(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検出光の色成分毎の光強度を検出する第1受光部及び第2受光部は、前記第2プリズム側であって、前記第1プリズム及び前記第2プリズムが並ぶ方向に沿って配置され、
前記第2受光部は、該第1プリズムの反射面に対する入射角が小さく、前記間隙内の光路長が短い光束を受光し、第1受光部は、前記第1プリズムの反射面に対する入射角が大きく、前記間隙内の光路長が長い光束を受光する請求項1に記載の光学式センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、発光素子及び受光素子の少なくとも一方を変位させるためには、駆動部を設ける必要があるため、センサの構成が複雑化する。さらに上記装置では、圧電素子等の駆動部を駆動するタイミングと、光強度を油膜厚さDaを透過した光束として検出するタイミング及び光強度を油膜厚さDbを透過した光束として検出するタイミングとの同期をとる必要があり、制御も複雑化していた。従って、装置の構成や制御を複雑化することなく、検出値を変動させる各種要因の影響を受けにくい装置が要請されていた。尚、こうした問題は、油を検出対象とする装置に限らず、液体の光吸収特性を検出するセンサ及びシステムにおいては、同様に生じうる問題である。
【0008】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、構成や制御を複雑化することなく、変動要因の影響を受けにくい光学式センサ及び光学式センサシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する光学式センサは、液体の光吸収特性を検出する光学式センサにおいて、検出光を出射する発光部と、前記検出光の色成分毎の光強度を検出する複数の受光部と、光透過性を有し、前記検出光が入射する入射面、及び前記検出光を出射する出射面を有する第1光学素子と、光透過性を有し、前記第1光学素子から出射した前記検出光が入射する入射面、及び前記検出光を前記受光部に向かって出射する出射面を有する第2光学素子と、前記第1光学素子及び前記第2光学素子を支持する支持部と、前記第1光学素子の出射面及び前記第2光学素子の入射面の間に設けられ前記液体が浸入可能な間隙とを備え、前記支持部に支持された前記第1光学素子の出射面及び前記第2光学素子の入射面の一方が他方に対して傾斜し、前記第1光学素子の出射面から前記第2光学素子の入射面までの前記間隙内の光路長は、該出射面の位置に応じて異なり、前記各受光部は、前記間隙内の光路長が互いに異なる各光束を、それぞれ受光可能な位置に配置された。
【0010】
この態様によれば、第1光学素子の出射面から第2光学素子の入射面までの間隙内の光路長は、第1光学素子の出射面の位置に応じて異なる複数の長さであるため、各光学素子の間隙に液体を浸入させた状態にするだけで、各受光部は、同じ液体内を透過し液体内の光路長が受光部によって異なる光束をそれぞれ検出することができる。従って、各受光部によって受光され、指数関数で表される各光束の光強度の比をとることにより、光学素子等に付着した汚れに起因する係数、発光部の温度特性に基づく変化係数等といった変動要因係数を消去することができる。また間隙の光路長は検出光の出射位置に応じて異なるため、間隙の光路長を変化させるための駆動機構が不要である。このため、光学式センサの構成を複雑化させることなく、変動要因が検出値に及ぼす影響を低減することができる。
【0011】
この光学式センサにおいて、前記第1光学素子は、前記入射面、前記検出光の入射方向に対して傾斜し前記検出光を反射する反射面、及び前記出射面を有する第1プリズムからなり、その出射面は平面であって、前記第2光学素子は、前記入射面、該入射面に対する前記検出光の入射方向に対して傾斜し前記検出光を反射する反射面、及び前記出射面を有する第2プリズムからなり、その入射面は平面であるとともに、前記支持部に支持された前記第1プリズムの前記出射面、及び前記支持部に支持された前記第2プリズムの前記入射面のうち少なくとも一方が、前記支持部からプリズム先端に向かうにつれ、前記間隙の幅が増大する方向に傾斜する。
【0012】
この態様によれば、第1及び第2光学素子は、プリズムからなるため、間隙内の光路長を変えるための駆動機構や、特殊な形状又は機能を有する光学素子が不要である。また各プリズムは検出光の光路を屈曲させる反射面を有するため、発光部の光軸方向にセンサをコンパクトにすることができる。さらに間隙を区画する出射面及び入射面は平面であるため、汚染物質や粘度が増大した液体の堆積を抑制することができる。さらに間隙は、支持部からプリズム先端に向かうにつれ、連続的に幅が大きくなるため、プリズム先端側から間隙内に液体を取り込みやすくなるとともに、間隙内に固形物や粘度が大きい液体等が残留するのを防ぐことができる。
【0013】
この光学式センサにおいて、前記検出光の色成分毎の光強度を検出する第1受光部及び第2受光部は、前記第2プリズム側であって、前記第1プリズム及び前記第2プリズムが並ぶ方向に沿って配置され
、第2受光部は、該第1プリズムの反射面に対する入射角が小さく、前記間隙内の光路長が
短い光束を受光し、第
1受光部は、前記第1プリズムの反射面に対する入射角が大きく、前記間隙内の光路長が
長い光束を受光する。
【0014】
