(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238417
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】電子構成部分と臨床構成部分の分離を促進する減圧システム、ドレッシング、および方法
(51)【国際特許分類】
A61M 27/00 20060101AFI20171120BHJP
A61M 1/00 20060101ALI20171120BHJP
A61F 13/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
A61M27/00
A61M1/00 150
A61M1/00 161
A61F13/00 301Z
【請求項の数】37
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-503614(P2015-503614)
(86)(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公表番号】特表2015-516197(P2015-516197A)
(43)【公表日】2015年6月11日
(86)【国際出願番号】US2013034472
(87)【国際公開番号】WO2013149078
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月10日
(31)【優先権主張番号】61/616,901
(32)【優先日】2012年3月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508268713
【氏名又は名称】ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】クルサード,リチャード ダニエル ジョン
【審査官】
久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−513003(JP,A)
【文献】
特開2012−051640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
A61F 13/00
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織部位に減圧治療を適用するための減圧ドレッシングにおいて、
吸収材パウチであって:
前記組織部位に減圧を送達するように適合されたマニホールド層、
前記マニホールド層および前記組織部位の少なくとも一方からの液体を吸収するために、前記マニホールド層と流体連通している吸収層、および
前記組織部位において前記減圧を維持するために、前記吸収層と前記マニホールド層とを覆って位置決めされた第1のカバー
を含む吸収材パウチと;
前記吸収材パウチに取り外し可能に結合されたエレクトロニクスパウチであって、
前記吸収層および前記マニホールド層の少なくとも一方を通した前記組織部位との流体連通をもたらすように適合されたポンプ;および
第1のエレクトロニクスカバーおよび第2のエレクトロニクスカバーを有する第2のカバーであって、前記第2のエレクトロニクスカバーは前記第1のエレクトロニクスカバーに結合され、および前記ポンプが前記第1のエレクトロニクスカバーと前記第2のエレクトロニクスカバーとの間に位置決めされており、前記第2のカバーがミシン目およびタブを含み、前記ミシン目は、前記タブへの分離力の適用に応答して裂けるように動作可能であり、それにより、前記吸収材パウチから前記エレクトロニクスパウチを分離する、第2のカバー
を含むエレクトロニクスパウチと
を含むことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項2】
請求項1に記載の減圧ドレッシングにおいて、
前記エレクトロニクスパウチが回路基板を含み;
前記ポンプが前記回路基板に装着され;
前記減圧ドレッシングが、前記回路基板および前記吸収材パウチに結合されたシール部材を含み;および
前記シール部材が、前記ポンプと前記吸収材パウチとの間に流体シールをもたらすことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項3】
請求項2に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記シール部材が気液分離装置を含むことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項4】
請求項2に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記シール部材が臭気フィルターを含むことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項5】
請求項2に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記シール部材が、気液分離装置および炭素フィルターを含むことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項6】
請求項2に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記シール部材がシールリングを含むことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項7】
請求項2に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記シール部材が独立気泡発泡体を含むことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項8】
請求項2に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記シール部材がネオプレンを含むことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項9】
請求項2に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記シール部材が、第1のシーリングコネクタおよび第2のシーリングコネクタを含むことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項10】
請求項1に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記第2のカバーが、第1のカバーコネクタおよび第2のカバーコネクタによって、前記第1のカバーにボンディングされることを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項11】
請求項10に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記第1のカバーコネクタおよび第2のカバーコネクタがポリウレタンを含むことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項12】
請求項1に記載の減圧ドレッシングにおいて、
前記第2のカバーが中間カバー部材によって前記第1のカバーに結合され;
前記中間カバー部材が、前記第1のカバーおよび前記第2のカバーよりも裂けやすく;および
前記エレクトロニクスパウチおよび吸収材パウチが、前記中間カバー部材を引き裂くことによって分離可能であることを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項13】
請求項1に記載の減圧ドレッシングにおいて、さらに、前記第1のカバーと、前記組織部位にあるまたはその付近の組織との間に位置決めされたシーリング層を含むことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項14】
請求項1に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記ポンプが圧電駆動マイクロポンプであることを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項15】
請求項1に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記エレクトロニクスパウチが、さらに、前記エレクトロニクスパウチ内に位置決めされかつ前記ポンプに動作可能に接続されたバッテリーおよび制御エレクトロニクスを含むことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項16】
請求項1に記載の減圧ドレッシングにおいて、さらに、前記第2のカバーにアパーチャを含み、前記ポンプからガスを排気できるようにすることを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項17】
請求項1に記載の減圧ドレッシングにおいて、さらに、前記ポンプの出口ポートと流体連通する臭気フィルターを含むことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項18】
