(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シールド掘進機のカッタ盤の外周リング部に、該カッタ盤の径方向に移動自在の状態で前記外周リング部から突出して設けられ、前記外周リング部を保護する保護ビットと、
前記外周リング部に設けられた検出部の摩耗により該外周リング部の摩耗状態を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出された情報に基づいて、前記外周リング部からの前記保護ビットの突出高さを調整する高さ調整手段と、
を備え、
前記検出手段は、前記外周リング部の内周から当該外周リング部の厚さ方向の途中位置である摩耗検出位置まで延びるようにして前記外周リング部に直接形成された穴を含む油圧配管からなる前記検出部を備え、当該検出部が摩耗によって流体圧が低下することで前記外周リング部の摩耗状態を検出する蓄圧式摩耗検出装置である、
ことを特徴とするシールド掘進機のカッタ盤。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0024】
図1は本実施の形態の泥土圧シールド掘進機の内部を側面から透かして見せた構成図、
図2(a)は
図1の泥土圧シールド掘進機のカッタヘッドの正面図、
図2(b)は
図1の泥土圧シールド掘進機の位置Aを矢印で示す方向から見た構成図である。
【0025】
本実施の形態の泥土圧シールド掘進機1は、カッタヘッド(カッタ盤)2により掘削された土砂に添加材を注入して練り混ぜることで不透水性と塑性流動性(自由に変形および移動できる性質)とを持つ泥土を生成し、その泥土をカッタヘッド2と機器本体3との間の室内に充満した状態で掘進することで泥土圧を発生させ、その泥土圧を切羽の土圧に対抗させた状態で掘削坑を構築する機器であり、特に、巨礫が混在する玉石混じり砂礫層や玉石層を含む地山を掘削する場合に好適である。勿論、巨礫が混在しない玉石混じり砂礫層や玉石層あるいは通常の砂礫層に適用しても良い。
【0026】
なお、泥土圧シールド掘進機1の掘削外径は、例えば、5900mm程度である。また、泥土圧シールド掘進機1の機長は、例えば7140mm程度である。また、泥土圧シールド掘進機1の運転は、その後方に配置された後続台車(図示せず)内の運転室内で運転手により制御される。
【0027】
カッタヘッド2は、地山の切羽を掘削する部材であり、カッタヘッド2の周方向に沿って回転自在の状態で機器本体3の前面に設置されている。このカッタヘッド2には、例えば、円盤状のスポークタイプが採用されている。すなわち、
図2(a)に示すように、カッタヘッド2は、中央のハブ部2aと、ハブ部2aから外周に向かって放射状に延びる6本のスポーク部2bと、スポーク部2bの延在方向の中途部同士を結ぶ中間リング部2cと、スポーク部2bの先端部同士を結ぶ外周リング部2dと、これらの部材間に形成された貫通穴2eとを備えている。
【0028】
カッタヘッド2の中央のハブ部2aには、センタービット4aが装着されている。各スポーク部2bには、複数のビット4bが規則的に並んで装着されている。なお、ハブ部2aには、コーンヘッド型のローラビット等のような他の掘削部材が装着される場合もある。また、スポーク部2bには、ビット4bの他に、ローラビット等のような他の掘削部材が装着される場合もある。
【0029】
また、ハブ部2aおよびスポーク部2bには、添加材注入部5a1,5a2,5a3,5a4が設けられている。この添加材注入部5a1〜5a4は、例えばベントナイト系の添加材のような作泥土材をカッタヘッド2の前面の切羽に向けて注入する構成部である。なお、添加材注入部5a1〜5a4の各々から注入される添加材には、ベントナイト系の添加材に代えて気泡材を用いても良いし、ベントナイト系の添加材と気泡材との両方を用いても良い。
【0030】
中間リング部2cにおいて隣接するスポーク部2b,2b間の中央には、制限突起2fが設けられている。カッタヘッド2で掘削された土砂は貫通穴2eを通じて後述のチャンバ6(
図1参照)内に取り込まれるが、制限突起2fは、貫通穴2eの開口面積を規制することで、地中の巨礫や玉石等が貫通穴2eを通じてチャンバ6内に入り込むのを規制する部分である。この制限突起2fの表面にもビット4bが設けられている。
【0031】
外周リング部2dは、カッタヘッド2の径方向に予め決められた厚みを持ち、かつ、掘進方向に予め決められた幅を持つ鋼製板により形成されており、カッタヘッド2の外周を一周するようにリング状に形成されている。
【0032】
