特許第6238473号(P6238473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238473
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/348 20060101AFI20171120BHJP
   F16F 9/508 20060101ALI20171120BHJP
   F16F 9/48 20060101ALI20171120BHJP
   F16F 9/342 20060101ALI20171120BHJP
   F16F 7/09 20060101ALI20171120BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20171120BHJP
【FI】
   F16F9/348
   F16F9/508
   F16F9/48
   F16F9/342
   F16F7/09
   F16J15/3204 101
【請求項の数】3
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-550906(P2015-550906)
(86)(22)【出願日】2014年11月21日
(86)【国際出願番号】JP2014080935
(87)【国際公開番号】WO2015080056
(87)【国際公開日】20150604
【審査請求日】2016年5月27日
(31)【優先権主張番号】特願2013-248367(P2013-248367)
(32)【優先日】2013年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】山下 幹郎
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−257507(JP,A)
【文献】 特開2008−138740(JP,A)
【文献】 特開2006−038097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/348
F16F 7/09
F16F 9/342
F16F 9/48
F16F 9/508
F16J 15/3204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液が封入されるシリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に嵌装されるピストンと、
第一端側が前記ピストンに連結され第二側が前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、
前記ピストンの摺動によって生じる作動液の流れを抑制して減衰力を発生させる減衰バルブと、
該減衰バルブに閉弁方向の圧力を作用させるパイロット室を前記減衰バルブとともに形成する有底筒状のパイロットケースと、
前記減衰バルブの背面の外周側に固着して設けられ、前記パイロットケースの筒部に摺動可能かつ液密的に嵌合される環状のシール部材と、
を備え、
前記減衰バルブは、内周側がクランプされ外周側が開くように構成され、
前記作動液の流れの一部を前記パイロット室に導入して前記パイロット室の圧力によって前記減衰バルブの開弁を抑制する緩衝器であって、
前記シール部材の外周側は、
前記シール部材が前記減衰バルブに固着している固着部に設けられ、前記シール側の外周面のうち最も径方向外方に突出する減衰バルブ側凸部と、
該減衰バルブ側凸部より前記減衰バルブから離間する側に設けられ、前記シール部材の径方向内方に凹む環状の凹部と、
該環状の凹部より前記減衰バルブから離間する側に設けられ、前記減衰バルブ側凸部より小径で、前記環状の凹部よりも大径の径方向外方に突出するパイロット室側凸部とが形成されていることを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記シール部材の内周側は、前記環状の凹部に対向する内周面が凸状面として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記シール部材の内周側で前記凸状面の前記減衰バルブに固着している固着部において、前記凸状面と前記減衰バルブの固着面とを接続するように凹状面が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
本願は、2013年11月29日に出願された日本国特許出願第2013−248367号に対し優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器には、流路を開閉するバルブの背面の外周側にシール部材を設け、このシール部材とパイロットケースとでパイロット室を形成しこのパイロット室の圧力をバルブに閉弁方向に作用させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−38097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記シール部材の耐久性を向上させることが望まれている。
【0005】
本発明は、シール部材の耐久性を向上させることができる緩衝器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様によれば、緩衝器は、作動液が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に嵌装されるピストンと、第一端側が前記ピストンに連結され第二端側が前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、前記ピストンの摺動によって生じる作動液の流れを抑制して減衰力を発生させる減衰バルブと、該減衰バルブに閉弁方向の圧力を作用させるパイロット室を前記減衰バルブとともに形成する有底筒状のパイロットケースと、前記減衰バルブの背面の外周側に固着して設けられ、前記パイロットケースの筒部に摺動可能かつ液密的に嵌合される環状のシール部材と、を備える。前記減衰バルブは、内周側がクランプされ外周側が開くように構成され、前記作動液の流れの一部を前記パイロット室に導入して前記パイロット室の圧力によって前記減衰バルブの開弁を抑制する。前記シール部材の外周側には環状の凹部が形成され、前記シール部材の内周側には環状の凸部が形成されている。
【0007】
本発明の第二の態様によれば、緩衝器は、作動液が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に嵌装されるピストンと、第一端側が前記ピストンに連結され第二端側が前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、前記ピストンの摺動によって生じる作動液の流れを抑制して減衰力を発生させる減衰バルブと、該減衰バルブに閉弁方向の圧力を作用させるパイロット室を前記減衰バルブとともに形成する有底筒状のパイロットケースと、前記減衰バルブの背面の外周側に固着して設けられ、前記パイロットケースの筒部に摺動可能かつ液密的に嵌合される環状のシール部材と、を備える。前記減衰バルブは、内周側がクランプされ外周側が開くように構成され、前記作動液の流れの一部を前記パイロット室に導入して前記パイロット室の圧力によって前記減衰バルブの開弁を抑制する。前記シール部材の外周部には環状の凹部が形成され、該凹部の最小径部の前記減衰バルブからの高さは、前記シール部材の外周部の前記最小径部よりも前記減衰バルブとは反対側で最大径となる最大径部の前記減衰バルブからの高さの1/3よりも大きい。
【0008】
本発明の第三の態様によれば、第一または第二の態様において、前記環状の凹部より前記減衰バルブから離間する側に前記シール部材の外周側で最も大径となる最大径部を形成し、前記シール部材の前記減衰バルブ側には前記最大径部よりも径方向外方に突出する減衰バルブ側凸部を設ける。
【0009】
本発明の第四の態様によれば、第一乃至第三の何れか一の態様において、前記凸部の頂部は、前記凹部の最小径部よりも前記減衰バルブからの距離が大きい。
【発明の効果】
【0010】
上述した緩衝器によれば、シール部材の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る緩衝器を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る緩衝器の一方の通路面積調整機構周辺を示す部分拡大断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る緩衝器のピストン周辺を示す部分拡大断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る緩衝器のロッドガイド周辺を示す部分拡大断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る緩衝器のシール部材を示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る緩衝器のシール部材を示す部分拡大断面図である。
図7A】シール部材の自然状態および変形状態を示す部分拡大断面図であって、自然状態と変形状態との比較例を示すものである。
図7B】シール部材の自然状態および変形状態を示す部分拡大断面図であって、自然状態と変形状態との比較例を示すものである。
図7C】シール部材の自然状態および変形状態を示す部分拡大断面図であって、本発明の実施例を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る一実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明では理解を助けるために、図の下側を第一側および下側とし、逆に図の上側を第二側および上側として定義する。
【0013】
本実施形態の緩衝器1は、位置感応の減衰力調整式である。本実施形態の緩衝器1は、図1に示すように、いわゆる複筒型の油圧緩衝器であり、作動液体としての油液が封入されるシリンダ2を有している。シリンダ2は、円筒状の内筒3と、この内筒3よりも大径で内筒3を覆うように同心状に設けられる有底円筒状の外筒4と、外筒4の上部開口側を覆うカバー5とを有している。内筒3と外筒4との間には、リザーバ室6が形成されている。
【0014】
外筒4は、略円筒状の胴部材7と、胴部材7の下部側に嵌合固定されて胴部材7を閉塞する底部材8と、胴部材7の上部側に嵌合固定される略円筒状の口元部材9とから構成されている。
【0015】
口元部材9は、下部の外周部に形成された小径部10において胴部材7に圧入されて嵌合固定されている。口元部材9の小径部10よりも上側は小径部10より大径の大径部11である。この大径部11の外周部には、オネジ12が形成されている。また、口元部材9は、下部の内周部が小径内周部13を構成しており、上部内周部が、小径内周部13よりも大径の大径内周部14を構成している。
【0016】
カバー5は、筒状部15と筒状部15の上端側から径方向内方に延出する内フランジ部16とを有しており、筒状部15の内周部にはメネジ17が形成されている。カバー5は、口元部材9の上端開口部に被せられており、その筒状部15に形成されたメネジ17において口元部材9のオネジ12に螺合されて固定されている。
【0017】
内筒3内には、ピストン18が摺動可能に嵌装されている。このピストン18は、内筒3内を上室19と下室20との2室に区画している。内筒3内の上室19および下室20内には作動流体としての油液が封入される。内筒3と外筒4との間のリザーバ室6内には作動流体としての油液とガスとが封入される。
【0018】
