(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238401
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】生理活性ペプチド徐放性微粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/16 20060101AFI20171120BHJP
A61K 38/09 20060101ALI20171120BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20171120BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20171120BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20171120BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K38/09
A61K47/34
A61P15/00
A61P13/08
A61P35/00
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-223037(P2013-223037)
(22)【出願日】2013年10月28日
(65)【公開番号】特開2015-86136(P2015-86136A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本山 順
(72)【発明者】
【氏名】渡部 美幸
(72)【発明者】
【氏名】今井 義寛
【審査官】
上條 肇
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−293636(JP,A)
【文献】
特表2002−542926(JP,A)
【文献】
特表2011−516611(JP,A)
【文献】
特表2012−505160(JP,A)
【文献】
特表2012−508228(JP,A)
【文献】
特表2012−501321(JP,A)
【文献】
特表2008−536856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00 − 9/72
A61K 47/00 − 47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE(STN)
BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理活性ペプチド、生分解性高分子及び溶媒を混合して均一相の溶液を調製する工程、
前記溶液を噴霧乾燥する工程により、
生理活性ペプチド徐放性微粒子を製造する方法において、
前記溶媒は、5〜20容量%の水と10〜50容量%のメタノール、エタノール及び2-プロパノールから選択される1種以上のアルコール類、並びに40〜80容量%の酢酸エチル及びアセトンから選択される1種以上の有機溶剤類の混合溶媒を含有する含水溶媒であり、
前記生理活性ペプチドがリュープロレリン、ゴセレリン及びそれらの塩の中から選ばれる1種であり、
前記生分解性高分子が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリ乳酸グリコール酸からなる群から選択される1種以上であり、
付着防止剤を用いないことを特徴とする生理活性ペプチド徐放性微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記溶液が、生理活性ペプチドと生分解性高分子の総量含有量が5〜20質量%の溶液である請求項1に記載の生理活性ペプチド徐放性微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記生理活性ペプチドの前記生分解性高分子に対する含有量が5〜20質量%である請求項1または2に記載の生理活性ペプチド徐放性微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記噴霧乾燥を行う条件が、生理活性ペプチド、生分解性高分子及び溶媒を混合して溶液を、入口温度40〜70℃、噴霧液の流速が1〜10mL/minを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の生理活性ペプチド徐放性微粒子の製造方法。
【請求項5】
生理活性ペプチド、生分解性高分子及び溶媒を混合して均一相の溶液を調製し、前記溶液を噴霧乾燥して得られる生理活性ペプチド徐放性微粒子において、
前記溶媒が、5〜20容量%の水と10〜50容量%のメタノール、エタノール及び2-プロパノールから選択される1種以上のアルコール類、並びに40〜80容量%の酢酸エチル及びアセトンから選択される1種以上の有機溶剤類の混合溶媒であるを含有する含水溶媒であり、
前記生理活性ペプチドがリュープロレリン、ゴセレリン及びそれらの塩の中から選ばれる1種であり、
前記生分解性高分子が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリ乳酸グリコール酸からなる群から選択される1種以上であり、
付着防止剤を用いないことを特徴とする生理活性ペプチド徐放性微粒子。
