特許第6238467号(P6238467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238467
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】電熱平面陰極
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/06 20060101AFI20171120BHJP
   H01J 9/02 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01J35/06 C
   H01J35/06 E
   H01J35/06 B
   H01J35/06 D
   H01J9/02 J
【請求項の数】17
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-511755(P2015-511755)
(86)(22)【出願日】2013年5月10日
(65)【公表番号】特表2015-519705(P2015-519705A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(86)【国際出願番号】US2013040553
(87)【国際公開番号】WO2013170149
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2016年5月6日
(31)【優先権主張番号】13/468,886
(32)【優先日】2012年5月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514276207
【氏名又は名称】サーモ サイエンティフィック ポータブル アナリティカル インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】カルーソー ディヴィッド ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ディンスモア マーク ティー
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−044606(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/086653(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00− 6/14、
H01J 1/13− 1/28、35/00−35/32、
61/00−61/28、
H05G 1/00− 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
第2基板に実装されたを有する積層板であって、前記積層板が前記第1基板に付着される、積層板と、
を含む平面陰極であって、
前記箔は、所定の幾何学的パターンに形成され、
前記積層板は、前記所定の幾何学的パターンと前記第基板との間熱的分離を実現するように構成された空洞を有する、平面陰極。
【請求項2】
前記第基板は、さらにアラインメント機構を含み、
前記アラインメント機構は、穴、および機械的機構を含む群から選択された、請求項1に記載の平面陰極。
【請求項3】
前記箔は、AlN基板を含む前記第2基板にろう付けされたタンタル箔である、請求項1に記載の平面陰極。
【請求項4】
前記所定の幾何学的パターンが、前記箔上のらせん状切込みである、請求項1に記載の平面陰極。
【請求項5】
前記らせん状切込みが、曲線的な入口および曲線的な出口を含む、請求項4に記載の平面陰極。
【請求項6】
前記箔が、タングステン・レニウム、トリエーテッド・タングステン、タングステン合金、ハフニウム、および6eV未満の仕事関数を有するタンタル・ベース材料を含む群から選択された、請求項1に記載の平面陰極。
【請求項7】
前記箔が、6eV未満の電子仕事関数を示すようにコーティングされた、請求項1に記載の平面陰極。
【請求項8】
箔を第2基板にろう付けして積層板を形成するステップと、
前記積層板の前記箔を所定の幾何学的パターンに形成するステップと、
前記積層板を第1基板に搭載するステップと、
を含み、
前記積層板は、前記幾何学的パターンと前記第2基板との間の熱的分離を実現するように構成された空洞を有する、平面陰極を製造する方法。
【請求項9】
前記所定の幾何学的パターンがらせんである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記らせんが、曲線的な入口および曲線的な出口を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記箔が、タングステン・レニウム、トリエーテッド・タングステン、タングステン合金、およびその他の耐熱性物質ベースの熱電子放出材料を含む群から選択されるか、または低仕事関数放出コーティング加工された陰極である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記箔が、タングステン・レニウム、トリエーテッド・タングステン、タングステン合金、ハフニウム、および6eV未満の仕事関数を有するタンタル・ベース材料を含む群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記箔にコーティングを施して、6eV未満の電子仕事関数を示すようにするステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記第2基板がAlN基板を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記箔が粒子安定化箔を含む、請求項1に記載の平面陰極。
【請求項16】
前記箔が粒子安定化タンタル箔を含む、請求項1に記載の平面陰極。
【請求項17】
前記第2基板がAlN基板を含む、請求項16に記載の平面陰極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
X線管は、X線を発生する真空管である。X線管は、電子を真空中に放出する陰極および電子を収集する陽極を含んでいる。電子を加速するために陰極と陽極の間に高電圧電源が接続される。ある装置においては、非常に高い解像度の画像を必要とし、かつ、非常に小さい焦点サイズを形成することができるX線管を必要とする。