シリンダ2内にはピストンロッド21の第一端側が挿入されている。ピストンロッド21の第二端側はシリンダ2の外部に延出されている。ピストン18は、このピストンロッド21のシリンダ2内側の第一端側に連結されている。内筒3および外筒4の第一端開口側の口元部材9には、ロッドガイド22が嵌合されている。口元部材9にはロッドガイド22よりもシリンダ2のさらに外部側にシール部材23が装着されている。ロッドガイド22には、シール部材23よりシリンダ2の内部側の位置に摩擦部材24が設けられている。ロッドガイド22、シール部材23および摩擦部材24は、いずれも環状に形成されている。ピストンロッド21は、これらロッドガイド22、摩擦部材24およびシール部材23のそれぞれの内側に摺動可能に挿通されてシリンダ2の外部へ延出されている。
【0019】
ここで、ロッドガイド22は、ピストンロッド21を、その径方向移動を規制しつつ軸方向移動可能に支持して、このピストンロッド21の移動を案内する。シール部材23は、その内周部で、軸方向に移動するピストンロッド21の外周部に摺接して、内筒3内の油液と外筒4内のリザーバ室6の高圧ガスおよび油液とが外部に漏洩するのを防止する。
摩擦部材24は、その内周部でピストンロッド21の外周部に摺接して、ピストンロッド21に摩擦抵抗を発生させる。なお、摩擦部材24は、シールを目的とするものではない。
【0020】
ロッドガイド22は、その外周部が、下部よりも上部が大径となる段差状に形成されている。ロッドガイド22は、下部において内筒3の上端の内周部に嵌合し、上部において外筒4の口元部材9の大径内周部14に嵌合する。外筒4の底部材8上には、内筒3内の下室20とリザーバ室6とを画成するベースバルブ25が設置されている。このベースバルブ25に内筒3の下端の内周部が嵌合されている。カバー5の内フランジ部16とシール部材23との間には、円環状の押さえ部材33が配置されている。カバー5は、外筒4のオネジ12にメネジ17において螺合されると、内フランジ部16において押さえ部材33およびシール部材23を、内筒3に嵌合されたロッドガイド22とによって挟持する。
【0021】
ピストンロッド21は、ロッドガイド22、摩擦部材24およびシール部材23に挿通されて外部へと延出されるロッド本体26と、ロッド本体26のシリンダ2内側の端部に螺合されて一体的に連結される先端ロッド27と、先端ロッド27に螺合されるナット210とから構成されている。ロッド本体26の径方向の中央には、軸方向に沿う挿入穴28が、先端ロッド27側から反対側の端部近傍の途中位置まで形成されている。また、先端ロッド27の径方向の中央には、軸方向に沿う貫通穴29が形成されている。これら挿入穴28と貫通穴29とがピストンロッド21の径方向中央に形成される挿入穴30を構成している。このように、ピストンロッド21は中空構造に形成されている。ピストンロッド21のこの挿入穴30内に、メータリングピン31が挿入されている。メータリングピン31は、シリンダ2の第一側に設けられたベースバルブ25に第一端側が固定されており、第二端側が、ピストンロッド21の挿入穴30内に挿入されている。挿入穴30とメータリングピン31との間は、ピストンロッド21内で油液が流動可能なロッド内通路32を構成している。
【0022】
ピストンロッド21のロッド本体26の外周側には、軸方向のピストン18側に円環状のピストン側バネ受35が設けられている。ピストンロッド21のロッド本体26の外周側の、軸方向のピストン側バネ受35のピストン18とは反対側に円環状のロッドガイド側バネ受36が設けられている。これらピストン側バネ受35およびロッドガイド側バネ受36は、ロッド本体26を内側に挿通させることでロッド本体26に沿って摺動可能である。これらピストン側バネ受35およびロッドガイド側バネ受36の間には、コイルスプリングから構成されているリバウンドスプリング38が、その内側にロッド本体26を挿通させるようにして介装されている。ロッドガイド側バネ受36の軸方向のリバウンドスプリング38とは反対には円環状の弾性材料から形成されている緩衝体39が設けられている。緩衝体39もロッド本体26を内側に挿通させることでロッド本体26に沿って摺動可能である。
【0023】
上述の緩衝器1は、例えば第一側が車体により支持され、第二側が車輪側に連結される。具体的には、ピストンロッド21にて車体側に連結され、シリンダ2のピストンロッド21の突出側とは反対側が車輪側に連結される。なお、上記とは逆に、緩衝器1の第二側が車体により支持され、緩衝器1の第一側が車輪側に固定されるようにしても良い。
【0024】
車輪が走行に伴って振動すると該振動に伴ってシリンダ2とピストンロッド21との位置が相対的に変化するが、上記変化は、ピストンロッド21に形成されたロッド内通路32の流体抵抗により抑制される。以下で詳述するごとくピストンロッド21に形成されたロッド内通路32の流体抵抗は振動の速度や振幅により異なるように作られており、振動を抑制することにより、乗り心地が改善される。上記シリンダ2とピストンロッド21との間には、車輪が発生する振動の他に、車両の走行に伴って車体に発生する慣性力や遠心力も作用する。例えばハンドル操作により走行方向が変化することにより車体に遠心力が発生し、この遠心力に基づく力が上記シリンダ2とピストンロッド21との間に作用する。以下で説明する通り、本実施形態の緩衝器1は車両の走行に伴って車体に発生する力に基づく振動に対して良好な特性を有しており、車両の走行時における高い安定性が得られる。
【0025】
図2に示すように、ロッド本体26の先端ロッド27側の端部には、挿入穴28よりも大径で挿入穴28に連通するネジ穴43が形成されている。先端ロッド27のロッド内通路32を形成する貫通穴29は、貫通孔29のほぼ全体を構成する主穴部47と、図3に示すように下端部のみに形成された、主穴部47よりも小径の小径穴部48とから構成されている。先端ロッド27には、図2に示すロッド本体26側から順に、通路穴49、図3に示す通路穴50および通路穴51が、いずれも径方向に貫通するように形成されている。これら通路穴49〜51は、いずれも先端ロッド27の軸方向の主穴部47の位置に形成されており、いずれも貫通穴29に直交している。
【0026】
先端ロッド27は、図2に示すように軸方向のロッド本体26側から順に、外周部にオネジ54が形成されたネジ軸部55と、フランジ部56と、保持軸部57とを有している。ネジ軸部55は、先端ロッド27をロッド本体26に一体化する際にロッド本体26のネジ穴43にオネジ54において螺合される。フランジ部56は、その際にロッド本体26を当接させるため、ネジ軸部55およびロッド本体26よりも大径の外径に形成されている。保持軸部57は、フランジ部56よりも小径に形成されている。保持軸部57は、軸方向のフランジ部56とは反対側の部分に図3に示すオネジ61が形成されている。保持軸部57のオネジ61よりも図2に示すフランジ部56側に、上記した通路穴49〜51が形成されている。
【0027】
図2に示すように、ピストン側バネ受35は、円筒状部65と、円筒状部65の軸方向第一端側から径方向外側に延出する中間胴部66と、中間胴部66の外周部から軸方向の円筒状部65とは反対側に突出する円筒状の押圧部67とを有している。このピストン側バネ受35は、円筒状部65をリバウンドスプリング38の内側に配置した状態で中間胴部66の軸方向の円筒状部65側の端面においてリバウンドスプリング38の軸方向の端部に当接する。ピストン側バネ受35は、中間胴部66の軸方向の押圧部67側の端面において先端ロッド27のフランジ部56に当接可能である。中間胴部66の軸方向の円筒状部65側の内周部は、円筒状部65の内径と同径に形成されており、中間胴部66の軸方向の押圧部67側の内周部は、円筒状部65の内径よりも大径の段差部68を有している。この段差部68には、摺動部材69が嵌合固定されており、この摺動部材69がロッド本体26の外周面を摺動する。押圧部67には、径方向に貫通する複数の貫通穴70が形成されている。
【0028】
先端ロッド27の保持軸部57には、フランジ部56側から順に、複数枚のディスク73と、一枚のディスク74と、複数枚の付勢ディスク75と、一枚の開閉ディスク76と、一枚の中間ディスク77と、一枚の中間ディスク78と、一枚の当接ディスク79と、通路形成部材80とが設けられている。
【0029】
複数枚のディスク73は、いずれも有孔円板状に形成されており、ピストン側バネ受35の押圧部67の内径よりも小径の外径を有している。ディスク74は、ディスク73よりも小径の外径を有する有孔円板状に形成されている。複数枚の付勢ディスク75は、いずれも有孔円板状に形成されており、ピストン側バネ受35の押圧部67の先端部の外径と略同径の外径を有している。
【0030】
開閉ディスク76は、有孔円板状に形成されており、付勢ディスク75の外径と略同径の外径を有している。開閉ディスク76の外周側には、軸方向の第一面から軸方向第二側に凹み軸方向の第二面から軸方向第二側に突出する円環状の開閉部83が形成されている。
【0031】
中間ディスク77は、有孔円板状に形成されており、開閉ディスク76よりも小径の外径を有している。中間ディスク78は、中間ディスク77と同径の外径を有する有孔円板状に形成されている。また、中間ディスク78の外周側には、複数の切欠78Aが形成されている。当接ディスク79は、有孔円板状に形成されており、開閉ディスク76と同径の外径を有している。当接ディスク79の径方向中間部には、C字状の貫通穴79Aが形成されている。
【0032】
通路形成部材80は、有孔円板状に形成されており、当接ディスク79よりも小径の外径を有している。通路形成部材80の内周側には複数の切欠80Aが設けられている。中間ディスク78の外周部に形成された上記の切欠78Aと、当接ディスク79の径方向中間位置に形成された上記の貫通穴79Aと、通路形成部材80の内周部に形成された上記の切欠80Aとが通路86を形成している。この通路86は、中間ディスク78の径方向外側つまり上室19を通路穴49に連通させている。
【0033】
ピストン側バネ受35により押圧されない状態で、複数の付勢ディスク75は平坦形状に形成されており、開閉ディスク76の開閉部83を当接ディスク79から離間させている。
ここで、開閉ディスク76の開閉部83と当接ディスク79との隙間と、中間ディスク78、当接ディスク79および通路形成部材80に形成された通路86とがオリフィス88を構成している。このオリフィス88と、先端ロッド27の通路穴49とが、上室19とロッド内通路32とを連通させる通路89を構成している。
【0034】
主に複数の付勢ディスク75の付勢力によって、ピストン側バネ受35は、その中間胴部66を先端ロッド27のフランジ部56から軸方向に離間させている。この状態で、ピストンロッド21がシリンダ2から突出する伸び側つまり上側に移動すると、ピストン側バネ受35、リバウンドスプリング38、図1に示すロッドガイド側バネ受36および緩衝体39も、ピストンロッド21と共にロッドガイド22側に移動し、所定位置で緩衝体39がロッドガイド22に当接する。
【0035】
さらにピストンロッド21が突出方向に移動すると、緩衝体39が潰れた後、緩衝体39およびロッドガイド側バネ受36が、シリンダ2に対して停止状態となる。その結果、ピストンロッド21と共に移動するピストン側バネ受35がリバウンドスプリング38を縮長させ、その際のリバウンドスプリング38の付勢力がピストンロッド21の移動に対して抵抗となる。このようにして、シリンダ2内に設けられたリバウンドスプリング38が、ピストンロッド21に弾性的に作用してピストンロッド21の伸び切りを抑制する。なお、このようにリバウンドスプリング38がピストンロッド21の伸び切りの抵抗となることで、搭載された車両の旋回時の内周側の車輪の浮き上がりを抑制して車体のロール量が抑えられる。
【0036】
ここで、ピストンロッド21が突出方向に移動して緩衝体39がロッドガイド22に当接すると、ピストン側バネ受35は、上記したようにロッドガイド側バネ受36との間でリバウンドスプリング38を縮長させる前に、リバウンドスプリング38の付勢力によって、図2に示す押圧部67で当接する複数の付勢ディスク75および開閉ディスク76を変形させながら、若干軸方向のフランジ部56側に移動して中間胴部66をフランジ部56に当接させる。このように、リバウンドスプリング38の付勢力によりピストン側バネ受35が押圧部67で付勢ディスク75および開閉ディスク76を変形させると、開閉ディスク76の開閉部83が当接ディスク79に当接する。これにより、オリフィス88を閉塞させて上室19とロッド内通路32との通路89を介する連通を遮断する。
