(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記残寿命予測ステップは、初期時の電池容量及び複数の異なる時点における電池容量に加え、初期時の内部インピーダンス及び前記OCV同定ステップで同定した内部インピーダンスに基いて、蓄電池の残寿命を予測する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蓄電池劣化診断方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施形態による蓄電池劣化診断方法及び蓄電池劣化診断装置について図面を参照して説明する。
図1は、蓄電池劣化診断装置1の構成を示す。蓄電池劣化診断装置1は、リチウムイオン蓄電池2(以下、蓄電池2と記す)の残寿命を予測する装置である。蓄電池劣化診断装置1は、蓄電池2、負荷3、及び充電器4を着脱可能になっている。
【0017】
蓄電池劣化診断装置1は、蓄電池2の端子間電圧を計測する電圧センサ5と、蓄電池2の放電電流及び充電電流を計測する電流センサ6と、蓄電池2を接続する電池接続端子7a、7bと、負荷3を接続する負荷接続端子8a、8bと、充電器4を接続する充電器接続端子9a、9bと、蓄電池2を充放電させるための充電スイッチ10及び放電スイッチ11とを備える。また、蓄電池劣化診断装置1は、新しい蓄電池2を使用開始するときにユーザが操作する初期化スイッチ12と、蓄電池2を充電するときにユーザが操作する充電指示スイッチ13と、現在時刻を計測する時計14と、各種情報を表示する表示部15と、マイクロコンピュータ16(以下、マイコン16と記す)とを備える。
【0018】
蓄電池2は、電池接続端子7a、7bに接続される。負荷3は、負荷接続端子8a、8bに接続される。負荷3は、例えば、電気自動車や持ち運び可能な電気機器である。負荷接続端子8aは、電流センサ6を介して電池接続端子7aに接続されており、負荷接続端子8bは、電池接続端子7bに接続されている。従って、電池接続端子7a、7bに蓄電池2が接続され、負荷接続端子8a、8bに負荷3が接続された状態では、蓄電池2は、電流センサ6及び負荷3を経由して放電され、負荷3は、蓄電池2の電力によって動作する。
【0019】
充電器4は、充電器接続端子9a、9bに接続される。充電器接続端子9aは、充電スイッチ10及び電流センサ6を介して電池接続端子7aに接続されており、充電器接続端子9bは、電池接続端子7bに接続されている。充電スイッチ10は、一端側が電流センサ6を介して電池接続端子7aに接続されており、他端側が充電器接続端子9aに接続されている。従って、電池接続端子7a、7bに蓄電池2が接続され、充電器接続端子9a、9bに充電器4が接続されて充電スイッチ10が閉じた状態では、蓄電池2は、充電スイッチ10及び電流センサ6を経由して充電される。充電スイッチ10は、マイコン16による制御のもと開閉される。
【0020】
放電スイッチ11は、一端側が電流センサ6を介して電池接続端子7aに接続されており、他端側が電池接続端子7bに接続されている。従って、放電スイッチ11が閉じた状態では、蓄電池2は、電流センサ6及び放電スイッチ11を経由して放電される。放電スイッチ11は、マイコン16による制御のもと開閉される。
【0021】
電圧センサ5は、電池接続端子7a、7b間に接続されており、蓄電池2の端子間電圧を計測して、その計測電圧をマイコン16に入力する。電流センサ6は、電池接続端子7aと負荷接続端子8aとの間に接続されており、蓄電池2の放電電流及び充電電流を計測して、その計測電流をマイコン16に入力する。マイコン16は、所定のプログラムを実行して、蓄電池劣化診断装置1の各種動作を制御する。また、マイコン16は、電圧センサ5の計測電圧及び電流センサ6の計測電流に基いて、所定のプログラムによる演算処理により蓄電池2の劣化を診断する。表示部15は、マイコン16による制御のもと、マイコン16による演算処理により得られた各種データを表示する。
【0022】