この外周リング部2dにおいて切羽側の前面には、複数のビット4cがその刃を外周側に向けた状態で並んで装着されている。また、外周リング部2dの外周面には、例えば2個のコピービット4eが対極する位置に設けられている。このコピービット4eは、急曲線施工時の余堀りや泥土圧シールド掘進機1の姿勢制御等を行う役割を備えている。さらに、外周リング部2dの外周面において、例えば、スポーク部2bの隣接間には、外周リング部2dを保護する保護ビット(
図1、
図2には図示せず)が設けられている。なお、保護ビットに関する構造ついては後ほど詳細に説明する。
【0033】
一方、機器本体3は、
図1に示すように、ガーダー部の前胴プレート3aと、その後方のテール部の後胴プレート3bとを備えている。前胴プレート3aおよび後胴プレート3bは、例えば円筒状の鋼製板により形成されており、機器本体3の外形を形成するとともに、機器本体3の内部に中空空間を形成する部材である。前胴プレート3aと後胴プレート3bとは、前胴プレート3aの後端側において後胴プレート3bの先端の球面軸受部が前胴プレート3aの内周面に接した状態で入り込むことで係合されている。
【0034】
前胴プレート3aの前面側において、その前面から機器本体3の内方に後退した位置には、機器本体3内の中空空間を切羽側と機内側とに分ける隔壁7が設けられている。この隔壁7の切羽側、すなわち、上記カッタヘッド2と隔壁7との間には、上記チャンバ6が設けられ、隔壁7の機内側には、添加材注入部5bと、カッタ駆動体8と、中折れジャッキ9aと、シールドジャッキ9bと、スクリューコンベア10と、土圧検出部11とが設けられている。
【0035】
添加材注入部5bは、機器本体3の外回りやチャンバ6内に向けて添加材を注入する機器であり、添加材注入部5bの注入口を機器本体3の外部に表出させた状態で隔壁7の外周近傍に設けられている。添加材注入部5bから注入される添加材には、例えばベントナイト系の添加材のような作泥土材が使用される。なお、添加材注入部5bから注入される添加材には、ベントナイト系の添加材に代えて気泡材を用いても良いし、ベントナイト系の添加材と気泡材との両方を用いても良い。
【0036】
チャンバ6は、カッタヘッド2により掘削された土砂等が取り込まれる空間である。このチャンバ6内において、隔壁7の前面にはチャンバ6内に突出する円柱状等の練混ぜ翼15a,15bが設けられている一方、カッタヘッド2の背面にはチャンバ6内に突出する円柱状等の練混ぜ翼16a,16bが設けられている。これらの練混ぜ翼15a,15b,16a,16bは、カッタヘッド2の径方向の位置が互いにずれており、カッタヘッド2が回転するとチャンバ6内に入り込んだ土砂とチャンバ6内に注入された添加材とを混合するとともに撹拌する役割を備えている。
【0037】
また、隔壁7の面内中央側に設けられた練混ぜ翼15bは、その先端側からチャンバ6内に向けて添加材を注入する添加剤注入部を兼ねている。この練混ぜ翼15bから注入される添加材には、例えば気泡材が使用される。なお、練混ぜ翼15bから注入される添加材には、気泡材に代えてベントナイト系の添加材を用いても良いし、ベントナイト系の添加材と気泡材との両方を用いても良い。
【0038】
カッタ駆動体8は、カッタヘッド2を回転させる駆動源である。ここでは、カッタ駆動方式として中間支持駆動方式が例示されており、カッタ駆動体8は、
図1に示すように、カッタヘッド2の正面内の中央と外周とのほぼ中央の位置に、カッタヘッド2の周方向に沿って複数個並んで配置されている。
【0039】
中折れジャッキ9aは、前胴プレート3aと後胴プレート3bとを連結するとともに、泥土圧シールド掘進機1の推進方向を修正する機器であり、
図1に示すように、機器本体3内において前胴プレート3aと後胴プレート3bとの境界を跨ぐ位置に、泥土圧シールド掘進機1の周方向に沿って複数個並んで配置されている。この中折れジャッキ9aに圧油を供給し前胴プレート3aと後胴プレート3bとを予め決められた方向および角度に屈折させた状態で泥土圧シールド掘進機1を推進することにより、泥土圧シールド掘進機1の推進方向を制御することが可能になっている。
【0040】
シールドジャッキ9bは、機器本体3の後方に設置されたセグメントSGに反力をとって泥土圧シールド掘進機1を前進させるための推進力を発生させる機器であり、
図1に示すように、機器本体3内において前胴プレート3aと後胴プレート3bとの境界を跨ぐ位置に、
図2(b)に示すように、泥土圧シールド掘進機1の周方向に沿って複数個並んで配置されている。
【0041】
スクリューコンベア10は、チャンバ6内に取り込まれた土砂を機外に排出するための機器であり、
