特許第6238460号(P6238460)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 興和株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6238460-脂質異常症治療剤 図000006
  • 特許6238460-脂質異常症治療剤 図000007
  • 特許6238460-脂質異常症治療剤 図000008
  • 特許6238460-脂質異常症治療剤 図000009
  • 特許6238460-脂質異常症治療剤 図000010
  • 特許6238460-脂質異常症治療剤 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238460
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】脂質異常症治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/423 20060101AFI20171120BHJP
   A61K 31/397 20060101ALI20171120BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20171120BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   A61K31/423
   A61K31/397
   A61P43/00 121
   A61P3/06
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-538198(P2014-538198)
(86)(22)【出願日】2013年9月27日
(86)【国際出願番号】JP2013005756
(87)【国際公開番号】WO2014050134
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年8月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-214635(P2012-214635)
(32)【優先日】2012年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102668
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 憲生
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100158872
【弁理士】
【氏名又は名称】牛山 直子
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 俊明
(72)【発明者】
【氏名】吉中 康展
【審査官】 高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/023777(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/120472(WO,A1)
【文献】 TAKIZAWA, T. et al.,K-877, a highly potent and selective PPARa agonist, improves dyslipidemia and atherosclerosis in exp,The 80th EAS Congress, Abstracts [online],2012年 5月,retrieved on 2013-11-02,URL,URL: http://www.kenes.com/eas2012/abstracts/pdf/787.pdf
【文献】 TAKIZAWA, T. et al.,(R)-K-13675, a highly potent and selective PPARa agonist,J. Pharmacol. Sci.,2007年, vol.103,p.244,"P3-088"
【文献】 山嵜行由ら,高活性かつ高選択的PPARαアゴニストの創製,日本薬学会第131年会要旨集1,2011年,p.160,"S13-5"
【文献】 田中明,PPAR−αアゴニスト(フィブラート),Life Style Medicine,2008年,Vol.2, No.1,pp.65-71
【文献】 Moon, Y. S. K. et al.,Ezetimibe and fenofibrate combination therapy for mixed hyperlipidemia,Drugs of Today,2007年,Vol.43, No.1,pp.35-45
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/423
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)(R)−2−[3−[[N−(ベンズオキサゾール−2−イル)−N−3−(4−メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸、若しくはその塩又はこれらの溶媒和物、及び、
b)エゼチミブ
を含有してなる脂質異常症の予防及び/又は治療用医薬組成物。
【請求項2】
脂質異常症が、混合型脂質異常症、メタボリックシンドローム、糖尿病を併発する脂質異常症、低HDLコレステロール(HDL-C)血症、又は高トリグリセリド(TG)血症から選択される疾患である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
