特許第6238327号(P6238327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6238327シートベルトアンカーボルト付近の衝撃吸収構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238327
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】シートベルトアンカーボルト付近の衝撃吸収構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/24 20060101AFI20171120BHJP
   B60R 22/28 20060101ALI20171120BHJP
   B60R 21/04 20060101ALI20171120BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B60R22/24
   B60R22/28
   B60R21/04 A
   B60R13/02 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-544979(P2016-544979)
(86)(22)【出願日】2015年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2015060063
(87)【国際公開番号】WO2016031287
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2016年12月16日
(31)【優先権主張番号】特願2014-173599(P2014-173599)
(32)【優先日】2014年8月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000124454
【氏名又は名称】河西工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069431
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 成則
(72)【発明者】
【氏名】須藤 眞宏
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−076875(JP,A)
【文献】 特開2002−029257(JP,A)
【文献】 米国特許第6244626(US,B1)
【文献】 仏国特許出願公開第2910410(FR,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0289470(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/24
B60R 21/04
B60R 22/28
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネルと車両用内装部品の間に位置し、かつ、前記車体パネルから車内の方向に向けて突出した形態のシートベルトアンカーボルト付近で車外や車内からの衝撃を吸収する構造であって、
前記シートベルトアンカーボルトの頭部を収容する筒体と、
前記車体パネルに対向する天板を備えるとともに前記筒体の隣に併設した衝撃吸収ボックスと、
前記衝撃吸収ボックスを支持するベースと、
前記ベースを前記車両用内装部品の裏面に取付ける取付け手段と、を有し、
前記衝撃吸収ボックスの側面に、その衝撃吸収ボックスの潰れ変形の基点として、段差部を設けたこと、および、前記衝撃吸収ボックスと前記筒体との間に、その衝撃吸収ボックスの転倒による逃げを防止する手段として、リブを設けたこと
を特徴とするシートベルトアンカーボルト付近の衝撃吸収構造。
【請求項2】
前記リブは、前記段差部付近から前記衝撃吸収ボックスの根元部付近に向うのに従い拡がった裾拡がりの形状になっていること
を特徴とする請求項1に記載のシートベルトアンカーボルト付近の衝撃吸収構造。
【請求項3】
前記筒体の根元部と前記リブの根元部とを連結リブで繋げて一体化したこと
を特徴とする請求項1または2に記載のシートベルトアンカーボルト付近の衝撃吸収構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルーリング(シートベルトを通して吊るす手段)を車体パネルに取付けるためのシートベルトアンカーボルト付近において、車内や車外からの衝撃を吸収する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートベルトアンカーボルト付近では、車内から車両用内装部品を介して作用する衝撃や、車外から車体パネルを介して作用する衝撃を吸収するために、例えば特許文献1に示された衝撃吸収構造を採用している。