蓄電池劣化診断装置1は、新しい蓄電池2の使用開始時に、蓄電池2の蓄電池残量SOC(State of Charge)と開放電圧OCV(Open Circuit Voltage)との関係を示すSOC−OCV曲線を求め、また、蓄電池2の初期時の電池容量を求める。そして、蓄電池2の使用中において、蓄電池2の所定の等価回路モデルから導出した所定の同定式を用いてOCVを同定して、そのOCVとSOC−OCV曲線とを用いてSOCを推定し、そのSOCに基いて蓄電池2の電池容量を求めて、初期時の電池容量及び蓄電池2の使用中に求めた電池容量に基いて蓄電池2の残寿命を予測する。
【0023】
図2は、本発明において採用する蓄電池2の等価回路モデル20を示す。この等価回路モデル20は、開放電圧OCVと内部インピーダンスRa、Rb、Cbとによって蓄電池2を表している。OCVは、蓄電池2の起電力(無負荷状態の蓄電池電圧)を表している。Raは、蓄電池2の溶液抵抗と電気二重層の合成抵抗を表しており、Rb及びCbは、蓄電池2の電極内部の拡散現象を表す抵抗及びコンデンサを表している。抵抗Ra、抵抗Rb、及びコンデンサCbを内部インピーダンスと総称する。u
Lは、蓄電池2の端子間電圧であり、iは、蓄電池2に流れる電流である。
【0024】
等価回路モデル20において、Ra、Rb、Cbの両端電圧をu
RCCとし、Raの両端電圧をuaとし、Rb、Cbの両端電圧をubとし、時間をtとすると、以下の式(1)(2)(3)が成り立つ。
【数3】
【0025】
式(1)に式(2)(3)を代入して、式(1)をラプラス変換すると、以下の式(4)が得られる。
【数4】
【0026】
式(4)を以下の式(5)を用いて離散化(変数変換)する。Tsは、サンプリング周期である。
【数5】
【0027】
これにより、式(4)は、以下の式(6)となる。
【数6】
【0028】
式(6)を差分方程式で表すと、以下の式(7)となる。kは、サンプリングステップであり、k=1、2、・・・である。
【数7】
【0029】
式(7)を以下の式(8)に代入する。なお、OCVの変化は遅いので、式(8)において、OCVは一定値であるとしている。
【数8】
【0030】
これにより、以下の式(9)が得られる。
【数9】
【0031】
式(9)に以下の式(10)を代入する。なお、OCVの変化は遅いので、式(10)において、OCVは一定値であるとしている。
【数10】
【0032】
これにより、式(9)は、以下の式(11)となる。
【数11】
【0033】
式(11)を整理すると、以下の式(12)となる。
【数12】
【0034】
式(12)を簡略化して表すと、以下の式(13)となる。
【数13】
【0035】
式(14)(15)(16)から内部インピーダンスRa、Rb、Cbを逆算すると、以下の式(17)(18)(19)となる。
【数14】
【0036】
式(13)は、蓄電池2の端子間電圧u
L、電流i、開放電圧OCV、及び内部インピーダンスRa、Rb、Cbの関係を示す関係式であって、端子間電圧u
L及び電流iから内部インピーダンスRa、Rb、Cb及び開放電圧OCVを同定するための同定式である。この同定式(13)は、蓄電池2の等価回路モデル20からOCVを一定として導出した同定式である。
【0037】
本発明では、同定式(13)を用いて、蓄電池2の開放電圧OCVを同定する。すなわち、同定式(13)を用いて、内部インピーダンスRa、Rb、Cbを同定し、その同定した内部インピーダンスRa、Rb、Cbを同定式(13)に当て嵌めて、開放電圧OCVを同定する。具体的には、同定式(13)を忘却機能付き最小二乗法に適用して、内部インピーダンスRa、Rb、Cbを同定し、その同定した内部インピーダンスRa、Rb、Cbを同定式(13)に当て嵌めて、開放電圧OCVを同定する。同定式(13)を忘却機能付き逐次最小二乗法に適用した場合のb
0、a
0、a
1の推定式は、以下の式(20)となる。式(20)の導出方法については、周知であるので、説明を省略する。
【数15】
【0038】
図3は、蓄電池2のSOC−OCV曲線を示す。蓄電池2のSOCとOCVとの間には、SOC−OCV曲線で表される対応関係がある。SOCとは、充電率のことであり、「満充電時の電荷蓄積量(=電池容量)」に対する「その時点での電荷蓄積量」の比率である。SOCは、1.0〜0.0で表され、満充電状態がSOC=1.0であり、全放電状態がSOC=0.0である。なお、満充電状態は、蓄電池2の端子間電圧u