図1に示すように、機器本体3の底部において隔壁7を貫通しチャンバ6内に配置された土砂取込端部10aから機器本体3の後方において機器本体3の高さ方向中央より若干高い位置に配置された排出端部10bに向かって斜め上向きに連続的に延在した状態で設けられている。
【0042】
このスクリューコンベア10には、例えば、回転軸を持たない螺旋状のブレード10cを管内に備えるリボン式のスクリューコンベアが使用されている。回転軸を持つスクリューコンベアの場合は礫等により閉塞し易いのに対して、リボン式のスクリューコンベア10の場合は搬送可能な礫等の最大径を搬送路の半径以上とすることができ、回転軸を持つスクリューコンベアでは搬送し得ないような大きさの礫等をも搬送することができる。これにより、本実施の形態の泥土圧シールド掘進機1においては、スクリューコンベア10で排出可能な大きさの玉石等を破砕せずにチャンバ6内に取り込むことが可能な構成となっている。
【0043】
なお、スクリューコンベア10の排出端部10bには排土管(図示せず)が連結されており、スクリューコンベア10の排出端部10bに搬送された土砂は、排土管を通じてズリ搬出台車(図示せず)等に搬送されるようになっている。
【0044】
土圧検出部11は、チャンバ6内の泥土による圧力を歪ゲージを介して電気信号に変換するセンサ部分であり、その土圧検出面をチャンバ6内に配置した状態で設けられている。泥土圧シールド掘進機1は、土圧検出部11で検出されたチャンバ6内の泥土圧が予め決められた値の範囲になるように管理することで切羽の安定性を維持しながら掘削処理を進めるようになっている。
【0045】
次に、上記した保護ビットに関する構造について
図3〜
図6を参照しながら説明する。
図3は
図1の泥土圧シールド掘進機を構成するカッタヘッドの背面側の要部平面図、
図4(a)は
図3のカッタヘッドの領域RAの拡大要部断面図、
図4(b)は
図4(a)の保護ビットの先端部の拡大要部断面図、
図5(a)は
図4(a)の位置Aを矢印の方向から見たカッタヘッドの外周リング部の要部平面図、
図5(b)は
図5(a)のI−I線の要部断面図、
図6(a),(b)は
図3のカッタヘッドの領域RBの拡大要部断面図である。なお、
図4および
図6の二点鎖線で示す標準線Lsは、掘削作業時に設定される保護ビットの標準の突出高さである。
【0046】
図3に示すように、カッタヘッド2には、保護ビット4dと、ジャッキ(高さ調整手段)20と、摩耗検出装置21の油圧配管(検出部)21aとが配置されている。
【0047】
外周リング部2dを保護する保護ビット4dは、
図3に示すように、例えば、スポーク部2bの隣接間の外周リング部2dに配置されており、
図4および
図5に示すように、支持板4daと、ビット本体4dbとを備えている。支持板4daは、ビット本体4dbを支持する部材であり、例えば、矩形平板状の金属により形成されている。一方、ビット本体4dbは、地山の掘削本体であり、例えば超硬合金により形成されている。このビット本体4dbは、支持板4daの掘削面側の端面に接合されており、その一部が支持板4daの端面から内部に向かって延在した状態で埋設されている。
【0048】
カッタヘッド2の外周リング部2dにおいて保護ビット4dの配置位置には、外周リング部2dの外周面と内周面とを貫通する貫通穴22が設けられている。この貫通穴22は、
図5に示すように、例えば、外周リング部2dの幅方向の長さが、外周リング部2dの周方向の長さよりも長い平面スリット状に形成されている。
【0049】
上記保護ビット4dは、
図3〜
図5に示すように、外周リング部2dの貫通穴22に挿入された状態で、カッタヘッド2の径方向に移動自在の状態で設けられている。この保護ビット4dの後端(掘削側とは反対側の端部)には、ジャッキ20がそのピストン20pの先端を保護ビット4dの後端に接触させた状態で設置されている。
【0050】
ジャッキ20は、摩耗検出装置21で検出された情報に基づいてピストン20pの突出高さを制御することにより、保護ビット4dの突出高さ(すなわち、保護ビット4dの先端部が外周リング部2dの外周面から突出する高さ)を予め決められた高さに設定する装置である。ここでは、ジャッキ20として、例えば、油圧式ジャッキが使用されている。
【0051】
なお、外周リング部2dの内周面側においてその内周面とジャッキ20のピストン20pの端面との間には、保護ビット4dおよび貫通穴22を取り囲むように形成された安装台23が設置されている。
【0052】
