特許第6238377号(P6238377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6238377小さな結晶ZSM−5、その合成および使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238377
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】小さな結晶ZSM−5、その合成および使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/40 20060101AFI20171120BHJP
   C01B 37/02 20060101ALI20171120BHJP
   B01J 29/035 20060101ALI20171120BHJP
   B01J 29/40 20060101ALI20171120BHJP
   B01J 29/86 20060101ALI20171120BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C01B39/40
   C01B37/02
   B01J29/035 M
   B01J29/40 M
   B01J29/86 M
   B01J35/10 301J
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-549410(P2015-549410)
(86)(22)【出願日】2013年11月22日
(65)【公表番号】特表2016-505498(P2016-505498A)
(43)【公表日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】US2013071456
(87)【国際公開番号】WO2014099262
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年11月21日
(31)【優先権主張番号】61/740,908
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13155722.5
(32)【優先日】2013年2月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100179925
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 真紀
(72)【発明者】
【氏名】バートン アレン ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】クリーワー クリスティン イー
(72)【発明者】
【氏名】アフェウォルキ モバエ
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/087633(WO,A1)
【文献】 特開昭59−184723(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0027673(US,A1)
【文献】 特表2008−518874(JP,A)
【文献】 特表平07−500561(JP,A)
【文献】 特表平07−506802(JP,A)
【文献】 特開平05−310415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−39/54
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の特徴を有するX-線回折パターンを有し、ZSM-5の骨組構造を有する、結晶性モレキュラーシーブ
(i) 2θ8.90(±0.30)度で最大値を有する第一のピークであってックグラウンドを超える強度ImaxAを有し、2θ7.96(±0.30)度で最大値を有する第二のピークと交差して、バックグラウンドを超える強度IminAを有し、IminA/ImaxAの比が>0.33となるような極小値を形成する第一のピーク;ならびに
(ii) 2θ24.0(±0.30)度で最大値を有する第三のピークであって、バックグラウンドを超える強度ImaxBを有し、2θ23.2(±0.20)度で最大値を有する第四のピークと交差しており、該第三および第四ピークの交差が、バックグラウンドを超える強度IminBを有し、IminB/ImaxBの比が>0.90となるような極小値を形成する、第三のピーク。
【請求項2】
100m2/gを超える外部表面積(窒素の物理吸着のためのt-プロット法により決定される)を有する結晶を含む、請求項1記載のモレキュラーシーブ。
【請求項3】
前記第三のピークがバックグラウンドを超える強度ImaxBを有し、および2θ23.2(±0.20)度で最大値を有する第四のピークと交差して、該第三および第四ピークの交差点で変曲点を示す複合ピークを形成する、請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項4】
IminA/ImaxAの比が少なくとも0.40である、請求項1〜の何れかに記載のモレキュラーシーブ。
【請求項5】
ZSM-5の骨組構造を有するモレキュラーシーブであって、該モレキュラーシーブが、窒素の物理吸着のためのt-プロット法により決定された100m2/gを超える外部表面積および2θ24.0(±0.30)度で最大値を有する複合ピークを有するX-線回折パターンを有する結晶を含み、該複合ピークはバックグラウンドを超える強度ImaxBを有し、および2θ23.2(±0.20)度で最大値を有する複合ピークと交差して、バックグラウンドを超える強度IminBを有し、IminB/ImaxBの比が>0.90となるような極小値を形成するモレキュラーシーブ。
【請求項6】
前記モレキュラーシーブが、200m2/gを超える部表面積(窒素の物理吸着のためのt-プロット法により決定される)を有する結晶を含む、請求項1〜の何れかに記載のモレキュラーシーブ。
【請求項7】
ZSM-5の骨組構造を有するモレキュラーシーブであって、該モレキュラーシーブが、200m2/gを超える外部表面積(窒素の物理吸着のためのt-プロット法により決定される)、および2θ21.5〜26度の範囲内に単一の拡散した複合的特徴を有するX-線回折パターンを有する結晶を含むモレキュラーシーブ。
【請求項8】
前記モレキュラーシーブが、モル関係:
X2O3:(n)YO2
(ここで、nは少なくとも約20であり、Xは三価の元素であり、およびYは四価の元素である)
を含む組成を有する、請求項1〜の何れかに記載のモレキュラーシーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小さな結晶サイズのZSM-5、その合成およびその吸着剤および有機転化反応用の触媒としての使用に関する。
【0002】
(関連出願との相互引照)
本件特許出願は、2012年12月21日付けで出願された米国仮特許出願第61/740,908号に関する優先権を主張し、またその利益を請求するものである。該特許出願の内容全体を参考として本明細書に組入れる。
【背景技術】
【0003】
結晶性ZSM-5、およびテトラプロピルアンモニウムカチオンを構造指向剤として用いる従来のその調製は、米国特許第3,702,886号および同第Re.29,948号によって教示されている。これらの開示事項全体を参考として本明細書に組入れる。従来のZSM-5は、特徴的X-線回折パターンを持ち、該パターンはこのものを他の既知結晶性物質から識別し、また様々な有機転化反応において有用な非常に用途の広い触媒である。
ゼオライト上での幾つかの酸-触媒を用いた反応に関しては、減じられた結晶サイズ、その結果として増大された外部表面積を持つゼオライトを用いることにより、該反応体および/または生成物分子の拡散長を減じることが有益である。これは、該ゼオライトの形状選択効果を減じる作用を持ち得るが、強力な活性のみを必要とする反応に関しては、このことは重要ではないかもしれない。
小さな結晶としてのZSM-5の例は、米国特許第5,240,892号に開示されており、該特許において、該ZSM-5は少なくとも約0.05μm、好ましくは少なくとも約0.1μmの第一および第二の主寸法および約0.02μm未満、好ましくは約0.01μm未満の小さい第三の寸法を持つ板状体の形状にある。該ZSM-5は、少なくとも3.0質量%のメシチレン吸着能を有し、また有機指向剤の不在下で、あるいはn-プロピルアミンを該指向剤として用い、シリカ源として沈降シリカを使用して製造される。
【0004】
加えて、Chem. Mater. 21 (2009) 641-654において、D. Serrano等は、テトラプロピルアンモニウム(TPA)イオンおよびフェニルアミノプロピルトリメトキシシランからなる二重の鋳型を用いた、5〜10nm程度の小さなZSM-5結晶の合成を主張している。この方法において、該シラン化剤は、ゼオライトの結晶化が開始する前であって、該合成ゲルを短期間に渡り予備加熱した後に導入される。Serrano等の図1は、その結晶化された生成物を模式的に示しており、一方図2は、該生成物のTEM像を示している。これらTEM像は、極めて小さな粒子を示しているが、この研究由来の該生成物に係る粉末XRDにおけるピークは、5〜10nmの結晶に係るであろうピーク程にはブロードではない。