Lが所定の上限電圧u
Lmaxとなるまで充電された状態であり、全放電状態は、蓄電池2の端子間電圧u
Lが所定の下限電圧(終止電圧)u
Lminとなるまで放電された状態である。OCVは、SOCが0.0(全放電状態)のときにOCVminであり、SOCが0.0から増加するにつれて、OCVminからSOC−OCV曲線に従って上昇し、SOCが1.0(満充電状態)のときにOCVmaxになる。また、OCVは、SOCが1.0から減少するにつれて、OCVmaxからSOC−OCV曲線に従って低下し、SOCが0.0のときにOCVminになる。SOCとOCVのこの対応関係(SOC−OCV曲線)は、蓄電池2の劣化状態によって変化しないことが知られている。従って、OCVから、SOC−OCV曲線を用いて、SOCを推定することができる。
【0039】
SOC−OCV曲線は、蓄電池2が全放電状態(SOC=0.0)から満充電状態(SOC=1.0)に充電される間の各時点における充電電流積算値、蓄電池2が満充電状態から全放電状態に放電される間の各時点における放電電流積算値、及びそれらの各時点における蓄電池2の端子間電圧に基いて求められる。すなわち、蓄電池2の充電時における各時点での全放電状態からの充電電流積算値をQa(j)(j=1、2、・・・)とし、充電電流積算値がQa(j)のときの端子間電圧をu
La(j)とし、満充電時点での全放電状態からの充電電流積算値をQmaxとする。また、蓄電池2の放電時における各時点での満充電状態からの放電電流積算値をQb(j)(j=1、2、・・・)とし、放電電流積算値がQb(j)のときの端子間電圧をu
Lb(j)とする。充電時における各時点でのSOC(j)は、SOC(j)=Qa(j)/Qmaxであり、また、放電時における各時点でのSOC(j)は、SOC(j)=(Qmax−Qb(j))/Qmaxである。任意のSOCをSOCnとし、SOCnのときのOCVをOCVnとし、充電時におけるSOCnのときの端子間電圧をu
Lanとし、放電時におけるSOCnのときの端子間電圧をu
Lbnとすると、OCVn=(u
Lan+u
Lbn)/2の関係がある。従って、Qa(j)、u
La(j)、Qmax、Qb(j)、u
Lb(j)(j=1、2、・・・)に基いて、所定の演算を行って各SOCn及び各SOCnのときのOCVn=(u
Lan+u
Lbn)/2を算出することにより、SOC−OCV曲線が求められる。
【0040】
蓄電池2の電池容量Cは、SOCと放電電流積算値又は充電電流積算値とに基いて求められる。電池容量Cとは、充電可能な容量のことであり、満充電時(SOC=1.0のとき)の電荷蓄積量である。2つの異なる任意のSOCをSOCa、SOCb(<SOCa)とすると、SOCがSOCaのときの電荷蓄積量Qaは、Qa=C×SOCaであり、SOCがSOCbのときの電荷蓄積量Qbは、Qb=C×SOCbである。この関係から、SOCがSOCaとSOCbとの間を推移する間の電荷放出量又は電荷蓄積量をQab(Qab=Qa−Qb)とすると、C=Qab/(SOCa−SOCb)の関係式が成り立つ。電荷放出量又は電荷蓄積量Qabは、SOCがSOCaとSOCbとの間を推移する間の放電電流積算値又は充電電流積算値である。従って、2つの異なるSOCa、SOCbと、それらの間の放電電流積算値又は充電電流積算値Qabとから、C=Qab/(SOCa−SOCb)によって、電池容量Cが求められる。
【0041】
図4は、蓄電池2の使用中におけるOCVの同定とOCVからのSOCの推定の様子を示す。蓄電池2が満充電状態(SOC=1.0)から使用されると、電力の消費につれて、SOCは1.0から減少していき、OCVはOCVmaxから低下していく。蓄電池2の満充電後の使用開始から継続的にOCVの同定を行っていくと、時点t1でのOCV(t1)、時点t2でのOCV(t2)、・・・、時点tjでのOCV(tj)、・・・を求めることができ、これらのOCVとSOC−OCV曲線を用いて、時点t1でのSOC(t1)、時点t2でのSOC(t2)、・・・、時点tjでのSOC(tj)、・・・を求めることができる。従って、蓄電池2の満充電後の使用開始から継続的にOCVの同定を行っていくことにより、SOCが所定の第1の基準SOC1(例えば0.9)になったこと及び所定の第2の基準SOC2(例えば0.2)になったことを知ることができ、その間の放電電流積算値Qrを求めて、C=Qr/(SOC1−SOC2)を算出することによって、電池容量Cを求めることができる。また、蓄電池2の満充電後の使用開始毎に、同様に電池容量Cを求めることにより、複数の異なる時点における電池容量Cを求めることができる。
