特許第6238412号(P6238412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238412
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】農業用作業機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20171120BHJP
   A01B 39/18 20060101ALI20171120BHJP
   A01D 34/64 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   A01C11/02 302Z
   A01B39/18 C
   A01D34/64 C
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-109948(P2014-109948)
(22)【出願日】2014年5月28日
(65)【公開番号】特開2015-223114(P2015-223114A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100469
【氏名又は名称】みのる産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】川口 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 慈郎
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−164937(JP,A)
【文献】 実開昭57−177409(JP,U)
【文献】 特開2004−024077(JP,A)
【文献】 特開昭52−055913(JP,A)
【文献】 実開昭60−182717(JP,U)
【文献】 実開昭48−059608(JP,U)
【文献】 特開平10−262422(JP,A)
【文献】 特開平08−275612(JP,A)
【文献】 特開2003−169512(JP,A)
【文献】 特開平07−213131(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103749051(CN,A)
【文献】 特開2002−345311(JP,A)
【文献】 特開2002−186307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/00−11/04
A01B 51/00−59/06
A01B 39/18−39/19
A01D 34/00−34/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪および後輪を有する車体と、
前記前輪と前記後輪との間に配置される作業部と、
を備え、
前記作業部は、
後端に対して前端を上下に揺動可能なスイングアームと、
前記スイングアームの前記前端に接続される作業部本体と、
を有し、
前記車体は、
前記スイングアームの前記後端と接続される車体側連結部と、
前記後端と前記前端との間において、前記スイングアームに上下方向の変位を与える昇降機構と、
を有し、
前記車体に対して、ユニット化された前記作業部が、着脱可能に取り付けられる、農業用作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の農業用作業機であって、
前記スイングアームは、前記後端に設けられたアーム側連結部を有し、
前記車体側連結部に対して前記アーム側連結部を、水平に移動させながら接近させることにより、前記車体側連結部に前記アーム側連結部が係止される、農業用作業機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の農業用作業機であって、
前記車体は、
前記前輪と前記後輪との間において、前後方向に延びるフレーム
をさらに有し、
前記作業部は、
前記フレームの下面よりも上側に突出した突出部
を有し、
前記突出部は、前記フレームの下面よりも下側へ折り畳み、スライド、または前記作業部から取り外し可能である、農業用作業機。
【請求項4】
請求項3に記載の農業用作業機であって、
前記作業部は、圃場に苗を移植する移植ユニットであり、
前記突出部は、移植前の苗を載置する苗載台の上部である、農業用作業機。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の農業用作業機であって、
前記作業部本体の底部に取り付けられるキャスター