この態様によれば、各受光部は、第2プリズム側であって、第1プリズム及び第2プリズムが並ぶ方向に沿って配置される。検出光は、第1プリズムの反射面に対する入射角に応じて、第2プリズムの出射面から出射する位置が相違する。第1プリズムの入射面から反射面に到る際の光路が長い光束は、該入射角が大きく、第2プリズムの出射面のうち第1プリズムに近い位置から出射される。第1プリズムの入射面から反射面に到る光路が短い光束は、該入射角が小さく、出射面のうち第1プリズムから遠い位置から出射される。このため第1受光部は、第2受光部に比べ、反射面に対する入射角が大きく間隙の光路長が長い光束を受光し、第2受光部は、反射面に対する入射角が小さく間隙の光路長が短い光束を受光する。このため第1受光部及び第2受光部は、同じ液体内を通過し、且つ液体内の光路長がそれぞれ異なる光束を受光することができる。
【0015】
この光学式センサにおいて、前記発光部の光軸は、前記第1プリズムの入射面に対して垂直であって、第1受光部は、前記検出光のうち、前記第1プリズムの反射面に対する入射角度が最小である光線を受光し、第2受光部は、前記検出光のうち、前記第1プリズムの反射面に対する入射角が最大である光線を受光する。
【0016】
この態様によれば、第1プリズムの反射面に対する入射角度が最小である光線は第1受光部に受光され、第1プリズムの反射面に対する入射角が最大である光線は第2受光部に受光されるので、発光部から出射される検出光の殆どは、第1受光部の位置から第2受光部の位置までの領域に出射される。このため光学式センサの受光効率を高めることができる。
【0017】
上記課題を解決する光学式センサシステムは、光学式センサ及び特性演算部を備え、測定対象の液体の光吸収特性を検出する光学式センサシステムにおいて、前記光学式センサは、検出光を出射する発光部と、前記検出光の色成分毎の光強度を検出する複数の受光部と、光透過性を有し、前記検出光が入射する入射面、及び前記検出光を出射する出射面を有する第1光学素子と、光透過性を有し、前記第1光学素子から出射した前記検出光が入射する入射面、及び前記検出光を前記受光部に向かって出射する出射面を有する第2光学素子と、前記第1光学素子及び前記第2光学素子を支持する支持部と、前記第1光学素子の出射面及び前記第2光学素子の入射面の間に設けられ前記液体が浸入可能な間隙とを備え、前記支持部に支持された前記第1光学素子の出射面及び前記第2光学素子の入射面の一方が他方に対して傾斜し、前記第1光学素子の出射面から前記第2光学素子の入射面までの前記間隙内の光路長は、該出射面の位置に応じて異なり、前記各受光部は、前記間隙内の光路長が互いに異なる各光束を、それぞれ受光可能な位置に配置され、前記特性演算部は、前記各光学素子により検出された色成分毎の光強度の比を算出し、光強度の比を前記色成分毎の属性値とするとともに、前記属性値に基づいて前記液体の光吸収特性を計測する。
【0018】
この態様によれば、第1光学素子の出射面から第2光学素子の入射面までの間隙内の光路長は、第1光学素子の出射面の位置に応じて異なる複数の長さであるため、光学式センサを間隙に液体を浸入させた状態にするだけで、各受光部は、同じ液体内を透過し、且つ液体内の光路長が受光部によって異なる光束をそれぞれ検出することができる。特性演算部は、指数関数で表される各光束の光強度の比をとることにより、光学素子等に付着した汚れに起因する係数、発光部の温度特性に基づく変化係数等といった変動要因係数を消去する。また発光部から出射された検出光が光学素子に入射する際の入射角に応じて間隙内の光路長が変わるため、間隙内の光路長を変化させるための駆動機構が不要である。このため、光学式センサの構成を複雑化させることなく、変動要因が検出値に及ぼす影響を低減し、計測結果の精度を向上できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光学式センサ及び光学式センサシステムによれば、構成や制御を複雑化することなく、変動要因の影響を受けにくくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、光学式センサ及び光学式センサシステムの一実施形態を説明する。本実施形態では、光学式センサ及び光学式センサシステムを、機械に使用される潤滑剤である油の劣化を判定するセンサ及びシステムに例示して説明する。
【0022】
図1に示すように光学式センサとしての油劣化検出センサ10は、ハウジング11と、ハウジング11の上部を覆うカバー12と、ハウジング11の下部に収容されるホルダ13とを備えている。ハウジング11、カバー12及びホルダ13は、アルミニウム合金等の金属、又は樹脂からなる。カバー12及びホルダ13は、ハウジング11に対しネジによってそれぞれ固定されている。ホルダ13には、第1プリズム21及び第2プリズム22が間隙20を介して対向した状態で支持されている。これらのハウジング11及びホルダ13は支持部に相当する。
【0023】
図2に示すように油劣化検出センサ10は、機械50の壁部51に装着されるタイプのセンサである。壁部51の内側には判定対象の油55が収容されている。壁部51には、油劣化検出センサ10を挿入するための取付孔52が形成され、取付孔52の内周面には被螺合部が形成されている。油劣化検出センサ10のハウジング11の外周には、螺合部11fが形成されている。油劣化検出センサ10は、螺合部11fを、取付孔52の被螺合部に螺合することにより壁部51に固定される。
【0024】