【0042】
図5は、蓄電池2の容量劣化の法則を示す。蓄電池2の電池容量Cは、蓄電池2の新品からの使い始めにおいては、ルート則と呼ばれる規則に従って減少(容量劣化)していくこと、及び、その後においては、線形則と呼ばれる規則に従って減少していく場合があることが知られている。ルート則とは、初期時の電池容量C(0)からの電池容量Cの容量減少量をΔC(ΔC=C(0)−C)とし、初期時からの経過時間をtとすると、t=a×ΔC
2+b×ΔC+c(a、b、cは定数、t=0のときΔC=0)の関係式を満たすように、容量減少量ΔCが増加していく法則である。また、線形則とは、t=b×ΔC+cの関係式を満たすように、容量減少量ΔCが増加していく法則である。電池容量Cが所定の容量(一般に、初期時の電池容量C(0)の1/2)に減少すると、蓄電池2の寿命の終わりであるとされる。現在から寿命の終わりまでの時間、すなわち、現在から電池容量Cが所定の容量に減少するまでの時間が残寿命tzである。従って、初期時の電池容量C(0)及び複数の異なる時点における電池容量Cから、ルート則の関係式又は線形則の関係式に基いて、蓄電池2の残寿命tzを予測することができる。
【0043】
図6は、蓄電池劣化診断装置1の動作のフローチャートを示し、
図7、
図8、及び
図9は、各々、同動作におけるSOC−OCV曲線取得処理、OCV同定処理、及び残寿命予測処理のフローチャートを示す。まず、ユーザは、新しい蓄電池2を使用開始するとき、蓄電池2を電池接続端子7a、7bに接続し、充電器4を充電器接続端子9a、9bに接続し、初期化スイッチ12を操作する。
【0044】
マイコン16は、初期化スイッチ12が操作されると、まず、SOC−OCV曲線取得処理を行う(#1)。SOC−OCV曲線取得処理において(
図7参照)、マイコン16は、まず、蓄電池2の全放電状態からの充電電流積算値Qaの初期値Qa(0)をQa(0)=0とし(#31)、カウンタjの値をj=1とする(#32)。続いて、マイコン16は、蓄電池2を全放電状態から充電開始する(#33)。すなわち、放電スイッチ11を閉じて蓄電池2を全放電状態にした後、放電スイッチ11を開き、充電スイッチ10を閉じる。これにより、蓄電池2は、全放電状態から充電されていく。なお、マイコン16は、蓄電池2の端子間電圧u
L(電圧センサ5の計測電圧)が所定の下限電圧u
Lminまで低下したことによって、蓄電池2が全放電状態になったことを判断する。そして、マイコン16は、蓄電池2の充電電流i(電流センサ6の計測電流)を読取り、蓄電池2の全放電状態からの充電電流積算値Qa(j)をQa(j)=Qa(j)+充電電流i×計測時間間隔Δtによって算出する(#34)。ここで、計測時間間隔Δtは、#33で充電を開始してから#34で充電電流iを読取るまでの時間間隔(次回以降は、#34〜#37の繰り返しにおいて充電電流iを読取る時間間隔)であり、所定時間間隔である。また、マイコン16は、蓄電池2の端子間電圧u
Lを読取り、その電圧u
Lを充電電流積算値Qa(j)のときの端子間電圧u
La(j)とする(#35)。
【0045】
蓄電池2が満充電完了するまで(#36でNO)、マイコン16は、カウンタjの値を1づつ増加させて(#37)、#34、#35の処理を繰り返す。#34、#35の処理が繰り返されることにより、全放電状態からの各時点での充電電流積算値Qa(j)(j=1、2、・・・)、及び、各電流積算値Qa(j)のときの端子間電圧u
La(j)が得られる。蓄電池2が満充電完了すると(#36でYES)、マイコン16は、Qmax=Qa(j)とする(#38)。ここで、Qmaxは、蓄電池2が全放電状態から満充電状態に充電されたときの充電電流積算値である。すなわち、Qmaxは、SOCが0.0から1.0に増加する間の充電電流積算値である。なお、マイコン16は、蓄電池2の端子間電圧u
Lが所定の上限電圧u
