【文献】
吉田伸治,環境緩和効果を総合的に組み込んだ新しい3次元樹木モデルの開発,生産研究,1999年 1月,Vol.51 No.1,pp.11-16
【文献】
萩島理,数値計算による街路樹の暑熱緩和効果の評価,日本建築学会計画系論文集,1999年11月30日,No.525,pp.83-90
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−099697号公報
【特許文献2】特許5137039号公報
【特許文献3】特開2012−021684号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】吉田 伸治, 村上 周三, 持田 灯, 大岡 龍三, 富永 禎秀, 「環境緩和効果を総合的に組み込んだ新しい3次元樹木モデルの開発」, 生産研究, 51巻1号, 1999年1月
【非特許文献2】吉田 伸治, 大岡 龍三, 持田 灯, 富永 禎秀, 村上 周三, 「樹木モデルを組み込んだ対流・放射・湿気輸送連成解析による樹木の屋外温熱環境緩和効果の検討」, 日本建築学会計画系論文集, No.536, pp.87-94, 2000
【非特許文献3】坂本 雄三, 小島 悦史, 足永 靖信, 今野 雅, 「CFDを利用した樹木のクールスポット効果の数値解析 その1 ―樹木における放射と蒸散に関する計算モデル」, 日本建築学会大会学術講演梗概集, D-1, pp.689-690, 2005
【非特許文献4】小島 悦史, 坂本 雄三,足永 靖信, 今野 雅, 「CFDを利用した樹木のクールスポット効果の数値解析 その2 ―クールスポット効果のケーススタディ」, 日本建築学会大会学術講演梗概集, D-1, pp.691-692, 2005
【非特許文献5】大黒 雅之, 森川 泰成, 「街区及び敷地レベルを対象としたヒートアイランド解析評価システムの開発」, 大成建設技術センター報, No.38, pp.14-1-14-8, 2005
【非特許文献6】大黒 雅之, 森川 泰成, 本橋 比奈子, 「街区スケールを対象としたヒートアイランド解析評価プログラムの開発と適用」, 大成建設技術センター報, No.42, pp.49-1-49-8, 2009
【非特許文献7】片岡 浩人, 大塚 清敏, 赤川 宏幸, 「屋外熱環境評価のための数値予測モデルの開発 −樹木による冷却効果のモデル化−」, 日本建築学会学術講演梗概集, D-1, pp.927-928, 2008
【非特許文献8】佐々木 澄, 「数値解析に基づく街路樹がストリートキャニオン内の熱空気環境に及ぼす影響の検討」, 清水建設研究報告, No.85, pp.41-50, 2007
【非特許文献9】H.B. リジャル, 大岡 龍三 他, 「数値解析による大規模緑地のヒートアイランド緩和効果の検討」, 東京大学生産技術研究所, 生産研究, 62巻1号, 2010
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。尚、以下の実施形態の説明は、例示であり、本発明は、実施形態の構成に限定されない。
【0013】
図1に、実施形態に係るシミュレーションシステムの構成を示す。図示してあるように、本実施形態に係るシミュレーションシステムは、シミュレーション装置10、入力装置20及び出力装置30を含む。また、シミュレーション装置10は、演算部12、記憶部14、インタフェース回路(I/F)16を備える。
【0014】
シミュレーション装置10のインタフェース回路(I/F)16は、演算部12が他装置と通信を行うために使用する回路である。記憶部14は、シミュレーションプログラム18を記憶した不揮発性の記憶装置である。この記憶部14は、演算部12が利用するデータや演算部12による処理結果の記憶にも使用される。
【0015】
演算部12は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等
を組み合わせたユニットである。演算部12は、シミュレーションプログラム18を記憶部14から読み出して実行することにより、各種処理(詳細は後述)を行う。また、演算部12は、シミュレーションプログラム18を実行することにより、本発明に係る形態係数算出手段、放射熱量算出手段及び温度算出手段として機能する。