【請求項6】
請求項5に記載の生理活性ペプチド徐放性微粒子を2種以上混合して徐放期間を調整した混合微粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾病治療に有効な生理活性ペプチドを含有し、生体に投与されると該生理活性ペプチドを持続的に徐放する微粒子製剤及びその製造方法に関する。特に、生理活性ペプチドを、生分解性高分子を主成分とする製剤基剤中に均一に分散させた生分解性マトリックス型微粒子製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
胃腸管内でpHの変化による失活、または酵素によって分解される有効成分、例えばタンパク質またはペプチドを有効成分とする医薬品の場合には、口腔粘膜または鼻粘膜を経由する経粘膜投与や皮膚を経由する経皮投与もしくは注射による投与などの非経口投与製剤にする必要があり、その製剤形及び処方決定が特に重要である。また、これら酵素等で分解されやすいタンパク質、ペプチド等の有効成分は、連続的にまたは長時間供給されることで治療効果が大きくなる傾向がある。特に代表される生理活性ペプチドとして黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)の誘導体であるLHRHアゴニストまたはLHRHアンタゴニストなどが挙げられる。これらの生理活性ペプチドを連続的に供給する方法として徐放性製剤が知られている。
徐放性製剤とする方法としては、生分解性高分子であるポリ乳酸(PLA)及びポリ乳酸グリコール酸(PLGA)を用いた放出制御型製剤とする方法がある。すなわち、PLAまたはPLGAを基剤として、有効成分である生理活性ペプチドを含んだ徐放性微粒子を調製することで、当該ペプチドを1カ月間または3カ月以上にわたり徐放をさせることが可能となる。
【0003】
この徐放性微粒子を製造する方法として、液中乾燥法による微粒子製剤化が知られている。液中乾燥法とは、有効成分であるペプチドを溶解した水相を、製剤基剤である生分解性高分子が溶解した油相に滴下し、高速攪拌することでマイクロサイズのW/Oエマルションを形成させ、さらにそのエマルションを別の水相に投入し高速攪拌を行いW/O/Wエマルションを形成させ、それを乾燥させることで徐放性微粒子を得る方法である(特許文献1参照)。この方法は、水溶性を示す生理活性ペプチドは外水相に再分配しやすいため、微粒子製剤へのトラップ率が低下し高含有量の製剤が得られにくい。また、トラップ率においてロット間ばらつきが大きく、スケールアップによる影響が大きく、品質を一定レベルに維持することが困難であるという課題を有する。
【0004】
また、徐放性微粒子の別の製造方法として噴霧乾燥法が知られている。この方法は、生理活性ペプチドと生分解性高分子の溶液または生理活性ペプチドを微細化して生分解性高分子溶液に分散した懸濁液若しくはこれらの成分のW/O分散液の状態で噴霧乾燥することで、徐放性微粒子を調製する製造方法である。特許文献2には水溶性薬物の徐放性微粒子を、噴霧乾燥により製造する方法が記載されている。この方法を用いることにより、液中乾燥法より簡便に徐放性微粒子が製造できることが記載されているが、微粒子同士の付着及び/又はスプレードライヤーへの付着により、付着防止剤の同時噴霧が必要となっている。
【0005】
上記の液中乾燥法及び噴霧乾燥法における徐放性微粒子の製造では、ペプチドが溶解した水相を生分解性高分子(PLAまたはPLGA)が溶解した油相に投入し、攪拌もしくはホモジナイズを行いW/O分散液を調製する。この際、W/O分散液の水相のエマルションの粒子径が製造ロット間でばらつき、徐放性微粒子からのペプチドの放出速度がばらつきやすくなることが懸念され、エマルジョンの厳密な制御が課題である。加えて、W/O分散液から噴霧乾燥して得られた徐放性微粒子では、ペプチドが分子レベルで分散されておらず不均一相として存在するため、徐放性能を悪くする要因となる。そのため、エマルジョン溶液によらず、徐放性微粒子製剤の性能ばらつきが少ない製造方法が求められている。
【0006】
また、上記の液中乾燥法及び噴霧乾燥法による徐放性微粒子の製造において、塩化メチレンやクロロホルムなどの医薬品製造において使用が好ましくないハロゲン系有機溶剤が使用されている。これらの溶剤は、製造工程中でほとんどが回収できるとされるが、徐放性微粒子中には微量の溶剤が残留してしまう懸念があり、残留溶剤のコントロールを課題とする。
一方、ペプチドとPLGAまたはPLAを用いた徐放性微粒子製剤の製造において、氷酢酸を製造溶媒に用いる例が知られている。特許文献3においてLHRHアゴニストの一種とPLGAまたはPLAを氷酢酸に溶解して均一な溶液とし、それを噴霧乾燥して微粒子体を調製し、得られた微粒子をポリビニルアルコール含有水溶液に分散させ、その分散液を蒸留水で洗浄し、凍結乾燥を行うことで良好な徐放性微粒子が得られている。しかしながら、この製造方法で使用されている氷酢酸は、全ての生理活性ペプチドに対して有効な溶剤であるとは言えず、また酸性溶剤であることから製造工程中での生理活性ペプチドの安定性に対する影響や、酢酸の残留により製剤の安定性に影響を及ぼすことが懸念される。また、氷酢酸は人体の皮膚や目に触れた場合、重篤な損傷を及ぼすことが知られているため、使用に注意が必要であり、医薬品の実生産には使用が制限される。更にこの方法であっても、噴霧乾燥で得られる徐放性微粒子の付着防止剤が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US Patent4,652,441
