(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238402
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】シート材の裁断装置及び裁断方法
(51)【国際特許分類】
B26D 5/00 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
B26D5/00 F
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-230689(P2013-230689)
(22)【出願日】2013年11月6日
(65)【公開番号】特開2015-89604(P2015-89604A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000132954
【氏名又は名称】株式会社タカトリ
(72)【発明者】
【氏名】西川 政輝
【審査官】
塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−136983(JP,A)
【文献】
特開昭53−132879(JP,A)
【文献】
特開平02−262995(JP,A)
【文献】
特開平07−164384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裁断テーブル上にシート材を吸引保持しておき、裁断ヘッドに備えられた裁断刃を上下に往復動させながら前記裁断ヘッドを予め設計された裁断パターンに沿って移動させることで前記シート材を所望の形状に裁断するシート材の裁断装置において、
前記裁断パターンから裁断予定線が形成する裁断角度と裁断線分長を認識する制御部を備え、
前記制御部で前記裁断角度及び前記裁断線分長を予めノッチとして設定された裁断角度及び裁断線分長と比較し、前記裁断角度及び前記裁断線分長が予め設定された裁断角度及び裁断線分長と同等の場合はノッチと判断して、裁断の際、ノッチ裁断制御するようにしたことを特徴とするシート材の裁断装置。
【請求項2】
前記ノッチは、Vノッチ及び/またはΛノッチであることを特徴とする請求項1に記載のシート材の裁断装置。
【請求項3】
前記ノッチ裁断制御は、前記裁断刃をシート材に貫通状態でノッチの形状に従って裁断刃を回転制御させながら裁断することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のシート材の裁断装置。
【請求項4】
前記制御部は、ノッチ以外の鋭角方向の裁断パターンを裁断する際は、第1裁断予定線を切断した後、裁断刃をシート材から引き抜いて第2裁断予定線方向に裁断刃を回転させてから、再度裁断刃をシート材に貫通させて第2裁断予定線方向に裁断刃を移動制御するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシート材の裁断装置。
【請求項5】
裁断テーブル上に吸引保持したシート材を、裁断ヘッドに備えた裁断刃を上下に往復動させながら前記裁断ヘッドを予め入力された裁断パターンに沿って移動させることで前記シート材を所望の形状に裁断するシート材の裁断方法において、
前記裁断パターンを解析するステップと、
前記裁断パターンから裁断線上の点間の距離と角度を算出するステップと、
前記裁断線上の点間の距離と角度に基づいて、裁断線が角部に相当するかどうかを判断するステップと、
前記裁断線が角部と判断された場合、前記角部がノッチに相当するかどうかを判断するステップと、
前記角部がノッチと判断された場合、前記ノッチの位置を、ノッチ位置として記憶するステップと、
前記ノッチ位置でノッチ裁断制御をするステップと、
を備えたことを特徴とするシート材の裁断方法。
【請求項6】
前記ノッチはVノッチ及び/またはΛノッチであることを特徴とする請求項5に記載のシート材の裁断方法。
【請求項7】