(R)−2−[3−[[N−(ベンズオキサゾール−2−イル)−N−3−(4−メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸エゼチミブの質量比が1:200〜3:1である請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
a)(R)−2−[3−[[N−(ベンズオキサゾール−2−イル)−N−3−(4−メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸、若しくはその塩又はこれらの溶媒和物、及び、
b)エゼチミブ
を含有してなるHDLコレステロール(HDL-C)を上昇させるための医薬組成物。
【請求項5】
混合型脂質異常症、メタボリックシンドローム、糖尿病を併発する脂質異常症、低HDLコレステロール(HDL-C)血症、又は高トリグリセリド(TG)血症から選択されるHDLコレステロール(HDL-C)の上昇を必要とする疾患のための、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
(R)−2−[3−[[N−(ベンズオキサゾール−2−イル)−N−3−(4−メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸エゼチミブの質量比が1:200〜3:1である請求項4又は5に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症のような脂肪血症状態を予防及び/又は治療することを目的とした、ペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体(PPAR;Peroxisome Proliferator-Activated Receptor)のうちαタイプ(PPARα)を選択的に活性化する化合物(1)及びコレステロール吸収抑制剤を含有する組成物及びこれらの併用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食の欧米化により、いわゆる生活習慣病の範疇とされる高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、低HDLコレステロール血症等が増加傾向にある。また最近では、高コレステロール血症と高トリグリセリド血症の両方を有する混合型又は複合型脂質異常症が増加している。とりわけ混合型脂質異常症患者は、LDLコレステロール(LDL-C)とトリグリセリド(TG)が上昇し、HDLコレステロール(HDL-C)が低下しており、このような高TG、低HDL-C状態は、メタボリックシンドロームや糖尿病を持つ患者にも見られる。高LDL-C血症、低HDL-C血症、高TG血症は、冠動脈疾患(coronary artery disease : CAD)や脳血管障害などの危険因子であることが立証されており、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」においても、これらの脂質異常症の管理の重要性が示されている。
【0003】
脂質異常症、特に高コレステロール血症は、スタチンの登場によりすでにかなり医療満足度の高い疾患領域になったが、多くの大規模臨床試験の結果から、血中LDLコレステロールをより下げることが冠動脈疾患の予防に繋がること(the lower the better)が判明し、より厳しい脂質コントロールが求められている。スタチンだけでは目標の血中LDL-C値に到達できない患者も多く、多剤併用が求められるようになっている。一方、高TG血症に関してはフィブラート系の薬剤がより効果的に低下させることが示されており、低HDL-C血症には、CETP阻害剤やアポA-I上昇剤などが研究開発されている。特に血中HDL-C上昇薬はコレステロールの逆転送や動脈硬化の進展抑制並びに退縮の面から、今後重要度が増すと期待されている(非特許文献1)。
【0004】
PPARは、核内受容体ファミリーに属する受容体の一つである。この受容体には3つのサブタイプ(α、γ、δ)の存在が知られている(非特許文献2)。これらのうち、PPARαは主に肝臓に発現しており、PPARαが活性化されるとアポC-IIIの産生が抑制され、次いでリポプロテインリパーゼ(LPL)が活性化されて、その結果、脂肪が分解される。PPARαアゴニストとしては、不飽和脂肪酸や、フェノフィブラート、ベザフィブラート、ゲムフィブロジル等のフィブラート系薬剤等が知られている(非特許文献3)。また、近年、従来のフィブラート系薬剤よりも強力かつ選択的にPPARα活性化作用をもつ化合物が報告されている(特許文献1〜10)。
【0005】
コレステロール吸収阻害剤は、小腸からの食事性コレステロールの吸収を抑制する薬剤である。血中コレステロール濃度を決める要因として、肝臓でのde novo合成によるコレステロールが7割、食事性のコレステロールが3割といわれており、スタチンによるコレステロール合成阻害とは独立して、小腸からの食事性コレステロールの吸収を抑制して、血中コレステロールを下げることが可能である。コレステロール吸収阻害剤としては、例えばエゼチミブ(Zetia(登録商標))が知られている。そのメカニズムは長らく不明であったが、最近、小腸上皮細胞に発現するコレステロールトランスポーター(Niemann-Pick C1-like 1,NPC1-L1)を阻害することでコレステロールの吸収を抑制するメカニズムが判明している。エゼチミブの他にもコレステロールトランスポーターの阻害作用を有する化合物が複数報告されている(特許文献11〜14)。
【0006】