【0016】
入力装置20は、シミュレーション装置10に情報を入力するための装置である。入力装置20は、キーボード、マウス等のポインティングデバイス等を含む。また、出力装置30は、シミュレーション装置10からの情報を出力するための、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode-Ray Tube)等のディスプレイ、プリンタ等である。
【0017】
尚、シミュレーション装置10は、通常、行列演算が高速に行えるコンピュータ(ベクトル型並列計算機等)にシミュレーションプログラム18を実行させることによって実現される。従って、通常、シミュレーション装置10(ベクトル型並列計算機等)に接続された入出力用のコンピュータの入力装置及び出力装置が、入力装置20及び出力装置30として機能する。
【0018】
以下、シミュレーション装置10の機能を説明する。
シミュレーション装置10は、複数の樹木を含む都市空間(以下、シミュレーション対象空間と表記する)内での放射熱輸送現象をシミュレートするための装置である。
【0019】
図2に模式的に示してあるように、シミュレーション装置10の使用時には、シミュレーション対象時間範囲内の太陽の高度や方位に関する情報等が設定された計算条件設定ファイルが記憶部14に記憶される。また、シミュレーション装置10に対して、地形データ、建物形状データ、樹木分布データ、地表面温度データ、建物表面温度データ及び葉表面温度データが入力される。
【0020】
地形データは、シミュレーション対象空間の地形(地面の形状)を示すデータである。建物形状データは、シミュレーション対象空間内に存在する各建物の位置及び形状を示すデータである。樹木分布データは、シミュレーション対象空間内に存在する各樹木の位置及び形状と各樹木の葉面積密度分布とを示すデータである。
【0021】
シミュレーション装置10に入力されるこれらのデータは、シミュレーション対象空間の構造(3次元都市形状及び3次元樹木分布)が分かるデータであれば良い。従って、地形データや建物形状データとして、例えば、地面/建物の高さの2次元平面データ(地面
/建物の高さと座標との対応関係を表すデータ)を使用することができる。また、樹木分布データとして、例えば、樹木インデックス(樹木の識別情報)の2次元平面データと、各樹木インデックスで識別される樹木の葉面積密度の鉛直分布を示すデータとを含むデータを使用することができる。
【0022】
シミュレーション装置10に入力される地表面温度データ、建物表面温度データ、葉表面温度データは、それぞれ、地表面の各部の温度の初期値を示すデータ、各建物表面の各部の温度の初期値を示すデータ、各所の葉表面の温度の初期値を示すデータである。
【0023】
以下、シミュレーション装置10(演算部12)が行う処理の内容を説明する。尚、以下の説明では、シミュレーション装置10に入力される地形データ、建物形状データ及び樹木分布データのことを、構造指定データと表記する。また、シミュレーション装置10に入力される地表面温度データ、建物表面温度データ及び葉表面温度データのことを、初期値データと表記する。
【0024】
シミュレーション装置10は、基本的には、入力された構造指定データが示しているシミュレーション対象空間内の各部の温度を、計算条件設定ファイル内の各種情報及び入力された初期値データを用いて、Δt毎にシミュレートする装置である。
【0025】
図2に示してあるように、シミュレーション装置10の演算部12が行う処理は、前処理と主処理とに分類できる。
【0026】
前処理は、シミュレーション用データ生成処理(ステップS101)とパラメータ算出処理(ステップS102)とがこの順に行われる処理である。
【0027】
ステップS101にて行われるシミュレーション用データ生成処理は、入力された構造指定データに基づき、『シミュレーション対象空間内の各建物の壁面や地面を複数の面積要素として取り扱い、シミュレーション対象空間内の各樹木の樹冠を1つ以上の透過性を有する体積要素として取り扱うためのシミュレーション用データ』を生成する処理である。
