【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業総括実施型研究ERATO、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、「常温」とは25℃のことをいう。
【0013】
<一般式(1)で表される化合物>
本発明のリン光材料は、下記一般式(1)で表される化合物からなることを特徴とする。
【化5】
【0014】
一般式(1)において、R
1〜R
4、R
6〜R
8、R
10a〜R
15a、R
10b〜R
15bは各々独立に水素原子または置換基を表す。置換基の数は特に制限されず、R
1〜R
4、R
6〜R
8、R
10a〜R
15a、R
10b〜R
15bのすべてが無置換(すなわち水素原子)であってもよいが、R
1はアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。R
1〜R
4、R
6〜R
8、R
10a〜R
15a、R
10b〜R
15bのうちの2つ以上が置換基である場合、複数の置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
R
9aは水素原子または水酸基(−OH)を表し、R
9bは水素原子を表すか、あるいはR
9aとR
9bは一緒になってオキソ基(=O)を表す。R
9aとR
9bは一緒になってオキソ基(=O)を表すのが好ましい。
R
5は3級アミノ基を有するアリール基を表す。アリール基としては、炭素数6〜18のアリール基であることが好ましい。炭素数6〜18のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、フルオレニル基、トリフェニレニル基等を挙げることができ、より好ましいアリール基はフェニル基である。アリール基は、少なくとも1つの部位が3級アミノ基で置換されている。アリール基の3級アミノ基で置換された部位以外の部位は、他の置換基によって置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。アリール基に置換し得る他の置換基の説明と好ましい範囲については、下記のR
1〜R
4等がとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。
アリール基が有する3級アミノ基は、アリール基に置換しており、かつ2つの置換基を有するアミノ基である。一般式(1)で表される化合物は、アリール基に3級アミノ基が置換していることにより、エネルギーを吸収した際の項間交差速度が大きくなり、リン光を効率よく発光することができる。アリール基に置換する3級アミノ基の数は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよいが、1つまたは2つであることが好ましく、1つであることがより好ましい。アリール基に2つ以上の3級アミノ基が置換するとき、複数の3級アミノ基は互いに同一であっても異なっていてもよい。また、アミノ基が有する2つの置換基は互いに同一であっても異なっていてもよいが同一であることが好ましい。3級アミノ基が有する置換基の説明と好ましい範囲については、下記のR
1〜R
4等がとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。また、3級アミノ基に置換した置換基は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。3級アミノ基に置換した置換基が互いに結合して形成する環状構造の説明と好ましい例については、下記のR
11とR
12等が互いに結合して形成する環状構造の説明と好ましい例を参照することができる。このうち、3級アミノ基としては、置換もしくは無置換のカルバゾリル基、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、置換もしくは無置換のジアルキルアミノ基であることが好ましい。
【0015】
また、一般式(1)のR
5は、下記一般式(2)〜(8)で表される基であることも好ましい。
【化6】
【0016】
一般式(2)〜(8)において、L
12〜L
18は置換もしくは無置換のアリーレン基を表し、*は一般式(1)におけるステロイド骨格への結合部位を表す。L
12〜L
18が表すアリーレン基としては炭素数6〜18のアリーレン基であることが好ましい。炭素数6〜18のアリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、トリフェニレニレン基等を挙げることができ、より好ましい連結基は1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基であり、さらに好ましい連結基は1,4−フェニレン基である。アリーレン基が置換基を有するときの置換基の説明と好ましい範囲については、下記のR
1〜R
4等がとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。
R
11〜R
20、R
21〜R
28、R
31〜R
38、R
3a、R
3b、R
41〜R
48、R
4a、R
51〜R
58、R
61〜R
68、R
71〜R
78は、各々独立に水素原子または置換基を表す。置換基の数は特に制限されず、R
11〜R
20、R
21〜R
28、R
31〜R
38、R
3a、R
3b、R
41〜R
48、R
4a、R
51〜R
58、R
61〜R
68、R
71〜R
78のすべてが無置換(すなわち水素原子)であってもよい。一般式(2)〜(8)のそれぞれにおいて、R
11〜R
20、R
21〜R
28、R