Lmaxに達したことによって、蓄電池2が満充電状態になったことを判断する。
【0046】
続いて、マイコン16は、蓄電池2の満充電状態からの放電電流積算値Qbの初期値Qb(0)をQb(0)=0とし(#39)、カウンタjの値をj=1とする(#40)。続いて、マイコン16は、蓄電池2を満充電状態から放電開始する(#41)。すなわち、充電スイッチ10を開き、放電スイッチ11を閉じる、これにより、蓄電池2は、満充電状態から放電されていく。そして、マイコン16は、蓄電池2の放電電流i(電流センサ6の計測電流)を読取り、蓄電池2の満充電状態からの放電電流積算値Qb(j)をQb(j)=Qb(j)+放電電流i×計測時間間隔Δtによって算出する(#42)。ここで、計測時間間隔Δtは、#41で充電を開始してから#42で放電電流iを読取るまでの時間間隔(次回以降は、#42〜#45の繰り返しにおいて放電電流iを読取る時間間隔)であり、所定時間間隔である。また、マイコン16は、蓄電池2の端子間電圧u
Lを読取り、その電圧u
Lを放電電流積算値Qb(j)のときの端子間電圧u
Lb(j)とする(#43)。
【0047】
蓄電池2が全放電完了するまで(#44でNO)、マイコン16は、カウンタjの値を1づつ増加させて(#45)、#42、#43の処理を繰り返す。#42、#43の処理が繰り返されることにより、満充電状態からの各時点での放電電流積算値Qb(j)(j=1、2、・・・)、及び、各電流積算値Qb(j)のときの端子間電圧u
Lb(j)が得られる。蓄電池2が全放電完了すると(#44でYES)、マイコン16は、充電電流積算値Qa(j)、充電時の端子間電圧u
La(j)、満充電状態に充電されたときの電流積算値Qmax、放電電流積算値Qb(j)、及び放電時の端子間電圧u
Lb(j)(j=1、2、・・・)に基いて、所定の演算を行って、SOC−OCV曲線を作成し(#46)、SOC−OCV曲線取得処理を終了する。
【0048】
#1のSOC−OCV曲線取得処理を終えると、マイコン16は、蓄電池2の初期時の電池容量C(0)を算出する(#2)。すなわち、マイコン16は、#1のSOC−OCV曲線取得処理において求めたQmax(SOCが0.0から1.0に増加する間の充電電流積算値)を初期時の電池容量C(0)とする。また、マイコン16は、時計14の計測する現在時刻を読取り、その時刻を電池容量算出時刻T(0)とする(#3)。また、マイコン16は、初期時以降の電池容量Cの算出回数mをm=0に設定する(#4)。#1〜#4の処理は、初期化の動作であり、#1〜#4の処理が終了すると、マイコン16は、放電スイッチ11を開き、充電スイッチ10を閉じて、蓄電池2を充電し、蓄電池2が満充電完了すると、充電スイッチ10を開き、蓄電池2を使用開始できる旨を表示部15に表示する。ここで、ユーザは、充電器4を充電器接続端子9a、9bから取外し、負荷3を負荷接続端子8a、8bに接続する。これにより、蓄電池2は、満充電後の使用開始となり、負荷3は、蓄電池2の電力によって動作可能な状態となる。
【0049】
マイコン16は、蓄電池2の満充電後の使用開始になると(#5でYES)、OCV同定処理を行う(#6)。OCV同定処理において(
図8参照)、マイコン16は、まず、蓄電池2の端子間電圧u
L及び放電電流iのサンプリング回数kをk=1に設定する(#51)。続いて、マイコン16は、蓄電池2の端子間電圧u
L(k)及び放電電流i(k)をサンプリングする(#52)。すなわち、電圧センサ5の計測電圧及び電流センサ6の計測電流をサンプリングする。そして、マイコン16は、同定式(13)を忘却機能付き逐次最小二乗法に適用して、u
L(k)、i(k)、u
L(k−1)、i(k−1)から同定式(13)のパラメータb
0(k)、a
0(k)、a
1(k)を推定する(#53)。すなわち、同定式(13)を忘却機能付き逐次最小二乗法に適用した場合のb
0、a
0、a
1の推定式(20)を用いて、u
L(k)、i(k)、u
L(k−1)、i(k−1)から推定値b
0(k)、a
0(k)、a
1(k)を算出する。なお、u
L(k)の初期値u
L(0)、i(k)の初期値i(0)、b
0(k)の初期値b
0(0)、a
0(k)の初期値a
0(0)、a
1(k)の初期値a
1(0)は、各々、0とする。
