特許第6238452号(P6238452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238452
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】既設トンネル解体方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   E21D9/06 301Z
   E21D9/06 311G
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-99734(P2014-99734)
(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公開番号】特開2015-4267(P2015-4267A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年12月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-106892(P2013-106892)
(32)【優先日】2013年5月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(72)【発明者】
【氏名】庄村 典生
(72)【発明者】
【氏名】矢野 安則
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 英史
(72)【発明者】
【氏名】戸崎 雅之
【審査官】 岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−044122(JP,A)
【文献】 特開平06−235293(JP,A)
【文献】 特開平04−089992(JP,A)
【文献】 特開2001−020698(JP,A)
【文献】 米国特許第04886396(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00−9/14
E21D 11/00−19/06
E21D 23/00−23/26
F16L 1/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発進立坑と到達立坑とを構築し、複数のセグメントリングが接続されてなる既設トンネルの外周の地山を掘削し、該セグメントリングを解体する既設トンネル解体方法において、
前記セグメントリングの内周面の2つの周方向の内の一方の周方向を“一の周方向”とし、該一の周方向とは反対の周方向を“他の周方向”とした場合に、
発進立坑側の少なくとも1つのセグメントリングを前記既設トンネルから切り離すセグメントリング切り離し工程と、
該切り離したセグメントリングを移動装置により発進立坑側に所定距離だけ移動させて該セグメントリングの到達立坑側にスペースを設けるセグメントリング移動工程と、
該移動が終了したセグメントリングの位置を仮固定した後に、前記移動装置を発進立坑側に所定距離だけ移動させて該セグメントリングの発進立坑側にスペースを設ける装置移動工程と、
前記セグメントリング移動工程及び前記装置移動工程によって形成された到達立坑側及び発進立坑側のスペースを利用して前記セグメントリングの切断を行う第1切断工程と、
移動体と該移動体を支持するガイド手段とからなる移動ユニットを、少なくとも該移動体における前記セグメントリングの内周面に対向する部分が前記一の周方向に移動自在となるように該内周面に近接した位置に配置する移動ユニット配置工程と、
該移動体の少なくとも一部を前記セグメントリングに係合させる移動体係合工程と、
前記移動体を駆動することにより前記セグメントリングを所定角度だけ前記一の周方向に回転させるセグメントリング回転工程と、
前記セグメントリング移動工程及び前記装置移動工程によって形成された到達立坑側及び発進立坑側のスペースを利用して前記セグメントリングの切断を行う第2切断工程と、
該第2切断工程により切断されたセグメント片を搬出するセグメント片搬出工程と、
を備えたことを特徴とする既設トンネル解体方法。
【請求項2】
前記移動体は索条部材であり、
前記移動ユニット配置工程は、前記セグメントリングの内周面の前記一の周方向に沿うようにガイド手段を設置すると共に、該一の周方向に移動自在となるように索条部材を該ガイド手段にガイドさせる索条部材設置工程であり、
前記移動体係合工程は、力伝達手段を介して前記索条部材を前記セグメントリングに係止させる索条部材係止工程であり、
前記セグメントリング回転工程における前記セグメントリングの前記一の周方向への回転は、牽引手段により前記索条部材を介して前記力伝達手段を牽引することにより行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の既設トンネル解体方法。
【請求項3】
前記索条部材係止工程は、前記セグメントリングを挟んで対向するように該セグメントリングの両方の側面又は該側面の近傍に前記力伝達手段をそれぞれ取り付ける工程である、
ことを特徴とする請求項2に記載の既設トンネル解体方法。
【請求項4】
前記セグメントリングの2つの側面の内の一方の側面を“第1側面”とし、他方の側面を“第2側面”とした場合に、
前記ガイド手段は、トンネル軸方向に突設された突設部材と、該突設部材に回転自在に支持された滑車(以下、“固定滑車”とする)と、を有し、