請求項1に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記吸収材パウチがさらに:
前記吸収材パウチから液体が出るのを阻止する気液分離装置と;
前記気液分離装置と前記吸収層との間のダイバータ層であって、前記ポンプからの減圧を前記吸収層に伝達する複数のアパーチャを含むダイバータ層と
を含むことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項19】
請求項18に記載の減圧ドレッシングにおいて、
前記ダイバータ層の表面積が前記第1のカバーの表面積よりも大きく;および
前記第1のカバーの少なくとも一部分が、前記ダイバータ層に接着結合され、かつ前記ダイバータ層の少なくとも一部分が、前記組織部位を囲む組織に結合されていることを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項20】
請求項18に記載の減圧ドレッシングにおいて、さらに、前記ダイバータ層と、前記組織部位を囲む組織との間に位置決めされたシール層を含むことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項21】
請求項1に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記マニホールド層が疎水性であることを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項22】
請求項1に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記吸収層が超吸収性繊維を含むことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項23】
請求項1に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記吸収材パウチがさらに:
前記マニホールド層と流体連通する第1のマニホールド層と;
実質的にガス不透過性材料から形成されたダイバータ層であって、前記吸収層と流体連通する複数の離間したアパーチャを含むダイバータ層と;
前記ダイバータ層と流体連通する第2のマニホールド層と;
前記ポンプに流体が入るのを阻止するために、前記第2のマニホールド層と前記ポンプとの間に位置決めされた気液分離装置と
を含み、
前記吸収層は、前記第1のマニホールド層と流体連通して、前記第1のマニホールド層、前記マニホールド層、および前記組織部位のうちの少なくとも1つからの流体を吸収し;および
前記ポンプは、前記第2のマニホールド層と流体連通し、前記組織部位に減圧を送達することを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項24】
組織部位に減圧治療を適用するための減圧ドレッシングにおいて、
前記組織部位からの液体を吸収する吸収材を有する吸収材パウチと;
前記吸収材パウチを通して前記組織部位に減圧を適用するためのポンプを有し、前記吸収材パウチに取り外し可能に結合されているポンプパウチであって、前記ポンプパウチがミシン目およびタブを含み、前記ミシン目が、前記タブへの分離力の適用に応答して裂けるように動作可能である、ポンプパウチと
を含むことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項25】
請求項24に記載の減圧ドレッシングにおいて、
前記ポンプパウチが回路基板を含み;
前記ポンプが前記回路基板に装着され;
前記減圧ドレッシングが、前記回路基板および前記吸収材パウチに結合されたシール部材を含み;および
前記シール部材が、前記ポンプと前記吸収材パウチとの間に流体シールを提供することを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項26】
請求項25に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記シール部材がシールリングを含むことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項27】
請求項25に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記シール部材が、第1のシーリングコネクタおよび第2のシーリングコネクタを含むことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項28】
請求項24に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記ポンプパウチが、第1のカバーコネクタおよび第2のカバーコネクタによって前記吸収材パウチに結合されることを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項29】
請求項24に記載の減圧ドレッシングにおいて、
前記ポンプパウチが、中間カバー部材によって前記吸収材パウチに結合され;
前記中間カバー部材が、前記ポンプパウチおよび前記吸収材パウチよりも裂けやすく;および
前記ポンプパウチおよび吸収材パウチは、前記中間カバー部材を引き裂くことによって分離可能であることを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項30】
請求項24に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記ポンプが圧電駆動マイクロポンプであることを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項31】
組織部位に減圧治療を適用するための減圧ドレッシングにおいて、
前記組織部位に位置決めされるように適合されたマニホールド層と;
前記マニホールド層と流体連通している吸収層と;
前記吸収層を覆って位置決めされたカバーであって、前記カバーの下方に密閉空間を形成し、前記密閉空間との流体連通を可能にするアパーチャを有するカバーと;
上部シートおよび下部シートを含むエンベロープであって、前記下部シートは前記上部シートに結合され、および上部シートと下部シートとの間にポンプが位置決めされる、エンベロープと;
前記エンベロープと前記カバーとの間の取り外し可能なカップリング部と
を含み、
前記エンベロープがミシン目およびタブを含み、前記ミシン目が、前記タブへの分離力の適用に応答して裂けるように動作可能であることを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項32】
請求項31に記載の減圧ドレッシングにおいて、
前記エンベロープが回路基板を含み;
前記ポンプが前記回路基板に装着され;および
前記減圧ドレッシングが、前記回路基板および前記カバーに結合されたシール部材を含み、前記シール部材が、前記ポンプと前記カバーとの間に流体シールをもたらすことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項33】
請求項32に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記シール部材がシールリングを含むことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項34】
請求項32に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記シール部材が、第1のシーリングコネクタおよび第2のシーリングコネクタを含むことを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項35】
請求項31に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記エンベロープが、第1のカバーコネクタおよび第2のカバーコネクタによって前記カバーに結合されていることを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項36】
請求項31に記載の減圧ドレッシングにおいて、
前記エンベロープが、中間カバー部材によって前記カバーに結合され;
前記中間カバー部材が、前記カバー、前記上部シート、および前記下部シートよりも裂けやすく;および
前記エンベロープおよび吸収材パウチは、前記中間カバー部材を引き裂くことによって分離可能であることを特徴とする、減圧ドレッシング。
【請求項37】
請求項31に記載の減圧ドレッシングにおいて、前記ポンプが圧電駆動マイクロポンプであることを特徴とする、減圧ドレッシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年3月28日出願の米国仮特許出願第61/616,901号の利益を主張するものであり、その全体を本明細書に参照により援用する。
【0002】
本開示は、概して治療システムに関し、より詳細には、限定されるものではないが、効率的に廃棄するために、医療廃棄物とエレクトロニクス廃棄物を分けるのを容易にする減圧創傷ドレッシング、システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