血中LDL-Cと血中TGが上昇し、血中HDL-Cが低下するという特徴を有する混合型脂質異常症患者を対象に、前記フィブラート系薬剤とエゼチミブの併用が検討されている(特許文献15、非特許文献4、5)。しかしながら、本発明の化合物(1)とエゼチミブとを併用した場合に、脂質異常症に対してどのような併用効果が現れるかは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2005/023777号パンフレット
【特許文献2】WO2009/080248号パンフレット
【特許文献3】WO2009/047240号パンフレット
【特許文献4】WO2008/006043号パンフレット
【特許文献5】WO2006/049232号パンフレット
【特許文献6】WO2006/033891号パンフレット
【特許文献7】WO2005/009942号パンフレット
【特許文献8】WO2004/103997号パンフレット
【特許文献9】WO2005/097784号パンフレット
【特許文献10】WO2003/043997号パンフレット
【特許文献11】WO2007/008541号パンフレット
【特許文献12】WO2007/008529号パンフレット
【特許文献13】WO2008/033464号パンフレット
【特許文献14】WO2008/104875号パンフレット
【特許文献15】WO2002/058732号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日薬理誌, 129, 267-270(2007)
【非特許文献2】J.Lipid Research 37, 907-925(1996)
【非特許文献3】Trends in Endocrinology and Metabolism, 15(7), 324-330(2004)
【非特許文献4】European Heart Journal, 26, 897-905 (2005)
【非特許文献5】Clinical Medicine:Therapeutics, 1, 1703-1713 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、低HDL-C血症のような脂質異常症状態を予防及び/又は治療するための組合せ医薬組成物及び薬剤の併用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、斯かる実情に鑑み、鋭意研究した結果、前記特許文献1において、選択的なPPARα活性化作用を有し、ヒトを含む哺乳類における体重増加や肥満を伴わない、脂質異常症、動脈硬化症、糖尿病、糖尿病合併症(糖尿病性腎症等)、炎症、心疾患等の予防及び/又は治療薬として有用であることが開示されている、下記一般式(1)で表されるフェノキシ酢酸誘導体又はその塩と、コレステロール吸収抑制剤であるエゼチミブとの併用により、強力な血中HDLコレステロール上昇作用を発揮する事実を見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、
a)次の一般式(1):
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、R及びRは同一又は異なって水素原子、メチル基又はエチル基を示し;R3a、R3b、R4a及びR4bは同一又は異なって水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、C1−4アルキル基、トリフルオロメチル基、C1−4アルコキシ基、C1−4アルキルカルボニルオキシ基、ジ−C1−4アルキルアミノ基、C1−4アルキルスルフォニルオキシ基、C1−4アルキルスルフォニル基、C1−4アルキルスルフィニル基、又はC1−4アルキルチオ基を示すか、R3aとR3bあるいはR4aとR4bが結合してアルキレンジオキシ基を示し;Xは酸素原子、硫黄原子又はN−R(Rは水素原子、C1−4アルキル基、C1−4アルキルスルフォニル基、C1−4アルキルオキシカルボニル基を示す。)を示し;Yは酸素原子、S(O)基(lは0〜2の数を示す。)、カルボニル基、カルボニルアミノ基、アミノカルボニル基、スルフォニルアミノ基、アミノスルフォニル基、又はNH基を示し;ZはCH又はNを示し;nは1〜6の数を示し;mは2〜6の数を示す。)
で表される化合物、若しくはその塩又はこれらの溶媒和物、及び、
b)コレステロール吸収抑制剤
を含有してなる脂質異常症の予防及び/又は治療用医薬組成物を提供するものである。
【0014】
より詳細には、a)前記一般式(1)で表される化合物、若しくはその塩又はこれらの溶媒和物、及び、b)コレステロール吸収抑制剤を含有してなる、混合型脂質異常症、メタボリックシンドローム、糖尿病を併発する脂質異常症、低HDL-C血症、又は高TG血症の予防及び/又は治療用医薬組成物を提供するものである。
【0015】
本発明をより詳細に説明すれば次のとおりとなる。
(1)前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はこれらの溶媒和物、及びコレステロール吸収抑制剤を含有してなる、脂質異常症の予防及び/又は治療用医薬組成物。
(2)前記一般式(1)で表される化合物が、(R)−2−[3−[[N−(ベンズオキサゾール−2−イル)−N−3−(4−メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸である、前記(1)に記載の医薬組成物。
(3)コレステロール吸収抑制剤がエゼチミブである、前記(1)又は(2)に記載の医薬組成物。
(4)脂質異常症が、混合型脂質異常症、メタボリックシンドローム、糖尿病を併発する脂質異常症、低HDLコレステロール(HDL-C)血症、又は高トリグリセリド(TG)血症から選択される疾患である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の医薬組成物。