前記索条部材係止工程は、前記セグメントリングの前記第1側面又はその近傍にて前記力伝達手段としての滑車(以下、“第1動滑車”とする)を回転自在に支持させると共に前記セグメントリングの前記第2側面又はその近傍にて前記力伝達手段としての滑車(以下、“第2動滑車”とする)を回転自在に支持させ、前記第1動滑車及び前記第2動滑車には前記一の周方向に力を作用させると共に前記固定滑車は前記他の周方向の反力を受けるように、前記索条部材を前記第1動滑車、前記固定滑車及び前記第2動滑車に巻き掛ける工程である、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の既設トンネル解体方法。
【請求項5】
前記ガイド手段は、前記固定滑車と離間する位置にて前記突設部材に回転自在に支持された滑車(以下、“対向固定滑車”とする)、を有し、
前記索条部材係止工程は、前記第1動滑車に略対向するように前記セグメントリングの前記第1側面又はその近傍にて前記力伝達手段としての滑車(以下、“第1対向動滑車”とする)を回転自在に支持させると共に前記第2動滑車に略対向するように前記セグメントリングの前記第2側面又はその近傍にて滑車(以下、“第2対向動滑車”とする)を回転自在に支持させ、前記第1対向動滑車及び前記第2対向動滑車には前記他の周方向に力を作用させると共に前記対向固定滑車は前記一の周方向の反力を受けるように前記索条部材を前記第1対向動滑車、前記第2対向動滑車及び前記対向固定滑車に巻き掛ける工程であり、
前記セグメントリング回転工程は、前記牽引手段により前記索条部材を介して前記力伝達手段を前記一の周方向又は前記他の周方向に牽引することにより前記セグメントリングを所定角度だけ前記一の周方向又は前記他の周方向に回転させる工程である、
ことを特徴とする請求項4に記載の既設トンネル解体方法。
【請求項6】
一のセグメントリングは前記セグメントリング回転工程にて前記一の周方向に回転させながら前記第2切断工程による切断を行い、
該一のセグメントリングに隣接する他のセグメントリングは前記セグメントリング回転工程にて前記他の周方向に回転させながら前記第2切断工程による切断を行う、
ことを特徴とする請求項5に記載の既設トンネル解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセグメントリングが接続されてなる既設トンネルを解体する既設トンネル解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、老朽化した既設トンネル(具体的には、円弧状のセグメントピースが環状に連結されてセグメントリングが構成されると共に該セグメントリングがトンネル軸方向に接続されて構成されたトンネル)を解体する方法としては、様々のものが提案されている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【0003】
図10は、既設トンネル解体方法の一例を示す縦断面図であり、図11はその横断面図である。図10中の符号Aは、解体される既設トンネルを示し、符号100はシールド掘進機を示している。このシールド掘進機100は、既設トンネルAの解体時にセグメントAの破片を掴み取るセグメント掴取装置101を備えており、該セグメント掴取装置101は、掴取装置支持部101aに支持された旋回部材(アーム部)101bと、該旋回部材101bを旋回させるための旋回用モータ101cと、セグメントAの破片を掴み取るように該旋回部材101bの先端に取り付けられてなるキャッチホーク(ハンド部)101dと、により構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−88496号公報
【特許文献2】特開平5−163897号公報
【特許文献3】特開平6−221099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来方法の場合、セグメント掴取装置101は既設トンネルAの中心部分(トンネル軸を含む部分)に配置されているためにその部分に作業用スペースを確保できないという問題があった。
【0006】
また、従来は、洞道(つまり、通信ケーブルやガス管や送電線等の種々のラインが敷設されているトンネル)のセグメントを更新する場合は、該ラインの使用を止めることが困難であることから、該ラインを一時的に移設して前記シールド掘進機を設置するためのスペースをトンネル内に確保する必要があり、その更新工事に莫大な日数やコストが掛かってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上述の問題を解消することのできる既設トンネル解体方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、発進立坑と到達立坑とを構築し、複数のセグメントリング(図2の符号A,…参照)が接続されてなる既設トンネル(A)の外周の地山(J)を掘削し、該セグメントリング(A,…)を解体する既設トンネル解体方法において、
図3に示すように、前記セグメントリング(A)の内周面(A1a)の2つの周方向(C,C)の内の一方の周方向(C)を“一の周方向”とし、該一の周方向(C)とは反対の周方向(C)を“他の周方向”とした場合に、
発進立坑側の少なくとも1つのセグメントリング(A)を前記既設トンネル(A)から切り離すセグメントリング切り離し工程(図1のS3参照)と、
該切り離したセグメントリング(A)を移動装置(図2の符号4参照)により発進立坑側に所定距離だけ移動させて該セグメントリング(A)の到達立坑側にスペース(K)を設けるセグメントリング移動工程(図1のS4参照)と、
該移動が終了したセグメントリング(A)の位置を仮固定した後に、前記移動装置(4)を発進立坑側に所定距離だけ移動させて該セグメントリング(A)の発進立坑側にスペース(K)を設ける装置移動工程(図1のS5参照)と、