Ryooおよびその共同研究者等は、「活性かつ長寿命触媒としての、ゼオライトMFIの安定なシングルユニットセルナノシート(Stable single-unit-cell nanosheets of zeolite MFI as active and long-lived, catalysts)」, Nature, 461, 246-249 (2009年9月10日)において、炭素原子数22のアルキル鎖および炭素原子数6のメチレン鎖により隔てられている2つの四級アンモニウム基で構成される単一の鋳型剤を使用することによる、シングルユニットセル-厚(single unit cell-thick)型のZSM-5の合成を報告している。ここで、該四級アンモニウム基は、上記シングルユニットセルナノシート内に位置しており、該基は該長いアルキル鎖によって相互に隔てられている。Ryoo等の図3は、厚みにおいてシングルユニットセルである該ZSM-5結晶の単相および多相型の模式図を示している。
多くのナノ結晶生成物の単離において共通する一つの問題は、その凝集体が極めて小さくて、該生成物が簡単な濾過技術によってではなく寧ろ遠心分離によって集められなければならない点にある。従って、大きな規模拡大は、処理することが難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで本発明により、新規な超微細(ultra-small)結晶形のZSM-5が製造可能であることが見出された。これらの超微細結晶形のZSM-5は、固有の粉末XRDパターンを持ち、またここではEMM-20と呼ばれる。EMM-20は、広いSi/Al比(無限乃至10)に渡るものとすることができ、また一般的に高度の凝集体形状で製造されており、これは、標準的な濾過技術による捕集を可能とする。EMM-20は、高い酸活性および大きな表面積が重要となる反応における触媒として有用であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一局面において、本発明は、少なくとも以下の特徴を有する、X-線回折パターンを有するモレキュラーシーブにある:
(i) 2θ8.90(±0.30)度で最大値を有する第一のピーク、該ピークはバックグラウンドを超える強度ImaxAを有し、および2θ7.96(±0.30)度で最大値を有する第二のピークと交差して、バックグラウンドを超える強度IminAを有し、IminA/ImaxAの比が>0.33となるような極小値を形成しており;ならびに
(ii) 2θ24.0(±0.30)度で最大値を有する第三のピーク。
一態様において、第三のピークは、バックグラウンドを超える強度ImaxBを有し、および2θ23.2(±0.20)度で最大値を有する第四のピークと交差しており、該第三および第四のピークの交差が、変曲点を示すか、あるいはバックグラウンドを超える強度IminBを有し、IminB/ImaxBの比が>0.90となるような極小値を形成する。
更なる一局面において、本発明は、ZSM-5の骨組構造を有し、100m2/gを超える、窒素の物理吸着のためのt-プロット法により決定される外部表面積およびX-線回折パターンを有する結晶を含むモレキュラーシーブにあり、該X-線回折パターンは2θ24.0(±0.30)度で最大値を有し、またバックグラウンドを超える強度ImaxBを有する複合ピーク(composite peak)を有し、これは2θ23.2(±0.20)度で最大値を有する複合ピークと交差して、バックグラウンドを超える強度IminBを有し、IminB/ImaxBの比が>0.90となるような極小値を形成する。
【0007】
更に別の局面において、本発明はモレキュラーシーブにあり、該モレキュラーシーブはZSM-5の骨組構造を有し、また200m2/gを超える、窒素の物理吸着のためのt-プロット法により決定される外部表面積および2θ21.5〜26度の範囲に単一の拡散した複合的特徴(diffuse composite feature)を有するX-線回折パターンを有する結晶を含む。
一態様において、上記結晶は250m2/gを超える外部表面積および525m2/gを超える全表面積を有する。幾つかの場合において、該結晶はその内部表面積を超える外部表面積を有する。
一態様において、上記モレキュラーシーブは、モル関係:
X2O3:(n)YO2
(ここで、nは少なくとも約20であり、Xは三価の元素、例えばアルミニウムであり、またYは四価の元素、例えばケイ素および/またはゲルマニウムである)
を含む組成を有する。
他の態様において、本発明は、有機化合物を含む供給原料を転化生成物に転化する方法にあり、該方法は、有機化合物転化条件にて、該供給原料を、活性形態の本明細書に記載されるモレキュラーシーブ材料を含む触媒と接触させる工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(a)および図1(b)は、米国特許第5,240,892号に従って製造した従来のZSM-5製品に関する、夫々2θ19〜26度の領域および2θ5〜12度の領域における、X-線パターンの一部を示す。
図2図2は、3日間(上部パターン)、3日と22時間(中間部パターン)および4日間(下部パターン)に及ぶ結晶化後の、実施例2の合成したままの製品に関するX-線回折パターンを比較するものである。
図3図3は、焼成前(上部パターン)および焼成後(下部パターン)の、4日間の結晶化後の、実施例2の製品に関するX-線回折パターンを比較するものである。
図4図4は、実施例2の合成したままの製品に関する、走査型電子顕微鏡(SEM)像を与える。
図5図5は、実施例3の合成したままの製品に関する、X-線回折パターンを示す。
図6図6は、24時間(下部パターン)および30時間(上部パターン)におよぶ結晶化後の、実施例4の合成したままの製品に係る、X-線回折パターンを比較するものである。
図7図7は、1日間(上部パターン)、2日間(中間部パターン)および6日間(下部パターン)に及ぶ結晶化後の、実施例5の合成したままの製品に関するX-線回折パターンを比較するものである。
図8図8は、実施例6の合成したままの製品に関するX-線回折パターンを比較するものである。
図9図9は、予め溶解したヒュームドアルミナを用いて調製された、実施例6の第4実験の生成物に関する、27Al MAS NMRを示す。
図10図10は、実施例6の第4実験の生成物に関するSEM像を与える。
図11図11(a)〜図11(d)は、実施例6の第4実験の生成物に係るサンプルの、ミクロトームで作製された検体に関する透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す。
図12図12は、実施例6の第4実験の生成物に係るサンプルの、結晶学的エッジ各々に関する結晶寸法の分布を示す棒グラフである。
図13】(a)〜(e)は、夫々実施例7〜11の合成したままの製品に関するX-線回折パターンを示す。
図14】(a)〜(f)は、夫々実施例12〜17の合成したままの製品に関するX-線回折パターンを示す。
図15】(a)〜(e)は、夫々実施例19〜23の合成したままの製品に関するX-線回折パターンを示す。
図16図16は、実施例22の合成したままの製品に関する走査型電子顕微鏡(SEM)像を与える。
図17図17は、実施例22の製品に関する27Al MAS NMRを示す。
図18図18は、実施例23の製品に関するSEM像を示す。
図19図19は、実施例23の製品に関する27Al MAS NMRを示す。
図20】(a)〜(c)は、実施例24〜26の合成したままの製品に関するX-線回折パターンを示し、また(d)および(e)は、実施例27の合成したままのおよび焼成したままの製品に関するX-線回折パターンを示す。
図21図21は、実施例24の生成物に関するSEM像を示す。
図22】(a)〜(c)は、夫々実施例28、29および31の合成したままの製品に関するX-線回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
超微細結晶形のZSM-5が本明細書に記載され、該ZSM-5は、名称EMM-20が与えられているような固有のX-線回折パターンを示す。
従来、米国特許第3,702,886号および同第Re. 29,948号により教示されているように、例えばテトラプロピルアンモニウムカチオンの存在下で合成された如き、ZSM-5の典型的な調製物は、以下の表1に列挙されている特性線を含むX-線回折パターンを有する。
【0010】
【0011】