をさらに有する、農業用作業機。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の農業用作業機であって、
前記車体側連結部は、
前記スイングアームの前記後端に設けられた固定軸を、上側または下側から係止するフック
を有する、農業用作業機。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の農業用作業機であって、
前記車体は、
動力源と、
前記動力源から得られる動力により回転する車体側駆動軸と、
を有し、
前記作業部は、
前記スイングアームに沿って延び、前記作業部本体に動力を伝達する作業部側駆動軸
を有し、
前記車体側駆動軸と、前記作業部側駆動軸とが、1回転クラッチを介して接続される、農業用作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前輪と後輪との間に作業部が配置された、ミッドマウント型の農業用作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前輪と後輪との間において苗の移植や除草等の作業を行う、いわゆるミッドマウント型の農業用作業機が知られている。ミッドマウント型の農業用作業機は、車体の後部に設けられた運転座席に着座した作業者が、前を向いたまま、苗の移植や除草等の作業を、目視で確認することができる。したがって、車体の後部に作業部が配置されたリアマウント型の農業用作業機と比べて、作業時の視認性に優れている。
【0003】
従来のミッドマウント型の農業用作業機については、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−000051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のミッドマウント型の農業用作業機では、車体と作業部とを、事後的に着脱することはできなかった。このため、ユーザは、異なる作業を行う複数の農業用作業機を、個別に購入する必要があった。このようなユーザの経済的負担を減らすためには、例えば、車体と作業部とを着脱可能に構成し、1つの車体に対して、複数の作業部を付け替えて使用できるようにすることが、考えられる。
【0006】
ただし、農業用作業機では、圃場上で作業を行うときと、作業前または作業後に車体を移動させるときとで、作業部の高さを変更する必要がある。このため、農業用作業機には、作業部を上下に揺動させるスイングアームが設けられている。このスイングアームは、作業部の種類によって、長さが異なる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、1つの車体に対して、スイングアームの長さが異なる複数の作業部を付け替えて使用することができる、ミッドマウント型の農業用作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、農業用作業機であって、前輪および後輪を有する車体と、前記前輪と前記後輪との間に配置される作業部と、を備え、前記作業部は、後端に対して前端を上下に揺動可能なスイングアームと、前記スイングアームの前記前端に接続される作業部本体と、を有し、前記車体は、前記スイングアームの前記後端と接続される車体側連結部と、前記後端と前記前端との間において、前記スイングアームに上下方向の変位を与える昇降機構と、を有し、前記車体に対して、ユニット化された前記作業部が、着脱可能に取り付けられる
【0009】
本願の第2発明は、第1発明の農業用作業機であって、前記スイングアームは、前記後端に設けられたアーム側連結部を有し、前記車体側連結部に対して前記アーム側連結部を、水平に移動させながら接近させることにより、前記車体側連結部に前記アーム側連結部が係止される
【0010】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の農業用作業機であって、前記車体は、前記前輪と前記後輪との間において、前後方向に延びるフレームをさらに有し、前記作業部は、前記フレームの下面よりも上側に突出した突出部を有し、前記突出部は、前記フレームの下面よりも下側へ折り畳み、スライド、または前記作業部から取り外し可能である。
【0011】
本願の第4発明は、第3発明の農業用作業機であって、前記作業部は、圃場に苗を移植する移植ユニットであり、前記突出部は、移植前の苗を載置する苗載台の上部である。
【0012】
本願の第5発明は、第1発明乃至第4発明のいずれかの農業用作業機であって、前記作業部本体の底部に取り付けられるキャスターをさらに有する。
【0013】