ハウジング11は、上側収容部11a及び下側収容部11bを備えている。上側収容部11aはカバー12によって覆われている。ハウジング11及びカバー12によって区画される空間には、回路基板15が収容されている。回路基板15の底面には、1つの発光部16と、2つの受光部17,18とが実装されている。またハウジング11には、発光部16をホルダ13側へ貫挿する貫挿孔11c、及び各受光部17,18をホルダ13側へ貫挿する貫挿孔11d,11eが形成されている。
【0025】
発光部16は、白色の光を出射する光源であって、本実施形態ではLEDから構成される。発光部16は、検出光を、ホルダ13に支持された第1プリズム21に出射可能な向きで回路基板15に固定されている。発光部16から出射される検出光の光軸は、第1プリズム21の入射面に対し垂直である。
【0026】
各受光部17,18は、R(赤)、G(緑)、B(青)といった色成分毎に検出光の強度を検出するセンサであって、フォトダイオードやカラーフィルタを備えている。各受光部17,18は、第2プリズム22側から出射される検出光を受光可能な位置にそれぞれ固定されている。
【0027】
また回路基板15の上面には、信号線及び電源線が束ねられた信号・電源線19が接続されている。各受光部17,18が検出した色成分毎の光強度は、例えば回路基板15に設けられた変換回路によって電圧信号等に変換されて信号・電源線19を介して外部に送信される。
【0028】
ホルダ13は、その上面に発光部16を収容する発光部収容孔13aを備えている。またホルダ13の底面には、プリズム収容部13cが設けられている。発光部収容孔13a及びプリズム収容部13cは入射側通過孔13bで連通されている。発光部16から出射された検出光は、入射側通過孔13bを介してプリズム収容部13cへ導かれる。プリズム収容部13cの内周面のうち入射側通過孔13bの出口が設けられた底面には、第1プリズム21が、入射側通過孔13bの出口を閉塞する位置に固定されている。第1プリズム21は、プリズム収容部13cの底面に対し接着剤で固定されている。
【0029】
またホルダ13には、プリズム収容部13cの底面からホルダ13の上面に向かって直線状に延びる1対の出射側通過孔13d,13eが貫通形成されている。第2プリズム22は、各出射側通過孔13d,13eの入口を閉塞する位置であって、第1プリズム21に対して間隙20が介した位置に接着剤等によって固定されている。各出射側通過孔13d,13eの出口には、各受光部17,18が、出射側通過孔13d,13eを通過した検出光を受光可能に設けられている。
【0030】
図3に示すように、発光部収容孔13a及び入射側通過孔13bは、同じ中心軸を有している。入射側通過孔13b、出射側通過孔13d,13eは、プリズム21,22が並べられた方向と同じ幅方向(図中x方向)に沿って並んでいる。出射側通過孔13d,13eは、第2プリズム22の幅wにおける中心に対して左右対称に設けられている。
【0031】
図4に示すように、プリズム収容部13cの底面には、各プリズム21,22を支持及び位置決めするための1対の支持壁13h,13iが設けられている。各支持壁13h、13iは向かい合わせに配置され、各プリズム21,22を間隙20を介在させた状態で挟持する。これらの支持壁13h,13iの内側に各プリズム21,22を収容することで、各プリズム21,22を、入射側通過孔13b、及び出射側通過孔13d,13eにそれぞれ対応する位置に固定することができる。
【0032】
次に
図5を参照して、第1プリズム21及び第2プリズム22について説明する。各プリズム21,22は、石英又はガラス等の透光性材料からなる。各プリズム21,22は、同じ形状に形成され、角度が最も大きい最大頂角21g、22gが向かいあった状態で、プリズム収容部13cの底面に配置されている。
【0033】
第1プリズム21は、発光部16から出射される検出光ILが入射する入射面21aと、入射面21aから入射した検出光ILが反射される反射面21bと、反射面21bによって反射された検出光ILが出射する出射面21cとを有している。入射面21a、反射面21b及び出射面21cは平面状に形成され、入射面21aは、ホルダ13のプリズム収容部13cにおける底面に固定される。
【0034】
図6に示すように、正面視において、入射面21a及び反射面21bで形成される頂角21hの角度θ1は、45°である。また入射面21a及び出射面21cで形成される最大頂角22gの角度θ2は、90°未満である。即ち出射面21cは、入射面21aの法線方向(図中y方向)に対し、傾斜角θ3を有している。
【0035】
反射面21bには、反射膜21fが設けられている。反射膜21fは、金属蒸着膜及び保護膜から構成される(いずれも図示略)。金属蒸着膜は、例えばアルミニウム等の薄膜であって、透光性材料の外側に成膜されている。保護膜は、例えばSiO
2薄膜、MgF
2薄膜であって、金属蒸着膜の外側に設けられて金属蒸着膜を保護している。また入射面21a及び出射面21cは光学研磨され、油に直接接触する出射面21cは、油の中の汚染物質等の付着を抑制するために撥油処理が施されている。反射膜21fの厚さは実際には非常に薄く、例えば数百nm〜数μmであるが、便宜上、
図6では実際よりも厚い膜を図示している。
【0036】
図5に示すように、第2プリズム22は、間隙20に満たされた油を透過した検出光ILが入射する入射面22aと、入射面22aから入射した検出光ILが反射される反射面22bと、反射面22bによって反射された検出光ILが出射する出射面22cを有している。第1プリズム21と同様に、入射面22a、反射面22b、及び出射面22cは平面状に形成されている。出射面22cは、ホルダ13のプリズム収容部13cにおける底面に固定される。入射面22a及び出射面22cは化学研磨され、油に直接接触する入射面22aは、油の中の汚染物質等の付着を抑制するために撥油処理が施されている。