摩耗検出装置21は、カッタヘッド2の外周リング部2dの外周面部分が予め決められた量(厚さ)だけ摩耗するとそれを検出する装置である。ここでは、摩耗検出装置21が、例えば、蓄圧式摩耗検出装置により構成されており、油圧配管21Pと、油圧配管21Pに油を供給する油圧回路(図示せず)とを有している。
【0053】
油圧配管21Pは、カッタヘッド2の外周リング部2dの摩耗状態を検出する検出部であり、
図3に示すように、カッタヘッド2の掘削面内の中央からスポーク部2bに沿って延び、スポーク部2bの最外周の外周リング部2dの肉厚内部で終端している。すなわち、油圧配管21Pの先端は、
図6(a)に示すように、外周リング部2dの外周面に達することなく、外周リング部2dの厚さ方向の途中位置(外周リング部2dの外周面から予め決められた厚さ分だけ深い摩耗検出位置)で終端している。
【0054】
油圧回路は、油圧配管21P内に油を供給して油圧配管21P内の油圧を高めるとともに、油圧配管21P内の油圧を計測し、油圧配管21P内の油圧の低下が計測された場合は、その情報を上記運転室内の制御部に送信する回路であり、機器本体3の内部に設けられている。なお、制御部は、油圧配管21P内の油圧が低下した場合、その旨を運転室内の運転モニタに警報として表示するようになっている。
【0055】
ここで、
図6(a)に示すように、カッタヘッド2の外周リング部2dの外周面に摩耗が生じていない場合は油圧配管21P内の油圧が高められているが、掘削作業により、
図6(b)に示すように、外周リング部2dの外周面が摩耗して油圧配管21Pの先端部が露出した場合は油圧配管21Pから油が外部に漏れ油圧配管21P内の油圧が低下する。摩耗検出装置21は、その油圧の低下を検出することにより、外部リング部2dの摩耗状態を検出するようになっている。このように油圧の低下により外周リング部2dの摩耗状態を検出した場合、外因の影響に因る誤検出を低減または防止できるので、外周リング部2dの検出情報の信頼性を向上させることができる。
【0056】
摩耗検出装置21により油圧配管21P内の油圧の低下が計測された場合、外周リング部2dの外周面が予め決められた量(厚さ)分だけ摩耗していると判断され、外周リング部2dの外周面から突出する保護ビット4dの突出部も摩耗していると判断される。そこで、本実施の形態においては、外周リング部2dの摩耗が検出された段階で、ジャッキ20のピストン20pを予め決められた長さだけ延ばすことにより、保護ビット4dの先端部の突出高さを元の標準線Lsの位置まで突出させる。
【0057】
なお、油圧配管21Pは少なくとも1本あれば良いが、ここでは、2本の油圧配管21Pが分散されて配置されている場合が例示されている。複数本の油圧配管21Pを分散して配置することにより、カッタヘッド2の外周リング部2dの摩耗状態を、より正確に把握することができる。また、いずれかの油圧配管21Pに不具合が生じても他の油圧配管21Pが正常であれば外周リング部2dの摩耗状態を検出することができる。
【0058】
次に、
図1の泥土圧シールド掘進機1による泥土圧シールド工法について説明する。
【0059】
本実施の形態の泥土圧シールド掘進機1においては、カッタヘッド2を切羽に押し付け回転させながら機器本体3を推し進めることで地中に掘削抗を構築する。ここでは、例えば、粒径2mm未満の細粒(砂分)が20%を超えず、粒径2mm以上の礫石(礫分)が80%を超える地山が掘削対象とされている。
【0060】
この掘削作業に際して、カッタヘッド2で掘削した土砂に上記添加材を添加するとともに、その土砂と添加材とをカッタヘッド2の回転やその回転に追従する練混ぜ翼16a,16b等の動作により撹拌混合して掘削土砂を塑性流動性と不透水性を持つ泥土に変換する。そして、その泥土をチャンバ6内およびスクリューコンベア10内に充満させ、その充満した泥土をシールドジャッキ9bの推進力により加圧して泥土圧を発生させ、この泥土圧を切羽の土圧に対抗させることで切羽の安定性を維持する。また、例えば、カッタヘッド2の回転速度を一定にし、シールドジャッキ9bの伸長速度やスクリューコンベア10の回転速度を調整し、チャンバ6内の泥土圧を上記土圧検出部11により測定しこれが一定になるようにすることで切羽の安定性を維持する。
【0061】
添加材として加えるベントナイト系の添加材(作泥土材)は、土砂の塑性流動性や不透水性を高める作用を有する上、巨礫を破砕した礫や玉石等の礫分を掘削土砂とともに包み込んで当該礫分が掘削土砂から分離しないように掘削土砂と礫分との一体性を向上させる作用を有している。
【0062】
