特許第6238394号(P6238394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238394
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】セラミド産生促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/63 20060101AFI20171120BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20171120BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   A61K8/63
   A61Q5/12
   A61Q19/00
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-120802(P2013-120802)
(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2014-237611(P2014-237611A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100141771
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 宏和
(72)【発明者】
【氏名】菅井 由也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 宙
(72)【発明者】
【氏名】下豊留 芳枝
(72)【発明者】
【氏名】石川 准子
【審査官】 中村 俊之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−010945(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102531881(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102329225(CN,A)
【文献】 特開2010−030934(JP,A)
【文献】 特開2002−047120(JP,A)
【文献】 特開2009−107965(JP,A)
【文献】 特開2006−151831(JP,A)
【文献】 特開平08−175963(JP,A)
【文献】 特開2007−210962(JP,A)
【文献】 特開2003−113013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロブル酸又はその塩を有効成分とする、セラミド産生促進剤。
【請求項2】
ロブル酸又はその塩を有効成分とする、保湿剤。
【請求項3】
ロブル酸又はその塩を有効成分とする、皮膚のバリア能増強又は改善剤。
【請求項4】
ロブル酸又はその塩を有効成分とする、毛髪のハリ若しくはコシの付与剤、又は毛髪の感触改善剤。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミド産生促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
スフィンゴ脂質の一つであるセラミドは、生体全体の中では微量しか存在しない。しかし、皮膚の最も外側の層である角層中では、脂質成分の半分以上を占め、皮膚の保湿機構、バリア機構に重要な役割を果たしている。セラミドは、表皮細胞中において産生・分泌された後に角層中の細胞間においてラメラ構造を構築する。乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、乾癬等の皮膚疾患においては、セラミドの健全な代謝が妨げられ、角層中のセラミド量が減少し、皮膚の保湿能やバリア能の低下等を引き起こしていることが数多く報告されている。
【0003】
表皮細胞におけるセラミド産生を亢進し角層中のセラミド量を増加させることで、皮膚の保湿能やバリア能を高めることができる。これにより、角層中のセラミド量低下に伴う皮膚疾患、例えば、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、乾癬等、の予防・改善等に有用であると考えられる。これまでに、ユーカリ(Eucalyptus)抽出物やセンレンシ(Melia toosendan)抽出物が表皮細胞のセラミド産生を亢進して角層中のセラミド量を増加させ、皮膚の保湿能・バリア能を高めることが知られている(特許文献1、非特許文献1参照)。さらに、セラミドには、毛髪のハリ、コシの付与及び感触改善作用があることも報告され(例えば、特許文献2参照)、セラミド産生促進物質には、斯かる効果も期待できる。
