(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自動二輪車10のエンジン14を制御するためのエンジン制御ユニット(ECU)12を備える自動二輪車10用のECU12取付構造であって、該ECU12はシート11の下に取り付けられたユーティリティボックス44の両側を通る一対のシートレール40L、40R付近に設置され、
該ユーティリティボックス44は、該シートレール40L、40Rの内側部分に凹部52を備えるように形成されており、
該ECU12は、該シートレール40L、40Rの内側部分に該ユーティリティボックス44の該凹部52に内側に面して配置され、
該シートレール40L、40Rの外側には、自動二輪車10を側面から見て該ECU12の部分に重複する位置に他の電気部品26を設置することができ、
該ECU12は、該ECU12の外部表面と該シートレール40L、40Rの内部表面との間の空間ギャップ72に取り付けられ、しかも
該ECU12は該シートレール40L、40Rの上に配置され、
該シートレール40L、40Rは該ECU12のカプラ60a、60bに重複し、
該他の電気部品26は該ECU12の該カプラ60a、60bに重複する位置に配置できること
を特徴とするECU取付構造。
前記ECUがエンジンの燃料噴射及び点火を制御し、また停止条件下では該エンジンを停止し、ライダーが前記スロットルを操作して該自動二輪車を始動させるときに該エンジンを始動させるアイドルストップシステムも制御する、請求項1に記載のECU取付構造。
前記ユーティリティボックス44の前記凹部52が下側で開口するように形成されており、そこで、該ECU12のカプラ60a、60b用のハーネスワイヤ17が該凹部52の該下側を通って延在することができる、請求項1に記載のECU取付構造。
前記凹部52が前記ユーティリティボックス44の右側及び下側に形成され、前記ECU12が該凹部52に内側に面して配置される、請求項1に記載のECU取付構造。
前記ECUの内部表面と前記ユーティリティボックス44の前記凹部52との間に空間ギャップ74が存在するように該ECUが設置される、請求項3に記載のECU取付構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開示/説明
技術的課題
特許第3868944号に記載された制御ユニット取付構造に関連する問題は、制御部をシートレール(後部フレームの左側メンバー)の外側に取り付け、そして制御部が保護のためにその外側に特殊なカバーを取り付ける必要があることである。また、ユーティリティボックスの側に専用カバーが存在することも、自動二輪車の本体の形状及び得られる自動二輪車の空気力学に悪影響を及ぼし、その結果、非流線を有する自動二輪車となってしまい、外観の魅力が少なくなる。さらに、ユーティリティボックスの構造は、自動二輪車に設置することができる部品のサイズ、特に制御部のサイズを制限する。近年、この出願人は、燃費の向上のために自動二輪車用の「アイドリングストップシステム(ISS)」を構成した。このISSは、クランクシャフトを直接回転させるブラシレススタータモータを必要とし、また、「ブラシレスモータドライバユニット」を構成することも必要である。さらに、自動二輪車のエンジンには、通常、燃料噴射・点火制御装置、すなわち、エンジン制御ユニット(ECU)が装備されている。したがって、現代のECUは、初期世代のECUよりもサイズが大きい場合があるため、顧客に対してアイドルストップ機能を提供するためにこのようなブラシレスモータドライバユニットを統合する必要がある。結果として、このような大型のECUは、より幅広い車体形状とすることなしに自動二輪車に取り付けることは困難である。
【0005】
上記の問題の少なくともいくつかを解決する自動二輪車ECU取付構造を提供することが望まれている。例えば、いかなる特殊な保護カバーもなしに自動二輪車にECUを搭載するのを可能にし、かつ、自動二輪車のボディサイズをスリムに維持するECU取付構造を提供することが望まれている。特に、自動二輪車の流線型ボディ形状に悪影響を与えることなく近代的な大型ECUを自動二輪車に容易に搭載することができるようにする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
技術的解決手段
請求項1に記載の本発明は、自動二輪車のエンジンを制御するためのエンジン制御ユニット(ECU)を備える自動二輪車用のECU取付構造であって、該ECUはシートの下に取り付けられたユーティリティボックスの両側を通る一対のシートレール付近に設置され、該ユーティリティボックスは、該シートレールの内側部分に凹部を備えるように形成されており、該ECUは、該シートレールの内側部分に該ユーティリティボックスの該凹部に内側に面して配置され、該シートレールの外側には、自動二輪車を側面から見て該ECUの部分に重複する少なくとも1つの位置に別の電気部品を設置することができ
