(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238406
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】皮膚バリア機能の維持又は改善のための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/185 20060101AFI20171120BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20171120BHJP
A23L 33/17 20160101ALI20171120BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20171120BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
A61K31/185
A23L33/10
A23L33/17
A61P17/00
A61P43/00 107
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-518184(P2013-518184)
(86)(22)【出願日】2012年6月1日
(86)【国際出願番号】JP2012064259
(87)【国際公開番号】WO2012165610
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2015年2月10日
【審判番号】不服2016-15871(P2016-15871/J1)
【審判請求日】2016年10月25日
(31)【優先権主張番号】特願2011-124927(P2011-124927)
(32)【優先日】2011年6月3日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-88128(P2012-88128)
(32)【優先日】2012年4月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 憲一
(72)【発明者】
【氏名】武井 拓人
(72)【発明者】
【氏名】井野口 友紀
(72)【発明者】
【氏名】武藤 周子
(72)【発明者】
【氏名】真邉 知佳
【合議体】
【審判長】
内藤 伸一
【審判官】
前田 佳与子
【審判官】
穴吹 智子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−24623(JP,A)
【文献】
特表2005−514342(JP,A)
【文献】
特開2008−63321(JP,A)
【文献】
特表2010−538674(JP,A)
【文献】
特表2004−520848(JP,A)
【文献】
Fragr.J.,2010年,Vol.38,No.3,pp.15−21
【文献】
J.Cosmet.Sci.,2006年,Vol.57,pp.1−10
【文献】
皮膚の化学,2002年,第1巻,第5号,pp.355−362
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物中1〜3質量%のタウリンを有効成分として含有することを特徴とする、皮膚バリア機能を維持又は改善するための経口用組成物(ただし、グルコサミン及び/又はその塩を含有する経口用組成物を除く)。
【請求項2】
組成物中1〜3質量%のタウリンを有効成分として含有することを特徴とする、老化による皮膚バリア機能の低下を抑制又は改善するための経口用組成物(ただし、グルコサミン及び/又はその塩を含有する経口用組成物を除く)。
【請求項3】
水性飲料である請求項1又は2に記載の経口用組成物。
【請求項4】
pHが2.5〜7.0である請求項3に記載の経口用組成物。
【請求項5】
経口用組成物中に有効成分として1〜3質量%のタウリンを配合することを含む、皮膚バリア機能を維持又は改善する作用を経口用組成物に付与する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正常な皮膚においては皮膚バリア機能を維持し、破壊された皮膚においては皮膚バリア機能を修復する作用を有する経口用組成物に関する。より詳しくは、タウリンを有効成分とし、主に老化に伴う皮膚バリア機能の低下を抑制し、低下した皮膚バリア機能を正常なレベルに回復させるとともに、皮膚バリア機能が破壊された場合にはその機能を修復する作用を有する経口用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の柔軟性及びその機能は、角質層の含水分の影響を受けることが知られている。老化した皮膚では、表皮、真皮ともに細胞数が減少し、代謝機能が低下し、その結果、角質層の水分保持機能が低下して、皮膚が菲薄化した状態になり、柔軟性及び弾力性を失って、荒れ肌様の状態になるものと考えられている。
