記筒状部材22を(別の位置に移動させなくても)その位置で回転させるだけで足りるため、該筒状部材22が移動するための空きスペースを確保しておく必要が無く、狭いシールド掘進機1の内部にてスペースの有効利用が図れる。
【0032】
ところで、前記ケーシング側貫通孔21a,21b,…を形成する位置を、前記ケーシング21の前端部近傍(つまり、掘進方向Gの前端部近傍)とし、それに伴って、前記筒状部材22を配置する位置を、前記ケーシング21の前端部近傍として、該ケーシング21内に挿入した前記ビットPが該ケーシング21の開口部付近(つまり、前記スクリュー20の先端部付近)に届くようにしておくと良い。通常、大径の礫Qは該ケーシング21の開口部付近に詰まりやすいので、前記ケーシング側貫通孔21a,21b,…や前記筒状部材22を前記ケーシング21の前端部近傍に配置することによって、大径の礫を効果的に破砕することができる。
【0033】
一方、前記ケーシング側貫通孔21a,21b,…を、前記ケーシング21の周方向Fに沿って複数形成しておき、前記筒側貫通孔22a,22b,…は、少なくとも一つ形成しておくと良い。そのようにした場合、礫Qが原因で停止したスクリュー20が仮に一つのケーシング側貫通孔21a又は21bを塞いでしまっていても、他のケーシング側貫通孔21b又は21bから前記ビットPを前記ケーシング21内に挿入することができ、礫Qを破砕することが可能となる。
【0034】
また、上述のように、前記ケーシング側貫通孔を、前記ケーシングの周方向Fに沿って複数形成する場合には、該ケーシング側貫通孔及び前記筒側貫通孔を、
「複数のケーシング側貫通孔の内の一つのケーシング側貫通孔が前記筒側貫通孔に一致している場合に、他のケーシング側貫通孔の内の少なくとも一つのケーシング側貫通孔(好ましくは、該他のケーシング側貫通孔の全て)が前記筒状部材によって閉塞された状態となる」
ような位置に形成すると良い。例えば、図4に例示するように、前記筒側貫通孔122aを1つだけ形成しておいて、
・ 該筒側貫通孔122aが一方のケーシング側貫通孔121bに一致している場合には他方のケーシング側貫通孔121aは閉塞状態となり、
・ 筒状部材122を矢印Fで示すように回転させて前記筒側貫通孔122aを他方のケーシング側貫通孔121aに一致させた場合には前記一方のケーシング側貫通孔121bは閉塞状態となる、
ように構成すると良い。そのようにした場合には、一致している貫通孔(例えば、一致している筒側貫通孔122a及びケーシング側貫通孔121b)にビットPを挿入して礫Qを破砕する作業を行っている間、該作業に使用していないケーシング側貫通孔121aは前記筒状部材122により閉塞された状態となっているので、該ケーシング側貫通孔121aに異物(小さな礫など)が侵入することを防止できる。
【0035】
また、図5(a) 及び(b) に例示するように構成しても良い。すなわち、2つの筒側貫通孔222a,222bをそれぞれ“第1筒側貫通孔”“第2筒側貫通孔”とし、2つのケーシング側貫通孔221a,221bをそれぞれ“第1ケーシング側貫通孔”“第2ケーシング側貫通孔”とすると、筒状部材222が所定の回転位置にある場合には、同図(a) に例示するように、
・ 前記第1筒側貫通孔222aと前記第1ケーシング側貫通孔221aとが一致すると共に、
・ 前記第2筒側貫通孔222bと前記第2ケーシング側貫通孔221bとが一致せず、
また、前記筒状部材222が別の回転位置にある場合には、同図(b) に例示するように、
・ 前記第2筒側貫通孔222bと前記第2ケーシング側貫通孔221bとが一致すると共に、
・ 前記第1筒側貫通孔222aと前記第1ケーシング側貫通孔221bとが一致しない
ような位置に、各貫通孔221a,221b,222a,222bを形成しておくと良い。いま、礫Qによって前記スクリュー20が停止する場合、該スクリュー20が停止する位置は決まってはいない(不確定である)ので、前記第1ケーシング側貫通孔221a或いは前記第2ケーシング側貫通孔221bのいずれに前記ビットPを挿入すべきかは、スクリュー20の停止位置によって異なる。そして、仮に、前記筒状部材222に形成した筒側貫通孔の数が1つだけだとすると、該筒側貫通孔が前記第1ケーシング側貫通孔221a或いは前記第2ケーシング側貫通孔221bのいずれかに一致するまで前記筒状部材222を回転させなければならず、その作業が煩雑になってしまう。しかし、上述のように筒側貫通孔222a,222bを複数設けるようにした場合には、該筒状部材222は比較的少ない角度だけ回転させれば足り、作業性が向上する。また、上述と同様の効果も得られる。すなわち、一致している貫通孔(つまり、一致している回転第1筒側貫通孔222a及び第1ケーシング側貫通孔221a、又は、一致している第2筒側貫通孔222b及び第2ケーシング側貫通孔221b)にビットPを挿入して礫を破砕する作業を行っている間、該作業に使用していないケーシング側貫通孔221a又は221bは前記筒状部材222により閉塞された状態となっているので、該ケーシング側貫通孔221a又は221bに異物(小さな礫など)が侵入することを防止できる。
【0036】
一方、上述したケーシング側貫通孔は、図5(a) (b) 及び図6に符号221a,221b,321a,321bで例示するように、前記ケーシング221,321の円筒の上半分の部分に形成しておくと良い。つまり、ケーシング内にて該ケーシング側貫通孔が下方に開口するように各ケーシング側貫通孔を配置しておくと良い。そのようにした場合には、礫Qを破砕している作業中に仮に該孔部Cに土砂が侵入したとしても該土砂は自重で前記ケーシング221,321内に戻ることとなり、作業後に該孔部C内に土砂が残留する可能性を低減できる。そのため、作業終了後、前記ケーシング側貫通孔221a,221b,321a,321bを閉塞するために前記筒状部材222,322を回転する際、土砂により該筒状部材222,322の回転が阻害されるおそれも低減できる。
【符号の説明】
【0037】
1 シールド掘進機
2 スクリューコンベヤ
20 スクリュー
21 ケーシング
21a,21b ケーシング側貫通孔
22 筒状部材
22a,22b 筒側貫通孔
23A,23B 蓋部材
23Aa,23Ba ビット挿入口
121 ケーシング
121a,121b ケーシング側貫通孔
122a 筒側貫通孔
221a,221b ケーシング側貫通孔
222a,222b 筒側貫通孔
321 ケーシング
321a,321b ケーシング側貫通孔
322a,322b 筒側貫通孔
M 削岩機
P ビット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7