【0003】
特許文献1の衝撃吸収構造は、具体的には、シートベルトアンカーボルト(22)付近において、車両用内装部品(7)の裏面に衝撃吸収リブ(57a、57b)を設け、この衝撃吸収リブ(57a、57b)の先端とシートベルトアンカーボルト(22)の頭部とが対向するように設定した構造になっている。
【0004】
しかしながら、前記のような特許文献1の衝撃吸収構造では、シートベルトアンカーボルト(22)付近において、車内から車両用内装部品(7)を介して衝撃が作用したときや、車外から車体パネル(5)を介して衝撃が作用したとき、シートベルトアンカーボルト(22)の頭部で衝撃吸収リブ(57a、57b)が押し潰されることにより、かかる衝撃を吸収する形式であるため、そのシートベルトアンカーボルト(22)の頭部と衝撃吸収リブ(57a、57b)とのクリアランスが十分でない場合、衝撃発生時から比較的早い段階で衝撃吸収リブが潰れてしまい、十分な衝撃吸収効果が得られないという問題点がある。
【0005】
以上の説明の中でカッコ内の参照符号は特許文献1で用いられているものである。
【0006】
前記のような特許文献1の衝撃吸収構造とは別に、シートベルトアンカーボルト付近において衝撃を吸収する構造としては、例えば、図3(a)に示した衝撃吸収構造40が考えられる。
【0007】
この図3(a)の衝撃吸収構造40は、車体パネルW1と車両用内装部品W2の間に位置し、かつ、シートベルトアンカーボルトB1付近において、車内から車両用内装部品W2を介して衝撃が作用したときや、車外から車体パネルW1を介して衝撃が作用したときに、衝撃吸収ボックス5が潰れることで、かかる衝撃を吸収する形式になっている。
【0008】
しかしながら、前記のような図3(a)の衝撃吸収構造40では、例えば、衝撃吸収ボックス5の斜め下方向(図3(b)中の矢印R方向)から車両用内装部品W2を介して衝撃吸収ボックス5に衝撃が作用したときに、図3(b)のように、衝撃吸収ボックス5がシートベルトアンカーボルトB1から逃げる方向に転倒してしまい(衝撃吸収ボックス5の転倒による逃げ・スリップ現象)、設計の狙い通りに衝撃吸収ボックス5が潰れない等、衝撃吸収ボックス5の潰れ方が不安定であり、バラツキのない安定な衝撃吸収効果が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−220713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、衝撃吸収ボックスの潰れ方が安定し、バラツキのない安定な衝撃吸収効果を得るのに好適なシートベルトアンカーボルト付近の衝撃吸収構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、車体パネルと車両用内装部品の間に位置し、かつ、前記車体パネルから車内の方向に向けて突出した形態のシートベルトアンカーボルト付近で車外や車内からの衝撃を吸収する構造であって、前記シートベルトアンカーボルトの頭部を収容する筒体と、前記車体パネルに対向する天板を備えるとともに前記筒体の隣に併設した衝撃吸収ボックスと、前記衝撃吸収ボックスを支持するベースと、前記ベースを前記車両用内装部品の裏面に取付ける取付け手段と、を有し、前記衝撃吸収ボックスの側面に、その衝撃吸収ボックスの潰れ変形の基点として、段差部を設けたこと、および、前記衝撃吸収ボックスと前記筒体との間に、その衝撃吸収ボックスの転倒による逃げを防止する手段として、リブを設けたことを特徴とする。
【0012】
前記本発明において、前記リブは、前記段差部付近から前記衝撃吸収ボックスの根元部付近に向うのに従い拡がった裾拡がりの形状になっていることを特徴としてもよい。
【0013】
前記本発明において、前記筒体の根元部と前記リブの根元部とを連結リブで繋げて一体化したことを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明にあっては、シートベルトアンカーボルト付近の衝撃吸収構造において、実際に衝撃を吸収する部材として、衝撃吸収ボックスを採用したことに加えてさらに、その衝撃吸収ボックスの側面に、その衝撃吸収ボックスの潰れ変形の基点として、段差部を設ける構成、および、前記衝撃吸収ボックスと前記筒体との間に、その衝撃吸収ボックスの転倒による逃げを防止する手段として、リブを設ける構成を採用したため、以下の作用効果を奏する。