前記セグメントリング移動工程(S4)及び前記装置移動工程(S5)によって形成された到達立坑側及び発進立坑側のスペース(K,K)を利用して前記セグメントリング(A)の切断を行う第1切断工程(図1のS6参照)と、
移動体(10,20)と該移動体(10,20)を支持するガイド手段(11,21)とからなる移動ユニット(U1,U2)を、少なくとも該移動体(10,20)における前記セグメントリング(A)の内周面(A1a)に対向する部分が前記一の周方向(C)に移動自在となるように該内周面(A1a)に近接した位置に配置する移動ユニット配置工程(図1のS7参照)と、
該移動体(10,20)の少なくとも一部を前記セグメントリング(A)に係合させる移動体係合工程(図1のS8参照)と、
前記移動体(10,20)を駆動することにより前記セグメントリング(A)を所定角度だけ前記一の周方向(C)に回転させるセグメントリング回転工程(図1のS9参照)と、
前記セグメントリング移動工程(S4)及び前記装置移動工程(S5)によって形成された到達立坑側及び発進立坑側のスペース(K,K)を利用して前記セグメントリング(A)の切断を行う第2切断工程(図1のS10参照)と、
該第2切断工程(S10)により切断されたセグメント片を搬出するセグメント片搬出工程(図1のS11参照)と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記移動体(10)が索条部材であり、
前記移動ユニット配置工程(S7)は、前記セグメントリング(A)の内周面(A1a)の前記一の周方向(C)に沿うようにガイド手段(11)を設置すると共に、該一の周方向(C)に移動自在となるように索条部材(10)を該ガイド手段(11)にガイドさせる索条部材設置工程であり、
前記移動体係合工程(S8)は、力伝達手段(14)を介して前記索条部材(10)を前記セグメントリング(A)に係止させる索条部材係止工程であり、
前記セグメントリング回転工程(S9)における前記セグメントリング(A)の前記一の周方向(C)への回転は、牽引手段(13)により前記索条部材(10)を介して前記力伝達手段(13)を牽引することにより行うことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、図4に例示するものであって、請求項2に係る発明において、前記索条部材係止工程(S8)が、前記セグメントリング(A)を挟んで対向するように該セグメントリング(A)の両方の側面(A1b,A1c)又は該側面(A1b,A1c)の近傍に前記力伝達手段(14)をそれぞれ取り付ける工程であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に係る発明において、前記セグメントリング(A)の2つの側面(A1b,A1c)の内の一方の側面(A1b)を“第1側面”とし、他方の側面(A1c)を“第2側面”とした場合に、
前記ガイド手段(11)は、トンネル軸方向(B)に突設された突設部材(110)と、該突設部材(110)に回転自在に支持された滑車(以下、“固定滑車”とする)(112,113)と、を有し、
前記索条部材係止工程(S8)は、前記セグメントリング(A)の前記第1側面(A1b)又はその近傍にて前記力伝達手段(14)としての滑車(以下、“第1動滑車”とする)(141)を回転自在に支持させると共に前記セグメントリング(A)の前記第2側面(A1c)又はその近傍にて前記力伝達手段(14)としての滑車(以下、“第2動滑車”とする)(142)を回転自在に支持させ、前記第1動滑車(141)及び前記第2動滑車(142)には前記一の周方向(C)に力を作用させると共に前記固定滑車(112,113)は前記他の周方向(C)の反力を受けるように、前記索条部材(10)を前記第1動滑車(141)、前記固定滑車(112,113)及び前記第2動滑車(142)に巻き掛ける工程であることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、前記ガイド手段(11)が、前記固定滑車(112,113)と離間する位置にて前記突設部材(110)に回転自在に支持された滑車(以下、“対向固定滑車”とする)(114,115)、を有し、
前記索条部材係止工程(S8)は、前記第1動滑車(141)に略対向するように前記セグメントリング(A)の前記第1側面(A1b)又はその近傍にて前記力伝達手段(14)としての滑車(以下、“第1対向動滑車”とする)(143)を回転自在に支持させると共に前記第2動滑車(142)に略対向するように前記セグメントリング(A)の前記第2側面(A1c)又はその近傍にて滑車(以下、“第2対向動滑車”とする)(144)を回転自在に支持させ、前記第1対向動滑車(143)及び前記第2対向動滑車(144)には前記他の周方向(C)に力を作用させると共に前記対向固定滑車(114,115)は前記一の周方向(C)の反力を受けるように前記索条部材(10)を前記第1対向動滑車(143)、前記第2対向動滑車(144)及び前記対向固定滑車(114,115)に巻き掛ける工程であり、
前記セグメントリング回転工程(S9)は、前記牽引手段(13)により前記索条部材(10)を介して前記力伝達手段(14)を前記一の周方向(C)又は前記他の周方向(C)に牽引することにより前記セグメントリング(A)を所定角度だけ前記一の周方向(C)又は前記他の周方向(C)に回転させる工程であることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明において、一のセグメントリング(A)は前記セグメントリング回転工程(S9)にて前記一の周方向(C)に回転させながら前記第2切断工程(S10)による切断を行い、