臨床試験および実習から、組織部位に近接して減圧をもたらすことによって、組織部位における新しい組織の成長を増強および加速することが示されている。この現象の適用は多数あるが、減圧を行うことは、創傷の治療においてかなり成功している。この治療(医学界では「陰圧閉鎖療法」、「減圧療法」、または「真空療法」と呼ばれることが多い)はいくつもの利点を提供し、それら利点には、迅速な治癒や肉芽組織の形成加速化が含まれ得る。一般に、減圧が開放創に適用されるとき、減圧は、減圧創傷ドレッシングの多孔質パッドまたは他のマニホールド装置を通して組織に適用される。多孔質パッドは、減圧を組織に分配し、かつ組織から引き出された流体をドレッシングまで運ぶ。減圧療法が完了するときまたは減圧創傷ドレッシングを使用するとき、減圧創傷ドレッシングは組織部位から除去されて、廃棄される。
【発明の概要】
【0004】
例示的実施形態によれば、組織部位に減圧治療を適用するための減圧ドレッシングが、吸収材パウチおよびエレクトロニクスパウチを含む。吸収材パウチは、マニホールドと、吸収層と、第1のカバーとを含む。マニホールド層は、組織部位に減圧を送達するように適合されており、吸収層は、マニホールド層と流体連通して、マニホールド層および組織部位の少なくとも一方からの液体を吸収し、および第1のカバーは、吸収層とマニホールド層とを覆って位置決めされて、組織部位に減圧を維持する。エレクトロニクスパウチは、吸収材パウチに取り外し可能に結合され、かつポンプと第2のカバーとを含む。ポンプは、吸収層およびマニホールド層の少なくとも一方を通して組織部位に流体連通をもたらすように適合され、および第2のカバーは、第1のエレクトロニクスカバーと第2のエレクトロニクスカバーとを有する。第2のエレクトロニクスカバーは第1のエレクトロニクスカバーに結合され、およびポンプは、第1のエレクトロニクスカバーと第2のエレクトロニクスカバーとの間に位置決めされる。
【0005】
別の例示的実施形態は、減圧ドレッシングの廃棄方法を含む。減圧ドレッシングは、吸収材パウチに取り外し可能に結合されたエレクトロニクスパウチを含む。吸収材パウチは、組織マニホールド層と、組織マニホールド層と流体連通する吸収層と、第1のカバーとを含む。この方法は、エレクトロニクスパウチを引っ張って、エレクトロニクスパウチと吸収材パウチとの間の弱化カップリング部に沿って、吸収材パウチからエレクトロニクスパウチを分離させることを含む。
【0006】
別の例示的実施形態によれば、組織部位に減圧治療を適用するための減圧ドレッシングは、吸収材パウチとポンプパウチとを含む。吸収材パウチは、組織部位からの液体を吸収するための吸収材を有し、およびポンプパウチは、吸収材パウチを通して組織部位に減圧を適用するポンプを含む。ポンプパウチは、吸収材パウチに取り外し可能に結合されている。
【0007】
別の例示的実施形態によれば、組織部位に減圧治療を適用するための減圧ドレッシングは、マニホールド層と吸収層とを含む。マニホールド層は、組織部位に位置決めされるように適合され、および吸収層は、マニホールド層と流体連通している。減圧ドレッシングは、吸収層を覆って位置決めされたカバーを含んで、カバーの下方に密閉空間を形成し、およびカバーは、密閉空間と流体連通できるようにするアパーチャを有する。減圧ドレッシングはまた、下部シートに結合された上部シートを含むエンベロープと、上部シートと下部シートとの間に位置決めされたポンプとを含む。減圧ドレッシングは、エンベロープとカバーとの間に、取り外し可能なカップリング部を含む。
【0008】
例示的実施形態の他の特徴および利点は、以下の図面および詳細な説明を参照することにより、明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、組織部位に結合された減圧ドレッシングを含む、減圧を用いて組織部位を治療するためのシステムの例示的実施形態の側面断面図である。
【
図2】
図2は、減圧ドレッシングのエレクトロニクスパウチと吸収材パウチとの間に取り外し可能なカップリング部を含む、
図1の例示的な減圧ドレッシングの側面断面図である。
【
図2A】
図2Aは、ミシン目を含む減圧ドレッシングの一部分の詳細な図である。
【
図4】
図4は、吸収材パウチから分離されているエレクトロニクスパウチを示す、減圧ドレッシングの側面断面図である。
【
図5】
図5は、減圧ドレッシングのエレクトロニクスパウチと吸収材パウチとの間に取り外し可能なカップリング部を有する別の例示的な減圧ドレッシングを示す、側面断面図である。
【
図6A】
図6Aは、中間カバー部材と、第1のシール部材コネクタおよび第2のシール部材コネクタを含むシール部材とを有する減圧ドレッシングの例示的実施形態の側面断面図である。
【
図7】
図7は、第1のカバーコネクタおよび第2のカバーコネクタを含む中間カバー部材を有する例示的な減圧ドレッシングの側面断面図である。
【
図8A】
図8Aは、アーチ形状を有する減圧ドレッシングの例示的実施形態の上面図である。
【
図8B】
図8Bは、ミシン目に沿って吸収材パウチから分離されている、
図8Aの減圧ドレッシングのエレクトロニクスパウチを示す斜視図である。
【
図9】
図9は、第2のエンベロープに取り外し可能に結合された第1のエンベロープを有する減圧ドレッシングの例示的実施形態の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の例示的非限定的な実施形態の詳細な説明において、本明細書の一部をなす添付図面を参照する。これらの例示的実施形態は、当業者が本発明を実施できるようにするのに十分な程度、詳細に説明される。本発明の趣旨または範囲から逸脱せずに、他の実施形態を使用し得ること、および論理的な構造上の、機械的な、電気的な、および化学的な変更がなされ得ることが理解される。当業者が、本明細書で説明する実施形態を実施できるようにするのに必要ではない詳細に関する説明を避けるために、当業者に公知の特定の情報に関する説明を省略し得る。以下の詳細な説明は、限定的ととられるべきではなく、例示的実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0011】
伝統的なドレッシング材で構成された創傷ドレッシングは、一般に、電子部品を含んでいない。しかし、最近のより高度な創傷ドレッシングは、創傷部位に治療を行いかつ創傷部位の状態を監視するために、電子部品を含む。これは、ドレッシングを使用して、ドレッシングを廃棄するときがくると、困難をもたらし得る。生物系廃棄物や医療廃棄物を含む、使用済みの創傷ドレッシングは、法律により、承認された方法によって廃棄することが求められることが多い。例えば、病気を広める危険性を抑えるために医療廃棄物の焼却を法律で義務付けていることがある。同様に、電子部品の廃棄もまた、多くの法域において法律で規定されている。そのような法律は、使用済みの電子部品を分解してリサイクルするか、または環境への影響を最小限に抑えて電子部品を廃棄する設備の整った特定の廃棄物処理センターに送付することを義務付けていることがある。しかしながら、医療廃棄物および電気エレクトロニクス廃棄物(electronic waste)の廃棄に承認された方法は、通常、互いに両立しない。それゆえ、電子部品を含む使用済みの創傷ドレッシングの場合、電子部品は、廃棄前に、医療廃棄物から分離され得る。分離後、使用済みの創傷ドレッシングの医療廃棄物の部分および電気エレクトロニクス廃棄物の部分は、廃棄のために、異なる施設に送付され得る。しかしながら、創傷ドレッシングの構成に依存して、エレクトロニクスを創傷ドレッシングの残りの部分から分離することは、面倒で、実行困難、かつ非衛生的である可能性がある。
【0012】
例示的実施形態は、単一ユニットの機能を果たす創傷ドレッシングを含み、これは、創傷を治療するが、廃棄前に、医療廃棄物を吸収した構成部品から電子部品を分離できるようにする。そのような創傷ドレッシングは、医療廃棄物の適切な廃棄、および電子部品のリサイクリングを可能にする。例示的実施形態はまた、創傷ドレッシングの寿命を延ばすためにバッテリーなどの電子部品を交換する間、創傷ドレッシングが適所に留まることができるようにするために再結合され得る創傷ドレッシングの構成部品を含む。
【0013】
例示的実施形態は、ドレッシングの構成部品間に信頼性の高いシールを有する減圧創傷ドレッシングを提供し、それにより、使用者や介護者を、ドレッシングによって吸収された流体と不必要に接触させることなく、ドレッシングの構成部品をバラバラにし得る。減圧創傷ドレッシングは、廃棄物のタイプ(例えば、医療廃棄物や電気エレクトロニクス廃棄物のような)に依存して、構成部品の簡単かつ適切な廃棄を可能にする。さらに、例示的実施形態は、単一ユニットとしてまたは別個のモジュールとしてのいずれかで製造し得る、統合された創傷ドレッシングと減圧源(すなわち、ポンプ)を提供する。モジュラーシステムの複数の部品は、別個の施設で製造されてもよく、およびシステムの異なる構成部品に異なる滅菌プロセスを用いてもよい。例えば、電子部品を含むドレッシングの部分は、エレクトロニクスを劣化させない、エチレンオキシド、超臨界二酸化炭素、または他の滅菌方法を使用して滅菌され得る。ドレッシングの他の部分は、材料の適合性に依存して、他の方法、例えばガンマ線放射または電子線による滅菌を使用して滅菌され得る。例示的な減圧ドレッシングは、組織部位に減圧をもたらすより典型的なドレッシングによって使用されるように、チューブや導管を介して接続される減圧源または治療ユニットを離して設置する必要性が低減する。例示的な減圧ドレッシングは、内蔵式のドレッシングまたは治療ユニットであり、これは、廃棄の際に、使用者の操作および努力を最小限にして分離できる。