【特許文献2】特開平6−293636号公報
【特許文献3】特表2009−536942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、生理活性ペプチドを生分解性高分子中に分散させた徐放性微粒子製剤の製造方法において、ハロゲン溶媒や酢酸等の毒性が懸念される溶剤を用いることなく、生理活性ペプチドの内封率が高く、収率が向上し、かつ付着防止剤を使用することなく得られる徐放性微粒子製剤の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、生理活性ペプチド、生分解性高分子を含む溶液を噴霧乾燥して調製される生理活性ペプチド徐放性微粒子において、該溶液の溶媒組成が、得られる徐放性微粒子の収率と薬物内封率に大きく影響を与えることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、種々の溶媒に対する溶解度の異なる生理活性ペプチドと生分解性高分子を均一に溶解し噴霧乾燥可能な溶媒組成を見出し、該溶媒として、メタノール、エタノール、1‐プロパノール、2‐プロパノール及びtert‐ブタノールから選択される1種以上のアルコール類並びに酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル及びN,N‐ジメチルホルムアミドから選択される1種以上有機溶剤類の混合溶媒と水を含有する含水溶媒を用い、生理活性ペプチド及び生分解性高分子の均一溶液を調製し、これを噴霧乾燥することで、高い収率と高い薬物内封率を持つ徐放性微粒子が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。また、本方法により得られる徐放性微粒子は、噴霧時に付着防止剤を併用することを必要としない。
【0010】
本願は以下の発明を要旨とする。
[1]生理活性ペプチド、生分解性高分子及び溶媒を混合して溶液を調製する工程、前記溶液を噴霧乾燥する工程により、生理活性ペプチド徐放性微粒子を製造する方法において、前記溶媒は、メタノール、エタノール、1‐プロパノール、2‐プロパノール及びtert‐ブタノールから選択される1種以上のアルコール類、並びに酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル及びN,N‐ジメチルホルムアミドから選択される1種以上の有機溶剤類の混合溶媒と水を含有する含水溶媒であることを特徴とする生理活性ペプチド徐放性微粒子の製造方法。
[2]前記溶媒が、5〜20容量%の水と10〜50容量%のメタノール、エタノール及び2‐プロパノールから選択される1種以上のアルコール類、並びに40〜80容量%の酢酸エチル及びアセトンから選択される1種以上の有機溶剤類の混合溶媒である前記[1]に記載の生理活性ペプチド徐放性微粒子の製造方法。
[3]前記溶液が、生理活性ペプチドと生分解性高分子の総量含有量が5〜20質量%の溶液である前記[1]または[2]に記載の生理活性ペプチド徐放性微粒子の製造方法。
[4]前記生理活性ペプチドの前記生分解性高分子に対する含有量が5〜20質量%である前記[1]〜[3]の何れか一項に記載の生理活性ペプチド徐放性微粒子の製造方法。
[5]前記生理活性ペプチドが黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)及びその誘導体、並びにソマトスタチン及びその誘導体から選択される選択されることを特徴とする、前記[1]〜[4]の何れか一項に記載の生理活性ペプチド徐放性微粒子の製造方法。
[6]前記生理活性ペプチドがリュープロレリン、ゴセレリン及びそれらの塩の中から選ばれる前記[1]〜[5]の何れか一項に記載の生理活性ペプチド徐放性微粒子の製造方法。
[7]前記生分解性高分子が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリアルキルカーボネート及びそれらの誘導体からなる群から選択される1種以上である前記[1]〜[6]の何れか一項に記載の生理活性ペプチド徐放性微粒子の製造方法。
[8]前記噴霧乾燥を行う条件が、生理活性ペプチド、生分解性高分子及び溶媒を混合して溶液を、入口温度40〜70℃、噴霧液の流速が1〜10mL/minを特徴とする前記[1]〜[7]の何れか一項に記載の生理活性ペプチド徐放性微粒子の製造方法。
[9]生理活性ペプチド、生分解性高分子及び溶媒を混合して溶液を調製し、前記溶液を噴霧乾燥して得られる生理活性ペプチド徐放性微粒子において、前記溶媒が、メタノール、エタノール、1‐プロパノール、2‐プロパノール及びtert‐ブタノールから選択される1種以上のアルコール類、並びに酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル及びN,N‐ジメチルホルムアミドから選択される1種以上の有機溶剤類の混合溶媒と水を含有する含水溶媒であることを特徴とする生理活性ペプチド徐放性微粒子。