【0003】
このような皮膚の状態を指称して「皮膚バリア機能が低下した状態」と言うことがある。皮膚バリア機能とは、角質層が水分を保持する能力のことであり、これが低下すると、皮膚表面が乾燥し易くなって、種々の細菌、アレルゲン、刺激因子などが侵入しやすくなるという問題を生じることがある。この皮膚バリア機能は、皮膚の角質層水分量や経表皮水分蒸散量(TEWL)を指標として評価されるが(非特許文献1参照)、皮膚バリア機能が異常をきたす典型的な疾患であるアトピー性皮膚炎患者において、各指標を健常人と比較すると、角質層水分量について約5分の1、経皮水分蒸散量について約4倍になるとの報告がある(非特許文献2参照)。
【0004】
また、皮膚バリア機能が低下すると、シワが発生することが知られている(非特許文献3参照)。シワの状態を評価するために、マウスに紫外線を連続照射しシワを誘発するモデルや、ミネラルや脂肪酸を欠乏させた特殊飼料をマウスに給餌してシワを誘発するモデルが知られている(非特許文献4及び5参照)。
【0005】
そして、このような老化した皮膚の改善剤としては、NMF(Natural Moisturizing Factor)と呼称される成分、あるいは、コラーゲン、ヒアルロン酸といった成分を配合した化粧料、外用剤が数多く提供されているが、皮膚バリア機能の維持や改善に極めて有効な組成物は未だ提供されていないというのが実状である。
【0006】
一方、タウリン(2−アミノエタンスルホン酸)は、分子量125.15の単純な化学構造をもつ含硫アミノ酸で、タンパク質を構成するアミノ酸とは異なり、ビタミン類やホルモンのような作用、さらには脳神経系、循環系、肝胆系をはじめとした様々な薬理作用を示すことが知られている(非特許文献6参照)。このように生理活性物質として注目され、広汎に利用されてきたタウリンであるが、これを経口用組成物に配合し、皮膚バリア機能の維持・改善剤として提供されたという報告はない。
【0007】
なお、シワは、加齢による自然老化と紫外線等による光老化により、皮膚組織の弾力性が低下することによって起こることが知られている(非特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】田上 八朗、2004、角層バリア機能と皮膚保湿機能の研究、フレグランスジャーナル 32(9)、10-16
【非特許文献2】Takahashi, M., Ikezawa, Z., 1999. Dry skin in atopic dermatitis and patients on hemodialysis, Dry skin and moisturizers. Chemistry and Function. USA 135-146.
【非特許文献3】市橋 正光、2004、皮膚の老化とシワ形成、フレグランスジャーナル 32(5)、24-30
【非特許文献4】森脇 繁、2004、線維芽細胞エラスターゼ活性阻害剤のシワ改善効果、フレグランスジャーナル 32(5)、46-51
【非特許文献5】Fujii, M., Tomozawa, J., Mizutani, N., Nabe, T., Danno, K., Hohno, S., 2005. Atopic dermatitis-like pruritic skin inflammation caused by feeding a special diet to HR-1 hairless mice. Exp Dermatol 14(6), 460-468.
【非特許文献6】薩秀夫、2007、タウリンの多彩な生理作用と動態、化学と生物 45(4)、273-281
【非特許文献7】堀井 和泉、2001、しわ発生メカニズムとその改善、香粧会誌 25(2)、91-95
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、老化に基因する皮膚バリア機能の低下を抑制し、又は、老化に基因して破壊された皮膚バリア機能の修復を促進するとともに、老化に基因するシワを予防又は改善する作用を有する、新しいタイプの経口用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、皮膚の構成成分に関与する因子が老化によってどのように変化するかの検討を通じて、老化とともに皮膚中のタウリン量が減少するということを見出した。