(5)一般式(1)で表される化合物とコレステロール吸収抑制剤の質量比が、1:200〜3:1である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の医薬組成物。
(6)前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はこれらの溶媒和物、及びコレステロール吸収抑制剤を含有してなる、HDLコレステロール(HDL-C)を上昇させるための医薬組成物。
(7)前記一般式(1)で表される化合物が、(R)−2−[3−[[N−(ベンズオキサゾール−2−イル)−N−3−(4−メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸である、前記(6)に記載の医薬組成物。
(8)コレステロール吸収抑制剤がエゼチミブである、前記(6)又は(7)に記載の医薬組成物。
(9)HDLコレステロール(HDL-C)の上昇を必要とする疾患が、混合型脂質異常症、メタボリックシンドローム、糖尿病を併発する脂質異常症、低HDLコレステロール(HDL-C)血症、又は高トリグリセリド(TG)血症から選択される疾患である、前記(6)〜(8)のいずれかに記載の医薬組成物。
(10)一般式(1)で表される化合物とコレステロール吸収抑制剤の質量比が、1:200〜3:1である、前記(6)〜(9)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0016】
(11)脂質異常症の患者又は脂質異常症になるおそれのある患者に、前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はこれらの溶媒和物、及びコレステロール吸収抑制剤を含有してなる医薬組成物の有効量を投与することからなる、患者の脂質異常症を予防及び/又は治療する方法。
(12)前記一般式(1)で表される化合物が、(R)−2−[3−[[N−(ベンズオキサゾール−2−イル)−N−3−(4−メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸である、前記(11)に記載の患者の脂質異常症を予防及び/又は治療する方法。
(13)コレステロール吸収抑制剤がエゼチミブである、前記(11)又は(12)に記載の患者の脂質異常症を予防及び/又は治療する方法。
(14)脂質異常症が、混合型脂質異常症、メタボリックシンドローム、糖尿病を併発する脂質異常症、低HDLコレステロール(HDL-C)血症、又は高トリグリセリド(TG)血症である、前記(11)〜(13)のいずれかに記載の患者の脂質異常症を予防及び/又は治療する方法。
(15)医薬組成物における一般式(1)で表される化合物とコレステロール吸収抑制剤の質量比が、1:200〜3:1である、前記(11)〜(14)のいずれかに記載の患者の脂質異常症を予防及び/又は治療する方法。
(16)HDLコレステロール(HDL-C)の上昇を必要とする患者に、前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はこれらの溶媒和物、及びコレステロール吸収抑制剤を含有してなる医薬組成物の有効量を投与することからなる、患者のHDLコレステロール(HDL-C)を上昇させる方法。
(17)前記一般式(1)で表される化合物が、(R)−2−[3−[[N−(ベンズオキサゾール−2−イル)−N−3−(4−メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸である、前記(16)に記載の方法。
(18)コレステロール吸収抑制剤がエゼチミブである、前記(16)又は(17)に記載の方法。
(19)HDLコレステロール(HDL-C)の上昇を必要とする疾患が、混合型脂質異常症、メタボリックシンドローム、糖尿病を併発する脂質異常症、低HDLコレステロール(HDL-C)血症、又は高トリグリセリド(TG)血症である、前記(16)〜(18)のいずれかに記載の方法。
(20)医薬組成物における一般式(1)で表される化合物とコレステロール吸収抑制剤の質量比が、1:200〜3:1である、前記(16)〜(19)のいずれかに記載の方法。
【0017】
(21)コレステロール吸収抑制剤と組み合わせて脂質異常症を予防及び/又は治療するための医薬組成物として使用するための、前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はこれらの溶媒和物。
(22)前記一般式(1)で表される化合物が、(R)−2−[3−[[N−(ベンズオキサゾール−2−イル)−N−3−(4−メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸である、前記(21)に記載の化合物若しくはその塩又はこれらの溶媒和物。
(23)コレステロール吸収抑制剤がエゼチミブである、前記(21)又は(22)に記載の化合物若しくはその塩又はこれらの溶媒和物。
(24)脂質異常症が、混合型脂質異常症、メタボリックシンドローム、糖尿病を併発する脂質異常症、低HDLコレステロール(HDL-C)血症、又は高トリグリセリド(TG)血症である、前記(21)〜(23)のいずれかに記載の化合物若しくはその塩又はこれらの溶媒和物。
(25)医薬組成物における一般式(1)で表される化合物とコレステロール吸収抑制剤の質量比が、1:200〜3:1である、前記(21)〜(24)のいずれかに記載の化合物若しくはその塩又はこれらの溶媒和物。