本明細書で報告する上記X-線回折データは、エックスセレレータ(Xcelerator)マルチチャンネル検出器を持ち、ゲルマニウム固体検出器を具備するパナリティカルエックスパートプロ(Panalytical X’Pert Pro)回折装置により、銅K-α放射線を用いて集められた。該回折データは、2θ0.02度でのステップスキャンにより、また各ステップに対する有効計数時間2秒を用いて記録された。ここで、θはブラッグ(Bragg)角である。該面間隔、即ちd-間隔は、Å単位で計算され、またこれらラインの相対的な強度:I/Io は、バックグラウンドを超えるピーク強度対最強ラインの強度の比である。これらの強度はローレンツ(Lorentz)および分極効果に対して未補正である。該相対強度は、記号vs=極めて強い(75-100)、s=強い(50-74)、m=中程度(25-49)およびw=弱い(0-24)によって与えられる。
該ゼオライト結晶の関連する寸法が減少して、隣接するラインが重なり合い始め、またそれにより部分的に解像されるピークのみとして、または解像されないブロードなピークとして現れる可能性があるので、ゼオライトの上記X-線パターンにおける幾つかのラインがブロード化する傾向を示すことは公知である。本明細書に記載の上記ZSM-5の幾つかの態様において、このラインのブロード化の結果として、該X-線パターンの2θ21.5〜26度の範囲(d-間隔の範囲は4.13〜3.42Å)における単一の拡散した複合的特徴のみが存在する。このような場合において、2θ24.0±0.30度近傍の該複合ピークの最大値および2θ24.4±0.30度近傍の該複合ピークの最大値は、2θ23.2(±0.20)度近傍に最大値を持つ大きく拡散した複合ピークの肩として現れるか、または該ピークの一部を形成するかの何れかである。
【0012】
典型的(より大きな微結晶)なZSM-5のサンプルに関する粉末XRDパターンにおいて、2θ23.2度近傍に最大値を持つ複合ピークおよび2θ24.0度近傍の複合ピークは交差して、明瞭に見ることのできる極小値を形成する(図1(a)参照)。これらの典型的なZSM-5の調製物において、この極小値の相対的なバックグラウンドを差引いた強度(Imin)対2θ24.0度近傍の該複合ピークの相対的なバックグラウンドを差引いた強度(Imax)の比は、該ゼオライトの製造したままのおよび焼成された形状両者において0.40未満であろう。本発明の超微細結晶物質の一態様において、該極小値は、2θ24.0度近傍の該複合ピークから、依然として明確に識別し得る(例えば、実施例2に関する図3)が、この例において、Imin/Imaxの比は>0.90である。もう一つの態様において、該結晶は極めて小さくなり、また該ピークは著しくブロード化されるので、該24.0度近傍のピーク最大値は、2θ23.2(±0.20)度近傍に最大値を持つ上記大きく拡散した複合ピークの変曲点として現れるか(例えば、図7の下部パターン)、あるいは極小値または変曲点は、2θ24.0(±0.30)度近傍の該複合ピークから全く識別されない(図8の上部パターン)。これら極端な場合において、Imin/Imaxの比は1.0に近付く。
【0013】
同様に、典型的なZSM-5調製物において、2θ7.96(±0.30)度近傍に最大値を持つ複合ピークおよび2θ8.90(±0.30)度近傍に最大値を持つ複合ピークは交差して、明瞭に見ることのできる極小値を形成し(図1(b)参照)、ここでこの極小値の該相対的なバックグラウンドを差引いた強度(Imin)対2θ8.90度近傍の該複合ピークの相対的なバックグラウンドを差引いた強度(Imax)の比は、上記ゼオライトの製造したままのおよび焼成された形状両者において0.20未満となるであろう。対照的に、実施例2で製造した本発明の超微細結晶物質において(図3のX-線パターン参照)、Imin/Imaxの比は>0.33である。もう一つの態様において(超微細結晶に関連)、Imin/Imaxの比は少なくとも0.40となるであろう。好ましい配向効果が存在し得る場合においては、注意を払って、そのX-線パターンに及ぼす効果を最小化するように留意すべきである。
本発明の上記超微細結晶の態様において、上記ZSM-5結晶は、典型的に200m2/gを超え、幾つかの場合においては250m2/gを超え、更には300m2/gを超える外部表面積、および500m2/gを超え、幾つかの場合においては600m2/gを超え、更には650m2/gを超える全表面積を持つ。一態様において、該ZSM-5結晶は、その内部表面積を超える外部表面積を持つ。本明細書において与えられる全表面積の値は、t-プロット法を利用する窒素の物理吸着データから決定される。この方法の詳細は、Lippens, B.C.& deBoer, J.H.,「触媒における細孔系に関する研究:V. t-法(Studies on pore systems in catalysts: V. The t method)」 , J. Catal., 4, 319 (1965)において見出すことができる。この文献の内容全体を、本明細書に参考として組み入れる。
【0014】
このような超微細結晶物質に関連して、X-線回折は、上記ZSM-5の構造を持つような物質を同定するには不十分である可能性があり、この場合において他の分析的方法、例えば高分解能の透過型電子顕微鏡および電子回折が、ZSM-5との該物質と同一性を確認するのに必要となる可能性がある。
本明細書に記載されるZSM-5結晶は、モル関係:
X2O3:(n)YO2
(ここで、nは少なくとも約20であり、Xは三価の元素であり、ここでXはアルミナであることが望ましく、またYは四価の元素であり、ここでYはケイ素および/またはゲルマニウムであることが望ましい)
を含む組成を有する。
本明細書に記載するZSM-5結晶は、水、アルカリまたはアルカリ土類金属(M)、ヒドロキシドイオン、四価元素Yの酸化物、場合により三価元素Xおよび1,4-ビス(N-ペンチルピロリジニウム)ブタンジカチオン、1,5-ビス(N-ペンチルピロリジニウム)ペンタンジカチオン、または1,6-ビス(N-ペンチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンの1またはそれ以上から選択される構造指向剤(Q)の源を含む合成混合物から製造することができ、該合成混合物は、酸化物のモル比で表して、以下の範囲内の組成を有する。
【0015】
【0016】
上記四価元素Yの適当な源は選択される元素Yに依存するが、Yがケイ素および/またはゲルマニウムである好ましい態様においては、シリカ、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、アルカリ金属ケイ酸塩、テトラアルキルオルトシリケートおよび酸化ゲルマニウムのコロイド状懸濁液を含む。上記三価元素Xが存在する場合、これは通常アルミニウムであり、またアルミニウムの適当な源は水和アルミナ、および水溶性アルミニウム塩、例えば硝酸アルミニウムを含む。アルミニウムおよびケイ素の合体した源は、クレー、処理クレー、例えばメタカオリンを含むことができる。ゼオライトY等のアルミノシリケートゼオライトを包含する、他のXおよびYの合体した源も使用することができる。
Qの適当な源は、関連するジ四級アンモニウム化合物の水酸化物および/または塩である。これらの化合物自体は新規であると考えられるが、これらは、N-ペンチルピロリジンと1,4-ジブロモブタン、1,5-ジブロモペンタンまたは1,6-ジブロモヘキサンとの反応により容易に合成することができる。
幾つかの態様において、上記合成混合物は、またモレキュラーシーブ物質の種結晶、例えば前の合成由来のZSM-5を、望ましくは該合成混合物の質量基準で、0.01質量ppm〜10,000質量ppm、例えば100質量ppm〜5,000質量ppmの量で使用することができる。
上記合成混合物からのZSM-5の結晶化は、静的または攪拌条件の下で、適当な反応容器、例えばポリプロピレン製のジャー、またはテフロン(登録商標)ライナーを施したまたはステンレススチール製オートクレーブ内で、約80℃〜約200℃にて、該使用温度にて結晶化を起すのに十分な時間、例えば約1〜約21日間行うことができる。その後、該結晶を該液体から分離し、回収する。
【0017】
所望の程度まで、また上記物質のX2O3/YO2モル比に依存して、上記合成したままのZSM-5内のあらゆるアルカリまたはアルカリ土類金属カチオンを、当分野において周知の技術に従って、イオン交換により他のカチオンで置換することができる。好ましい交換カチオンは、金属イオン、水素イオン、水素プリカーサ、例えばアンモニウムイオンおよびこれらの混合物を含む。特に好ましいカチオンは、触媒活性を幾つかの炭化水素転化反応に適合させるカチオンである。これらは水素、希土類金属および元素周期律表第2〜15族の金属を含む。本明細書で使用するように、該周期律表に対する番号付けスキームは、Chemical and Engineering News, 63(5), 27 (1985)に開示されているようなものである。