、該ECUは、該ECUの外部表面と該シートレールの内部表面との間の空間ギャップに取り付けられ、しかも該ECUは該シートレールの上に配置され、該シートレールは該ECUのカプラに重複し、該他の電気部品は該ECUの該カプラに重複する位置に配置できることを特徴とする自動二輪車用ECU取付構造である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1のECU取付構造において、前記ECUがエンジンの燃料噴射及び点火を制御し、また停止条件下ではエンジンを停止し、ライダーがスロットルを操作して前記自動二輪車を始動させるときにエンジンを始動させるアイドルストップシステムも制御するという特徴を有する。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1のECU取付構造において、前記ユーティリティボックスの前記凹部が下側で開口するように形成されており、そこで、該ECUのカプラ用のハーネスワイヤが該凹部の該下側を通って延在することができるという特徴を有する。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1のECU取付構造において、前記他の電気部品が少なくとも点火コイルを含むという特徴を有する。
【0010】
請求項
5に記載の発明は、請求項1のECU取付構造において、
前記凹部が後部側壁部及び前部傾斜壁部を備えるという特徴を有する。
【0011】
請求項
6に記載の発明は、請求項1のECU取付構造において、前記ECUが側面から見て該シートレールに重複して取り付けられるという特徴を有する。
【0012】
請求項
7に記載の発明は、請求項1のECU取付構造において、前記凹部が前記ユーティリティボックスの右側及び下側に形成され、該ECUが該凹部に内側に面して配置されるという特徴を有する。
【0013】
請求項
8に記載の発明は、請求項3のECU取付構造において、前記ECUが正面から見て前記ユーティリティボックスと重複するのを回避する位置に設置されるという特徴を有する。
【0014】
請求項
9に記載の発明は、請求項3のECU取付構造において、前記ECUの内部表面と前記ユーティリティボックスの凹部との間に空間ギャップが存在するようにECUが設置されるという特徴を有する。
【0015】
請求項10に記載の本発明は、自動二輪車のエンジンを制御するためのエンジン制御ユニット(ECU)を備える自動二輪車用のECU取付構造であって、該ECUはシートの下に取り付けられたユーティリティボックスの両側を通る一対のシートレール付近に設置され、該ユーティリティボックスは、該シートレールの内側部分に凹部を備えるように形成されており、該ECUは、該シートレールの内側部分に該ユーティリティボックスの該凹部に内側に面して配置され、該シートレールの外側には、自動二輪車を側面から見て該ECUの部分に重複する少なくとも1つの位置に別の電気部品を設置することができ、該ECUは、該ECUの外部表面と該シートレールの内部表面との間の空間ギャップに取り付けられ、該ユーティリティボックスの該凹部は下側で開口するように形成されており、そこで、該ECUのカプラ用のハーネスワイヤが該凹部の該下側を通って延在することができ、しかも該ECUの内部表面と該ユーティリティボックスの凹部との間に空間ギャップが存在するように該ECUが設置されることを特徴とする自動二輪車用ECU取付構造である。
【発明の効果】
【0016】
有利な効果
請求項1に記載の発明によれば、ECUは、シートレールの内側部分に、ユーティリティボックスの凹部に内側に面して配置される。その結果、ECUの内側部分は、ユーティリティボックスで覆われ又は保護され、ECUの外側部分は、シートレールにより保護される。したがって、自動二輪車はECUを特に保護するための追加のカバー部を備える必要はない。さらに、ECUは、自動二輪車の横方向の寸法に影響を与えることなく、自動二輪車の側面に有利に配置するのを可能にするスリムな又は薄い輪郭又は構造を有することができる。この構成は、同様に自動二輪車の車体を自由に設計することを可能にするコンパクトなECU取付構造を可能にする。このコンパクトな取付構造は、自動二輪車にさらに流線型の車体を与えることに加えて、改善された空気力学的特性と外観を与える。さらに、シートレールとユーティリティボックスと間にECUが配置されているため、ECUが大きな又は比較的大きな横方向のサイズ又は表面積を有する場合であっても、他の電気部品(及び場合によっては非電気部品)をシートレールの外側の特定の位置に(例えば、シートレールの外面に又はそれに沿って)容易に設置することができる。