これまでに、減少したセラミドを外部から補給することもが試みられているが、現在のところ必ずしもその効果は十分なものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−79754号公報
【特許文献2】特開平10−152421号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】International Journal of Cosmetic Science,2012,vol.34,p.17-22
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、セラミド産生促進効果を有する、セラミド産生促進剤の提供を課題とする。
また、本発明は、皮膚の保湿能を増強又は改善する、保湿剤の提供を課題とする。
また、本発明は、皮膚のバリア能を増強又は改善する、皮膚のバリア能増強又は改善剤の提供を課題とする。
さらに、本発明は、毛髪のハリ又はコシの付与や感触を改善する毛髪のハリ若しくはコシの付与剤又は毛髪の感触改善剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題に鑑み、鋭意検討を行った。その結果、ロブル酸がセラミド産生促進作用を有することを見出した。本発明はこの知見に基づき完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、ロブル酸又はその塩を有効成分とする、セラミド産生促進剤に関する。
また、本発明は、ロブル酸又はその塩を有効成分とする、保湿剤に関する。
また、本発明は、ロブル酸又はその塩を有効成分とする、皮膚のバリア能増強又は改善剤に関する。
さらに、本発明は、ロブル酸又はその塩を有効成分とする、毛髪のハリ若しくはコシの付与剤、又は毛髪の感触改善剤に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、セラミド産生促進効果を有する、セラミド産生促進剤を提供することができる。
また、本発明によれば、皮膚の保湿能を増強又は改善する、保湿剤を提供することができる。
また、本発明によれば、皮膚のバリア能を増強又は改善する、皮膚のバリア能増強又は改善剤を提供することができる。
さらに、本発明によれば、毛髪のハリ、コシの付与又は感触を改善する、毛髪のハリ若しくはコシの付与剤又は毛髪の感触改善剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のセラミド産生促進剤、保湿剤、皮膚のバリア能増強又は改善剤、毛髪のハリ若しくはコシの付与剤、及び毛髪の感触改善剤は、ロブル酸を有効成分として含有する。後述の実施例で実証するように、ロブル酸は優れたセラミド産生促進効果を奏する。
【0011】
本発明で用いるロブル酸は下記式(1)で表される化合物である。
【0012】
【化1】
【0013】
本発明のセラミド産生促進剤、保湿剤、皮膚のバリア能増強又は改善剤、毛髪のハリ若しくはコシの付与剤、及び毛髪の感触改善剤には、ロブル酸を塩の形態で有効成分として含有させてもよい。このような塩としては特に限定されず、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、アルミニウム、亜鉛等の両性金属塩、アミノ酸塩、アミン塩等が挙げられる。これらのうち、ナトリウム塩、カリウム塩及びカルシウム塩が好ましい。
【0014】
ロブル酸は、通常の方法により化学合成してもよいし、特定の植物の抽出物から調製してもよい。あるいは、市販のロブル酸を用いてもよい。
【0015】
ロブル酸を調製することができる植物として、ジンギョウ(Gentiana macrophylla Pall.)が挙げられる。例えば、ジンギョウの任意の部位(好ましくは根)を原料として通常の方法により抽出、分画を行い、得られた画分のセラミド産生促進活性を指標に比活性の高い画分を得ていくことで、ロブル酸を得ることができる。
【0016】
後述の実施例に示すように、ロブル酸はセラミド産生促進作用を有する。前述のように、セラミドは皮膚の保湿機構やバリア機構において重要な役割を担っている。そのため、セラミド産生の促進は、生体の有するセラミド産生機構を増強又は健常化し、角層中のセラミドを増加させ、バリア機能及び保湿機能を増強したり、高いバリア機能及び保湿機能を有する皮膚を取り戻すことにつながる。また、前述のとおりセラミドは、毛髪にハリ、コシを付与したり毛髪の感触を改善する作用がある。すなわち、ロブル酸はセラミド産生を促進させるため、ひいては皮膚の保湿機能やバリア機能を増強又は改善するため、或いは毛髪にハリ、コシを付与したり毛髪の感触を改善するために使用することができる。