【0037】
ピストン側バネ受35、リバウンドスプリング38、図1に示すロッドガイド側バネ受36および緩衝体39は、バネ機構90を構成している。バネ機構90は、シリンダ2内に設けられ、第一端が図2に示す付勢ディスク75を介して開閉ディスク76を押圧可能であって、第二端がシリンダ2の端部側の図1に示すロッドガイド22に当接可能である。このバネ機構90は、そのバネ力により図2に示す付勢ディスク75および開閉ディスク76の付勢力に抗してこれら付勢ディスク75および開閉ディスク76を閉弁方向に変形させる。そして、このバネ機構90と、オリフィス88を開閉する開閉ディスク76および当接ディスク79とが、ピストンロッド21の位置により変化するリバウンドスプリング38の付勢力に応じてオリフィス88つまり通路89の通路面積を調整する通路面積調整機構91を構成している。オリフィス88は、言い換えればピストンロッド21の位置に感応して通路面積が可変となる可変オリフィスである。
【0038】
上記通路面積調整機構91による、緩衝器1のストローク位置に対するオリフィス88の通路面積は、縮み側の全ストローク範囲および伸び側の所定の第1位置までは、中立位置(1Gの位置(水平位置に停止した車体を支持する位置))を含んで最大の一定値である。上記第1位置でバネ機構90が付勢ディスク75の付勢力に抗して開閉ディスク76を閉じ始めると、伸び側ほど比例的に小さくなる。開閉ディスク76の開閉部83が当接ディスク79に当接する所定の第2位置で最小となり、この第2位置よりも伸び側では最小の一定値になる。
【0039】
図3に示すように、ピストン18は、先端ロッド27に支持される金属製のピストン本体95と、ピストン本体95の外周面に装着されて内筒3内を摺動する円環状の合成樹脂製の摺動部材96とによって構成されている。
【0040】
ピストン本体95には、上室19と下室20とを連通させ、ピストン18の上室19側への移動つまり伸び行程において上室19から下室20に向けて油液が流れ出す複数(図3では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路101と、ピストン18の下室20側への移動、つまり縮み行程において下室20から上室19に向けて油液が流れ出す複数(図3では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路102とが設けられている。つまり、複数の通路101と複数の通路102とが、ピストン18の移動により上室19と下室20との間を作動液である油液が流れるように連通する。
【0041】
通路101は、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路102を挟んで等ピッチで形成されており、ピストン18の軸方向第一側(図3の上側)が径方向外側に、軸方向第二側(図3の下側)が径方向内側に開口している。そして、これら半数の通路101に対して、減衰力を発生する減衰力発生機構104が設けられている。減衰力発生機構104は、ピストン18の軸方向の第一端側である下室20側に配置されている。通路101は、ピストンロッド21がシリンダ2の外に伸び出る伸び側にピストン18が移動するときに油液が通過する伸び側の通路を構成している。これら通路に対して設けられた減衰力発生機構104は、伸び側の通路101の油液の流動を規制して減衰力を発生させる伸び側の減衰力発生機構である。
【0042】
また、残りの半数を構成する通路102は、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路101を挟んで等ピッチで形成されている。通路102は、ピストン18の軸線方向第二側(図3の下側)が径方向外側に、軸線方向第一側(図3の上側)が径方向内側に開口している。そして、これら残り半数の通路102に、減衰力を発生する減衰力発生機構105が設けられている。減衰力発生機構105は、ピストン18の軸方向の第二端側である軸線方向の上室19側に配置されている。通路102は、ピストンロッド21がシリンダ2内に入る縮み側にピストン18が移動するときに油液が通過する縮み側の通路を構成している。これら通路に対して設けられた減衰力発生機構105は、縮み側の通路102の油液の流動を規制して減衰力を発生させる縮み側の減衰力発生機構である。
【0043】
ピストン本体95は、略円板形状に形成されており、その中央には、軸方向に貫通して、上記した先端ロッド27の保持軸部57を挿通させるための挿通穴106が形成されている。ピストン本体95の下室20側の端部には、伸び側の通路101の第一端開口位置の外側に、減衰力発生機構104を構成するシート部107が、円環状に形成されている。ピストン本体95の上室19側の端部には、縮み側の通路102の第一端開口位置の外側に、減衰力発生機構105を構成するシート部108が、円環状に形成されている。
【0044】
ピストン本体95において、シート部107の挿通穴106とは反対側は、シート部107よりも軸線方向高さが低い段差状に形成されている。この段差状の部分に縮み側の通路102の第二端が開口している。また、同様に、ピストン本体95において、シート部108の挿通穴106とは反対側は、シート部108よりも軸線方向高さが低い段差状に形成されている。この段差状の部分に伸び側の通路101の第二端が開口している。
【0045】
伸び側の減衰力発生機構104は、圧力制御型のバルブ機構である。減衰力発生機構104は、軸方向のピストン18側から順に、複数枚のディスク111と、一枚の当接ディスク112と、一枚のバルブ部材113と、一枚のディスク114と、複数枚のディスク115と、一枚のディスク116と、一枚のディスク117と、一つのパイロットケース118と、一枚のディスク119と、一枚のディスク120と、一枚のディスク121と、複数枚のディスク122と、一枚のディスク123と、一枚のディスク124と、一つの規制部材125とを有している。
【0046】
パイロットケース118は、金属製である。パイロットケース118は、軸直交方向に沿う有孔円板状の底部131と、底部131の内周側に形成された軸方向に沿う円筒状の内側筒部132と、底部131の外周側に形成された軸方向に沿う円筒状の外側筒部(筒部)133とを有する有底筒状に形成されている。底部131は、内側筒部132および外側筒部133に対し軸方向の第一側にずれている。底部131には、軸方向に貫通する複数の貫通穴134が形成されている。内側筒部132の内側には、軸方向の底部131側に先端ロッド27の保持軸部57を嵌合させる小径穴部135が形成されており、軸方向の底部131とは反対側に小径穴部135より大径の大径穴部136が形成されている。パイロットケース118の外側筒部133には、その軸方向の底部131側の端部に、環状のシート部137が形成されている。このシート部137にディスク119が着座する。
【0047】
パイロットケース118の底部131と内側筒部132と外側筒部133とで囲まれた軸方向の底部131とは反対側の空間と、パイロットケース118の貫通穴134とは、バルブ部材113にピストン18の方向に圧力を加えるパイロット室140を構成している。先端ロッド27の上記した通路穴51と、パイロットケース118の大径穴部136と、後述するディスク116,117に形成されたオリフィス151とが、ロッド内通路32とパイロット室140とに接続されて、このパイロット室140にロッド内通路32を介して上室19および下室20から油液の流れの一部を導入するパイロット室流入通路141を構成している。
【0048】
複数枚のディスク111は、金属製であり、ピストン18のシート部107よりも小径の外径を有する有孔円板状に形成されている。当接ディスク112は、金属製であり、ピストン18のシート部107よりも大径の外径を有しシート部107に着座可能な有孔円板状に形成されている。
【0049】
バルブ部材113は、当接ディスク112の外径と略同径の外径を有する有孔円板状の金属製のディスク145と、ディスク145のシート部107とは反対側の背面側の外周部に焼き付け等により固着して設けられたゴム材料から形成された円環状のシール部材146とから構成されている。当接ディスク112とバルブ部材113のディスク145とが、ピストン18のシート部107に当接して閉状態となり、ピストン18のシート部107から離間して開状態となる伸び側の減衰バルブ147を構成している。この減衰バルブ147は、パイロットケース118とともにパイロット室140を形成している。減衰バルブ147は、ピストン18に設けられた通路101とパイロットケース118に設けられたパイロット室140との間に設けられてピストン18の伸び側への摺動によって生じる通路101の油液の流れを抑制して減衰力を発生させる。よって、この減衰バルブ147はディスクバルブである。減衰バルブ147は、パイロット室140の圧力によって開弁が抑制される。なお、当接ディスク112およびディスク145には、ピストンロッド21の保持軸部57を挿通させる中央の孔以外に軸方向に貫通する部分は形成されていない。
【0050】
バルブ部材113のシール部材146は、パイロットケース118の外側筒部133の内周面に摺動可能かつ液密的に嵌合して、バルブ部材113と外側筒部133との隙間をシールする。よって、バルブ部材113とパイロットケース118との間の上記したパイロット室140は、当接ディスク112とバルブ部材113のディスク145とからなる減衰バルブ147に、ピストン18の方向、つまりシート部107に当接ディスク112を当接させる閉弁方向に内圧を作用させる。減衰バルブ147は、パイロット室140を有するパイロットタイプの減衰バルブである。当接ディスク112がピストン18のシート部107から離座して開くと、通路101からの油液をピストン18とパイロットケース118との間の径方向の通路148を介して下室20に流す。
【0051】
ディスク114は、金属製であり、ディスク145の外径よりも小径の外径を有する有孔円板状に形成されている。複数枚のディスク115は、金属製であり、ディスク111と同径の外径を有する有孔円板状に形成されている。ディスク116は、金属製であり、ディスク115と同径の外径を有する有孔円板状に形成されている。ディスク116の外周側には、複数の切欠116Aが形成されている。ディスク117は、金属製であり、ディスク115と同径の外径を有する有孔円板状に形成されている。ディスク117の内周側には、複数の切欠117Aが形成されている。ディスク116の切欠116Aとディスク117の切欠117Aとは、連通してオリフィス151を形成している。上記したように、このオリフィス151によってパイロットケース118の大径穴部136内とパイロット室140とが連通する。
【0052】
ディスク119は、金属製である。ディスク119は、パイロットケース118のシート部137よりも大径の外径を有し、シート部137に着座可能な有孔円板状に形成されている。ディスク119には、外周側に複数の切欠119Aが形成されており、径方向の中間部に切欠119Aに繋がる貫通穴119Bが形成されている。ディスク120は、金属製であり、ディスク119の外径と同径の外径を有している。ディスク120には、径方向の中間部に貫通穴120Aが形成されている。ディスク121は、ディスク119の外径と同径の外径を有している。ディスク121には、外周側に複数の切欠121Aが形成されている。複数枚のディスク122は、いずれもディスク119の外径と同径の外径を有している。
【0053】