【0050】
ここで、マイコン16は、算出した推定値b
0(k)、a
0(k)、a
1(k)が適正であるか否かを判断する(#54)。この判断は、式(18)の右辺の分母「1+a
1」を検査することで行われる。すなわち、1+a
1(k)が非常に小さい値の場合には、推定値b
0(k)、a
0(k)、a
1(k)が適正でないと判断する。これは、内部インピーダンスRbの誤算を防ぐためである。算出した推定値b
0(k)、a
0(k)、a
1(k)が適正であれば(#54でYES)、その推定値b
0(k)、a
0(k)、a
1(k)をそのまま採用し(#55)、適正でなければ(#54でNO)、前回の推定値b
0(k−1)、a
0(k−1)、a
1(k−1)を今回の推定値b
0(k)、a
0(k)、a
1(k)として置換える(#56)。
【0051】
サンプリング回数kが300になるまで(#57でNO)、マイコン16は、サンプリング回数kを1づつ増加させて(#58)、サンプリング周期Tsが経過する毎に(#59でYES)、#52〜#56の処理を繰り返す。サンプリング回数kが300になると(#57でYES)、マイコン16は、b
0(k)、a
0(k)、a
1(k)から内部インピーダンスRa、Rb、Cbを算出する(#60)。すなわち、b
0(k)、a
0(k)、a
1(k)をb
0、a
0、a
1として、式(17)(18)(19)からRa、Rb、Cbを算出する。続いて、マイコン16は、算出したRa、Rb、Cbを同定式(13)に当て嵌めて(b
0(k)、a
0(k)、a
1(k)をb
0、a
0、a
1として同定式(13)に当て嵌めて)、u
L(k)、i(k)、u
L(k−1)、i(k−1)からOCVを同定し(#61)、OCV同定処理を終了する。
【0052】
#6のOCV同定処理を終えると、マイコン16は、同定したOCVから、#1のSOC−OCV曲線取得処理で作成したSOC−OCV曲線に基いて、蓄電池2のSOCを推定する(#7)。推定したSOCが所定の第1の基準SOC1でなく(#8でNO)、また、第2の基準SOC2でなければ(#9でNO)、マイコン16は、#6、#7の処理を繰り返す。#6、#7の処理が繰り返されることにより、蓄電池2の満充電後の使用開始から継続的にOCVが同定されてSOCが推定されていき、SOCの推移(経時変化)が観測される。蓄電池2の電力が消費されてSOCが減少していくと、#6で同定されるOCVが低下してしき、#7で推定されるSOCが減少していく。#7で推定したSOCが所定の第1の基準SOC1(例えば0.9)になると(#8でYES)、マイコン16は、蓄電池2の放電電流積算値Qr(電流センサ6の計測電流の積算値)の積算を開始し(#10)、引き続き、#6、#7の処理を繰り返す。
【0053】
その後、#7で推定したSOCが所定の第2の基準SOC2(例えば0.2)になると(#9でYES)、マイコン16は、放電電流積算値Qrの積算を終了する(#11)。放電電流積算値Qrは、SOCが所定の第1の基準SOC1から所定の第2の基準SOCに推移する間の蓄電池2の放電電流積算値となる。そして、マイコン16は、電池容量Cの算出回数mを1だけ増加させ(#12)、電池容量C(m)をC(m)=Qr/(SOC1−SOC2)によって算出する(#13)。また、マイコン16は、時計14の計測する現在時刻を読取り、その時刻を電池容量算出時刻T(m)とする(#14)。
【0054】
ここで、電池容量Cの算出回数mが2未満であれば(#15でNO)、マイコン16は、#5以降の処理を繰り返す。すなわち、マイコン16は、その後、蓄電池2のSOCが残り少なくなると(例えばSOCが0.1になると)、その旨を表示部15に表示する。ここで、ユーザは、充電器4を接続して、充電指示スイッチ13を操作する。マイコン16は、充電指示スイッチ13が操作されると、充電スイッチ10を閉じて、蓄電池2を充電し、蓄電池2が満充電完了すると、充電スイッチ10を開き、充電を完了した旨を表示部15に表示する。ここで、ユーザは、充電器4を取外す。これにより、蓄電池2は、満充電後の使用開始となり、マイコン16は、#6以降の処理を繰り返す。#6以降の処理が繰り返されることにより、蓄電池2が満充電されて使用される毎に電池容量Cが算出され、電池容量Cの算出回数mが増加し、蓄電池2の複数の異なる時点における電池容量C(1)、C(2)、・・・が算出されていく。