上記合成したままのZSM-5は、またその合成において使用された上記有機指向剤Qの一部またはその全てを除去するための処理に掛けることもできる。これは、熱処理によって行うことが都合よく、該熱処理において合成したままの該物質は少なくとも約370℃の温度にて、少なくとも1分間および一般的には20時間以下の期間に渡り加熱される。該熱処理のために減圧を利用することができるが、便利さの理由から大気圧が望ましい。該熱処理は、約925℃までの温度にて実施し得る。あるいはまた、該有機指向剤Qは、オゾンで処理することにより除去することもできる(例えば、Parikh等, Microporous and Mesoporous Materials, 2004, 76, pp.17-22を参照のこと)。この有機物を含まない生成物、特にその金属、水素およびアンモニウム形状にある生成物は、幾つかの有機物、例えば炭化水素の転化反応用触媒において特に有用である。
【0018】
上記モレキュラーシーブは水素化成分、例えばモリブデン、レニウム、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、または水素化-脱水素化機能を果たさせようとする場合には、貴金属、例えば白金またはパラジウムと密接に結合させることができる。このような成分は、(1) 同時結晶化、(2) 第IIIA族元素、例えばアルミニウムが該構造内に存在する程度までの該組成物内での交換、(3) 該組成物への含浸、または(4) 該組成物との密接な物理的混合によって、該組成物に存在させることができる。このような成分は、例えば白金の場合には該シリケートを、白金金属含有イオンを含む溶液で処理することによって、その中にあるいはその上に浸み込ませることが可能である。従って、この目的にとって適した白金化合物は、塩化白金酸、塩化第一白金および白金アミン錯体を含む様々な化合物を包含する。
上記モレキュラーシーブは、吸着剤としてあるいは触媒として使用される場合、少なくとも部分的に脱水すべきである。これは、雰囲気、例えば空気、窒素等の中で、200℃〜約370℃の範囲の温度まで、大気圧、減圧または過圧下で、30分〜48時間に渡り加熱することにより行うことができる。また、脱水は室温にて、単に該ZSM-5を真空中に置くことにより実施することもできるが、脱水の十分な結果を得るためにはより長い時間が必要とされる。
本明細書に記載のZSM-5は、吸着剤、または特にそのアルミノシリケート形状において、現在の商業的/工業的価値の多くを含む、広範囲の有機化合物転化工程を触媒するための触媒として使用することができる。本発明のZSM-5により効果的に触媒される化学転化工程の例は、高い酸活性および大きな表面積が重要となる工程である。
【0019】
多くの触媒の場合におけるように、本発明のZSM-5を、有機転化工程において使用される温度および他の条件に対して耐性のもう一つの物質と共に組入れることが望ましいことがあり得る。このような物質は、活性なおよび不活性な物質、および合成または天然産のゼオライト、並びに無機物質、例えばクレー、シリカおよび/または金属酸化物、例えばアルミナを含む。後者は天然産の、またはゼラチン状の沈殿またはゲルであり得、シリカおよび金属酸化物の混合物を包含する。本発明のZSM-5との組合せでの物質の使用、即ちこれとの結合または活性な新規結晶の合成中の存在は、幾つかの有機転化工程における該触媒の転化率および/または選択率を変更する傾向がある。適切には、不活性物質は希釈剤として働いて、与えられた工程における転化量を制御し、結果として反応速度を調節するための他の手段を用いることなしに、経済的かつ秩序だった方法で生成物を得ることを可能とする。これらの物質は天然産のクレー、例えばベントナイトおよびカオリンに組入れて、工業的な稼働条件下で該触媒の圧潰強さを改善することができる。該物質、即ちクレー、酸化物等は、該触媒に対するバインダとして機能する。良好な圧潰強さを持つ触媒を提供することが望ましく、その理由は工業的利用においては、該触媒が粉末-様の物質へと破壊されるのを防止することが望ましいからである。これらのクレーおよび/または酸化物バインダは、通常、単に該触媒の圧潰強さを改善する目的で使用されている。
【0020】
本発明のZSM-5と複合化し得る天然産のクレーは、サブベントナイト(subbentonites)を包含するモンモリロナイトおよびカオリン群、およびディキシー(Dixie)、マクナミー(McNamee)、ジョージア(Georgia)およびフロリダ(Florida)クレーとして一般的に知られているカオリンまたは主な鉱物成分がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、アナウキサイトであるその他のものを含む。このようなクレーは、最初に採掘されたような未加工の状態で、あるいは初めに焼成、酸処理または化学的変性処理に付した状態で使用し得る。ZSM-5との複合化にとって有用なバインダは無機酸化物、例えばシリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、べリリア、アルミナ、およびこれらの混合物をも含む。
上述の物質に加えて、本発明のZSM-5は、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-べリリア、シリカ-チタニア、並びに三成分組成物、例えばシリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシアおよびシリカ-マグネシア-ジルコニア等の多孔質マトリックス物質と複合化することができる。
ZSM-5および無機酸化物マトリックスの相対的な割合は、広範囲で変えることができ、該ZSM-5の含有率は、該複合体を基準として、約1〜約90質量%およびより一般的には、特に該複合体がビーズ形状で製造される場合には、約2〜約80質量%の範囲内にある。
【実施例】
【0021】
ここで本発明を、以下の実施例および添付図面を参照して、より詳しく説明する。
実施例1:N-ペンチルピロリジンのC4ジ-四級体(diquat)の調製
初めに、以下の手順に従い、ペンタナールのピロリジンによる還元的アミノ化により、N-ペンチルピロリジンを調製する。
500mLのテトラヒドロフラン(THF)を、窒素ガス流を備えた1Lの吸引フラスコに入れた。31.9gのペンタナール(0.37M)および次に24.9gのピロリジン(0.35M)を該THFに混合した。該窒素流を止め、次いで100gのナトリウムトリアセトキシボロハイドライド粉末を、該溶液に5〜10g刻みで添加した。この添加の際、激しい攪拌を利用して、確実に該フラスコの底において該粉末が凝集しないようにし、また該懸濁液の効果的な混合を保証した。該ナトリウムトリアセトキシボロハイドライド粉末の各添加後に、該粉末の次の添加に先立って均一なスラリーを形成するように、十分な時間を確保した。該粉末の全てを添加してしまったら、次いで該窒素流の流通を開始した。2日後、275gの24%水酸化カリウム(KOH)溶液を徐々に添加しつつ、該懸濁液を急冷することにより、生成物を仕上げた。次に、該生成物を、ペンタンを用いてこの溶液から抽出した。次に、その有機画分を分液ロートで集め、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。次いで、該アミン生成物を、減圧下で該THFおよびペンタン溶媒をロータリーエバポレータで処理することにより単離した。
【0022】
上記C4ジ-四級体を、N-ペンチルピロリジンと1,4-ジブロモブタンとの間の反応により形成した。20.0gのN-ペンチルピロリジン(0.14M)を、125mLのテフロン(登録商標)(Teflon)ライナー内の65mLのアセトニトリルに添加した。13.93gの1,4-ジブロモブタン(0.064M)を該混合物に添加した。次に、該ライナーに栓を施し、パール(Parr)スチールオートクレーブ内に封じ込め、また次に80℃にて4日間加熱した。次いで、固体沈殿を濾過により集め、またアセトンで洗浄した。このアセトンによる洗浄後に、追加の生成物が該濾液内に沈殿した。次いで、併合した固体をエーテルで洗浄し、また乾燥させた。清浄な生成物の全収量は18.8gであった。1Hおよび13C NMRは、この生成物が純粋であることを示した。次に、該ジブロミド塩を水に溶解し、これをダウエックス(Dowex) LC NGヒドロキシド型交換樹脂のカラムに通すことによりイオン交換処理して、ヒドロキシド型とした。該水性溶液の濃度は、0.1N塩酸(HCl)からなる標準溶液で滴定することにより決定した。
N-ペンチルピロリジンのC5およびC6ジ-四級体の塩は、同様な方法で、1,4-ジブロモブタンの代わりに、夫々1,5-ジブロモペンタンおよび1,6-ジブロモヘキサンを使用することにより調製した。
【0023】
実施例2:N-ペンチルピロリジンのC4ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