ディスク119〜122とシート部137とが、パイロットケース118に設けられたパイロット室140と下室20との間の油液の流れを抑制するディスクバルブ153を構成している。ディスク119の切欠119A、貫通穴119B、ディスク120の貫通穴120Aおよびディスク121の切欠121Aは、ディスク119がシート部137に当接状態にあってもパイロット室140を下室20に連通させるオリフィス154を形成している。ディスクバルブ153は、ディスク122がディスク121から離れたり、ディスク119がシート部137から離れたりすることで、オリフィス154よりも広い通路面積でパイロット室140を下室20に連通させる。ディスク124は、剛性の高い規制部材125に当接しており、ディスクバルブ153の開方向への変形時にディスク122に当接してディスクバルブ153の規定以上の変形を規制する。
【0054】
縮み側の減衰力発生機構105も、伸び側と同様、圧力制御型のバルブ機構である。減衰力発生機構105は、軸方向のピストン18側から順に、複数枚のディスク161と、一枚の当接ディスク162と、一枚のバルブ部材163と、一枚のディスク164と、複数枚のディスク165と、一枚のディスク166と、一枚のディスク167と、一つのパイロットケース168と、一枚のディスク169と、一枚のディスク170と、一枚のディスク171と、複数枚のディスク172と、一枚のディスク173と、複数枚のディスク174とを有している。
【0055】
パイロットケース168は、上記したパイロットケース118と共通部品である。パイロットケース168は、軸直交方向に沿う有孔円板状の底部181と、底部181の内周側に形成された軸方向に沿う円筒状の内側筒部182と、底部181の外周側に形成された軸方向に沿う円筒状の外側筒部(筒部)183とを有する有底筒状をなしている。底部181は、内側筒部182および外側筒部183に対し軸方向の第一側にずれている。底部181には、軸方向に貫通する複数の貫通穴184が形成されている。内側筒部182の内側には、軸方向の底部181側に先端ロッド27の保持軸部57を嵌合させる小径穴部185が形成されており、軸方向の底部181とは反対側に小径穴部185より大径の大径穴部186が形成されている。パイロットケース168の外側筒部183には、その軸方向の底部181側の端部に、環状のシート部187が形成されており、このシート部187にディスク169が着座する。
【0056】
パイロットケース168の底部181と内側筒部182と外側筒部183とで囲まれた軸方向の底部181とは反対側の空間と、パイロットケース168の貫通穴184とは、バルブ部材163にピストン18の方向に圧力を加えるパイロット室190を構成している。先端ロッド27の上記した通路穴50と、パイロットケース168の大径穴部186と、後述するディスク166,167に形成されたオリフィス201とが、ロッド内通路32とパイロット室190とに接続されて、このパイロット室190にロッド内通路32を介して上室19および下室20からの油液の流れの一部を導入するパイロット室流入通路191を構成している。
【0057】
複数枚のディスク161は、金属製であり、ピストン18のシート部108よりも小径の外径を有する有孔円板状に形成されている。当接ディスク162は、上記した当接ディスク112と共通部品である。当接ディスク162は、ピストン18のシート部108よりも大径の外径を有しシート部108に着座可能な有孔円板状に形成されている。
【0058】
バルブ部材163は、上記したバルブ部材163と共通部品である。バルブ部材163は、当接ディスク162の外径と同径の外径を有する有孔円板状のディスク195と、ディスク195のシート部108とは反対側の背面側の外周部に固着して設けられたゴム材料から形成される円環状のシール部材196とから構成されている。当接ディスク162とバルブ部材163のディスク195とが、ピストン18のシート部108に当接して閉状態となり、ピストン18のシート部108から離間して開状態となる縮み側の減衰バルブ197を構成している。この減衰バルブ197は、パイロットケース168とともにパイロット室190を形成している。減衰バルブ197は、ピストン18に設けられた通路102とパイロットケース168に設けられたパイロット室190との間に設けられてピストン18の縮み側への摺動によって生じる通路102の油液の流れを抑制して減衰力を発生させる。よって、この減衰バルブ197はディスクバルブである。減衰バルブ197は、パイロット室190の圧力によって開弁が抑制される。なお、当接ディスク162およびディスク195には、ピストンロッド21の保持軸部57を挿通させる中央の孔以外に軸方向に貫通する部分は形成されていない。
【0059】
バルブ部材163のシール部材196は、パイロットケース168の外側筒部183の内周面に摺動可能かつ液密的に嵌合して、バルブ部材163と外側筒部183との隙間をシールする。よって、バルブ部材163とパイロットケース168との間の上記したパイロット室190は、当接ディスク162とバルブ部材163のディスク195とから構成される減衰バルブ197に、ピストン18の方向、つまりシート部108に当接ディスク162を当接させる閉弁方向に内圧を作用させる。減衰バルブ197は、パイロット室190を有するパイロットタイプの減衰バルブである。減衰バルブ197は、当接ディスク162がピストン18のシート部108から離座して開くと、通路102からの油液をピストン18とパイロットケース168との間の径方向の通路198を介して上室19に流す。
【0060】
ディスク164は、金属製であり、ディスク195の外径よりも小径の外径を有する有孔円板状に形成されている。複数枚のディスク165は、金属製であり、ディスク161と同径の外径を有する有孔円板状に形成されている。ディスク166は、金属製であり、ディスク165と同径の外径を有する有孔円板状に形成されている。ディスク166の外周側には、複数の切欠166Aが形成されている。ディスク167は、ディスク166と同径の外径を有する有孔円板状に形成されており、内周側に複数の切欠167Aが形成されている。ディスク166の切欠166Aとディスク167の切欠167Aとは、連通してオリフィス201を形成している。上記したように、このオリフィス201によってパイロットケース168の大径穴部186内とパイロット室190とが連通する。
【0061】
ディスク169は、金属製であり、パイロットケース168のシート部187よりも大径の外径を有し、シート部187に着座可能な有孔円板状に形成されている。ディスク169には、外周側に複数の切欠169Aが形成されており、径方向の中間部に切欠169Aに繋がる貫通穴169Bが形成されている。ディスク170は、金属製であり、ディスク169の外径と同径の外径を有している。ディスク170には、径方向の中間部に貫通穴170Aが形成されている。ディスク171は、金属製であり、ディスク169の外径と同径の外径を有している。ディスク171には、外周側に複数の切欠171Aが形成されている。複数枚のディスク172は、金属製であり、いずれもディスク169の外径と同径の外径を有している。
【0062】
ディスク169〜172とシート部187とが、パイロットケース168に設けられたパイロット室190と上室19との間の油液の流れを抑制するディスクバルブ203を構成している。ディスク169の切欠169A、貫通穴169B、ディスク170の貫通穴170Aおよびディスク171の切欠171Aは、ディスク169がシート部187に当接状態にあってもパイロット室190を上室19に連通させるオリフィス204を形成している。ディスクバルブ203は、ディスク172がディスク171から離れたり、ディスク169がシート部187から離れたりすることでオリフィス204よりも広い通路面積でパイロット室190を上室19に連通させる。複数枚のディスク174は、ディスク169〜172の開方向への変形時にディスク172に当接してディスク169〜172の規定以上の変形を規制する。
【0063】
先端ロッド27の先端のオネジ61には、ナット210が螺合されている。ナット210は、オネジ61に締め付けられることにより、図2に示す複数枚のディスク73、ディスク74、複数枚の付勢ディスク75、開閉ディスク76、中間ディスク77、中間ディスク78、当接ディスク79、通路形成部材80、複数枚のディスク174、ディスク173、複数枚のディスク172、ディスク171、ディスク170、ディスク169、図3に示すパイロットケース168、ディスク167、ディスク166、複数枚のディスク165、ディスク164、バルブ部材163、当接ディスク162、複数枚のディスク161、ピストン18、複数枚のディスク111、当接ディスク112、バルブ部材113、ディスク114、複数枚のディスク115、ディスク116、ディスク117、パイロットケース118、ディスク119、ディスク120、ディスク121、複数枚のディスク122、ディスク123、ディスク124および規制部材125を、図2に示す先端ロッド27のフランジ部56との間に挟持する。
【0064】
この状態で、ディスク145および当接ディスク112からなる減衰バルブ147は、ディスク114とディスク111とによって内周側がクランプされる。これにより、減衰バルブ147の外周側がシート部107に着座すると通路101を閉じ、外周側がシート部107から離座すると通路101を開く。同様に、ディスク195および当接ディスク162からなる減衰バルブ197は、ディスク164とディスク161とによって内周側がクランプされる。これにより、減衰バルブ197の外周側がシート部108に着座すると通路102を閉じ、外周側がシート部108から離座すると通路102を開く。
【0065】
図1に示すように、メータリングピン31は、ベースバルブ25に支持される支持フランジ部220と、支持フランジ部220よりも小径で支持フランジ部220から軸方向に延出する大径軸部222と、大径軸部222の支持フランジ部220とは反対側から軸方向に延出するテーパ軸部223と、テーパ軸部223の大径軸部222とは反対側から軸方向に延出する小径軸部224とを有している。大径軸部222は一定径であり、小径軸部224は大径軸部222よりも小径の一定径である。
【0066】
メータリングピン31は、ピストンロッド21の挿入穴30に挿入されている。メータリングピン31は、ピストンロッド21の挿入穴30との間にロッド内通路32を形成している。図3に示すように、ピストンロッド21のシリンダ2内に配置される第一端側に位置する小径穴部48とメータリングピン31との隙間は、ロッド内通路32のうちの下室20と連通するオリフィス225を構成している。
【0067】
図2に示すオリフィス88を含む通路89と、図3に示すオリフィス225を含むロッド内通路32とが、ピストン18の移動により上室19および下室20間を作動流体が流れるように連通させる。
【0068】
オリフィス225は、メータリングピン31の大径軸部222が小径穴部48と軸方向位置を合わせると通路面積が最も狭くなる。また、オリフィス225は、メータリングピン31の小径軸部224が小径穴部48と軸方向位置を合わせると通路面積が最も広くなる。さらに、オリフィス225は、メータリングピン31のテーパ軸部223が小径穴部48と軸方向位置を合わせると、テーパ軸部223の小径軸部224側ほど通路面積が徐々に広くなるように構成されている。オリフィス225は、言い換えればピストンロッド21の位置に感応して通路面積が可変となる可変オリフィスである。
【0069】
ピストンロッド21のシリンダ2内に配置される第一端側の小径穴部48と、メータリングピン31とが、オリフィス225を含みこのオリフィス225の通路面積をピストンロッド21のシリンダ2に対する位置により調整する通路面積調整機構227を構成している。通路面積調整機構227は、言い換えれば、オリフィス225の通路面積をメータリングピン31により調整する。
【0070】