前記角部がノッチに相当するかどうかを判断するステップの後、さらに前記ノッチ以外の角部における該角部の構成角度が90°以下である場合には、鋭角切断位置と判断して該鋭角切断位置での裁断制御を行なうようにしたことを特徴とする請求項5または6のいずれかに記載のシート材の裁断方法。
【請求項8】
前記鋭角切断位置での裁断制御は、
シート材の裁断時に裁断刃を該シート材に貫通した状態で第1裁断線方向に沿って移動させ、前記角部を僅かに超える位置まで裁断した後、前記裁断刃をシート材から引き抜いて裁断刃を第2裁断線方向に回動させ、続いて前記裁断刃の後端が前記角部から外側に僅かにはみ出した位置に裁断刃を貫通させると共に第2裁断線方向に裁断するようにしたことを特徴とする請求項7に記載のシート材の裁断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引テーブル上に吸着保持されたシート材を裁断刃によって所望の形状に裁断するシート材の裁断装置及び裁断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の衣料品等に用いられるシート材を裁断テーブル上に積層して吸引保持し、前記裁断テーブル上を水平動自在に配した裁断ヘッドを予め設計された裁断パターンに従って移動させながら、前記裁断ヘッドに設けられた裁断刃を上下に往復動させて前記シート材を所望の形状に裁断するシート材の裁断装置が知られている。
【0003】
前記シート材の裁断装置は、シート材を裁断する際に裁断ヘッドに設けられた裁断刃の昇降機構によって該裁断刃を裁断テーブル上の剛毛内に至るまで下降させてシート材に貫通させ、この状態で前記裁断刃を上下に往復動させて前記シート材を裁断するようになっている。また、この裁断刃は、各種方向に切断可能なように回動自在に構成されている。
【0004】
また、前記シート材は、各種の衣料品を縫製等するために組み合わされる裁断パーツごとに各種のマーキングが施される。このマーキングには、例えば目打ちドリルを使った穿孔やVノッチ、Λノッチ、その他Iノッチ(切込み)等がある。
【0005】
ところで、前記シート材の裁断においては、CAD等で予め所望の形状に設計された裁断パターンに従って、裁断刃の移動を制御するようになっているが、従来の裁断刃の制御は、Vノッチ、Λノッチを考慮せずに行われている。すなわち、裁断刃の角度制御、シート材への裁断刃の抜き刺し、裁断刃の移動量の制御が曲線や直線(角部を含む)と同様に行われている。
【0006】
上記のような裁断方法として、裁断刃をシート材から引き抜くことなく、切断線に沿って裁断刃を前進させて角部で裁断刃を切断方向へ回動させた後、切断方向へ裁断刃を前進させて切断を行なうことが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭51−12120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1の方法は、前記裁断刃をシート材に貫通させた状態で該裁断刃を上下に往復動させながら該裁断刃の刃先が裁断予定線の角部に達した時点で該裁断刃を回動させてシート材を裁断するようになっているため、前記裁断刃の回動に伴うシート材のたぐり寄せにより、裁断線が裁断パーツの外側にはみ出した状態あるいは裁断線の角部の頂点が丸まった状態で裁断される問題がある。すなわち、裁断パーツの角部(特に鋭角な角部)をシャープに裁断できない問題がある。
【0009】
そこで、第2の方法として裁断パーツの鋭角な角部を裁断する場合は、まず前記裁断刃をシート材に貫通させた状態で該裁断刃を上下に往復動させながら、シート材を第1裁断予定線方向に裁断していき、前記裁断刃の刃先が前記角部の頂点を僅かに行き過ぎた時点で前記裁断刃がシート材から引き抜かれる。続いて、前記裁断刃が第2裁断予定線方向に向けて回動され、再び前記裁断刃が上下に往復動しながら前記第2裁断予定線に沿ってシート材に貫通すると共に該裁断刃が上下に往復動しながらシート材が前記第2裁断予定線方向に裁断される。