一方、添加材として加える気泡材は、上記礫分がカッタヘッド2や隔壁7に付着するのを抑制する分離作用を有する上、ベントナイト系の添加材では得られないクッション作用により掘削土砂や作泥土材の圧縮性を高めてチャンバ6内やスクリューコンベア10内で礫分が転がり移動するのを抑制し、また、転がり移動したとしてもクッション作用により泥土圧の急激な変動を抑制する作用を有している。
【0063】
このため、チャンバ6内への取り込みが好ましくないような巨礫が混在する玉石混じり砂礫層や玉石層が存在する地山を掘削する場合でも、泥土圧を安定化することができ、切羽の安定性を維持できる上、スクリューコンベア10による礫分の排土を円滑に移動させて閉塞の発生を防止でき、噴出が発生するのを防止することができる。
【0064】
次に、保護ビット4dの突出高さの調整について
図7を参照しながら説明する。
図7(a),(b)は保護ビットの突出高さ調整作業中のカッタヘッドの要部断面図である。なお、
図7(a),(b)において左側は摩耗検出部を示し、右側は保護ビット配置部を示している。
【0065】
泥土圧シールド掘進機1による掘削作業中にカッタヘッド2の外周リング部2dの外周面が摩耗し、
図7(a)の左側に示すように、摩耗検出装置21の油圧配管21Pの先端部が露出すると、油圧配管21P内の油が外部に漏れるので油圧配管21P内の油圧が低下する。
【0066】
すると、摩耗検出装置21の油圧回路の油圧計で油圧配管21Pの油圧の低下が計測され、その情報が上記後続台車内の運転室の制御部に送信される。制御部では、運転室内の運転モニタに警報を表示する。その結果、外周リング部2dの外周面が予め決められた量(厚さ)分だけ摩耗していると判断され、
図7(a)の右側に示すように、保護ビット4dの突出部も摩耗していると判断される。
【0067】
そこで、本実施の形態においては、外周リング部2dの摩耗が検出された段階で、
図7(b)の右側に示すように、ジャッキ20のピストン20pを予め決められた長さだけ延ばし、保護ビット4dの突出高さを摩耗前の状態、すなわち、標準線Lsの位置まで突出させる。
【0068】
発明者が検討したシールド掘進機においては、保護ビットがカッタヘッドの外周リング部に溶接されているため、保護ビットが摩耗した場合、保護ビットを外周リング部から切り離し、新しい保護ビットを溶接し直さなければならない。また、保護ビットの摩耗状態を切羽に出て直接確認しなければならない。このため、保護ビットの摩耗確認や交換の作業は長時間に渡り掘削作業を中断させるので、シールド掘進機の長距離施工を阻害する要因になっている。
【0069】
特に、シールド掘進機により砂礫層や玉石層等を掘削する場合、カッタヘッドの環境が厳しく、ビットの交換頻度が、カッタヘッドの前面のメインビットの摩耗ではなく、カッタヘッドの外周リング部の保護ビットの摩耗により決定される場合が多い。したがって、環境が厳しい条件下での掘削作業においては、如何にして、カッタヘッドの外周リング部の保護ビットの摩耗確認や交換の頻度を減らし、シールド掘進機の長距離施工を実現するかが重要な課題となっている。
【0070】
これに対して本実施の形態の泥土圧シールド掘進機1においては、保護ビット4dの摩耗状態を切羽に出なくても把握できる。すなわち、保護ビット4dの摩耗の確認作業を無くすことができる。
【0071】
また、保護ビット4dの摩耗が確認されたら保護ビット4dの突出高さを調整することができるので、保護ビット4dの寿命を向上させることができる。このため、環境が厳しい条件下においても保護ビット4dの交換頻度を低減することができる。
【0072】
これらにより環境が厳しい条件下においても泥土圧シールド掘進機1の長距離施工を推進することができる。
【0074】
第2の実施の形態においては、保護ビットの突出高さを多段に調整することが可能な構成例について説明する。
【0075】
図8(a),(b)は第2の実施の形態のカッタヘッドを構成する外周リング部の要部断面図である。なお、
図8(b)では図面を見易くするためハッチングを省略している。
【0076】
本実施の形態においては、カッタヘッド2の外周リング部2dの内部に、終端位置(摩耗検出位置D1,D2)の異なる2つの油圧配管21Pa,21Pbが配置されている。ここでは、外周リング部2dの外周面から油圧配管21Paの先端部までの深さが、油圧配管21Pbの先端部までの深さよりも浅い場合が例示されている。これ以外の構成は前記第1の実施の形態と同じなので説明を省略する。
【0077】
次に、第2の実施の形態における保護ビット4dの突出高さの調整について
図9および
図10を参照しながら説明する。
図9および