上記使用は、治療的使用(即ち医療行為)であっても非治療的使用(非医療的な行為)であってもよい。また、上記使用の対象は、ヒト、非ヒト動物、又はそれらに由来する検体であり得る。なお、前記「非治療的」とは、医療行為、すなわち治療による人体への処理行為を含まない概念である。
【0017】
ロブル酸又はその塩を有効成分とするセラミド産生促進剤、保湿剤、皮膚のバリア能増強又は改善剤、毛髪のハリ若しくはコシの付与剤、及び毛髪の感触改善剤は上記使用の具体的態様の1つであり、治療的用途(医療用途)、非治療用途(非医療用途)のいずれにも適用することができる。その使用形態も、ヒトや動物の皮膚、爪、粘膜、毛髪等に適用されうるすべての形態が含まれる。具体的には、医薬品、医薬部外品、化粧料等としての使用が挙げられ、投与形態などにより使用することができる。また、これらの剤は、各種の飲食品やペットフード等に有効成分として配合することもできる。
【0018】
本発明において、前記有効成分をセラミド産生促進剤、保湿剤、皮膚のバリア能増強又は改善剤、毛髪のハリ若しくはコシの付与剤、及び毛髪の感触改善剤としても用いてもよい。あるいは、本発明のセラミド産生促進剤、保湿剤及び皮膚のバリア能増強又は改善剤に、効果に影響を与えない範囲で有効成分以外の他の成分を含有させてもよい。
有効成分以外の他の成分は、剤の形態や用途等に応じて適宜選択できる。例えば、剤として成形しやすいよう、酸化チタン、炭酸カルシウム、蒸留水、乳糖、デンプン等の適当な液体または固体の賦形剤または増量剤を加えてもよい。また、他の保湿剤、皮膚老化防止剤、美白剤などの有効成分、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、色材種等を加えてもよい。
【0019】
他の保湿剤の有効成分としては、例えば、既知のセラミド産生促進剤、擬似セラミド、天然セラミド、糖セラミド等の保湿剤が挙げられる。
既知のセラミド産生促進剤としては、例えば、アセチルヒドロキシプロリン、グリチルリチン酸ジカリウム、L-カルニチン、アスコルビン酸、アスコルビルグルコシド、アスコルビルリン酸マグネシウム、dl-α-トコフェリル-dl-アスコルビルリン酸、dl-α-トコフェリルリン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸トコフェロール、L-乳酸、ビタミンC、アスパラガス抽出物、ブッチャーブルーム、ゲンクワニン、ローズマリー、ラベンダー、セージ、ナツメ、黒(赤)霊芝、トウキ、クジン、ヨクイニン、ベニュセアンヌ抽出物、ライスパワーエキスなどが挙げられる。
擬似セラミドとしては、例えば、市販のセラミドR(ユニリーバ製)、セラミドPC-104(太平洋化学製)、セラミドHO3(sederma製)、エルデュウPS-203(味の素製)、スフィンゴリピッドE(花王製)などが挙げられる。
糖セラミドとしては、例えば、グルコシルセラミド、ガラクトシルセラミド等が挙げられ、市販のものとしては、ニップンセラミド(日本製粉製)、オリザセラミド(オリザ油化製)、ニッサンN-セラミド、ネオリキッドセラミドN(日本油脂製)、こんにゃくセラミド(ユニチカ製)等が挙げられる。
【0020】
セラミド産生促進剤、保湿剤、皮膚のバリア能増強又は改善剤、毛髪のハリ若しくはコシの付与剤、及び毛髪の感触改善剤に他の成分を配合する場合、有効成分の含有量は特に制限されないが、有効成分が固形分濃度(固形分換算)で0.00001質量%以上含まれることが好ましく、0.0001質量%以上含まれることがより好ましい。また、有効成分が固形分濃度で20質量%以下含まれることが好ましく、10質量%以下含まれることがより好ましい。さらに、有効成分が固形分濃度で0.00001質量%以上20質量%以下含まれることが好ましく、0.0001質量%以上10質量%以下含まれることがより好ましい。
【0021】
本発明のセラミド産生促進剤、保湿剤、皮膚のバリア能増強又は改善剤、毛髪のハリ若しくはコシの付与剤、及び毛髪の感触改善剤を医薬品としてヒトや動物に投与する形態で使用する場合、例えば、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の経口用固形製剤、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤、注射剤、外用剤、坐剤、経皮吸収剤等の非経口用製剤などの形態とすることができる。
これらの製剤を調製するに際しては、賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、担体、希釈剤等を適宜配合することができる。