[10]前記溶媒が、5〜20容量%の水と10〜50容量%のメタノール、エタノール及び2‐プロパノールから選択される1種以上のアルコール類、並びに40〜80容量%の酢酸エチル及びアセトンから選択される1種以上の有機溶剤類の混合溶媒である前記[9]に記載の生理活性ペプチド徐放性微粒子。
[11]前記生理活性ペプチドが黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)及びその誘導体、並びにソマトスタチン及びその誘導体から選択される選択されることを特徴とする、前記[9]または[10]に記載の生理活性ペプチド徐放性微粒子。
[12]前記生理活性ペプチドがリュープロレリン、ゴセレリン及びそれらの塩の中から選ばれる、前記[9]〜[11]の何れか一項に記載の生理活性ペプチド徐放性微粒子。
[13]前記生分解性高分子が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリアルキルカーボネート及びそれらの誘導体からなる群から選択される1種以上である、前記[9]〜[12]の何れか一項に記載の生理活性ペプチド徐放性微粒子。
[14]前記[9]〜[13]の何れか一項に記載の生理活性ペプチド徐放性微粒子を2種以上混合して徐放期間を調整した混合微粒子。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、有効成分と徐放性微粒子の基剤となる高分子を均一な溶液状態としこれを噴霧乾燥することで、高い薬物内封率の徐放性微粒子を、付着防止剤を使用することなく得ることができる。本方法は使用する溶剤は認容量が高いものであり、残留溶媒の制御に関する課題が解決される。本発明の方法では、有効成分及び高分子の種類によって溶媒の組成を調節することで均一な溶液を得ることができ、これによって適切な徐放性能を有する徐放性微粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例1に係る徐放性微粒子を投与してから56日間にわたるラットの血中のテストステロンの濃度の変化を示した図である。
【
図2】本発明の実施例4に係る徐放性微粒子を投与してから22週間にわたるラットの血中のテストステロンの濃度の変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は活性物質として治療上活性の生理活性ペプチド及び生分解性高分子を、特定の組成による含水溶媒にて溶液を調製し、これを噴霧乾燥して得られる生物分解性の徐放性微粒子の製造方法に関する。また、前記方法により製造される生物分解性の徐放性微粒子に関する。
【0014】
本発明で用いられる生理活性ペプチドとは、例えば抗癌剤、抗生剤、解熱剤、鎮痛剤、抗炎症剤、鎮咳剤、鎮静剤、抗潰瘍剤、抗鬱剤、抗アレルギー剤、糖尿病治療剤、過脂質血症治療剤、抗結核剤、ホルモン、骨代謝製剤、免疫抑制剤、血管形成抑制剤、避妊剤、ビタミン剤などの有効成分として用いられる生理活性を持つオリゴペプチドやポリペプチドなどのタンパク質薬物を示す。
生理活性を持つオリゴペプチドとしては、インシュリン、ソマトスタチンおよびそれらの誘導体、成長ホルモン、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンおよびそれらの塩と誘導体、甲状腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)およびそれらの塩と誘導体、黄体ホルモン、卵胞刺激ホルモン、バソプレシンおよびそれらの誘導体、オクシトシン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、グルカゴン、ガストリン、セクレチン、パンクレオザイミン、コレシストキニン、アンジオテンシン、ヒト胎盤性ラクトーゲン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、エンケファリンおよびそれらの誘導体などがある。
ポリペプチドとしては、エンドルフィン、インタフェロン(α、β、γ型)、インターロイキン、タフトシン、サイモポエチン、サイモシン、サイモスチムリン、胸腺液性因子(THF)、血清胸腺因子およびそれらの誘導体、腫瘍壊死因子(TNF)、コロニー刺激因子(CSF)、モチリン、ダイノルフィン、ボンベシン、ニューロテンシン、ブラジキニン、セルレイン、ウロキナーゼ、アスパラギナーゼ、カリクレイン、サブスタンスP、神経成長因子、血液凝固因子VIIIおよびIX、リゾチーム、ポリミキシンB、コリスチン、グラミシジン、バシトラシン、タンパク質合成刺激ペプチド、血管活性腸管ポリペプチド、血小板由来成長因子、成長ホルモン放出因子、骨形成タンパク質、上皮成長因子、エリスロポエチンなどがある。
【0015】