31〜R
38、R
3a、R
3b、R
41〜R
48、R
4a、R
51〜R
58、R
61〜R
68、R
71〜R
78のうちの2つ以上が置換基である場合、複数の置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0017】
一般式(2)〜(8)に置換基が存在している場合、その置換基は一般式(2)であればR
12〜R
19のいずれかであることが好ましく、一般式(3)であればR
22〜R
27のいずれかであることが好ましく、一般式(4)であればR
32〜R
37、R
3a、R
3bのいずれかであることが好ましく、一般式(5)であればR
42〜R
47のいずれかであることが好ましく、一般式(6)であればR
52〜R
57のいずれかであることが好ましく、一般式(7)であればR
62〜R
67のいずれかであることが好ましく、一般式(8)であればR
72〜R
77のいずれかであることが好ましい。
【0018】
また、一般式(1)のR
5は、下記一般式(9)で表される基であることも好ましい。
【化7】
【0019】
一般式(9)において、*は一般式(1)におけるステロイド骨格への結合部位を表す。
R
81〜R
88は各々独立に水素原子または置換基を表し、R
81〜R
88の少なくとも1つは3級アミノ基を表す。3級アミノ基は、フルオレン環に置換しており、かつ2つの置換基を有するアミノ基である。この3級アミノ基の数は特に制限されず、1つのみであってもよいし、2つ以上であってもよいが、1つまたは2つであることが好ましく、1つであることがより好ましい。3級アミノ基がR
81〜R
88のうちの1つのみであるとき、R
82またはR
83が3級アミノ基であることが好ましく、R
82が3級アミノ基であることがより好ましい。
一方、R
81〜R
88のうちの2つ以上が3級アミノ基であるとき、3級アミノ基は、R
81〜R
84の少なくとも1つと、R
85〜R
88の少なくとも1つであることが好ましい。このとき、3級アミノ基は、R
81〜R
84のうちの1〜3つ、R
85〜R
88のうちの1〜3つであることが好ましく、R
81〜R
84のうちの1または2つ、R
85〜R
88のうちの1または2つであることがより好ましい。R
81〜R
84のうち3級アミノ基の数と、R
85〜R
88のうち3級アミノ基の数は同じであっても異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。R
81〜R
84のうちでは、R
82またはR
83が3級アミノ基であることが好ましく、少なくともR
82が3級アミノ基であることがより好ましい。また、R
85〜R
88のうちでは、R
86またはR
87が3級アミノ基であることが好ましく、少なくともR
87が3級アミノ基であることがより好ましい。一般式(9)で表される基が2つ以上の3級アミノ基を有するとき、複数の3級アミノ基は同一であっても異なっていてもよい。
3級アミノ基が有する2つの置換基は同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。3級アミノ基が有する置換基の説明と好ましい範囲については、下記のR
1〜R
4等がとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。また、3級アミノ基が有する置換基は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。3級アミノ基が有する置換基が互いに結合して形成する環状構造の説明の好ましい例については、下記のR
11とR
12等が互いに結合して形成する環状構造の説明と好ましい例を参照することができる。このうち、3級アミノ基としては、置換もしくは無置換のジアルキルアミノ基であることが好ましい。
【0020】
R
81〜R
88のうち3級アミノ基の置換部位以外は、水素原子または3級アミノ基以外の置換基である。3級アミノ基以外の置換基の数は特に制限されず、R
81〜R
88のうちの、3級アミノ基の置換部位以外の全てが無置換(すなわち水素原子)であってもよい。3級アミノ基以外の置換基が2つ以上であるとき、複数の置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0021】
R
1〜R
4、R
6〜R
8、R
10a〜R
15a、R
10b〜R
15b、R
11〜R
20、R
21〜R
28、R
31〜R
38、R
3a、R
3b、R
41〜R
48、R
4a、R
51〜R
58、R
61〜R
68、R
71〜R
78、R
81〜R
88がとりうる置換基として、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、アミド基、炭素数2〜10のアルキルアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基およびニトロ基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数1〜20のジアルキル置換アミノ基である。さらに好ましい置換基は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。
【0022】
R
11とR
12、R
12とR
13、R
13とR
14、R
14とR
15、R
16とR
17、R
17とR
18、R
18とR
19、R
19とR
20、R
21とR
22、R
22とR
23、R
23とR
24、R
24とR
25、R
25とR
26、R
26とR
27、R
27とR
28、R
31とR
32、R
32とR
33、R
33とR
34、R
35とR