さらに、ECUの外部表面とシートレールの内部表面との間の空間ギャップは、自動二輪車が走行しているときに空気が容易に流れることのできる通気空間を提供する。ECUの外側表面を横切るこの空気流の改善は、ECUの熱放散速度を向上させる。ECUは、シートレール上に延在するため、側面から容易にみること又は特定することができるように配置される。さらに、自動二輪車の組立検査手順や自動二輪車の保守手順の間に、ECUの位置は、シートレールの外側に配置される他の電気部品(例えば、点火コイル)に対して区別するのが容易である。さらに、点火コイルに関して、比較的遠いECUと点火コイルとの分離距離は、ECUに及ぼす点火コイルノイズの影響を減少させ、最小化し、又は排除する。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、ECUはエンジンの3つの機能、即ち、燃料噴射、点火及びアイドルストップシステムを制御するため、ECUは通常よりも大型になり、本発明は、特別なカバー手段や大型の本体カバーを作製することなくユーティリティボックス付近にこのような大型ECUを搭載するのを可能にする。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、ユーティリティボックス凹部の下部空間領域では、凹部は下側に開口するように形成されているため、ECUカプラ用ハーネスワイヤがユーティリティボックス下に通って延在することができる。ECUカプラに入る又は侵入する水は下方に排出され、ハーネスワイヤの位置では、水はカプラの内側には集まらない。さらに、ユーティリティボックスの上側において、凹部の上方では、ユーティリティボックスは、ECUの上面を水から効率的に保護する隔壁を備えることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、スクーターなどの自動二輪車は、それらのエンジンが座席の下に設置されている。このような自動二輪車については、点火コイルをシートレールの外側の位置に設置することができる。この点火コイルの設置位置により、エンジンまでの電気配線の長さが短くなり、点火エネルギー損失が有利に低減する。
【0020】
請求項
5に記載の発明によれば、
後部側壁部に対する前部傾斜壁部の傾斜又は傾きは、ユーティリティボックスの最大容量を保持する。
【0021】
請求項
6に記載の発明によれば、ECUは、シートレールによって実質的に保護され、それによって独立したECUカバーなどの特定のECU保護構造の必要性が排除される。さらに、シートレールとユーティリティボックスの凹部との間のECUの位置は、ECUによる自動二輪車の幅方向又は横方向の広がりの増加を防止し、それによってより広いボディサイズに関連したコストの増大が回避される。
【0022】
請求項
7に記載の発明によれば、凹部は、ユーティリティボックスの側面の特定の部分、例えば、ユーティリティボックスの右側の後方下部に形成されている。凹部は、ユーティリティボックスの一部のみ若しくはその表面の部分、特に右側の後方下部領域に又はそれに沿って形成でき、それによってユーティリティボックスの総貯蔵容量を増加又は最大化することができる。
【0023】
請求項
8に記載の発明によれば、ECUの正面又は前向き面は、自動二輪車が走行しているときに自動二輪車の前部から自動二輪車の後部に向かって流れる風にさらされ、これは、ECUの熱放散速度を向上させる。
【0024】
請求項
9に記載の発明によれば、ECUの内部表面とユーティリティボックスの凹部との間の空間ギャップは、自動二輪車が走行しているときに風が容易に流れることができる通気空間を与える。この通気空間はECUの熱放散速度を向上させる。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、ECUは、シートレールの内側部分に、ユーティリティボックスの凹部に内側に面して配置される。その結果、ECUの内側部分は、ユーティリティボックスで覆われ又は保護され、ECUの外側部分は、シートレールにより保護される。したがって、自動二輪車はECUを特に保護するための追加のカバー部を備える必要はない。さらに、ECUは、自動二輪車の横方向の寸法に影響を与えることなく、自動二輪車の側面に有利に配置するのを可能にするスリムな又は薄い輪郭又は構造を有することができる。この構成は、同様に自動二輪車の車体を自由に設計することを可能にするコンパクトなECU取付構造を可能にする。このコンパクトな取付構造は、自動二輪車にさらに流線型の車体を与えることに加えて、改善された空気力学的特性と外観を与える。さらに、シートレールとユーティリティボックスと間にECUが配置されているため、ECUが大きな又は比較的大きな横方向のサイズ又は表面積を有する場合であっても、他の電気部品(及び場合によっては非電気部品)をシートレールの外側の特定の位置に(例えば、シートレールの外面に又はそれに沿って)容易に設置することができる。さらに、ECUの外部表面とシートレールの内部表面との間の空間ギャップは、自動二輪車が走行しているときに空気が容易に流れることのできる通気空間を提供する。ECUの外側表面を横切るこの空気流の改善は、ECUの熱放散速度を向上させる。さらに、ユーティリティボックス凹部の下部空間領域では、凹部は下側に開口するように形成されているため、ECUカプラ用ハーネスワイヤがユーティリティボックス下に通って延在することができる。ECUカプラに入る又は侵入する水は下方に排出され、ハーネスワイヤの位置では、水はカプラの内側には集まらない。さらに、ユーティリティボックスの上側において、凹部の上方では、ユーティリティボックスは、ECUの上面を水から効率的に保護する隔壁を備えることができる。ECUの内部表面とユーティリティボックスの凹部との間の空間ギャップは、自動二輪車が走行しているときに風が容易に流れることができる通気空間を与える。この通気空間はECUの熱放散速度を向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