【0028】
このシミュレーション用データ生成処理により生成されるシミュレーション用データは、後述する形態係数の算出に必要な情報(各面積/体積要素の形状やシミュレーション対象空間内での位置等)が分かるものであれば良い。従って、シミュレーション用データを、例えば、面積/体積要素毎に、『通し番号、対応するシミュレーション対象空間内の計算格子の座標番号、面積要素の向いている方向/体積要素であることを示すフラグ、樹冠であるか否かを示すフラグ等からなるデータ』を含むデータとしておくことができる。
【0029】
ステップS102にて行われるパラメータ算出処理は、シミュレーション用データ生成処理により生成されたシミュレーション用データに基づき、主処理で使用される各種パラメータを算出する処理である。
【0030】
このパラメータ算出処理時に算出されるパラメータには、各2要素(面積/体積要素)に関する形態係数F、各体積要素kの有効表面積<A
eff>
k、各要素iの天空率ω
i、各面積要素iの日陰率D
i、各体積要素kの有効日陰率D
effkがある。
【0031】
まず、パラメータ算出処理時に算出される各2要素に関する形態係数Fについて説明する。
【0032】
パラメータ算出処理時には、2つの面積要素i,jの組み合わせ毎に、『面積要素iか
ら面積要素jを見た形態係数F
ij』と『面積要素jから面積要素iを見た形態係数F
ji』とが、算出される。また、面積要素iと体積要素kの組み合わせ毎に、『面積要素iから体積要素kを見た形態係数F
ik』と『体積要素kから面積要素iを見た形態係数F
ki』とが、算出される。さらに、2つの体積要素k及びlの組み合わせ毎に、『体積要素kから体積要素lを見た形態係数F
kl』及び『体積要素lから体積要素kを見た形態係数F
lk』が算出される。
【0033】
パラメータ算出処理時に算出される『面積要素iから面積要素jを見た形態係数F
ij』、『面積要素jから面積要素iを見た形態係数F
ji』は、それぞれ、以下の(1)、(2)式で定義される値である。
【0035】
これらの式において、A
i、A
jは、それぞれ、面積要素iの面積、面積要素jの面積である。β
i、β
j は、
図3に模式的に示してあるように、それぞれ、面積要素i内の微小
面dA
iと面積要素j内の微小面dA
jとを結ぶ直線と微小面dA
iの法線のなす角度、当
該直線と微小面dA
jの法線のなす角度である。また、rは、微小面dA
i・微小面dA
j
間の距離である。
【0036】
T
ijは、面積要素iと面積要素jの間の透過率である。T
ijは、2微小面dA
i及びd
A
j 間の光学的厚さτ
ijを用いて次式により算出される。
【0038】
また、面積要素iと面積要素jとの間(微小面dA
iと微小面dA
jとの間)に樹冠が分布している場合、光学的厚さτ
ijは、樹冠の消散係数k
ext及び葉面積密度aを用いて次
式により算出される。
【0040】
尚、形態係数の具体的な算出手順については後述するが、上記した(1)、(2)式で定義される形態係数は、相反則を満たしている。すなわち、面積A
iと面積A
jと形態係数F
ijと形態係数F
jiとの間には、以下の関係がある。
【0042】
従って、F
jiを、(1)式から算出したF
ijとA
iとA
jとから算出することも、F
ijを、(2)式から算出したF
jiとA
iとA
jとから算出することもできる。
【0043】
パラメータ算出処理時に算出される『面積要素iから体積要素kを見た形態係数F
ik』は、以下の(3)式により定義される値である。
【0045】
この(3)式におけるβ
iは、
図4に模式的に示してあるように、面積要素iの微小面
dA
iと体積要素j内の微小投影面dA
k←
iとを結ぶ直線と微小面dA
iの法線のなす角度である。また、rは、微小面dA
i・微小投影面dA
k←
i間の距離である。
【0046】
A
effk←
iは、体積要素k自身の遮蔽率を考慮した,面積要素iの方向から見た体積要
素kの有効面積である。このA
effk←
iは、次式により算出される。
【0048】
ここで、Δτ
k←
iは、微小投影面dA
k←
i(
図4参照)に垂直な方向の体積要素kの光学的厚さである。体積要素kが樹木の場合、Δτ