上記通路面積調整機構227による、緩衝器1のストローク位置に対するオリフィス225の通路面積は、縮み側の所定の第3位置よりも縮み側では、小径穴部48と大径軸部222とが軸方向位置を合わせることにより、最小の一定値となる。上記第3位置から1G位置を挟んで伸び側の第4位置までは小径穴部48とテーパ軸部223とが軸方向位置を合わせることにより、オリフィス225の通路面積は伸び側ほど大きくなる。この第4位置から伸び側では小径穴部48と小径軸部224とが軸方向位置を合わせることにより、オリフィス225の通路面積は最大の一定値となる。
【0071】
図1に示すように、外筒4の底部材8と内筒3との間には、上記したベースバルブ25が設けられている。このベースバルブ25は、下室20とリザーバ室6とを仕切るベースバルブ部材231と、このベースバルブ部材231の下側つまりリザーバ室6側に設けられるディスク232と、ベースバルブ部材231の上側つまり下室20側に設けられるディスク233と、ベースバルブ部材231にディスク232およびディスク233を取り付ける取付ピン234と、ベースバルブ部材231の外周側に装着される係止部材235と、メータリングピン31の支持フランジ部220を支持する支持板236とを有している。取付ピン234は、ディスク232およびディスク233の径方向中央側をベースバルブ部材231との間で挟持する。
【0072】
ベースバルブ部材231は、径方向の中央に取付ピン234が挿通される円環状に形成されている。ベースバルブ部材231には、下室20とリザーバ室6との間で油液を流通させる複数の通路穴239と、これら通路穴239の径方向の外側にて、下室20とリザーバ室6との間で油液を流通させる複数の通路穴240とが形成されている。リザーバ室6側のディスク232は、下室20から内側の通路穴239を介してリザーバ室6への油液の流れを許容する一方で、リザーバ室6から下室20への内側の通路穴239を介しての油液の流れを規制する。ディスク233は、リザーバ室6から外側の通路穴240を介して下室20への油液の流れを許容する一方で、下室20からリザーバ室6への外側の通路穴240を介しての油液の流れを規制する。
【0073】
ディスク232は、ベースバルブ部材231とによって、緩衝器1の縮み行程において開弁して下室20からリザーバ室6に油液を流すとともに減衰力を発生する縮み側の減衰バルブ242を構成している。ディスク233は、ベースバルブ部材231とによって、緩衝器1の伸び行程において開弁してリザーバ室6から下室20内に油液を流すサクションバルブ243を構成している。サクションバルブ243は、主としてピストンロッド21のシリンダ2からの伸び出しにより生じる液の不足分を補うようにリザーバ室6から下室20に実質的に減衰力を発生させることなく液を流す機能を果たす。
【0074】
係止部材235は、筒状に形成されており、その内側にベースバルブ部材231を嵌合させる。ベースバルブ部材231は、この係止部材235を介して内筒3の下端の内周部に嵌合している。係止部材235のピストン18側の端部には径方向内側に延出する係止フランジ部245が形成されている。支持板236は、外周部が係止フランジ部245のピストン18とは反対側に係止され、内周部がメータリングピン31の支持フランジ部220のピストン18側に係止されている。これにより、係止部材235および支持板236がメータリングピン31の支持フランジ部220を取付ピン234に当接する状態に保持する。
【0075】
図4に示すように、ロッドガイド22は、軸方向第一側に大径外径部252が形成され、軸方向第二側に大径外径部252よりも小径の小径外径部253が形成された外形形状を有している。ロッドガイド22は、焼結部品であり、大径外径部252において外筒4の口元部材9の大径内周部14に嵌合し、小径外径部253において内筒3の内周部に嵌合する。
【0076】
ロッドガイド22の径方向の中央には、大径穴部254と中間穴部255と小径穴部256とが形成されている。大径穴部254は、ロッドガイド22の軸方向の大径外径部252側に形成されている。中間穴部255は、大径穴部254よりも小径であり、ロッドガイド22の軸方向の大径穴部254よりも小径外径部253側に形成されている。小径穴部256は、大径穴部254よりも小径且つ中間穴部255より若干大径であり、ロッドガイド22の軸方向の中間穴部255の大径穴部254とは反対側に形成されている。
【0077】
大径穴部254には、その内周面および底面に連続して連通溝257が形成されている。連通溝257は、大径穴部254の内周面に軸方向の全長にわたって形成され、大径穴部254の底面に径方向の全長にわたって形成されている。
【0078】
ロッドガイド22の軸方向の大径外径部252側の端面には、環状凸部258が形成されている。環状凸部258は、ロッドガイド22の軸方向の大径外径部252側の端部から軸方向外方に突出するように形成されている。ロッドガイド22には、環状凸部258の内側に連通穴261が形成されている。連通穴261は、ロッドガイド22の大径外径部252を軸方向に貫通しており、外筒4と内筒3との間のリザーバ室6に連通している。
【0079】
シール部材23は、シリンダ2の軸方向の第一端部に配置され、その内周部においてピストンロッド21のロッド本体26の外周部に圧接する。シール部材23は、その内周部で、軸方向に移動するピストンロッド21の外周部に摺接して、内筒3内の油液と外筒4内のリザーバ室6の高圧ガスおよび油液とが、ロッドガイド22とピストンロッド21との隙間、およびロッドガイド22と外筒4との隙間から外部に漏洩するのを防止する。図4においては、ピストンロッド21を仮想線(二点鎖線)で示し、シール部材23を、ピストンロッド21が挿通される前の自然状態で示している(ピストンロッド21に食い込んでいるわけではない)。
【0080】
シール部材23は、シール部265と円環状の環状部材266とから構成される一体成形品のシール部材本体267と、環状のスプリング268と、環状のスプリング269とから構成されている。シール部265は、ニトリルゴムやフッ素ゴムなどの摺動性のよい弾性ゴム材料から形成されている。環状部材266は、シール部265内に埋設されシール部材23の形状を維持し、固定のための強度を得るための部材で、金属製である。
【0081】
シール部265は、その径方向の内側に、円環筒状のダストリップ272と、円環筒状のオイルリップ273とを有している。ダストリップ272は、環状部材266の内周側のシリンダ内外方向外側から軸方向に沿って環状部材266から離れる方向に延出している。オイルリップ273は、環状部材266の内周側のシリンダ内外方向内側から軸方向に沿って環状部材266から離れる方向に延出している。スプリング268はダストリップ272の外周部に嵌合されており、スプリング269はオイルリップ273の外周部に嵌合されている。
【0082】
また、シール部265は、その径方向外側に、外周シール274と、円環状のシールリップ275とを有している。外周シール274は環状部材266の外周面を覆っている。
シールリップ275は、外周シール274からシリンダ内外方向内側に延出している。さらに、シール部265は、円環状のチェックリップ276を有している。このチェックリップ276は、シール部265の径方向中間部分のシリンダ内外方向内側から、シリンダ内外方向内側に拡径しつつ延出している。
【0083】
ダストリップ272は、自然状態にあるとき、全体として環状部材266からシリンダ内外方向外側に離れるほど内径が小径となる先細筒状に形成されている。ダストリップ272の外周部は、径方向内方に凹む形状を有しており、この部分に上記したスプリング268が嵌合されている。
【0084】
オイルリップ273は、自然状態にあるとき、全体として環状部材266からシリンダ内外方向内側に離れるほど小径となる先細筒状に形成されている。オイルリップ273の外周部は、径方向内方に凹む形状を有しており、この部分に上記したスプリング269が嵌合されている。また、オイルリップ273は、内周部が段差状に形成されている。
【0085】
シール部材23は、ダストリップ272がシリンダ内外方向の外側に配置され、オイルリップ273がシリンダ内外方向の内側に配置された状態で、外周シール274において外筒4の口元部材9の大径内周部14に密封接触する。シール部材23は、この状態で、シール部265の環状部材266の位置がロッドガイド22の環状凸部258とカバー5の内フランジ部16とに挟持される。この際に、シール部材23は、シールリップ275が、ロッドガイド22の環状凸部258と外筒4の口元部材9の大径内周部14との間に配置されて、これらに密封接触する。また、オイルリップ273がロッドガイド22の大径穴部254内に配置される。
【0086】
そして、シリンダ2に取り付けられた状態のシール部材23には、ダストリップ272およびオイルリップ273の内側にピストンロッド21のロッド本体26が挿通される。この状態で、ピストンロッド21はその第一端がシリンダ2の第一端から突出する。また、この状態で、ダストリップ272は、シリンダ2のピストンロッド21が突出する第一端側に設けられ、オイルリップ273は、ダストリップ272のシリンダ内外方向の内側に設けられる。
【0087】
ダストリップ272に嵌合されるスプリング268は、ダストリップ272のピストンロッド21への密着方向の締付力を一定状態に保つための部材である。また、このスプリング268は、設計仕様を満足させるための締付力の調整にも用いられる。オイルリップ273に嵌合されるスプリング269は、オイルリップ273のピストンロッド21への密着方向の締付力を調整する。
【0088】
シール部265のロッドガイド22側のチェックリップ276は、ロッドガイド22の環状凸部258よりも内側部分に所定の締め代を持って全周にわたり密封接触可能に構成されている。ここで、ロッドガイド22とピストンロッド21との隙間から漏れ出た油液は、シール部材23のチェックリップ276よりもこの隙間側の主に大径穴部254により形成される室280に溜まる。チェックリップ276は、この室280の圧力が、リザーバ室6の圧力よりも所定量高くなった時に開いて、室280に溜まった油液を連通穴261を介してリザーバ室6に流す。つまり、チェックリップ276は、室280からリザーバ室6への方向にのみ油液およびガスの流通を許容し、逆方向の流通を規制する逆止弁として機能する。
【0089】
上記のシール部材23は、ダストリップ272がその締め代およびスプリング268による緊迫力でピストンロッド21に密着して密封性を保持する。シール部材23は、外部露出時にピストンロッド21に付着した異物の内部への進入を、主にこのダストリップ272が規制する。シール部材23は、オイルリップ273がその締め代およびスプリング269による緊迫力でピストンロッド21に密着して密封性を保持する。シール部材23は、ピストンロッド21の内筒3内への進入時にピストンロッド21に付着した油液が、ピストンロッド21の外部への露出にともなって外部へ漏出することを主にこのオイルリップ273によって規制する。
【0090】
摩擦部材24は、ロッドガイド22の大径穴部254内の底部側に嵌合される。これにより、摩擦部材24は、シール部材23よりもシリンダ2の内部側に配置されている。摩擦部材24は、その内周部においてピストンロッド21のロッド本体26の外周部に圧接し、ピストンロッド21への摩擦抵抗を発生させる。図4においては、ピストンロッド21を仮想線(二点鎖線)で示し、摩擦部材24を、ピストンロッド21が挿通される前の自然状態で示している(ピストンロッド21に食い込んでいるわけではない)。
【0091】
摩擦部材24は、円環状の弾性ゴム部291と円環状のベース部292とから構成される一体成形品である。弾性ゴム部291は、ニトリルゴムやフッ素ゴムなどの弾性ゴム材料から形成されており、ベース部292に固着されている。ベース部292は金属製であり、弾性ゴム部291の形状を維持し、ロッドガイド22への固定のための強度を得るための部材である。
【0092】