例示実施形態の詳細な説明
以下、本発明の実施形態に係る自動二輪車用エンジン制御装置(ECU)取付構造を、
図1〜
図8の図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係るECU12取付構造を備える自動二輪車又はバイク10の右側図である。
図1を参照すると、いくつかの実施形態では、自動二輪車10は、関連する技術における当業者であれば理解されるようなアンダーボーン型若しくはスクーター型自動二輪車又はほぼ同様のタイプの鞍乗若しくは鞍乗り型車両に相当する構造要素又は特徴である又はそれらを示す。自動二輪車10は、フレーム部材、チューブ又はパイプのセットから形成される基礎構造フレームを備える。本発明並びにここに記載される自動二輪車の内部部品及び構成要素の理解を容易にするために、自動二輪車の外部本体カバーは図からは省略されている。
【0029】
図1に示す実施形態では、自動二輪車10は、ライダー/運転者がステップスルーできる基礎フレームと、当業者によって理解されるようにライダーの足を支持するための上面を有するステップフロア(図示せず)とを有するスイング式エンジンユニット14を備える(所謂スクーター)。自動二輪車10は、ライダー及び任意の乗客が着座するための、ヒンジ部66を介して開閉可能なシート11をさらに備える。自動二輪車10のそれぞれの側に配置された一対のピリオンステップ18L、Rが乗員の足を支持することができる;自動二輪車10の後方にはシート11の後ろに配置されるグラブレール20が乗員の手で把握するために構成されている。
【0030】
自動二輪車のエンジンユニット14は、シート11の下に配置されている。エンジンユニット14は、自動二輪車の構造フレームに揺動可能に取り付けられ、かつ、当業者によって容易に理解されるように、クランクケース15と、シリンダヘッド16aを有するシリンダと、シリンダヘッドカバー16bとを備える。エンジンユニット14は、トランスミッション、例えば、スクーターの左側にあるCVTケース(図示せず)内に配置される連続可変トランスミッション(CVT、例えばベルト式CVT)によって自動二輪車10の後車軸に送ることのできる推進力又は駆動力を発生させるように構成される。エンジンユニット14は、CVTケースと同じ側にエアクリーナ22に接続された吸気系を備え、この吸気系は、空気から粒子状物質をろ過し除去してからエンジンユニット14に濾過された空気を供給する。また、吸気系は、ECU12により制御される燃料噴射装置も備える。エンジンユニット14は、エンジンユニット14の音響出力を低下させるマフラーに連結された排気口及び排気管をさらに備える。エンジンユニット14への燃料は、エンジンユニット14上に配置されかつシート11の下に配置される燃料タンク24から燃料噴射装置に供給される。ECU12により制御される点火コイル26がスパークプラグ28に電気火花を生じさせ、それによりエンジンユニット14を始動させるために空気・燃料混合物に点火する。
【0031】
自動二輪車10は、エンジンユニット14を始動させるための電子装置(例えば、スタータモータ)を備えると共に、自動二輪車10は、
図4をさらに参照して例示されるように、典型的にはキック始動機構をさらに備える。スタータモータは、エンジンユニット14のクランクシャフトに連結するブラシレススタータモータであり、クランクシャフトが直接的に迅速に素早く回転するのを可能にする。また、ECU12は、自動二輪車の現在の走行状態に応じてブラシレススタータモータを制御する。ECU12は、スクーターが例えば交通信号で停止したときにエンジンを停止させ、そしてライダーが前方に行こうとするときなど、ライダーがスロットルを操作したときにエンジンを再始動させてスタータモータを作動させる。このようなシステムは「アイドルストップシステム」(ISS)と呼ばれ、燃費の向上を可能にする。このようなブラシレスモータは、電流を制御するようにECU12内に半導体ブリッジを備える制御装置又はドライバを組み込むことを必要とし、これはECU12が通常よりも大型になる原因となる。
図4では、キックスタート機構56は、キックスタートペダル56bに連結されたキックスタートアーム56aを備え、これにより、ライダーはエンジンユニット14に回転をマニュアルで供給し、それによって、エンジンユニット中の空気・燃料混合物が点火されてエンジンユニット14が始動する。
【0032】