【0010】
しかし、上記いずれの方法であっても、VノッチやΛノッチ(以下、単にVノッチという)を考慮せずにVノッチや鋭角な角部が裁断されている。
【0011】
以下、
図10(a)乃至(d)に基づいて、従来の第2の方法でVノッチを裁断する裁断方法について説明する。なお、上記Vノッチは、例えばノッチ幅が3mm、ノッチ深さが1.5mmに形成され、裁断刃は、厚みが約1.6mm、幅は約8mmに形成されている。
【0012】
図10(a)は、裁断刃32が上下に往復動しながら、シート材30に貫通した状態で第1裁断予定線方向の直線部分を裁断していき、前記裁断刃32がVノッチ31の角部に到達した後、裁断刃32が前記角部から所定量行き過ぎた状態を表す。制御部は、裁断パターンのうち、Vノッチ31としての個別の認識をしているのではなく、通常の裁断パターンの角部と同様であると認識しているので、前記角部の裁断と同様に一部角部を行き過ぎた状態で裁断が停止されると共に前記裁断刃32が前記シート材30から引き抜いた状態にされる。
【0013】
図10(b)のように前記裁断刃32が回転され、次の第2裁断予定線34方向に向けられると共に裁断刃32が上下に往復動しながら下降し、再度シート材30に貫通する。なお、裁断刃32の貫通させる位置は、裁断刃32の後端位置が角部より所定量はみ出した位置に位置している。
【0014】
次に
図10(c)のように前記裁断刃32が前記シート材30から引き抜かれて回転し、該裁断刃32の刃先が次の第3裁断予定線35に向けられる。この後、
図10(b)と同様に前記裁断刃32の後端位置が角部より所定量はみ出した位置に位置され、該裁断刃32が上下に往復動しながらシート材30に貫通する。
【0015】
図10(d)のように前記裁断刃32が前記シート材30から引き抜かれて回転し、該裁断刃32の刃先が次の第4裁断予定線36に向けられる。この後、前記裁断刃32の後端位置が角部より所定量はみ出した位置に位置されて、該裁断刃32が上下に往復動しながらシート材30に貫通することでVノッチ31を裁断する。
【0016】
なお、
図10(a)乃至(d)においては、裁断刃32での裁断線を描いてあるが、これは理解が容易なように便宜上、描いてあるもので、実際の裁断時には、裁断刃32は幅を有するため、シート材30が押しのけられたり、引っ張られたりして裁断線が潰れた状態になる。
【0017】
このように、上記鋭角な角部の裁断方法を適用してVノッチが裁断された場合、Vノッチに対して裁断刃が大きいことと、オーバーラップしてシート材を裁断していることにより、Vノッチの形状が崩れ、ノッチとしての役割を果たさなくなる問題がある。
【0018】
すなわち、従来の裁断方法においては、Vノッチと鋭角方向の裁断を同じ方法で裁断することにより、Vノッチを認識できなくなるか、あるいは、鋭角方向の裁断時にシート材の裁断頂点が丸くなってシャープに形成できない問題が発生していた。
【0019】
上記のように従来のシート材裁断装置は、Vノッチを判断せずに裁断刃を絶えずシート材に貫通させた状態で全ての角部を裁断するか、Vノッチを判断せずに角部で裁断刃をシート材から抜き刺ししながら裁断予定線の一部をオーバーラップさせてシート材を裁断するようになっている。
【0020】
また、上記第1及び第2の方法に代えて、Vノッチを手動で認識して指定することも考えられるが、Vノッチは使用用途によっては数十か所から数百か所形成される場合もあるため、手動での指定は多くの時間を要する問題や指定ミスをしてVノッチが精度良く裁断されない問題があった。
【0021】
そこで、本発明の目的は、Vノッチを精度良く形成するとともに鋭角な角部の裁断時にシート材の裁断頂点をシャープにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