本願の第6発明は、第1発明乃至第5発明のいずれかの農業用作業機であって、前記車体側連結部は、前記スイングアームの前記後端に設けられた固定軸を、上側または下側から係止するフックを有する。
【0014】
本願の第7発明は、第1発明乃至第6発明のいずれかの農業用作業機であって、前記車体は、動力源と、前記動力源から得られる動力により回転する車体側駆動軸と、を有し、前記作業部は、前記スイングアームに沿って延び、前記作業部本体に動力を伝達する作業部側駆動軸を有し、前記車体側駆動軸と、前記作業部側駆動軸とが、1回転クラッチを介して接続される。
【発明の効果】
【0015】
本願の第1発明から第7発明によれば、1つの車体に対して、スイングアームの長さが異なる複数の作業部を付け替えて使用することができる。
【0016】
また、本願の第発明によれば、車体に対して昇降機構を着脱する必要がない。
【0017】
特に、本願の第3発明によれば、突出部を、折り畳み、スライド、または取り外すことによって、フレームの下面よりも上側に突出した部分を無くすことができる。このため、車体を持ち上げることなく、作業部の着脱を行うことができる。
【0018】
特に、本願の第5発明によれば、作業部の着脱時に、車体に対する作業部の水平移動を、容易に行うことができる。
【0019】
特に、本願の第6発明によれば、作業部を水平に移動させながら、固定軸にフックを係止させることができる。
【0020】
特に、本願の第7発明によれば、車体側駆動軸と作業部側駆動軸との位相関係を一定に保つことができる。したがって、作業部の着脱によって、車体側駆動軸に対して作業部側駆動軸の回転のタイミングがずれることを、防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】農業用作業機の側面図である。
図2】農業用作業機の斜視図である。
図3】スイングアームと車体との連結部付近の構造を示す側面図である。
図4】作業部にキャスターを取り付けた農業用作業機の側面図である。
図5】作業部として移植ユニットを取り付けた場合の、農業用作業機の側面図である。
図6】作業部として除草ユニットを取り付けた場合の、農業用作業機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本願では、農業用作業機が進行する方向を「前後方向」とし、前後方向に垂直な水平方向を「左右方向」として、各部の形状や位置関係を説明する。
【0023】
<1.農業用作業機の全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る農業用作業機1の側面図である。図2は、農業用作業機1の斜視図である。図1および図2に示すように、この農業用作業機1は、車体10と、車体10に対して着脱可能に取り付けられる作業部20とを備えている。車体10は、作業者を乗せて、前輪11および後輪12により圃場の上を移動するトラクターである。作業部20は、前輪11と後輪12との間に配置される。すなわち、この農業用作業機1は、車体10の前輪11と後輪12との間に作業部20が配置される、いわゆるミッドマウント型の作業機である。作業部20には、後述する移植ユニット20Aと除草ユニット20Bとを、付け替えて使用することができる。
【0024】
図1および図2に示すように、車体10は、1つの前輪11、2つの後輪12、車体フレーム13、エンジン14、操作部15、運転座席16、および昇降機構17を有する。
【0025】
前輪11は、車体10の前方中央に配置されている。2つの後輪12は、車体10の後方に、左右に間隔をあけて配置されている。前輪11および2つの後輪12の左右方向の位置は、圃場に条植えされた苗を跨ぐように、設定されている。なお、本発明の農業用作業機の車体は、必ずしも1つの前輪と2つの後輪とを有するものでなくてもよい。例えば、農業用作業機の車体が、2つの前輪と2つの後輪とを有していてもよい。
【0026】
車体フレーム13は、前輪11および2つの後輪12によって支持されている。車体フレーム13は、前輪11と後輪12との間において前後方向に延びる梁状の中央フレーム131と、中央フレーム131の後方に位置するエンジンカバー132とを有する。エンジンカバー132の内部には、エンジン14が収容されている。エンジン14は、前輪11、後輪12、および作業部20に動力を供給する動力源である。エンジン14からの動力によって、前輪11および後輪12が回転すると、当該回転に応じて車体10が進行する。
【0027】