該一のセグメントリング(A)に隣接する他のセグメントリング(A)は前記セグメントリング回転工程(S9)にて前記他の周方向(C)に回転させながら前記第2切断工程(S10)による切断を行うことを特徴とする。
【0014】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
請求項1及び2に係る発明によれば、前記移動体や前記ガイド手段は前記セグメントリングの内周面に沿うように該内周面に近接した位置に配置されているため、既設トンネルの中心部分(つまり、トンネル軸に沿った部分)にスペースを設けることができ、そのスペースを作業用等のスペースとして利用することができる。さらに、中心部分にライン(つまり、通信ケーブルやガス管や送電線等のライン)が敷設されている洞道(既設トンネル)であっても該ラインとの干渉を避けるようにして前記移動体や前記ガイド手段を配置することができ、トンネル内のラインは移設せずにそのままにしておいてトンネルのセグメントだけを解体することができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、前記牽引手段が発生させた力(牽引力)は前記索条部材及び前記力伝達部材を介してセグメントリングの両側面(該セグメントリングを挟んで略対向する部分)に作用することとなり、該セグメントリングのトンネル軸方向(或いはその逆方向)への傾動が防止される。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、動滑車の使用により牽引力をアップさせることができると共に、前記牽引手段に小出力で小型のものを使用することができて占有スペースを小さくすることができる。
【0018】
請求項5及び6に係る発明によれば、一つのセグメントリングの解体が終わって次のセグメントリングの解体を行う際に力伝達手段を元の位置まで戻す必要が無くなるので、効率的に解体作業を進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明に係る既設トンネル解体方法の一例を示すフローチャート図である。
図2図2は、本発明に係る既設トンネル解体方法の一例を示す縦断面図である。
図3図3は、本発明に係る既設トンネル解体方法の一例を示す横断面図である。
図4図4は、索条部材及び各動滑車等の配置位置の一例を示す模式図である。
図5図5(a) 〜(c) は、セグメントリングの解体の手順を示す模式図である。
図6図6(a) 〜(c) は、セグメントリングの解体の手順を示す模式図である。
図7図7(a) 〜(c) は、セグメントリングの解体の手順を示す模式図である。
図8図8は、本発明に係る既設トンネル解体方法の他の例を示す縦断面図である。
図9図9は、本発明に係る既設トンネル解体方法の一例を示す横断面図である。
図10図10は、既設トンネル解体方法の一例(従来例)を示す縦断面図である。
図11図11は、既設トンネル解体方法の一例(従来例)を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1乃至図8に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
本発明に係る既設トンネル解体方法は、発進立坑と到達立坑とを構築し、複数のセグメントリング(図2の符号A,…参照)が接続されてなる既設トンネルAの外周の地山Jを掘削し、該セグメントリングA,…を解体するための方法である。なお、本明細書においては、図3に示すように、前記セグメントリングAの内周面A1aの2つの周方向C,Cの内の一方の周方向Cを“一の周方向”とし、該一の周方向Cとは反対の周方向Cを“他の周方向”とする。
【0022】
本発明に係る既設トンネル解体方法は、図1に例示するものであって、少なくとも以下の工程を備えている。すなわち、
・ 発進立坑及び到達立坑を構築する工程(立坑構築工程)S1
・ 公知のカッターヘッド(図2及び図8の符号2参照)などを使って既設トンネルAの外周(周囲)の地山(図2及び図8の符号J参照)を掘削する工程(地山掘削工程)S2
・ 発進立坑側の少なくとも1つのセグメントリングAを前記既設トンネルAから切り離す工程(セグメントリング切り離し工程)S3
・ 該切り離したセグメントリングAを移動装置(図2及び図8の符号4参照。例えば、油圧ジャッキ)により発進立坑側に所定距離(例えば、400mm程度)だけ移動させて該セグメントリングAの到達立坑側の既設トンネルAとの間にスペース(図2及び図8の符号K参照)を設ける工程(セグメントリング移動工程)S4
・ 該移動が終了したセグメントリングAの位置を仮固定装置(図2及び図8の符号3参照)によって仮固定(装置移動工程中は、発進立坑側に移動しないように該セグメントリングAを固定するという意味)した後に、前記移動装置4を発進立坑側に所定距離だけ移動させて該セグメントリングAの発進立坑側の移動装置4との間にスペース(図2及び図8の符号K参照)を設ける工程(装置移動工程)S5
・ 前記セグメントリング移動工程S4及び前記装置移動工程S5によって形成された到達立坑側及び発進立坑側のスペースK,Kを利用して前記セグメントリングAの切断を行う工程(第1切断工程:図5(a) 参照)S6
図3及び図9に示すように、移動体10,20と該移動体10,20を支持するガイド手段11,21とからなる移動ユニットU1,U2を、少なくとも該移動体10,20における前記セグメントリングAの内周面A1aに対向する部分が前記一の周方向Cに移動自在となるように前記移動ユニットU1,U2を該内周面A1aに近接した位置に配置する工程(移動ユニット配置工程)S7