この合成は、上記N-ペンチルピロリジンのC4ジ-四級体のヒドロキシド-交換型(1,4-ジブロモブタンとN-ペンチルピロリジンとの反応により製造)を使用して実施した。55.1gの該ジ-四級体溶液([OH-]=1.02mM/g)を、49.1gの1N KOHおよび22.4gの脱イオン水と混合した。1.59gのヒュームドアルミナを添加し、この混合物を十分に混合して、均一な懸濁液を生成した。次いで、41.6gのルドックス(Ludox) AS-40コロイド状シリカを、該懸濁液と混合した。この混合物をテフロン(登録商標)ライナー内に配置し、またオーバーヘッド攪拌機を備えた、300mL容量のパールオートクレーブ内に封じ込めた。該オーバーヘッド攪拌機は150rpmに設定した。得られたゲルを160℃にて4時間の期間に渡り加熱した。3日後に、サンプルを該オートクレーブから取出し(オンライン)、粉末X-線回折(XRD)分析のために仕上げした。この生成物は、専ら、2θ4.5度近傍に高強度のピークを持つ層状の相であり、痕跡量の超微細ZSM-5を含んでいた。この時点において、温度は150℃まで下げられた。150℃にて更に22時間後に、該生成物は、少量の層状不純物を含む超微細なZSM-5であった。更に2時間後、該生成物は純粋なZSM-5であった。図2は3日目、完了の2時間前、および4日後の完了時点にとった、連続するサンプリング時点に係る粉末X-線パターンを比較したものである。
次いで、上記4日間の合成の生成物を濾過により回収し、少なくとも500mLの脱イオン水で洗浄し、アセトンで洗浄し、かつ60℃にて一夜、真空オーブン内で乾燥した。次いで、該ゼオライトをマッフル炉内で、窒素気流中で周囲温度乃至400℃の温度に、2時間の期間に渡り加熱し、この温度にて15分間維持し、該ガス流を空気に切換え、2時間の期間をかけて該温度を400℃から600℃に高め、温度600℃にて2時間維持し、次いで該炉を周囲条件まで冷却することにより焼成した。図3は、該製造したままのおよび焼成した生成物の粉末XRDパターンを比較したものである。
【0024】
上記4日間の合成に係る製造したままの生成物に関する走査型電子顕微鏡(SEM)像を図4に示す。また、これらの像は大部分の物質が結晶性であることを立証している。透過型電子顕微鏡(TEM)は、該結晶が、その端部において約20〜60nmの板状形態を持つ超微細の一次微結晶の形状にあることを示している。これら結晶の顕微鏡用の切片は、該粒子の厚みが100Å未満であることを示している。これら微結晶は凝集して、約1μmの平均サイズを持つ大きな二次粒子となっている。
上記4日間合成に係る焼成された生成物は、7.0gのゼオライトを、等質量の硝酸アンモニウム(7.0g)および10-倍質量の脱イオン水(70g)を含む溶液に添加することにより、イオン-交換処理してそのアンモニウム型とした。該スラリーをポリプロピレン製のビンに入れ、スチームボックス内で98℃にて一夜加熱した。次に、該ゼオライトを濾過し、少なくとも300mLの脱イオン水で洗浄した。該ゼオライトを、周囲温度乃至500℃にて2時間の期間に渡り焼成し、該温度にて4時間維持し、次いでこの炉を周囲条件近傍まで冷却することにより、該ゼオライトをその酸-型に転化した。t-プロット法による窒素の物理吸着データの解析は、該調製物が外部表面積124m2/g、および微細孔容積0.13cc/g(内部表面積318m2/g)を持つことを示した。
【0025】
実施例3:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
この合成は、N-ペンチルピロリジンの上記C5ジ-四級体のヒドロキシド-交換型(1,5-ジブロモブタンとN-ペンチルピロリジンとの反応により製造した)を用いて実施した。87.2gの該ジ-四級体の溶液([OH-]=0.58mM/g)を、44.03gの1N KOHと混合した。1.05gのヒュームドアルミナを添加し、得られる混合物を十分に混合して、均一な懸濁液を製造した。次いで、37.7gのルドックスAS-40コロイド状シリカを、該懸濁液に混合した。この混合物をテフロン(登録商標)ライナー内に配置し、オーバーヘッド攪拌機を備えた300mL容量のパールオートクレーブ内に封じ込めた。該オーバーヘッド攪拌機を150rpmに設定した。得られたゲルを160℃まで4時間の期間をかけて加熱した。24時間後、該オートクレーブからサンプルを取出し(オンライン)、また粉末XRD解析のために仕上げした。該生成物は純粋な(XRDによる)超微細ZSM-5であった。図5はこの生成物の粉末XRDを示す。
実施例4:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
5.21gの、実施例3で使用したジ-四級体溶液([OH-]=0.58mM/g)を、2.63gの1N KOHと混合した。0.063gのスペクトラル(SpectrAl)ヒュームドアルミナ(カボット(Cabot)社)を添加し、またこの混合物を十分に混合して、均一な懸濁液を製造した。次いで、2.25gのルドックスAS-40コロイド状シリカを、該懸濁液に混合した。この混合物をテフロン(登録商標)ライナー内に入れ、また23mL容量のパールオートクレーブ内に封じ込めた。該オートクレーブを、150℃にてロティッセリー(rotisserie)を備えたオーブン内に配置し、50rpmにて転動させた。得られたゲルを24時間加熱し、次いで取出し、サンプリングした。次に、該オートクレーブをオーブン内に戻し、更に6時間加熱した。該生成物は、全体として30時間に及ぶ加熱の後には、幾分かの残留するアモルファス物質を含む超微細ZSM-5であった。図6は、これら生成物の粉末XRDを示す。
【0026】
実施例5:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
実施例3を繰返した。但し、合成温度を130℃に維持した。24時間後に、該反応からサンプリングした。その生成物は、XRDによればアモルファスであった。2日後に、該生成物は依然として殆どアモルファスであったが、幾分かのZSM-5が出現した。次いで、全体として6日間の加熱後に、該反応から再度サンプリングした。その生成物のXRDは、これが純粋な超微細ZSM-5であることを示した。図7は、加熱の1、2および6日後に採取されたサンプルに関する粉末XRDを示す。
実施例6:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
実施例3の方法の更なる4つの反復実験を行った。その第一実験においては、結晶化を160℃にて66時間実施し、一方第二および第三実験においては、結晶化を夫々150℃にて30時間および130℃にて5日間実施した。該第四実験においては、該シリカを添加する前に、上記混合物を160℃にて約45分間加熱することにより、ヒュームドアルミナを上記KOH/ジ-四級体溶液中に予め溶解した。次いで、結晶化を130℃にて7日間加熱し、引続き150℃にて6日間加熱することにより行った。結果を図8に示す。これらの結果は、結晶化温度の低減が、該結晶の粉末XRDパターンにおけるピークのブロード化から推量される如く、著しく減じられた結晶サイズを持つ生成物の生成を結果することを明らかにしている。
【0027】
上記第四実験の生成物を、実施例1のように焼成し、また窒素物理吸着測定に供した。上記t-プロット法による該データの解析は、該生成物が内部表面積247m2/g(微小孔容積0.107cc/g)および外部表面積370m2/gを持つことを示した。該第四実験の生成物に係る27Al MAS NMRスペクトルを図9に与える。この図は、該焼成された生成物が、>95%の四面体アルミニウムを含むことを示す。対照的に、上記ヒュームドシリカを予備加熱することのない合成(実施例4を参照のこと)により得た生成物は、僅かに約10%の四面体アルミニウムを含む。
上記第四実験の生成物に係るSEM像を図10に示す。図11(a)および(b)におけるTEM像は、上記結晶の多くが伸長されており、その長さは一般には30nm未満でありまたその幅は10nm未満である。他のTEM像(図11(c))は、図11(a)および(b)における結晶よりも短い長さ(10〜20nm)を持つ、より等方的形状の結晶を示している。平均およびメジアン結晶長さは、夫々15および14nmであり、また該結晶の平均およびメジアン幅は、夫々8.2および8.0nmであった。
図11(d)は、第四実験の生成物に係るサンプルのミクロトーム処理された検体のTEM像を示す。該ミクロトーム処理された結晶の像は、該結晶の厚みを明らかにし、該結晶の寸法は、ここでは殆どの場合5〜7nmである。その平均およびメジアン厚は、夫々6.4および6.0nmであった。図12の棒グラフは、結晶学的エッジ各々に関する結晶寸法の分布を示す。
【0028】
実施例7:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