【0022】
本発明のセラミド産生促進剤、保湿剤、皮膚のバリア能増強又は改善剤、毛髪のハリ若しくはコシの付与剤、及び毛髪の感触改善剤を飲食品、ペットフード等に有効成分として配合する場合、一般飲食品の他、皮膚の保湿能又はバリア機能の増強又は改善効果をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した健康飲食品、美容飲食品、特定保健用飲食品、病者用飲食品等等の機能性飲食品に添加、配合することができる。
飲食品等の種類に特に制限はなく、例えば、果汁飲料、乳飲料、茶系飲料等の飲料類、キャンディ、ドロップ、ゼリー、クッキー、チョコレート、ケーキ、ヨーグルト、ガム等の菓子類、調味料、調理油、乳製品、パン類、麺類、加工米等が挙げられる。また、錠剤(タブレット)、カプセル、顆粒、シロップ等の美容食品、健康食品等としてもよい。
【0023】
本発明のセラミド産生促進剤、保湿剤、皮膚のバリア能増強又は改善剤、毛髪のハリ若しくはコシの付与剤、及び毛髪の感触改善剤の成人1人当たりの1日の使用量は、剤中の有効成分の含有量、適用対象者の状態、体重、性別、年齢等の条件により異なるが、通常、前記有効成分を乾燥固形分換算で、0.001mg以上使用することが好ましく、0.01mg以上使用することがより好ましい。また、前記有効成分を乾燥固形分換算で、1000mg以下使用することが好ましく、100mg以下使用することがより好ましい。さらに、前記有効成分を乾燥固形分換算で、0.001mg以上1000mg以下使用することが好ましく、0.01mg以上100mg以下使用することがより好ましい。
【0024】
本発明のセラミド産生促進剤、保湿剤及び皮膚のバリア能増強又は改善剤は、表皮細胞におけるセラミド産生を亢進し、角層中のセラミド量を増加させることで、皮膚の保湿機能やバリア機能を増強又は改善することができる。この作用により、本発明のセラミド産生促進剤、保湿剤及び皮膚のバリア能増強又は改善剤は、角層中のセラミド量低下によって引き起こされる皮膚疾患、例えば、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎、老人性乾皮症、乾癬等を予防、緩和、改善することができる。この観点から、本発明のセラミド産生促進剤、保湿剤及び皮膚のバリア能増強又は改善剤は、乾燥肌予防又は改善剤、荒れ肌予防又は改善剤、アトピー性皮膚炎予防又は改善剤、老人性乾皮症予防又は改善剤、乾癬予防又は改善剤等として用いることができる。
【0025】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下のセラミド産生促進剤、保湿剤、皮膚のバリア能増強又は改善剤、毛髪のハリ若しくはコシの付与剤、毛髪の感触改善剤、方法及び用途を開示する。
【0026】
<1>ロブル酸又はその塩を有効成分とする、セラミド産生促進剤、保湿剤、皮膚のバリア能増強若しくは改善剤、毛髪のハリ若しくはコシの付与剤、又は毛髪の感触改善剤。
【0027】
<2>前記ロブル酸が下記式(1)で表される化合物である、前記<1>項記載のセラミド産生促進剤、保湿剤、皮膚のバリア能増強若しくは改善剤、毛髪のハリ若しくはコシの付与剤、又は毛髪の感触改善剤。
【0028】
【化2】
【0029】
<3>前記有効成分が、ロブル酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、両性金属塩、アミノ酸塩又はアミン塩、好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、アミノ酸塩又はアミン塩、より好ましくはナトリウム塩、カリウム塩又はカルシウム塩である、前記<1>又は<2>項記載のセラミド産生促進剤、保湿剤、皮膚のバリア能増強若しくは改善剤、毛髪のハリ若しくはコシの付与剤、又は毛髪の感触改善剤。
<4>前記有効成分の含有量が固形分換算で0.00001質量%以上(好ましくは0.0001質量%以上)20質量%以下(好ましくは10質量%以下)である、前記<1>〜<3>のいずれか1項記載のセラミド産生促進剤、保湿剤、皮膚のバリア能増強若しくは改善剤、毛髪のハリ若しくはコシの付与剤、又は毛髪の感触改善剤。
【0030】
<5>セラミド産生促進剤、保湿剤、皮膚のバリア能増強若しくは改善剤、毛髪のハリ若しくはコシの付与剤、又は毛髪の感触改善剤としての、ロブル酸又はその塩の使用。
<6>セラミド産生促進剤、保湿剤、皮膚のバリア能増強若しくは改善剤、毛髪のハリ若しくはコシの付与剤、又は毛髪の感触改善剤の製造のための、ロブル酸又はその塩の使用。