本発明において好ましい生理活性ペプチドとしては、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)およびそれらの塩と誘導体並びにソマトスタチン及びその誘導体を挙げることができる。特に好ましくは、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)およびそれらの塩と誘導体である。黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)およびそれらの塩と誘導体としては、LHRHアゴニスト作用またはLHRHアンタゴニスト作用を有するオリゴペプチドが好ましく、LHRHアゴニスト作用剤であるリュープロレリンやゴセレリンを適用することが特に好ましい。LHRHアゴニスト作用剤であるリュープロレリンやゴセレリンは、脳下垂体からの性腺刺激ホルモン(FSHやLH)の放出をネガティブフィードバック調節することで、性ホルモン(アンドロゲン、エストロゲン、プロゲステロン等)の分泌を抑制する働きがあるため、前立腺がん、乳がん、子宮内膜症の治療に用いられる。LHRHアゴニスト作用剤を用いた前記治療は、性ホルモンの継続的な分泌抑制が必要であるため、これらのLHRHアゴニストは持続放出型製剤が必要であり、本発明を適用することが好ましい。
【0016】
本発明において、生分解性高分子は前記生理活性ペプチドを保持する製剤マトリックス基剤として用いられる。すなわち、生理活性ペプチドを該生分解性高分子中に含有させるための担体である。本発明で用いられる生分解性高分子とは、体内への投与時に徐々に分解される人体に無害な高分子をいう。このような高分子の例としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリアルキルカーボネート及びこれらの誘導体を含む。これらの生分解性高分子は、1種類で用いても2種以上の混合物で用いても良い。
一般的に、徐放性微粒子における生理活性ペプチドの放出様相は、高分子の水和速度と分解速度、薬物と高分子の親和程度及び微粒子内外の形などによって大きく左右される。ポリ乳酸(PLA)等の疎水性高分子を用いると、生理活性ペプチドの放出が緩徐な徐放性微粒子が調製される。これに対し、ポリグリコール酸(PGA)やポリ乳酸グリコール酸(PLGA)等の親水性高分子を用いると生理活性ペプチドの放出が比較的速い徐放性微粒子を調製することができる。
また、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)又はポリ乳酸(PLA)等のポリエステル型高分子の場合、末端のカルボキシル残基が自由状態で残っている高分子は、ドデシル基などのアルキル基で末端カルボキシル基が置換された高分子より水に対する親和性が高いため水和速度が一層速く、結果的に生体内における分解速度も速くなる。生分解性高分子の末端基の官能基により、徐放性微粒子の放出速度の制御を調製できる。
ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)等の共重合体高分子を用いる場合、共重合に用いるモノマー成分の構成割合によっても徐放性微粒子の放出速度が大きく左右される。PLGAの場合、グリコール酸成分が多い共重合体(PLGA)は生分解速度が速く、生理活性ペプチドの放出が速くなる傾向にある。
本発明において生分解性高分子は、生理活性ペプチドの相溶性と共に、生理活性ペプチドの放出速度を制御する観点で選択されるべきである。特に好ましくは、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)であり、これらを単独または2種類以上を混合して用いることが好ましい。
【0017】
生分解性高分子の分子量は、用いる生理活性ペプチドの種類や含有量、生理活性ペプチドの徐放速度に応じて設定される。適用に好ましい生分解性高分子の分子量は、重量平均分子量で1,000〜100,000のものを用いることが好ましく、3,000〜50,000のものがより好ましい。
一般的に、生分解性高分子の分子量が大きくなると、生理活性ペプチドの放出速度は緩徐な徐放性微粒子となる傾向にある。一方、分子量が小さい生分解性高分子を用いると生理活性ペプチドの放出速度が速い徐放性微粒子を調製できる。本発明において生分解性高分子は、生理活性ペプチドの相溶性と共に、生理活性ペプチドの放出速度を制御する観点で選択されるべきである。
【0018】
本発明において、生分解性高分子は有効成分である生理活性ペプチドを保持するのに十分量を用いる必要がある。本発明において、好ましくは生理活性ペプチド1質量部に対して、生分解性高分子の量は2〜100質量部用いられる。より好ましくは生理活性ペプチド1質量部に対して、生分解性高分子の量は5〜50質量部である。特に好ましくは生理活性ペプチド1質量部に対して、生分解性高分子の量は5〜20質量部である。すなわち、生理活性ペプチドの生分解性高分子に対する含有量は1〜33質量%が好ましく、より好ましくは2〜20質量%であり、5〜20質量%が特に好ましい。
一般的に、生理活性ペプチドに対して用いる生分解性高分子の使用量を高くすると、生理活性ペプチドの放出量が少なく放出性が緩徐な徐放性微粒子が調製される。一方、生理活性ペプチドに対して用いる生分解性高分子の使用量を低くすると、生理活性ペプチドの放出性が比較的速い徐放性微粒子を調製できる。本発明において生分解性高分子の使用量は、生理活性ペプチドの相溶性と共に、生理活性ペプチドの放出速度を制御する観点で選択されるべきである。
【0019】