図10の(a),(b)は保護ビットの突出高さ調整作業中のカッタヘッドを構成する外周リング部の要部断面図である。なお、
図9および
図10の(a),(b)において左側は摩耗検出部を示し、右側は保護ビット配置部を示している。
【0078】
泥土圧シールド掘進機1による掘削作業中にカッタヘッド2の外周リング部2dの外周面が摩耗し、
図9(a)の左側に示すように、油圧配管21Paの先端部が露出すると、油圧配管21Pa中の油が外部に漏れ油圧配管21Pa内の油圧が低下する。
【0079】
すると、第1の実施の形態と同様に、油圧配管21Pa内の油圧低下の情報が摩耗検出装置21の油圧回路から上記運転室の制御部に送信され、その旨が運転室内の運転モニタに警報として表示される。ここで、外周リング部2dの外周面が予め決められた量(厚さ)分だけ摩耗していると判断され、
図9(a)の右側に示すように、保護ビット4dの突出部も摩耗していると判断される。
【0080】
そこで、本実施の形態においては、外周リング部2dの摩耗が検出された段階で、
図9(b)の右側に示すように、ジャッキ20のピストン20pを予め決められた長さだけ延ばし、保護ビット4dの突出高さを摩耗前の状態の標準線Lsの位置まで突出させる。
【0081】
次いで、保護ビット4dの突出高さを調整した後、泥土圧シールド掘進機1の掘削作業を再開する。この再開後の掘削作業中に再びカッタヘッド2の外周リング部2dの外周面が摩耗し、
図10(a)の左側に示すように、油圧配管21Pbの先端部が露出すると、油圧配管21Pb中の油が外部に漏れ油圧配管21Pb内の油圧が低下する。
【0082】
すると、上記と同様に、油圧配管21Pb内の油圧低下の情報が摩耗検出装置21の油圧回路から上記制御部に送信され、その旨が上記運転モニタに警報として表示される。ここで、外周リング部2dの外周面が予め決められた量(厚さ)分だけ摩耗していると判断され、
図10(a)の右側に示すように、保護ビット4dの突出部も摩耗していると判断される。
【0083】
そこで、本実施の形態においては、外周リング部2dの摩耗が検出された段階で、
図10(b)の右側に示すように、ジャッキ20のピストン20pを予め決められた長さだけさらに延ばし、保護ビット4dの突出高さを標準線Lsの位置まで突出させる。
【0084】
このように本実施の形態においては、保護ビット4dの突出高さを2段階で変えることができるので、保護ビット4dの寿命を第1の実施の形態よりも向上させることができる。このため、環境が厳しい条件下においても保護ビット4dの交換頻度をさらに低減できる。したがって、環境が厳しい条件下においても泥土圧シールド掘進機1の長距離施工をさらに推進することができる。
【0086】
第3の実施の形態においては、保護ビットの構成の変形例について説明する。前記第1、第2の実施の形態では保護ビットの突出高さを油圧式ジャッキにより調整する場合について説明したが、本実施の形態においては、保護ビットの突出高さを作業者により調整する場合について説明する。
【0087】
図11は第3の実施の形態のカッタヘッドを構成する外周リング部の要部断面図である。なお、
図11の左側は摩耗検出部を示し、右側は保護ビット配置部を示している。
【0088】
本実施の形態においては、保護ビット4dの後端部(掘削面側の端部に対して反対側の端部)が台座(高さ調整手段)24に接合されている。この台座24は、例えば2枚のスペーサ板(高さ調整手段)25a,25bを安装台23との間に介在させた状態で安装台(高さ調整手段)23上に支持されている。台座24および各スペーサ板25a,25bは、ボルト(高さ調整手段)26により着脱自在の状態で安装台23に固定されている。
【0089】
スペース板25a,25bの厚さは、外周リング部2dの油圧配管21Pa,21Pbの摩耗検出位置に応じて設定されている。すなわち、スペース板25a,25bの厚さは、外周リング部2dの外周部の摩耗量(厚さ)分だけ、保護ビット4dの先端部(掘削面側の端部)が外周リング部2dの外周面から突出されるように設定されている。
【0090】
次に、第3の実施の形態における保護ビット4dの突出高さの調整について
図12および
図13を参照しながら説明する。
図12および
図13の(a),(b)は保護ビットの突出高さ調整作業中のカッタヘッドを構成する外周リング部の要部断面図である。
【0091】
泥土圧シールド掘進機1の掘削作業中にカッタヘッド2の外周リング部2dの外周面が摩耗し、
図12(a)の左側に示すように、油圧配管21Paの先端部が露出すると、油圧配管21Pa内の油が外部に漏れ油圧配管21Pa内の油圧が低下する。