・ 該移動体10,20の少なくとも一部を前記セグメントリングAに係合(該移動体10,20の駆動力が前記セグメントリングAに伝わるように係止又は当接させることを意味する)させる工程(移動体係合工程)S8
・ 前記移動体10,20を駆動手段(例えば、牽引手段13やモータ23)によって駆動することにより前記セグメントリングAを所定角度だけ少なくとも前記一の周方向Cに回転させる工程(セグメントリング回転工程:図5(b) 参照)S9
・ 前記セグメントリング移動工程S4及び前記装置移動工程S5によって形成された到達立坑側及び発進立坑側のスペースK,Kを利用して前記セグメントリングAの切断を行う工程(第2切断工程)S10
・ 該第2切断工程S10により切断されたセグメント片(つまり、ボルトによる接合が解除されたセグメントピースや、カッターや破砕装置で切断等されたセグメントの欠片)を他の場所までウインチ等によって搬出する工程(セグメント片搬出工程)S11
【0023】
ここで、前記移動体としては、
図2乃至図4に示すような、可撓性に富む索条部材(例えば、チェーンやワイヤーなど)10や、
図8及び図9に示すような、前記セグメントリングAの内周面A1aに当接されるローラーや、
・ キャタピラー(不図示)
などを挙げることができる。
【0024】
また、前記移動体として索条部材10を用いた場合には、前記移動ユニット配置工程S7は、前記セグメントリングAの内周面A1aの前記一の周方向Cに沿うように(該内周面A1aに近接させて)ガイド手段11を設置すると共に、該一の周方向Cに移動自在となるように(かつ、該内周面A1aに近接するように)索条部材10を該ガイド手段11にガイドさせる索条部材設置工程にすると良く、前記移動体係合工程S8は、力伝達手段(前記索条部材10と前記セグメントリングAとの間に介装させることにより牽引手段13の牽引力を該セグメントリングAに伝達するための手段)14を介して前記索条部材10を前記セグメントリングAに係止させる索条部材係止工程にすると良く、さらに、前記セグメントリング回転工程S9における前記セグメントリングAの前記一の周方向Cへの回転は、牽引手段13により前記索条部材10を介して前記力伝達手段14を牽引することにより行うようにすると良い。
【0025】
そして、前記セグメントリング回転工程S9→前記第2切断工程S10→前記セグメント片搬出工程S11を順次実施することにより、図5乃至図7に例示するように、前記セグメントリングAの解体を行うようになっている。
【0026】
なお、前記セグメントリング切り離し工程S4における前記セグメントリングAの切り離しは、
・ セグメントリングどうしを接続しているボルトを回して抜き取ることにより行っても、或いは、
・ 何らかの工具で該ボルトを切断することに行っても、
どちらでも良い。また、図2に示す仮固定装置3は、シールド掘進機本体12の側から到達立坑側に突設された棒状の部材であって、該棒状の部材を前記セグメントリングAの側面A1cに押し当てることにより該セグメントリングAの発進立坑側への移動を規制するようになっているが、もちろんこれに限られるものではない。例えば、既設トンネルAと前記セグメントリングAとを何らかの部材(例えば、棒状の部材)で接続することで、セグメントリングAの発進立坑側への移動を規制するようにしても良い。さらに、該装置移動工程S5における前記移動装置4の移動は油圧ジャッキ等により行うようにすると良い。またさらに、前記第1切断工程S6及び前記第2切断工程S10における前記セグメントリングAの切断は、
・ 電動カッター(いわゆる電気丸のこと呼ばれるカッターや、チェーンソーなど)や他の破砕装置によって行うようにしても、
・ セグメントピースどうしを接合しているボルトの取り外し(回して抜き取ること、及び切断することのいずれか)によって行うようにしても、
どちらでも良い。また、図5乃至7に示す例では、前記第1切断工程S6及び前記第2切断工程S10における前記セグメントリングAの切断は、一番下方の部分で行っているが、もちろんこれに限られるものではなく、他の個所で行うようにしても良い。さらに、最後のセグメントリング回転工程S9が終了した時点で、前記力伝達手段14を前記セグメントリングA(正確には、ほとんどの部分が除去され搬出された後のセグメント片)から取り外す工程(解除工程)S12を実施すると良い。そして、次のセグメントリングAについては、上記セグメントリング切り離し工程S3〜前記セグメント片搬出工程S11を同様に実施すると良い。なお、前記第1切断工程S6と前記索条部材設置工程S7と前記索条部材係止工程S8とは、必ずしもその順序で実施する必要は無く、どのような順序で実施するようにしても良い。
【0027】
ところで、図3及び図4に示す前記力伝達手段14は前記セグメントリングAの側面に取り付けられているが、該セグメントリングAの側面ではなく内周面A1aに1つ以上取り付けるようにしても良い。前記索条部材係止工程S8にて前記力伝達手段14を前記セグメントリングAの側面に取り付ける場合には、前記セグメントリングAを挟んで略対向するように該セグメントリングAの両方の側面A1b,A1c又は該側面A1b,A1cの近傍に前記力伝達手段14をそれぞれ取り付けると良い。つまり、前記セグメントリングAの2つの側面A1b,A1cの内の一方の側面A1bを“第1側面”とし、他方の側面A1cを“第2側面”とした場合に、前記力伝達手段14を、
・ 前記セグメントリングAの前記第1側面A1b又はその近傍と、
・ 前記セグメントリングAの前記第2側面A1c又はその近傍と、