【0015】
《作用効果(その1)》
シートベルトアンカーボルト付近において、車内から車両用内装部品を介して作用する衝撃の方向や、車外から車体パネルを介して作用する衝撃の方向にはバラツキがあり、いつも同じ方向から衝撃が作用するとは限らない。ところで、本発明では、そのような衝撃の方向にバラツキがあっても、衝撃吸収ボックスはその側面の段差部を基点として潰れるので、必ず同じ方向に衝撃吸収ボックスが潰れる、つまり、衝撃吸収ボックスの潰れ方が安定する点で、バラツキのない安定な衝撃吸収効果を得るのに好適なシートベルトアンカーボルト付近の衝撃吸収構造を提供し得る。
【0016】
《作用効果(その2)》
特に、本発明では、衝撃により衝撃吸収ボックスがシートベルトアンカーボルトから逃げる方向に転倒しようとしたときに、リブがその転倒方向に引っ張られることで転倒阻止の踏ん張り作用を発揮するため、衝撃吸収ボックスの転倒を効果的に抑制することができ、衝撃吸収ボックスが設計の狙い通りに潰れるようになる等、衝撃吸収ボックスの潰れ方がより一層安定するという作用効果も得られる。
【0017】
《作用効果(その3)》
本発明では、従来のように十字状のリブで衝撃を吸収する方式を廃止し、衝撃吸収ボックスで衝撃を吸収する方式を採用したので、衝撃エネルギーの吸収量が増大し、必要な衝撃エネルギー吸収値を満足するのに好適な衝撃吸収構造を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るシートベルトアンカーボルト付近の衝撃吸収構造を適用したシートベルト装置の断面図。
図2】(a)は図1の衝撃吸収構造の側面図、(b)は(a)のA矢視平面図。
図3】(a)はシートベルトアンカーボルト付近における従来の衝撃吸収構造の断面図、(b)はその動作説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明に係るシートベルトアンカーボルト付近の衝撃吸収構造を適用したシートベルト装置の断面図、図2(a)は、図1の衝撃吸収構造の側面図、図2(b)は、同図(a)のA矢視平面図である。
【0021】
《シートベルト装置の概要》
図1のシートベルト装置1は、金属製の車体パネルW1と、これに所定の隙間を隔てて取付けられた樹脂製の車両用内装部品(例えばリヤサイドピラー)W2との間に、図示しないシートベルト繰出し・巻取り装置から繰出されたシートベルト2を備えており、このシートベルト2の先端部(図示省略)は、スルーリング3の挿通孔3Aを通して車両用内装部品W2の開口OP(図2(b)参照)から車内に露出している。
【0022】
前記スルーリング3は、シートベルトアンカーボルトB1により車体パネルW1に直接取付けられるとともに、シートベルトアンカーボルトB1を中心として左右方向に揺動できるように設置してある。
【0023】
《シートベルトアンカーボルト付近の衝撃吸収構造の説明》
前記シートベルトアンカーボルトB1は、車体パネルW1から車内に向けて突出した形態の突起物(車体パネル突起物)であり、このようなシートベルトアンカーボルトB1付近での衝撃吸収構造4は、図1のように、車体パネルW1と車両用内装部品W2の間に位置し、かつ、シートベルトアンカーボルトB1付近で車外や車内からの衝撃を吸収するものである。
【0024】
衝撃吸収構造4は、具体的には、シートベルトアンカーボルトB1の頭部を収容する筒体12と、車体パネルW1に対向する天板5Aを備えるとともに筒体12の隣に併設した衝撃吸収ボックス5と、衝撃吸収ボックス5を支持するベース6と、ベース6を車両用内装部品W1の裏面に取付ける取付け手段7と、を有している。
【0025】
衝撃吸収ボックス5は、その天板5Aの縁部に一体に形成した四方の側板5B、5C、5D、5Eを備えることにより、側面視で台形の形状となるように構成してある。
【0026】
また、図1の衝撃吸収構造4では、衝撃吸収ボックス5の側面(具体的には側板5B外面)に、衝撃吸収ボックス5の潰れ変形の基点として、階段状の段差部8を1段設けている。
【0027】
図1の衝撃吸収構造4では、車内や車外からの衝撃によって衝撃吸収ボックス5がシートベルトアンカーボルトB1方向に向ってお辞儀をする形態で座屈して潰れるように設定するために、前記四方の側板5B〜5EのうちシートベルトアンカーボルトB1と対向している側板5Bに段差部6を設けたが、これに限定されることはない。
【0028】
