(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、
図11、
図12に示すように、円筒状の電気接触部913と、電気接触部913の外周に装着された環状の補助ばね(バネ部材)963とを備える充電コネクタ用端子955が知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
円筒状の電気接触部913に電気接触部913の中心軸方向に沿って延びる4つのスリット957が電気接触部913の円周方向へ等間隔に形成され、電気接触部913が4つの接触板959に分割されている。4つの接触板959の先端側部分はそれぞれ電気接触部913の径方向へ弾性変形可能である。4つの接触板959の外周にはそれぞれ電気接触部913の円周方向へ延びる外溝961が形成されている。
【0004】
補助ばね963の内径は電気接触部913の外径より若干小さい。補助ばね963は外溝961に装着されている。
【0005】
雄端子921のピン状の電気接触部921Aが充電コネクタ用端子955の電気接触部913内に挿入されると、4つの接触板959の先端側部分がそれぞれ外方へ変位し、補助ばね963の径が大きくなる。このとき、接触板959と補助ばね963との復帰力により接触板959の先端側部分の内周が雄端子921の電気接触部921Aの外周に押しつけられ、充電コネクタ用端子955の接触板959の先端側部分と雄端子921の電気接触部921Aとの間に一定の接触力が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、充電コネクタ用端子955には、接触板959の外周に形成された外溝961に補助ばね963が装着される構造が採用されているので、外溝961による補助ばね963を保持する保持力は小さく、補助ばね963が電気接触部913から容易に外れるおそれがある。
【0008】
また、4つの接触板959の外周に外溝961を形成する構造では、切削によってソケットコンタクトを製造するため、廃棄される材料の量が多くなり、これが充電コネクタ用端子955の製造コストを高くする一因となっている。
【0009】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題は、製造コストを抑制するとともに、バネ部材がソケットコンタクト本体から外れにくいソケットコンタクトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため請求項1に記載の発明は、ソケットコンタクト本体と、前記ソケットコンタクト本体に装着されたバネ部材とを備えているソケットコンタクトにおいて、前記バネ部材は、弾性環状部と、前記弾性環状部に設けられ
、前記弾性環状部の中心軸に沿うように突出する複数の突出部とを有し、前記ソケットコンタクト本体は、ピンコンタクトを受け容れる円筒状の接触部を有し、前記接触部に前記ピンコンタクトを受け容れる受容方向へ延びる
複数のスリットが形成され、前記接触部が前記ピンコンタクトを受け容れたとき、前記弾性環状部が弾性変形し、その復帰力によって、前記接触部の内周に形成された接点部が前記ピンコンタクトの外周に押しつけられることによって前記ピンコンタクトと接続し、前記接触部に前記突出部
の先端部を受け容れる
複数の受容部が形成され、前記受容部は、前記接触部の外周に装着された前記弾性環状部の前記受容方向と平行な方向への移動を制限
し、前記複数の受容部は、それぞれ前記スリットに交わるように形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のソケットコンタクトにおいて、前記受容部が前記突出部を受け容れているとき、前記突出部の先端部は前記接触部の内周面より内側へ突出しないことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のソケットコンタクトにおいて、前記受容部が、孔又は切欠であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のソケットコンタクトにおいて、前記ソケットコンタクト本体は、円柱状の本体部と、前記本体部の一端に設けられ、接続対象物に接続される接続部とを有し、前記接触部が弾性を有し、前記本体部の他端に設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のソケットコンタクトにおいて、前記接続対象物が電線であり、前記接続部が、前記電線の一端部を受け容れることができるように円筒状に形