摩擦部材24は、ベース部292が、底部301と筒部302とから構成されている。底部301は有孔円板状に形成されている。筒部302は底部301の外周側から軸方向に延びる円筒状に形成されている。これら底部301および筒部302は中心軸を一致させている。言い換えれば、底部301に対し筒部302は垂直に延出している。
【0093】
弾性ゴム部291は、ベース部292と中心軸を一致させた円環状に形成されている。弾性ゴム部291は、ベース部292の底部301の内周面を覆うとともに、底部301の軸方向の筒部302側を覆っており、底部301から軸方向の筒部302側に延出して設けられている。弾性ゴム部291は、自然状態にあるとき、筒部302から径方向に離間しており、筒部302と対向する外周側が、軸方向の底部301側ほど大径となるテーパ面305を有している。弾性ゴム部291は、自然状態にあるとき、その内周面が、最小内径部307と拡径部308と拡径部309とを有している。最小内径部307は、摩擦部材24の中で最も小径に形成されている。拡径部308は、最小内径部307の軸方向の底部301とは反対側にあって最小内径部307から離れるほど大径となるテーパ状に形成されている。拡径部309は、最小内径部307の軸方向の底部301側にあって最小内径部307から離れるほど大径となるテーパ状に形成されている。言い換えれば、弾性ゴム部291には、内周側に最小内径部307と最小内径部307の軸方向両側の拡径部308,309とが設けられている。拡径部308,309の境界部分が最小内径部307である。弾性ゴム部291は、自然状態にあるとき、拡径部309の最小内径部307と底部301との間の軸方向長さが、拡径部308の軸方向長さよりも長い。
【0094】
上記構造の摩擦部材24は、ベース部292の軸方向の筒部302側がシリンダ内外方向の外側に配置され、ベース部292の軸方向の底部301がシリンダ内外方向の内側に配置された状態で、ロッドガイド22の大径穴部254に圧入される。このとき、摩擦部材24は、ベース部292の底部301が大径穴部254の底面に当接する。
【0095】
そして、シリンダ2に取り付けられた状態の摩擦部材24には、弾性ゴム部291の内側にピストンロッド21のロッド本体26が、所定の締め代をもって挿通される。これにより、摩擦部材24は、弾性ゴム部291が径方向外側に弾性変形しつつピストンロッド21のロッド本体26に密着する。そして、ピストンロッド21がシリンダ内外方向に移動すると、ロッド本体26に弾性ゴム部291が摺接する。その際に、摩擦部材24は、摩擦特性の調整を行うことになる。
【0096】
上記のように摩擦部材24を嵌合させた状態で、ロッドガイド22の大径穴部254と摩擦部材24との間には、大径穴部254に形成された連通溝257によって連通路311が形成される。この連通路311がロッドガイド22の小径穴部256側と大径穴部254側、つまり室280側とを連通させる。ロッドガイド22の小径穴部256側は、ピストンロッド21との隙間を介して上室19に連通している。これにより、連通路311は室280と上室19とを連通させて、これらの差圧を小さくする。言い換えれば、連通路311は、摩擦部材24の軸方向両側を連通させて摩擦部材24の軸方向両側の差圧を小さくする。よって、摩擦部材24は、積極的にシールとしての役割を果たすものではない。摩擦部材24および連通路311が、摩擦部材24によってピストンロッド21の摺動抵抗となって緩衝器1に減衰力を発生させる減衰力発生機構312を構成する。
【0097】
連通路311に代えて、または、連通路311に加えて、摩擦部材24の内周に軸方向両側の差圧を小さくする連通路を設けてもよい。また、連通路311は常時連通していなくとも、例えば、シリンダ2内から外側への逆止弁を設けてもよい。ようは、摩擦部材24が完全なシールとして作用するものでなければよい。
【0098】
本実施形態の緩衝器1の作動を説明する。本実施形態の緩衝器1は、通路面積調整機構91,227が設けられていることにより、ストローク位置により減衰力が変化する位置感応機能を有する。
【0099】
ピストンロッド21が最大長側所定位置よりもシリンダ2の外部へ延出される最大長側所定範囲では、図1に示す緩衝体39がロッドガイド22に当接し、リバウンドスプリング38を含むバネ機構90が縮長している。これにより、通路面積調整機構91が、図2に示すバネ機構90のピストン側バネ受35によって付勢ディスク75および開閉ディスク76を弾性変形させて開閉ディスク76を当接ディスク79に当接させて通路89を閉塞させる。また、この最大長側所定範囲では、図3に示す通路面積調整機構227が、メータリングピン31の小径軸部224の軸方向位置に小径穴部48を合わせてオリフィス225の通路面積を最大にする。この最大長側所定範囲では、ロッド内通路32が上記オリフィス225の通路面積において下室20に連通し、伸び側の減衰力発生機構104のパイロット室140と、縮み側の減衰力発生機構105のパイロット室190とが、オリフィス225を含むロッド内通路32と、パイロット室流入通路141,191とを介して共に下室20に連通する。
【0100】
この最大長側所定範囲にあって、ピストンロッド21がシリンダ2の外部へ延出される伸び行程では、ピストン18が上室19側に移動し、上室19の圧力が上がり下室20の圧力が下がる。すると、上室19の圧力が、ピストン18に形成された伸び側の通路101を介して伸び側の減衰力発生機構104の減衰バルブ147のディスク145および当接ディスク112に作用する。このとき、減衰バルブ147にシート部107の方向へのパイロット圧を作用させるパイロット室140は、オリフィス225を含むロッド内通路32およびパイロット室流入通路141を介して下室20に連通しているため、下室20に近い圧力状態となって、パイロット圧が下がる。よって、減衰バルブ147は、受ける差圧が大きくなり、比較的容易にシート部107から離れるように開いて、ピストン18とパイロットケース118との間の径方向の通路148を介して下室20側に油液を流す。これにより、減衰力は下がる。つまり、伸び側減衰力がソフトの状態となる。
【0101】
また、この最大長側所定範囲にあって、ピストンロッド21がシリンダ2の内部へ進入される縮み行程では、ピストン18が下室20側に移動し、下室20の圧力が上がり上室19の圧力が下がる。すると、下室20の油圧がピストン18に形成された縮み側の通路102を介して縮み側の減衰力発生機構105の減衰バルブ197のディスク195および当接ディスク162に作用する。このとき、減衰バルブ197にシート部108の方向へのパイロット圧を作用させるパイロット室190は、オリフィス225を含むロッド内通路32およびパイロット室流入通路191を介して下室20に連通しているため、下室20に近い圧力状態となり、下室20の圧力上昇と共にパイロット圧も上昇する。
【0102】
この状態では、ピストン速度が遅い時、パイロット室190の圧力上昇が下室20の圧力上昇に追従可能であるため、減衰バルブ197は、受ける差圧が小さくなり、シート部108から離れにくい状態になる。よって、下室20からの油液は、オリフィス225を含むロッド内通路32およびパイロット室流入通路191からパイロット室190を通り、ディスクバルブ203のオリフィス204を介して上室19に流れ、オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して比較的減衰力の上昇率が高くなる。
【0103】
また、ピストン速度が上記より速い時でも、減衰バルブ197がシート部108から離れにくい状態である。下室20からの油液は、オリフィス225を含むロッド内通路32およびパイロット室流入通路191からパイロット室190を通り、ディスクバルブ203を開きながら、シート部187とディスク169〜172との間を通って、上室19に流れる。これにより、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率はやや下がる。
以上により、縮み行程の減衰力は、伸び行程の減衰力に比べて高くなり、縮み側減衰力がハードの状態となる。
【0104】
なお、最大長側所定範囲の縮み行程であっても、路面の段差等により生じるインパクトショック発生時等において、ピストン速度がさらに高速の領域になると、パイロット室190の圧力上昇が下室20の圧力上昇に追従できなくなる。このため、縮み側の減衰力発生機構105の減衰バルブ197のディスク195および当接ディスク162に作用する差圧による力の関係は、ピストン18に形成された通路102から加わる開方向の力がパイロット室190から加わる閉方向の力よりも大きくなる。よって、この領域では、ピストン速度の増加に伴い減衰バルブ197が開いてシート部108から離れる。これにより、ディスク169〜172とシート部187との間を通る上室19への流れに加え、ピストン18とパイロットケース168との間の径方向の通路198を介して上室19に油液が流れるため、減衰力の上昇が抑えられる。このときのピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率がほとんどない。よって、ピストン速度が速く周波数が比較的高い、路面の段差等により生じるインパクトショック発生時等において、上記のようにピストン速度の増加に対する減衰力の上昇を抑えることで、ショックを十分に吸収する。
【0105】
以上、ピストンロッド21が最大長側所定位置よりもシリンダ2の外部へ延出される最大長側所定範囲では、伸び側減衰力がソフトの状態となり、縮み側減衰力がハードの状態となる最大長側特性となる。
【0106】
他方、ピストンロッド21が最小長側所定位置よりもシリンダ2の内部へ進入される最小長側所定範囲では、リバウンドスプリング38が縮長しない。このため、図2に示す通路面積調整機構91は、リバウンドスプリング38を含むバネ機構90により押圧されずに開閉ディスク76を当接ディスク79から離間させて通路89のオリフィス88の通路面積を最大にする。また、最小長側所定範囲では、図3に示す通路面積調整機構227が、メータリングピン31の大径軸部222の軸方向位置に小径穴部48を合わせてオリフィス225を閉塞させる。この最小長側所定範囲では、ロッド内通路32が図2に示す上記通路89を介して上室19に連通する。これにより、図3に示す伸び側の減衰力発生機構104のパイロット室140と、縮み側の減衰力発生機構105のパイロット室190とが、ロッド内通路32を介して共に上室19に連通する。
【0107】
この最小長側所定範囲にあって、ピストンロッド21がシリンダ2の外部へ延出される伸び行程では、ピストン18が上室19側に移動し、上室19の圧力が上がり下室20の圧力が下がる。すると、上室19の圧力が、ピストン18に形成された伸び側の通路101を介して伸び側の減衰力発生機構104の減衰バルブ147のディスク145および当接ディスク112に作用する。このとき、バルブ部材113および当接ディスク112にシート部107の方向へのパイロット圧を作用させるパイロット室140は、図2に示す通路89、ロッド内通路32および図3に示すパイロット室流入通路141を介して上室19に連通しているため、上室19に近い圧力状態となり、上室19の圧力上昇と共にパイロット圧も上昇する。
【0108】
この状態では、ピストン速度が遅い時、パイロット室140の圧力上昇が上室19の圧力上昇に追従可能である。このため、バルブ部材113および当接ディスク112は、受ける差圧が小さくなり、シート部107から離れにくい状態になる。よって、上室19からの油液は、図2に示す通路89、ロッド内通路32および図3に示すパイロット室流入通路141からパイロット室140を通り、ディスクバルブ153のオリフィス154を介して下室20に流れ、オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して比較的減衰力の上昇率が高くなる。
【0109】