36、R
36とR
37、R
37とR
38、R
3aとR
3b、R
41とR
42、R
42とR
43、R
43とR
44、R
45とR
46、R
46とR
47、R
47とR
48、R
51とR
52、R
52とR
53、R
53とR
54、R
55とR
56、R
56とR
57、R
57とR
58、R
61とR
62、R
62とR
63、R
63とR
64、R
65とR
66、R
66とR
67、R
67とR
68、R
71とR
72、R
72とR
73、R
73とR
74、R
75とR
76、R
76とR
77、R
77とR
78、R
81とR
82、R
82とR
83、R
83とR
84、R
84とR
85、R
85とR
86、R
86とR
87、R
87とR
88は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。環状構造は芳香環であっても脂肪環であってもよく、またヘテロ原子を含むものであってもよく、さらに環状構造は2環以上の縮合環であってもよい。ここでいうヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択されるものであることが好ましい。形成される環状構造の例として、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、シクロヘキサジエン環、シクロヘキセン環、シクロペンタエン環、シクロヘプタトリエン環、シクロヘプタジエン環、シクロヘプタエン環などを挙げることができる。これらの環状構造は置換基で置換されていてもよい。環状構造が置換基で置換されているときの置換基の説明と好ましい範囲については、上記のR
1〜R
4等がとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。
【0023】
R
11〜R
20、R
21〜R
28、R
31〜R
38、R
3a、R
3b、R
41〜R
48、R
4a、R
51〜R
58、R
61〜R
68、R
71〜R
78、R
81〜R
88は、各々独立に上記一般式(2)〜(8)のいずれかで表される基が有する三環構造の残基(L
12〜L
18を単結合に替えた基)であることも好ましい。また、R
11〜R
20、R
21〜R
28、R
31〜R
38、R
3a、R
3b、R
41〜R
48、R
4a、R
51〜R
58、R
61〜R
68、R
71〜R
78、およびR
81〜R
88のうち3級アミノ基の置換部位以外は全てが無置換(すなわち水素原子)であることも好ましい。
【0024】
一般式(1)のR
5は、このうち一般式(2)、(3)、(9)のいずれかで表される基であることが好ましく、一般式(3)で表される基であることがより好ましい。
以下において、R
5の具体例を例示する。*印は一般式(1)におけるステロイド骨格への結合部位を表す。
【化8】
【0025】
より好ましいR
5の具体例を例示する。*印は一般式(1)におけるステロイド骨格への結合部位を表す。
【化9】
【0026】
このうち、R
5は、フェニレン基の4位に無置換のカルバゾリル基が置換した基であることが好ましい。
【0027】
また、以下に、一般式(1)で表される化合物の好ましい例を挙げる。ただし、本発明において一般式(1)で表される化合物は、この具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【化10】
【0028】
以上のような一般式(1)で表される化合物に含まれる水素原子は、その少なくとも一部が重水素原子で置換されていることが好ましい。これにより、一般式(1)で表される化合物が発光するリン光の蓄光寿命をより延長することができる。一般式(1)で表される化合物に重水素原子が含まれている場合、全水素原子数(水素原子数と重水素原子数の合計)に対する重水素原子数の割合が大きい方が、発光するリン光の蓄光寿命は長くなる。もっとも、重水素原子が存在しない場合であってもリン光が観測されるため、リン光材料として有用であることには変わりはない。
重水素原子を含む化合物は、重水素原子を含まない化合物の水素原子を重水素原子で置換することによって得ることができる。また、重水素原子を含む一般式(1)で表される化合物は、その合成原料や合成過程で生じる中間体の水素原子を重水素原子で置換し、この重水素化した合成原料又は中間体から合成することによっても得ることができる。化合物の重水素化は、例えばChem. Soc. Rev. 1997, 26, 401.; Chem. Soc. Rev. 2000, 29, 239に記載の方法を用いて行うことができる。
【0029】
一般式(1)で表される化合物の分子量は、例えば一般式(1)で表される化合物を含む有機層を蒸着法により製膜して利用することを意図する場合には、1500以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、800以下であることがさらにより好ましい。分子量の下限値は、一般式(1)で表される最小化合物の分子量である。
一般式(1)で表される化合物は、分子量にかかわらず塗布法で成膜してもよい。塗布法を用いれば、分子量が比較的大きな化合物であっても成膜することが可能である。
【0030】
本発明を応用して、分子内に一般式(1)で表される構造を複数個含む化合物を、発光材料として用いることも考えられる。
例えば、一般式(1)で表される構造中にあらかじめ重合性基を存在させておいて、その重合性基を重合させることによって得られる重合体を、発光材料として用いることが考えられる。具体的には、一般式(1)のR
1〜R
8、R
10a〜R
15a、R
10b〜R