操作部15および運転座席16は、車体10の後部中央に設けられている。農業用作業機1の使用時には、作業者が運転座席16に着座して、操作部15に設けられたペダル、ハンドル、レバーなどを操作する。これにより、駆動の開始、停止、進行方向の切り替えなどが行われる。また、運転座席16は、作業部20よりも後方に配置されている。このため、運転座席16に着座した作業者は、作業部20の様子を目視確認しながら、操作部15を操作することができる。
【0028】
昇降機構17は、後述するスイングアーム22に上下方向の変位を与える機構である。本実施形態では、昇降機構17に、シリンダ本体171とピストンロッド172とを有する油圧シリンダが用いられている。シリンダ本体171は、中央フレーム131またはエンジンカバー132の下面に、前後に回動可能に取り付けられている。エンジン14を起動させると、エンジン14により駆動される油圧ポンプ(図示省略)からシリンダ本体171内へ、オイルが供給される。ピストンロッド172は、シリンダ本体171内に導入されるオイルの圧力に応じて、伸縮する。
【0029】
作業部20は、車体10に対して着脱可能に取り付けられる。図1および図2に示すように、作業部20は、圃場に対して所定の作業を行う作業部本体21と、作業部本体21を支持するスイングアーム22とを有する。なお、図1および図2では、作業部本体21が二点鎖線で示されている。
【0030】
スイングアーム22は、前後方向に平行に延びる一対のリンク部材223により、構成されている。昇降機構17のピストンロッド172の下端部は、スイングアーム22の前端221と後端222との間に、回動可能に接続される。圃場上で作業を行うときには、操作部15からの指示に基づいて、昇降機構17のピストンロッド172を伸長させる。そうすると、スイングアーム22の前端221が降下して、作業部20が圃場に接触する。一方、作業を行うことなく車体10を移動させるときには、操作部15からの指示に基づいて、昇降機構17のピストンロッド172を縮める。そうすると、スイングアーム22の前端221が上昇して、作業部20が地面から離れる。
【0031】
作業部本体21は、スイングアーム22の前端221に接続される。この農業用作業機1では、作業部本体21とスイングアーム22とが、ユニット化されている。そして、ユニット化された作業部20を、車体10に対して着脱することができる。このため、1つの車体10に対して、スイングアーム22の長さが異なる複数の作業部20を、付け替えて使用することができる。これにより、作業部20の種類に応じた昇降幅で、作業部本体21を昇降させることができる。
【0032】
ただし、本実施形態では、スイングアーム22を揺動させるための昇降機構17は、作業部20側ではなく、車体10側に設けられている。このため、車体10に対して昇降機構17を着脱する必要はない。このようにすれば、作業部20を付け替えるたびに、油圧ポンプとシリンダ本体171とを、接続し直す必要がない。したがって、作業部20の交換作業が容易となる。
【0033】
図3は、スイングアーム22と車体10との連結部付近の構造を示す側面図である。図3に示すように、スイングアーム22の後端222には、アーム側連結部23が設けられている。また、車体10は、スイングアーム22の後方位置に、車体側連結部18を有している。そして、これらのアーム側連結部23と車体側連結部18とが、着脱可能に連結される。
【0034】
本実施形態のアーム側連結部23は、上下に配置された上側固定軸231および下側固定軸232を有する。上側固定軸231および下側固定軸232は、それぞれ、左右方向に水平に延びる円柱状の軸である。一方、車体側連結部18は、上下に配置された上側フック181および下側フック182を有する。
【0035】
車体10に作業部20を取り付けるときには、図3中の白抜き矢印のように、上側固定軸231および下側固定軸232を、後方へ水平に移動させる。そして、上側固定軸231の圧力または別途設けられたレバー(図示省略)の操作により、上側フック181を下方へ回動させる。これにより、上側固定軸231に対して上側フック181を、上側から係止させる。また、下側固定軸232の圧力または別途設けられたレバーの操作により、下側フック182を上方へ回動させる。これにより、下側固定軸232に対して下側フック182を、下側から係止させる。
【0036】
本実施形態の上側フック181および下側フック182には、トグルクランプ機構が用いられている。各フック181,182は、一旦固定軸231,232に係止すると、逆方向へ回動しにくい構造となっている。これにより、アーム側連結部23と車体側連結部18とが、しっかりと固定される。
【0037】