にそれぞれ取り付けておくと良い。そのようにした場合には、前記牽引手段13が発生させた力(牽引力)は前記索条部材10及び前記力伝達部材14を介してセグメントリングAの両側面A1b,A1c(該セグメントリングAを挟んで略対向する部分)に作用することとなり、該セグメントリングAのトンネル軸方向B(或いはその逆方向)への傾動が防止される。
【0028】
また、前記ガイド手段11が、掘進機本体12からトンネル軸方向Bに突設された突設部材110と、該突設部材110に回転自在に支持された滑車(以下、“固定滑車”とする)112,113と、を有するようにし、前記索条部材設置工程S7及び/又は前記索条部材係止工程S8では、
・ 前記セグメントリングAの前記第1側面A1b又はその近傍にて前記力伝達手段としての滑車(以下、“第1動滑車”とする)141を回転自在に支持させ、
・ 前記セグメントリングAの前記第2側面A1c又はその近傍にて前記力伝達手段としての滑車(以下、“第2動滑車”とする)142を回転自在に支持させ、
・ 前記第1動滑車141及び前記第2動滑車142には前記一の周方向Cに力を作用させると共に前記固定滑車112,113は前記他の周方向Cの反力を受けるように、前記索条部材10を前記第1動滑車141、前記固定滑車112,113及び前記第2動滑車142に巻き掛ける、
ようにすると良い。そのようにした場合には、動滑車141,142の使用により牽引力をアップさせることができると共に、前記牽引手段13に小出力で小型のものを使用することができて占有スペースを小さくすることができる。
【0029】
さらに、前記ガイド手段11が、前記固定滑車112,113と離間する位置にて前記突設部材110に回転自在に支持された滑車(以下、“対向固定滑車”とする)114,115、を有するようにし、前記索条部材設置工程S7及び/又は前記索条部材係止工程S8では、
・ 前記第1動滑車141に略対向するように前記セグメントリングAの前記第1側面A1b又はその近傍にて前記力伝達手段としての滑車(以下、“第1対向動滑車”とする)143を回転自在に支持させ、
・ 前記第2動滑車142に略対向するように前記セグメントリングAの前記第2側面A1c又はその近傍にて滑車(以下、“第2対向動滑車”とする)144を回転自在に支持させ、
・ 前記第1対向動滑車143及び前記第2対向動滑車144には前記他の周方向Cに力を作用させると共に前記対向固定滑車114,115は前記一の周方向Cの反力を受けるように前記索条部材10を前記第1対向動滑車143、前記第2対向動滑車144及び前記対向固定滑車114,115に巻き掛ける、
ようにし、前記セグメントリング回転工程S9では、前記牽引手段13により前記索条部材10を介して前記力伝達手段14を前記一の周方向C又は前記他の周方向Cに牽引することにより前記セグメントリングAを所定角度だけ前記一の周方向C又は前記他の周方向Cに回転させるようにすると良い。その場合、前記索条部材10の両端(図4の符号10a,10b参照)を前記ガイド手段11の側に固定しておくと良い。また、一のセグメントリングAについては前記セグメントリング回転工程S9にて前記一の周方向Cに回転させながら前記第2切断工程S10による切断を行い、該一のセグメントリングAに隣接する他のセグメントリングAについては前記セグメントリング回転工程S9にて前記他の周方向Cに回転させながら前記第2切断工程S10による切断を行うようにすると良い。そのようにした場合には、前記セグメントリングAを一の周方向Cにしか回転させられない場合には、図5(a) →(b) →(c) →図6(a) →(b) →(c) →図7(a) →(b) に示すように該セグメントリングAを回転させながら解体すると、前記力伝達手段14は、図7(c) に示す位置(つまり、前記一の周方向Cの回転終点端)に到達することとなる。そして、次のセグメントリングAを回転させるためには、該力伝達手段14を元の位置(つまり、図5(a) に示す位置であって、前記一の周方向Cの回転始点端)にまで作業者が手動で戻さなければならないが、その際に前記索条部材10が前記ガイド部111や滑車141,…等から外れてしまうおそれがある。しかし、セグメントリングを上述のように前記一の周方向Cだけでなく前記他の周方向Cにも回転させることができるようにしておくと、次のセグメントリングAは逆方向(前記他の周方向C)に回転させれば良いので、前記力伝達手段14を元の位置にまで戻す必要はなく、効率的に解体作業を進めることができる。
【0030】
次に、上述した既設トンネル解体方法に好適なシールド掘進機について説明する。
【0031】
本発明にて使用するシールド掘進機は、複数のセグメントリング(円弧状のセグメントピースが環状に連結されて構成されたセグメントリングA,…)がトンネル軸方向Bに接続されてなる既設トンネルAを埋め戻したり更新したりする際に使用される装置であって、該既設トンネルAを解体する機能を有する装置である。
【0032】
該シールド掘進機は、図2,3,8及び9に符号1,50で例示するように、
・ 移動体(例えば、チェーンやワイヤーなどの可撓性に富む索条部材やローラーやキャタピラー)10,20と、
・ 該移動体10,20を移動自在に支持するガイド手段11,21と、
からなる移動ユニットU1,U2を備えている。該移動体10,20及び該ガイド手段11,21は前記セグメントリングAの内周面A1aに近接した位置に配置されており、該移動体10,20は、少なくとも該移動体10,20における前記セグメントリングAの内周面A1aに対向する部分が前記一の周方向Cに移動自在となるように支持されている。また、前記シールド掘進機1,50は、
・ 該ガイド手段11,21を支持する掘進機本体12と、