【0055】
電池容量Cの算出回数mが2以上になると(#15でYES)、マイコン16は、残寿命予測処理を行う(#16)。残寿命予測処理において(
図9参照)、マイコン16は、まず、電池容量Cの算出回数mが10未満の場合には(#71でYES)、ΔC(0)=0、t(0)=0として(#72)、カウンタjの値をj=1とし(#73)、電池容量Cの算出回数mが10以上の場合には(#71でNO)、カウンタjの値をj=m−9とする(#74)。これは、電池容量Cの算出回数mが10未満の場合には、これまでに算出した全ての電池容量C(0)、C(1)、・・・、C(m)を用いて蓄電池2の残寿命を予測し、一方、電池容量Cの算出回数mが10以上の場合には、近い過去に算出した10回分の電池容量C(m−9)、C(m−8)、・・・、C(m)を用いて蓄電池2の残寿命を予測するためである。
【0056】
続いて、マイコン16は、ΔC(j)=初期時の電池容量C(0)−電池容量C(j)、及びt(j)=電池容量算出時刻(j)−初期時の電池容量算出時刻T(0)を算出する(#75)。ここで、ΔC(j)は、初期時からの容量減少量であり、t(j)は、容量減少量がΔC(j)になるまでの初期時からの経過時間である。カウンタjの値が電池容量Cの算出回数mになるまで(#76でNO)、マイコン16は、カウンタjの値を1づつ増加させて(#77)、#75の処理を繰り返す。これにより、電池容量Cの算出回数mが10未満の場合には、これまでに算出した全ての電池容量C(0)、C(1)、・・・、C(m)に基く初期時からの容量減少量ΔC(0)、ΔC(1)、・・・、ΔC(m)と、それらの容量減少量ΔC(0)、ΔC(1)、・・・、ΔC(m)になるまでの初期時からの経過時間t(0)、t(1)、・・・、t(m)が得られる。一方、電池容量Cの算出回数mが10以上の場合には、近い過去に算出した10回分の電池容量C(m−9)、C(m−8)、・・・、C(m)に基く初期時からの容量減少量ΔC(m−9)、ΔC(m−8)、・・・、ΔC(m)と、それらの容量減少量ΔC(m−9)、ΔC(m−8)、・・・、ΔC(m)になるまでの初期時からの経過時間t(m−9)、t(m−8)、・・・、t(m)が得られる。
【0057】
続いて、電池容量Cの算出回数mが10未満の場合には(#78でYES)、マイコン16は、ルート則を適用し、ルート則の劣化予測式t=a×ΔC
2+b×ΔC+cを最小二乗法に適用して、ΔC(0)、t(0)、ΔC(1)、t(1)、・・・、ΔC(m)、t(m)から残寿命tzを算出する(#79)。残寿命tzは、現時点から電池容量Cが所定の容量(例えば初期時の電池容量C(0)の半分)に減少するまでの時間である。電池容量Cの算出回数mが10未満の場合にルート則を適用するのは、一般に、蓄電池2の新品からの使い始めにおいては、電池容量Cがルート則に従って減少していくためである。#79では、残寿命tzは、これまでに算出した全ての電池容量C(0)、C(1)、・・・、C(m)とそれらの算出時刻T(0)、T(1)、・・・、T(m)とに基いて算出されることになる。
【0058】
一方、電池容量Cの算出回数mが10以上の場合には(#78でNO)、前回、ルート則を適用していれば(#80でYES)、マイコン16は、ルート則の劣化予測式t=a×ΔC
2+b×ΔC+cを最小二乗法に適用して、ΔC(m−9)、t(m−9)、ΔC(m−8)、t(m−8)、・・・、ΔC(m)、t(m)からa、b、cを算出し(#81)、a、b、cが前回から大きく変化しているか否かを判断する(#82)。これは、一般に、蓄電池2の新品からの使い始めからある程度時間が経過すると、電池容量Cが線形則に従って減少していく(ルート則に従った減少から線形則に従った減少に変化する)ことがあり、電池容量Cの減少が線形則に従った減少に変化したか否かを判断するためである。ここで、a、b、cが前回から大きく変化していなければ(#82でNO)、マイコン16は、ルート則を適用し、ルート則の劣化予測式t=a×ΔC