15bに重合性官能基を含むモノマーを用意して、これを単独で重合させるか、他のモノマーとともに共重合させることにより、繰り返し単位を有する重合体を得て、その重合体を発光材料として用いることが考えられる。あるいは、一般式(1)で表される構造を有する化合物どうしをカップリングさせることにより、二量体や三量体を得て、それらを発光材料として用いることも考えられる。
【0031】
一般式(1)で表される構造を含む繰り返し単位を有する重合体の例として、下記一般式(10)または(11)で表される構造を含む重合体を挙げることができる。
【化11】
【0032】
一般式(10)または(11)において、Qは一般式(1)で表される構造を含む基を表し、L
1およびL
2は連結基を表す。連結基の炭素数は、好ましくは0〜20であり、より好ましくは1〜15であり、さらに好ましくは2〜10である。連結基は−X
11−L
11−で表される構造を有するものであることが好ましい。ここで、X
11は酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子であることが好ましい。L
11は連結基を表し、置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のアリーレン基であることが好ましく、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のフェニレン基であることがより好ましい。
一般式(10)または(11)において、R
101、R
102、R
103およびR
104は、各々独立に置換基を表す。好ましくは、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは炭素数1〜3の無置換のアルキル基、炭素数1〜3の無置換のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子であり、さらに好ましくは炭素数1〜3の無置換のアルキル基、炭素数1〜3の無置換のアルコキシ基である。
L
1およびL
2で表される連結基は、Qを構成する一般式(1)の構造のR
1〜R
8、R
10a〜R
15a、R
10b〜R
15b、一般式(2)の構造のR
11〜R
20のいずれか、一般式(3)の構造のR
21〜R
28のいずれか、一般式(4)の構造のR
31〜R
38、R
3a、R
3bのいずれか、一般式(5)の構造のR
41〜R
48、R
4aのいずれか、一般式(6)の構造のR
51〜R
58のいずれか、一般式(7)の構造のR
61〜R
68のいずれか、一般式(8)の構造のR
71〜R
78のいずれか、一般式(9)の構造のR
81〜R
88のいずれかに結合することができる。1つのQに対して連結基が2つ以上連結して架橋構造や網目構造を形成していてもよい。
【0033】
繰り返し単位の具体的な構造例として、下記式(12)〜(15)で表される構造を挙げることができる。
【化12】
【0034】
これらの式(12)〜(15)を含む繰り返し単位を有する重合体は、一般式(1)の構造のR
1〜R
8、R
10a〜R
15a、R
10b〜R
15bにヒドロキシ基を導入しておき、それをリンカーとして下記化合物を反応させて重合性基を導入し、その重合性基を重合させることにより合成することができる。
【化13】
【0035】
分子内に一般式(1)で表される構造を含む重合体は、一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、それ以外の構造を有する繰り返し単位を含む重合体であってもよい。また、重合体の中に含まれる一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位は、単一種であってもよいし、2種以上であってもよい。一般式(1)で表される構造を有さない繰り返し単位としては、通常の共重合に用いられるモノマーから誘導されるものを挙げることができる。例えば、エチレン、スチレンなどのエチレン性不飽和結合を有するモノマーから誘導される繰り返し単位を挙げることができる。
【0036】
[一般式(1’)で表される化合物]
一般式(1’)で表される化合物は新規化合物である。
【化14】
一般式(1’)において、R
1’〜R
4’、R
6’〜R
8’、R
10a’〜R
15a’、R
10b’〜R
15b’は各々独立に水素原子または置換基を表す。R
5’は3級アミノ基を有するアリール基を表す。R
9a’は水素原子または水酸基(−OH)を表し、R
9b’は水素原子を表すか、あるいはR
9a’とR
9b’は一緒になってオキソ基(=O)を表す。一般式(1’)におけるR
1’〜R
8’、R
9a’〜R
15a’、R
9b’〜R
15b’の説明と好ましい範囲については、一般式(1)で表される化合物の説明を参照することができる。
【0037】
[一般式(1’)で表される化合物の合成方法]
一般式(1’)で表される化合物は、既知の反応を組み合わせることによって合成することができる。例えば、一般式(1’)のR
5'が一般式(3)で表される基であり、L
13が1,4−フェニレン基である化合物は、以下の2つの化合物を反応させることにより合成することが可能である。
【化15】
【0038】
上記の反応式におけるR
1’〜R
4’、R
6’〜R
8’、R
9a’〜R
15a’、R
9b’〜R
15b’、R
21〜R
28の説明については、一般式(1)における対応する記載を参照することができる。Tfはトリフルオロメチルスルホニル基を表す。
上記の反応は、公知のカップリング反応を応用したものであり、公知の反応条件を適宜選択して用いることができる。上記の反応の詳細については、後述の合成例を参考にすることができる。また、一般式(1’)で表される化合物は、その他の公知の合成反応を組み合わせることによっても合成することができる。