例えば、側板5B以外の別の側板5C〜5Eに前記段差部8を設けることで、シートベルトアンカーボルトB1以外の方向に衝撃吸収ボックス5が座屈し潰れるように設定してもよい。また、四方の側板5B〜5Eのうちいずれか1つの同一側板に前記段差部8を2段以上設けてもよいし、前記四方の側板5B〜5Eのうちいずれか2以上の側板に前記段差部8を1つずつ、又は複数設けてもよい。
【0029】
さらに、図1の衝撃吸収構造4では、衝撃吸収ボックス5と筒体12との間に、衝撃吸収ボックス5の転倒による逃げを防止する手段として、リブ9を設けている。
【0030】
ところで、図3(a)に示した衝撃吸収構造40では、例えば衝撃吸収ボックス5の斜め下方向(同図(b)中の矢印R方向)から車両用内装部品W2を介して衝撃吸収ボックス5に衝撃が作用したときに、その衝撃吸収ボックス5が設計の狙い通りに潰れず、シートベルトアンカーボルトB1から逃げる方向に転倒してしまう現象(衝撃吸収ボックス5の転倒による逃げ・スリップ現象)が本発明者等によって確認されている。
【0031】
これに対し、図1に示した衝撃吸収構造4によると、前記のように衝撃吸収ボックス5と筒体12との間にリブ9を設けており、このリブ9は、衝撃吸収ボックス5が前記のように転倒しようとしたときに、その転倒方向に引っ張られることで転倒阻止の踏ん張り作用を発揮するため、衝撃吸収ボックス5の転倒を効果的に抑制することができ、衝撃吸収ボックス5を設計の狙い通りに潰れるものとするのに好適である。
【0032】
図1の衝撃吸収構造4においては、リブ9の具体的な形状として、かかるリブ9は、段差部8付近から衝撃吸収ボックス5の根元部付近に向うのに従い拡がった裾広がりの形状とした。このような裾拡がりの形状とした理由は、衝撃吸収ボックス5がその根元部5F付近を基点として転倒しようとするため、衝撃吸収ボックス5の根元部5F付近で前述の転倒阻止の踏ん張り作用を高めるためである。なお、前記裾広がりの形状は図1のリブ9のような三角形状に限定されることはない。
【0033】
また、図1の衝撃吸収構造4では、筒体12の根元部とリブ9の根元部とを連結リブ13で繋げて一体化することにより、前述の転倒阻止の踏ん張り作用がより一層高められている。なお、前述の筒体12はその断面が多角形のもの(角筒)と円形のもの(円筒)との双方を含む。
【0034】
図1の衝撃吸収構造4では、前記リブ9を2本設けているが(図2(a)参照)、その本数は必要に応じて適宜増減変更することができる。
【0035】
前記ベース6は、衝撃吸収ボックス5を支持する手段として、その衝撃吸収ボックス5の下部に設けられている。なお、図1の衝撃吸収構造4では、前記ベース6と衝撃吸収ボックス5を樹脂で一体成形しているが、それらを別々に成形して後で組立てる方式を採用することも可能である。
【0036】
図2(a)(b)を参照すると、前記取付け手段7は、車両用内装部品W1の裏面に突出形成した突起10と、前記ベース6に開設した嵌合孔11との嵌合により、ベース6を車両用内装部品W1の裏面に位置決めして取付ける構造になっているが、これ以外の別の構造を採用することもできる。
【0037】
以上説明した本実施形態の衝撃吸収構造4によると、シートベルトアンカーボルトB1付近において、車内から車両用内装部品W2を介して作用する衝撃の方向や、車外から車体パネルW1を介して作用する衝撃の方向にバラツキがあっても、当該衝撃吸収ボックス5はその側面の段差部8を基点として潰れるので、必ず同じ方向に衝撃吸収ボックス5が潰れる、つまり、衝撃吸収ボックス5の潰れ方が安定する点で、バラツキのない安定な衝撃吸収効果が得られる。
【0038】
特に、本実施形態の衝撃吸収構造4では、衝撃により衝撃吸収ボックス5がシートベルトアンカーボルトB1から逃げる方向に転倒しようとしたときに、リブ9がその転倒方向に引っ張られることで転倒阻止の踏ん張り作用を発揮するため、衝撃吸収ボックス5の転倒を効果的に抑制することができ、衝撃吸収ボックス5が設計の狙い通りに潰れるようになる等、衝撃吸収ボックス5の潰れ方がより一層安定する。
【0039】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 シートベルト装置
2 シートベルト
3 スルーリング
3A 挿通孔
4 衝撃吸収構造
5 衝撃吸収ボックス
5A 天板
5B、5C、5D、5E 側板
5F 根元部
6 ベース
7 取付け手段
8 段差部
9 リブ
10 突起
11 嵌合孔
12 筒体
13 連結リブ
B1 シートベルトアンカーボルト(車体パネル突起物)
OP 開口
W1 車体パネル
W2 車両用内装部品
図1
図2
図3