<7>ロブル酸又はその塩をセラミド産生促進剤、保湿剤、皮膚のバリア能増強若しくは改善剤、毛髪のハリ若しくはコシの付与剤、又は毛髪の感触改善剤として使用する方法。
<8>セラミド産生促進方法、保湿方法、皮膚のバリア能増強若しくは改善、毛髪のハリ若しくはコシの付与方法、又は毛髪の感触改善方法のために用いる、ロブル酸又はその塩。
<9>非治療的なセラミド産生促進方法、非治療的な保湿方法、非治療的な皮膚のバリア能増強若しくは改善方法、非治療的な毛髪のハリ若しくはコシの付与方法、又は非治療的な毛髪の感触改善方法のために用いる、ロブル酸又はその塩の使用。
<10>皮膚の保湿機能又はバリア機能の増強薬又は改善薬を製造するための、ロブル酸又はその塩の使用。
<11>ロブル酸又はその塩を用いる、セラミド産生促進方法、保湿方法、皮膚のバリア能増強若しくは改善方法、毛髪のハリ若しくはコシの付与方法、又は毛髪の感触改善方法。
【0031】
<12>前記ロブル酸が前記式(1)で表される化合物である、前記<5>〜<11>のいずれか1項記載の使用又は方法。
<13>ロブル酸又はその塩を医薬品、医薬部外品、又は飲食品の形態で適用する、前記<5>〜<12>のいずれか1項記載の使用又は方法。
<14>ロブル酸の塩が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、両性金属塩、アミノ酸塩又はアミン塩、好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、アミノ酸塩又はアミン塩、より好ましくはナトリウム塩、カリウム塩又はカルシウム塩である、前記<5>〜<13>のいずれか1項記載の使用又は方法。
<15>ロブル酸又はその塩の含有量が固形分換算で0.00001質量%以上(好ましくは0.0001質量%以上)20質量%以下(好ましくは10質量%以下)である、前記<5>〜<14>のいずれか1項記載の使用又は方法。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
(製造例1)ロブル酸の調製
生薬ジンギョウ(新和物産社より入手)400gを95体積%エタノール4Lに浸漬し、室温において攪拌しながら7日間抽出を行った。得られた抽出液を濾過し溶媒を留去して、残渣42.4gを得た。得られた残渣につき、酢酸エチル850mL、イオン交換水850mLを用いて液液分配を行い、酢酸エチル層を濃縮して、酢酸エチル可溶画分10.6gを得た。続いて、酢酸エチル画分10.1gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル混合溶液で1回分取後、活性画分をさらにクロロホルム:メタノール混合溶液で2回分取)に供し、無色結晶のロブル酸575mgを得た。得られた化合物の同定は、1H-NMR及び13C-NMRにより行った。

1H-NMR(CDCL3,ppm):0.76(d,J=6Hz,3H),0.78(s,3H),0.90(d,J=6Hz,3H),0.93(s,3H),1.04(s,3H),1.07(s,3H),1.73(s,3H),2.18〜2.28(m,1H),2.35〜2.46(m,1H),4.65(bs,1H),4.85(bs,1H),5.09〜5.15(m,1H)
13C-NMR(CDCL3,ppm):17.0,17.6,19.7,21.4,23.1,23.4,23.6,24.4,26.5,28.0,28.4,28.8,31.2,31.6,33.8,33.8,37.9,39.1,39.6,39.7,39.7,41.5,42.6,50.5,59.1,113.6,124.2,139.6,147.4,179.9
【0034】
(製造例2)比較化合物(5)の合成
ロブル酸225mg(0.511mmol)をエタノール10mLに溶解し、Pd/C(10%、和光純薬社製)30mgを添加した。水素置換を3回行ない、室温にて攪拌した。3時間半後サンプリングして1H-NMRを測定したところオレフィンが残存していた。そこで、50℃に加熱してさらに5時間半反応させた。サンプリングして1H-NMR測定したところエキソメチレン部分は完全に水素添加されていたが、環内のオレフィンは水素添加されなかった。そこで、冷却後Pd/Cをフィルター濾過し、減圧濃縮、シリカゲルカラムクロマト(ヘキサン:酢酸エチル混合系)にて精製し、下記に示す比較化合物(5)68mg(白色結晶、収率30%)を得た。得られた化合物の同定は、1H-NMRにより行った。
1H-NMR(CDCL3,ppm):0.76(d,J=6Hz,3H),0.78(s,3H),0.80(d,J=6Hz,3H),0.89(d,J=7Hz,6H),0.91(s,3H),1.01(s,3H),1.05(s,3H),2.18〜2.22(m,1H),5.10〜5.16(m,1H)