そこで請求項1の発明は、裁断テーブル上にシート材を吸引保持しておき、裁断ヘッドに備えられた裁断刃を上下に往復動させながら前記裁断ヘッドを予め設計された裁断パターンに沿って移動させることで前記シート材を所望の形状に裁断するシート材の裁断装置において、
前記裁断パターンから裁断予定線が形成する裁断角度と裁断線分長を認識する制御部を備え、
前記制御部で前記裁断角度及び前記裁断線分長を予めノッチとして設定された裁断角度及び裁断線分長と比較し、前記裁断角度及び前記裁断線分長が予め設定された裁断角度及び裁断線分長と同等の場合はノッチと判断して、裁断の際、ノッチ裁断制御するようにした構成を採用したシート材の裁断装置である。
【0023】
請求項2の発明において、前記ノッチは、Vノッチ及び/またはΛノッチである構成を採用した請求項1に記載のシート材の裁断装置である。
【0024】
また、請求項3の発明において、前記ノッチ裁断制御は、前記裁断刃をシート材に貫通状態でノッチの形状に従って裁断刃を回転制御させながら裁断する構成を採用した請求項1及び2のいずれかに記載のシート材の裁断装置である。
【0025】
また、請求項4の発明において、前記制御部は、ノッチ以外の鋭角方向の裁断パターンを裁断する際は、第1裁断予定線を切断した後、裁断刃をシート材から引き抜いて第2裁断予定線方向に裁断刃を回転させてから、再度裁断刃をシート材に貫通させて第2裁断予定線方向に裁断刃を移動制御するようにした構成を採用した請求項1乃至3に記載のシート材の裁断装置である。
【0026】
また、請求項5の発明は、裁断テーブル上に吸引保持したシート材を、裁断ヘッドに備えた裁断刃を上下に往復動させながら前記裁断ヘッドを予め入力された裁断パターンに沿って移動させることで前記シート材を所望の形状に裁断するシート材の裁断方法において、
前記裁断パターンを解析するステップと、
前記裁断パターンから
裁断線上の点間の距離と角度を算出するステップと、
前記
裁断線上の点間の距離と角度に基づいて、裁断線が角部に相当するかどうかを判断するステップと、
前記裁断線が角部と判断された場合、前記角部がノッチに相当するかどうかを判断するステップと、
前記
角部がノッチ
と判断された場合、前記ノッチの位置を、ノッチ位置として記憶するステップと、
前記ノッチ位置でノッチ裁断制御をするステップと、
を備えた構成を採用するシート材の裁断方法である。
【0027】
また、請求項6の発明は、前記ノッチはVノッチ及び/またはΛノッチであることを特徴とする構成を採用した請求項5に記載のシート材の裁断方法である。
【0028】
また、請求項7の発明は、前記
角部がノッチ
に相当するかどうかを判断するステップの後、さらに前記ノッチ以外の角部における該角部の構成角度が90°以下である場合には、鋭角切断位置と判断して該鋭角切断位置での裁断制御を行なうようにした構成を採用する請求項5または6のいずれかに記載のシート材の裁断方法である。
【0029】
また、請求項8の発明において、前記鋭角切断位置での裁断制御は、シート材の裁断時に裁断刃を該シート材に貫通した状態で第1裁断線方向に沿って移動させ、前記角部を僅かに超える位置まで裁断した後、前記裁断刃をシート材から引き抜いて裁断刃を第2裁断線方向に回動させ、続いて前記裁断刃の後端が前記角部から外側に僅かにはみ出した位置に裁断刃を貫通させると共に第2裁断線方向に裁断するようにした構成を採用した請求項
7に記載のシート材の裁断方法である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、予め裁断パターンからVノッチ部が検出され、Vノッチ部においてVノッチ部の裁断に適した裁断制御が行なわれるので、正確なVノッチ形状が再現できる。また、小さなVノッチであっても、裁断刃の厚みや刃幅による影響を最小限にして裁断できるので、正確なVノッチ形状が再現できる。
【0031】