本発明における溶媒とは、生分解性高分子および生理活性ペプチドを溶解するために用いられる。当該溶媒は、メタノール、エタノール、1‐プロパノール、2‐プロパノール及びtert‐ブタノールから選択される1種以上のアルコール類、並びに酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル及びN,N‐ジメチルホルムアミドから選択される1種以上の有機溶剤類の混合溶媒と、水を含有する含水溶媒である。この含水溶媒は、生理活性ペプチド及び生分解性高分子を完全に溶解できるものであれば特に限定されるものではなく使用できる。好ましい含水溶媒とは、前記アルコール類と前記有機溶剤類と水を混合した状態で、相分離せずに均一相溶液となるものである。好ましい含水溶媒の組成としては、メタノール、エタノール及び2‐プロパノールから選択される1種以上のアルコール類、並びに酢酸エチル及びアセトンから選択される1種以上の有機溶剤類の混合溶媒と水を含有する含水溶媒であり、該含水溶媒が相分離していない均一相溶液である。より好ましくは、前記含水溶媒が、5〜20容量%の水と10〜50容量%のメタノール、エタノール及び2‐プロパノールから選択される1種以上のアルコール類、並びに40〜80容量%の酢酸エチル及びアセトンから選択される1種以上の有機溶剤類の混合溶媒した含水溶媒であり、該含水溶媒が相分離していない均一相溶液である。
本発明における溶媒は、生理活性ペプチド及び生分解性高分子を溶解させるのに十分量を用いることが必要である。しかしながら、使用溶媒量が多い場合は、後述する噴霧乾燥工程が煩雑になり、また調製される生理活性ペプチド徐放性微粒子の粒径制御が困難になることから好ましいとは言えない。好ましい溶媒使用量は、生理活性ペプチドと生分解性高分子の総量に対して1〜50質量%(w/v)であり、5〜20質量%(w/v)がより好ましい。すなわち、生理活性ペプチドと生分解性高分子の総量を1質量部とするのに対し該溶媒は2〜100容量部を用いることが好ましく、5〜20容量部を用いることがより好ましい。
【0020】
次に、本発明の生理活性ペプチド徐放性微粒子の製造方法について説明する。本発明は生理活性ペプチド、生分解性高分子及び溶媒を混合して溶液を調製する溶液調製工程(工程1)、前記溶液を噴霧乾燥する噴霧乾燥工程(工程2)により、生理活性ペプチド徐放性微粒子を製造する方法である。以下に、本製造方法の各工程について説明する。
【0021】
始めに、生理活性ペプチド、生分解性高分子及び溶媒を混合して溶液を調製する溶液調製工程(工程1)について説明する。
生理活性ペプチドと生分解性高分子を含む噴霧溶液の調製方法としては、生理活性ペプチドと生分解性高分子を前記の3種類の溶媒を混合した含水溶媒に一度に混ぜ、場合によっては攪拌をすることにより、均一溶液として調製する方法がある。また、生理活性ペプチドを水に、生分解性高分子を前記アルコール類及び前記有機溶剤の混合液にそれぞれ溶解し、調製した各溶液を混合することにより、均一溶液を調製する方法が挙げられる。または、生理活性ペプチドを水と前記アルコール類の混合溶液に、生分解性高分子を前記有機溶剤にそれぞれ溶解し、それらの溶液を混合することにより、均一溶液を調製する方法がある。好ましい方法としては、生理活性ペプチドを水と前記アルコール類の混合溶液に、生分解性高分子を前記アルコール類と前記有機溶剤の混合溶液に溶解し、それらの溶液を混合することにより、均一溶液を調製する方法である。溶液調製する温度は、生理活性ペプチドの活性が維持される温度であれば特に限定されないが、5〜60℃で調製することが好ましい。本発明に係る生理活性ペプチドと生分解性高分子を含有する溶液は均一溶液であることから、この工程で任意に滅菌等を目的とした濾過工程を組み入れることができる。
【0022】
次に、前記溶液を噴霧乾燥する噴霧乾燥工程(工程2)を説明する。
工程2の噴霧溶液の濃度については、生理活性ペプチド及び生分解性高分子が均一溶液として溶解し、噴霧乾燥が可能であるように選択されるべきである。好ましくは、生理活性ペプチドと生分解性高分子の重量の合計が噴霧溶液容量に対して5〜20%(w/v)となるのが好ましい。溶液調製における温度としては、噴霧溶液が均一溶液となる温度となれば、どの温度でもよいが、好ましくは10℃〜50℃である。
噴霧乾燥は既存の噴霧乾燥装置を用いて行うことができる.溶媒のスプレー方式は、例えば二流体ノズルスプレー方式、回転円盤ノズルスプレー方式、超音波ノズルスプレー方式等種々の方式があるが、本発明に用いられる溶媒のスプレーは、これらのいずれのスプレー方式にもとらわれるものではない。
噴霧乾燥条件において、噴霧温度は好ましくは30℃〜80℃であるが、特に40℃〜70℃が好ましい。噴霧ガスの流速はあまり低すぎてはならない。さもないと糸形成が起こり、粒子が形成されないことがある。より良好に乾燥された生理活性ペプチド徐放性微粒子を得るには、例えば、ミニスプレードライヤー B290(ビュッヒ(Buechi))に用いられる二流体ノズルスプレーにおいては、液滴の形成にキャブレター方式が用いられているが、ここで用いられる噴霧ガスの流速は300NL/時〜700NL/時が好ましい。また、溶液の噴霧流量も粒子形成に影響を及ぼす。好ましくは1〜20mL/分であるが、特に1〜10mL/分が好ましい。噴霧乾燥によって製造された生理活性ペプチド徐放性微粒子は粒径が1〜50μmであり、注射により皮下投与することができる。
【0023】