【0035】
【化3】
【0036】
(製造例3)比較化合物(6)の合成
脱水テトラヒドロフラン(THF)5mLにLiAlH4150mg(3.95mmol)を加え、ロブル酸112mg(0.254mmol)の脱水THF8mL溶液を室温にて40分かけて滴下した。4時間後薄層クロマトグラフィー(TLC)にて原料の消失を確認し、ヘキサン10mL、イオン交換水5mLを加え、抽出、水洗、減圧濃縮して、反終品110mgを得た。反終品をシリカゲルカラムクロマト(クロロホルム系)にて精製し、下記に示す比較化合物(6)79mg(白色結晶、収率73%)を得た。得られた化合物の同定は、1H-NMRにより行った。
1H-NMR(CDCL3,ppm):0.77(d,J=6Hz,3H),0.78(s,3H),0.89(d,J=6Hz,3H),0.90(s,3H),1.04(s,3H),1.07(s,3H),1.72(s,3H),3.55〜3.70(m,2H),4.64(bs,1H),4.83(bs,1H),5.12(bs,1H)
【0037】
【化4】
【0038】
(製造例4)比較化合物(7)の合成
ロブル酸14.6mg(0.033mmol)を20%メタノールを含有するトルエン2mLに溶解し、トリメチルシリルジアゾメタン(東京化成製、10%ヘキサン溶液)0.5mLを加え、室温で反応させた。50分後TLCで原料消失を確認し、メタノール5mLを加え、減圧濃縮した。不溶物が析出したためヘキサンに再溶解した後、メンブレンフィルター(孔径0.45μm)でろ過し、減圧濃縮して、下記に示す比較化合物(8)15mg(収率100%)を得た。得られた化合物の同定は、1H-NMRにより行った。
1H-NMR(CDCL3,ppm):0.77(d,J=6Hz,3H),0.78(s,3H),0.90(d,J=6Hz,3H),0.93(s,3H),1.04(s,3H),1.06(s,3H),1.73(s,3H),2.12〜2.23(m,1H),2.30〜2.39(m,1H),3.63(s,3H),4.64(bs,1H),4.85(bs,1H),5.09〜5.15(m,1H)
【0039】
【化5】
【0040】
(製造例5)ユーカリ抽出物の調製
ユーカリの葉(Eucalyptus globulus Labillardiere:新和物産社より入手)40gを細切し、50体積%エタノール400mLを加え、室温・静置条件下で7日間抽出を行った。その後、濾過して、ユーカリ抽出物291mLを得た(蒸発残分3.16(w/v%))。これを50%体積エタノールで希釈し、1.0%(w/v)(エキス固形分)抽出物を調製した。
【0041】
(製造例6)センレンシ抽出物の調製
センレンシ(新和物産社より入手)40gを細切し、50体積%エタノール400mLを加え、室温、静置条件下で23日間抽出を行った。その後、濾過して、センレンシ抽出物328mLを得た(蒸発残分1.68(w/v%))。これを50%体積エタノールで希釈し、1.0%(w/v)(エキス固形分)抽出物を調製した。
【0042】
(試験例)セラミド産生促進効果の検証
培養プレートを用い、培養液(商品名:EpiLife-KG2、KURABO社製)中にて、正常ヒト表皮角化細胞(商品名:NHEK(F)、KURABO社製)を37℃、5%CO2で培養した。
その後、培養液を上皮成長因子などの増殖因子を除いたEpiLife-KG2に換え、表1に示す各成分又はコントロール溶液(50体積%エタノール)を添加した。
3日間培養した後、各々の細胞を1wellごと回収した。
【0043】
回収した細胞からBligh and Dyer法により脂質を抽出した有機相をガラス管に移し、窒素乾固した後、クロロホルム、メタノールで再溶解し、脂質サンプルとした。
また、脂質を抽出した後の細胞に0.1N NaOH、1%SDS水溶液を加え、60℃で2時間加熱することにより、タンパク質を可溶化し、室温まで冷却した後2N HClを加えて中和し、タンパク量をBCA法により定量した。
【0044】
調製した脂質サンプルを薄膜クロマトグラフィー(TLC)でクロロホルム:メタノール:酢酸=190:9:1で2回水平展開した。硫酸銅液をスプレーで噴霧し、ホットプレートで焼き付けセラミドを検出し、セラミド量とした。
結果を表1に示す。なお、表1のセラミド量は、コントロール溶液を添加した系のセラミド量を1とした場合の相対値(n=3の平均値)を示している。
【0045】
【表1】
【0046】
【化6】
【0047】
【化7】
【0048】
【化8】
【0049】
【化9】
【0050】
表1から明らかなように、比較化合物(1)〜(8)を添加した系では、セラミド量の増加は認められなかった。