また、本発明によれば、Vノッチの裁断の際には、裁断刃をシート材から引き抜くことなくシート材に貫通状態で裁断でき、正確なVノッチ形状が再現できる。また、小さなVノッチであっても、裁断刃の厚みや刃幅による影響を最小限にして裁断できるので、正確なVノッチ形状が再現できる。
【0032】
また、本発明によれば、Vノッチの裁断の際はVノッチに適した裁断制御が行なわれ、角部が鋭角な裁断パターンの裁断の際には、裁断刃を一度シート材から引き抜いて回動させてから再び第2の方向に裁断されるので、Vノッチと鋭角な角部の裁断が最適な状態で行われ、精度の良い裁断を行なうことができる。
【0033】
また、本発明によれば、自動でVノッチを認識し、Vノッチに適した裁断が行なえるので、Vノッチを1つずつ指定する手間がなくなると共にVノッチの指定ミスもなくなるので、Vノッチを精度良く裁断できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図2】は、本発明のシート材裁断装置の制御部のブロック図である。
【
図3】は、裁断されるシート材の裁断パターンの一実施形態を表す説明図である。
【
図4】は、裁断されるシート材の裁断パターンにおけるVノッチ部分の拡大説明図である。
【
図5】は、本発明のシート材裁断装置の第1実施形態における動作フロー図である。
【
図6】は、本発明のシート材裁断装置でVノッチ部分を裁断する際の裁断状態を表す説明図である。
【
図7】は、本発明のシート材裁断装置で鋭角パターンを裁断する際の裁断状態を表す説明図である。
【
図8】は、本発明のシート材裁断装置の第2実施形態における動作フロー図である。
【
図9】は、本発明のシート材裁断装置でVノッチ部分を裁断する際の別の裁断状態を表す説明図である。
【
図10】は、従来のシート材裁断装置で裁断されるシート材のVノッチ部分での裁断方法を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明のシート材裁断装置について、
図1乃至
図8に基づいて以下に説明する。
【0036】
図1は、本発明のシート材裁断装置1の一実施形態を表す全体斜視図である。なお、
図1において操作用コンピュータは図示を省略している。
【0037】
前記シート裁断装置1は、機枠上面に複数敷き詰められた剛毛ブロックで形成される裁断テーブル2と、前記裁断テーブル2上に懸架されX方向に移動自在なYビーム3と、前記Yビーム3に沿ってY方向への移動が自在な裁断ヘッド5と、前記裁断テーブル2、Yビーム3及び裁断ヘッド5等の装置全体を制御する制御部14とを備えている。
【0038】
前記裁断テーブル2は、前記剛毛の下方から吸引することで裁断テーブル2の上面に積層されたシート材7を吸引保持する図示しない真空源を備えている。前記裁断テーブル2は、X方向に搬送回動可能な無端ベルトコンベアとして構成され、前記剛毛上へのシート材7の搬入及び搬出を行なうようになっている。そして、前記シート材7が搬入された裁断テーブル2は、その周囲から吸引する空気がリークしないようにビニールシート8で全体が被覆される(理解が容易なようにビニールシート8の一部を切欠いている)。
【0039】
前記Yビーム3は、前記裁断テーブル2上のY方向に沿って懸架され、図示しない適宜の駆動源により、X方向に移動自在になっている。また、Yビーム3上には、このYビーム3に沿ってレール4が敷設され、前記レール4上に裁断ヘッド5が設けられている。
【0040】
図2のように前記シート材裁断装置1は、制御部14を備え、この制御部14には、裁断パターン7のデータを入力するパターン入力部15と、その他操作のための各種のコマンドを入力する入力部16とが接続されている。また、前記制御部14は、前記パターン入力部15から入力された裁断パターン7のデータと入力部16から入力されたコマンドに従って前記シート材7を裁断する裁断ヘッド5が接続されている。
【0041】