5.21gの上記N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体のヒドロキシド溶液([OH]=0.58mM/g)と、2.63gの1N KOHとを、23-mLのスチール製パールオートクレーブ用テフロン(登録商標)ライナー内で混合することにより溶液を調製した。0.063gのスペクトラルヒュームドアルミナ(カボット)を該溶液に混合して、均一な懸濁液を製造した。次いで、該ライナーに栓を施し、該23-mLのオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で約45分間、転動条件(約50rpm)の下で160℃にて加熱して該アルミナの大部分を溶解させた。次に、該反応器を冷却し、また次いで2.25gのルドックスAS-40を該懸濁液に混合した。該ライナーに栓を施し、該23-mLのオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で8日間に渡り、転動条件(約50rpm)の下で160℃にて加熱した。次に、得られた固体をブフナー漏斗を通して濾過し、脱イオン水で洗浄し、また100℃にてオーブン内で乾燥することにより単離した。図13(a)は、この生成物の粉末XRDを示す。
実施例8:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
実施例7の方法を繰返した。但し、上記製造由来の種結晶0.04gを添加し、また得られたゲルを8日間の代わりに全体で6日間に渡り加熱した。図13(b)に示すその粉末XRDは、痕跡レベルのMCM-68を含む超微細ZSM-5である生成物と一致している。
【0029】
実施例9:N-ペンチルピロリジンのC6ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
3.51gの、上記N-ペンチルピロリジンのC6ジ-四級体のヒドロキシド溶液([OH]=0.86mM/g)と2.63gの1N KOHとを、23-mLのスチール製パールオートクレーブ用テフロン(登録商標)ライナー内で混合することにより溶液を調製した。0.063gのスペクトラルヒュームドアルミナ(カボット)を該溶液に混合して、均一な懸濁液を製造した。次いで、該ライナーに栓を施し、該23-mLのオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で約45分間、転動条件(約50rpm)の下で160℃にて加熱して該アルミナの大部分を溶解させた。次に、該反応器を冷却し、また次いで2.25gのルドックスAS-40を該懸濁液に混合した。該ライナーに栓を施し、該23-mLのオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で9日間に渡り、転動条件(約50rpm)の下で125℃にて加熱した。次いで、得られた固体を、ブフナー漏斗を通して濾過し、脱イオン水で洗浄し、また100℃にてオーブン内で乾燥することによって単離した。図13(c)は、この生成物の粉末XRDを示す。
上記ゼオライトを、窒素雰囲気の下で4℃/分にて周囲温度から400℃までマッフル炉内で加熱し、次いで空気中で4℃/分にて600℃まで加熱し、また空気中で600℃にて2時間維持した。該サンプルを周囲温度まで冷却した後、該ゼオライトを10-倍の質量の水に添加し、また等質量の硝酸アンモニウムを添加することにより、該サンプルをアンモニウム-交換処理した。該アンモニウム-交換体処理を、98〜99℃の温度にてスチームボックス内で一夜に渡り実施した。次いで、該ゼオライトを濾別し、また脱イオン水で徹底的に洗浄して、過剰量の塩を除去した。次に、該ゼオライトを500℃まで焼成して、該ゼオライトの完全な酸型を得た。窒素の物理吸着のためのt-プロット法による解析は、該サンプルが222m2/gの外部表面積および0.14cc/gの微小孔容積(内部表面積:326m2/g)を持つことを示す。
【0030】
実施例10:N-ペンチルピロリジンのC6ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
3.51gの、上記N-ペンチルピロリジンのC6ジ-四級体のヒドロキシド溶液([OH]=0.86mM/g)と0.15gの50%KOHとを、23-mLのスチール製パールオートクレーブ用テフロン(登録商標)ライナー内で混合することにより溶液を調製した。0.063gのスペクトラルヒュームドアルミナ(カボット)を該溶液に混合して、均一な懸濁液を製造した。次いで、該ライナーに栓を施し、該23-mLオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で約45分間、転動条件(約50rpm)の下で160℃にて加熱して、該アルミナの大部分を溶解させた。次に、該反応器を冷却し、また次いで2.25gのルドックスAS-40を該懸濁液に混合した。実施例7からの種結晶0.04gを添加した。次に、該ライナーに栓を施し、該23-mLのオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で14日間に渡り、転動条件(約50rpm)の下で125℃にて加熱し、次いで140℃にて更に4日間加熱した。次に、得られた固体を、ブフナー漏斗を通して濾過し、脱イオン水で洗浄し、また100℃にてオーブン内で乾燥することにより単離した。この生成物の粉末XRDを図13(d)に示す。
実施例11:N-ペンチルピロリジンのC6ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
3.51gの、上記N-ペンチルピロリジンのC6ジ-四級体のヒドロキシド溶液([OH]=0.86mM/g)と2.63gの1N KOHとを、23-mLのスチール製パールオートクレーブ用テフロン(登録商標)ライナー内で混合することにより溶液を調製した。0.097gのアルコア(Alcoa)-C31アルミナ三水和物を該溶液に混合して、均一な懸濁液を製造した。次いで、該ライナーに栓を施し、該23-mLオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で約45分間、転動条件(約50rpm)の下で160℃にて加熱して、該アルミナを溶解させた。次に、該反応器を冷却し、また次いで2.25gのルドックスAS-40を該懸濁液に混合した。次いで、該ライナーに栓を施し、該23-mLのオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で7日間に渡り、転動条件(約50rpm)の下で140℃にて加熱した。次に、得られた固体を、ブフナー漏斗を通して濾過し、脱イオン水で洗浄し、また100℃にてオーブン内で乾燥することにより単離した。この生成物の粉末XRDを図13(e)に示す。
【0031】
実施例12:N-ペンチルピロリジンのC6ジ-四級体を用いたボロシリケートZSM-5の合成
3.51gの、上記N-ペンチルピロリジンのC6ジ-四級体のヒドロキシド溶液([OH]=0.86mM/g)と2.63gの1N KOHとを、23-mLのスチール製パールオートクレーブ用テフロン(登録商標)ライナー内で混合することにより溶液を調製した。次に、0.046gのホウ酸を、該ヒドロキシド溶液中に溶解させた。次いで、2.25gのルドックスAS-40を添加し、混合して、均一な懸濁液を製造した。次いで、該ライナーに栓を施し、該23-mLのオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で9日間に渡り、静的条件の下で100℃にて加熱した。次に、得られた固体を、ブフナー漏斗を通して濾過し、脱イオン水で洗浄し、また100℃にてオーブン内で乾燥することにより回収した。この生成物の粉末XRDを図14(a)に示す。
実施例13:N-ペンチルピロリジンのC6ジ-四級体を用いたボロシリケートZSM-5の合成
実施例12の方法を、転動条件(50rpm)の下で6日間に渡り125℃にて繰り返した。図14(b)は、この生成物の粉末XRDを示す。
実施例14:N-ペンチルピロリジンのC6ジ-四級体を用いた全シリカ(All Silica)ZSM-5の合成
3.51gの、上記N-ペンチルピロリジンのC6ジ-四級体のヒドロキシド溶液([OH]=0.86mM/g)と2.63gの1N KOHとを、23-mLのスチール製パールオートクレーブ用テフロン(登録商標)ライナー内で混合することにより溶液を調製した。次いで、2.25gのルドックスAS-40をこの懸濁液に混合した。次いで、該ライナーに栓を施し、該23-mLのオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で4日間に渡り、静的条件の下で100℃にて加熱した。次に、得られた固体を遠心分離処理に掛け、3回洗浄し、また100℃にてオーブン内で乾燥することにより単離した。この生成物の粉末XRDを図14(c)に示す。
【0032】
実施例15:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いた全シリカZSM-5の合成
4.92gの、上記N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体のヒドロキシド溶液([OH]=0.61mM/g)と2.63gの1N KOHとを、23-mLのスチール製パールオートクレーブ用テフロン(登録商標)ライナー内で混合することにより溶液を調製した。次いで、2.25gのルドックスAS-40をこの懸濁液に混合した。次に、該ライナーに栓を施し、該23-mLのオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で5日間に渡り、静的条件の下で100℃にて加熱した。次いで、得られた固体を遠心分離処理に掛け、3回洗浄し、また100℃にてオーブン内で乾燥することにより単離した。この生成物の粉末XRDを図14(d)に示す。