・ 前記移動体10,20を駆動する駆動手段13,23と、
により構成されたセグメント解体装置D1,D2を備えていて、前記移動体10,20を前記駆動手段13,23により駆動することに基づき、該セグメントリングAを少なくとも前記一の周方向Cに回転せしめるように構成されている。この場合、前記シールド掘進機1,50はセグメントリングAを1つずつ回転させるように構成されていることが好ましいが、複数のセグメントリングを同時に回転させる構成のものを除外するものでは無い。また、前記シールド掘進機1,50により回転させるセグメントリングAの下面にはローラーコンベヤE,…等の公知の転動部材を設けておいて、該セグメントリングAが円滑に周方向C,Cに回転されるようにしておくと良い。そして、そのローラーコンベヤEの発進立坑側(図2の右側)及び到達立坑側(図2の左側)には、前記セグメントリングAの両方又は一方の側面(トンネル軸方向Bに直交する面の意である)A1b,A1cに接触し得る部材(ガイド部材)G,Gを配置しておいて、該セグメントリングAが回転中にトンネル軸方向B(又はその逆方向)に移動してしまわないようにしておくと良い。これらのガイド部材G,GはセグメントリングAの下側に配置されていて、該セグメントリングAがローラーコンベヤE上に載置された状態でのみ該セグメントリングAの位置規制を行うようになっているので、該セグメントリングAを既設トンネルAから切り離してローラーコンベヤEに載置するまでの移動を阻害することはない。
【0033】
上述の構成のシールド掘進機1,50を使用すれば、前記セグメントリングAを少なくとも前記一の周方向Cに回転させることができる。したがって、該セグメントリングAを順次回転させながら不図示の電動カッター(いわゆる電気丸のこと呼ばれるカッターや、チェーンソーなど)や他の破砕装置でセグメントリングAを順次切断したり、セグメントピースを接合しているボルト(不図示)を外したりすることで、図5(a) →(b) →(c) →図6(a) →(b) →(c) →図7(a) →(b) →(c) に示すように、該セグメントリングAの解体を行うことができる。また、前記移動ユニットU1,U2は前記内周面A1aに近接した位置に配置されているため、前記既設トンネルAの中心部分(つまり、トンネル軸Hに沿った部分)にスペースを設けることができ、そのスペースを作業用等のスペースとして利用することができる。さらに、該中心部分にライン(つまり、通信ケーブルやガス管や送電線等のライン)が敷設されている洞道(既設トンネル)であっても該ラインとの干渉を避けるようにして前記移動ユニットU1,U2を配置することができ、トンネル内のラインは移設せずにそのままにしておいてトンネルのセグメントだけを解体することができる。またさらに、前記セグメントリングAの内周面A1aに沿う位置には前記ガイド手段11,21が配置されているので、解体中のセグメントリングAが前記既設トンネルAの中心部分(つまり、トンネル軸Hに沿った部分)の側へ傾動するのを防止することが可能となる。
【0034】
なお、前記移動体として索条部材を用いる場合には、前記ガイド手段11は、前記セグメントリングAの内周面A1aの前記一の周方向Cに沿うように(つまり、前記セグメントリングAの内周面A1aに近接した状態で、該内周面A1aの前記一の周方向Cに沿って延設されるように)前記索条部材10を移動自在にガイドするようにすると良い。また、前記駆動手段13には、前記索条部材10を少なくとも前記一の周方向Cに牽引する牽引手段(ウインチ)を用いると良い。さらに、前記索条部材10と前記セグメントリングAとの間に介装されることにより前記牽引手段13の牽引力を該セグメントリングAに伝達する力伝達手段14を用いると良い。この場合、C形鋼のような適当な剛性カバー(不図示)で前記索条部材10を覆うようにしておいて、作業者が該索条部材10に触れにくいようにしておくと良い。
【0035】
なお、図3及び図4に示す力伝達手段14は、前記セグメントリングAに回転自在に支持されてなる滑車であるが、前記牽引手段13の牽引力を前記セグメントリングAに伝えるものであれば滑車以外のものであっても良く、ボルトボックス(図4に符号A1dで例示するものであって、セグメントリングどうしを接合するために使用されていたボルトボックス)に装着されるボルト(不図示)であっても、該ボルトボックスA1dを利用せずにセグメントリングA自体に打ち込まれるアンカーボルトであっても、ボルト以外の公知の何らかの部品であっても良い。
【0036】
なお、図4に示す例では、前記力伝達手段14は、ボルトボックスA1d(つまり、セグメントリングどうしを連結するために使用されていたボルトボックスA1d)に取り付けられている。このようにすることにより、該力伝達手段14を確実かつ簡便にセグメントリングAに取り付けることができる。
【0037】
一方、上述のガイド手段11は、
図2及び図4に明示するように、前記セグメントリングAの内周面A1aに沿うように(該内周面A1aに近接した位置に)前記掘進機本体12からトンネル軸方向Bに突設された突設部材110と、
図4に明示するように、該突設部材110に支持されて前記セグメントリングAの内周面A1aの前記一の周方向Cに沿うように前記索条部材10を移動自在にガイドするガイド部111と、
により構成すると良い。なお、図4に示す突設部材110は、トンネル軸方向Bに延設された複数本の円柱状の部材であるが、もちろんこれに限られるものではなく、どのような形状(例えば、角柱状や円筒状や角筒状や)であっても良く、或いは、前記セグメントリングAの内径より少し小さい外径を持つ1つの筒状部材であっても良い。また、上述のガイド部111としては、