また、ピストン速度が上記より速い時でも、バルブ部材113および当接ディスク112がシート部107から離れることがない。このため、上室19からの油液は、図2に示す通路89、ロッド内通路32および図3に示すパイロット室流入通路141からパイロット室140を通り、ディスクバルブ153を開きながら、シート部137とディスク119〜122との間を通って、下室20に流れる。これにより、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率はやや下がる。
以上により、伸び行程の減衰力は高くなり、伸び側減衰力がハードの状態となる。
【0110】
また、この最小長側所定範囲にあって、ピストンロッド21がシリンダ2の内部へ進入される縮み行程では、ピストン18が下室20側に移動し、下室20の圧力が上がり、上室19の圧力が下がる。すると、下室20の油圧が、ピストン18に形成された縮み側の通路102を介して、縮み側の減衰力発生機構105の減衰バルブ197のディスク195および当接ディスク162に作用する。このとき、減衰バルブ197にシート部108の方向へのパイロット圧を作用させるパイロット室190は、図2に示す通路89、ロッド内通路32および図3に示すパイロット室流入通路191を介して上室19に連通している。このため、パイロット室190は上室19に近い圧力状態となり、パイロット圧が下がる。よって、バルブ部材163および当接ディスク162は、受ける差圧が大きくなり、比較的容易にシート部108から離れるように開いて、ピストン18とパイロットケース168との間の径方向の通路198を介して上室19側に油液を流す。
以上により、縮み行程の減衰力は、伸び行程の減衰力に比べて減衰力が低くなり、縮み側減衰力がソフトの状態となる。
【0111】
以上、ピストンロッド21が最小長側所定位置よりもシリンダ2の内部へ進入される最小長側所定範囲は、伸び側減衰力がハードの状態となり、縮み側減衰力がソフトの状態となる最小長側特性となる。
【0112】
本実施形態の緩衝器1は、通路面積調整機構91,227を備えることによって、以上に述べたように最大長側所定範囲と最小長側所定範囲とでハードとソフトの関係が逆になる反転型の位置感応の減衰力変化特性が得られる。
【0113】
本実施形態の緩衝器1は、上記位置感応の減衰力特性を得るための構成に加えて、これとは独立して作動して機能する図4に示す減衰力発生機構312を設けている。減衰力発生機構312の摩擦部材24によって、ピストン速度が微低速であって微振幅入力時のピストンロッド21への作用力を適正化している。つまり、摩擦部材24を用いると、ピストン速度が微低速であって微振幅の入力時に、ピストン速度が0からの動き始めの摩擦領域において、摩擦部材24はピストンロッド21と滑りを生じず弾性ゴム部291の弾性変形によるバネ力が発生し、このバネ力が作用力となる(動バネ領域)。その後、ある程度(0.1mm)以上ピストンロッド21が動くと、摩擦部材24とピストンロッド21との間で滑りが発生して、動摩擦力が発生する(動摩擦領域)。本実施形態では、摩擦部材24によって、ピストン速度が微低速であって微振幅の入力時の動バネ定数が向上し動摩擦係数が高くなり、摩擦部材24を備えずに通路面積調整機構91,227を備える緩衝器1の減衰力発生機構104,105による減衰力よりも上げることができる。
【0114】
次に、共通部品であるバルブ部材113,163の詳細について、主に図5図7Cを参照してバルブ部材113を例にとり説明する。
【0115】
上述したように、バルブ部材113は、有孔円板状のディスク145とディスク145の外周部に固着して設けられるシール部材146とを有している。ディスク145は鋼板製であり、シール部材146は、ニトリルゴムやフッ素ゴムなどの弾性ゴム材料から形成されている。
【0116】
図5および図6においては、緩衝器1に組み込まれる前の自然状態にあるバルブ部材113を示している。この自然状態について説明する。図5に示すように、ディスク145およびシール部材146は中心軸線を一致させている。この中心軸線がバルブ部材113の中心軸線である。ディスク145は、軸方向の位置が一定の平板状に形成されている。ディスク145は、外周部に円筒面341が形成され、内周部に円筒面342が形成され、これら円筒面341,342が同心状に配置されている。ディスク145は、軸方向第一側の面がシール部材146が固着される固着面343となり、この固着面343が図3に示すシート部107とは反対側に配置される背面となる。
【0117】
図6に示すように、シール部材146は、その径方向の外周面が、基端円筒面部351と、平坦面部352と、曲面部353と、テーパ面部354と、曲面部355と、テーパ面部356と、曲面部357と、テーパ面部358と、曲面部359と、テーパ面部360と、先端円筒面部361とから構成されている。
【0118】
基端円筒面部351は、シール部材146の外周面のうち最もディスク145側にあり、ディスク145の固着面343からバルブ部材113の中心軸線を中心とする円筒状の形状を有して延出している。平坦面部352は、この基端円筒面部351のディスク145とは反対側の端縁部から、一定幅で径方向内方に延出している。平坦面部352は、バルブ部材113の中心軸線を中心とする円環状に形成されており、バルブ部材113の中心軸線と直交する同一平面内に配置されている。
【0119】
曲面部353は、バルブ部材113の中心軸線を中心とする円環状に形成されている。曲面部353は、平坦面部352の内周縁部から、径方向内側ほどディスク145から軸方向に離れるように若干傾斜して延出している。曲面部353は、その中心軸線を含む断面の形状が、シール部材146の外部に中心を有する円弧状に形成されている。テーパ面部354は、曲面部353の内周縁部から、径方向内側ほどディスク145から軸方向に離れるように傾斜して延出しており、バルブ部材113の中心軸線を中心とするテーパ状に形成されている。
【0120】
曲面部355は、バルブ部材113の中心軸線を中心とする円環状に形成されている。曲面部355は、テーパ面部354の内周縁部から、径方向内側ほどディスク145から軸方向に離れるように延出している。曲面部355は、その中心軸線を含む断面の形状が、シール部材146の外部に中心を有する円弧状に形成されている。テーパ面部356は、曲面部355の内周縁部から、径方向内側ほどディスク145から軸方向に離れるように延出しており、バルブ部材113の中心軸線を中心とするテーパ状に形成されている。ここで、大径側所定位置における直径と小径側所定位置における直径との差をこれら位置間の軸方向長さで除算したテーパ量は、テーパ面部356の方がテーパ面部354よりも小さい。
【0121】
曲面部357は、バルブ部材113の中心軸線を中心とする円環状に形成されている。曲面部357は、テーパ面部356の内周縁部から、ディスク145から軸方向に離れるほど小径となるように延出して最小径部357Aとなり、この最小径部357Aから、ディスク145から軸方向に離れるほど大径となるように延出している。曲面部357は、その中心軸線を含む断面の形状が、シール部材146の外部に中心を有する円弧状に形成されている。テーパ面部358は、曲面部357のテーパ面部356とは反対側の端縁部から、ディスク145から軸方向に離れるほど大径となるように延出しており、バルブ部材113の中心軸線を中心とするテーパ状に形成されている。上記したテーパ量は、テーパ面部358の方がテーパ面部356よりも小さい。
【0122】
曲面部359は、バルブ部材113の中心軸線を中心とする円環状に形成されている。曲面部359は、テーパ面部358の曲面部357とは反対側の端縁部から、ディスク145から軸方向に離れるほど大径となるように延出して最大径部359Aを形成している。曲面部359は、この最大径部359Aから、ディスク145から軸方向に離れるほど小径となるように延出している。曲面部359は、その中心軸線を含む断面の形状が、シール部材146の内部に中心を有する円弧状に形成されている。テーパ面部360は、曲面部359のテーパ面部358とは反対側の端縁部から、ディスク145から軸方向に離れるほど小径となるように延出しており、バルブ部材113の中心軸線を中心とするテーパ状に形成されている。上記したテーパ量は、テーパ面部360の方が、テーパ面部354よりも小さくテーパ面部356よりも大きい。先端円筒面部361は、テーパ面部360の曲面部359とは反対側の端縁部からディスク145とは反対方向に延出しており、バルブ部材113の中心軸線を中心とする円筒状に形成されている。先端円筒面部361は、シール部材146の外周面のうち最もディスク145とは反対側にある。先端円筒面部361の直径は、曲面部357の最小径部357Aと同等である。
【0123】
先端円筒面部361のディスク145とは反対側に、シール部材146において最もディスク145とは反対側に位置する先端面部365が形成されている。この先端面部365は、先端円筒面部361のディスク145とは反対側の端縁部から、一定幅で径方向内方に延出している。先端面部365は、バルブ部材113の中心軸線を中心とする円環状に形成されており、バルブ部材113の中心軸線と直交する同一平面内に配置されている。
【0124】
シール部材146は、その内周面が、曲面部371と、テーパ面部372と、曲面部373と、テーパ面部374と、曲面部375とから構成されている。
【0125】
曲面部371は、シール部材146の内周面のうち最もディスク145側にあり、バルブ部材113の中心軸線を中心とする円環状に形成されている。曲面部371は、ディスク145の固着面343から、ディスク145から軸方向に離れるほど大径となるように延出している。曲面部371は、その中心軸線を含む断面の形状が、シール部材146の外部に中心を有する円弧状に形成されている。テーパ面部372は、曲面部371のディスク145とは反対側の端縁部から、ディスク145から軸方向に離れるほど大径となるように延出しており、バルブ部材113の中心軸線を中心とするテーパ状に形成されている。
【0126】
曲面部373は、バルブ部材113の中心軸線を中心とする円環状に形成されている。曲面部373は、テーパ面部372のディスク145とは反対側の端縁部から、ディスク145から軸方向に離れるほど大径となるように延出している。曲面部373は、その中心軸線を含む断面の形状が、シール部材146の内部に中心を有する円弧状に形成されている。テーパ面部374は、曲面部373のテーパ面部372とは反対側の端縁部から、ディスク145から軸方向に離れるほど大径となるように延出しており、バルブ部材113の中心軸線を中心とするテーパ状に形成されている。上記したテーパ量は、テーパ面部374の方が、テーパ面部372よりも大きい。曲面部375は、バルブ部材113の中心軸線を中心とする円環状に形成されている。曲面部375は、テーパ面部374のディスク145とは反対側の端縁部から、ディスク145から軸方向に離れるほど大径となるように延出して先端面部365の内周縁部に繋がっている。曲面部375は、その中心軸線を含む断面の形状が、シール部材146の内部に中心を有する円弧状に形成されている。
【0127】
シール部材146の外周側には、上記した平坦面部352と曲面部353とテーパ面部354と曲面部355とテーパ面部356と曲面部357とテーパ面部358と曲面部359の最大径部359Aよりもテーパ面部358側の部分とによって、径方向内方に凹む凹部380が形成されている。この凹部380の深さが最も深い位置は、曲面部357の最小径部357Aを形成している。この凹部380は、その中心軸線を含む断面の形状が、全体として湾曲面状に形成されている。
【0128】
また、シール部材146の外周側には、固着面343に接合される接合面377と基端円筒面部351と平坦面部352と曲面部353とテーパ面部354と曲面部355とテーパ面部356と曲面部357の最小径部357Aよりもテーパ面部356側の部分とによって、径方向外方に突出する凸部381が形成されている。
【0129】
