特許第6238297号(P6238297)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6238297シールド機の組み立て方法、及びシールド機の組み立て装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238297
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】シールド機の組み立て方法、及びシールド機の組み立て装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   E21D9/06 301Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-99749(P2014-99749)
(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公開番号】特開2015-127496(P2015-127496A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2016年12月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-247055(P2013-247055)
(32)【優先日】2013年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(72)【発明者】
【氏名】庄村 典生
(72)【発明者】
【氏名】福田 日出男
(72)【発明者】
【氏名】矢野 安則
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 英史
(72)【発明者】
【氏名】戸崎 雅之
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−208409(JP,A)
【文献】 特開平09−170326(JP,A)
【文献】 特開平04−176989(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02140845(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洞道内に延設されてなる収容ラインを囲繞するように略円筒状のシールド機を組み立てる、シールド機の組み立て方法において、
該シールド機を周方向に分割した各構造体を“シールド機分割片”とし、前記洞道に連通される立坑内に最初に吊り降ろされるシールド機分割片を“第1分割片”とし、その後に該立坑内に吊り降ろされるシールド機分割片を“後続分割片”とし、前記洞道の軸方向に直交する方向の内の水平な方向を“洞道横方向”とした場合に、
前記第1分割片をその周方向に転動可能であると共に洞道横方向に移動可能となるように構成された移動架台を前記立坑の内部であって前記収容ラインよりも低い位置に配置する移動架台配置工程と、
前記立坑を利用して前記第1分割片を吊り降ろすと共に該第1分割片を前記移動架台に載置する第1分割片吊り降ろし工程と、
該移動架台を洞道横方向に移動させることにより前記収容ラインを囲繞する所定位置に前記第1分割片を配置する第1分割片移動工程と、
該移動架台に載置された前記第1分割片を前記収容ラインの下方の所定位置までその周方向に転動させる第1分割片転動工程と、 前記立坑を利用して前記後続分割片を吊り降ろす後続分割片吊り降ろし工程と、
前記立坑の内部の所定の位置に配置されている前記シールド機分割片に前記後続分割片吊り降ろし工程にて吊り降ろしてきた後続分割片を組み付ける後続分割片組み付け工程と、
を備え、
後続分割片の数だけ前記後続分割片吊り降ろし工程及び前記後続分割片組み付け工程を繰り返して実施する、
ことを特徴とする、シールド機の組み立て方法。
【請求項2】
前記第1分割片は、前記第1分割片転動工程によって前記収容ラインの下方の所定位置に配置された状態における洞道横方向の寸法Axがその上下方向の寸法Ayよりも大きくなるように構成され、
前記第1分割片吊り降ろし工程では、寸法Ayが略水平方向の寸法となり寸法Axが略上下方向の寸法となるような姿勢で前記第1分割片を吊り降ろす、
ことを特徴とする、請求項1に記載のシールド機の組み立て方法。
【請求項3】
前記移動架台は前記第1分割片の下面に取り付けておいて前記第1分割片吊り降ろし工程にて該第1分割片と共に吊り降ろすことにより前記移動架台配置工程と前記第1分割片吊り降ろし工程とを同時に実施する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のシールド機の組み立て方法。
【請求項4】
前記収容ラインは、通信ケーブル、ガス管又は送電線である、
ことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシールド機の組み立て方法。
【請求項5】
洞道内に延設されてなる収容ラインを囲繞するように略円筒状のシールド機を組み立てる、シールド機の組み立て装置において、
該シールド機を周方向に分割した各構造体を“シールド機分割片”とし、前記洞道に連通される立坑内に最初に吊り降ろされるシールド機分割片を“第1分割片”とし、その後に該立坑内に吊り降ろされるシールド機分割片を“後続分割片”とし、前記洞道の軸方向に直交する方向の内の水平な方向を“洞道横方向”とした場合に、
前記立坑を利用して前記第1分割片及び前記後続分割片を吊り降ろす吊り降ろし装置と、
前記第1分割片を載置可能であって該分割片をその周方向に転動可能となるように構成された移動架台と、
前記立坑の内部であって前記収容ラインよりも低い位置に配置されて前記移動架台を洞道横方向に移動可能に支持するガイド装置と、
洞道横方向へ移動される前記移動架台の位置決めをする位置決め装置と、
前記移動架台上における前記第1分割片の転動を阻止するロック装置と、
を備え、
前記第1分割片が前記吊り降ろし装置によって吊り降ろされて前記移動架台に載置され、前記移動架台が移動されることによって前記収容ラインを囲繞する所定位置まで前記第1分割片が移動され、前記ロック装置を解除することによって前記第1分割片がその周方向の所定位置に転動されるように構成された、
ことを特徴とする、シールド機の組み立て装置。
【請求項6】
前記収容ラインは、通信ケーブル、ガス管又は送電線である、
ことを特徴とする、請求項5に記載のシールド機の組み立て装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洞道内に延設されてなる収容ラインを囲繞するように略円筒状のシールド機を組み立てる、シールド機の組み立て方法、及びシールド機の組み立て装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、老朽化したトンネルを撤去する装置としてシールド機が使用されており、種々の構造のものが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
図6は、シールド機の従来構造の一例を示す断面図であって、図7は、ローラーカッターの支持部分の構成の一例を示す断面図である。図6に示すシールド機101は、既設トンネルTの外径よりも大径の胴体102を備えており、該胴体102の前側にはカッタードラム103を介して環状のカッターヘッド104が回動可能に支持されている。そして、該カッターヘッド104には、図7に詳示するようなローラーカッター105が複数支持されており、該ローラーカッター105を回転させると共に前記カッターヘッド104を前記既設トンネルTの回りに回転させることにより該既設トンネルTの周囲の地山Gを掘削するように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3311321号公報
【特許文献2】特開2003−253984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような構成のシールド機101で洞道(つまり、通信ケーブルやガス管や送電線等の種々の収容ラインが敷設されている専用管路トンネル)のセグメントを更新する場合は、該収容ラインが邪魔になって前記シールド機101を配置できないことから、該収容ラインを一時的に洞道外に移設してスペースを確保するということが行われていた。しかしながら、該収容ラインを移設する工事に莫大な日数やコストが掛かってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の問題を解消することのできるシールド機の組み立て方法及び組み立て装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、図1(a) 〜(f) 、図2及び図4に例示するものであって、洞道(図4の符号T参照)内に延設されてなる収容ライン(L)を囲繞するように略円筒状のシールド機(B)を組み立てる、シールド機の組み立て方法において、
該シールド機(B)を周方向(Dc)に分割した各構造体(図1の符号B1,B2参照)を“シールド機分割片”とし、前記洞道(T)に連通される立坑(V)内に最初に吊り降ろされるシールド機分割片(B1)を“第1分割片”とし、その後に該立坑(V)内に吊り降ろされるシールド機分割片(B2)を“後続分割片”とし、前記洞道(T)の軸方向に直交する方向の内の水平な方向(x)を“洞道横方向”とした場合に、
前記第1分割片(B1)をその周方向(Dc)に転動可能であると共に洞道横方向(x)に移動可能となるように構成された移動架台(3)を前記立坑(V)の内部であって前記収容ライン(L)よりも低い位置に配置する移動架台配置工程(図5の符号S1及び図1(b) 参照)と、