【0037】
図6に示すように、第2プリズム22の反射面22bには、反射膜22fが形成されている。第2プリズム22の出射面22c及び反射面22bで形成される頂角の角度θ1、入射面22a及び出射面22cで形成される最大頂角の角度θ2、入射面22aの傾斜角θ3は、第1プリズム21の角度θ1〜θ2及び傾斜角θ3と同じ値である。
【0038】
第1プリズム21の出射面21c及び第2プリズム22の入射面22aを向かい合わせてホルダ13に配設すると、出射面21c及び入射面22aは平行ではなく、プリズム収容部13cの底面の法線方向(y方向)に対して互いに異なる方向に傾斜する。その結果、第1プリズム21及び第2プリズム22の間に設けられる間隙20の幅(x方向の長さ)は、プリズム収容部13cの底面から各プリズム21,22の先端に向かう深さ方向(y方向)に増大する。
【0039】
従って検出光ILの間隙20内の光路長は、第1プリズム21の出射面21cにおける出射位置に応じて異なる長さとなる。出射位置が最大頂角21gに近づくにつれて光路長は短くなり、第1プリズム21の先端側に近づくにつれて光路長は長くなる。尚、間隙20における光路長は実際には数mm程度であり、図面の便宜上、プリズム21,22の大きさ及び間隙20の比は実際と異なる場合もある。
【0040】
傾斜角θ3は、間隙20における最大の光路長Laと、最小の光路長Lbとの比(La/Lb)が大きくとれるように設定されていることが好ましい。光路長La,Lbの比は、傾斜角θ3の他、間隙20の最小の幅によっても変化する。例えば間隙20の最小の幅、即ち各プリズム21,22の最大頂角21g,22gの相対距離が0.5mmで傾斜角θ3が2°である場合と、最大頂角21g,22gの相対距離が1.0mmで傾斜角θ3が2°である場合とでは、比(La/Lb)は同一にならず、後者のほうが小さくなる。このため、傾斜角θ3は、各プリズム21,22の最大頂角21g,22gが干渉しないこと、及び第1プリズム21に入射した検出光ILが反射面21bによって反射されることを条件に、光路長La,Lbの比(La/Lb)が大きくなるように設定される。
【0041】
図7に示すように、第1プリズム21に入射した検出光ILが反射面21bによって反射されない場合としては、検出光ILの入射位置に対して最大頂角21g,22gの相対距離が大きく、検出光ILの一部が、反射面21bを介さずに出射面21cから出射されてしまう場合がある。
【0042】
次に
図8を参照して光学式センサシステムとしての劣化判定システムについて説明する。劣化判定システムは、上述した油劣化検出センサ10と、特性演算部としての劣化判定装置30とを備えている。劣化判定装置30は、油劣化検出センサ10から出力される検出信号である光強度を受信可能に接続される。劣化判定装置30は、劣化判定が行われない場合に油劣化検出センサ10との接続を解除可能である。
【0043】
劣化判定装置30は、制御部31、判定データ記憶部32、入力部34及び出力部35を備えている。制御部31は、CPU、RAM及びROM等から構成され、ROM等に格納された油劣化判定プログラムに基づき、劣化判定処理を行う。入力部34は、油劣化検出センサ10に対してオン/オフ操作が可能な公知の装置であって、キーボード、マウス又は専用の操作スイッチ等から構成される。出力部35は判定結果を出力する公知の装置であって、ディスプレイ等から構成される。
【0044】
判定データ記憶部32には、油の劣化を判定するための劣化判定マップ33が格納されている。劣化判定マップ33は、油の種類毎に、油を複数の要因により劣化させる試験等を通じて作製されている。
【0045】
図9を参照して、劣化判定マップ33について説明する。劣化判定マップ33の縦軸は、R値、G値、B値の差分のうち最大となる色成分最大差を示す。色成分差は|R−G|、|G−B|、|R−B|で表される絶対値であって、これらの色成分差のうち最大となる値が色成分最大差Dとされる。R値、G値、B値のうち最小値はB値であることが多く、最大値はR値であることが多いため、色成分最大差として|R−B|のみを演算してもよい。
【0046】
劣化判定マップ33の縦軸上の値は、判定対象の油がとりうる色成分最大差の最大値Dmaxを「1」とし、色成分最大差の最小値Dminを「0」としたときの色成分最大差の相対値Yである。尚、色成分最大差の最小値及び最大値は、試験又は計算等によって求められている。
【0047】
また劣化判定マップ33の横軸は、油の明度Lである。明度Lは、R値、G値、B値を用いた下記の式(1)であらわされる。
【0048】
【数1】
横軸上の値Xは、判定対象の油がとりうる明度Lのうち、最大値Lmaxを「1」、明度Lの最小値Lminを「0」としたときの明度Lの相対値である。尚、明度Lの最小値及び最大値は、試験又は計算等によって求められている。
【0049】
劣化判定マップ33は、色成分最大差及び明度のバランスに応じて油の劣化状態を示す複数の領域に分けられ、本実施形態では8つの領域に分けられている。これらの領域は、例えば判定対象の油を所定の使用条件で長時間使用することにより劣化させる試験、及び熱・酸化・不純物混入によって劣化させる試験を通じて設定されている。