【0092】
すると、第1の実施の形態と同様に、油圧配管21Pa内の油圧低下の情報が摩耗検出装置21の油圧回路から上記した運転室の制御部に送信され、その旨が運転室内の運転モニタに警報として表示される。ここで、外周リング部2dの外周面が予め決められた量(厚さ)分だけ摩耗していると判断され、
図12(a)の右側に示すように、保護ビット4dの突出部も摩耗していると判断される。
【0093】
そこで、本実施の形態においては、外周リング部2dの摩耗が検出された段階で、作業者がスポーク部2bの裏側に入り込み、
図12(b)の右側に示すように、ボルト26を外し、1枚のスペーサ板25aを取り除いた後、台座24およびスペーサ板25bをボルト26により安装台23に固定する。これにより、保護ビット4dの突出高さを標準線Lsの位置まで突出させる。
【0094】
次いで、保護ビット4dの突出高さを調整した後、泥土圧シールド掘進機1の掘削作業を再開する。この再開後の掘削作業中にカッタヘッド2の外周リング部2dの外周面がさらに摩耗し、
図13(a)の左側に示すように、油圧配管21Pbの先端部が露出すると、油圧配管21Pb中の油が外部に漏れ油圧配管21Pb内の油圧が低下する。
【0095】
すると、上記と同様に、油圧配管21Pb内の油圧低下の情報が摩耗検出装置21の油圧回路から上記制御部に送信され、その旨が上記運転モニタに警報として表示される。ここで、外周リング部2dの外周面が予め決められた量(厚さ)分だけ摩耗していると判断され、
図13(a)の右側に示すように、保護ビット4dの突出部も摩耗していると判断される。
【0096】
そこで、上記と同様に、作業者がスポーク部2bの裏側に入り込み、
図13(b)の右側に示すように、ボルト26を外し、残りのスペーサ板25bを取り除いた後、台座24をボルト26により安装台23に固定することにより、保護ビット4dの突出高さを標準線Lsの位置まで突出させる。
【0097】
このように本実施の形態においては、前記第1の実施の形態で得られた効果の他に以下の効果を得ることができる。すなわち、保護ビット4dの摩耗が確認されたら保護ビット4dの突出高さを2段階で調整することができるので、保護ビット4dの寿命を第1の実施の形態よりも向上させることができる。このため、環境が厳しい条件下においても、保護ビット4dの交換頻度をさらに低減することができるので、泥土圧シールド掘進機1の長距離施工をさらに推進することができる。
【0099】
第4の実施の形態においては、摩耗検出装置の変形例について説明する。前記第1〜第3の実施の形態では蓄圧式摩耗検出装置を用いた場合について説明したが、本実施の形態では、導通式摩耗検出装置を用いた場合について説明する。
【0100】
図14(a)は第4の実施の形態のカッタヘッドを構成する外周リング部の要部断面図、(b)は
図14(a)の摩耗検出部の拡大要部断面図である。なお、
図14(a)の左側は摩耗検出部を示し、右側は保護ビット配置部を示している。
【0101】
本実施の形態においては、カッタヘッド2の外周リング部2dの摩耗を検出する摩耗検出装置21が、例えば、導通式摩耗検出装置により構成されており、その検出部21Cが、センサ部21Caと、リング部21Cbとを有している。
【0102】
センサ部21Caは、外周リング部2dの摩耗により先端部が摩耗すると、その摩耗量(厚さ)に応じて導通状態(電流値または抵抗値等)が変化するようになっているとともに、その導通状態の情報を配線21L通じて上記運転室内の制御部に送信するようになっている。制御部は、センサ部21Caからの情報に基づいて外周リング部2dの摩耗状態を検出し、それを運転モニタに表示するようになっている。そして、制御部は、センサ部21Caからの導通状態を示す値が、予め決められた値となった段階で、保護ビット4dの摩耗を判断し、それを運転モニタに警告として表示するようになっている。
【0103】
リング部21Cbは、センサ部21Caの導通状態が摩耗以外の要因で変化しないようにセンサ部21Caを保護する部分であり、センサ部21Caの外周を取り囲むように設けられている。
【0104】
これ以外の構成は前記第1の実施の形態と同じなので説明を省略する。なお、保護ビット4dについては、前記第1の実施の形態と同様の場合を例示したが、前記第3の実施の形態と同様にしても良い。
【0105】
次に、第4の実施の形態における保護ビット4dの突出高さの調整について
図15を参照しながら説明する。
図15(a),(b)は保護ビットの突出高さ調整作業中のカッタヘッドを構成する外周リング部の要部断面図である。