【0014】
一実施形態では、吸収性の減圧ドレッシングは、内蔵減圧源、制御システム、および電源を有する。ここで図面、初めに
図1を参照すると、減圧を用いて組織部位102、例えば、創傷104または創腔を治療するシステム100の例示的実施形態が示されている。組織部位102は、例えば、表皮156を通って皮下組織158まで延在する創傷104、または任意の他の組織部位とし得る。減圧は、一般的に、治療が施されている組織部位における周囲圧力を下回る圧力を指す。ほとんどの場合、この減圧は、患者がいる場所の大気圧を下回る。あるいは、減圧は、組織部位102における静水圧を下回り得る。他に指定のない限り、本明細書で述べる圧力の値は、ゲージ圧である。送達される減圧は、一定であってもまたは変動しても(パターン化またはランダム)よく、連続的にまたは断続的に送達され得る。本明細書での使用に一致して、他に指定のない限り、減圧または真空圧の上昇は、一般に絶対圧の相対的な低下を指す。
【0015】
システム100は、組織部位102に近接して配置するための減圧ドレッシング106を含む。減圧ドレッシング106は、吸収材料を含み、かつ組織部位102へ減圧を送達する能力を有する。減圧ドレッシング106は吸収材パウチ114を含み、この吸収材パウチは、流体的にシールされ、かつ取り外し可能なカップリング部118、またはパウチを空気圧で接続するシール部材154によって、エレクトロニクスパウチ116に機械的に接続または結合されている。本明細書では、語「または」は相互排他性ではない。エレクトロニクスパウチ116および吸収材パウチ114は互いに接合されて、パウチ間のボンディングがしっかりとしているようにする。しっかりとしたボンディングは、エレクトロニクスパウチ116の周囲での高周波溶接とし得る。
図2〜9は同様のシステムを示し、およびそれら図面には、例示的なシステム100に考えられる変形例の一部を示すために、変形例を示す。
【0016】
システム100は、様々な異なるタイプの組織部位102で使用し得る。組織部位102は、骨組織、脂肪組織、筋組織、皮膚組織、脈管組織、結合組織、軟骨、腱、靭帯、体腔、または任意の他の組織を含む、任意のヒト、動物、または他の生物の体の組織とし得る。組織部位102の治療は、流体、例えば滲出液や腹水の除去を含み得る。
【0017】
引き続き
図1を参照すると、減圧ドレッシング106のエレクトロニクスパウチ116は、第1のエレクトロニクスカバー120を第2のエレクトロニクスカバー122に結合することによって形成され、第2のエレクトロニクスカバー122は、エレクトロニクスパウチ116の患者対面側面にある。一実施形態では、1つ以上の従属部品、例えば、エラストマー性フィルムのシートが、第1のエレクトロニクスカバー120および第2のエレクトロニクスカバー122を形成する。エレクトロニクスパウチ116はまた、ポリマーからエレクトロニクスパウチ116を鋳造または成形するなどの他の技術によって形成し得る。
図1のエレクトロニクスパウチ116、またはポンプパウチは、ポンプ108を含む。エレクトロニクスパウチ116の内側には、ポリイミド、フェノールまたは別の好適な材料などのプリント回路基板材料から形成された基板132にポンプ108が装着されている。エレクトロニクスパウチはまた、プロセッサー、電源、および通信システム(図示せず)を含み、これらは、ポンプ108を制御し、ポンプ108に電力を供給し、かつデータを送受信し得る。使用時、ポンプ108は、第2のエレクトロニクスカバー122に結合された基板132のアパーチャ178を通して吸収材パウチ114に減圧を送達する。エレクトロニクスパウチ116の第1のエレクトロニクスカバー120はベント176を含み、ポンプ108からの排気管を減圧ドレッシング106の外側に流体的に結合する。ベント176内に臭気フィルター177が設置されて、減圧ドレッシング106が、創傷104からの臭気を放出しないようにし得る。
【0018】
ポンプ108はマイクロポンプ装置としてもよく、および圧電ポンプ、蠕動ポンプ、または他の小型ポンプなどの多数の形態をとり得る。一実施形態では、ポンプ108は、空洞内に圧力振動を生成しかつポンプ108を通るように流体を動かす音響共振の原理を適用する音響共振ポンプである。ポンプ108は、米国特許出願公開第2009/0240185号明細書(米国特許出願第12/398,904号明細書;2009年3月5日出願)(「Dressing and Method for Applying Reduced Pressure To and Collecting And Storing Fluid from a Tissue Site」)に示されているタイプのマイクロポンプとしてもよく、この文献をあらゆる点において本明細書に援用する。
【0019】
ポンプ108は、患者に不快感を生じることなく、減圧ドレッシング106を組織部位102上に維持できるようにするのに十分に小さくかつ軽量である。マイクロポンプのサイズおよび重量は、減圧ドレッシング106が組織部位102を引っ張ったりまたは他の方法で悪影響を与えたりしないようなものにし得る。例示的一実施形態では、マイクロポンプは、既述したものと同様の圧電アクチュエータを有するディスクポンプとし得る。米国特許出願公開第2009/0087323号明細書および米国特許出願公開第2009/0240185号明細書(これらをあらゆる点において本明細書に参照により援用する)に示されているポンプも参照されたい。代替的なポンプ技術を使用し得ること、および回転、リニア、または他の構成のポンプを使用し得ることを理解されたい。
【0020】
ポンプ108は、十分な流れ特性、減圧特性、および動作寿命特性を有し、減圧治療を連続的に適用できるようにする。流れは、約5〜1000ml/分の範囲にあるとし、および減圧は、約−50〜−200mmHg(−6.6〜−26.6kPa)の範囲にあるとし得る。減圧ドレッシング106の構成、創傷のサイズ、または創傷のタイプに依存して、代替的な範囲を使用し得ることを理解されたい。例示的一実施形態では、複数のポンプが単一のドレッシングに位置決めされて、必要に応じて高い流量または真空レベルを送達し得る。
【0021】
使用時、ポンプ108は減圧を生成し、この減圧は、吸収材パウチ114を経由して組織部位102に送達される。組織部位102に減圧を送達するために、ポンプ108は、基板132のアパーチャ178を通して、または基板132がない場合にはポンプベースのアパーチャを通して、減圧を適用する。
図1の実施形態では、シール部材アパーチャ140を有するシール部材154が、エレクトロニクスパウチ116を吸収材パウチ114に流体的に結合する。シール部材154は、例えば、エレクトロニクスパウチ116の基板132および吸収材パウチ114に結合することによって、流体シールを提供する。他の実施形態では、減圧ドレッシング106はシール部材154を省略し、およびエレクトロニクスパウチ116および吸収材パウチ114は、直接的な結合によって流体的に結合される。組織部位102に減圧を適用すると、吸収材パウチ114は、組織部位102から流体を受け取って保持し得る。
【0022】
一実施形態では、シール部材154は、ポンプ108と吸収材パウチ114との間に空気式シールをもたらすシールリングである。シールリングの一方の側面は、ポンプ108が装着される基板132にボンディングされ、およびシールリングの他方の側面は、吸収材パウチ114にボンディングされ得る。
【0023】
吸収材パウチ114は、ポンプ108からの減圧を組織部位102に適用する。吸収材パウチ114は、マニホールド材から形成されたマニホールド層124を含み、かつ組織部位102に隣接して適用されて減圧を分配する。一般的に、マニホールドは、組織部位102に対して減圧を行ったり、流体を送達したり、または組織部位102から流体を除去したりするのを支援する物体または構造体である。マニホールド層124は、一般に、流体を、マニホールド層124の周りの組織部位102にもたらしかつそこから除去されるように分配させる複数の流路または流れ経路を含む。例示的一実施形態では、流路または流れ経路は相互に接続されて、組織部位102に提供されるまたはそこから除去される流体の分配を改善する。マニホールド層124は、組織部位102と接触して配置されかつ組織部位102に減圧を分配することができる生体適合性材料とし得る。マニホールド層124を形成するために使用される材料の例は、限定されるものではないが、以下を含み得る:流路を形成するように配置された構造要素などを有する材料、例えば、気泡質の発泡体、連続気泡発泡体、多孔性組織集合体、液体、ゲル、および流路を含む、または硬化して流路を含む発泡体;発泡体;ガーゼ;フェルトのマット;または特定の生物学的適用に好適な任意の他の材料。
【0024】