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のソケットコンタクトにおいて、4つの前記スリットが、前記接触部にその周方向へ等間隔に配置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載のソケットコンタクトにおいて、前記ソケットコンタクト本体が、純銅系材料でできていることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のソケットコンタクトにおいて、前記バネ部材が、耐熱性の高い金属材料でできていることを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載のソケットコンタクトにおいて、前記ソケットコンタクト本体が、前記受容部を除いて冷間圧造法によって製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、製造コストを抑制するとともに、バネ部材がコンタクト本体から外れにくいソケットコンタクトを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
まず、この発明の第1実施形態のソケットコンタクトを
図1〜
図7に基づいて説明する。
【0023】
ソケットコンタクト10は、ソケットコンタクト本体13とバネ部材15とを備える。この実施形態のソケットコンタクト10は大電流用のソケットコンタクトとして用いられるものである。
【0024】
ソケットコンタクト本体13は接触部131と接続部132と本体部133とを有する。
【0025】
円柱状の本体部133の一端部には、例えば図示しないバスバー(接続対象物)に接続される円板状の接続部132が設けられている。本体部133の他端部には、円筒状の接触部131が設けられている。接触部131には、4つのスリット131Aと2つの孔(受容部)131Bとが形成されている。
【0026】
接触部131は図示しないピンコンタクトを受け容れる。接触部131の先端部の外径は接触部131の後端部の外径よりわずかに小さい。
【0027】
各スリット131Aは、接触部131がピンコンタクトを受け容れる受容方向DIに沿って延びている。4つのスリット131Aは接触部131の周方向に沿って等間隔に配置されている(
図3参照)。4つのスリット131Aが円筒状の接触部131に形成されることによって4つの接触片131Cが形成される。各接触片131Cの先端部の内周にはピンコンタクトの外周に接触する接点部131Dが形成されている。
【0028】
各孔131Bは、スリット131Aと交わるように形成され、接触部131の周方向で2分割されている。2つの孔131Bは接触部131の径方向で対向している。
【0029】
接続部132は、例えば超音波溶着、溶接、半田付け等によってバスバーに接続される。なお、接続部132に端面側からネジ穴(図示せず)を形成して、バスバーとボルト締めによって接続するようにしても良い。
【0030】
本体部133は小径部133Aと大径部133Bとを有する。大径部133Bの外径は小径部133Aの外径より大きく、接続部132の外径より小さい。
【0031】
接触部131、本体部133及び接続部132の中心軸は一致している。
【0032】
接触部131を除き、ソケットコンタクト本体13は中実の構造(内部に空間が存在しない構造)である。
【0033】
ソケットコンタクト本体13を前から見たとき、孔131B以外に隠れる部分は無い(
図3参照)。したがって、後述するように、孔131Bを除いて、ソケットコンタクト本体13を冷間圧造によって形成することができる。
【0034】
バネ部材15は弾性環状部151と2つの突出部152とを有する。ソケットコンタクト本体13の接触部131がピンコンタクトを受け容れたとき、バネ部材15の弾性環状部151が弾性変形し、その復帰力によって接触部131の接点部131Dはピンコンタクトの外周に押しつけられる。
【0035】
弾性環状部151は板状の金属板を環状に曲げ加工したものであり、弾性環状部151の径方向へ弾性変形可能である。弾性環状部151の周方向の一端部には凸部151Aが形成され、その他端部には凸部151Aを受け容れる凹部151Bが形成されている。弾性環状部151の内径は、接触部131の先端部をすぼめたときの接触部131の外径より小さい。
【0036】
この実施形態では、バネ部材15が接触部131の外周に装着される前、2つの突出部152は弾性環状部151の先端(弾性環状部151の中心軸方向の一端)から受容方向DIと反対の方向へまっすぐ突出している(