【0039】
<リン光材料の応用>
本発明の一般式(1)で表される化合物は、ホスト材料が共存しない単一成分で用いた場合でも、常温下で、リン光を発光し、長い蓄光寿命を得ることができる。特に、固体状態の一般式(1)で表される化合物は、リン光を効率よく発光する。これは、以下の理由によるものと推測される。
すなわち、一般式(1)で表される化合物は、ステロイド骨格と、3級アミノ基を有するアリール基を有しており、3級アミノ基を有するアリール基が励起三重項状態に遷移してリン光を放出する発光部位として機能するものと推測される。しかし、後掲の比較例1の評価結果から示されるように、一般式(1)で表される化合物の発光部位のみから構成される化合物、すなわち3級アミノ基を有する芳香族化合物では蛍光は観測されるものの、リン光の発光は見られない。したがって、一般式(1)で表される化合物では、3級アミノ基を有するアリール基とステロイド骨格との相互作用により、リン光発光のいずれかの過程が促進され、もしくは励起三重項状態の熱失活が抑えられ、リン光発光が発現するものと推測される。さらに、一般式(1)で表される化合物は、複数のシクロ環からなるステロイド骨格を有することにより、固体状態では分子が凝集して集積構造をなす。一般式(1)で表される化合物では、このような分子の凝集がリン光の発光過程で有利に働き、リン光の発光効率を向上させるものと推測される。
このような一般式(1)で表される化合物は、蓄光塗料や有機発光素子を始めとする様々な用途に用いるリン光材料として好適に使用することができる。
以下、一般式(1)で表される化合物からなるリン光材料を適用した蓄光塗料(本発明の蓄光塗料)と、有機発光素子(本発明の有機発光素子)について説明する。
【0040】
[蓄光塗料]
本発明の蓄光塗料は、一般式(1)で表される化合物と溶媒を含有する。
蓄光塗料に含まれる一般式(1)で表される化合物の説明については、上記の説明を参照することができる。
溶媒としては、一般式(1)で表される化合物を溶解することができ、且つ該化合物と反応しないものであれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の極性溶媒および水が挙げられ、これらの混合溶媒も使用できる。
【0041】
一般式(1)で表される化合物の蓄光塗料における含有量は、50質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
蓄光塗料には、必要に応じて添加剤を添加してもよい。添加剤としては、ポリアクリル酸やポリビニルアルコールなどの高分子粘度調整剤等を挙げることができる。
以上のような蓄光塗料は、所望のパターンで塗布され、乾燥されることによって固体状の塗膜として形成される。この塗膜に、常温下で光エネルギーを照射すると、塗膜に含まれる一般式(1)で表される化合物が励起三重項状態に励起された後、リン光を放出しつつ基底状態に戻る。これにより、この蓄光塗料が塗布された領域は持続的に発光し、その平面形状や表示する情報を明確に視認することができる。
【0042】
[有機発光素子]
本発明のリン光材料は、有機発光素子の発光材料としても好適に用いることができる。本発明のリン光材料を用いることにより、発光効率の高い有機発光素子を実現することができる。以下に、有機エレクトロルミネッセンス素子を例にして、その理由を説明する。
【0043】
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、正負の両電極より発光材料にキャリアを注入し、励起状態の発光材料を生成し、発光させる。通常、キャリア注入型の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合、生成した励起子のうち、励起一重項状態に励起されるのは25%であり、残り75%は励起三重項状態に励起される。従って、励起三重項状態からの発光であるリン光を利用するほうが、エネルギーの利用効率が高い。しかしながら、従来の有機化合物からなるリン光材料は、常温下では、励起三重項状態において、励起状態の飽和や励起三重項状態の励起子との相互作用によるエネルギーの失活が起こり、十分な発光効率が得られないという問題があった。これに対して、本発明のリン光材料は、一般式(1)で表される新規な化合物からなり、この化合物は常温下であってもリン光を発光し、75%の確率で生成される励起三重項状態のエネルギーを効率よくリン光に変換することができる。このため、本発明のリン光材料を用いることにより、蛍光材料や従来の有機化合物からなるリン光材料を用いる場合に比べて、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率を飛躍的に向上させることができる。
【0044】
このように、本発明の一般式(1)で表される化合物を発光層の発光材料として用いることにより、有機フォトルミネッセンス素子(有機PL素子)や有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの優れた有機発光素子を提供することができる。有機フォトルミネッセンス素子は、基板上に少なくとも発光層を形成した構造を有する。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含むものであり、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層、電子注入層、電子輸送層、励起子阻止層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。具体的な有機エレクトロルミネッセンス素子の構造例を