(26)コレステロール吸収抑制剤と組み合わせてHDLコレステロール(HDL-C)を上昇させるための医薬組成物として使用するための、前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はこれらの溶媒和物。
(27)前記一般式(1)で表される化合物が、(R)−2−[3−[[N−(ベンズオキサゾール−2−イル)−N−3−(4−メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸である、前記(26)に記載の化合物若しくはその塩又はこれらの溶媒和物。
(28)コレステロール吸収抑制剤がエゼチミブである、前記(26)又は(27)に記載の化合物若しくはその塩又はこれらの溶媒和物。
(29)HDLコレステロール(HDL-C)の上昇を必要とする疾患が、混合型脂質異常症、メタボリックシンドローム、糖尿病を併発する脂質異常症、低HDLコレステロール(HDL-C)血症、又は高トリグリセリド(TG)血症である、前記(26)〜(28)のいずれかに記載の化合物若しくはその塩又はこれらの溶媒和物。
(30)医薬組成物における一般式(1)で表される化合物とコレステロール吸収抑制剤の質量比が、1:200〜3:1である、前記(26)〜(29)のいずれかに記載の化合物若しくはその塩又はこれらの溶媒和物。
【発明の効果】
【0018】
本発明の薬剤及び医薬組成物は、優れた血中HDLコレステロール上昇作用を有し、脂質異常症、特に混合型脂質異常症、メタボリックシンドローム、糖尿病を併発する脂質異常症、低HDL-C血症、高TG血症の予防及び/又は治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、化合物A及びエゼチミブの単独及び併用投与時の血漿中HDL-Cを示す図である。
図2図2は、化合物A及びエゼチミブの単独及び併用投与時の血漿中TCを示す図である。
図3図3は、化合物A及びエゼチミブの単独及び併用投与時の血漿中VLDL-Cを示す図である。
図4図4は、化合物A及びエゼチミブの単独及び併用投与時の血漿中LDL-Cを示す図である。
図5図5は、化合物A及びエゼチミブの単独及び併用投与時の血漿中HDL-Cを示す図である。
図6図6は、フェノフィブラート及びエゼチミブの単独及び併用投与時の血漿中HDL-Cを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
一般式(1)中、R3a、R3b、R4a及びR4bのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。このうちフッ素原子と塩素原子が特に好ましい。
【0021】
3a、R3b、R4a、R4b及びRのC1−4アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。このうちメチル基が特に好ましい。
【0022】
3a、R3b、R4a及びR4bのC1−4アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。このうちメトキシ基が特に好ましい。
【0023】
3a、R3b、R4a及びR4bのC1−4アルキルカルボニルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基等が挙げられる。このうちメチルカルボニルオキシ基が特に好ましい。
【0024】
3a、R3b、R4a及びR4bのジ−C1−4アルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等が挙げられる。このうちジメチルアミノ基が特に好ましい。
【0025】
3a、R3b、R4a及びR4bのC1−4アルキルスルフォニルオキシ基としては、メチルスルフォニルオキシ基、エチルスルフォニルオキシ基等が挙げられる。このうちメチルスルフォニルオキシ基が特に好ましい。
【0026】
3a、R3b、R4a、R4b及びRのC1−4アルキルスルフォニル基としては、メチルスルフォニル基、エチルスルフォニル基等が挙げられる。このうちメチルスルフォニル基が特に好ましい。
【0027】
3a、R3b、R4a及びR4bのC1−4アルキルスルフィニル基としては、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基等が挙げられる。このうちメチルスルフィニル基が特に好ましい。
【0028】
3a、R3b、R4a及びR4bのC1−4アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。このうちメチルチオ基が特に好ましい。
【0029】
3aとR3bあるいはR4aとR4bが結合してできるアルキレンジオキシ基としては、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基等が挙げられる。このうちメチレンジオキシ基が特に好ましい。
【0030】
のC1−4アルキルオキシカルボニル基としては、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基等が挙げられる。このうちメチルオキシカルボニル基が特に好ましい。
【0031】
及びRとしては、同時に水素原子であるか、同時にメチル基である場合、又はそれぞれメチル基と水素原子、エチル基と水素原子である場合が特に好ましい。
【0032】
Xは酸素原子、硫黄原子又はN−Rを示すが、酸素原子が好ましい。また、Yは酸素原子、S(O)、カルボニル基、カルボニルアミノ基、アミノカルボニル基、スルフォニルアミノ基、アミノスルフォニル基又はNH基を示すが、酸素原子が好ましい。ZはCH又はNを示すが、CHが好ましい。lは0〜2の数を示すが、2が好ましい。nは1〜6の数を示すが、1〜3の数が好ましい。mは2〜6の数を示すが、2〜4、特に2又は3が好ましい。