また、シール部材146の外周側には、曲面部357の最小径部357Aよりもテーパ面部358側の部分とテーパ面部358と曲面部359とテーパ面部360とによって径方向外方に突出する凸部382が形成されている。この凸部382の突出高さが最も高い位置は、曲面部359の最大径部359Aを形成している。
【0130】
また、シール部材146の外周側には、曲面部359の最大径部359Aよりもテーパ面部360側とテーパ面部360と先端円筒面部361とによって外周側かつ軸方向のディスク145とは反対側に切り欠かれた形状の切欠部383が形成されている。上記した凹部380、凸部381、凸部382および切欠部383は、いずれもバルブ部材113の中心軸線を中心とする円環状に形成されている。
【0131】
シール部材146の内周側には、テーパ面部372と曲面部373とテーパ面部374とによって径方向内方に突出する凸部385が軸方向の中間位置に形成されている。この凸部385もバルブ部材113の中心軸線を中心とする円環状に形成されている。この凸部385の突出方向は、突出先端側ほどバルブ部材113の中心軸線に近づき、かつ軸方向においてディスク145から離れる斜め方向である。テーパ面部372の延長面とテーパ面部374の延長面との交線からこれら延長面の二等分線を延ばし、これが交差する曲面部373上の位置が、この凸部385の頂部385Aである。
【0132】
シール部材146において、シール部材146の軸方向において凹部380の範囲内に凸部385の頂部385Aが形成されている。凸部385の頂部385Aは凹部380の最小径部357Aよりもディスク145からの距離が大きい。また、シール部材146において、その軸方向長さの50%以上、好ましくは70%以上の範囲に一つの凹部380が形成されている。
【0133】
また、シール部材146において、凹部380の最小径部357Aのディスク145からの高さH2は、シール部材146の外周部の最小径部357Aよりもディスク145とは反対側で最大径となる最大径部359Aのディスク145からの高さH1の1/3よりも大きい。
【0134】
以上のバルブ部材113が、そのシール部材146において図3に示すパイロットケース118の外側筒部133に締め代をもって嵌合される。この締め代は、シール部材146が外側筒部133に対し摺動可能かつ常時液密的に嵌合するように設定される。
【0135】
上記した特許文献1に記載の緩衝器は、シールディスクがシール部材をパイロットケースに嵌合させることでパイロットケースとの間にパイロット室を形成する。そして、このパイロット室の圧力によってバルブの開弁を抑制する。
このような構造において、特にパイロット室の圧力が高くなると、シール部材の耐久性が低下してしまう可能性がある。また、パイロット室の圧力が高くなると、シール部材がパイロットケースに引っかかって摺動が安定しなくなり、その結果、減衰力特性が安定しなくなる可能性がある。
【0136】
これに対して、本実施形態の緩衝器1は、シール部材146の外周側に環状の凹部380が形成されているため、凹部380のディスク145側に径方向外方に突出する凸部381が形成される。よって、この凸部381でディスク145への固着側の体積を大きくとることができる。これにより、シール部材146のディスク145への固着側の剛性を高めることができる。また、シール部材146の外周側に環状の凹部380が形成されているため、シール部材146の外側筒部133への密着時にシール部材146の外周側の変形が不適切になることを抑制できる。また、内周側に環状の凸部385が形成されており、凹部380による体積減を凸部385で補って剛性を確保することができるため、シール部材146の内周側の変形が異常になることを抑制できる。以上により、シール部材146の耐久性を向上させることができる。シール部材146と共通部品であるシール部材196についても同様に耐久性を向上させることができる。
【0137】
また、本実施形態の緩衝器1は、シール部材146の外周部の環状の凹部380の最小径部357Aのディスク145からの高さH2は、シール部材146の外周部の最小径部357Aよりもディスク145とは反対側で最大径となる最大径部359Aのディスク145からの高さH1の1/3よりも大きい。このため、シール部材146の耐久性を向上させることができる。つまり、図7Aの上段に示すように高さH2が高さH1の1/3よりも極端に小さいと、図7Aの下段に破線Xaで囲んで示すように外側筒部133への嵌合時にシール部材の外周側の凹部の変形が鋭角に屈曲する異常な形状となる。また、図7Bの上段に示すように高さH2が高さH1の1/3に近くても、H1の1/3よりも小さければ、図7Bの下段に破線Xbで囲んで示すように外側筒部133への嵌合時にシール部材の外周側の凹部の変形が鋭角に屈曲する異常な形状となってしまう。これに対して、図7Cの上段に示すように高さH2が高さH1の1/3よりも大きければ、図7Cの下段に破線Xcで囲んで示すように外側筒部133への嵌合時にシール部材146の凹部380の変形が鈍角となり異常にはならない。このため、シール部材146の耐久性を向上させることができる。シール部材146と共通部品であるシール部材196についても同様に耐久性を向上させることができる。
また、シール部材146において、シール部材146の軸方向において凹部380の範囲内に凸部385の頂部385Aが形成され、さらに凸部385の頂部385Aは凹部380の最小径部357Aよりもディスク145からの距離が大きい。このような形状とすることにより、図7Cの下段に示すように、使用時にシール部材146の内周側が滑らかとなる形状とすることができる。これにより、パイロット室140内の圧力が上昇したときに、内周側全体で圧力を受けやすくすることができる。
【0138】
また、上記形状により、パイロット室140,190の圧力が高くなっても、シール部材146,196が異常に変形することを抑制でき、シール部材146,196の耐久性を向上させることができる。このため、より高い圧力をパイロット室140,190に導入することが可能となる。これにより、減衰バルブ147,197の開弁をより抑制でき、減衰力をよりハードな設定にすることが可能になる。また、シール部材146,196の変形が異常になることを抑制できるため、パイロット室140,190の圧力を高くしてハードな設定としても、シール部材146,196をパイロットケース118,168に対し円滑に摺動させることが可能となる。よって、減衰力特性のバラツキを抑え減衰力特性を安定させることができる。
また、シール部材146,196のディスク145への固着側の剛性を高め、変形を防止した形状とすることにより、シール部材146,196の軸方向長を延ばすことができ、バネ性を向上することができる。また、従来と比して凸部385のボリュームを大きくし、パイロットケース118の外側筒部133に対する締め代を大きくとる構成としたため、パイロットケース118に対する摩擦力を大きくすることができる。これにより、バルブ部材113が開弁した後、閉弁動作をする際の応答性を向上させることができる。
さらに、凹部380のディスク145側に径方向外方に突出する凸部381を、最大径部359Aよりも大径となる、つまりバルブ部材113の中心軸線から離れる位置まで延出している。これにより、凸部381でディスク145への固着側の体積を大きくとることができる。
【0139】
本実施形態の緩衝器は、作動液が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に嵌装されるピストンと、第一端側が前記ピストンに連結され第二端側が前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、前記ピストンの摺動によって生じる作動液の流れを抑制して減衰力を発生させる減衰バルブと、該減衰バルブに閉弁方向の圧力を作用させるパイロット室を前記減衰バルブとともに形成する有底筒状のパイロットケースと、前記減衰バルブの背面の外周側に固着して設けられ、前記パイロットケースの筒部に摺動可能かつ液密的に嵌合される環状のシール部材と、を備える。前記減衰バルブは、内周側がクランプされ外周側が開くように構成され、前記作動液の流れの一部を前記パイロット室に導入して前記パイロット室の圧力によって前記減衰バルブの開弁を抑制する。前記シール部材の外周側には環状の凹部が形成され、前記シール部材の内周側には環状の凸部が形成されている。これにより、シール部材には、凹部の減衰バルブ側に径方向外方に突出する凸部が形成される。よって、シール部材は、この凸部で減衰バルブへの固着側の体積を大きくとることができる。これにより、シール部材の減衰バルブへの固着側の剛性を高めることができる。また、シール部材の外周側に環状の凹部が形成されているため、シール部材の筒部への密着時にシール部材の外周側の変形が異常になることを抑制できる。また、シール部材の内周側に環状の凸部が形成されているため、凹部による体積減を凸部で補って剛性を確保することができ、シール部材の内周側の変形が異常になることを抑制できる。したがって、シール部材の耐久性を向上させることができる。
【0140】
また、本実施形態の緩衝器は、作動液が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に嵌装されるピストンと、第一端側が前記ピストンに連結され第二端側が前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、前記ピストンの摺動によって生じる作動液の流れを抑制して減衰力を発生させる減衰バルブと、該減衰バルブに閉弁方向の圧力を作用させるパイロット室を前記減衰バルブとともに形成する有底筒状のパイロットケースと、前記減衰バルブの背面の外周側に固着して設けられ、前記パイロットケースの筒部に摺動可能かつ液密的に嵌合される環状のシール部材と、を備える。前記減衰バルブは、内周側がクランプされ外周側が開くように構成され、前記作動液の流れの一部を前記パイロット室に導入して前記パイロット室の圧力によって前記減衰バルブの開弁を抑制する。前記シール部材の外周部には環状の凹部が形成され、該凹部の最小径部の前記減衰バルブからの高さは、前記シール部材の外周部の前記最小径部よりも前記減衰バルブとは反対側で最大径となる最大径部の前記減衰バルブからの高さの1/3よりも大きい。これにより、シール部材の耐久性を向上させることができる。
また、前記環状の凹部より前記減衰バルブから離間する側に前記シール部材の外周側で最も大径となる最大径部を形成し、前記シール部材の前記減衰バルブ側には前記最大径部よりも径方向外方に突出する減衰バルブ側凸部を設ける。
また、前記凸部の頂部は前記凹部の最小径部よりも前記減衰バルブからの距離が大きい。
【0141】
上記実施形態は、複筒式の油圧緩衝器に本発明を用いた例を示したが、これに限らず、外筒をなくしシリンダ2内の下室20の上室19とは反対側に摺動可能な区画体でガス室を形成するモノチューブ式の油圧緩衝器に用いてもよく、あらゆる緩衝器に用いることができる。勿論、上記したベースバルブ25に本発明を適用することも可能である。また、シリンダ2の外部にシリンダ2内と連通する油通路を設け、この油通路に減衰力発生機構を設ける場合にも適用可能である。
上記実施の形態では、油圧緩衝器を例に示したが、流体として水や空気を用いることもできる。
上記実施形態では、摩擦部材24を備えた構成を示したが、微低速域での減衰力は低下するものの、摩擦部材24を無くしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0142】
上述の緩衝器によれば、シール部材の耐久性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0143】
1 緩衝器
2 シリンダ
18 ピストン
21 ピストンロッド
118,168 パイロットケース
140,190 パイロット室
146,196 シール部材
147,197 減衰バルブ
357A 最小径部
359A 最大径部
380 凹部
385 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C