一実施形態では、マニホールド層124は、多孔質発泡体であり、かつ流路の機能を果たす複数の連続気泡または細孔を含む。多孔質発泡体は、Kinetic Concepts,Incorporated(San Antonio、Texas)から入手可能なGranuFoam(登録商標)材などのポリウレタン製の連続気泡の網状発泡体とし得る。場合によっては、マニホールド層124はまた、薬剤、抗菌薬、成長因子、および様々な溶液などの流体を組織部位102に分配するために使用し得る。マニホールド層124内にまたはその上に、吸収材料、ウィッキング材料、疎水性材料、および親水性材料などの他の層が含まれ得る。
【0025】
一実施形態では、マニホールド層124は、ポンプ108によって生成された減圧を分配し、かつ創傷104から滲出液を引き出し得る。滲出液を保持するために、マニホールド層124は、組織部位102から滲出液などの流体を受け取って保持するように機能する吸収層110に結合される。吸収層110は、液体を吸収できる任意の材料から作製し得る。例えば、吸収層110は、超吸収繊維製とし得る。超吸収繊維は、繊維への物理的または化学的な変化と相俟って、液体を保持し得るかまたは液体とボンディングし得る。非限定的な一例では、超吸収繊維は、Technical Absorbents,Ltd.(Grimsby、United Kingdom)からの超吸収繊維(SAF)材を含み得る。吸収層110は、繊維性材料のシートまたはマットとしてもよく、そこに、繊維が組織部位102からの液体を吸収する。繊維を含む吸収層110の構造は、織りであってもまたは不織であってもよい。吸収層110の繊維は、液体と接触するとゲルとなってもよく、それにより、液体を捕捉する。繊維間の空間またはボイドによって、吸収層110に適用される減圧を、吸収層110内におよびそれを通して、伝達し得る。
【0026】
液体(例えば、滲出液)が吸収材パウチ114から逃げてエレクトロニクスパウチ116に入らないようにするために、気液分離装置112、例えば、疎水性フィルターを、吸収層110と吸収材パウチ114の第1のカバーとの間に配置し得る。そのような実施形態では、吸収材パウチ114の第1のカバー126は、シール部材154の周囲に結合されて流体シールを形成する。
【0027】
実施形態では、減圧ドレッシング106と組織部位102の一部分との間に中間マニホールドが適用され得る。中間マニホールドは、減圧ドレッシング106の使用後に患者の体に残ってもよい生体再吸収性材料から構成し得る。好適な生体再吸収性材料は、限定されるものではないが、ポリ乳酸(PLA)とポリグリコール酸(PGA)とのポリマーブレンドを含み得る。ポリマーブレンドはまた、限定されるものではないが、ポリカーボネート、ポリフマレート、およびカプララクトン(capralactone)を含み得る。中間マニホールドは、新しい細胞増殖のための足場としての機能をさらに果たしても、細胞増殖を促進するために中間マニホールドと足場材料が一緒に使用されてもよい。足場は、細胞増殖または組織形成を増進させるまたは促進するのに使用される物体または構造であり、例えば、細胞増殖のテンプレートを提供する三次元の多孔質構造である。足場材料の事例は、リン酸カルシウム、コラーゲン、PLA/PGA、コーラルヒドロキシアパタイト(coral hydroxy apatite)、カーボネート、または加工された同種移植片材料を含む。実施形態では、減圧ドレッシング106はまた、組織部位102とマニホールド層124との間に配置するための界面層、または快適層を含む。
【0028】
吸収材パウチ114は、組織部位102との流体カップリング部を維持して減圧を適用する。そのようなものとして、吸収材パウチ114の周囲は組織部位102に結合されて、密閉空間を形成し得る。このカップリング部によって、組織部位102の周りに流体シールが形成され、これは、取付装置を使用して吸収材パウチ114の第1のカバー126を組織部位102に結合することによって、達成され得る。そのような実施形態では、第1のカバー126は、マニホールド層124または快適層に結合されるので、吸収層110は、組織部位102から取り除かれるときに、構造的完全性を維持する。別の実施形態では、エレクトロニクスパウチ116の第1のエレクトロニクスカバー120および第2のエレクトロニクスカバー122に関して上記で説明したように、第1のカバー126は第2のカバー128に結合される。実施形態では、減圧ドレッシング106が組織部位102に適用されるときに、第2のカバー128は組織部位102に結合されて、流体シールを形成する。組織部位102から減圧ドレッシング106を取り除くとき、第1のカバー126と第2のカバー128との間の結合によって、吸収材パウチ114の層が分離しないようにするので、吸収材パウチ114はユニットとして廃棄され得る。
【0029】
流体シールを維持するために、吸収材パウチ114の第1のカバー126および第2のカバー128、ならびにエレクトロニクスパウチ116の第1のエレクトロニクスカバー120および第2のエレクトロニクスカバー122は、不透過性または半透過性のエラストマー性材料から形成し得る。エラストマー性材料は、エラストマーの特性を有する、または、より一般的に、ゴムのような特性を有するポリマー材料の特性を有する。より具体的には、ほとんどのエラストマーは、100%超の極限伸び、および相当の弾力性を有する。材料の弾力性は、弾性変形から回復する材料の能力を指す。エラストマーの例は、限定されるものではないが、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、ポリウレタン(PU)、EVAフィルム、コ−ポリエステル、およびシリコーンを含む。さらに、ドレッシングシール部材材料の具体例は、シリコーンドレープ、3M Tegaderm(登録商標)ドレープ、Avery Dennison Corporation(Pasadena、California)から入手可能なものなどのポリウレタン(PU)ドレープを含む。減圧ドレッシングは、組織部位102を覆う密閉空間を形成し、ここにポンプ108を含んでもよいし、または含まなくてもよい。エラストマー性材料は、錫製の可撓性のエラストマー性フィルムとし得る。
【0030】
取付装置162を使用して、第1のカバー126または第2のカバー128を患者の表皮または別の中間層、例えばガスケットもしくは追加的なシール装置に結合し得る。取付装置162は多数の形態をとり得る。例えば、取付装置162は、医学的に容認できる感圧接着剤としてもよく、これは、第1のカバー126(または第2のカバー128)の周囲または全てに延在するか、または表皮156を覆う減圧ドレッシング106の患者対面側面の少なくとも一部分を被覆する。
【0031】
上述の通り、減圧ドレッシング106は、エレクトロニクスパウチ116と吸収材パウチ114との間に取り外し可能なカップリング部118を含む。取り外し可能なカップリング部118は、介護者が、エレクトロニクスパウチ116の一部分、例えばタブ130に力を加えることによって、吸収材パウチ114からエレクトロニクスパウチ116を分離できるようにする。そのような取り外し可能なカップリング部の例を、
図2〜4に関して詳細に説明する。
【0032】
ここで
図2〜4を参照すると、減圧ドレッシング206は、取り外し可能なカップリング部218を含み、このカップリング部は、使用後に吸収材パウチ214からエレクトロニクスパウチ216を分離するのを容易にする。取り外し可能なカップリング部218は、第1のボンディング部236と、第1のボンディング部236からオフセットされた第2のボンディング部238とを含む。第1のボンディング部236および第2のボンディング部238は、高周波溶接、超音波溶接、熱溶接、接着、および成形部品ラインを含む、任意の好適なタイプの接合技術、ボンディングまたは結合とし得る。一実施形態では、第1のボンディング部236は、第2のエレクトロニクスカバー222を吸収材パウチ214の第1のカバー226に結合する。第2のボンディング部238は、第1のボンディング部236からオフセットしており、および第1のボンディング部236よりも減圧ドレッシング206の周囲278から離れている。第1のボンディング部236は、吸収材パウチ214からのエレクトロニクスパウチ216の予期せぬ分離が発生しないように、十分に強力である必要がある。第1のボンディング部236は、空気式シールをもたらす溶接または他の接合とし得るが、代わりに、パウチ間の空気式シールは、シール部材254などの第1のボンディング部236の境界内にある別の構成要素または溶接によってもたらされてもよい。ミシン目234が、第1のボンディング部236と第2のボンディング部238との間、すなわち、第1のボンディング部236の内側であるが第2のボンディング部238の外側に、第1のエレクトロニクスカバー220および第2のエレクトロニクスカバー222を貫通して延在する。ミシン目234は離線を提供し、第1のエレクトロニクスカバー220および第2のエレクトロニクスカバー222を引き裂いて吸収材パウチ214からエレクトロニクスパウチ216を分離できるようにする。吸収材パウチ214からのエレクトロニクスパウチ216の分離を容易にするために、第1のエレクトロニクスカバー220は、上述のボンディングタイプのいずれかを使用して第1のエレクトロニクスカバー220にボンディングされたかまたは第1のエレクトロニクスカバー220に一体的に形成されたタブ230を含み得る。あるいは、第1のエレクトロニクスカバー220は、エレクトロニクスパウチ216に分離力を加えることができるようにする孔を含み得る。一実施形態では、タブ230を引くことによって、引き裂きを生じて、ミシン目234の弱化経路に沿って伝搬させ、エレクトロニクスパウチ216を吸収材パウチ214から分離させる。