実施例16:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたBZSM-5の合成
4.92gの、上記N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体のヒドロキシド溶液([OH]=0.61mM/g)と2.63gの1N KOHとを、23-mLのスチール製パールオートクレーブ用テフロン(登録商標)ライナー内で混合することにより溶液を調製した。次いで、0.046gのホウ酸を、該ヒドロキシド溶液中に溶解させた。次に、2.25gのルドックスAS-40をこの懸濁液に混合した。次いで、該ライナーに栓を施し、該23-mLのオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で13日間に渡り、転動条件(50rpm)の下で125℃にて加熱した。次に、得られた固体を、ブフナー漏斗を通して濾過し、脱イオン水で洗浄し、また100℃にてオーブン内で乾燥することによって単離した。この生成物の粉末XRDを図14(e)に示す。
【0033】
実施例17:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたBZSM-5の合成
実施例16の方法を繰返したが、得られた反応混合物は、140℃にて11日間加熱した。図14(f)はこの生成物の粉末XRDパターンを示す。
実施例18:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
4.93gの、上記N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体のヒドロキシド溶液([OH]=0.61mM/g)と2.63gの1N KOHとを、23-mLのスチール製パールオートクレーブ用テフロン(登録商標)ライナー内で混合することにより溶液を調製した。0.063gのスペクトラルヒュームドアルミナ(カボット)を該溶液に混合して、均一な懸濁液を製造した。次に、該ライナーに栓を施し、該23-mLオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で約45分間、転動条件(約50rpm)の下で160℃にて加熱して、該アルミナの大部分を溶解させた。次に、該反応器を冷却し、また次いで2.25gのルドックスAS-40を該懸濁液に混合した。次いで、実施例7からの種結晶0.04gを添加した。次いで、該ライナーに栓を施し、該23-mLのオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で3日間に渡り、転動条件(約50rpm)の下で175℃にて加熱した。次いで、得られた固体を、ブフナー漏斗を通して濾過し、脱イオン水で洗浄し、また100℃にてオーブン内で乾燥することにより単離した。粉末XRDは、この生成物がZSM-5とMCM-68との混合物であることを示した。
【0034】
実施例19:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
実施例18の方法を繰返した。但し、僅かに0.032gのヒュームドアルミナを添加し、また得られた反応混合物を、熱対流炉内で9日間に渡り、転動条件(約50rpm)の下で160℃にて加熱した。図15(a)は、この生成物の粉末XRDを示す。
実施例20:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
3.95gの、上記N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体のヒドロキシド溶液([OH]=0.76mM/g)と、2.63gの1N KOHおよび0.88gの脱イオン水とを、23-mLのスチール製パールオートクレーブ用テフロン(登録商標)ライナー内で混合することにより溶液を調製した。0.015gのスペクトラルヒュームドアルミナ(カボット)を該溶液に混合して、均一な懸濁液を製造した。次いで、該ライナーに栓を施し、該23-mLオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で約45分間、転動条件(約50rpm)の下で160℃にて加熱して、該アルミナの大部分を溶解させた。次に、該反応器を冷却し、また次いで2.12gのルドックスAS-40を該懸濁液に混合した。次いで、該ライナーに栓を施し、該23-mLオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で11日間、転動条件(約50rpm)の下で110℃にて加熱した。次に、得られた固体を、ブフナー漏斗を通して濾過し、脱イオン水で洗浄し、また100℃にてオーブン内で乾燥することにより単離した。図15(b)における粉末XRDパターンは、純粋で超微細なZSM-5である生成物と一致している。
【0035】
実施例21:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
35.96gの、上記N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体のヒドロキシド溶液([OH]=0.76mM/g)と、23.91gの1N KOHおよび11.4gの脱イオン水とを、125-mLのスチール製パールオートクレーブ用テフロン(登録商標)ライナー内で混合することにより溶液を調製した。0.57gのスペクトラルヒュームドアルミナ(カボット)を該溶液に混合して、均一な懸濁液を製造した。次いで、該ライナーに栓を施し、該125-mLオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で約45分、転動条件(約50rpm)の下で160℃にて加熱して、該アルミナの大部分を溶解させた。次に、該反応器を冷却し、また次いで20.45gのルドックスAS-40を該懸濁液に混合した。次に、該ライナーに栓を施し、該125-mLオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で7日間、転動条件(約50rpm)の下で150℃にて加熱した。次に、得られた固体を、ブフナー漏斗を通して濾過し、脱イオン水(約1L)で徹底的に洗浄し、また100℃にてオーブン内で乾燥することにより単離した。図15(c)における粉末XRDパターンは、超微細なZSM-5である生成物と一致している。
【0036】
実施例22:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
3.95gの、上記N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体のヒドロキシド溶液([OH]=0.76mM/g)と、2.63gの1N KOHおよび0.90gの脱イオン水とを、23-mLのスチール製パールオートクレーブ用テフロン(登録商標)ライナー内で混合することにより溶液を調製した。2.08gのルドックスAS-40および0.13gのメタカオリン(ヌシーン(Nusheen))を該溶液と混合した。次いで、該ライナーに栓を施し、該23-mLオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で3日間、転動条件(約50rpm)の下で140℃にて加熱した。次に、得られた固体を、ブフナー漏斗を通して濾過し、脱イオン水で洗浄し、また100℃にてオーブン内で乾燥することにより単離した。図15(d)における粉末XRDパターンは、上記メタカオリン反応体由来のアナターゼ不純物(2θ約25.2度にピークを持つ)を痕跡レベルで含むZSM-5である生成物と一致している。該生成物のSEM像を図16に示す。該生成物は、大きさ1μm未満の回転楕円体型多結晶質凝集体で構成されている。個々のこれら微結晶の大きさは、該SEM像の解像度内で解像することは不可能である。該最低倍率の像において、少数のフレークが観測でき、これらは幾分かの未反応のメタカオリンによるものである。未反応のメタカオリンの存在は、27A1 MAS NMR(図17)によって立証され、該図は該製造したままの生成物のアルミニウムの約27%が非-四面体であることを示している。
【0037】
実施例23:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
実施例22の方法を繰返した。但し、僅かに0.065gのメタカオリンを使用し、またこの反応は130℃にて3日間行った。図15(e)における得られた生成物の粉末XRDは、実施例22由来の生成物に係るものよりも幾分より鮮明である。図18は該生成物のSEM像を示す。該生成物の27A1 MAS NMR(図19)は、該メタカオリン反応体由来のアルミニウムの76%が、四面体型アルミニウムとして該生成物に組込まれていることを示す。