前記立坑(V)を利用して前記第1分割片(B1)を吊り降ろすと共に該第1分割片(B1)を前記移動架台(3)に載置する第1分割片吊り降ろし工程(図5の符号S2及び図1(a) 参照)と、
該移動架台(3)を洞道横方向(x)に移動させることにより前記収容ライン(L)を囲繞する所定位置に前記第1分割片(B1)を配置する第1分割片移動工程(図5の符号S3及び図1(c) 参照)と、
該移動架台(3)に載置された前記第1分割片(B1)を前記収容ライン(L)の下方の所定位置までその周方向(Dc)に転動させる第1分割片転動工程(図5の符号S4及び図1(d) 参照)と、 前記立坑(V)を利用して前記後続分割片(B2)を吊り降ろす後続分割片吊り降ろし工程(図5の符号S5及び図1(f) 参照)と、
前記立坑(V)の内部の所定の位置に配置されている前記シールド機分割片(B1)に前記後続分割片吊り降ろし工程(S5)にて吊り降ろしてきた後続分割片(B2)を組み付ける後続分割片組み付け工程(図5の符号S6参照)と、
を備え、
後続分割片の数だけ前記後続分割片吊り降ろし工程(S5)及び前記後続分割片組み付け工程(S6)を繰り返して実施することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記第1分割片(B1)は、前記第1分割片転動工程(S4)によって前記収容ライン(L)の下方の所定位置に配置された状態における洞道横方向(x)の寸法Axがその上下方向の寸法Ayよりも大きくなるように構成され、
前記第1分割片吊り降ろし工程(S2)では、寸法Ayが略水平方向の寸法となり寸法Axが略上下方向の寸法となるような姿勢で前記第1分割片(B1)を吊り降ろすことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記移動架台(3)は前記第1分割片(B1)の下面に取り付けておいて前記第1分割片吊り降ろし工程(S2)にて該第1分割片(B1)と共に吊り降ろすことにより前記移動架台配置工程(S1)と前記第1分割片吊り降ろし工程(S2)とを同時に実施することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、前記収容ライン(L)が、通信ケーブル、ガス管又は送電線であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、洞道(T)内に延設されてなる収容ライン(L)を囲繞するように略円筒状のシールド機(B)を組み立てる、シールド機の組み立て装置(1)において、
該シールド機(B)を周方向(Dc)に分割した各構造体(B1,…)を“シールド機分割片”とし、前記洞道(T)に連通される立坑(V)内に最初に吊り降ろされるシールド機分割片(B1)を“第1分割片”とし、その後に該立坑(V)内に吊り降ろされるシールド機分割片(B2)を“後続分割片”とし、前記洞道(T)の軸方向に直交する方向の内の水平な方向を“洞道横方向(x)”とした場合に、
前記立坑(V)を利用して前記第1分割片(B1)及び前記後続分割片(B2)を吊り降ろす吊り降ろし装置(2)と、
前記第1分割片(B1)を載置可能であって該分割片(B1)をその周方向(Dc)に転動可能となるように構成された移動架台(3)と、
前記立坑(V)の内部であって前記収容ライン(L)よりも低い位置に配置されて前記移動架台(3)を洞道横方向(x)に移動可能に支持するガイド装置(4)と、
洞道横方向(x)へ移動される前記移動架台(3)の位置決めをする位置決め装置(5)と、
前記移動架台(3)上における前記第1分割片(B1)の転動を阻止するロック装置(図3の符号6参照)と、
を備え、
前記第1分割片(B1)が前記吊り降ろし装置(2)によって吊り降ろされて前記移動架台(3)に載置され、前記移動架台(3)が移動されることによって前記収容ライン(L)を囲繞する所定位置まで前記第1分割片(B1)が移動され、前記ロック装置(6)を解除することによって前記第1分割片(B1)がその周方向(Dc)の所定位置に転動されるように構成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の発明において、前記収容ライン(L)が、通信ケーブル、ガス管又は送電線であることを特徴とする。
【0013】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
請求項1,3乃至6に係る発明によれば、既設の洞道において該洞道に収容されている収容ラインと干渉することなくシールド機を設置することができ、該洞道の更新をすることができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、大きい方の寸法Axが略水平方向の寸法となるような姿勢で前記第1分割片を吊り降ろす場合に比べて、前記収容ラインと前記立坑の壁面との水平方向の離間距離を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a) 〜(f) は、本発明に係るシールド機の組み立て方法の一例を示す横断面図である。