図2参照)。2つの突出部152は弾性環状部151の径方向で対向している。
【0037】
バネ部材15が接触部131の外周に装着された後、後述するように、突出部152は弾性環状部151の径方向へ曲げられ、突出部152の先端部が孔131Bに挿入される(
図1参照)。その結果、バネ部材15の受容方向DIと平行な方向への移動が制限される。
【0038】
但し、突出部152は、その先端部が接触部131の内部空間へ突出しないように曲げられている。また、突出部152の先端部が孔131Bに挿入されたときにおいて、突出部152と孔131Bの内周面との間には所定のクリアランスがある。このクリアランスは、接触部131にピンコンタクトが挿入されたときに生じる突出部152の接触部131の周方向への移動が接触部131によって妨げられ、弾性環状部151の径が大きくなる方向への弾性環状部151の弾性変形が阻止されないようにするためのすき間である。したがって、接触部131の周方向における孔131Bの長さは、接触部131の周方向における突出部152の長さより十分長い。
【0039】
なお、突出部152と孔131Bとをそれぞれ1つしか採用しなかった場合には、突出部152を孔131Bの奥まで挿入できればよく、上述のようなクリアランスを設けることは不可欠ではない。突出部152と孔131Bとがそれぞれ1つであれば、弾性環状部151の径が大きくなる方向への弾性環状部151の弾性変形が妨げられないからである。
【0040】
次に、ソケットコンタクト10の製造方法を
図1、
図2を用いて説明する。
【0041】
ソケットコンタクト本体13を製造するには、まず、冷間圧造によって、純銅系材料でできた円柱状の素材(図示せず)から、図示しないソケットコンタクト本体中間体(ソケットコンタクト本体13の孔131B以外の部分が形成された状態のもの)を形成する。純銅系材料としては、例えば無酸素銅やタフピッチ銅等が挙げられる。
【0042】
次に、切削等の除去加工により、孔131Bを形成する。
【0043】
以上の工程を経てソケットコンタクト本体13ができあがる。
【0044】
バネ部材15を製造するには、まず、耐熱性の高い金属材料でできた金属板をプレス加工によって所定形状(バネ部材15を展開した形状)に打ち抜いて、図示しないバネ部材中間体を形成する。耐熱性の高い金属材料としては、例えばステンレス、ジルコニウム銅、チタン銅等が挙げられる。
【0045】
次に、曲げ加工により、バネ部材中間体を環状に曲げて弾性環状部151を形成する。この段階では突出部152が曲げられておらず、バネ部材15の完成に至っていないので、曲げ加工後の金属板は厳密にはバネ部材15といえず、依然としてバネ部材中間体であるが、便宜上、この段階のバネ部材中間体もバネ部材15という。
【0046】
以上のようにして製造されたソケットコンタクト本体13に、バネ部材15を組み付けるには、まず、接触部131の先端部を接触片131C同士が接触部131の周方向で接触するまですぼめる。
【0047】
次に、バネ部材15の弾性環状部151の径を大きくして、バネ部材15をソケットコンタクト本体13の接触部131の外周に巻きつけるように装着し、その後、孔131Bと突出部152とが対向するように、接触部131に対してバネ部材15を位置決めする。
【0048】
最後に、図示しない棒状の治具を用いて、突出部152の先端部を曲げて、孔131B内に挿入する。このとき、突出部152の先端部がソケットコンタクト本体13の接触部131の内部空間、即ち接触部131の内周面より内側へ突出しないようにする。なお本実施例では、突出部152の先端部を後加工によって曲げたが、突出部152の先端部を最初から曲げておき、突出部152に曲げ加工を施したバネ部材15をソケットコンタクト本体13の接触部131に装着するようにしても良い。
【0049】
以上の工程を経てソケットコンタクト本体13へのバネ部材15の装着が完了し、ソケットコンタクト10が完成する。
【0050】
この実施形態によれば、バネ部材15の突出部152をソケットコンタクト本体13の孔131Bに挿入することによって、バネ部材15の受容方向DIと平行な方向への移動を制限するようにしたので、接触部131の外周を一周する外溝961(
図11、
図12参照)を、バネ部材15の抜け止めのために切削加工によって形成する必要がなくなる。その結果、ソケットコンタクト本体13を製造するとき、廃棄する材料が大幅に減るため、製造コストを抑制することができる。更に、孔131Bは接触片131Cを貫通する孔であり、接触板959(
図11、