実施例24:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
実施例22の方法を再び繰返した。但し、僅かに0.033gのメタカオリンを使用し、またこの反応は130℃にて3日間行った。得られた生成物の粉末XRDのピーク(図20(a))は、実施例22由来の生成物に係るものよりも幾分より鮮明である。該生成物のSEM像を図21に示す。
実施例25:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
実施例22の方法を再び繰返した。但し、この反応は130℃にて4日間行った。得られた生成物の粉末XRDを図20(b)に示す。
実施例26:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
実施例23の方法を繰返した。但し、この反応は120℃にて3日間行った。得られた生成物の粉末XRD(図20(c))は、実施例23の生成物に関するものよりも、よりブロードである。
【0038】
実施例27:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
実施例24の方法を繰返した。但し、この反応は120℃にて3日間行った。得られた生成物の粉末XRD(図20(d))は、実施例24の生成物に関するものよりもよりブロードである。該生成物を実施例9に記載の如く焼成した。図20(e)は、この焼成された物質の粉末XRDパターンを示す。
実施例28:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
実施例23の方法を繰返した。但し、この反応は110℃にて6日間行った。図22(a)は得られた生成物の粉末XRDパターンを示す。
実施例29:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
実施例24の方法を繰返した。但し、この反応は110℃にて6日間行った。図22(b)は得られた生成物の粉末XRDを示す。
【0039】
実施例30:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
3.95gの、上記N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体のヒドロキシド溶液([OH]=0.76mM/g)と、2.63gの1N KOHおよび0.90gの脱イオン水とを、23-mLのスチール製パールオートクレーブ用テフロン(登録商標)ライナー内で混合することにより溶液を調製した。0.022gのスペクトラルヒュームドアルミナ(カボット)を該溶液に混合して、均一な懸濁液を製造した。次いで、該ライナーに栓を施し、該23-mLオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で約30分間、転動条件(約50rpm)の下で160℃にて加熱して、該アルミナの大部分を溶解させた。次に、該反応器を冷却し、また次いで2.05gのルドックスAS-40および0.092gのメタカオリンを該懸濁液に混合した。次いで、該ライナーに栓を施し、該23-mLオートクレーブ内に封じ込め、また熱対流炉内で22日間、転動条件(約50rpm)の下で130℃にて加熱した。次に、得られた固体を、ブフナー漏斗を通して濾過し、脱イオン水で洗浄し、また100℃にてオーブン内で乾燥することにより単離した。粉末XRDは、この生成物が超微細結晶のZSM-5であることを示した。
実施例31:N-ペンチルピロリジンのC5ジ-四級体を用いたZSM-5の合成
実施例30の方法を繰返した。但し、僅かに0.015gのヒュームドアルミナおよび0.097gのメタカオリンを使用し、またこの反応は15日間行った。図22(c)は、粉末XRDパターンを示す。2θ10〜15度のブロードな小丘は、粉末XRD測定のために使用したプラスチック製のサンプルホルダによる。
【0040】
本発明を特定の態様を参照して記載し、また説明してきたが、当業者は、本発明が必ずしも本明細書に説明されていない様々な変法に対して適していることを理解するであろう。即ち、この理由のために、本発明の真の範囲を決定するためには、添付した特許請求の範囲のみを参照すべきである。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕X-線回折パターンを有する結晶性モレキュラーシーブであって、該モレキュラーシーブが少なくとも以下の特徴:
(i) 2θ8.90(±0.30)度で最大値を有する第一のピーク、該ピークはバックグラウンドを超える強度ImaxAを有し、および2θ7.96(±0.30)度で最大値を有する第二のピークと交差して、バックグラウンドを超える強度IminAを有し、IminA/ImaxAの比が>0.33となるような極小値を形成しており;ならびに
(ii) 2θ24.0(±0.30)度で最大値を有する第三のピーク
を有する結晶性モレキュラーシーブ。
〔2〕前記第三のピークが、バックグラウンドを超える強度ImaxBを有し、および2θ23.2(±0.20)度で最大値を有する第四のピークと交差しており、該第三および第四ピークの交差が、バックグラウンドを超える強度IminBを有し、IminB/ImaxBの比が>0.90となるような極小値を形成する、前記〔1〕に記載のモレキュラーシーブ。
〔3〕100m2/gを超える外部表面積(窒素の物理吸着のためのt-プロット法により決定される)を有する結晶を含む、前記〔1〕または前記〔2〕に記載のモレキュラーシーブ。
〔4〕前記第三のピークがバックグラウンドを超える強度ImaxBを有し、および2θ23.2(±0.20)度で最大値を有する第四のピークと交差して、該第三および第四ピークの交差点で変曲点を示す複合ピークを形成する、前記〔1〕に記載のモレキュラーシーブ。
〔5〕IminA/ImaxAの比が少なくとも0.40である、前記〔1〕〜〔4〕の何れかに記載のモレキュラーシーブ。
〔6〕モレキュラーシーブがZSM-5の骨組構造を有する、前記〔1〕〜〔5〕の何れかに記載のモレキュラーシーブ。
〔7〕ZSM-5の骨組構造を有するモレキュラーシーブであって、該モレキュラーシーブが、窒素の物理吸着のためのt-プロット法により決定された100m2/gを超える外部表面積および2θ24.0(±0.30)度で最大値を有する複合ピークを有するX-線回折パターンを有する結晶を含み、該複合ピークはバックグラウンドを超える強度ImaxBを有し、および2θ23.2(±0.20)度で最大値を有する複合ピークと交差して、バックグラウンドを超える強度IminBを有し、IminB/ImaxBの比が>0.90となるような極小値を形成するモレキュラーシーブ。
〔8〕前記モレキュラーシーブが、200m2/gを超える外部表面積(窒素の物理吸着のためのt-プロット法により決定される)を有する結晶を含む、前記〔1〕〜〔7〕の何れかに記載のモレキュラーシーブ。
〔9〕ZSM-5の骨組構造を有するモレキュラーシーブであって、該モレキュラーシーブが、200m2/gを超える外部表面積(窒素の物理吸着のためのt-プロット法により決定される)、および2θ21.5〜26度の範囲内に単一の拡散した複合的特徴を有するX-線回折パターンを有する結晶を含むモレキュラーシーブ。
〔10〕前記モレキュラーシーブが、250m2/gを超える外部表面積(窒素の物理吸着のためのt-プロット法により決定される)を有する結晶を含む、前記〔1〕〜〔9〕の何れかに記載のモレキュラーシーブ。
〔11〕前記モレキュラーシーブが、その内部表面積を超える外部表面積(窒素の物理吸着のためのt-プロット法により決定される)を有する結晶を含む、前記〔1〕〜〔10〕の何れかに記載のモレキュラーシーブ。
〔12〕前記モレキュラーシーブが、550m2/gを超える全表面積(窒素の物理吸着のためのt-プロット法により決定される)を有する結晶を含む、前記〔1〕〜〔11〕の何れかに記載のモレキュラーシーブ。
〔13〕前記モレキュラーシーブが、モル関係:
X2O3:(n)YO2
(ここで、nは少なくとも約20であり、Xは三価の元素であり、およびYは四価の元素である)
を含む組成を有する、前記〔1〕〜〔12〕の何れかに記載のモレキュラーシーブ。
〔14〕Xがアルミニウムを含み、かつYがケイ素および/またはゲルマニウムを含む、前記〔11〕に記載のモレキュラーシーブ。
〔15〕有機化合物を含む供給原料を転化生成物に転化する方法であって、該方法が、有機化合物転化条件で、該供給原料を、活性形態の前記〔1〕〜〔14〕の何れかに記載のモレキュラーシーブ材料を含む触媒と接触させて、該転化生成物を形成する工程を含む方法。
図1(a)】
図1(b)】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11(a)】
図11(b)】
図11(c)】
図11(d)】
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22