前記裁断ヘッド5は、前記レール4と摺動可能に嵌合し、図示しない駆動源により、Yビーム3上をY方向に移動するようになっている。また、前記裁断ヘッド5には、裁断刃6が設けられており、この裁断刃6は、シート材7の上方へ退避する退避位置とシート材7及び剛毛内に裁断刃6を貫通させる裁断位置との間を図示しない駆動源により上下するようになっている。前記裁断刃6は前記裁断位置で上下に高速で往復運動しながら、裁断ヘッド5が移動することでシート材7を裁断するようになっている。また、裁断刃6は、図示しない駆動源で裁断刃6の中心付近の軸を中心として回動可能になっている。
【0042】
また、前記裁断ヘッド5は、前記制御部14から出力される裁断ヘッド制御指令に従って駆動され、予め設計された裁断パターン10の形状にシート材7を裁断するようになっている。
【0043】
図3は、本発明のシート材裁断装置1で裁断する裁断パターン10の一実施形態である。前記裁断パターン10は、洋服等の縫製用のパーツがCAD等を用いて設計されたもので、この裁断パターン10のデータを前記パターン入力部15から入力することで、裁断ヘッド5に制御指令が送られて裁断パターン10の形状にシート材7が裁断される。
【0044】
前記裁断パターン10には、その後の縫製等の工程でパーツを組み合わせるための各種のマーキングが施される。本実施形態では、例えばVノッチ11(以後の説明においてはΛノッチも含むものとする)、Iノッチ(切込み)12、目打ち13が施されている。Vノッチ11、Iノッチ12、目打ち13は、使用される生地の種類や仕立後に目立ってはいけないかどうか等によって適宜使い分けされる。
【0045】
図4は、前記Vノッチ11部の拡大説明図である。図示のように前記Vノッチ11は、第1裁断予定線17、第2裁断予定線18、第3裁断予定線19及び第4裁断予定線20で形成されている。第1裁断予定線17と第2裁断予定線18は、角度θ1(裁断刃6を裁断方向に回転させる角度)をなし、第2裁断予定線18と第3裁断予定線19はθ2の角度をなし、第3裁断予定線19と第4裁断予定線20はθ3の角度をなしている。
【0046】
また、Vノッチ11の第2裁断予定線の線分長はL1、第3裁断予定線の線分長はL2で表される。なお、Vノッチ11の形成角度や前記線分長L1、L2は、使用される用途やシート材の柔らかさなどによって適宜変更されるが、例えばθ1、θ3は45°、θ2は90°、L1は2.1mm、L2は2.1mmである。
【0047】
前記制御部14は、裁断パターン10を解析し、前記Vノッチ11が裁断パターン10のどの位置に形成されているかを認識し、制御部14に記憶する。以下、前記Vノッチ11を裁断するフローの第1の実施形態について
図5に従って説明する。
【0048】
ステップa1でスタートし、ステップa2では、入力された裁断パターン10のデータの解析が行なわれる。続いて、ステップa3では、裁断線上の点間の距離と角度が算出される。ステップa4では、前記裁断線上の点間の距離と角度に基づいて、裁断線が角部に相当するかどうかが判断される。これは、裁断予定線が形成する線分の長さ及び角度の変化から判断できる。
【0049】
ステップa5では、ステップa4で角部と判定された位置について、その角部がVノッチに相当するかどうかが判断される。この判断は、予め設定したVノッチ11の第1裁断予定線の線分長L1及び第2裁断予定線の線分長L2、形成角度θ1、θ2、θ3と角部のデータを比較することで行われる。Vノッチ11と判断された位置については、ステップa6で制御部14に記憶される。
【0050】
次に、Vノッチ11の位置では、ステップa7として後述する裁断刃6のVノッチ11での制御指令に基づいてシート材7が裁断される。また、前記Vノッチ11以外の角部位置におけるシート材7の裁断は、まず、ステップa8で角部位置を記憶した後、ステップa9で角部位置での裁断刃6の制御指令が裁断ヘッド5に出力される。この後、ステップa10で裁断パターン10に基づいたシート材7の裁断が行なわれ、ステップa11で裁断が終了する。