図12参照)の外周に形成される外溝961に比べ、孔131Bが突出部152を保持する保持力が大きいので、バネ部材15はソケットコンタクト本体13から外れにくい。したがって、バネ部材15の受容方向DIと平行な方向への移動を制限するために、例えば、接触部131にその外周から外方へ突出する凸状のストッパ(図示せず)等を設ける必要がない。即ち、接触部131の接触片131Cの板厚をそのまま移動を制限するための部分として用いることができ、バネ部材15を接触部131に装着した後のバネ部材15の保持力をUPさせることができる。
【0051】
また、バネ部材15の材料として耐熱性の高い金属材料が用いられているので、バネ部材15がクリープ変形しにくく、ピンコンタクトとソケットコンタクト10との接触安定性が保たれる。
【0052】
更に、ソケットコンタクト本体13の接触部131以外の部分が中実であるので、板材をプレス加工によって形成した大電流用のソケットコンタクト(図示せず)に比べ、小さなサイズでそれと同等の電流路の断面積を確保することができる。
【0053】
また、ソケットコンタクト本体13の孔131B以外の部分を冷間圧造で形成すると、金属素材の金属繊維状組織が繋がった状態が保たれるため、金属繊維状組織が切断される切削加工によって形成される
図11、
図12に示す充電コネクタ用端子955の電気接触部913と比べて、ソケットコンタクト本体13の強度が高い。
【0054】
更に、バネ部材15の突出部152の先端部がソケットコンタクト本体13の接触部131の内部空間へ突出していないので、接触部131にピンコンタクトを挿入するときに、突出部152がピンコンタクトの障害物にならず、ピンコンタクトによって突出部152が孔131Bから押し出されて、バネ部材15がソケットコンタクト本体13から外れるおそれが少ない。
【0055】
次に、この発明の第2実施形態のソケットコンタクトのソケットコンタクト本体213を
図8〜
図10に基づいて説明する。
【0056】
第1実施形態と共通する部分については同一符号を付してその説明を省略する。以下、第1実施形態との主な相違部分についてだけ説明する。
【0057】
この実施形態のソケットコンタクト本体213の接続部2132の形状は、第1実施形態のソケットコンタクト本体13の接続部132の形状と異なる。第2実施形態のソケットコンタクトの接続対象物は電線(図示せず)であり、接続部2132は、電線の一端部を受け容れることができるように円筒状に形成されている。接続部2132は、接続部2132の中心軸に沿って延びる結線部2132Aを有する。接続部2132は冷間圧造によって形成可能である。この実施形態のソケットコンタクトのバネ部材としては第1実施形態のソケットコンタクト10のバネ部材15が用いられる。
【0058】
第2実施形態は第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0059】
なお、上述の実施形態では、バネ部材15の突出部152は2つであるが、突出部152は少なくとも1つあればよい。また、スリット131Aは4つであるが、スリット131Aは少なくとも1つあればよい。
【0060】
また、上述の実施形態では、スリット131Aを冷間圧造で形成したが、ソケットコンタクト本体13のスリット131A及び孔131B以外の部分を冷間圧造で形成し、その後、スリット131A及び孔131Bを切削等の除去加工によって形成するようにしてもよい。
【0061】
なお、上述の実施形態では、弾性環状部151の突出部152を受け容れる受容部として円形の孔131Bが採用されているが、孔は円形の孔131Bに限られず、角穴等でも良い。更に、受容部は孔に限られず、切欠でもよい。
【0062】
また、上述の実施形態では、電流路の断面積をより多く確保するために、孔131Bをスリット131Aと交わるように形成したが、孔131Bをスリット131Aと交わらないように形成してもよい。
【0063】
なお、上述の実施形態では、バネ部材15の突出部152は突出片であるが、突出部152は突出片である必要はなく、例えば、弾性環状部151の内周から弾性環状部151の中心軸に向かって突出する凸部でもよい。また、弾性環状部151自体にコ字状(U字状)のスリットを設けて突出片を形成してもよい。
【0064】
また、上述の実施形態では、治具を用いて手作業により突出部152を曲げたが、機械を用いて曲げてもよい。
【0065】
なお、上述の実施形態では、接触部131が弾性を有し、接触片131Cが弾性変形可能であるが、接触部131は弾性を有する必要はない。
【0066】
また、上述の実施形態では、本願発明を大電流用のソケットコンタクトに適用した場合について述べたが、本願発明を非大電流用のソケットコンタクトに適用してもよい。