【背景技術】
【0002】
ある種類の陰極は、電球のフィラメントと同様に、らせん形状にらせん巻きされたタングステン・フィラメントを含んでいる。巻かれたフィラメントの問題は、加速電界に垂直でない表面から電子が放出されることである。これは、X線ターゲット上のコンパクトなスポットに電子を集中することを非常に困難にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
小型X線管用の電熱平面陰極は、薄いタンタル合金リボン箔(それは、粒子安定化特性を有し得る)などの箔からレーザーカットされたらせんデザインを含んでいる。裸のリボンに最低の張力を与えるような方法により、そのリボンを窒化アルミニウム基板などの基板にろう付けしてから、幾何学的パターン、例えば、らせん状に機械加工する。これは、カットプロセスまたは取り扱いおよび実装による平面パターンのねじれを防止する。任意選択で、らせんパターンは、電気特性および熱的特性について最適化することができる。結果の陰極アセンブリをヘッダーに搭載し、X線管の他の構成要素と機械的および電気的に接続する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1A図1Aは、カット前の平面陰極構造を示す。
図1B図1Bは、レーザーカット後の平面電極構造を示す。
図1C図1Cは、実装された平面陰極構造を示す。
図2図2は、図1Aおよび図1Bに示した平面陰極のプロセス・フロー・チャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
小型X線管用の電熱平面陰極は、薄いタンタル合金リボン箔(粒子安定化特性を有する)からレーザーカットされたらせんデザインを含んでいる。裸のリボンに最低の張力を与えるような方法によりそのリボンを窒化アルミニウム基板にろう付けしてから、幾何学的パターン、例えば、らせん状に機械加工する。これは、カットプロセスまたは取り扱いおよび実装による平面パターンのねじれを防止する。らせんパターンは、電気特性および熱的特性について最適化することができる。結果の陰極アセンブリをヘッダー(「第1基板」と呼ばれることもある)に搭載し、X線管の他の構成要素と機械的および電気的に接続する。陰極らせんの外側の残ったタンタル・テープは等電位面を形成し、それは、平行度が非常に高く集束の容易な電子ビームの形成を助ける。
【0006】
特定の実装形態は、機械加工に先立つ箔の基板への実装により、このような構造の脆弱性の問題を解決する。粒子安定化タンタルなどの粒子安定化箔または粒子安定化金属の使用は、重要である。なぜなら、陰極が動作温度で働くときに誘起される粒子成長により機械的ねじれ又は歪みが生ずる可能性があるからである。このねじれは、らせんをタンタル・リボンの平面から引き離す。
【0007】
図1Aは、カット前の平面陰極の構造を示している。AlN基板110は、任意選択のアラインメント機構112および穴114を含んでいる。AlN基板110にろう付けされるタンタル・リボン116は、穴114上に取り付けられる。リボン(例えば、タンタル)は基板とわずかに重なり合っており、動作時に基板が迷走放出電流を吸収することを可能にしている。穴114は、例示的に、必要な大きさより大きく示されている。
【0008】
図1Bは、レーザーカット後の平面陰極構造を示している。らせん切込み(カット)118が導入されている。らせんカットの入口と出口は、鋭いコーナーを最小限に抑えるために丸められており又は曲線的であり、したがって迷走放出電流を低減する。この実施形態では、らせん切込みの入口と出口は、コーナーの最小化を分かりやすく示すために誇張されている。
【0009】
この実例実施形態では、基板110は、窒化アルミニウム(AlN)製である。
【0010】
この実施形態は基板110中の開口部114上に浮かせているタンタル・リボン116の幾何学的パターン(具体的には、らせんカットが示されている)を示しているが、開口部は任意選択である。幾何学的パターンと基板110の間に熱的分離を設ける必要がある。実例により説明すると、熱的分離は、開口部、空洞により、または隙間が生ずるようにパターンを基板110の上に浮かせることにより実現することができる。
【0011】
図1Cは、典型的なヘッダー130に実装された平面陰極およびレンズ・アセンブリ120を示す。
【0012】
図2は、図1Aおよび図1Bに示した平面陰極のプロセス・フロー・チャートである。ステップ12において、タンタル箔をAlN基板にろう付けする。このろう付けは、箔により、AlN基板に活性ろう付け材料を使用して積層板を形成することにより、または基板を金属化し、かつ、通常のろう付けプロセスを使用して積層板を形成することにより、行うことができる。ステップ14において、らせんパターンをレーザーカットするか、またはエッチングする。その結果の陰極は、基板のおかげで、らせんパターンを傷つけずに取り扱うことができる。任意選択のアライメント機構は、基板の製造中に付加する。なぜなら、ろう付けまたはカット後にそれを機械加工することは、らせんを損傷する恐れがあるからである。このプロセスでは、らせんをカットする前に、アラインメント機構を使用して位置を較正し、らせんがアラインメント機構の中間に位置するようにする。ステップ18において、アラインメント機構を介して陰極アセンブリをヘッダー130に取り付けることにより、陰極と他の電子光学構成要素との電気的接続および機械的整列を与える。
【0013】
説明のための実例において、タンタル・リボンは、AlN基板にろう付けされている。なぜならそれらは同様の熱膨張係数を有しているからである。陰極が裁断されると、それは平面のままである。
【0014】
この概念は、時間の経過とともに蒸発もねじれもしないその他の材料に拡張することができる。箔材料は、タングステン・レニウム、トリエーテッド・タングステン、タングステン合金、ハフニウム、および6eV未満の電子仕事関数を示すその他のタンタル・ベース材料を含むがそれらには限られない。コーティングをらせんに付加してらせんの仕事関数を低減し、それにより種々のらせん材料の使用を可能とし、かつ、十分な電子束を形成するために必要な温度および電力を低減することができる。
図1A
図1B
図1C
図2