自動二輪車の後車軸には、エンジンユニットの駆動力を、自動二輪車10が駆動することができる下表面又は接地平面(例えば、舗装道路又は他の一般的に平坦な表面)に伝達するための、後輪用タイヤ32を周方向に備える後輪30が取り付けられている。自動二輪車の後部左側にあるリアクッション又はサスペンション33は、隆起や振動により生じた後輪用タイヤ32の揺動を吸収して乗り心地及び自動二輪車ハンドリング特性を改善すると共に、エンジンユニット14とシート11とが互いにずれる距離を制限する。リアクッション又はサスペンション33は、この機能を達成するために、ばね、ダンパー及び/又はショックアブソーバを備えることができる。その代わりに又はそれに加えて、当業者であれば容易に理解できるように、他の部品を使用して同じことを達成し又は効果を補完することができる。
【0033】
自動二輪車の下にある表面からピックアップされ、そして上方及び後方に向かう泥、瓦礫及び水が後輪用タイヤ32の回転の結果としてフェンダー34の上及び後ろに移動するのを実質的に防ぐために、後輪用タイヤ32の上かつシート11の下及び後尾にはリアフェンダー34が配置される。リアフェンダー34に対応する目的を果たすために、フロントフェンダー(図示せず)が前輪用タイヤ(図示せず)上に配置される。
【0034】
自動二輪車10は、自動二輪車10の内部構造及び機械的部分、例えば自動二輪車基礎フレームを隠蔽しかつ自動二輪車外面の部分を形成するために構成された複数のカバー又はカバー部材を備える。テールライトユニット38がグラブレール20の下に設置されており、該グラブレールは、テールライトユニット38の両側に一対のウインカ36L、Rを備え、テールライトユニット38は、テールライト照明を後方及び外方に導くように構成される。
【0035】
図示された実施形態について以下でさらに説明するように、自動二輪車10の基礎構造フレームは、燃料タンク24及びユーティリティボックス44を支持するシート11の下に、一対のシートレール又はシートフレーム40L、Rを備える。このシートレール40L、Rの対は、中央構造梁又はクロスパイプ42を介して連結されている。その間の連結は、永久溶接及び/又は非永久的な留め具の手段によって行うことができる。クロスパイプ42は、ユーティリティボックス44の一対のブラケット42aを備える。当業者であれば容易に理解されるように、他のタイプの連結を使用することもできる。
【0036】
図1に示されるこの実施形態では、シートレール40Rは、長方形中空断面を有することができる金属構造梁である。したがって、シートレールの長方形の形状が平坦な表面を与えるため、ECU12を搭載するのは容易である。しかし、当業者であれば容易に理解されるように、他のタイプの構造梁又は部品を使用することができる。シートレール40L、Rは、ユーティリティボックス44の下部から燃料タンク24の両側の上部後部まで延在する。シートレール40L、Rは、シート11がシートレール40L、Rによって支持される又は支持できるように、自動二輪車10の基礎構造フレームに搭載され又は搭載可能である。以下で詳細に説明するように、シートレール40Rは、ECU12に対して、少なくとも(a)側面図で見てECU12を重ねることにより外部環境要因からECU12の部分を遮蔽又は保護し;(b)自動二輪車の横方向の寸法又は外観に影響を与えることなく大型のECUを自動二輪車10によって運ぶことを可能にし;及び(c)他の電気的及び/又は非電気部品又は構成要素を自動二輪車10に設置するためにECU12にアクセスするのを容易にするように構成される。
【0037】
ECU12は、エンジンユニット14、特に燃料噴射及び点火ユニット、またブラシレススタータモータを電子制御し、最適なエンジン性能を確保し、そして「アイドルストップシステム」を制御するための自動二輪車10の電気部品である。ECU12は、複数のエンジンユニットのセンサからデータ値を読み出し、これらのデータ値を解釈し、そしてエンジン性能を調節し、例えば燃料噴射量及び点火時期を決定し、ブラシレスモータを作動させ、それに従ってスタータモータを作動させた後にブラシレスモータのヘッセ位電圧を整流する。この実施形態では、ブラシレススタータモータは、スタータモータ機能後のジェネレータとして動作し、これを「ACジェネレータ及びスターター」という。その結果、ECU12は、典型的には、単一ユニット内の全てのECU制御機能を一体形成させることによって実現される安いコストのため適度に大型又は大型の電気部品であり、エンジンユニット14を制御する観点から重要である。このように、ECU12の確実な保護と信頼性の高い動作が必要である。
【0038】
様々な現代の自動二輪車の設計又はモデルでは、ECU12はサイズが大きく、必ずしも取付位置に設置するのは容易ではない。「アイドルストップシステム」について詳しく述べたように、モータ制御モジュール又はドライバはECUと併合され、ECUのサイズが大きくなる。エンジンセンサなどの自動二輪車周辺のセンサは、自動二輪車の停止、エンジン温度、スロットル開度、エンジン回転数、ライダーの着座などといった状態を検出する。エンジンユニット14の低温始動時に、ECUは、エンジンユニット14が暖まるまで「アイドルストップシステム」の起動を自動的に防止し、そして「アイドルストップ」時には、ECU12は、スロットルがライダーによって開かれたときにエンジンユニット14を再始動させる。このような「アイドルストップシステム」は、本出願人が10年以上前に自動二輪車に導入したものであり、出願人は、「アイドルストップシステム」を搭載したこのような自動二輪車の数を増加させてきている。