図2図2は、第1分割片を吊り降ろしている状態の一例を示す横断面図である。
図3図3は、移動架台等の構成を示す拡大断面図である。
図4図4は、シールド機が組み立てられた状態の一例を示す縦断面図である。
図5図5は、本発明に係るシールド機の組み立て方法の一例を示すフローチャート図である。
図6図6は、シールド機の従来構造の一例を示す断面図である。
図7図7は、ローラーカッターの支持部分の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1乃至図5に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
本発明は、通信ケーブル・ガス管・送電線など(図4の符号L参照。以下、“収容ライン”とする)の専用管路トンネル(図4の符号T参照。以下、“洞道”とする)に適用されるものであり、前記洞道T内に延設されてなる収容ラインLを囲繞するように略円筒状のシールド機(シールド掘進機)Bを組み立てる方法に関するものである。
【0019】
本明細書においては、洞道Tの軸方向(図4中に矢印zで示す方向であって、前記収容ラインLが延設されている方向)を“洞道軸方向”と称することとし、該洞道軸方向zに直交する方向の内の水平な方向(図2中の矢印x参照)を“洞道横方向”と称することとする。また、本発明においては、図1(a) 〜(f) に例示するように、前記シールド機Bを少なくとも周方向(同図(d) の符号Dc参照)に分割した状態で立坑V内(前記洞道Tに連通するように形成された立坑V内)に搬入するが、該シールド機Bを周方向Dcに分割した各構造体B1,B2,…を“シールド機分割片”と称することとし、特に区別の必要がある場合には、該立坑V内に最初に吊り降ろされるシールド機分割片B1を“第1分割片”と称することとし、その後の2番目以降に該立坑V内に吊り降ろされるシールド機分割片B2,…を“後続分割片”と称することとする。なお、シールド機Bを構成する部品の中には止水のためのシール材(成形パッキンと称されるような、ゴム製や樹脂製の部材)があるが、このシール材については、
・ 該シール材を分割したもの(以下、“シール材分割片”とする)を各シールド機分割片に組み込んでおき、該シールド機分割片どうしを組み付ける際に該シール材分割片どうしを接合するようにしても、或いは、
・ シール材は分割せずに一箇所だけ切り込みを入れておいて、円筒状のシールド機が組み上がる際に該シール材を組み付けるようにしても、
どちらでも良い。
【0020】
ところで、図1に示すものは、シールド機分割片B1,…の中心角(つまり、組み上がったシールド機Bの中心軸と、シールド機分割片B1,…の2つの周方向端面とを結んでできる角)を180度としてシールド機Bを2分割した例であるが、もちろんこれに限られるものではなく、3分割でも4分割でも、それ以上の分割でも良い。なお、3分割の場合は後続分割片の個数は2つとなり、4分割の場合は後続分割片の個数は3つとなる。また、各シールド機分割片B1,…の中心角を等しく(つまり、等角度分割)する必要はなく、各シールド機分割片B1,…の中心角を異ならせても良い。
【0021】
また、シールド機Bは、公知のように、軸方向(つまり、図4に符号Bzで示す方向であって、シールド機Bの軸方向)に長い略円筒状であるが、上述のような周方向Dcにだけ分割するのではなく軸方向Bzにも分割しても良い。例えば、該図4にて二点鎖線E1,E2,…で示す部分で分割するようにしても良い。シールド機Bをこのように軸方向Bzに分割した場合には、移動架台3(詳細は後述する)も分割した個数だけ必要となる。
【0022】
次に、本発明に係るシールド機の組み立て方法について説明する。
【0023】
本発明に係るシールド機の組み立て方法は、
図3に符号3で例示する移動架台、すなわち、前記第1分割片B1をその周方向Dcに転動可能であると共に洞道横方向xに移動可能となるように構成された移動架台3を図1(b) に例示するように前記立坑Vの内部であって前記収容ラインLよりも低い位置に配置する移動架台配置工程(図5の符号S1参照)と、
図1(a) (b) に例示するように、前記立坑Vを利用して前記第1分割片B1を地上から吊り降ろすと共に該第1分割片B1を前記移動架台3に載置する(つまり、前記立坑Vの内部にて前記移動架台3に該第1分割片B1の重量を受けさせる)第1分割片吊り降ろし工程(図5の符号S2参照)と、