【0033】
本発明の一般式(1)で表される化合物の好ましい例としては、X及びYが酸素原子で、ZがCHで、nが1で、mが3の化合物が挙げられる。より好ましい化合物としては、X及びYが酸素原子で;ZがCHで;nが1で;mが3で;R3a及びR3bが、同一又は異なって水素原子、ハロゲン原子、水酸基、C1−4アルキル基、トリフルオロメチル基、又はC1−4アルコキシ基であり;R4a及びR4bが、同一又は異なってハロゲン原子、水酸基、C1−4アルキル基、トリフルオロメチル基、又はC1−4アルコキシ基である化合物が挙げられる。本発明の一般式(1)で表される化合物のさらに好ましい化合物としては、(R)−2−[3−[[N−(ベンズオキサゾール−2−イル)−N−3−(4−メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸(以下、「化合物A」と表記することがある。)を挙げることができる。
【0034】
通常コレステロールは、1日あたり食事から約400〜500mg、胆汁由来のものが約800〜2000mg小腸に入り込み、小腸に入り込んだこれらのコレステロールの約50%が吸収される。本発明において、コレステロール吸収抑制剤としては、このような小腸に入り込んだコレステロールの吸収を阻害することができる薬剤であれば特に制限はなく、例えば、コレスチラミン、コレスチラミドなどの陰イオン交換樹脂、エゼチミブや前記特許文献11〜14に記載の化合物などのコレステロールトランスポーター(NPC1-L1)を阻害することでコレステロールの吸収を抑制する薬剤などが挙げられる。本発明における好ましいコレステロール吸収抑制剤としては、例えば、コレステロールトランスポーター(NPC1-L1)を阻害することでコレステロールの吸収を抑制する薬剤が挙げられるが、そのなかでもエゼチミブがより好ましい。
【0035】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、例えば、特許文献1に記載の方法に従って製造することができる。
また、本発明では一般式(1)で表される化合物の塩若しくは溶媒和物を用いることもできる。塩及び溶媒物は常法により、製造することができる。
【0036】
本発明の一般式(1)で表される化合物の塩としては、薬学的に許容できるものであれば特に制限はないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、トリアルキルアミン塩等の有機塩基塩;塩酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩;酢酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0037】
本発明の一般式(1)で表される化合物若しくはその塩の溶媒和物としては、水和物、アルコール和物(例えば、エタノール和物)等が挙げられる。
【0038】
本発明の一般式(1)で表される化合物は不斉炭素を有しているためR体及びS体の光学異性体が存在するが、それらはすべて本発明に包含される。
【0039】
エゼチミブ(Ezetimibe)(化学名:(3R,4S)-1-(4-fluorophenyl)-3-{(3S)-3-(4-fluorophnyl)-3-hydroxypropyl}-4-(4-hydroxyphenyl)azetidin-2-one(IUPAC))は、J. Org. Chem., 64(10), 3714-3718(1999)、Tetrahedron Lett., 44(4), 801-804(2003)等に記載の方法で製造することができる。また、市販の医薬品を用いてもよい。
【0040】
後述する実施例において示されるように、前記一般式(1)で表される化合物とコレステロール吸収抑制剤を併用することで、高コレステロール食負荷ラットを用いた評価系において、血漿中の各脂質パラメータを改善し、特に強力なHDL-Cの上昇作用を示した。従って、本発明の薬剤は、混合型脂質異常症、メタボリックシンドローム、糖尿病を併発する脂質異常症、低HDL-C血症、高TG血症の予防及び/又は治療に有用である。
【0041】
本発明における脂質異常症とは、血液中の総トリグリセリド(TG)量、総コレステロール(TC)量、VLDLコレステロール(VLDL-C)量、LDLコレステロール(LDL-C)量、又はHDLコレステロール(HDL-C)量のいずれかひとつ、又はこれらの2種以上が、正常値の範囲を逸脱している場合をいう。
また、本発明におけるHDLコレステロール(HDL-C)の上昇を必要とする疾患とは、血液中のHDL-C量が正常値よりも低下している場合をいう。
【0042】
本発明の一般式(1)で表される化合物、若しくはその塩又はこれらの溶媒和物は単独又は他の薬学的に許容される担体を用いて、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末剤、ローション剤、軟膏剤、注射剤、座剤等の剤型とすることができる。これらの製剤は、公知の方法で製造することができる。例えば、経口投与用製剤とする場合には、トラガントガム、アラビアガム、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、オリーブ油、大豆油、PEG400等の溶解剤;澱粉、マンニトール、乳糖等の賦形剤;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤;結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤;タルク、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、軽質無水ケイ酸等の流動性向上剤等を適宜組み合わせて処方することにより製造することができる。