【0051】
次に前記Vノッチ11の位置での裁断刃6の制御について
図6(a)乃至(c)に基づいて以下に説明する。
【0052】
まず、
図6(a)に先立って、シート材7に貫通した裁断刃6が上下に往復動しながら第1裁断予定線17の方向にシート材7を裁断していく。
【0053】
図6(a)のように裁断刃6の刃先が予め認識したVノッチ11の切り込み開始部分に到達すると、前記裁断刃6をシート材7に貫通状態で上下に往復動させながらθ1(
図4参照)だけ回動させて第2裁断予定線18の方向に裁断刃6を方向付ける。続いて、裁断刃6を第2裁断予定線の方向18に進行させる。
【0054】
次に
図6(b)のように裁断刃6がシート材7に貫通した状態で上下に往復動しながらθ2(
図4参照)だけ回転し、第3裁断予定線19の方向に方向付けられる。続いて裁断刃6が第3裁断予定線19に沿って進行し、シート材7を裁断する。
【0055】
図6(c)のように裁断刃6は、シート材7に貫通状態で上下に往復動しながら第4裁断予定線20の方向に向けてθ3(
図4参照)だけ回転する。続いて裁断刃6は、第4裁断予定線20の方向に向けて進行し、シート材7が裁断される。
【0056】
次にVノッチ11以外の角部位置における裁断刃6でのシート材7の裁断について、
図7(a)及び(b)に基づいて以下に説明する。なお、
図7(a)及び(b)は、Vノッチ以外の角部位置における角度が鋭角に形成されている例を基に説明する。
【0057】
図7(a)のように第1裁断予定線21方向に向けて二点鎖線位置から実線位置まで上下に裁断刃6を往復動させながら移動させることでシート材7が裁断される。この時、裁断刃6は、角部の交点を少し行き過ぎた位置(例えば2mm)まで裁断する。そして、図示しないが、裁断刃6がシート材7から引き抜かれて該裁断刃6がシート材7の上面の抜去位置まで上昇する。
【0058】
次に
図7(b)の二点鎖線位置のように裁断刃6がθ5だけ回転し、第2裁断予定線22の方向に向けられた後、前記裁断刃6は上下に往復動しながら再びシート材7に貫通する。なお、この時の裁断刃6の貫通位置は、第1裁断予定線21と第2裁断予定線22の交点よりも第2裁断予定線22の方向に少し(例えば2mm)戻した位置とするのが好ましい。続いて裁断刃6が上下に往復運動しながら第2裁断予定線22の方向に進行してシート材7を裁断する。
【0059】
なお、上記Vノッチ11以外の角部位置における裁断刃6でのシート材7の裁断方法は、前記角部が鋭角(例えば90°以下)に形成されている場合に好ましく利用できる。
【0060】
次に第2の実施形態について
図8のフローに基づいて説明する。なお、使用されるシート材裁断装置は、第1の実施形態と同じものであり、裁断刃6の制御が一部異なるのみであるのでシート材裁断装置の説明は省略する。
【0061】
まず、ステップb1でスタートすると、ステップb2で制御部14に入力された裁断パターン7が解析される。そして、ステップb3で裁断パターン7のデータから裁断予定線における点間の距離と角度が算出される。
【0062】
次にステップb3で算出された点間の距離と角度のデータから角部位置に相当するかどうかがステップb4で判断される。角部と判断された場合、続いてステップb5でVノッチ11に相当するかどうかが判断される。
【0063】
ステップb5でVノッチ11と判断された位置情報は、ステップb6で制御部14に記憶され、続いて、ステップb7でVノッチ11の位置での制御指令が裁断ヘッド5に出力される。
【0064】
ステップb4で角部以外であると判断された場合は、ステップb11で裁断刃制御指令が裁断ヘッド5に出力され、裁断刃6は、前記制御指令に基づいてシート材7を裁断する。
【0065】
