特許第6238443号(P6238443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238443
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】エアバッグの縫製用治具
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/23 20060101AFI20171120BHJP
   D05B 35/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B60R21/23
   D05B35/00
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-250564(P2013-250564)
(22)【出願日】2013年12月3日
(65)【公開番号】特開2015-107695(P2015-107695A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】306009581
【氏名又は名称】タカタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 義則
(72)【発明者】
【氏名】岡田 典久
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−109814(JP,A)
【文献】 特開平11−278440(JP,A)
【文献】 特開平05−278544(JP,A)
【文献】 特開平08−266764(JP,A)
【文献】 特開2002−078996(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0313810(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 − 21/33
D05B 1/00 − 97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状の基布を縫製することによって所定形状の袋体に形成されるエアバッグの縫製用治具において、
ロケピンと第一縫製用開口部とを有する第一プレートと、
前記ロケピンと略一致する位置に形成された透孔と前記第一縫製用開口部と略一致する位置に形成された第二縫製用開口部とを有する第二プレートと、
前記第一プレートに配置され、前記エアバッグの開口部に挿入される棒状部材と、該棒状部材を移動させる移動手段と、を備えた張力発生手段と、を有し、
前記第一プレート上に前記エアバッグを固定し、前記張力発生手段により前記エアバッグの開口部を扁平形状に変形し、さらに前記エアバッグの上から前記第二プレートを固定することによって前記エアバッグを挟持するようにした、
ことを特徴とするエアバッグの縫製用治具。
【請求項2】
前記移動手段は、前記第一プレート上に固定されるレールと、該レール上に移動可能に配置されたスライダと、該スライダに付勢力を付与する弾性体と、を有し、前記棒状部材は、前記スライダの側面に配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグの縫製用治具。
【請求項3】
前記棒状部材は、引っ張り方向に屈曲している、ことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグの縫製用治具
【請求項4】
前記第一プレートは、前記エアバッグの開口部の位置を案内するガイド部材を有している、ことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグの縫製用治具
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグの縫製用治具に関し、特に、縫合精度の向上を図ることができるエアバッグの縫製用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、衝突時や急減速時等の緊急時にエアバッグを車内で膨張展開させて乗員に生ずる衝撃を吸収するためのエアバッグ装置が搭載されることが一般的になってきている。かかるエアバッグ装置は、一般に、通常時は車両の構造物内に折り畳まれて収容されており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、を有する。
【0003】
上述したエアバッグは、所定の形状に切断された、高強度、耐熱性及び低通気性を有する織物(通常、「基布」と称する。)を縫製することによって所定形状の袋体に形成される。この基布の縫製は、ミシンによって縫製されることが多く、縫合精度の向上を図るために種々の治具が用いられている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、ロケピン及び縫製用開口部を有する下押さえ板と、前記ロケピンに挿通可能な透孔及び縫製用開口部を有する上押さえ板と、を備えた縫製用治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−116575号公報