k←
iは、消散係数k
ext、葉面積密度aお
よびdA
k←
iに垂直な方向の体積要素kの幾何学的厚さΔs
k←
iを用いて、次式により算出される。
【0050】
要するに、上記した(3)式は、(4)式を用いれば、以下のように表記できる式となっている。パラメータ処理時には、以下の(5)式に従って、面積要素iから体積要素kを見た形態係数F
ikが算出される。
【0052】
パラメータ算出処理時に算出される『体積要素kから面積要素iを見た形態係数F
ki』
は、次式により定義される値である。
【0054】
換言すれば、体積要素kから面積要素iを見た形態係数F
kiとしては、以下の式で表される相反則を満たす値が算出される。
【0056】
パラメータ算出処理時に算出される『体積要素kから体積要素lを見た形態係数F
kl』は、次式により定義される値である。
【0058】
すなわち、この形態係数F
klは、体積要素kの遮蔽率(“1-exp(-Δτ
k←
l)”)と体積要素lの遮蔽率(“1-exp(-Δτ
l←
k)”)と体積要素k、l間の透過率T
klとを考慮に入れた形態係数となっている。
【0059】
尚、(7)式が表している体積要素に関する形態係数は、面積要素の形態係数と同様に次式の相反則を満たす。
【0061】
従って、他の形態係数と同様に、2体積要素間の形態係数の双方を、(7)式に従って算出することも、一方の形態係数を(7)式に従って算出し、他方の形態係数を、当該一方の形態係数の算出結果から算出することも出来る。
【0062】
パラメータ算出処理時には、上記した各形態係数が、モンテカルロ法により算出される。
【0063】
すなわち、形態係数の算出時には、0から1までの範囲の一様乱数Rθ、Rφから、以下の式によりμ、φを算出し、算出結果に基づき、以下に示した内容の単位ベクトルnを生成する処理が、必要とされる形態係数の精度に応じた回数、繰り返される。
【0065】
換言すれば、形態係数の算出時には、Lambertの余弦則にしたがって面積要素(又は体
積要素)から射出される多数の光子の進行方向単位ベクトルnを生成する処理が行われる。
【0066】
そして、生成した各単位ベクトルnの方向に要素iから等しいエネルギーW
0を持った
光子が射出された場合に要素jに入射されることになる各光子pのエネルギーW
pを積算
することにより、形態係数F
ijが求められる。
【0067】
具体的には、面積要素iから面積要素jをみた形態係数F
ijは、面積要素iから射出させた光子の個数がN、面積要素jに入射された光子の個数がnであった場合には、以下の式により算出される。
【0069】
なお、建物壁面などの完全遮蔽性の面積要素のみの場合には、面積要素jに入射する光子のエネルギーW
pはW
0と等しいため、形態係数は、F
ij=n/Nにより算出できる。樹木のような放射透過性の要素が空間中に分布する場合には、面積要素jに入射する光子のエネルギーW
pは、面積要素iから面積要素jに到達するまでの間に減衰する。そのため
、その減衰の形態係数に対する影響を光子の持つエネルギーを減衰させることで考慮する。すなわち、次式により、W
pが計算される。
【0071】
ここで、T
ij,pは、光子pの経路に沿った透過率である。なお、光子が透過性の体積要素内で確率的に遮蔽されると考えて、面積要素jに入射する光子の数を減少させても、減衰の影響を考慮した形態係数を求めることが出来る。
【0072】
また、面積要素iから体積要素kをみた形態係数F
ikは、(7)式により定義される値である。従って、面積要素iから体積要素kをみた形態係数F
ikは、次式により算出される。
【0074】
ここで、Δτ
k←
i,pは、光子pの経路に沿った、体積要素kの内部での光学的
厚さである。Nは、面積要素iから射出された光子数であり、nは、体積要素kに入射された光子数である。
【0075】
体積要素kから面積要素iをみた形態係数F
kiの算出時には、体積要素の表面上の各点からの光子の等方的な射出が仮定される。すなわち、体積要素の表面上の各点からLambertの余弦則に従って多数の光子が仮想的に射出される。
【0076】
そして、体積要素kから面積要素iをみた形態係数F
kiが、次式により算出される。