また、ステップb5でVノッチ11以外であると判断された角部は、ステップb8で角度変化が判断され、前記角部で裁断刃6を回動させる角度θが90°未満の場合は、前記角部が形成する角度が鈍角であると判断し、前記ステップb11でシート材7が裁断される。前記ステップb8で前記角部での裁断刃6の回動角度θが90°以上の場合、ステップb9で鋭角裁断位置として制御部14の図示しない記憶部に記憶される。続いて、ステップ10で鋭角裁断位置での裁断刃6の制御指令が出力され、ステップb11でシート材7が裁断される。すべての裁断パターン10が裁断されると、ステップb12で裁断が終了する。
【0066】
なお、上記の角度θは、本発明の実施形態においては90°を基準としたが、この角度は90°に限定されず、シート材の材質、硬さ、厚み等に応じて最適な角度に設定できる。
【0067】
次に、Vノッチの別の実施形態に係る裁断方法を
図9(a)乃至(c)に基づいて以下に説明する。
【0068】
まず、
図9(a)に先立って、シート材7に貫通した裁断刃6が上下に往復動しながら第1裁断予定線17の方向にシート材7を裁断していく。
【0069】
図9(a)のように裁断刃6の刃先が予め認識したVノッチ11の切り込み開始部分に到達すると、前記裁断刃6がシート材7から引き抜かれ、シート材7の上面の退避位置まで上昇する。続いて、裁断刃6がθ1だけ回動されて第2裁断予定線18の方向に裁断刃6の刃先が方向付けられると共に前記刃先がVノッチ11の角部の頂点位置に位置するように移動される。再び裁断刃6が上下に往復動しながら、前記刃先がVノッチ11の角部の頂点位置となるようにシート材7に貫通する。
【0070】
次に
図9(b)のように裁断刃6がシート材7から抜き去られ、シート材7の上面の退避位置まで上昇する。続いて、裁断刃6がθ2だけ回転し、第3裁断予定線19の方向に方向付けられる。次に、裁断刃6の刃先がVノッチ11の角部の頂点位置に位置するように移動される。再び裁断刃6が上下に往復動しながら、前記刃先がVノッチ11の角部の頂点位置となるようにシート材7に貫通する。
【0071】
図9(c)のように裁断刃6が、再びシート材7から抜き去られ、シート材7の上面の退避位置まで上昇する。続いて、裁断刃6がθ3だけ回転し、第4裁断予定線20の方向に方向付けられる。次に、裁断刃6の後端がVノッチ11の角部に位置するように移動される。再び裁断刃6が上下に往復動しながら、裁断刃6の後端が角部の頂点位置となるようにシート材7に貫通する。続いて、裁断刃6は、第4裁断予定線20の方向に向けて進行し、シート材7が裁断される。
【0072】
以上が、本発明のシート材裁断装置及び裁断方法であるが、発明の範囲内で適宜の変更ができる。
【0073】
例えば、Vノッチかどうかの判断に第2裁断予定線の線分長及び第3裁断予定線の線分長と角度θ1、θ2、θ3を用いるようにしたが、Vノッチの開口部の幅と開口部の深さやVノッチの形成角度から判断するようにしても良い。
【0074】
また、Vノッチの裁断方法や鋭角部の裁断についても適宜の裁断方法が採用でき、要はVノッチや角部の位置を予め認識することにより、それぞれに適した裁断方法を適用することができれば良い。
【0075】
また、上記の説明においてVノッチとΛノッチを同等に扱ってきたが、VノッチとΛノッチを区別して扱い、VノッチとΛノッチで裁断方法を変更するようにしても良い。特にVノッチはシート材7の必要な側への切込みであるので、Vノッチの角部の頂点で極力はみ出した切込みは好まれないため、はみ出しが少ないように切断することが好ましい。
【符号の説明】
【0076】
1 シート材裁断装置
2 裁断テーブル
3 Yビーム
4 レール
5 裁断ヘッド
6 裁断刃
7 シート材
8 ビニールシート
10 裁断パターン
11 Vノッチ
12 Iノッチ
13 目打ち
14 制御部
15 パターン入力部
16 入力部
17 第1裁断予定線
18 第2裁断予定線
19 第3裁断予定線
20 第4裁断予定線
21 第1裁断予定線
22 第2裁断予定線
30 シート材
31 Vノッチ
32 裁断刃
33 第1裁断予定線
34 第2裁断予定線
35 第3裁断予定線
36 第4裁断予定線