【0033】
一実施形態では、第1のボンディング部236は、第2のエレクトロニクスカバー222を第1のエレクトロニクスカバー220および第1のカバー226の双方に結合する。別の実施形態では、第1のボンディング部236は、第1のエレクトロニクスカバー220を第2のエレクトロニクスカバー222に結合する。そのような実施形態では、第2のエレクトロニクスカバー222は、第1のカバー226に、ミシン目234の外側の任意の好適な位置において結合し、エレクトロニクスパウチ216がミシン目234に沿って引き裂かれるまで、吸収材パウチ214へのエレクトロニクスパウチ216の結合を維持する。
【0034】
ミシン目234の寸法は、エレクトロニクスパウチ216または吸収材パウチ214を製造するために使用される材料、およびミシン目234の位置に依存する。ミシン目234は、穿孔された領域の強度がパウチ材の引き裂き強度よりも著しく小さくなるように、材料を弱くする必要がある。材料がExopack DEV 09−80AまたはInspire 70980である実施形態では、ミシン目234の寸法は、0.1mmのランドおよび0.1mm〜0.5mmの空間とし得る。
【0035】
図3は、第1のボンディング部236、ミシン目234、および第2のボンディング部238の考えられる配置を示し、および
図4は、ミシン目234に沿って引き裂いた後にエレクトロニクスパウチ216を吸収材パウチ214から分離する方法を示す。分離されると、減圧ドレッシング206の、吸収材パウチ214を保持する部分は、第1のミシン目線234aを有し、およびエレクトロニクスパウチ216は第2のミシン目線234bを有し、これらは分離点を示す。
図2〜4の例示的実施形態では、シール部材254は、エレクトロニクスパウチ216の患者対面側面に結合され、かつ吸収材パウチ214に解放可能に結合されているとして示されている。しかしながら、別の実施形態では、シール部材254は、吸収材パウチ214に結合され、かつエレクトロニクスパウチ216に解放可能に結合されている。
【0036】
実施形態では、シール部材254はシールリングであり、および接着剤を使用してシールリングをポンプ208の基板232に、または吸収材パウチ214の第1のカバー226に結合する。シールリングの表面に適用される接着剤の特性は、パウチが分離されるとき、シールリングが基板232または第1のカバー226のいずれかに接着したままとなるように変えられ得る。シールリングが溶接によって取り付けられている場合、シールリング自体が弱化領域を有して、エレクトロニクスパウチ216が取り除かれるときに引き裂きを促し、エレクトロニクスパウチ216または吸収材パウチ214からシールリングを分離し得る。その後、シールリングは適切に廃棄され得る。シールリングを第1のカバー226の基板232に接着するために使用され得る接着剤は、3M 927などのアクリル系感圧接着剤(PSA)ベースのもの、またはDymax 1201−M−SCなどのUV液状接着剤である。
【0037】
シール部材254は、エレクトロニクスパウチ216および吸収材パウチ214に結合するために各側面が接着剤コーティングされている単一の可撓性材料とし得る。シール部材254はまた、エレクトロニクスパウチ216と吸収材パウチ214との間に流体シールを提供する。可撓性材料は、独立気泡発泡体、例えばネオプレンまたはエチレン酢酸ビニル(EVA)から作製した発泡体とし得る。さらに、可撓性材料は、エレクトロニクスパウチ216と吸収材パウチ214との間に、あるレベルの詰め物を提供し、それにより減圧ドレッシング206に可撓性を追加し得る。実施形態では、シール部材材料は、固体のエラストマー性材料、例えば熱可塑性エラストマー(TPE)、または剛体材料とし得る。接着剤を使用してシール部材254を適所に保持する場合、接着剤の特性は、シール部材254の2つの側面間で変化させられるため、分離する際、シール部材254がエレクトロニクスパウチ216または吸収材パウチ214のいずれかに結合したままとなり得る。
【0038】
別の実施形態では、エレクトロニクスパウチ216は、吸収材パウチ214に直接的に結合する。そのような実施形態では、エレクトロニクスパウチ216または吸収材パウチ214の一部分は、解放特徴、例えばパウチ材の弱化領域、または基板232の解放特徴を含み、パウチの分離を容易にし得る。
【0039】
同時に、
図2〜4は、タブ230を掴んで力を加え、エレクトロニクスパウチ216の周囲で第1のエレクトロニクスカバー220および第2のエレクトロニクスカバー222を引き裂くことによって、介護者が吸収材パウチ214からエレクトロニクスパウチ216を分離し得ることを示す。引き裂きを生じた後、エレクトロニクスパウチ216を掴んで引っ張り、シールリングとし得るシール部材254に圧力を適用し得る。シール部材254がエレクトロニクスパウチ216から分離されたら、エレクトロニクスパウチ216は、吸収材パウチ214から完全に自由になり、およびパウチは別々に廃棄され得る。
【0040】
図5は、多くの点で
図1〜4のドレッシングと同様であるが、第2のエレクトロニクスカバーを省略する減圧ドレッシング306の別の例示的実施形態を示す。実施形態では、吸収材パウチ314の上部層、例えば気液分離装置312は、第1のボンディング部336によって第1のカバー326に結合されている。第1のカバー326は,第1のボンディング部の内側にミシン目334を含む。ミシン目334の内側で、第1のカバー326は、第2のボンディング部338によって第1のエレクトロニクスカバー320に結合される。この実施形態では、第1のカバー326はまた,基板332に結合されて、エレクトロニクスパウチ316の患者対面側面の一部分を形成する。
図1〜4の実施形態と同様に、減圧ドレッシング306は、ミシン目334に沿って引き裂かれて、吸収材パウチ314からエレクトロニクスパウチ316を分離し得る。この実施形態では、タブ330は、単に、第1のエレクトロニクスカバー320の延出部とし得る。
【0041】
図6Aおよび
図6Bは、取り外し可能なカップリング部418によって吸収材パウチ414にエレクトロニクスパウチ416が取り付けられた減圧ドレッシング406の別の例示的実施形態を示す。実施形態では、吸収材パウチ414の第1のカバー426は、シール部材454の近位側面に結合される。シール部材454の対向側面は、第2のエレクトロニクスカバー422またはエレクトロニクスパウチ416の基板432に結合される。さらに、第1のカバー426および第1のエレクトロニクスカバー420(または第2のエレクトロニクスカバー422)は、中間カバー部材450である取り外し可能なカップリング部418によって互いに結合される。中間カバー部材450は、ミシン目を含んでもよいし、またはパウチを形成する材料よりも引き裂くのが容易な材料で形成されてもよく、吸収材パウチ414からのエレクトロニクスパウチ416の分離を容易にし得る。
【0042】
実施形態では、中間カバー部材450は、エレクトロニクスパウチ416と吸収材パウチ414との間に流体シールを提供し、それにより、シール部材454の必要性を軽減する。そのような実施形態では、中間カバー部材450は、吸収材パウチ414とエレクトロニクスパウチ416との間に可撓性を加え得る。中間カバー部材450は、ポンプ408が装着される基板432にボンディングされ、かつ吸収材パウチ414の第1のカバー426にボンディングまたは溶接される。中間カバー部材450を形成する材料は、エレクトロニクスパウチ416が吸収材パウチ414から分離されるとき、いずれかのパウチの完全性が危うくされる前に中間カバー部材450が壊れるように、選択される。別の実施形態では、分離は、中間カバー部材450と吸収材パウチ414との間のボンディング部、または中間カバー部材450とエレクトロニクスパウチ416との間のボンディング部のいずれかで生じる。
【0043】
一実施形態では、シール部材454は、エレクトロニクスパウチ416の基板432に結合された第1のシーリングコネクタ442と、吸収材パウチ414に結合された第2のシーリングコネクタ444とから形成される。第1のシーリングコネクタ442は、第2のシーリングコネクタ444に解放可能に結合される。