この方法で製造された生理活性ペプチド徐放性微粒子は、噴霧乾燥器に付着することなく噴霧乾燥機の一カ所に集められて回収される。また、微粒子同士が付着することもないため、回収後、最終仕様に合わせて最終加工することができる。例えば種々の粒子の大きさに分画、高減圧下による最終乾燥又は任意の他の処理を行うことができる。回収された生理活性ペプチド徐放性微粒子は、バイアル、プレフィルドシリンジ等任意の容器に充填して製剤化する例を挙げることができる。
【0024】
高分子の諸性質によるが、本発明方法で製造される生理活性ペプチド徐放性微粒子は使用する生分解性高分子の種類や組成により任意の期間にわたって薬物である生理活性ペプチドを放出する。また、当該生理活性ペプチド徐放性微粒子は、その生理活性ペプチドの放出期間と放出量を調整するため、2種以上の当該微粒子を混合して用いても良い。すなわち、該生理活性ペプチドの放出の速い当該微粒子と比較的放出が遅い当該微粒子を混合することにより、該生理活性ペプチドの放出量を一定にする混合微粒子製剤として用いても良い。
本発明方法で製造される生理活性ペプチド徐放性微粒子は、注射による皮下投与が好ましい。本発明方法で製造される生理活性ペプチド徐放性微粒子は、LHRHアゴニストが内封されている場合、子宮内膜症、子宮筋腫、閉経前乳癌、前立腺癌等の疾患に使用することができる。
【実施例】
【0025】
実施例1
以下実施例により本発明を更に詳細に説明する。実施例において部は重量部を、%は重量%をそれぞれ意味する。
【0026】
ゴセレリン酢酸塩0.22gを水及びエタノールが1:1の割合で混合した溶液1.8mLに溶解した。その溶液を酢酸エチル19.1mL、エタノール4.2mL及び水1mLが混合した溶液中にポリ乳酸グリコール酸(PLGA7525、Wako、乳酸;75とグリコール酸;25の共重合体)1.9gが溶解した溶液中に滴下し、攪拌することで均一溶液を得た。その溶液を噴霧乾燥機(ミニスプレードライヤー B290、Buechi)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥した:噴霧入口温度70℃、アスピレータ100%、噴霧ガス量400L/hr、噴霧薬液速度3.5mL/min。徐放性微粒子が白色の粉末として生じた。
有効成分含有率99.1%、回収された粉末中の有効成分量に対する徐放性微粒子に内封した有効成分量の割合(内封率)は97.0%。
【0027】
実施例2
ゴセレリン酢酸塩0.35gを水及びエタノールが1:1の割合で混合した溶液2.8mLに溶解した。その溶液を酢酸エチル30.6mL、エタノール6.7mL及び水1.6mLが混合した溶液中にポリ乳酸グリコール酸(RG752H、エボニック、乳酸;75とグリコール酸;25の共重合体)3.0gが溶解した溶液中に滴下し、攪拌することで均一溶液を得た。その溶液を噴霧乾燥機(ミニスプレードライヤー B290、Buechi)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥した:噴霧入口温度70℃、アスピレータ100%、噴霧ガス量400L/hr、噴霧薬液速度3.5mL/min。徐放性微粒子が白色の粉末として生じた。
有効成分含有率98.1%、回収された粉末中の有効成分量に対する徐放性微粒子に内封した有効成分量の割合(内封率)は98.6%。
【0028】
実施例3
ゴセレリン酢酸塩1.06gを水及びエタノールが1:1の割合で混合した溶液17.0mLに溶解した。その溶液を酢酸エチル55.9mL、エタノール24mLが混合した溶液中にポリ乳酸(R202H、エボニック)7.6gが溶解した溶液中に滴下し、攪拌することで均一溶液を得た。その溶液を噴霧乾燥機(ミニスプレードライヤー B290、Buechi)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥した:噴霧入口温度60℃、アスピレータ100%、噴霧ガス量400L/hr、噴霧薬液速度3.5mL/min。徐放性微粒子が白色の粉末として生じた。
有効成分含有率96.0%、回収された粉末中の有効成分量に対する徐放性微粒子に内封した有効成分量の割合(内封率)は95.1%。
【0029】
実施例4
ゴセレリン酢酸塩0.66gを水及びエタノールが1:1の割合で混合した溶液10.6mLに溶解した。その溶液を酢酸エチル34.9mL、エタノール15mLが混合した溶液中にポリ乳酸(R202H、エボニック)4.63g及びポリ乳酸グリコール酸(RG752H、エボニック、乳酸;75とグリコール酸;25の共重合体)0.12gが溶解した溶液中に滴下し、攪拌することで均一溶液を得た。その溶液を噴霧乾燥機(ミニスプレードライヤー B290、Buechi)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥した:噴霧入口温度70℃、アスピレータ100%、噴霧ガス量400L/hr、噴霧薬液速度3.5mL/min。徐放性微粒子が白色の粉末として生じた。
有効成分含有率89.2%、回収された粉末中の有効成分量に対する徐放性微粒子に内封した有効成分量の割合(内封率)は91.9%。
【0030】
実施例5
ゴセレリン酢酸塩0.66gを水及びエタノールが1:1の割合で混合した溶液10.6mLに溶解した。その溶液を酢酸エチル34.9mL、エタノール15mLが混合した溶液中にポリ乳酸(R202H、エボニック)4.51g及びポリ乳酸グリコール酸(RG752H、エボニック、乳酸;75とグリコール酸;25の共重合体)0.24gが溶解した溶液中に滴下し、攪拌することで均一溶液を得た。その溶液を噴霧乾燥機(ミニスプレードライヤー B290、Buechi)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥した:噴霧入口温度70℃、アスピレータ100%、噴霧ガス量400L/hr、噴霧薬液速度3.5mL/min。徐放性微粒子が白色の粉末として生じた。