【0011】
そこで、皮膚バリア機能が低下したマウスにタウリンを経口投与し、皮膚の角層水分量や経表皮水分蒸散量(TEWL)の測定によって当該マウスの皮膚バリア機能を評価したところ、タウリンの作用により、皮膚バリア機能の低下が抑制されたり、皮膚バリア機能が向上したり、破壊された皮膚バリア機能が修復されるという知見を得た。
【0012】
また、老化に基因するシワの生成を抑制し、又は、生成したシワを改善する作用も有するとの知見を得た。
【0013】
かかる知見より得られた本発明の態様は、次のとおりである。
(1)タウリンを有効成分として含有することを特徴とする、皮膚バリア機能を維持又は改善するための経口用組成物。
(2)タウリンを有効成分として含有することを特徴とする、老化による皮膚バリア機能の低下を抑制又は改善するための経口用組成物。
(3)タウリンを有効成分として含有することを特徴とする、老化によるシワを予防又は改善するための経口用組成物。
(4)水性飲料である前記(1)〜(3)に記載の経口用組成物。
(5)pHが2.5〜7.0である前記(4)に記載の経口用組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、老化に伴う皮膚バリア機能の低下を抑制し、又は、破壊された皮膚バリア機能の修復を促進するとともに、老化に基因するシワを予防又は改善する作用を有する、経口用組成物を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】マウスの表皮におけるタウリン量の老化による変化を示すグラフである。「**」は12週齢時の値に対して、p<0.01であることを示す。
【
図2】マウスの真皮におけるタウリン量の老化による変化を示すグラフである。「**」は12週齢時の値に対して、p<0.01であることを示す。
【
図3】タウリンを経口投与した際の、表皮におけるタウリン量の変化を示すグラフである。「**」は溶媒投与群の値に対して、p<0.01であることを示す。
【
図4】タウリンを経口投与した際の、真皮におけるタウリン量の変化を示すグラフである。
【
図5】タウリンを経口投与した際の、紫外線照射により低下した角層水分量の変化を示すグラフである。群間比較において「*」はp<0.05、「**」はp<0.01であることを示す。
【
図6】タウリンを経口投与した際の、紫外線照射により増加した経皮水分蒸散量の変化を示すグラフである。群間比較において「**」はp<0.01であることを示す。
【
図7】タウリンを経口投与した際の、紫外線照射により発生したシワの変化を示すグラフである。群間比較において「**」はp<0.01であることを示す。
【
図8】紫外線照射によりシワを発生させた後、タウリンを経口投与した際のシワの変化を示すグラフである。群間比較において「**」はp<0.01であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、タウリンを有効成分として含有することを特徴とする、皮膚バリア機能を維持又は改善するための経口用組成物に関する。
【0017】
本発明において「皮膚バリア機能」とは、皮膚の角質層が水分を保持する能力を意味する。皮膚バリア機能の状態は、角質水分量と経表皮水分蒸散量を指標として判断され、皮膚バリア機能が低下すると角質水分量が減少し、経表皮水分蒸散量が増加し、一方、皮膚バリア機能が改善されると角質水分量が増加し、経表皮水分蒸散量が減少するという関係にある。
【0018】
本発明の経口用組成物は、特に、老化による皮膚バリア機能の低下を抑制又は改善するために有効である。ここで言う「老化」には、加齢により生じる自然老化と紫外線等により生じる光老化が含まれるが、本発明の経口用組成物は、いずれの老化による皮膚バリア機能の低下にも適用可能である。
【0019】
本発明の経口用組成物は、皮膚のシワ、特に老化に基因するシワの予防や改善に有効である。
【0020】
本発明の経口用組成物は、医薬組成物あるいは飲食品の形態であり得る。本発明の経口用組成物は、皮膚バリア機能を維持又は改善させる作用を有するため、皮膚バリア機能の低下に起因する症状や病気、例えば、シワなどの予防又は改善(治療)のために経口投与される医薬組成物として、また、皮膚バリア機能を維持又は改善するために日常的に摂取される飲食品として好適に用いることができる。
【0021】
本発明の経口用組成物は、常法により、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤等の内服用固形剤やドリンク剤などの内服液剤として提供することができる。この際、それぞれの形態に相応しい製剤用キャリアが使用されるが、経口投与に適するものであれば特に限定はない。