また、車体側連結部18は、上側フック181と下側フック182との間に、駆動出力部183を有する。駆動出力部183は、エンジン14から得られる動力により回転する車体側駆動軸19の端部に、設けられている。一方、アーム側連結部23は、上側固定軸231と下側固定軸232との間に、駆動入力部233を有する。駆動入力部233は、スイングアーム22に沿って延びる作業部側駆動軸24の後端に、設けられている。
【0038】
車体側連結部18とアーム側連結部23とを連結させるときには、上述した固定軸231,232に各フック181,182を係止させるのと同時に、図3中の黒塗り矢印のように、駆動出力部183と駆動入力部233とを、互いに連結する。これにより、車体側駆動軸19の回転駆動力が、作業部側駆動軸24へ伝達可能となる。作業部側駆動軸24へ伝達された回転駆動力は、作業部本体21における種々の動作を実現するために、用いられる。
【0039】
なお、駆動出力部183および駆動入力部233には、1回転クラッチ機構を用いることが好ましい。1回転クラッチ機構を介して、車体側駆動軸19と作業部側駆動軸24とを接続すれば、車体側駆動軸19と作業部側駆動軸24との位相関係を、一定に保つことができる。したがって、作業部20の着脱によって、車体側駆動軸19に対して作業部側駆動軸24の回転のタイミングがずれることを、防止できる。
【0040】
また、作業部20の着脱時には、図4のように、作業部本体21の底部に、車輪251を有するキャスター25を取り付けることが、好ましい。キャスター25を取り付ければ、作業部20を水平に移動させることが容易となる。したがって、車体側連結部18に対してアーム側連結部23を、水平に移動させながら接近させて、上下の固定軸231,232に各フック181,182を係止させることができる。
【0041】
<2.作業部として移植ユニットを取り付けた例>
図5は、作業部20として移植ユニット20Aを取り付けた場合の、農業用作業機1の側面図である。この移植ユニット20Aは、苗箱90において栽培された水稲のポット苗を、苗箱90から取り出して、圃場である水田へ移植する装置である。移植ユニット20Aは、中央フレーム131の左右に配置された一対の移植部30を有する。図5に示すように、各移植部30は、苗載台31、複数の押し出し棒32、苗搬送機構33、および植え付け部34を有する。
【0042】
苗載台31は、苗箱90を載置するスロープ状の台である。作業者は、移植前のポット苗9の苗箱90を、苗載台31に載置することにより、移植部30に苗箱90を供給する。苗載台31に載置された苗箱90は、苗載台31に設けられた搬送機構(図示省略)によって、斜め下側へ搬送される。
【0043】
複数の押し出し棒32は、苗載台31の下端部付近に配置されている。複数の押し出し棒32は、苗載台31の後方から前方へ突出することにより、苗載台31に保持されたポット苗9を、一列ずつ前方へ押し出す。苗搬送機構33は、苗箱90から押し出された複数のポット苗9を受け取り、それらのポット苗9の姿勢を反転させつつ、搬送ベルト(図示省略)上にポット苗9を移載する。その後、搬送ベルトが、ポット苗9を水平に左右へ搬送する。
【0044】
植え付け部34は、水平軸を中心として回転する円盤341と、円盤341から外側へ突出した複数の植え付け爪342とを有する。搬送ベルトから排出されたポット苗9は、回転する植え付け爪342によって、下方へ送られ、直立姿勢で圃場に植え付けられる。
【0045】
この移植ユニット20Aの苗載台31は、苗載台下部311と苗載台上部(突出部)312とに分かれている。苗載台下部311と苗載台上部312とは、ヒンジ313によって、回動可能に接続されている。このため、図5中に二点鎖線で示したように、苗載台上部312は、ヒンジ313を中心として、下側へ折り畳むことができる。
【0046】
苗載台上部312を上側へ開いたときには、苗載台31が、中央フレーム131の下面よりも上側へ突出する。これにより、苗箱90を載置する面積を、広くとることができる。一方、苗載台上部312を下側へ折り畳んだときには、苗載台31の全体が、中央フレーム131の下面よりも下側に収まる。このため、上述したキャスター25等を利用して、中央フレーム131の下側において、移植ユニット20Aを左右に移動させることができる。このようにすれば、車体10を持ち上げることなく、移植ユニット20Aの着脱作業を行うことができる。
【0047】
なお、苗載台上部312を、苗載台下部311に沿って上下にスライド移動させるようにしてもよい。また、苗載台上部312を、苗載台下部311から取り外すことができるようにしてもよい。すなわち、苗載台上部312を折り畳み、スライド、または取り外すことによって、苗載台上部312が中央フレーム131の下面よりも上側に突出した状態を、解消することができるようになっていればよい。