【0050】
第1の領域Z1は、明度相対値Xが比較的高く、色成分最大差の相対値Yが比較的低い領域に設定されており、判定対象の油の劣化が無いと判定される領域である。第2の領域Z2は、明度相対値Xが、第1の領域Z1よりも低いものの全体的にみると比較的高い領域であって、油の劣化が低いと判定される領域である。第3の領域Z3は、明度相対値Xが第2の領域Z2よりも低く、色成分最大差の相対値Yが中程度〜高い領域であって、該領域は油の劣化が中程度と判定される領域である。第4の領域Z4は、第1の領域Z1〜第3の領域Z3のうち最も明度相対値Xが低い領域であって、油の劣化が高いと判定される領域である。熱劣化、酸化劣化等がなく、通常の状態で油が使用された場合、油の色成分最大差及び明度は、第1の領域Z1〜第4の領域Z4を順番に辿る。
【0051】
第5の領域Z5及び第6の領域Z6は、第1の領域Z1に比べ色成分最大差の相対値Yが高い領域であって、酸化により油が劣化していると判定される領域である。第7の領域Z7は、第5の領域Z5よりも色成分最大差の相対値Yが高く、色成分最大差及び明度のバランスから酸化劣化の度合いが高いと判定される領域である。第8の領域Z8は、明度相対値Xが比較的低く、色成分最大差の相対値Yが比較的低い領域であって、摩耗粉等の不純物が混入することによって劣化がみられると判定される領域である。これらの領域のうち油の交換が必要と判定される領域は適宜設定できるが、本実施形態では第4の領域Z4、第7の領域Z7及び第8の領域Z8とする。
【0052】
各領域Z1〜Z8の境界又は大きさは、判定対象の油に含まれる着色剤、ベースオイル等の化合物の種類、各化合物の組成等により変化する。
次に
図10を参照して、油劣化検出センサ10の作用及び劣化判定装置30の動作について説明する。
【0053】
入力部34が操作されること等によって油劣化検出センサ10が起動されると、発光部16が駆動して白色の検出光ILを出射する。発光部16の光軸は、第1プリズム21の入射面21aに対し垂直であって、発光部16から出射された検出光ILは、光軸を中心とした周囲であって、幅方向(x方向及び反x方向)及び奥行き方向(紙面に対して垂直方向)に広がりを有する。
【0054】
検出光ILは、第1プリズム21内で屈折されて反射面21bに到達する。この検出光ILのうち、光軸に対して最大の広がり角φ10を有し、入射面21a及び反射面21bで形成される頂角21h寄りに入射する光線は、反射面21bに対する入射角度が最も小さい最小入射角度φ1で入射する。この光線は、最小入射角度φ1と同じ反射角度の方向に反射され、出射面21cから出射し、間隙20を通過して、第2プリズム22の入射面22aに入射する。さらにその光線は、第2プリズム22の反射面22bによって反射され、出射面22cから出射して第
2受光部1
8に受光される。
【0055】
検出光ILのうち、光軸に対して最大の広がり角φ10を有し、第1プリズム21の最大頂角21g寄りに入射する光線は、第1プリズム21の反射面21bに対し最大入射角度φ2で入射する。この光線は、最大入射角度φ2と同じ反射角度の方向に反射され、出射面21cから出射し、間隙20を通過して、第2プリズム22の入射面22aに入射する。さらにその光線は、第2プリズム22の反射面22bによって反射され、出射面22cから出射して第
1受光部1
7に受光される。
【0056】
また検出光ILのうち、光軸に対する広がり角が「φ10」未満の光束の多くは、第1プリズム21、間隙20、及び第2プリズム22を介して、第1受光部17又は第2受光部18に受光される。即ち第1受光部17は、第1プリズム21の反射面21bに対する入射角度が比較的大きい光束を受光し、第2受光部18は反射面21bに対する入射角度が比較的小さい光束を受光する。このように、検出光ILは、第1プリズム21の反射面21bに対する入射角が増大するにつれて、第2プリズム22の出射面22cからの出射位置が、第2プリズム22の最大頂角22gから頂角22h側にシフトする。
【0057】
また検出光ILがとりうる間隙20内の光路長は、第1プリズム21の反射面21bに対する入射角が増大するに伴い長くなる。即ち間隙20内の光路長は、第1プリズム21の反射面21bに対して最小入射角度φ1で入射する光線の光路長Lb以上、反射面21bに対して最大入射角度φ2で入射する光の光路長La以下である(Lb<La)。間隙20内の光路長が比較的大きい光束は、第1受光部17によって受光され、間隙20内の光路長が比較的小さい光束は、第2受光部18によって受光される。
【0058】
第1受光部17によって受光された検出光ILの光強度Iaは、Lambert‐Beerの法則により下記の式(2)で表される。尚、第1受光部17によって受光される光束は、間隙20内の光路長が比較的大きい光束であるものの一定ではないため、便宜的に、式(2)では間隙20内の光路長が最大となる光線の強度を表している。I
0は新しい油を透過したときのバックグラウンドの光強度、Bはプリズム21,22に付着した汚れ等に起因する減衰係数、Cは発光部16の温度特性に基づく変化係数、kは実験的に決定される定数である。またαは、油の色を示す吸光係数、Laは、間隙20内の検出光の光路長であって、検出光ILがとりうる光路長のうち最大の長さである。
【0059】
【数2】
減衰係数Bは正の値であって、プリズム21,22へ付着した汚れの堆積量が大きい場合等には減衰係数Bの値は小さくなり、光強度Iaも小さくなる。また係数Cも正の値であって、発光部16は温度が上昇すると発光強度が低下するため、温度が高い場合には係数Cは小さくなり、検出値である光強度Iaも小さくなる。