【0022】
本発明の経口用組成物を医薬組成物として用いる場合には、皮膚バリア機能の維持又は改善に有効な1種もしくは2種以上の他の成分を配合することができる。また、皮膚バリア機能の維持又は改善に有効な他の医薬組成物と併用してもよい。
【0023】
本発明の経口用組成物を飲食品として用いる場合、当該飲食品は、例えば、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、病者用食品、あるいは食品添加物、であり得る。飲食品の具体例としては、ドリンク類、スープ類、乳飲料、清涼飲料水、茶飲料、アルコール飲料、ゼリー状飲料、機能性飲料等の液状製品;食用油、ドレッシング、マヨネーズ、マーガリンなどの油分を含む製品;飯類、麺類、パン類等の炭水化物含有食品;ハム、ソーセージ等の畜産加工食品;かまぼこ、干物、塩辛等の水産加工食品;漬物等の野菜加工食品;ゼリー、ヨーグルト等の半固形状食品;みそ、発酵飲料等の発酵食品;洋菓子類、和菓子類、キャンディー類、ガム類、グミ、冷菓、氷菓等の各種菓子類;カレー、あんかけ、中華スープ等のレトルト製品;インスタントスープ,インスタントみそ汁等のインスタント食品や電子レンジ対応食品等が挙げられる。さらには、粉末、穎粒、錠剤、カプセル剤、液状、ペースト状またはゼリー状に調製された健康飲食品も挙げられる。
【0024】
飲食品の製造は、当該技術分野に公知の製造技術により実施することができる。当該飲食品においては、皮膚バリア機能の維持又は改善に有効な1種もしくは2種以上の成分を配合してもよい。また、皮膚バリア機能の維持又は改善以外の機能を発揮する他の成分あるいは他の機能性食品と組み合わせることによって、多機能性の飲食品としてもよい。
【0025】
タウリンは水溶液中で比較的安定な化合物であることから、本発明の経口用組成物の好適な形態は水性飲料(例えば、ドリンク剤等の内服液剤やドリンク類等の液状製品)であり、特にpHが2.5〜7.0、好ましくは4.5〜6.5に調整された瓶等の容器入りの水性飲料である。服用性等を考慮したpHの調整には、適当なpH調整剤を使用することができる。このようなpH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、グルコン酸、酒石酸、アスコルビン酸、酢酸、リン酸又はそれらの塩が挙げられる。
【0026】
こうして調製された「水性飲料」は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、ガラス製の瓶などに充填して提供される。
【0027】
「タウリン」の含有(配合)量は、経口用組成物中0.1〜10質量%であり、好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは1〜3質量%である。0.1質量%以下では皮膚バリア機能の維持・改善の点から好ましくなく、10質量%を超えると飲料の形態とした場合、タウリンの溶解性の点から好ましくないからである。
【0028】
本発明は、このように、本発明の経口用組成物を対象に投与もしくは摂取させることを特徴とする、対象における皮膚バリア機能を維持又は改善する方法をも提供するものである。また、本発明の経口用組成物を対象に投与することを特徴とする、対象における老化による皮膚バリア機能の低下を抑制又は改善する方法をも提供するものである。さらに、本発明の経口用組成物を対象に投与することを特徴とする、対象における老化によるシワを予防又は改善する方法をも提供するものである。
【0029】
本発明の経口用組成物の製品(医薬品、飲食品)またはその説明書は、皮膚バリア機能を維持又は改善させるために用いられる旨の表示を付したものであり得る。ここで「製品または説明書に表示を付した」とは、製品の本体、容器、包装などに表示を付したこと、あるいは製品の情報を開示する説明書、添付文書、宣伝物、その他の印刷物などに表示を付したことを意味する。皮膚バリア機能を維持又は改善させるために用いられる旨の表示においては、本発明の経口用組成物を投与もしくは摂取することにより皮膚バリア機能が維持又は改善される機序についての情報を含むことができる。また、皮膚バリア機能の低下に起因する症状や病気の予防又は改善のために用いられること、に関する情報を含むことができる。
【実施例】
【0030】
以下に試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0031】