【0039】
図2は、本発明の実施形態に係るECU12の取付構造を示す斜視図である。
図1及び
図2に示すように、シート11の下にはユーティリティボックス、収納ボックス又は収納コンパートメント44が配置されている。ユーティリティボックス44は、例えばヘルメット、荷物及び/又は他の個人装備を格納するためのユーティリティスペースとして機能する。
図3をさらに参照して示されるように、ユーティリティボックス44は、ユーティリティボックス44の前部搭載箇所である一対のフロント取付部48a及び48bを介して自動二輪車10に搭載され又は搭載できる。
図4をさらに参照して示すように、ユーティリティボックス44は、自動二輪車10の長手方向中心線46がユーティリティボックス44の上部開口を右部及び左部に分割又は二分するように配置される。長手方向中心線46は、当業者によって容易に理解されるように、自動二輪車10を自動二輪車の左側と右側とにさらに分割する。
【0040】
ECU12は、シートレール40L、Rとユーティリティボックス44の横面との間に配置又は設置される。さらに、いくつかの実施形態では、ECU12は、ユーティリティボックス44の下後部に実質的に存在する。図示される実施形態では、自動二輪車10の前方に向かって参照すると、ECU12は、シートレール40RがECU12の右側にあり、しかもユーティリティボックス44がECU12の左側にあるように配置される。
【0041】
図3は、本発明の実施形態に係るECU12の取付構造を示す
図1及び
図2の自動二輪車の一部を示す正面図である。
図3及び
図6に示すように、ユーティリティボックス44は、その右側(例えば、その右下後部側)に形成された凹部又はくぼみ部52を備える。いくつかの実施形態では、ECU12は、その横方向の空間領域が実質的に又は完全にユーティリティボックス44の凹部52によって画定される空間領域内に存在する、該領域を占有する又は該領域に重なるように配置されかつ面している。さらに具体的には、多くの実施形態において、ECU12は、シートレール40Rの内面又は内側面(自動二輪車の中心線18を基準にして画定される)とユーティリティボックス44の凹部52との間に配置される。
【0042】
シートレール40Rとユーティリティボックス44との間のECU12及び凹部52に向かうECU面の位置は、ECU12を自動二輪車の外部環境から遮蔽又は保護し、かつ、ECU12に対するある程度の衝撃保護を与えることができる。さらに、この実施形態では、ユーティリティボックス44は、ECU12に実質的に重複する上部又は隔壁54を備える。これは、上記されたのと同様の方法で、ECU12をその上側でさらに遮蔽又は保護する。ECU12はその横側及び上側で保護されるため、いかなる追加の及び/又は余分なECU保護及びカバレッジ部品も必要ない。追加の保護部品の必要性が排除されるので、自動二輪車10の本体のサイズ、特に自動二輪車の横サイズが減少し、ひいては製造コストに及ぼす影響が最小限に抑えられる。
【0043】
さらに、ECU12は、大きな横方向のサイズ又はかなりの横方向の寸法を有することができるが、ECU12は、自動二輪車10の右側面から突出することなく、自動二輪車10の右側に有利に配置するのを可能にするスリムな構造又は輪郭を有する(
図3、
図4及び他の箇所で示されるように)。この構成は、コンパクトなECU取付構造を可能にし、これは、ひいては自動二輪車10の本体を自由に設計するのを可能にする。さらに、コンパクトなECU取付構造は、自動二輪車10に、さらに流線形及び空気力学と外観の改善という利点を与える。
【0044】
これらのことから、ユーティリティボックス44の凹部52は、有利には、ECU12の一部を収容するためのスペースを与える又は創り出し、それによって、自動二輪車10の全体的なコンパクトな構造を損なうことなく、ECU12をシートレール40Rとユーティリティボックス44との間に配置又は設置することができるようになる。ユーティリティボックス44の凹部52は、ユーティリティボックス44の一方の側面に存在することしか必要としないため、ユーティリティボックス44の容量が向上若しくは最大化し、又は同様に、凹部52が有する、ユーティリティボックス44の貯蔵容量に与える影響が最小限に抑えられる。ユーティリティボックス44は、凹部52及び上部隔壁54を備えるように様々な方法で製造できる。例えば、ユーティリティボックス44は、プラスチック材料から射出成形プロセスによって製造できる。当業者であれば容易に分かるように、他の種類の材料及び製造プロセスを利用することができる。
【0045】
図6〜8において、凹部52は、後部側壁部52a及び前部傾斜壁部52bを備える。このような各壁部52a、52bは、ECU12の後部12a及び前部12bに面している。前部12bは後部12bよりも薄い。したがって、前部傾斜壁部52bは傾斜し、ユーティリティボックス44の最大容量を保持する。