【0043】
本発明の医薬組成物の使用形態は、a)前記一般式(1)で表される化合物、若しくはその塩又はこれらの溶媒和物、及び、b)コレステロール吸収抑制剤を組み合わせて用い、薬剤個々の作用に加えて、両薬剤投与による相乗的な血中HDL-C上昇作用を用いて混合型脂質異常症、メタボリックシンドローム、糖尿病を併発する脂質異常症、低HDL-C血症、高TG血症等の脂質異常症の予防及び/又は治療効果が得られるような形態として使用することができるが、これらの使用形態に限定されるものではない。一般式(1)で表される化合物とコレステロール吸収抑制剤は同時に投与してもよいし、間隔を置いて別々に投与してもよい。
【0044】
一般式(1)で表される化合物とコレステロール吸収抑制剤を単一製剤化するか又は両薬剤を別々に製剤化してキットとして使用してもよい。即ち、本発明の医薬組成物は、一般式(1)で表される化合物、若しくはその塩又はこれらの溶媒和物から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有してなる薬剤、及び、コレステロール吸収抑制剤の少なくとも1種を含有してなる薬剤を組み合わせてなるキットであってもよい。
本発明において、両薬剤を単一製剤として投与する場合、一般式(1)で表される化合物とコレステロール吸収抑制剤の配合比は、それぞれの有効成分の有効投与量の範囲で適宜選定することができるが、一般的には質量比で5:1〜1:30000の範囲が好ましく、5:1〜1:1000の範囲がより好ましい。特に、コレステロール吸収抑制剤がエゼチミブなどのコレステロールトランスポーター(NPC1-L1)を阻害することでコレステロールの吸収を抑制する薬剤の場合には、質量比で5:1〜1:300、より好ましくは3:1〜1:200の範囲であることが、特に優れた相乗効果が得られる点からさらに好ましい。
【0045】
一般式(1)で現される化合物とコレステロール吸収抑制剤を別々に製剤化する場合は、両薬剤の剤型は同一でもよく、異なってもよい。また、各成分の投与回数は異なってもよい。
【0046】
本発明の一般式(1)で表される化合物、若しくはその塩又はこれらの溶媒和物は、経口投与又は非経口投与により投与される。本発明の医薬の投与量は、患者の体重、年齢、性別、症状等によって異なるが、通常成人の場合、一般式(1)として一日0.001〜100mg、好ましくは0.01〜10mgを1〜3回に分けて投与するのが好ましい。また、コレステロール吸収抑制剤は、エゼチミブとして0.01〜1000mg、好ましくは1〜100mgを一日1〜3回に分けて投与するのが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例、比較例、製剤例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
【0048】
実施例1 高コレステロール食負荷ラットに対する化合物AとEzetimibeの併用効果
1.方法
SDラット(6週齢、雄、日本チャールスリバー(株))を実験に使用した。飽食下に頸静脈より採血し、血漿中TG、TC及び体重をもとに4群(N=8)に群分けした。翌日から、ラットに2%コレステロール及び0.5%コール酸ナトリウムを含有する固形食(MFベース、オリエンタル酵母)を1週間負荷した。この高コレステロール食負荷と平行して、溶媒(0.5% メチルセルロース水溶液:MC)、(R)−2−[3−[[N−(ベンズオキサゾール−2−イル)−N−3−(4−メトキシフェノキシ)プロピル]アミノメチル]フェノキシ]酪酸(化合物A)及び/又はEzetimibeを1日1回経口投与した。最終投与日の午後に、4時間絶食条件下でペントバルビタール麻酔下に採血し、血漿中のHDL-Cを測定した。相乗効果は、バルジの式(単剤Aの相対値と単剤Bの相対値との積よりも併用した群における相対値が大であれば相乗効果あり)により判定した。
2.群構成
第1群:Control
第2群:化合物A 0.1mg/kg
第3群:Ezetimibe 0.003mg/kg
第4群:化合物A 0.1mg/kgとEzetimibe 0.003mg/kg
3.統計解析及びデータ処理法
結果は、平均値±標準偏差で示した。対照群と薬物投与群との比較はDunnettの多重比較検定で行い、危険率5%未満を有意差ありと判定した。
4.結果
結果を図1及び表1に示す。また、HDL-Cの各群平均値を表1に示す。化合物A又はEzetimibeの単独投与ではHDL-Cに対して明らかな影響は認められなかったが、化合物A 0.1mg/kgとEzetimibe 0.003mg/kgとの併用投与群では、有意(*:p<0.05、対コントロール)でかつ相乗的(Control群に対する、単剤A投与群の相対値と単剤B投与群の相対値との積(1.010×1.022=1.032)より併用した群における相対値(1.167)が大である)なHDL-Cの上昇が認められた(図1、表1)。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例2 高コレステロール食負荷ラットに対する化合物AとEzetimibeの併用効果
1.方法