【0048】
<3.作業部として除草ユニットを取り付けた例>
図6は、作業部20として除草ユニット20Bを取り付けた場合の、農業用作業機1の側面図である。この除草ユニット20Bは、圃場である水田に生えた雑草を除去する装置である。図6に示すように、除草ユニット20Bは、複数の条間ロータ41と、複数の揺動ツース42とを有する。
【0049】
複数の条間ロータ41は、条植えされた苗の条間に位置するように、左右方向に等間隔に配列されている。各条間ロータ41の外周面には、複数の除草爪411が設けられている。除草作業を行うときには、エンジン14から除草ユニット20Bに伝達される動力により、各条間ロータ41が回転する。このとき、各条間ロータ41は、水平かつ左右に延びる回転軸を中心として、前向き(前進するときの前輪11および後輪12と同じ向き)に回転する。そうすると、各条間ロータ41の除草爪411が、条間の土壌表面に接触することにより、圃場の条間に生えた雑草を、土壌から掻き取る。掻き取られた雑草は、その後、拾い集めてもよいし、放置してもよい。
【0050】
複数の揺動ツース42は、条植えされた苗の株間を除草する機構である。図6に示すように、各揺動ツース42は、針金状の部材により形成されている。また、各揺動ツース42は、土壌に接触する作用部421を有する。作用部421は、上下に蛇行しながら後方へ向けて延びる。除草作業を行うときには、エンジン14から除草ユニット20Bに伝達される動力により、各揺動ツース42が左右に揺動する。すると、各揺動ツース42の作用部421が、株間の土壌表面に接触することにより、苗の周辺に生えた雑草を掻き出す。掻き出された雑草は、その後、拾い集めてもよいし、放置してもよい。
【0051】
本実施形態の除草ユニット20Bは、その全体が、中央フレーム131の下面よりも下側に位置する。したがって、図4のようなキャスター25を取り付ければ、除草ユニット20Bを容易に左右に水平移動させることができる。したがって、車体10を持ち上げることなく、除草ユニット20Bの着脱作業を行うことができる。ただし、除草ユニット20Bに中央フレーム131の下面よりも上側へ突出した突出部がある場合には、当該突出部を、中央フレーム131の下面よりも下側へ、折り畳み、スライド、または取り外すことができるようにしてもよい。
【0052】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0053】
上記の実施形態では、1つの車体に、水稲用の移植ユニットと水田用の除草ユニットとを付け替える場合について説明した。しかしながら、車体に着脱される作業部は、野菜の苗を圃場に移植するための移植ユニットや、圃場に種を播くための播種ユニット等の他の作業を行う装置であってもよい。
【0054】
また、上記の実施形態では、農業用作業機が、固定軸とそれに係止するフックとを、上下に2組有していた。しかしながら、固定軸およびフックの数は、1組であってもよく、3組以上であってもよい。また、上記の実施形態では、スイングアーム側に設けられた固定軸に、車体側に設けられたフックを係止させていた。しかしながら、車体側に固定軸を設け、スイングアーム側にフックを設けるようにしてもよい。
【0055】
また、上記の実施形態では、スイングアームに上下方向の変位を与える昇降機構が、車体側に設けられていた。しかしながら、昇降機構を作業部のユニットの一部に含め、昇降機構と車体とを着脱できるようにしてもよい。
【0056】
また、農業用作業機の細部の構成については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 農業用作業機
9 ポット苗
10 車体
11 前輪
12 後輪
13 車体フレーム
14 エンジン
15 操作部
16 運転座席
17 昇降機構
18 車体側連結部
19 車体側駆動軸
20 作業部
20A 移植ユニット
20B 除草ユニット
21 作業部本体
22 スイングアーム
23 アーム側連結部
24 作業部側駆動軸
25 キャスター
30 移植部
31 苗載台
32 押し出し棒
33 苗搬送機構
34 植え付け部
41 条間ロータ
42 揺動ツース
90 苗箱
131 中央フレーム
132 エンジンカバー
171 シリンダ本体
172 ピストンロッド
181 上側フック
182 下側フック
183 駆動出力部
231 上側固定軸
232 下側固定軸
233 駆動入力部
311 苗載台下部
312 苗載台上部
図1
図2
図3
図4
図5
図6