【0060】
第2受光部18によって受光される光は、式(2)と同じように、下記の式(3)で表される。Ibは光強度、バックグラウンドの光強度I
0、減衰係数B、係数C、定数kは式(3)と同じ値である。尚、第2受光部18によって受光される光束は、間隙20内の光路長が比較的小さい光束であるものの一定ではないため、便宜的に、式(3)では間隙20内の光路長が最小となる光線の強度を表している。
【0061】
【数3】
制御部31は、第1受光部17及び第2受光部18から光強度Ia,Ibを検出信号として受信する。さらに制御部31は、光強度Ia及び光強度Ibの比をとり、さらに自然対数化して、式(4)に示すように、吸光係数αを算出する。
【0062】
【数4】
光強度Ia及び光強度Ibの比をとることで、吸光係数αは、バックグラウンドの光強度I
0、減衰係数B、係数C、及び定数kが消去され、油の吸光度(光透過率)を示す。従って制御部31は、光強度Ia,Ibの比を算出し、自然対数化する演算処理を行うのみで、実際に係数B,C、及び定数kを算出することはない。このように算出された吸光係数αは、各係数B,C及び定数kが消去された値であるため、プリズム21,22に付着した汚れ、光源の温度特性や、劣化の影響を受けていない。この吸光係数αをRGB毎に求めることで、赤色(R)の吸光係数α
R、緑色(G)の吸光係数α
G、青色(B)の吸光係数α
Bが得られる。これらの吸光係数α
R,α
G,α
Bは、上述したR値、G値、B値として扱われる。
【0063】
RGB値を算出すると、制御部31は、判定データ記憶部32から劣化判定マップ33を抽出し、劣化判定マップ33を用いて劣化判定を行う。制御部31は、R値、G値及びB値の各々の差を算出し、そのなかから最大値となる色成分最大差Dを選択する。さらに制御部31は、色成分最大差Dに基づきY軸上の相対値Yを算出する。また制御部31は、R値、G値及びB値から明度Lを演算し、X軸上の明度相対値Xを算出する。そして制御部31は、劣化判定マップ33の各領域のうち、算出した色成分最大差の相対値Y及び明度相対値Xで特定される座標点が含まれる領域を判定する。
【0064】
さらに制御部31は、色成分最大差の相対値Y及び明度相対値Xで特定される座標点が含まれる領域に基づいて、判定結果を出力する。例えば算出した相対値Y及び明度相対値Xの座標点が第1の領域Z1に含まれる場合には、劣化なし等の判定結果を出力する。また例えば算出した相対値Y及び明度相対値Xの座標点が、第2の領域Z2〜第3の領域Z3の領域に含まれる場合には各領域に応じた劣化の度合いを出力し、第4の領域Z4に含まれる場合には、劣化が大きい等の判定結果を出力する。また算出した相対値Y及び明度相対値Xの座標点が第5の領域Z5又は第6の領域Z6に含まれる場合には、酸化が進んでいる等の判定結果を出力する。さらに算出した相対値Y及び明度相対値Xの座標点が第7の領域Z7に含まれる場合には、酸化による劣化が大きい等の判定結果を出力する。また算出した相対値Y及び明度相対値Xの座標点が第8の領域Z8に含まれる場合には、不純物の混入による劣化等の判定結果を出力する。
【0065】
以上説明したように、上記実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)油劣化検出センサ10は、第1プリズム21の出射面21c及び第2プリズム22の入射面22aによって形成される間隙20を有している。出射面21c及び入射面22aは平行ではなく、ホルダ13に支持された状態で互いに異なる方向に傾斜しているため、間隙20内の幅が深さ方向に異なっている。このため油劣化検出センサ10を間隙20に油を浸入させた状態にするだけで、各受光部17,18において、同じ油内を透過し、且つ油内の光路長がそれぞれ異なる光束を受光することができる。そして指数関数で表される各光束の光強度Ia,Ibの比をとることにより、プリズム21,22等に付着した汚れに起因する減衰係数B、発光部16の温度特性に基づく変化係数C等といった変動要因係数を消去することができる。このため、変動要因が検出値に及ぼす影響を低減することができる。また第1プリズム21に入射する際の入射角によって間隙20内の光路長が変わるため、間隙20内の光路長を変化させるための駆動機構が不要である。またダブルビーム式のセンサのように、油を浸入させる間隙20を2つ設けたり、光源を2つ設けるか又はビームスプリッタ等の光学系を設ける必要もなく、センサの構成の複雑化を抑制し、コンパクトにすることができる。さらにプリズム21,22はホルダ13に固定されているため、駆動機構の動作の精度、駆動機構の機械要素の劣化に基づく変化等がなく、間隙20の容量や形状は変化がない。このため検出される光強度Ia,Ibの精度を高く保つことができる。
【0066】
(2)検出光の光路を変える光学素子は、プリズム21,22からなるため、間隙20内の光路長を変えるための駆動機構や、特殊な形状又は機能を有する光学素子が不要である。また間隙20を区画する出射面21c及び入射面22aは平面であるため、汚染物質や粘度が増大した油の堆積を抑制することができる。さらに間隙20は、ホルダ13側からプリズム先端に向かうにつれ、幅が連続的に大きくなるため、プリズム先端側から間隙20内に油を取り込みやすくなるとともに、間隙内に固形物や粘度が大きい油等が残留するのを防ぐことができる。
【0067】