有効成分含有率92.0%、回収された粉末中の有効成分量に対する徐放性微粒子に内封した有効成分量の割合(内封率)は92.8%。
【0031】
実施例6
ゴセレリン酢酸塩0.66gを水及びエタノールが1:1の割合で混合した溶液10.6mLに溶解した。その溶液を酢酸エチル34.9mL、エタノール15mLが混合した溶液中にポリ乳酸(R202H、エボニック)4.28g及びポリ乳酸グリコール酸(RG752H、エボニック、乳酸;75とグリコール酸;25の共重合体)0.48gが溶解した溶液中に滴下し、攪拌することで均一溶液を得た。その溶液を噴霧乾燥機(ミニスプレードライヤー B290、Buechi)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥した:噴霧入口温度70℃、アスピレータ100%、噴霧ガス量400L/hr、噴霧薬液速度3.5mL/min。徐放性微粒子が白色の粉末として生じた。
有効成分含有率96.3%、回収された粉末中の有効成分量に対する徐放性微粒子に内封した有効成分量の割合(内封率)は91.6%。
【0032】
比較例1
ゴセレリン酢酸塩0.21g及びポリ乳酸グルコール酸(RG503H、エボニック)1.9gを酢酸エチル40mL、酢酸1mL及び水2mLの混液に投入し、ホモジナイザー(ウルトラタラックス)にて9000rpmで2分間ホモジナイズし、懸濁液を得た。その懸濁液を噴霧乾燥機(ミニスプレードライヤー B290、Buechi)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥した:噴霧入口温度60℃、アスピレータ100%、噴霧ガス量360L/hr、噴霧薬液速度3.5mL/min。徐放性微粒子が白色の粉末として生じた。
有効成分含有率54.7%、回収された粉末中の有効成分量に対する徐放性微粒子に内封した有効成分量の割合(内封率)は65.0%。
【0033】
比較例2
ゴセレリン酢酸塩0.21gを水2.5mLに溶解した。その溶液を酢酸エチル36mLとポリオキシエチレン硬化ヒマシ油0.05gが混合した溶液中にポリ乳酸グルコール酸(RG503H、エボニック)1.9gが溶解した溶液に滴下し、ホモジナイザー(ウルトラタラックス)にて9000rpmで数分ホモジナイズし、乳濁液を得た。この乳濁液を噴霧乾燥機(ミニスプレードライヤー B290、Buechi)を使用し、次の条件下で噴霧乾燥した:噴霧入口温度60℃、アスピレータ100%、噴霧ガス量360L/hr、噴霧薬液速度3.5mL/min。徐放性微粒子が白色の粉末として生じた。
有効成分含有率85.2%、回収された粉末中の有効成分量に対する徐放性微粒子に内封した有効成分量の割合(内封率)は79.3%。
【0034】
試験例1
実施例1で製造されたゴセレリン酢酸塩徐放性微粒子を懸濁液(5%マンニトール、0.5%カルメロースナトリウム、0.1%ポリソルベート80)に懸濁させた後、ラット(n=3)に薬物量で9mg/kgの用量で1回皮下注射した。尾静脈から投与後1時間、3時間、8時間、1日、2日、4日、8日、14日、その後からは7日間隔にして56日まで血液を採取した。採取した血液中のテストステロンについてLC‐MS/MSを用いて定量した。そのラット3匹の血液中のテストステロンの濃度の平均値の経時的変化を
図1に示した。
この結果より、本発明に係る実施例1のゴセレリン酢酸塩徐放性微粒子を1回投与することで、35日間テストステロンの生成を有意に抑制していることから、当該徐放性微粒子はゴセレリン酢酸塩が35日間にわたり持続的に放出されたことが分かる。
【0035】
試験例2
実施例4で製造されたゴセレリン酢酸塩徐放性微粒子を懸濁液(5%マンニトール、0.5%カルメロースナトリウム、0.1%ポリソルベート80)に懸濁させた後、ラット(n=3)に薬物量で9mg/kgの用量で1回皮下注射した。尾静脈から1時間、3時間、8時間、24時間、96時間、1週、2週、3週、4週、6週、8週、10週、13週、16週、19週、22週まで血液を採取した。採取した血液中のテストステロンについてLC‐MS/MSを用いて定量した。そのラット3匹の血液中のテストステロンの濃度の平均値の経時的変化を
図2に示した。
この結果より、本発明に係る実施例4のゴセレリン酢酸塩徐放性微粒子を1回投与することで、19週間テストステロンの生成を有意に抑制していることから、当該徐放性微粒子はゴセレリン酢酸塩が19週間にわたり持続的に放出されたことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
上述したように、本発明に係る徐放性微粒子の製造方法によって、有効成分の含量低下、有効成分の微粒子中への内封率の低下などを解決した徐放性微粒子を製造することができる。また、本発明によって製造された徐放性微粒子は、体内に投与されたときに一定の期間薬物を有効濃度で持続的に放出することにより、薬物の投与回数を減少させるなど、疾病の治療に有用に使用できる。