これに対して、ロブル酸を添加した系では、コントロールの系に比べてセラミド量が有意に増加した。すなわち、ロブル酸はセラミド産生促進作用を有し、セラミド産生促進剤、保湿剤、皮膚のバリア能増強若しくは改善剤、毛髪のハリ若しくはコシの付与剤、及び毛髪の感触改善剤の有効成分として有用であることがわかった。さらに、ロブル酸は、公知のセラミド産生促進剤であるユーカリ抽出物やトウセンダン抽出物と同等のセラミド産生作用を有していた。
【0051】
(処方例)
ロブル酸を有効成分とする保湿剤、又は皮膚のバリア能増強若しくは改善剤として、下記に示す組成の化粧水、0/W(オイルインウォーター)型乳液、W/O(ウォーターインオイル)型クリーム、ジェル状化粧料、液体入浴剤、ヘアローション、ヘアトリートメントを常法により各々製造できる。
【0052】
1.化粧水の調製
(組成) (配合:質量%)
ロブル酸 0.01
ポリエチレングリコール(商品名:PEG−1540、三洋化成社製) 1.00
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリン酸エステル 1.50
グリセリン 2.00
パラべン 0.10
精製水 残余
【0053】
2.0/W型乳液の調製
(組成) (配合:質量%)
ロブル酸 0.03
ポリエチレングリコール(商品名:PEG−2000、三洋化成社製) 1.00
プルラン(商品名:プルランPT−20、林原社製) 0.40
セチルアルコール 1.00
ワセリン 2.00
スクワラン 6.00
ジメチルポリシロキサン 2.00
グリセリン 2.00
擬似セラミド(N−(3−ヘキサデシロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−N−2−ヒドロキシエチルヘキサデカミナド) 1.00
ポリオキシエチレン(10)モノオレイン酸エステル 1.00
グリセロールモノステアリン酸エステル 1.00
植物のカルス由来の酸性へテロ多糖類(チュベロース多糖1重量%水溶液)2.00
パラべン 0.20
精製水 残余
【0054】
3.W/O型クリームの調製
(組成) (配合:質量%)
ロブル酸 0.05
アクリル酸アルキル共重合体(商品名:ヨドゾールGH810、カネボウNSC社製)
1.30
ポリビニルピロリドン(商品名:ルビスコールK−90、BASEジャパン社製)
0.70
ジメチルポリシロキサン 10.00
メチルフェニルポリシロキサン 3.00
オクタメチルシクロテトラシロキサン 12.00
ポリオキシアルキレン変性シリコーン 5.00
1,3-ブチレングリコール 6.00
擬似セラミド(N−(3−ヘキサデシロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−N−2−ヒドロキシエチルヘキサデカミナド) 1.20
パラべン 0.20
香料 微量
精製水 残余
【0055】
4.ジェル状化粧料の調製
(組成) (配合:質量%)
ロブル酸 0.002
ポリエチレングリコール(商品名:PEG−2000、三洋化成社製) 0.50
キサンタンガム(商品名:ネオソフトXKK、興人社製) 0.20
グリセリン 3.00
エタノール 3.00
カルボキシビニルポリマー 0.50
水酸化カリウム 0.15
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.00
クエン酸 0.80
クエン酸三ナトリウム 0.80
ナイロンパウダー 1.00
パラべン 0.10
香料 微量
精製水 残余
【0056】
5.液体入浴剤の調製
(組成) (配合:質量%)
ロブル酸 0.0002
擬似セラミド(N−(3−ヘキサデシロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−N−2−ヒドロキシエチルヘキサデカミナド) 0.10
ミリスチン酸イソプロピル 15.00
ポリオキシエチレン(12)オレイルエーテル 10.00
ポリオキシエチレン(6)オレイルエーテル 6.00
植物のカルス由来の酸性へテロ多糖類(チュベロース多糖1重量%水溶液)2.00
パラべン 0.30
香料 微量
流動パラフィン 残余
【0057】
6.ヘアローションの調製
(組成) (配合:質量%)
エタノール 60.0
プロピレングリコール 2.00
メチルパラベン 0.1
香料 0.5
ロブル酸 0.3
精製水 残余
【0058】
7.ヘアトリートメントの調製
(組成) (配合:質量%)
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 2.0
セチルステアリルアルコール 5.0
グリシン 1.0
メチルパラベン 0.1
香料 0.5
ロブル酸 0.2
精製水 残余