・ 前記索条部材10をガイドするように前記突設部材110に回転自在に支持された滑車や、
・ 該索条部材10を摺動自在に支持する溝部
などを挙げることができる。また、前記牽引手段13はブレーキ付きのものにしておいて、セグメントリングの切断をカッターで行う場合に該ブレーキを働かせて、セグメントリングによる切断刃の挟み込み及びセグメント自重による落下回動を防止するようにすると良い。
【0038】
ところで、図4に詳示するように、前記力伝達手段14を、前記セグメントリングAの前記第1側面A1b又はその近傍にて回転自在に支持される滑車(以下、“第1動滑車”とする)141と、前記セグメントリングAの前記第2側面A1c又はその近傍にて回転自在に支持される滑車(以下、“第2動滑車”とする)142と、により構成しておき、前記ガイド手段11には、前記突設部材110に回転自在に支持された滑車(以下、“固定滑車”とする)112,113を設けておいて、前記第1動滑車141及び前記第2動滑車142には前記一の周方向Cに力を作用させると共に前記固定滑車112,113は前記他の周方向Cの反力を受けるように、前記索条部材10を前記第1動滑車141、前記固定滑車112,113及び前記第2動滑車142に巻き掛けておくと良い。そのようにした場合には、動滑車141,142の使用により牽引力をアップさせることができると共に、前記牽引手段13に小出力で小型のものを使用することができて占有スペースを小さくすることができる。なお、図4に示す固定滑車112,113は、
・ 前記第1動滑車141に略対向するように前記セグメントリングAの前記第1側面A1b又はその近傍にて回転自在に支持される第1固定滑車112と、
・ 該第1固定滑車112及び前記第2動滑車142に略対向するように前記セグメントリングAの前記第2側面A1c又はその近傍にて回転自在に支持される第2固定滑車113と、
であるが、前記他の周方向Cの反力を受けるように配置されるものであれば配置位置や個数をどのように設定しても良い。
【0039】
さらに、前記力伝達手段14は、前記第1動滑車141に略対向するように前記セグメントリングAの前記第1側面A1b又はその近傍にて回転自在に支持される滑車(以下、“第1対向動滑車”とする)143と、前記第2動滑車142に略対向するように前記セグメントリングAの前記第2側面A1c又はその近傍にて回転自在に支持される滑車(以下、“第2対向動滑車”とする)144と、を有するようにし、前記ガイド手段11は、前記固定滑車112,113と離間する位置にて前記突設部材110に回転自在に支持された滑車(以下、“対向固定滑車”とする)114,115を有するようにして、前記索条部材10は、前記各動滑車141,…,144及び前記各固定滑車112,…,115に適切な順序で巻き掛けられると共に両端(図4の符号10a,10b参照)が前記ガイド手段11の側に固定され、前記牽引手段13は前記索条部材10の両方向に牽引力を作用せしめるように構成されて、前記第1対向動滑車143及び前記第2対向動滑車144には前記他の周方向Cに力を作用させると共に前記対向固定滑車114,115は前記一の周方向Cの反力を受けるように構成しておくと良い。そのようにした場合には、前記セグメントリングAを前記一の周方向Cだけでなく前記他の周方向Cにも回転させることが可能となる。前記セグメント解体装置D1によって前記セグメントリングAを一の周方向Cにしか回転させられない場合には、図5(a) →(b) →(c) →図6(a) →(b) →(c) →図7(a) →(b) に示すように該セグメントリングAを回転させながら解体すると、前記力伝達手段14は、図7(c) に示す位置(つまり、前記一の周方向Cの回転終点端)に到達することとなる。そして、次のセグメントリングAを回転させるためには、該力伝達手段14を元の位置(つまり、図5(a) に示す位置であって、前記一の周方向Cの回転始点端)にまで作業者が手動で戻さなければならないが、その際に前記索条部材10が前記ガイド部111や滑車141,…等から外れてしまうおそれがある。しかし、セグメントリングを上述のように前記一の周方向Cだけでなく前記他の周方向Cにも回転させることができるようにしておくと、次のセグメントリングAは逆方向(前記他の周方向C)に回転させれば良いので、前記力伝達手段14を元の位置にまで戻す必要はなく、効率的に解体作業を進めることができる。また、セグメントリングの切断をカッターで行う場合に前記索条部材10を逆方向に少し回転させて該セグメントリングを持ち上げることも可能となり、セグメントリングによる切断刃の挟み込みを防止することも可能となる。ところで、上述の牽引手段13としては、
・ いわゆるエンドレスウインチと呼ばれるような往復牽引型のものを1つだけ用いても、
・ 一方向牽引型のウインチを2つ用いて往復牽引できるように構成しても、
どちらでも良い。
【符号の説明】
【0040】
1 シールド掘進機
10 索条部材(移動体)
10a,10b 索条部材の両端
11 ガイド手段
12 掘進機本体
13 牽引手段(駆動手段)
14 力伝達手段
20 ローラー(移動体)
21 ガイド手段
23 モータ(駆動手段)
50 シールド掘進機
110 突設部材
112,113 固定滑車
114,115 対向固定滑車
141 第1動滑車
142 第2動滑車
143 第1対向動滑車
144 第2対向動滑車
A 既設トンネル
セグメントリング
1a セグメントリングの内周面
1b セグメントリングの第1側面
1c セグメントリングの第2側面
一の周方向
他の周方向
U1,U2 移動ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11