【0046】
自動二輪車10の右外側面におけるECU12の位置のため、自動二輪車10用の他の電気部品50を収容するための空間領域を設けることは比較的容易である。このような他の電気部品としては、点火コイル26及び発電機の出力の電気調整器を挙げることができる。ECU12は、自動二輪車10の右外側近傍に配置されるため、他の電気部品50は、シートレール40Rの外部から設置できる(例えば、シートレール40Rの外部表面で又はそれに沿って)。さらに、エンジンユニット14の位置のため、シートレール40Rの外側から点火コイル26を設置することには、ワイヤがさらに短くなるという利点がある。というのは、エンジンは、
図1に示すようにユーティリティボックス44の下に位置し、点火プラグ28は、ユーティリティボックス44の下部に近接し、それによって点火コイル26からのハイテンションコード又はケーブル27の長さが(より)短くなり、また点火エネルギーの損失が低減することになるからである。
【0047】
また、
図3及び
図4は、ECU12の上記の重複及び遮蔽を例示する、シートレール40R及びユーティリティボックス44に対するECU12の位置を示す。
【0048】
図5(a)〜(c)に示すように、ECU12は、少なくとも取付点58a、58bを介してシートレール40Rに搭載又は搭載可能である。ECU12は、自動二輪車10の構成部品のワイヤ、及び点火コイル26を含めた電気部品50といった他の電気部品からの接続を受け入れるための一対のカプラ60a及び60bを備える。ECU12は、シートレール40R及びECU12を側面から見たときにカプラ60a及び60bがシートレール40R及び点火コイル26によって実質的に重ねられ、覆われ又はカバーされるように配置される。上記のように、このような被覆は、接続される配線及び電気部品のためさらに繊細な場合があるカプラ60a及び60bに対する保護を与える。さらに、自動二輪車10の側面にあるカプラ60a及び60bの位置は、自動二輪車の維持及び/又は組立体の検査時に下側からカプラ60a及び60bにアクセスするのを容易にすることを可能にする。
【0049】
上に示したように、複数の実施形態では、ECU12の横方向の範囲又は表面領域は重複し又はユーティリティボックス44の凹部52内に配置される(例えば、ECU12及びユーティリティボックス44を側面から観察したとき)。さらに、ECUの取付構造の一実施形態によれば、ECU12の底部は、ユーティリティボックス44によって覆われていない又は遮蔽されていないままである。ユーティリティボックス44の凹部52を形成させてL字状領域などの下部空間領域を設けることができ、これにより、
図3に示すように、ECU12の底部は、覆われていない状態が保持される。このECU12の底部の露出は、配線ハーネス17に相当するケーブル及び/又は配線(例えば、
図1及び2に示される)をECU12のカプラ60a及び60bに容易に結合又は接続するのを可能にする(例えば、自動二輪車メーカー、メンテナンス要員及び/又は自動二輪車ユーザーによって)。例えば、配線ハーネス17は、ユーティリティボックス44を通りかつその下方に延在する(例えば、ユーティリティボックス44の底部面の下)ワイヤ又はケーブルを保持し、結合させ又はそれに接続することができる。というのは、このワイヤ/ケーブルはECUのカプラ60a及び60bに向かって移動するからである。さらに、いくつかの実施形態では、シートレール40Rは、自動二輪車10の側面で、そこから延びる配線ハーネス17及び/又は配線/ケーブル配線の部分を遮蔽又は保護することができる。
【0050】
図2及び
図3を再び参照すると、ユーティリティボックス44の上部又は隔壁54も、自動二輪車の上側で外部環境要因からカプラ60a及び60bを遮蔽しかつ効果的に保護する。さらに、ECUのカプラ60a及び60bは下方に向けられている。雨などの条件では、カプラ60a及び60bに達した又はそれらに入った若しくは浸透した雨水は、本質的に、このようなカプラ60a及び60bの下方向のため、カプラ60a及び60bの下端で排出されることになる(例えば、
図1、5及び6に示すように)。有利には、水は、雨の条件下ではカプラ60a及び60bの内部にとどまった状態にはならないため、ECUの電気的信頼性が向上する。
【0051】
図6(a)〜(b)に示された実施形態では、ユーティリティボックス44は、頂部リング部62及び区画本体64を備える。頂部リング部62は、シート底部シールに連結されており、シート11がヒンジ66を介して閉じられたときにユーティリティボックス44を水や泥から密閉する。さらに、ユーティリティボックス44は、前部取付部48a、bと共にユーティリティボックス44を固定するための一対の後部取付部70L、Rを備える。
【0052】
図7及び