SDラット(6週齢、雄、日本チャールスリバー(株))を実験に使用した。飽食下に頸静脈より採血し、血漿中TG、TC及び体重をもとに6群(N=6,8)に群分けした。翌日から、ラットに2%コレステロール及び0.5%コール酸ナトリウムを含有する固形食(MFベース、オリエンタル酵母)を1週間負荷した。この高コレステロール食負荷と平行して、溶媒(0.5% MC)、化合物A及び/又はEzetimibeを1日1回経口投与した。最終投与日の午後に、4時間絶食条件下でペントバルビタール麻酔下に採血し、血漿中TG、TC、リポタンパク中脂質(VLDL-C、LDL-C及びHLDL-C)を測定した。相乗効果は、バルジの式(Control群と比べて薬物投与群で低い値を示す場合、すなわちTC、VLDL-C、LDL-Cに対する薬剤の評価を行った場合、単剤Aの相対値と単剤Bの相対値との積よりも併用した群における相対値が小であれば相乗効果あり。Control群と比べて薬物投与群で高い値を示す場合、すなわちHDL-Cに対する薬剤の評価を行った場合、単剤Aの相対値と単剤Bの相対値との積よりも併用した群における相対値が大であれば相乗効果あり)により判定した。
2.群構成
第1群:Control
第2群:化合物A 0.1mg/kg
第3群:Ezetimibe 0.01mg/kg
第4群:化合物A 0.1mg/kgとEzetimibe 0.01mg/kgの併用
第5群:Ezetimibe 0.1mg/kg
第6群:化合物A 0.1mg/kgとEzetimibe 0.1mg/kgの併用
3.統計解析及びデータ処理法
結果は、平均値±標準偏差で示した。対照群と薬物投与群との比較はDunnettの多重比較検定で行い、危険率5%未満を有意差ありと判定した。
4.結果
結果を表2および図2図5に示す。図2は総コレステロール(TC)量の結果を示し、図3はVLDLコレステロール(VLDL-C)量の結果を示し、図4はLDLコレステロール(LDL-C)量の結果を示し、及び図5はHDLコレステロール(HDL-C)量の結果を示す。図における記号は、*:p<0.05、**:p<0.01、***:p<0.001を意味する。
【0051】
高コレステロール食ラットにおける化合物AとEzetimibe併用による相乗的な作用
【0052】
【表2】
【0053】
各数値は上段がControl群に対する相対値を示し、下段はバルジの式による化合物A及びEzetimibe単剤投与群における相対値の積を示す。下線部分の値は、相乗的な作用が認められたことを示す。
【0054】
まず、TC(表2及び図2)に着目すると、化合物A単剤投与群の相対値は0.956、Ezetimibeの0.01mg/kg単剤投与群の相対値は0.898であり、両者の積は0.859であった。これに対し、化合物AとEzetimibeの0.01mg/kg併用投与群の相対値は0.635であり、単剤投与群における積と比較して著しく低下していたことから、相乗的なTC低下作用が確認された。
さらに、Ezetimibeの0.1mg/kg単剤投与群の相対値は0.555であり、化合物A投与群の相対値0.956との積は0.530であることに対して、化合物AとEzetimibeの0.1mg/kg併用投与群の相対値は0.462であったことから、Ezetimibeの高用量群においても相乗的なTC低下作用が認められることが明らかとなった。
同様に、化合物AとEzetimebeの併用投与により、VLDL-C及びLDL-Cに対する相乗的な低下作用、ならびにHDL-Cに対する相乗的な上昇作用が認められた。
【0055】
比較例 高コレステロール食負荷ラットに対するFenofibrateとEzetimibeの併用効果
1.方法
SDラット(6週齢、雄、日本チャールスリバー(株))を実験に使用した。飽食下に頸静脈より採血し、血漿中TG、TC及び体重をもとに4群(N=8)に群分けした。翌日から、ラットに2%コレステロール及び0.5%コール酸ナトリウムを含有する固形食(MFベース、オリエンタル酵母)を1週間負荷した。この高コレステロール食負荷と平行して、溶媒(0.5% MC)、Fenofibrate(FF)及び/又はEzetimibe(Ezeti)を1日1回経口投与した。最終投与日の午後に、4時間絶食条件下でペントバルビタール麻酔下に採血した。血漿中HDL-Cを測定した。
2.群構成
第1群:Control
第2群:Fenofibrate 10mg/kg
第3群:Ezetimibe 0.1mg/kg
第4群:Fenofibrate 10mg/kgとEzetimibe 0.1mg/kgの併用
3.統計解析及びデータ処理法
結果は、平均値±標準偏差で示した。対照群と薬物投与群との比較はDunnettの多重比較検定で行い、危険率5%未満を有意差ありと判定した。
4.結果
この結果を図6に示す。FenofibrateもPPARαアゴニストとして知られているが、FenofibrateとEzetimibeの併用では、HDL-Cにおける相乗的な増加作用が認められなかった。
【0056】
製剤例 化合物Aとエゼチミブを含む投与用錠剤
化合物Aとエゼチミブを含む投与用錠剤は下記のように製造することができる。
【0057】
【表3】
【0058】
化合物A及びエゼチミブ(質量比1:200)の全部とセルロース及びコーンスターチの一部を混合し、顆粒化し、10%コーンスターチペーストを得る。得られた顆粒を篩にかけ、乾燥し、コーンスターチの残りとステアリン酸マグネシウムと混合する。次いで得られた顆粒を、1錠剤あたり化合物A 0.05mgとエゼチミブ10mgを含む錠剤に圧縮する。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の薬剤及び医薬組成物は、優れた血中HDLコレステロール上昇作用を有し、脂質異常症、特に混合型脂質異常症、メタボリックシンドローム、糖尿病を併発する脂質異常症、低HDL-C血症、高TG血症の予防及び/又は治療に有用であることから、産業上利用可能性を有している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6