【特許文献2】特開平11−278188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1や特許文献2に記載された縫製用治具は、ロケピンに基布の一部を仮止めし、下押さえ板と上押さえ板との間に挟み込んで縫製する基布の位置決めを行うようにしている。かかる縫製用治具は、エアバッグ外周部やインフレータ用開口部等の単純な縫製をする場合には、位置決めを略正確に行うことができ、縫合精度の向上を図ることができる。
【0006】
ところで、例えば、エアバッグの最後の袋閉じ部分は、できるだけ隙間が生じないように縫製する必要がある。しかしながら、最後の袋閉じ部分には、基布の形状誤差や縫製誤差等が蓄積され、開口部の形状が設計通りの形状とならず、縫製部に皺ができやすくなってしまう。
【0007】
また、エアバッグの縫合線上に形成される開口部(例えば、ベントホール、カーテンエアバッグ等のインフレータ挿通路等)を形成するための縫製部は、開口部を設計通りに形成しないと、その機能に影響を与えてしまう可能性がある。したがって、かかる開口部を有するエアバッグでは、通常の縫製部以上の縫合精度が求められる。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、縫合精度の向上を図ることができるエアバッグの縫製用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明によれば、所定形状の基布を縫製することによって所定形状の袋体に形成されるエアバッグの縫製用治具において、ロケピンと第一縫製用開口部とを有する第一プレートと、前記ロケピンと略一致する位置に形成された透孔と前記第一縫製用開口部と略一致する位置に形成された第二縫製用開口部とを有する第二プレートと、前記第一プレートに配置され、前記エアバッグの開口部に挿入される棒状部材と、該棒状部材を移動させる移動手段と、を備えた張力発生手段と、を有し、前記第一プレート上に前記エアバッグを固定し、前記張力発生手段により前記エアバッグの開口部を扁平形状に変形し、さらに前記エアバッグの上から前記第二プレートを固定することによって前記エアバッグを挟持するようにした、ことを特徴とするエアバッグの縫製用治具が提供される。
【0012】
前記移動手段は、前記第一プレート上に固定されるレールと、該レール上に移動可能に配置されたスライダと、該スライダに付勢力を付与する弾性体と、を有し、前記棒状部材は、前記スライダの側面に配置されていてもよい。また、前記棒状部材は、引っ張り方向に屈曲していてもよい。また、前記第一プレートは、前記エアバッグの開口部の位置を案内するガイド部材を有していてもおい。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明に係るエアバッグの縫製用治具によれば、エアバッグの開口部又はその周縁部を縫製する際に、前記開口部を横方向に引っ張って扁平形状に変形させることにより、開口部を構成する一対の基布における外縁長さを略一致させることができ、皺の発生を抑制することができる。したがって、基布の形状誤差や縫製誤差等が蓄積された開口部やベントホール等のような機能性開口部であっても、強制的に開口部の形状を整えることができ、縫合精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態に係るエアバッグの縫製用治具の一部を示す図であり、(A)は第一プレートの平面図、(B)は張力発生手段の側面図、を示している。
図2】本発明の第一実施形態に係るエアバッグの縫製用治具の一部を示す図であり、(A)は第二プレートの平面図、(B)は第一プレートと第二プレートとを組み合わせた状態の平面図、を示している。
図3】本発明の第二実施形態に係るエアバッグの縫製用治具を示す図であり、(A)は第一プレートの平面図、(B)は第二プレートの平面図、を示している。
図4】本発明の実施形態に係るエアバッグの縫製方法を示す平面図であり、(A)は第一プレートにエアバッグを固定した状態、(B)はエアバッグの開口部に棒状部材を挿入した状態、(C)エアバッグの開口部を扁平形状に変形した状態、(D)第二プレートを固定した状態、を示している。
図5】本発明の他の実施形態に係るエアバッグの縫製用治具を示す平面図であり、(A)は第三実施形態、(B)は第四実施形態、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図1図5を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係るエアバッグの縫製用治具の一部を示す図であり、(A)は第一プレートの平面図、(B)は張力発生手段の側面図、を示している。図2は、本発明の第一実施形態に係るエアバッグの縫製用治具の一部を示す図であり、(A)は第二プレートの平面図、(B)は第一プレートと第二プレートとを組み合わせた状態の平面図、を示している。
【0016】