図1に示す。
図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表わす。
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および各層について説明する。なお、基板と発光層の説明は有機フォトルミネッセンス素子の基板と発光層にも該当する。
【0045】
(基板)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機エレクトロルミネッセンス素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英、シリコンなどからなるものを用いることができる。
【0046】
(陽極)
有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO
2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In
2O
3−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0047】
(陰極)
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0048】
(発光層)
発光層は、陽極および陰極のそれぞれから注入された正孔および電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり、少なくとも本発明の一般式(1)で表される化合物を含有する。本発明の一般式(1)で表される化合物は、単一成分で用いた場合でも、常温下でリン光を発光する。このため、発光層は、ホスト材料を含んでいてもよいが、一般式(1)で表される化合物単独で構成されていてもよい。一般式(1)で表される化合物単独で発光層を構成した場合でも、高い発光効率を得ることができる。発光材料としては、一般式(1)で表される本発明の化合物群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
発光層がホスト材料を含む場合、ホスト材料としては、励起一重項エネルギー、励起三重項エネルギーの少なくとも何れか一方が本発明の発光材料よりも高い値を有する有機化合物を用いることができる。その結果、本発明の発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、本発明の発光材料の分子中に閉じ込めることが可能となり、その発光効率を十分に引き出すことが可能となる。もっとも、一重項励起子および三重項励起子を十分に閉じ込めることができなくても、高い発光効率を得ることが可能な場合もあるため、高い発光効率を実現しうるホスト材料であれば特に制約なく本発明に用いることができる。本発明の有機発光素子または有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光は発光層に含まれる本発明の発光材料から生じる。この発光はリン光発光および蛍光発光の両方を含む。但し、発光の一部或いは部分的にホスト材料からの発光があってもかまわない。
ホスト材料を用いる場合、発光材料である本発明の化合物が発光層中に含有される量は0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、また、50重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
発光層におけるホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。
【0049】
(注入層)
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
【0050】
(阻止層)
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子もしくは正孔)および/または励起子の発光層外への拡散を阻止することができる層である。電子阻止層は、発光層および正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層および電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層または励起子阻止層は、一つの層で電子阻止層および励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
【0051】
(正孔阻止層)
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。正孔阻止層の材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
【0052】
(電子阻止層)
電子阻止層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
【0053】
(励起子阻止層)
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。阻止層を配置する場合、阻止層として用いる材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーの少なくともいずれか一方は、発光材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーよりも高いことが好ましい。
【0054】
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