【0078】
ここで、Δτ
k←
i,pは、光子pの射出点から光子pの進行方向とは逆の方向へ
バックトレースすることによって計算される,体積要素kの内部での光学的厚さである。また、S
kは、体積要素kの表面積であり、Mは、体積要素kから射出された光子数であ
り、mは、面積要素iに入射された光子数である。
【0079】
同様に、体積要素kから体積要素lをみた形態係数F
klは、次式により計算される。
【0081】
尚、この式におけるmは、M個の光子を体積要素kから射出した結果として体積要素lに入射された光子数である。
【0082】
以下、パラメータ算出処理で算出される、各体積要素kの有効表面積<A
eff>
k、各要
素iの天空率ω
i、各面積要素iの日陰率D
i、各体積要素kの有効日陰率D
effkについて説明する。
【0083】
パラメータ算出処理時に算出される各体積要素kの有効表面積<A
eff>
kは、以下の式
により定義される値である。
【0084】
【数19】
この式において、mは、体積要素kの周囲に存在する(体積要素kから見える)要素(面積要素又は体積要素)の総数であり、i(=1〜m)は、体積要素kの周囲に存在する面積要素又は体積要素の要素番号である。
【0085】
パラメータ算出処理時には、この有効表面積<A
eff>
kが、次式により算出される。
【0087】
すなわち、有効表面積<A
eff>
kもモンテカルロ法により算出される。
【0088】
要素(面積要素/体積要素)iの天空率ω
iは、要素iから空をみた形態係数に相当す
る値である。天空率ω
iは、要素iから面積要素をみた形態係数と同様の手順で算出され
る。
【0089】
面積要素iの日陰率D
iは、面積要素iから太陽側へ射出された光子pが、他の要素に入射した際に失うエネルギーΔWpを積算することにより求められる。より具体的には、日陰率D
iは、モンテカルロ法を用いて以下の式により算出される。
【0091】
尚、上記式において、Nは、面積要素iから射出された光子数である。
【0092】
同様に、体積要素kの有効日陰率D
effkは、モンテカルロ法を用いて以下の式により算出される。
【0094】
上記した各面積要素iの日陰率D
i、各体積要素kの有効日陰率D
effkは、太陽の位置
により値が変わるパラメータである。従って、シミュレーションを行う時間範囲が比較的に長い場合には、パラメータ算出処理時に、当該時間範囲内の各時刻における日陰率D
i
及び有効日陰率D
effkが算出される。
【0095】
以下、演算部12が行う主処理(
図2)の内容を説明する。
演算部12が行う主処理は、放射熱フラックス等算出処理(ステップS201)と温度算出処理(ステップS202)とが、全時間ステップ数N
tの回数、繰り返される処理である。尚、全時間ステップ数N
tは、シミュレーション対象時刻範囲及び時間刻み幅Δtに基
づいて決定することができる。全時間ステップ数N
tの指定は、計算条件設定ファイル内に全時間ステップ数N
t又はシミュレーション対象時刻範囲及び時間刻み幅Δtの情報を設定
しておくことや、入力装置20を用いて入力することによって、行われる。
【0096】
ステップS201にて行われる放射熱フラックス等算出処理は、パラメータ算出処理で算出されたパラメータ(形態係数等)を用いて、各要素iから射出される短波放射(可視光線)の放射フラックスG
S,i[W/m
2]及び長波放射(赤外線)の放射フラックスG
L,i [W/m
2] を算出し、算出した放射フラックスを用いて、各要素iに吸収される、短波放射に関する正味の放射熱R
S,i[W]及び長波放射に関する正味の放射熱R
L,i[W]を算出する処理である。
【0097】
具体的には、各要素iから射出される放射フラックスG
S,i、G
L,i [W/m
2] については、それぞれ、以下の式が成立する。
【0099】
尚、(8)、(9)式におけるnは、面積要素及び体積要素の総数である。<A
eff>i
は、要素iが体積要素である場合には、体積要素iの有効表面積であり、要素iが面積要素である場合には、面積要素iの面積である。
【0100】
α
S,i、α
L,iは、それぞれ、要素iの、短波放射、長波放射に関する反射率であり、ε