本発明の第一実施形態に係るエアバッグの縫製用治具1は、図1(A)〜図2(B)に示したように、所定形状の基布を縫製することによって所定形状の袋体に形成されるエアバッグ2の縫製用治具であって、ロケピン11aと第一縫製用開口部11bとを有する第一プレート11と、ロケピン11aと略一致する位置に形成された透孔12aと第一縫製用開口部11bと略一致する位置に形成された第二縫製用開口部12bとを有する第二プレート12と、第一プレート11に配置され、エアバッグ2の開口部21に挿入される棒状部材31と、棒状部材31を移動させる移動手段32と、を備えた張力発生手段3と、を有し、第一プレート11上にエアバッグ2を固定し、張力発生手段3によりエアバッグ2の開口部21を扁平形状に変形し、さらにエアバッグ2の上から第二プレート12を固定することによってエアバッグ2を挟持するようにしたものである。なお、エアバッグ2との位置関係については、図4を参照されたい。
【0017】
第一プレート11は、エアバッグ2の下面に配置される平板部材であり、例えば、プラスチック等の樹脂材により形成される。第一プレート11の表面には、第二プレート12やエアバッグ2を固定するためのロケピン11aが立設されている。ロケピン11aは、第一プレート11の裏面から固定される金属製のボルトやリベットにより構成されていてもよいし、第一プレート11の樹脂材と一体に形成されていてもよい。なお、ロケピン11aの配置や個数は、縫製するエアバッグ2の形状や縫製箇所によって適宜変更されるものであり、図示した配置及び個数に限定されるものではない。
【0018】
また、第一プレート11には、ミシンの針を挿通可能な第一縫製用開口部11bが形成されている。図示した第一縫製用開口部11bは、エアバッグ2の最後の袋閉じ部分を縫製する場合に適した形状を有している。第一縫製用開口部11bは、一般に、第一プレート11を貫通するように形成される。なお、第一縫製用開口部11bの形状は、エアバッグ2の縫製箇所に応じて適宜変更されるものである。
【0019】
また、第一プレート11は、エアバッグ2の開口部21の位置を案内するガイド部材11cを有していてもよい。ガイド部材11cは、エアバッグ2が張力発生手段3により引っ張られたときに開口部21の位置がずれないように引っ張り方向に延伸した壁面部を有する。例えば、ガイド部材11cの壁面部は、図中に一点鎖線で示した直線Xに沿って形成される。なお、ガイド部材11cの配置や個数は、縫製するエアバッグ2の形状や縫製箇所によって適宜変更されるものであり、図示した配置及び個数に限定されるものではない。
【0020】
また、第一プレート11の表面には、ロケピン11aから離隔した位置に張力発生手段3が配置されている。張力発生手段3を構成する移動手段32は、例えば、図1(A)及び(B)に示したように、第一プレート11上に固定されるレール32aと、レール32a上に移動可能に配置されたスライダ32bと、スライダ32bに付勢力を付与する弾性体32cと、を有している。
【0021】
レール32aは、長手方向に沿った両側部が内側に折り返されている。スライダ32bは、レール32aの延伸方向に細長く形成された直方体部材であって、底面に左右両側に張り出した鍔部32dを有している。この鍔部32dをレール32aの折り返し部に挿通することによって、スライダ32bはレール32aに対して摺動可能に配置される。
【0022】
また、レール32aの一端には支持ピン32eが立設されており、スライダ32bの上面には係合ピン32fが立設されている。支持ピン32eと係合ピン32fとの間に、弾性体32cが掛け渡されている。弾性体32cは、例えば、コイルバネであるが、ゴムのような弾性体であってもよい。支持ピン32eは、レール32aの略中心部に配置されており、その軸部はスライダ32bのストッパとしても機能している。
【0023】
なお、移動手段32の構成は図示した構成に限定されるものではなく、直線Xに沿ってスライダ32bが移動可能に構成されていればよい。例えば、弾性体32cの代わりにスライダ32bを固定可能なストッパを配置して、手動でスライダ32bを動かして所望の位置でスライダ32bを固定するようにしてもよい。
【0024】
棒状部材31は、図示したように、スライダ32bの側面に配置されている。棒状部材31は、エアバッグ2の開口部21内に挿入され、開口部21を扁平形状に変形させるものであるから、外周が丸く形成されたピン形状であることが好ましい。かかる構成により、エアバッグ2の基布と棒状部材31との摩擦を軽減することができる。
【0025】
また、棒状部材31は、引っ張り方向に屈曲していてもよい。図1(A)に示したように、棒状部材31は、略L字形状を有しており、屈曲部31aが直線X上に配置されるようにスライダ32bに固定される。かかる構成により、棒状部材31の屈曲部31aにエアバッグ2の開口部21の一端をしっかりと係止させることができ、棒状部材31の抜けを抑制することができる。なお、棒状部材31を直線状に形成した場合には、スライダ32bの側面に垂直となる状態又は引っ張り方向に先端部を傾斜させた状態に配置することが好ましい。
【0026】