図6Bに示すように、第1のシーリングコネクタ442と第2のシーリングコネクタ444との間が解放可能に結合されることによって、パウチが分離されるとき、第1のシーリングコネクタ442はエレクトロニクスパウチ416に結合されたままとなり、および第2のシーリングコネクタ444は吸収材パウチ414に結合されたままとなる。一実施形態では、シール部材454または第2のシーリングコネクタ444は、追加的な要素、例えば気液分離装置446および臭気フィルター448を含む。シール部材454内に気液分離装置446を含むことによって、吸収材パウチ内でのそのような要素の必要性を軽減し、より小型な部品によって、液体(例えば、滲出液)がエレクトロニクスパウチ416に入るのを防止する機能を果たせるようにする。同様に、シール部材454は、チャコールフィルタとし得る臭気フィルター448を含み、それにより、減圧ドレッシング406の別の部分にそのような要素を設置する必要性を軽減し得る。シール部材454は、ポリマー、例えばポリ塩化ビニル(PVC)またはアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)ポリマーで形成し得る。実施形態では、その代わりに、シール部材454は、ポリウレタン、またはパウチカバー材と適合しかつ高周波溶接を使用して溶接可能な別の好適な材料から形成し得る。一実施形態では、シール部材454は、第2のエレクトロニクスカバー422に、または接着剤を使用して基板432に直接、結合する。
【0044】
一実施形態では、壊れやすい接続部片は、エレクトロニクスパウチ416および吸収材パウチ414の双方にしっかりとボンディングされ、シール部材454および中間カバー部材450の双方の機能を果たす。そのような実施形態では、パウチは、壊れやすい接続部片を壊すことによって分離され得る。そのような壊れやすい接続部片は、弱化解放領域を有するプラスチック成形によって製造され、この解放領域は、壊れやすい接続部片を予測可能なおよび制御された方法で壊し得る。壊れやすい接続部片は、射出成形した熱可塑性ポリウレタン(TPU)、例えばShore Aスケールでデュロメータ80を有するPellethane(登録商標)2363−80AEから作製し得る。弱化領域の厚さは、0.05mm〜0.08mmの範囲であり、それにより、エレクトロニクスパウチ416または吸収材パウチ414の損傷または望ましくない分解の危険性なく、制御された引き裂き、または壊しを引き起こすことを可能にし得る。実施形態では、壊れやすい接続部片は、臭気フィルターおよび気液分離装置を含む。壊れやすい接続部片はまた、多孔質ポリマー、例えば、液体および臭気遮断機能を提供するように処理された焼結ポリマーから製造し得る。例えば、壊れやすい接続部片は、液体分離のために疎水性材料を、および臭気制御のために活性炭粒子を含み得る。焼結ポリマー材料の場合、壊れやすい接続部片は、アパーチャを含まず、シールされた外面を有するガス透過性構造であり、壊れやすい接続部片からガスが引き出されて減圧を伝えるようにする。そのような実施形態では、焼結ポリマーから形成された、壊れやすい接続部片の外面は、ガス不透過性コーティングで被覆されて、シールをもたらす必要がある。
【0045】
中間カバー部材450が、解放特徴を有する壊れやすい接続部片である場合、壊れやすい接続部片は、電気的接続を含み得る。電気的接続は、吸収層410の1つ以上のセンサーをエレクトロニクスパウチ416のプロセッサーに電気的に結合し得る。そのような実施形態では、減圧ドレッシング406は、ドレッシングの液体容量、組織部位における機械的圧力や空気圧、創傷のpH、および組織部位の他の特徴を測定するためにセンサーを含み得る。電気的な結合はまた、吸収層410内に装着されて電力を必要とする治療システムに、または、例えば創傷カメラまたは電気的刺激システムを監視する治療システムに、電力をもたらすために使用し得る。そのような実施形態では、RF装置、例えばRFIDアンテナが、減圧ドレッシング406に装着され、かつ壊れやすい接続部片は、関連の電気部品を装着するための追加的な空間を提供し得る。さらに、壊れやすい接続部片は、エレクトロニクスパウチ416から吸収材パウチ414まで複数のチャネルまたはルーメンを提供してもよく、これにより、減圧ドレッシングの特定の領域の圧力を監視できるようにし得る。そのような実施形態では、TRACシステムを使用して、吸収材の飽和、または物質が創傷に送達されている組織部位の他の特徴を判断し得る。そのような実施形態では、減圧ドレッシングは、抗菌薬、鎮痛剤、および洗浄液を送達するように構成し得る。
【0046】
別の実施形態では、中間カバー部材450は、エレクトロニクスパウチ416と吸収材パウチ414との間に流体シールをもたらす接着層である。接着層は、パウチを剥がすことによって、エレクトロニクスパウチ416を吸収材パウチ414から分離できるように構成し得る。
【0047】
あるいは、中間カバー部材450は、ボンディングや溶接などの好適な方法によって、エレクトロニクスパウチ416および吸収材パウチ414に接合されたフィルムとし得る。隣接する材料よりも弱くなるようにフィルムを製造し、それにより、パウチが引き離されるときに、隣接するエレクトロニクスパウチ416および吸収材パウチ414の代わりにフィルムが壊れるようにし得る。あるいは、ひもまたは材料条片などの分離機構がフィルムの下に含まれ、ひもを外側に引くと、ひもまたは条片が巻き出されてフィルムを引き裂き、パウチの分離を促すようにする。
【0048】
図7は、エレクトロニクスパウチ516および吸収材パウチ514を含む減圧ドレッシング506の別の例示的実施形態を示す。実施形態では、減圧は、エレクトロニクスパウチ516のポンプ508からシール部材554を介して吸収材パウチ514へ伝達される。エレクトロニクスパウチ516は、中間カバー部材550によって吸収材パウチ514に結合され、この中間カバー部材は、第1のカバーコネクタ562および第2のカバーコネクタ564などの複数の部品から製造される。第1のカバーコネクタ562および第2のカバーコネクタ564は、異なるポリマーから形成されるため、第1のカバーコネクタ562と第2のカバーコネクタ564との間の粘着力は、流体シールをもたらすように十分に強力であるが、容易に壊れるように十分に弱い。例えば、第1のカバーコネクタ562がポリウレタンから作られる場合、第2のカバーコネクタは、ポリプロピレンまたは高衝撃性ポリスチレンから形成され得る。さらに、第2のカバーコネクタ564は、ポリウレタンから、またはパウチカバー材に適合しかつHF溶接プロセスを使用して溶接可能である別の好適な材料から形成され得る。実施形態では、第1のカバーコネクタ562と第2のカバーコネクタ564との間の流体シールは、コネクタ間の締り嵌めによって得られる。そのようなものとして、第1のカバーコネクタ562および第2のカバーコネクタ546は、流体シールを維持するシーリング面を備えるスナップ嵌めまたはツイストロック特徴を有する嵌合部品とし得る。第1のカバーコネクタ562は、接着剤または溶接によって、または第1のカバー526と一体的に第1のカバーコネクタを形成することによって、吸収材パウチ514の第1のカバー526に結合される。第2のカバーコネクタ564は、同様の方法でエレクトロニクスパウチ516に結合する。
【0049】
第1のカバーコネクタ562および第2のカバーコネクタ564を有する実施形態では、部品の一方、例えば、第1のカバーコネクタ562は、射出成形によって製造され得る。そのため、第2のカバーコネクタ564は、オーバーモールド工程を使用して第1のカバーコネクタ562と組み合わせられる。オーバーモールド工程は、各境界面において使用された接合プロセスに最適にされた異なる材料を使用できるようにする。例えば、第1のカバーコネクタ562は、吸収材パウチ514のポリマー表面へ溶接するのに好適とし得る一方、第2のカバーコネクタ564は、エレクトロニクスパウチ516の表面(例えば、ポリイミドまたはフェノールPCB基板)への接着により適している。
【0050】
第2のカバーコネクタ564を形成するために、第1のカバーコネクタ562は型に入れられ、この型は、第2のカバーコネクタ564を第1のカバーコネクタ562にオーバーモールドすることによって第2のカバーコネクタ564を形成するために使用される。オーバーモールド工程は、第1のカバーコネクタ562と第2のカバーコネクタ564の接合部に部品ライン566を生じる。部品ライン566は、分離力がパウチに適用されると、エレクトロニクスパウチ516が部品ライン566に沿って吸収材パウチ514から分離するように、形成され得る。部品ライン566は、平面としてもよいし、またはシールを高める機械的なインターロック特徴を含んでもよい。インターロック特徴によって流体シールが高められると、第1のカバーコネクタ562と第2のカバーコネクタ564との間のポリマーボンディングは、流体シールの形成のためにあまり重要ではなくなり、弱いボンディングも許容可能となり得る。そのようなものとして、第1のカバーコネクタ562および第2のカバーコネクタ564は、互いに強力なボンディングを形成しない、異種の材料から形成し得る。また、部品ライン566に沿って第1のカバーコネクタ562にコーティングを塗布して、第2のカバーコネクタ564が第1のカバーコネクタ562に永久的にボンディングしないようにしてもよい。このようにして、エレクトロニクスパウチ516が吸収材パウチ514から分離されるまで流体シールを維持するために、第1のカバーコネクタ562は第2のカバーコネクタ564に取り外し可能に結合され得る。
【0051】