なお、シワの程度はその重傷度から次の4段階の基準で評価した。
【0032】
スコア0:症状なし
スコア1:浅いシワ
スコア2:深いシワ
スコア3:跡が残る深いシワ
試験例1 マウス皮膚中タウリン量の老化(加齢)による変化
5週齢のHR−1系雌性マウス(日本エスエルシー株式会社から購入)を使用し、1群10匹とし、12、24、36及び48週齢時に背部皮膚を摘出して、表皮と真皮を剥離し、HPLC法によって組織中のタウリン量を定量した。
【0033】
その結果、12週齢と比較して、表皮では48週齢において、真皮では24週齢から有意なタウリン量の低下が認められた(
図1及び2参照)。
【0034】
試験例2 タウリン経口投与による皮膚中タウリン量の変化
5週齢のHR−1系雌性マウス(日本エスエルシー株式会社から購入)を使用し、1群10匹とし、32週齢まで飼育した後、3%タウリン水溶液を4週間混水投与した。一方、対照群には精製水を投与した。投与終了後、試験例1と同様に皮膚を採取し、皮膚中のタウリン量を測定した。
【0035】
その結果、タウリン投与群では表皮においてタウリン量の有意な増加が認められた(
図3参照)。
【0036】
試験例3 紫外線照射により低下した皮膚機能に対するタウリン投与の影響
7週齢のHR−1系雄性マウス(日本エスエルシー株式会社から購入)を使用し、1群10匹とし、マウス背部に紫外線(照射量70〜100mJ/cm
2)を週3回、4週間照射した。その間、3%タウリン水溶液を混水投与した。一方、対照群には精製水を投与した。最終投与後に背部皮膚の角層水分量及び経皮水分蒸散量を測定した。
【0037】
その結果、未照射群に対して、紫外線を照射した溶媒投与群で角層水分量の有意な低下、経皮水分蒸散量の有意な増加が認められた。これに対し、タウリン投与群では角層水分量の有意な低下抑制、経皮水分蒸散量の有意な低下作用が認められた(
図5及び6参照)。
【0038】
試験例4 紫外線照射により発生するシワに対する、シワ発生前からのタウリン投与の影響
8週齢のHR−1系雄性マウス(日本エスエルシー株式会社から購入)を使用し、1群9〜10匹とし、マウス背部に紫外線(照射量70〜100mJ/cm
2)を週3回、8週間照射した。その間、3%タウリン水溶液を混水投与した。一方、対照群には精製水を投与した。最終投与後に背部皮膚のシワを上記基準に従って評価し、スコア化した。
【0039】
その結果、未照射群に対して、紫外線を照射した溶媒投与群でシワスコアの有意な増加が認められた。これに対し、タウリン投与群ではシワスコアの有意な低下作用が認められた(
図7参照)。
【0040】
試験例5 紫外線照射により発生したシワに対するタウリン投与の影響
7週齢のHR−1系雄性マウス(日本エスエルシー株式会社から購入)を使用し、1群10匹とし、マウス背部に紫外線(照射量70〜100mJ/cm
2)を週3回、12週間照射した。紫外線照射開始8週間後から(顕著なシワの発生が確認されてから)、3%タウリン水溶液を4週間混水投与した。一方、対照群には精製水を投与した。最終投与後に背部皮膚のシワを上記基準に従って評価し、スコア化した。
【0041】
その結果、未照射群に対して、紫外線を照射した溶媒投与群でシワスコアの有意な増加が認められた。これに対し、タウリン投与群ではシワスコアの有意な低下作用が認められた(
図8参照)。
[総括]
試験例1−3の結果から、タウリンの経口投与により、老化マウスの皮膚中のタウリン量が増加し、それに伴い、皮膚(表皮・真皮)の角層水分量が増加し、経皮水分蒸散量が減少し、老化マウスの皮膚バリア機能が顕著に改善されることが確認された。
【0042】
また、試験例4の結果から、タウリンの経口投与により、老化マウスの皮膚のシワの生成が顕著に抑制されることが確認された。
【0043】
さらに、試験例5の結果から、タウリンの経口投与により、老化マウスの皮膚のシワが顕著に改善されることが確認された。
【0044】
なお、シワの生成には、真皮中のコラーゲンやエラスチンの量的・質的変化が関与していることが知られているため、経口的に摂取された有効成分のタウリンがこれらの変化を抑制することによって、シワの生成を抑制し、又は生成したシワの改善に寄与していると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明により、皮膚バリア機能の低下を抑制し、又は、破壊された皮膚バリア機能の修復を促進するとともに、老化に基因するシワを予防又は改善する作用を有する経口用組成物を、例えば、内服液剤、ドリンク剤等の水性飲料の形態で提供することを通じて、アンチエイジング産業等の発展に貢献することが期待される。