第二プレート12は、エアバッグ2の上面に配置される平板部材であり、例えば、プラスチック等の樹脂材により形成される。第二プレート12は、第一プレート11上に固定されたエアバッグ2の上から第一プレート11に固定される部材であることから、第一プレート11に形成されたロケピン11a、ガイド部材11c及び張力発生手段3と干渉しないようにする必要がある。そこで、第二プレート12には、ロケピン11aを挿通可能な透孔12a、ガイド部材11cを挿通可能な開口部12c及び張力発生手段3との干渉を避けるための切欠部12dが形成されている。
【0027】
また、第二プレート12には、ミシンの針を挿通可能な第二縫製用開口部12bが形成されている。図示した第二縫製用開口部12bは、エアバッグ2の最後の袋閉じ部分を縫製する場合に適した形状を有しており、上述した第一縫製用開口部11bと形状が一致するように形成されている。
【0028】
ここで、第一プレート11に第二プレート12を組み合わせた状態を図2(B)に示している。なお、本図において、エアバッグ2の図は省略してある。図示したように、第二プレート12の透孔12a及び開口部12cに、第一プレート11のロケピン11a及びガイド部材11cをそれぞれ挿通することによって、第一プレート11上に第二プレート12を固定することができる。
【0029】
次に、本発明の第二実施形態に係るエアバッグの縫製用治具について、図3(A)及び(B)を参照しつつ説明する。ここで、図3は、本発明の第二実施形態に係るエアバッグの縫製用治具を示す図であり、(A)は第一プレートの平面図、(B)は第二プレートの平面図、を示している。なお、上述した第一実施形態と共通する構成部品については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0030】
図3(A)及び(B)に示した第二実施形態にかかる縫製用治具1は、第一プレート11及び第二プレート12を固定するための複数の磁石4,4′を有するものである。図3(A)に示したように、第一プレート11には、第一縫製用開口部11bを挟んでガイド部材11cや張力発生手段3と反対側に複数の磁石4が嵌め込まれている。また、図3(B)に示したように、第二プレート12には、第二縫製用開口部12bを挟んで透孔12aや開口部12cと反対側に複数の磁石4′が嵌め込まれている。
【0031】
磁石4,4′は、第一プレート11上に第二プレート12を固定した際に、互いに一致して吸着しあうように構成されている。かかる磁石4,4′を配置することにより、エアバッグ2を挟持した状態であっても、磁石4,4′の吸着力により第一プレート11と第二プレート12とを密着させておくことができ、縫製作業中又は縫製作業に移行するまでの間におけるエアバッグ2の位置ずれを抑制することができる。なお、磁石4,4′のうち一方のみを磁石とし、他方を金属片としてもよい。
【0032】
ところで、上述した第一実施形態に係る縫製用治具1は、磁石4,4′を有していないが、第一プレート11上に第二プレート12を固定してエアバッグ2を挟持した後、クリップ等の固定具により第一プレート11及び第二プレート12の外縁部を挟持するようにしてもよいし、ロケピン11aの上部にキャップを被せて第二プレート12が抜けないようにしてもよい。
【0033】
続いて、上述した第二実施形態に係る縫製用治具1を用いたエアバッグ2の縫製方法について、図4(A)〜(D)を参照しつつ説明する。ここで、図4は、本発明の実施形態に係るエアバッグの縫製方法を示す平面図であり、(A)は第一プレートにエアバッグを固定した状態、(B)はエアバッグの開口部に棒状部材を挿入した状態、(C)エアバッグの開口部を扁平形状に変形した状態、(D)第二プレートを固定した状態、を示している。
【0034】
図4(A)〜(D)に示したエアバッグ2の縫製方法は、所定形状の基布を縫製することによって所定形状の袋体に形成されるエアバッグ2の縫製方法であって、エアバッグ2は開口部21を有し、開口部21を少なくとも一方向に引っ張ることによって開口部21を扁平形状に変形し、開口部21を形成する基布を縫製するようにしたものである。具体的には、上述した実施形態にかかる縫製用治具1を用いてエアバッグ2を縫製する。以下の説明では、図3に示した第二実施形態に係る縫製用治具1を用いている。
【0035】
最初に、図4(A)に示したように、第一プレート11にエアバッグ2を固定する。具体的には、第一プレート11のロケピン11aに、エアバッグ2の透孔を有するタブ22を挿通し、開口部21がガイド部材11cに沿うようにエアバッグ2を第一プレート11上に配置する。すなわち、本工程では、開口部21周辺にロケピン11aを挿通することによってエアバッグ2を固定している。
【0036】
次に、図4(B)に示したように、張力発生手段3のスライダ32bをエアバッグ2の開口部21に挿入する。具体的には、スライダ32bを、弾性体32cの付勢力に逆らってロケピン11aに接近させる方向(図中の矢印方向)に移動させ、開口部21の内部に棒状部材31の先端を挿入する。このとき、開口部21の端部を棒状部材31の屈曲部31aの位置に係止させることが好ましい。
【0037】