【0055】
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。使用できる電子輸送層としては例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0056】
有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する際には、一般式(1)で表される化合物を発光層に用いるだけでなく、発光層以外の層にも用いてもよい。その際、発光層に用いる一般式(1)で表される化合物と、発光層以外の層に用いる一般式(1)で表される化合物は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、上記の注入層、阻止層、正孔阻止層、電子阻止層、励起子阻止層、正孔輸送層、電子輸送層などにも一般式(1)で表される化合物を用いてもよい。これらの層の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで作製してもよい。
【0057】
上述のように構成された有機エレクトロルミネッセンス素子は、得られた素子の陽極と陰極の間に電界を印加することにより、そのエネルギーレベルに応じた波長が、リン光として確認される。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。本発明によれば、発光層に一般式(1)で表される化合物を含有させることにより、発光効率が大きく改善された有機発光素子が得られる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子は、さらに様々な用途へ応用することが可能である。例えば、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造することが可能であり、詳細については、時任静士、安達千波矢、村田英幸共著「有機ELディスプレイ」(オーム社)を参照することができる。また、特に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、需要が大きい有機エレクトロルミネッセンス照明やバックライトに応用することもできる。
【実施例】
【0058】
以下に合成例および実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、発光特性の評価は、ソースメータ(ケースレー社製:2400シリーズ)、半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、光パワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、光学分光器(オーシャンオプティクス社製:USB2000)、分光放射計(トプコン社製:SR−3)およびストリークカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334型)を用いて行った。
【0059】
(合成例1) 化合物1(3−[4−(N−カルバゾリルフェニル)]−エストラ− 1, 3, 5(10) −トリエン− 17− オン)の合成
【化16】
【0060】
1,3,5(10)−エストラトリエン−17−オン−3−トリフルオロメタンスルホン酸塩(1.0g,2.57mmol)、4−(9−カルバゾリル)フェニルボロン酸(0.9g,3.13mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.2g,0.17mmol)、炭酸セシウム(3.0g,9.21mmol)、トルエン(50mL)、水(10mL)を、窒素雰囲気下、100℃で24時間加熱した。この反応液を冷却した後、トルエンによる抽出を行い、得られた有機層を減圧乾燥した。乾燥後の有機層を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、ジクロロメタン:ヘキサン=9:1の混合溶媒を展開溶媒に用いて精製した。その後、得られたフラクションを昇華精製することで白色の生成物(化合物1)を、収量0.71g(1.47mmol)、収率57%で得た。
1H−NMR:(500MHz,CDCl
3,25℃):δ(ppm)=8.16{d,2H}7.80{d,2H}7.62{d,2H}7.50−7.41{m,7H}7.30{t,2H}3.05{m,2H}2.56−2.45{m,2H}2.39{td,2H}2.21−2.09{m,3H}2.02{m,1H}1.73−1.52{m,8H}0.95{s, H}
MS(FD):m/z495.7[M]
+
Elemental Analysis: calcd.for C
36H
33NO:C,87.24;H,6.71;N,2.83;found:C,87.28;H,6.69;N,2.85.
【0061】
(実施例1) 化合物1の評価
固体状態の化合物1のサンプルについて、25℃の条件で、330nm励起光による発光スペクトルおよび過渡減衰曲線を測定した。発光スペクトルを
図2に示し、過渡減衰曲線を
図3に示す。
図2より、化合物1は、25℃条件下で、蛍光発光とともにリン光を発光することが確認された。また、
図3より、化合物1の蓄光寿命は0.93秒であり、長寿命であることがわかった。
【0062】
(比較例1) 比較例化合物Aの評価
固体状態の比較化合物Aのサンプルについて、実施例1と同じ条件で発光スペクトルを測定した。その測定結果を、
図4に示す。
図4に示すように、比較化合物Aでは、25℃で化合物1と同様の位置に蛍光発光が認められるものの、リン光の発光は全く認められなかった。
【化17】