iは、要素iの射出率である。S
direct,iは、要素iに入射する太陽からの直達短波放射フラックスであり、S
diffuse,iは、要素iに入射する大気散乱短波放射の放射フラックスである。L
iは、要素iに入射する大気長波放射の放射フラックスであり、A
effi←
Solar、A
effi←
skyは、それぞれ、要素iの、太陽の方向、空の方向の有効面積である。
【0101】
B(T
i)は、要素iから熱放射により射出される放射フラックスである。長波放射の放
射フラックスとして、上記したG
L,jのみを算出する場合(長波放射に関する放射フラッ
クスを波長範囲別に算出しない場合)、B(T
i)は、ステファン・ボルツマン定数σを用
いて次式により算出される。
【0103】
S
direct,i、S
diffuse,iは、パラメータ算出処理で算出された天空率ω
i、日陰率D
i
を用いて以下の式により算出される。
【0105】
ここで,S↓は水平面に下向きに入射する太陽放射フラックスであり、S(=(S
x,S
y,S
z))は太陽方位ベクトルである。n
iは、面積要素iの単位法線ベクトルであり、c
direct、c
diffuseは、直散分離のための係数である。
【0106】
尚、上記式で算出されるS
direct,iは、面積要素iのS
direct,iである。体積要素iのS
direct,iは,パラメータ算出処理で算出された有効日陰率D
effiを用いて次式により算出される。
【0108】
また、射出率ε
iは、要素iの吸収率と等しいため、射出率ε
iとして、“1−α
L,
i”を使用することが出来る。
【0110】
上記した(8)式及び(9)式は、i=1〜nのそれぞれについて成立する。すなわち、以下の2つの線形行列方程式が成立する。
【0112】
放射フラックス等算出処理時には、これらの線形行列方程式を解くことで、各要素iか
ら射出される放射フラックスG
S,i,G
L,iが、算出される。
【0113】
そして、各要素iに吸収される、短波放射に関する正味の放射熱R
S,i[W]、及び長波放射に関する正味の放射熱R
L,i[W]が、それぞれ、以下の(10)、(11)式により算出される。
【0115】
温度算出処理(
図2;ステップS202)は、放射熱フラックス等算出処理にて算出された放射熱からシミュレーション対象空間内の各部の温度を算出する処理である。この温度算出処理時における各面積要素の温度の算出手順は、放射熱が、樹冠を透過性を有する体積要素として取り扱った形態係数を用いて算出されたものであることを除けば、一般的な算出手順と同様のものである。そのため、以下では、樹冠(体積要素)の温度の算出手順のみを説明することにする。
【0116】
図5に模式的に示してあるように、樹木の樹冠の一部である体積要素には、短波放射の放射熱フラックスR
Sと長波放射の放射熱フラックスR
Lとが流入し、当該体積要素からは、顕熱フラックスHと潜熱フラックスLEとが流出する。
従って、樹冠である体積要素iに関する熱収支は、次式により表されることになる。
【0118】
ここで,T
leaf,iは、要素i内の葉の表面温度[K]であり、a
iは、要素i内の葉の面積
密度[m
2/m
3]である。V
iは、要素iの体積[m
3]であり、Cは、単位葉面積あたりの葉の熱容量[J/K/m
2]である。R
S,i、R
L,iは、それぞれ、葉に吸収される短波放射の正味の放射熱(放射熱フラックスの強度)[W]、長波放射の正味の放射熱[W]であり、Lは、蒸発潜熱[J/kg]である。
【0119】
H
iは、葉から大気に放出される顕熱輸送量(顕熱フラックスの強度)[W]であり、E
i
は葉から大気に蒸散される水蒸気量[kg/s]である。
【0120】
葉から大気に放出される顕熱輸送量H
iおよび葉から大気に蒸散される水蒸気量E
iは、以下の式により算出される。
【0122】
ここで、T
air,iは、要素i内の大気温度[K],f
air,iは、体積要素i内の大気中の水蒸気分圧[Pa]、f
leaf,iは、体積要素i内の葉表面の飽和水蒸気分圧[Pa],K
hは、対流熱
伝達係数[W/m
2/K],K
wは、対流水蒸気輸送係数[kg/s/m
2/Pa]、βは蒸発効率である.