を備えている。この第1分割片吊り降ろし工程S2においては、“該第1分割片B1の横断面の水平方向の寸法(図2の符号Ay参照)”が“収容ラインLと立坑壁面Vaとの水平方向の離間距離(同図の符号Av参照)”よりも小さくなるような姿勢に該第1分割片B1を保持していて、該第1分割片B1が前記収容ラインLや前記立坑壁面Vaに接触しないように設定されている。該第1分割片吊り降ろし工程S2における第1分割片B1の吊り降ろしは公知のクレーン等(吊り降ろし装置)により行うと良い。一方、図1(a) 及び図2に示す例では、前記移動架台3は前記第1分割片B1の下面に取り付けておいて前記第1分割片吊り降ろし工程S2にて該第1分割片B1と共に吊り降ろすことにより前記移動架台配置工程S1と前記第1分割片吊り降ろし工程S2とを同時に実施するようになっているが、前記移動架台配置工程S1を前記第1分割片吊り降ろし工程S2の前に実施し、前記立坑Vの内部の所定位置に既に配置されている前記移動架台3に前記第1分割片B1を載置するようにしても良い。
【0024】
また、本発明に係るシールド機の組み立て方法は、
図1(c) に例示するように、該移動架台3を洞道横方向xに移動させることにより前記収容ラインLを囲繞する所定位置に前記第1分割片B1を配置する第1分割片移動工程(図5の符号S3参照)と、
図1(d) に例示するように、前記移動架台3に載置された前記第1分割片B1を前記収容ラインLの下方の所定位置までその周方向Dcに転動させる第1分割片転動工程(図5の符号S4参照)と、を備えている。ここで、これらの第1分割片転動工程S4と第1分割片移動工程S3とは前記移動架台配置工程S1及び前記第1分割片吊り降ろし工程S2を実施した後に実施する必要がある。また、前記第1分割片転動工程S4においては前記第1分割片B1を後述するようにその自重により転動させると良いが、何らかの駆動装置によって転動させる場合を排除するものではない。さらに、前記第1分割片移動工程S3における前記移動架台3の移動は作業者の人力で行えば良いが、何らかの駆動装置によって行う場合を排除するものではない。
【0025】
さらに、本発明に係るシールド機の組み立て方法は、
図1(f) に例示するように、前記立坑Vを利用して前記後続分割片B2,…を吊り降ろす後続分割片吊り降ろし工程(図5の符号S5参照)と、
・ 前記立坑Vの内部の所定の位置に配置されているシールド機分割片(つまり、前記第1分割片B1及び/又は既に所定位置に配置されている別の後続分割片)に前記後続分割片吊り降ろし工程S5にて吊り降ろしてきた後続分割片B2,…を組み付ける後続分割片組み付け工程(図5の符号S6参照)と、
を備えている。なお、前記後続分割片吊り降ろし工程S5及び前記後続分割片組み付け工程S6は後続分割片の数だけ繰り返して実施すると良い。つまり、シールド機Bの分割数が2つ(つまり、後続分割片の数が1つ)である場合は前記後続分割片吊り降ろし工程S5と前記後続分割片組み付け工程S6とは1回ずつだけ実施すれば良いが、シールド機Bの分割数が3つ(つまり、後続分割片の数が2つ)である場合は前記後続分割片吊り降ろし工程S5と前記後続分割片組み付け工程S6とは2回ずつ実施すれば良く、シールド機Bの分割数が4つ(つまり、後続分割片の数が3つ)である場合は前記後続分割片吊り降ろし工程S5と前記後続分割片組み付け工程S6とは3回ずつ実施すると良い。また、図1(e) 及び(f) に例示するように、後続分割片B2を内側の部材と外側の部材とに分けて別々に吊り降ろすようにしても良い。
【0026】
本発明によれば、既設の洞道Tにおいて該洞道Tに収容されている収容ラインLと干渉することなくシールド機Bを設置することができ、該洞道Tの更新をすることができる。
【0027】
また、前記第1分割片B1を、前記第1分割片転動工程S4によって前記収容ラインLの下方の所定位置に配置された状態における洞道横方向xの寸法(図1(d)の符号Ax参照)がその上下方向yの寸法(同図の符号Ay参照)よりも大きくなるように構成しておいて、前記第1分割片吊り降ろし工程S2では、図2に例示するように、寸法Ayが略水平方向の寸法となり寸法Axが略上下方向の寸法となるような姿勢で前記第1分割片B1を吊り降ろすようにしても良い。そのようにした場合には、大きい方の寸法Axが略水平方向の寸法となるような姿勢で前記第1分割片B1を吊り降ろす場合に比べて前記離間距離Av(つまり、前記収容ラインLと立坑壁面Vaとの水平方向の離間距離Av)を小さくできる。
【0028】
次に、本発明に係るシールド機の組み立て装置について説明する。
【0029】
本発明に係るシールド機の組み立て装置は、洞道T内に延設されてなる収容ラインLを囲繞するように略円筒状のシールド機Bを組み立てる装置であり、図2に符号1で例示するように、
・ 前記立坑Vを利用して前記第1分割片B1及び前記後続分割片B2を吊り降ろす吊り降ろし装置2と、
・ 前記第1分割片B1を載置可能であって該分割片B1をその周方向Dcに転動可能となるように構成された移動架台3と、