2+b×ΔC+cを最小二乗法に適用して、ΔC(m−9)、t(m−9)、ΔC(m−8)、t(m−8)、・・・、ΔC(m)、t(m)から、残寿命tzを算出する(#83)。一方、a、b、cが前回から大きく変化していれば(#82でYES)、マイコン16は、電池容量Cの減少が線形則に従った減少に変化したと判断し、線形則を適用し、線形則の劣化予測式t=b×ΔC+cを最小二乗法に適用して、ΔC(m−9)、t(m−9)、ΔC(m−8)、t(m−8)、・・・、ΔC(m)、t(m)から、残寿命tzを算出する(#84)。#83及び#84では、残寿命tzは、近い過去に算出した10回分の電池容量C(m−9)、C(m−8)、・・・、C(m)とその算出時刻T(m−9)、T(m−8)、・・・、T(m)に基いて算出されることになる。
【0059】
#80において、前回、ルート則を適用していなければ(線形則を適用していれば)(#80でNO)、マイコン16は、線形則の劣化予測式t=b×ΔC+cを最小二乗法に適用して、ΔC(m−9)、t(m−9)、ΔC(m−8)、t(m−8)、・・・、ΔC(m)、t(m)からb、cを算出して(#85)、b、cが前回から大きく変化しているか否かを判断する(#86)。そして、b、cが前回から大きく変化していなければ(#86でNO)、マイコン16は、線形則を適用して、残寿命tzを算出し(#84)、一方、b、cが前回から大きく変化していれば(#86でYES)、マイコン16は、電池容量Cの減少がルート則に従った減少に変化したと判断し、ルート則を適用して、残寿命tzを算出する(#83)。
【0060】
#79、#83、又は#84で残寿命tzを算出した後、マイコン16は、その算出した残寿命tzを表示部15に表示し(#87)、残寿命予測処理を終了する。残寿命予測処理を終えると、マイコン16は、#5以降の処理を繰り返す。これにより、蓄電池2が満充電されて使用される毎に、新たに電池容量Cが算出されて、新たに残寿命rzが予測され、その残寿命tzが表示部15に表示される。
【0061】
本発明によれば、蓄電池2のOCVを一定として蓄電池2の内部インピーダンスが同定され、蓄電池2の内部インピーダンスを一定として蓄電池2のOCVが同定される。これにより、蓄電池2のOCVを高精度に同定することができ、蓄電池2のSOCの推定精度を高めることができる。従って、蓄電池2の電池容量Cの推定精度を高めることができ、蓄電池2の残寿命tzを高精度に予測することができる。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、OCVの同定において、蓄電池2の端子間電圧u
Lと放電電流iのサンプリング周期Tsを変動させるようにしてもよい。このようにすれば、計算量を増やすことなく、速い時定数を持った内部インピーダンスと遅い時定数を持った内部インピーダンスの両方を観測できるため、低価格のマイコン16でも、OCVの同定精度を高めることができる。また、OCVの同定において、同定式(13)を、忘却機能付き最小二乗法に代えて、忘却機能付でない逐次最小二乗法や一括最小二乗法に適用してもよい。また、初期時の電池容量C(0)及び初期時以降の電池容量C(1)、C(2)、・・・の算出において、放電電流積算値に代えて、充電電流積算値を用いてもよい。また、残寿命Tzの予測において、初期時の電池容量C(0)及び初期時以降の電池容量C(1)、C(2)、・・・に加え、蓄電池2の初期時の内部インピーダンス及び初期時以降に同定式(13)を用いて同定した内部インピーダンスに基いて、残寿命tzを予測するようにしてもよい。
【0063】
また、蓄電池2の放電電流又は充電電流にパルスを発生させて、その応答波形を参考情報として加味して、蓄電池2の内部インピーダンスを同定するようにしてもよい。また、蓄電池2の放電電流又は充電電流に交流電流を重畳させて、その応答を参考情報として加味して、蓄電池2の内部インピーダンスを同定するようにしてもよい。また、蓄電池2の充放電回数に基いて残寿命tzを予測するようにしてもよい。すなわち、蓄電池2の充放電回数をNとし、N=a×ΔC
2+b×ΔC+c又はN=b×ΔC+cのいずれかに従うと仮定して、残寿命tzを予測するようにしてもよい。また、蓄電池2の温度依存の劣化傾向を加味して、残寿命tzを予測するようにしてもよい。また、本発明は、リチウムイオン蓄電池以外の蓄電池にも適用可能である。