【0123】
温度算出処理時には、時間ステップnにおける葉表面温度及び熱フラックスを用いて、時間刻みΔt後の時間ステップn+1における葉表面温度T
leaf,iが、計算され
る。
【0124】
具体的には、時間ステップnからn+1までの間の葉表面温度の変化量ΔT
leaf,i
は,時間Δtの経過に起因する葉表面温度の変化による正味長波放射,顕熱輸送量,
蒸散量の変化を考慮すると、次式により表される。
【0126】
従って,葉表面温度の変化量ΔT
leaf,iを、次式により求めることができる。
【0128】
温度算出処理時には、この式により、葉表面温度の変化量ΔT
leaf,iが求められて
から、時間ステップn+1における葉表面温度T
leaf,i(n+1)が次式により、算出される。
【0130】
温度算出処理は、各部の温度の算出と、算出した各部の温度の出力(本実施形態では、記憶部14への記憶)とが完了したときに終了する。そして、指定された回数の処理が完了していなかった場合には、再び、放射熱フラックス等算出処理が開始され、指定された回数の処理が完了したときに、主処理が終了する。
【0131】
以上、説明したように、本実施形態に係るシミュレーション装置10は、各樹冠を1つ以上の透過性を有する体積要素として取り扱って、1つの体積要素と1つの面積要素に関する形態係数((5)、(6)式参照)として、当該1つの体積要素を透過する放射熱量に応じた分だけ値を減少させた形態係数を算出する。また、シミュレーション装置10は、2つの体積要素に関する形態係数((7)式参照)として、当該2つの体積要素を透過する放射熱量に応じた分だけ値を減少させた形態係数を算出する。そして、シミュレーション装置10は、算出した各形態係数を用いて各要素間で授受される放射熱量を算出する。従って、シミュレーション装置10によれば、樹幹内部の状態を別途計算する必要がない形で(つまり、低計算コストで)、樹冠を含む3次元空間における放射熱輸送現象を良好にシミュレートできることになる。
【0132】
《変形形態》
上記した実施形態に係るシミュレーション装置10は、各種の変形を行えるものである。
例えば、シミュレーション装置10を、2要素間の透過率Tが考慮されていない形態係数を算出し、放射フラックスの算出時等に2要素間の透過率を考慮する装置に変形することが出来る。ただし、形態係数の算出時に2要素間の透過率Tを考慮しておいた方が正確な結果が得られるし、計算コストも低くなる。従って、上記した形態係数を採用しておくことが好ましい。
【0133】
また、樹幹の体積熱容量Caは、通常、かなり小さいので、シミュレーション装置10を、葉表面温度を、Ca=0として算出する装置に変形することも出来る。また、シミュレーション装置10を、一部又は全ての形態係数として、その定義式の解析解を用いる装置に変形することも出来る。
【0134】
シミュレーション装置10は、オイラー陰解法により葉温度を算出する装置であるが、シミュレーション装置10を、陽解法により葉温度を算出する装置や、2次精度のクランク・ニコルソン法により葉温度を算出する装置に変形することも出来る。ただし、陰解法の方が正確な値を得やすいので、葉温度の算出法には、陰解法を採用しておくことが好ましい。