(3)各受光部17,18は、第2プリズム22側であって、第1プリズム21及び第2プリズム22が並ぶ方向に沿って配置される。検出光ILは、第1プリズム21の反射面21bに対する入射角に応じて、第2プリズム22の出射面22cから出射する位置が相違する。第1プリズム21の入射面21aから反射面21bに至る光路が長い光束は、該入射角が大きく、出射面22cのうち第1プリズム21に近い位置から出射される。入射面21aから反射面21bに至る光路が短い光束は、該入射角が小さく、出射面22cのうち第2プリズム22の頂角22h寄りの位置から出射される。このため第1受光部17は、第2受光部18に比べ、反射面21bに対する入射角が大きく間隙20内の光路長が長い光束を受光し、第2受光部18は、反射面21bに対する入射角が小さく間隙20の光路長が短い光束を受光する。このため第1受光部17及び第2受光部18は、同じ油内を通過し、且つ油内の光路長がそれぞれ異なる光束を受光することができる。
【0068】
(4)第1プリズム21の反射面21bに対する入射角度が最大となる光線は第1受光部17に受光され、第1プリズム21の反射面21bに対する入射角が最小となる光線は第2受光部18に受光される。このため、反射面21bに対する入射角が最大値及び最小値の間である検出光ILの多くは、第1受光部17又は第2受光部18に受光される。このため油劣化検出センサ10の受光効率を高めることができる。
【0069】
(5)劣化判定装置30は、各受光部17,18から受光し、指数関数で表される光強度Ia,Ibの比をとり、且つ自然対数化して、吸光係数α
R、α
G、α
Bを算出する。このため、指数関数に含まれる係数である減衰係数B、発光部16の温度特性に基づく変化係数Cを消去することができる。またこれらの吸光係数α
R、α
G、α
BをRGB値とし、RGB値及び劣化判定マップ33を用いて油の劣化判定を行う。劣化判定マップ33は、色成分最大差及び明度の組み合わせに応じて油の劣化状態を分けているため、該マップを用いた判定結果に基づけば、油の劣化状態を、劣化状態別に的確に判断できる。
【0070】
尚、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・
図11に示すように、第1プリズム21を、正面視において直角二等辺三角形の形状をなすプリズム、第2プリズム22を、最大の頂角が90°未満のプリズムから構成してもよい。このとき第1プリズム21の入射面21a及び反射面21bで形成される頂角の角度θ5は45°、入射面21a及び出射面21cで形成される頂角の角度θ6は90°である。また第2プリズム22の入射面22a及び出射面22cで形成される頂角の角度θ7は、86°(傾斜角θ10=4°)である。この場合でも、間隙20内の光路長は、プリズム先端に向かうにつれて大きくなる。このように第1プリズム21の出射面21c及び第2プリズム22の入射面22aのうち少なくとも一方を傾斜させればよい。
【0071】
・
図12に示すように、第1プリズム21の出射面21c、及び第2プリズム22の入射面22aを、段差面にしてもよい。出射面21cは、プリズム先端側を切り欠いた形状をなし、出射面21c側からみて、第1の面21dと、この第1の面21dよりも低い第2の面21eとを有する。第1の面21d及び第2の面21eはそれぞれ平面状に形成されている。また、入射面22aも同様に、第1の面22d及び第2の面22eを有する。第1プリズム21及び第2プリズム22を、出射面21c及び入射面22aを向かい合わせた状態で配置すると、間隙20は、2つの異なる幅を有し、光路長としては、2つの光路長Lc,Ldとなる(Ld<Lc)。第1プリズム21の入射面21aに対する入射角に応じて、検出光ILを構成する光線の油内の光路長は、2つの光路長Lc,Ldのいずれかとなる。また第1受光部17を、光路長Lcの光路をとった光束を受光可能な位置に配置し、第2受光部18を、光路長Ldの光路をとった光束を受光可能な位置に配置すればよい。また、上記段差面を、第1プリズム21の出射面21c及び第2プリズム22の入射面22aのどちらか一方に設けてもよい。
【0072】
・
図13に示すように、第1プリズム21及び第2プリズム22は、出射面21c及び入射面22aが、ホルダ13からプリズム先端に向かうにつれ、間隙20の幅が縮小する方向に傾斜していてもよい。この場合各プリズム21,22の最大頂角の角度θ11は、90°よりも大きい。
【0073】
・
図14に示すように、受光部は3つ以上であってもよい。3つの受光部41〜43が設けられる場合には、第2プリズム22によって閉塞される3つの出射側通過孔44をホルダ13に貫通形成し、第2プリズム22から出射される検出光を、各受光部41〜43まで導く。各受光部41〜43は、プリズム21,22が並ぶ方向に沿って配置される。各受光部41〜43によって受光される光束は、間隙20内の光路長がそれぞれ異なるため、各受光部41〜43が検出した光強度のうち、2つを用いて比をとることで、減衰係数B等を消去することができる。このとき検出された各光強度Ia〜Icのうち、2つからなる3つの組み合わせ(例えば、Ia及びIb、Ia及びIc、Ib及びIc)から吸光係数αをそれぞれ求め、各吸光係数αに基づき、RGB値を決定してもよい。例えば組み合わせによって得られた3つの吸光係数αのうち、他の2つから乖離する吸光係数αがある場合には、その吸光係数αを削除し、残りの吸光係数αの中央値や平均値をRGB値としてもよいし、3つの吸光係数αの中央値又は平均値をRGB値としてもよい。