第1のカバーコネクタ562と第2のカバーコネクタ564との間の流体シールは、オーバーモールド工程を使用することによって、別の製造プロセスよりも簡単に得られ得る。なぜなら、境界面における製作公差および寸法のばらつきが、オーバーモールド工程によって無効にされるためである。オーバーモールド工程はまた、異種の材料の接合を容易にする。例えば、第1のカバーコネクタ562と第2のカバーコネクタ564との間に硬さの違いがある実施形態では、より軟質のポリマーから形成されたコネクタは、オーバーモールド工程を使用して形成される一方、対向するコネクタは、射出成形プロセスを使用して形成される。
【0052】
異種の材料の使用はまた、分離を促し得る。第1のカバーコネクタ562および第2のカバーコネクタ564が機械的なインターロッキング特徴を含む場合、軟質のコネクタは、より簡単に変形して、硬質のコネクタから分離し得る。別の実施形態では、第1のカバーコネクタ562および第2のカバーコネクタ564の双方が射出成形され、かつ一緒に組立てられて、シールされたカップリング部を提供する。熱可塑性(例えば、熱硬化性ポリマー)以外の材料から製造される、より剛性の部品が製造される実施形態では、他の製造技術を用い得る。
【0053】
実施形態では、吸収材パウチ514は、組織部位において適所に留まる一方、エレクトロニクスパウチ516は除去されて、例えば、ポンプ508の電源を新しくする。ポンプ508の電源がエレクトロニクスパウチ516内で交換されて、エレクトロニクスパウチ516が再び適用されてもよいし、または新しいエレクトロニクスパウチ516と交換されて、減圧ドレッシング506の寿命を延ばしてもよい。
【0054】
図8Aおよび
図8Bは、アーチ形状を有する減圧ドレッシング606の実施形態を示す。アーチ形状は別として、減圧ドレッシング606は、概して、
図1のドレッシングに類似している。例えば、減圧ドレッシング606は、第1のカバー626を有する吸収材パウチ614を含む。吸収材パウチ614は、エレクトロニクスパウチ616内に収容されているポンプから減圧を受け取る。エレクトロニクスパウチ616は、第1のボンディング部636および第2のボンディング部638において吸収材パウチに取り外し可能に結合されている。減圧ドレッシング606は、第2のボンディング部638に隣接してミシン目634を含み、エレクトロニクスパウチ616からの吸収材パウチ614の分離を容易にする。エレクトロニクスパウチ616の第1のカバー620はタブ630を含み、このタブを引っ張ると、ミシン目634に沿った引き裂きを開始して、パウチを分離できる。
【0055】
図9は、追加的な層を含むが上述のドレッシングと多くの点で同様である減圧ドレッシング706の分解図を示す。減圧ドレッシング706は、矩形形状で示すが、組織部位へ適用するために任意の好適な形状を有するように形成し得る。例えば、減圧ドレッシングは、
図8Aおよび
図8Bの減圧ドレッシング606に似るように付形し得る。
【0056】
減圧ドレッシング706は、任意選択的な中間マニホールド768を含み、このマニホールドは、上述の通り組織部位に隣接して配置され得る。減圧ドレッシング706は、第1のカバー726および第2のカバー728を含む。第2のカバー728は第1の側面780および第2の患者対面側面781を有する。第2の患者対面側面781は、解放可能な接着剤で被覆されて、組織部位への適用を容易にし得る。第2のカバー728はまた、減圧を受ける組織部位の一部分(例えば、創傷)を覆うように配置するための治療アパーチャ782を含む。減圧ドレッシング706はまた、マニホールド層724を含み、これは、第1の側面783および第2の患者対面側面784を有する内部分配マニホールドである。使用時、マニホールド層724は、組織部位に減圧を分配する。マニホールド層724の第2の患者対面側面784は、第2のカバー728の第1の側面780に結合される。組織部位からの流体を受け取って保持するように機能する吸収層710が、マニホールド層724に結合される。
【0057】
吸収層710にはダイバータ層770が結合される。ダイバータ層770は、吸収層710およびマニホールド層724に隣接して配置される。ダイバータ層770は、液不透過性材料から形成されるが、複数のアパーチャ785を含む。複数のアパーチャ785は、所望の箇所においてダイバータ層770を通して減圧を伝達できるようにする。ダイバータ層770は、吸収層710に適用されるときの減圧のパターンを制御するのを支援する。減圧は、ダイバータ層770に結合されている第2のマニホールド層772によってダイバータ層770に分配される。アパーチャ785は、吸収層710の複数の部分に減圧を適用するために、パターン状に配置され、吸収層710が組織部位からより多くの流体を吸収するときに、組織部位への減圧の移送を継続する吸収層710の能力を高め得る。ダイバータ層770は第2のマニホールド層772と共に、ダイバータ層を併用しない吸収層710と比較して吸収層710の吸収能および吸収効率が確実に高くなるように作用する。吸収層710全体により良好に液体を分配することによって、ダイバータ層770はまた、減圧ドレッシング706の有効容量を増やしかつ治療時間を長くする。
【0058】
ダイバータ層770は、減圧の伝達および隣接する吸収層の貯蔵能力を高める任意の材料から作製し得る。例えば、ダイバータ層770は、液体およびガスに対し実質的に不透過性でありかつアパーチャ785を通過するように減圧をそらす材料から作製し得る。その代わりにまたはそれに加えて、ダイバータ層770を作製する材料は、ガス透過性と一致する予め決められた透湿度(moisture vapor transfer rate)を有し得る。いずれの例でも、ダイバータ層770は依然として、アパーチャを有しないガス透過性材料によって許されるものよりも多量の液体またはガスを伝達するためのアパーチャのパターンを含み得る。しかしながら、液体ではなくガスに対するダイバータ層770の透過性によって、ドレッシングを通す減圧の伝達を増やす一方、依然として、ダイバータ層770の周囲にまたはその付近に液体の流れを方向付け得ることに留意されたい。
【0059】
この実施形態では、減圧ドレッシング706は、第2のマニホールド層772および第1のカバー726に結合された気液分離装置712を含み、気液分離装置は、第2のカバー728の周囲に結合されている。第1のカバー726は、減圧を受け取るためのアパーチャ788を含む。同時に、第1のカバー726および第2のカバー728は第1のエンベロープ786を形成し、マニホールド層724、吸収層710、ダイバータ層770、第2のマニホールド層772、および気液分離装置712を包み込む。
【0060】
減圧を生成するために、減圧ドレッシング706はポンプ708を含む。ポンプは、基板732に装着され、かつプロセッサー760および電源774に結合される。追加的な電子部品が、所望により、ポンプ708、プロセッサー760、または電源774に結合され得る。基板732は、第1のエレクトロニクスカバー720の間に挿入され、第1のエレクトロニクスカバー720は第2のエレクトロニクスカバーに結合されて第2のエンベロープ787を形成する。第1のエレクトロニクスカバー722はまた、ポンプ708の排気管を外部環境に流体的に結合するためのベント776を含み、およびポンプ708の排気管とベント776との間には臭気フィルターが設置されて、創傷からの臭気が減圧ドレッシング706から逃げないようにし得る。基板732および第2のエレクトロニクスカバー722はまたアパーチャを含み、第1のエンベロープ786への減圧の伝達を容易にする。
【0061】
第2のエンベロープ787は、流体シールをもたらす取り外し可能なカップリング部を使用して第1のエンベロープ786に取り外し可能に結合される。例えば、第2のエレクトロニクスカバー722の一部分は、第2のカバー728の一部分に結合され得る。任意選択的に、シール部材754が、第2のエンベロープ787と第1のエンベロープ786との間に密閉された流体流路を提供する。シール部材754は、ポンプ708によって生成された減圧を、第1のエンベロープ786の層へ伝達して組織部位に適用するためのアパーチャを含む。
【0062】
本発明およびその利点を、特定の例示的非限定的な実施形態に照らして開示したが、添付の特許請求の範囲で定義した本発明の範囲から逸脱せずに、様々な変更、代替、置換、および修正をなし得ることを理解されたい。いずれか1つの実施形態に関連して説明された任意の特徴はまた、任意の他の実施形態にも適用可能であり得ることを理解されたい。
【0063】
上述の利益および利点は、一実施形態に関連し得ること、またはいくつかの実施形態に関連し得ることを理解されたい。「1つの(an)」品目への言及は、1つ以上のそれら品目を指すことをさらに理解されたい。
【0064】
本明細書で説明した方法のステップは、任意の好適な順序で、または適切な場合には同時に実施し得る。
【0065】
適切な場合には、上述の実施形態のいずれかの態様を、説明の任意の他の実施形態の態様と組み合わせて、類似のまたは異なる特性を有しかつ同じまたは異なる問題に対処する別の例を形成することができる。
【0066】
好ましい実施形態の上述の説明は例示にすぎず、当業者は様々な修正をなし得ることを理解されたい。上述の明細書、例、およびデータは、本発明の例示的な実施形態の構造および使用の完全な説明を提供する。本発明の様々な実施形態を、ある程度詳細に、または1つ以上の個々の実施形態を参照して上記で説明したが、当業者は、特許請求の範囲から逸脱せずに、開示の実施形態に多数の修正をなすことができる。