そして、図4(C)に示したように、張力発生手段3によりエアバッグ2の開口部21を横方向に引っ張る。具体的には、弾性体32cの付勢力によってスライダ32bをロケピン11aから遠ざかる方向(反対方向)に移動させることによってエアバッグ2の開口部21を横方向に引っ張る。このとき、開口部21は、一端がロケピン11aに固定され、張力発生手段3により反対方向に引っ張られることから、上側の基布と下側の基布とが張り付くように扁平形状に変形することとなり、開口部21の外縁部に生じる皺を取り除くことができる。
【0038】
最後に、図4(D)に示したように、第一プレート11上のエアバッグ2の上から第二プレート12を固定する。具体的には、第一プレート11のロケピン11aに第二プレート12の透孔12aを挿通し、第一プレート11のガイド部材11cに第二プレート12の開口部12cを挿通し、第一プレート11と第二プレート12とを密着させることにより、磁石4,4′の吸着力により第二プレート12を第一プレート上に固定する。
【0039】
したがって、上述した縫製用治具1を用いることによって、開口部21の外縁部における皺の発生を抑制しつつエアバッグ2を平板状に挟持することができ、ミシン等の縫製装置に容易にセットすることができ、エアバッグ2を適切に縫製することができる。
【0040】
すなわち、上述した本実施形態に係る縫製用治具1を用いたエアバッグ2の縫製方法によれば、エアバッグ2の開口部21又はその周縁部を縫製する際に、開口部21を横方向に引っ張って扁平形状に変形させることにより、開口部21を構成する一対の基布における外縁長さを略一致させることができ、皺の発生を抑制することができる。したがって、基布の形状誤差や縫製誤差等が蓄積された開口部21やベントホール等のような機能性を有する開口部21であっても、強制的に開口部21を扁平形状に整えることができ、縫合精度の向上を図ることができる。
【0041】
次に、本発明の他の実施形態に係るエアバッグ2の縫製用治具1について、図5(A)及び(B)を参照しつつ説明する。ここで、図5は、本発明の他の実施形態に係るエアバッグの縫製用治具を示す平面図であり、(A)は第三実施形態、(B)は第四実施形態、を示している。なお、上述した実施形態と共通する構成部品については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0042】
図5(A)に示した第三実施形態に係る縫製用治具1は、例えば、エアバッグ2の開口部21にスリット23を形成する場合に使用される。具体的には、スリット23は、エアバッグ2の開口部21の両端部の一部を縫製することにより、長さSを有する開口部として形成される。
【0043】
かかる縫製用治具1を用いることにより、スリット23の形状精度を向上させることができ、長さSのスリット23を正確に縫製することができる。したがって、例えば、スリット23をベントホールとして使用する場合には、設計値通りに開閉させたり、設計値通りのガス排気量を確保したりすることができる等、スリット23の機能を保持することができる。
【0044】
図5(B)に示した第四実施形態に係る縫製用治具1は、エアバッグ2の開口部21にスロート24を形成する場合に使用される。具体的には、スロート24は、エアバッグ2の開口部21の両端部の一部を略L字形状に縫製することにより、扁平時に幅Wを有する筒状の開口部(膨張展開時は半径W/πの円形断面を有する筒状の開口部)として形成される。なお、本実施形態では、第一縫製用開口部11b及び第二縫製用開口部12bは、一端が図の下方向に屈曲したL字形状に形成されているが、図の上方向に屈曲したL字形状であってもよい。
【0045】
かかる縫製用治具1を用いることにより、スロート24の形状精度を向上させることができ、半径W/πの筒状のスロート24を正確に縫製することができる。したがって、スロート24をガス流路として使用する場合には設計値通りのガス流路を確保することができ、スロート24をインフレータ挿通路として使用する場合にはインフレータとの隙間を最小限に抑制することができる等、スロート24の機能を保持することができる。
【0046】
なお、第三実施形態及び第四実施形態に示した第一プレート11及び第二プレート12は、上述した第二実施形態におけるものと第一縫製用開口部11b及び第二縫製用開口部12bの形状が異なる以外は同一の構成を有している。
【0047】
本発明は上述した実施形態に限定されず、例えば、運転席用エアバッグ、助手席用エアバッグ、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグ等、全てのエアバッグに適用することができる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
1 縫製用治具
2 エアバッグ
3 張力発生手段
4,4′ 磁石
11 第一プレート
11a ロケピン
11b 第一縫製用開口部
11c ガイド部材
12 第二プレート
12a 透孔
12b 第二縫製用開口部
12c 開口部
12d 切欠部
21 開口部
22 タブ
23 スリット
24 スロート
31 棒状部材
31a 屈曲部
32 移動手段
32a レール
32b スライダ
32c 弾性体
32d 鍔部
32e 支持ピン
32f 係合ピン

図1
図2
図3
図4
図5