【0106】
泥土圧シールド掘進機1による掘削作業中にカッタヘッド2の外周リング部2dの外周面が摩耗し、
図15(a)の左側に示すように、摩耗検出装置21のセンサ部21Caの先端部が摩耗すると、センサ部21Caの導通状態(電流値や抵抗値)が変化する。
【0107】
すると、その導通状態の変化の情報が上記運転室の制御部に送信され、その導通状態を示す値が予め決められた値となった段階で、その旨が運転室内の運転モニタに警報として表示される。ここで、外周リング部2dの外周面が予め決められた量(厚さ)分だけ摩耗していると判断され、
図15(a)の右側に示すように、保護ビット4dの突出部も摩耗していると判断される。
【0108】
そこで、本実施の形態においては、外周リング部2dの摩耗が検出された段階で、
図15(b)の右側に示すように、ジャッキ20のピストン20pを予め決められた長さだけ延ばし、保護ビット4dの突出高さを標準線Lsの位置まで突出させる。
【0109】
次いで、保護ビット4dの突出高さを調整した後、泥土圧シールド掘進機1の掘削作業を再開する。その再開後の掘削作業中にカッタヘッド2の外周リング部2dの外周面がさらに摩耗し、センサ部21Caの先端部がさらに摩耗すると、センサ部21Caの導通状態が再び変化する。すると、その導通状態の変化の情報が上記運転室の制御部に送信され、その導通状態を示す値が予め決められた値となった段階で、その旨が運転室内の運転モニタに警報として表示される。これにより、上記と同様に、保護ビット4dの突出部が摩耗している判断されるので、ジャッキ20のピストン20pを予め決められた長さだけさらに延ばし、保護ビット4dの突出高さを標準線Lsの位置まで突出させる。
【0110】
このように本実施の形態においては、前記第1の実施の形態で得られた効果の他に、以下の効果を得ることができる。すなわち、上記した導通式摩耗検出部を用いた場合、油を使用しないので、前記第1の実施の形態の摩耗検出装置に比べて構成が簡単になり、低コストで泥土圧シールド掘進機1に導入することができる。また、導通式摩耗検出部の場合、摩耗状態をより細かく検出することができるので、保護ビット4dの突出高さをより多段に調整することができる。
【0111】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではないと考えるべきである。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0112】
例えば前記実施の形態においては、リボンスクリュー型のスクリューコンベアを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく種々変更可能であり、例えばリボン型と軸付き型とを組み合わせたスクリューコンベアを用いても良い。
【0113】
また、前記実施の形態においては、カッタヘッドの外周リング部の摩耗検出装置として蓄圧式摩耗検出部や導通式摩耗検出部を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、超音波厚み計を用いても良い。この場合、カッタヘッドの外周リング部の内周側に超音波厚み計を設けることで外周リング部の外周部の摩耗状態をリアルタイムで計測することができる。また、蓄圧式摩耗検出部、導電式摩耗検出部また
は超音波厚み計の少なくとも2つを組み合わせて用いても良い。
【0114】
また、前記実施の形態においては、蓄圧式摩耗検出部や導通式摩耗検出部等のような摩耗検出部(油圧配管21Pの先端や検出部21C等)をスポーク部の先端側の外周リング部に設置した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、摩耗検出部(油圧配管21Pの先端や検出部21C等)をスポーク部の隣接間の外周リング部に設置しても良い。スポーク部の隣接間に摩耗検出部と保護ビットとが配置される場合、互いの距離が近くなるので、保護ビットの摩耗状態をより正確に検知することができる。
【0115】
また、前記実施の形態においては、保護ビットをスポーク部の隣接間に配置した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、保護ビットをスポーク部の先端側の外周リング部に設置しても良い。スポーク部の先端側に摩耗検出部と保護ビットとが配置される場合、互いの距離が近くなるので、保護ビットの摩耗状態をより正確に検知することができる。また、保護ビットやその駆動機器を、スポーク部の裏側に隠すことができるので、礫や泥土等から保護することができる。