図8に示すように、シートレール40Rとユーティリティボックス44と間のECU12の位置は、さらに、空間ギャップ又は通気スペース72、74が(a)ECU12とシートレール40Rとの間(例えば、ECU12の外側面とシートレール40Rの内部表面との間)及び(b)ECU12とユーティリティボックス44との間(例えば、ECU12の内部表面とユーティリティボックス44の凹部52との間)に存在するようにする。通気スペース72及び74は、自動二輪車10に乗ったときに気流及び/又は風をECUの表面に沿って容易に流すことを可能にする。ECU12の周囲の気流が増加すると、ECU熱放散の速度が向上する。ECU12は、発熱素子、特にブラシレススターター及び発電機を駆動させる半導体装置(SCR、FET等)を備える。したがって、ECU12は、通気スペース72、74のため、このような発熱素子からの熱を放散し、効果的に冷却することが可能である。言い換えれば、ECU12は非常にコンパクトに装着されているにもかかわらず、自動二輪車10が動いているときに熱をECU12からさらに容易に除去でき、それによって、ECU12の冷却を補助し、その耐久性及び信頼性を向上させることができる。
【0053】
また、
図7及び
図8に示すように、ECU12の前方部76は、自動二輪車10の正面から見たときに(例えば、ECU12及びユーティリティボックス44を正面から観察したときに)、実質的に環境にさらされる。このようなECU12の前面の露出は、自動二輪車10に乗ったときにECU12の前部76に又はその周囲に気流を生じ、ECU12からの熱放散の速度をさらに向上させることができる。したがって、自動二輪車10が動いているときに熱をECU12からさらに容易に除去でき、それによって、ECUの冷却を補助し、その耐久性及び信頼性をさらに向上させることができる。
【0054】
図7及び
図8は、本明細書に記載された実施形態に係るECU取付構造の様々な部品に相当する取付位置を示す。ECU12、シートレール40R、シート11及びユーティリティボックス44といった上記自動二輪車10の様々な部品は、当業者に知られている任意の手段によって自動二輪車10に装着、結合及び/又は一体化できる。このような手段の例としては、溶接などの永久的な取付及びファスナー、ネジ、ボルト、ナットなどの非永久的な取付具が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
ECU12は、2個の取付点58a及び58bを介してシートレール40Rに取り付けられる。具体的には、ECU12は、このような取付点58a、bによって内部表面又はシートレール40Rの側に取り付けられる。2個のみの取付点58a及び58bが示されているが、当業者であれば容易に理解されるように、別の数の取付点58を使用してECU12をシートレール40Rに固定することができる。この実施形態では、ボルト及びナット80a及び80bなどの非永久的留め具を取付点58a及び58bで使用する。また、ネジ及びリベットなどの他の種類の留め具を使用することもできる。この実施形態では、80a、bは、シートレール40Rのブラケットに溶接されたナットであり、このようなブラケットは通気スペース72の形成を確立し又は容易にする。
【0056】
点火コイル26は、2つの取付点82a及び82bを介してシートレール40Rに取り付けられる。具体的には、点火コイルは、このような取付点82a、bによってシートレール40Rの側の外部表面に取り付けられる。2個のみの取付点82a及び82bが示されているが、当業者であれば容易に理解されるように、別の数の取付点82を使用して点火コイル26をシートレール40Rに固定することができる。この実施形態では、溶接ナット84a及び84bを取付位置82a及び82bで使用する。また、ネジ及びリベットなどの他の種類の留め具を使用することもできる。
【0057】
この実施形態では、クロスパイプ42は、U字型構造86を介してシートレール40Rに連結される。クロスパイプ42とU字型構造86とシートレール40Rとの境界面は、溶接などの永久的取付及び/又はボルトとナットなどの非永続的な取付具によって存在することができる。
【0058】
本発明の特定の実施形態の態様は、ECU用の既存の自動二輪車取付構造に関連する少なくとも一つの態様、問題、制限及び/又は不利益に対処するものである。所定の実施形態に関連する特徴、態様及び/又は利点を本明細書に記載してきたが、他の実施形態は、このような特徴、態様及び/又は利点も示すことができ、全ての実施形態が本発明の範囲内にあるようにこのような特徴、態様及び/又は利点を必ずしも示す必要はない。非限定的な例は、本発明の実施形態に係るECU取付構造が上記実施形態について詳細したように自動二輪車10の右側の代わりに自動二輪車10の左側に実装できるというものであろう。当業者であれば、上で開示された構造、部品又はその変形例のいつくかを別の構造、部品及び/又は用途に望ましく組み合わせることができることが分かるであろう。さらに、特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲内で当業者によって開示される様々な実施形態に対して様々な改変、変更及び/又は改良をなすことができる。