・ 前記立坑Vの内部であって前記収容ラインLよりも低い位置に配置されて前記移動架台3を洞道横方向xに移動可能に支持するガイド装置4と、
・ 洞道横方向xへ移動される前記移動架台3の位置決めをする位置決め装置5と、
・ 前記移動架台3上における前記第1分割片B1の転動を阻止するロック装置6と、
を備えており、前記第1分割片B1が前記吊り降ろし装置2によって吊り降ろされて前記移動架台3に載置され、前記移動架台3が移動されることによって前記収容ラインLを囲繞する所定位置まで前記第1分割片B1が移動され、前記ロック装置6を解除することによって前記第1分割片B1がその周方向Dcの所定位置に転動されるように構成されている。
【0030】
ここで、図3に例示する移動架台3は、
・ 複数の鋼球30と、
・ 該複数の鋼球30を転動自在及び移動自在に収容するループ状の溝31と、
からなるユニット(以下、“ボールスライダー”とする)Uを複数(上側に2つ、下側に3つ)有しており、
・ 上側の2つのボールスライダーUは、ループ状の溝31が洞道軸方向zを向くと共に鋼球30が前記第1分割片B1に接触するように配置されて該第1分割片B1を移動可能に支持し、
・ 下側の3つのボールスライダーUは、ループ状の溝31が洞道横方向xを向くと共に鋼球30が基台面(ガイド装置)4に接触するように配置されて前記第1分割片B1を洞道横方向xに移動可能に支持する、
ように構成されている。また、この移動架台3と同じような構造のもの(以下、“対向架台”とする)は、符号3’で示すように左右対称となる位置に配置しておくと良い。さらに、前記基台面4における該移動架台3と該対向架台3’との間にはボールスライダー7を設けておいて、前記第1分割片移動工程S3や前記第1分割片転動工程S4において前記第1分割片B1を安定して摺動自在(及び転動自在)に支持できるようにすると良い。またさらに、これらの移動架台3や対向架台3’やボールスライダー7は図4に例示するように洞道軸方向zに沿って複数配置しておくと良い。そのような構成にした場合には、
・ 前記第1分割片移動工程S3における前記第1分割片B1の移動
・ 前記第1分割片転動工程S4における前記第1分割片B1の転動
だけでなく、組み立てられたシールド機Bを洞道軸方向zに送り出す際の発進架台のために前記移動架台3や前記対向架台3’を利用することが可能となる。該移動架台3や該対向架台3’をこのような構成にすることが好ましいが、その他の構成にしても良く、例えば、ボールスライダーUの数を変えても、或いは、ボールスライダー以外の公知の機構を用いても良い。この移動架台3は、上述したように、前記第1分割片B1の下面に取り付けておいて該第1分割片B1と一緒に吊り降ろすようにしても、或いは、一緒に吊り降ろさずに前記ガイド装置4の側に先に取り付けておいても良い。なお、後者の場合(つまり、前記移動架台3を前記第1分割片B1と一緒に吊り降ろさずに前記ガイド装置4の側に先に取り付けておく場合)は、前記第1分割片移動工程S3において前記第1分割片B1の移動を行う際には、該移動架台3が前記第1分割片B1と一体的に移動できるようにそれらを固定すると良い。
【0031】
また、図3に例示するロック装置6は、
・ 前記第1分割片B1に取り付けられた孔付きプレートと、
・ 前記移動架台3に取り付けられた孔付きプレートと、
・ これらの孔付きプレートに挿通されるボルトナットと、
によって構成されていてボルトを孔付きプレートから抜くことにより前記第1分割片B1が自重により転動するように構成されているが、もちろんこれに限られるものではなく、他の構造であっても良い。
【0032】
さらに、ガイド装置4は、
・ 前記ボールスライダーUが載置される基台面を有する部材(具体的には、立坑内に敷かれた鉄板)や、
・ 該鉄板の上に着脱可能に配置されたレール部材やアングル部材
などで構成すると良い。またさらに、図3に示す位置決め装置5は、前記ガイド装置4から立設されたプレート状のものであるが、もちろんこれに限られるものではなく、他の構造であっても良い。
【0033】
また、前記吊り降ろし装置2としてはクレーンを用いると良く、前記第1分割片B1を転動させたり移動させたりする間はワイヤで該第1分割片B1が倒れたりしないように補助しておくと良い。
【符号の説明】
【0034】
1 シールド機の組み立て装置
2 吊り降ろし装置
3 移動架台
4 ガイド装置
5 位置決め装置
6 ロック装置
B シールド機
B1 第1分割片(シールド機分割片)
B2 後続分割片(シールド機分割片)
L 収容ライン
S1 移動架台配置工程
S2 第1分割片吊り降ろし工程
S3 第1分割片移動工程
S4 第1分割片転動工程
S5 後続分割片吊り降ろし工程
S6 後続分割片組み付け工程
T 洞道
V 立坑
x 洞道横方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7