【0074】
・
図15に示すように、油劣化検出センサ10は、プリズム21,22によって光路を曲げる構成を備えるセンサでなくてもよい。例えば、油劣化検出センサ10は、ハウジング60内に収容された発光部16と、発光部16の光出射口に設けられた検出窓62とを備える。検出窓62は正面視において台形の形状をなす。また油劣化検出センサ10は、ハウジング61内に収容された1対の受光部17,18と、受光部17,18の光入射口に設けられた検出窓63とを備える。検出窓63は、検出窓62と同じ形状である。検出窓62,63の間には、油55を浸入させるための間隙が設けられる。各検出窓62,63は石英等の透光性材料から構成される。検出窓62の出射面、及び検出窓63の入射面は、平行ではなく、互いに異なる方向に傾斜しているので、間隙の幅は、その深さ方向に連続的に異なる。受光部17,18は、間隙の深さ方向に沿って並び、間隙内の光路長が異なる光束を受光する。各受光部17,18が検出した光強度の比をとり、自然対数化することで吸光係数αが求められる。この場合でも、油内の光路長を変えるための駆動部が不要である。尚、検出窓62,63は、特許請求の範囲の第1光学素子及び第2光学素子に対応する。
【0075】
・発光部16は、白色LED以外の発光素子であってもよい。例えば、ハロゲンランプ、蛍光ランプ、白熱電球等、ハウジング11に収容される大きさであって、光量が確保できれば、LED以外の光源であってもよく、白色以外の検出光を出射する光源であってもよい。
【0076】
・上記各実施形態では、第1及び第2の光学素子をプリズムから構成したが、ミラー等の他の光学素子によって構成してもよい。
・上記実施形態では、受光部17,18として3色を識別可能なRGBセンサを設けたが、発光部として赤色光源、緑色光源、青色光源を備え、色検出部として各色に対応する単色検出センサを3つ設けてもよい。
【0077】
・上記実施形態では、受光部17,18としてR値、G値、及びB値を識別可能なRGBセンサを設けたが、L
*a
*b
*表色系のL
*値、a
*値、b
*値、L
*C
*h
*表色系のL
*値、C
*値、h
*値、Yxy表色系のY値、xy値等、他の表色系の値を検出してもよい。この場合でも、例えばRGB空間の各値を、L
*a
*b
*表色系の各値に換算したマップを判定データ記憶部32に格納すればよい。
【0078】
・上記各実施形態では、油劣化検出センサ10を、光強度を外部に出力する構成としたが、回路基板15に、光強度Ia,Ibから吸光係数αを算出する演算回路、色成分最大差及び明度を演算する演算回路を備える構成としてもよい。
【0079】
・上記実施形態では、劣化判定装置30は、色成分最大差及び明度に応じて劣化状態を分けた劣化判定マップ33を用いて判定を行ったが、これ以外の方法で劣化判定を行うようにしてもよい。例えば、油劣化検出センサ10が検出する色成分毎の光強度に基づき、色の属性値(色相、明度、彩度)を演算し、属性値と、劣化状態に対して予め設定された閾値とを順次比較することにより劣化判定を行うようにしてもよい。
【0080】
・支持部に相当するハウジング11、カバー12、及びホルダ13の形状は、上述した形状に限定されない。例えばハウジング11とホルダ13を一体化してもよい。またプリズム21,22は、それらの全周面が露出された状態でハウジング11又はホルダ13に固定してもよい。
【0081】
・上記実施形態では、油劣化検出センサを、機械50に装着するタイプのセンサとして例示したが、機械50に装着されず、作業者によって、油にプリズム21,22を浸すタイプのセンサに具体化してもよい。
【0082】
・油劣化検出センサが装着される「機械」は、限定されない。例えば、「機械」は、車両のエンジン、変速機、差動装置、ターボチャージャ、船舶等のエンジンでもよい。また「機械」は、鉄道車両等の圧縮空気を生成する空気圧縮装置、建築機械用走行モータ等の各種モータ、建築機械用バルブ等の各種バルブ、航空機の飛行姿勢を制御するフライトコントロールアクチュエータ、風車、真空ポンプ等の各種ポンプ、産業ロボット等に用いられる減速機であってもよい。そして「油」をそれらの機械の潤滑剤としての油としてもよい。また、「機械」を工作機械とし、「油」を該工作機械の切削油としてもよい。
【0083】
・油劣化検出センサの検出対象となる「油」は、機械に使用される潤滑剤としての油に限られない。食用の油、燃料としての油、洗浄油、防錆油、原料油、絶縁油等、その他の用途の油の劣化状態を検出してもよい。
【0084】
・上記実施形態では、光学式センサ及び光学式センサシステムを油の劣化判定に用いたが、油以外の液体を対象とし、劣化度以外の光吸収特性を検出するために用いてもよい。ここでいう「液体」は、上述した間隙20に流入可能な媒体であればよく、高粘度の液状体や、コロイド等もふくむ。光学式センサが適応可能な「液体」としては、例えばジュース、ビール、しょうゆ、飲料水等の液状食品、川や海の環境水、川や海へ排出される廃液、化粧品、化学薬品、インク等の液状の化学物質、メッキに使用する水溶性金属化合物浴等が挙げられる。
【0085】
・上記実施形態では、光学式センサは、液体の光吸収特性に属する値を計測するセンサであればよく、吸光係数以外を検出するセンサであってもよい。例えば吸光度(光透過率)を測定するセンサでもよい。また光学式センサは、分光器を備え、吸収スペクトルを測定するセンサであってもよい。検出する属性値に応じて、センサシステムに格納されるプログラムを変更すればよい。